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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872800
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】遠心ポンプ用の渦巻ポンプ・ケーシング
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   F04D29/44 D
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-135377(P2011-135377)
(22)【出願日】2011年6月17日
(65)【公開番号】特開2013-189861(P2013-189861A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】10166566.9
(32)【優先日】2010年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515169326
【氏名又は名称】ズルツァー マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド ロドリゲス
【審査官】 石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−067699(JP,U)
【文献】 特開平09−025896(JP,A)
【文献】 特開2001−295790(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00707616(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42 − 50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻ポンプ・ケーシングと、回転軸の周りにインペラを回転させるためのシャフト(2)に背中合わせに配置されて組み付けられたインペラ(4、4II)とを含む多段の遠心ポンプであって、前記渦巻ポンプ・ケーシング
それぞれのインペラ(、4II)を収容するためのチャンバと、
排出段と
を備え、該排出段は、
第1の渦巻(5.1)と第2の渦巻(5.2)とに分割された流路を形成する渦巻チャンバと、
前記第1の渦巻及び前記第2の渦巻にそれぞれ接続された第1の流管(6.1II)及び第2の流管(6.2II)とを含み、
前記第1の流管(6.1II)は長い流管と呼ばれ、前記第2の流管(6.2II)は短い流管と呼ばれ、
前記第1の即ち長い流管(6.1II)が、前記第2の即ち短い流管(6.2II)に対して及び/又は前記第2の渦巻(5.2)に対して、軸方向にずれており、
前記排出段の長い流管(6.1II)が、前記遠心ポンプの中央ブッシュ(2b)と交叉流管(9.1、9.2)との間を通過することを特徴とする、遠心ポンプ
【請求項2】
前記長い流管(6.1)の最終部が、軸方向に、前記短い流管(6.2II)の側部に又は前記短い流管と並んで配置される、請求項1に記載の遠心ポンプ
【請求項3】
前記第1の渦巻(5.1)及び前記第2の渦巻(5.2)が、それぞれ、単一の流管(6.1II、6.2II)に接続される、請求項1又は請求項2に記載の遠心ポンプ
【請求項4】
前記第1の流管及び前記第2の流管(6.1II、6.2II)が、二重排出を形成する最終部をそれぞれ有する、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の遠心ポンプ
【請求項5】
前記第1の即ち長い流管(6.1II)が、内壁(6.1a)と呼ばれる前記回転軸により近い壁を有し、前記回転軸(2a)と前記内壁(6.1a)の半径方向の距離が、前記長い流管(6.1II)の全長の少なくとも一部にわたって減少するようになっている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の遠心ポンプ
【請求項6】
前記第1の即ち長い流管(6.1II)が、内壁(6.1a)と呼ばれる前記回転軸により近い壁を有し、前記回転軸(2a)と前記長い流管(6.1II)の前記内壁(6.1a)の半径方向の距離が、前記長い流管の前記全長の一部にわたって前記インペラ(、4II)の半径よりも小さくなっている、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の遠心ポンプ
【請求項7】
入口導管を備え、前記第1の即ち長い流管(6.1II)が、以下で内壁(6.1a)と呼ばれる前記回転軸により近い壁を有し、前記長い流管の前記全長の一部にわたって、前記回転軸(2a)と前記長い流管(6.1II)の前記内壁(6.1a)との間の半径方向の距離が、前記入口導管の直径の半分よりも小さくなっている、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の遠心ポンプ
【請求項8】
前記長い流管の前記全長の一部にわたって、前記回転軸(2a)と前記長い流管(6.1II)の前記内壁(6.1a)との間の半径方向の距離が、前記入口導管の最小直径の半分よりも小さくなっている、請求項7に記載の遠心ポンプ。
【請求項9】
前記長い流管(6.1II)及び/又は前記短い流管(6.2II)が、それぞれの全長の大部分にわたって一定の横断面を有するか、又はそれぞれの全長の大部分にわたって広がる横断面を有する、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の遠心ポンプ
【請求項10】
半径流式又は斜流式である、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による渦巻ポンプ・ケーシング、及びそのような渦巻ポンプ・ケーシングを含む遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
渦巻ケーシング・ポンプは非常に一般的である。それらの特有の特徴は、通常、この種類のポンプを他のものと識別可能にする、渦巻型のポンプ・ケーシングである。渦巻ケーシングは、単段又は多段のポンプ配置の一部として構築されることがある。多段ポンプでは、渦巻ケーシングは、最終段のみに設けられることもある。片吸込及び両吸込の二重渦巻ケーシング・ポンプは、両方とも頻繁に使用される。
【0003】
一般に、渦巻ケーシングは、通常は半径流タイプ又は斜流タイプであり、原動機で駆動されるときに回転するためのシャフトに組み付けられた少なくとも1つのインペラを収容するように設計されたチャンバを含む。更に、ケーシングは、ポンプでくみ上げられた媒体を集めるための渦巻チャンバ、並びに媒体を外に案内する流管及び排出部を含む。排出は、渦巻ケーシングの接線方向に配置されてよく、又はスワン・ネック(SWAN NECK)を設けることによって半径方向に配置されてよい。吸込流管部は、インペラの片側だけに配置された軸受の場合は軸方向に配置され、インペラの両側に整列された軸受の場合は半径方向又は接線方向に配置されるのが好ましい。
【0004】
単一渦巻の最も単純な実施例では、ケーシングは、渦巻チャンバを含む下流のチャンバ部と上流の流管及び排出部とからなる2つの主たる部分に大まかに小分割されうる。渦巻と流管とが会する平面又は部分は、一般に、喉(throat)として画定される。流れをチャンバから流管に分離又は案内する喉の前縁は、水切りリップ又は水切りと称され、任意の所与の長さに対してこのリップを超えて延びる上面及び下面は、舌と名付けられる。インペラ周りに配置された複数の渦巻及び流路を有するケーシングの場合は、リップの数は、通常、渦巻又は流路の数に等しい。即ち、二重渦巻の場合は、2つのリップが存在する。
【0005】
二重渦巻及び二重排出を有する従来のポンプ・ケーシングは、第1の渦巻に接続された外側の又は長い流管が、第2の又は内側の渦巻の周り及び第2の渦巻に接続された短い流管を覆い、それにより、ポンプでくみ上げられた媒体の排出が、例えばフランジの中に設けられてよい共通排出ノズルを通してなされるように配置される。このことは、効果的なポンプ作業手段を提供するが、半径方向に広い面積の包絡面を必要とし、従って、よりコンパクトな解決策を必要とするポンプ配置に対して不利な、高さの増大を課することになる。
【0006】
そのようなポンプ配置の最近の実例は、シャフトに背中合わせに組み付けられ、シャフトに固定された中央ブッシュで分離された、2つのインペラを有する2段ポンプであり、一方のインペラが中間ケーシングに組み付けられ、他方のインペラが排出ケーシングに組み付けられる。排出ケーシングへの吸い込みは、それぞれ、中間ケーシング及び排出ケーシングの上及び下で交叉する、頂部及び底部の交叉流管を介してなされる。交叉流管の横断面は、排出ケーシングの吸込開口で合流する。
【0007】
従来の二重渦巻ケーシングによって課せられる高さは、不利な、ポンプ全高及び交叉流管と中央ブッシュとの間の大きな距離を意味し、中央ブッシュのケーシング部は大量の材料で構成される。更に、このことは、付加的に、交叉流管と隣接するケーシングの輪郭との間に、材料の質量の大きなポケット(pocket)をもたらす。従って、コストの観点からいえば、従来の二重渦巻ケーシングの高さが高いほど、上述の多段の実施例における質量が増加し、それ故より高価な解決策につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2つ以上の渦巻を有する渦巻ポンプ・ケーシング、及び定格の等しいポンプの従来の二重渦巻ケーシングの幾何学的包絡面よりも半径方向に小さい幾何学的包絡面を有し、且つ定格の等しいポンプの従来の二重渦巻ケーシングのボルト締め線(bolting line)よりも回転軸に近いボルト締め線を有するような渦巻ポンプ・ケーシングを含む遠心ポンプを提供することが、本発明の目的である。多段ポンプに当てはまる本発明の別の目的は、同じ定格の多段ポンプの従来の二重渦巻ケーシングと比べて、渦巻ポンプ・ケーシングの材料の質量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1で定義される渦巻ポンプ・ケーシングによる発明、及び請求項9で定義される遠心ポンプによる発明によって満足される。
【0010】
本発明による遠心ポンプ用の渦巻ポンプ・ケーシングは、回転軸の周りにインペラを回転させるためのシャフトに組み付けられた少なくとも1つのインペラを収容するためのチャンバと、第1の渦巻と第2の渦巻とに分割された流路を形成する渦巻チャンバと、第1及び第2の渦巻にそれぞれ接続された第1及び第2の流管とを含み、第1の流管は長い流管と呼ばれ、第2の流管は短い流管と呼ばれる。渦巻ポンプ・ケーシングは、第1の即ち長い流管が、第2の即ち短い流管に対して及び/又は第2の渦巻に対して軸方向にずれていることを特徴とする。例えば、第1の即ち長い流管が、第2の即ち短い流管に対して及び/又は第2の渦巻に対して、その全長の半分超にわたって軸方向にずれていることを特徴とする。長い流管の最終部分は、例えば、軸方向にみて、短い流管の側部に又は短い流管と並んで配置されてよい。
【0011】
有利な一実施例の変形では、第1及び第2の渦巻が、それぞれ単一の流管に接続される。他の有利な実施例の変形では、流管が、二重排出を形成する最終部分を、それぞれ有する。
【0012】
有利な一実施例では、第1の即ち長い流管が、以下で内壁と呼ばれる、回転軸により近い壁を有し、回転軸と内壁の半径方向の距離が、長い流管の全長の少なくとも一部にわたって減少する。他の有利な一実施例では、回転軸と長い流管の内壁の半径方向の距離は、長い流管の全長の一部にわたってインペラの半径より小さい。別の有利な実施例では、渦巻ポンプ・ケーシングは入口導管を備え、長い流管の全長の一部にわたって、回転軸と長い流管の内壁の半径方向の距離は、入口導管の直径の半分よりも小さく、又は入口導管の最小直径の半分よりも小さい。
【0013】
実施例又は実施例の変形とは関係なく、長い流管及び/又は短い流管は、それらそれぞれの全長の一部にわたって一定の横断面を有してよく、又はそれらそれぞれの全長の一部にわたって広がる横断面を有してよい。更に、長い流管及び/又は短い流管は、それらそれぞれの全長の大部分にわたって一定の横断面を有してよく、又はそれらそれぞれの全長の大部分にわたって広がる横断面を有してよい。
【0014】
本発明による遠心ポンプは、上で説明した1つ又は複数の実施例及び実施例の変形による、回転軸の周りにインペラを回転させるためのシャフトに組み付けられた少なくとも1つのインペラと、渦巻ポンプ・ケーシングとを含む。遠心ポンプは、通常、半径流式(radial type)又は斜流式(mixed flow type)である。
【0015】
有利な一実施例では、遠心ポンプは多段ポンプである。有利な一実施例の変形では、遠心ポンプは、背中合わせに配置されたインペラと排出段とを含む多段ポンプであり、排出段の長い流管が、多段ポンプの中央ブッシュと交叉流管との間を通過する。
【0016】
本発明による渦巻ポンプ・ケーシング及び遠心ポンプは、渦巻ポンプ・ケーシングの、必然的に遠心ポンプの、半径方向における幾何学的包絡面を、よりも小さくすることができ、例えば、定格の等しい従来の二重渦巻ポンプの幾何学的包絡線の90%又は80%にすることができるという利点を有する。実際には、このことは、通常、ケーシング高さの全体的な低減を意味する。更に、本発明によるポンプの着座位置は、定格の等しい従来の二重渦巻ポンプにおけるよりも、その組み付け位置に対してより低くすることができ、ボルト線は、ポンプの軸により近く配置されうることが有利である。
【0017】
本発明による渦巻ポンプ・ケーシング及び遠心ポンプの別の利点は、多段ポンプに関し、渦巻ポンプ・ケーシングの材料の質量が、定格の等しい従来の多段ポンプの従来の二重渦巻ケーシングと比較して、低減されうる。本発明による渦巻ポンプ・ケーシングでは、特に、ケーシングの水理形状寸法と隣接する幾何学的輪郭の水理形状寸法との間の材料の質量又は厚さを低減することができる。本発明による多段ポンプでは、従来の多段ポンプと比べて、頂部と底部の交叉の間の距離を減少することができ、それ故ポンプ全体の全高さが低減される。従って、よりコンパクトな解決策が、本発明による渦巻ポンプ・ケーシング及び遠心ポンプによって達成される。
【0018】
上で説明した実施例及び変形は、単なる実例として働く。他の有利な実施例は、従属クレーム及び図面から見ることができる。更に、本発明の文脈に於いて、説明し図示した実施例からの、及び説明し図示した変形からの個々の特徴が、新しい実施例を形成するために、互いに組み合わされうる。
【0019】
以下に、本発明を、具体的な実施例を参照して、及び図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】二重渦巻を有する従来の渦巻ポンプ・ケーシングの回転軸に垂直な断面図である。
図1A図1による従来の渦巻ポンプ・ケーシングの出口部の横断面図である。
図2】二重渦巻を有する本発明による渦巻ポンプ・ケーシングの一実施例の回転軸に垂直な断面図である。
図2A図2に示す本発明による渦巻ポンプ・ケーシングの実施例の出口部の横断面図である。
図3図1による従来の渦巻ポンプ・ケーシングの軸方向断面図である。
図4図2に示す本発明による渦巻ポンプ・ケーシングの実施例の軸方向断面図である。
図5】2段及び二重渦巻を有する従来の渦巻ポンプ・ケーシングの軸方向断面図である。
図6】2段及び二重渦巻を有する本発明による渦巻ポンプ・ケーシングの第2の実施例の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図1A及び図3は、遠心ポンプ用の従来の渦巻ポンプ・ケーシング1を示し、図1は回転軸に垂直な断面A’−A’であり、図1Aは出口部の横断面C’−C’であり、図3は従来の渦巻ポンプ・ケーシングの軸方向断面B’−B’である。図示の渦巻ポンプ・ケーシングは、例えばモータで駆動されるときに、回転軸2aの周りに回転するためのシャフト2に組み付けられた少なくとも1つのインペラ4を収容するチャンバを含む。更に、ケーシングは、通常、円周の約半分以下にわたってそれぞれ延びる第1の渦巻5.1及び第2の渦巻5.2に分割された流路と、ポンプでくみ上げられた媒体を外に案内するために、第1の渦巻及び第2の渦巻にそれぞれ接続された第1の流管6.1及び第2の流管6.2とを形成する渦巻チャンバを含む。
【0022】
有利には、ケーシングは、第1の流管6.1を第2の渦巻5.2及び/又は第2の流管6.2から分離する少なくとも1つの壁3を含み、前記壁3は、リブ又は分割リブ又は分割リブ壁と呼ばれる。渦巻5.1、5.2から流管6.1、6.2に流れを分離又は案内するケーシング1の前縁部7.1、7.2は、水切りリップ又は水切りと称され、任意の所与の長さに対してリップを超えて延びる上面及び下面は、舌と名付けられる。二重渦巻及び二重流路を有するケーシングの場合は、2つの水切りリップ7.1、7.2が存在し、水切りリップのうちの1つが、図1に示すケーシングにおける分割リブ3の前縁部である。
【0023】
二重渦巻及び二重排出を有する従来の渦巻ポンプ・ケーシングは、外側の又は長い流管とも呼ばれる第1の流管6.1が、内側の渦巻とも呼ばれる第2の渦巻5.2の周り、及び内側の又は短い流管とも呼ばれる第2の流管6.2の上に巻かれるように配置され、それにより、ポンプでくみ上げられた媒体の排出が、例えば、フランジ8aの中に設けられてよい共通排出開口8を通してなされる。流管6.1、6.2の最終部又は最後部は、図1に示すように渦巻ケーシングの接線方向に配置されてよく、又は、例えばスワン・ネックを設けることによって半径方向に配置されてよい。更に、渦巻ポンプ・ケーシングは、図に示さないが、吸込導管又は吸込流管を含んでよい。
【0024】
図2図2A及び図4は、本発明による渦巻ポンプ・ケーシング1の一実施例を示し、図2は回転軸に垂直な断面A−Aであり、図2Aは出口部の横断面C−Cであり、図4は渦巻ポンプ・ケーシングの軸方向断面B−Bである。図示の実施例では、本発明による遠心ポンプ用の渦巻ポンプ・ケーシング1は、回転軸2aの周りにインペラを回転させるためのシャフト2に組み付けられた少なくとも1つのインペラ4を収容するためのチャンバと、通常、円周の約半分以下にわたってそれぞれ延びる、第1の渦巻5.1と第2の渦巻5.2とに分割された流路を形成する渦巻チャンバと、第1及び第2の渦巻にそれぞれ接続された第1の流管6.1及び第2の流管6.2とを含み、第1の流管6.1は長い流管と呼ばれ、第2の流管6.2は短い流管と呼ばれる。
【0025】
本発明による渦巻ポンプ・ケーシング1は、第1の即ち長い流管6.1が、第2の即ち短い流管6.2に対して及び/又は第2の渦巻5.2に対して軸方向にずれていること、例えば、第1の即ち長い流管6.1の全長の大部分即ち半分超が、第2の即ち短い流管6.2に対して及び/又は第2の渦巻5.2に対して軸方向にずれていることを特徴とする。長い流管6.1の最終部又は最後部は、例えば、軸方向に、短い流管6.2の側部に又は短い流管5.2と並んで配置されてよい。
【0026】
有利には、ケーシング1は、第1の流管6.1を第2の渦巻5.2から及び/又は第2の流管から分離する、少なくとも1つの壁3’を含み、前記壁3’は、リブ又は分離リブ又は分離リブ壁と呼ばれる。更に、ケーシング1は、渦巻5.1、5.2から流管6.1、6.2に流れを分離又は案内し、水切りリップ又は水切りと呼ばれる、ケーシング1の前縁部7.1、7.2を含んでよい。二重渦巻及び二重流路を有するケーシングの場合は、図2に示すように、2つの水切りリップ7.1、7.2が存在する。
【0027】
図2図2A及び図4に示す実施例では、二重渦巻配置が、典型的に、従来の二重渦巻ポンプ・ケーシングの配置のままになっている。しかし、好ましくは、長い流管6.1は、異なる設計構成を取り、例えば、この流管の長さに沿った横断面領域は、隣接する横断面領域が、シャフト2周りの半径方向により近く、且つ短い流管6.2の側部に配置される程度に、軸方向に漸次ずらされる。長い流管6.1及び短い流管それぞれの最終横断面は、通常、開口8に、及び任意選択でフランジ8aに設けられる共通の排出導管に合流する。流管6.1、6.2の最終部又は最後部は、図2に示すように、渦巻ケーシングの接線方向に配置されてよく、又は、例えばスワン・ネックを設けることによって半径方向に配置されてよい。更に、渦巻ポンプ・ケーシングは、図示はしない吸込導管又は吸込流管を含んでよい。
【0028】
有利な一実施例の変形では、第1の渦巻5.1及び第2の渦巻5.2は、それぞれ単一の流管6.1、6.2に接続される。他の有利な実施例の変形では、流管6.1、6.2はそれぞれ、図2Aに示すような二重排出を形成する最終部又は最後部を有する。
【0029】
有利な一実施例では、第1の即ち長い流管6.1は、以下で内壁6.1aと呼ばれる、回転軸2aにより近い壁を有している。回転軸2aと内壁6.1aとの間の半径方向の距離は、長い流管6.1の全長の少なくとも一部にわたって減少する。他の有利な一実施例では、回転軸2aと長い流管6.1の内壁6.1aとの間の半径方向の距離は、長い流管の全長の一部にわたってインペラ4の半径より小さい。別の有利な実施例では、渦巻ポンプ・ケーシングは入口導管を備え、長い流管6.1の全長の一部にわたって回転軸2aと長い流管の内壁6.1aとの間の半径方向の距離は、入口導管の直径の半分より小さいか又は入口導管の最小直径の半分より小さい。長い流管6.1の内壁6.1aは、図4に示すように真っ直ぐである必要はなく、実際には、円、楕円又は曲線形状など、軸方向横断面において任意の適切な形状を取ってよい。
【0030】
実施例又は実施例の変形とは関係なく、長い流管6.1及び/又は短い流管6.2は、それらそれぞれの全長の一部にわたって一定の横断面を有してよく、又はそれらそれぞれの全長の一部にわたって広がる横断面を有してよい。更に、長い流管及び/又は短い流管は、それらそれぞれの全長の大部分にわたって一定の横断面を有してよく、又はそれらそれぞれの全長の大部分にわたって広がる横断面を有してよい。
【0031】
図5は、2段及び二重渦巻を有する従来の渦巻ポンプ・ケーシングを通る軸方向断面を示し、図6は、2段及び二重渦巻を有する本発明による渦巻ポンプ・ケーシングの第2の実施例を通る軸方向断面を示す。図5に示す従来の渦巻ポンプ・ケーシング1は、例えばモータで駆動されるときに、回転軸2aの周りに回転するために共通シャフト2に組み付けられたインペラ4、4IIを収容するためのチャンバをそれぞれ有する第1の段及び第2の段即ち排出段を含む。インペラ4、4IIは、通常、シャフト2に背中合わせの配置で組み付けられ、中央ブッシュ2bで分離される。
【0032】
従来の渦巻ポンプ・ケーシングの第1の段は、ポンプでくみ上げられた媒体を集めるための流路と、ポンプでくみ上げられた媒体を運ぶために流路にそれぞれ接続された第1の流管6.1及び第2の流管6.2とを含んでいる。一方、排出段は、通常、円周の約半分以下にわたってそれぞれ延びる第1の渦巻及び第2の渦巻に分割された流路を形成する渦巻チャンバと、ポンプでくみ上げられた媒体を外に案内するために第1及び第2の渦巻にそれぞれ接続された第1の流管6.1II及び第2の流管6.2IIとを含む。有利には、排出段は、排出段の第1の流管6.1IIを第2の渦巻から及び/又は第2の流管6.2IIから分離する少なくとも1つの分離リブ壁3を含む。第1の段の流管6.1、6.2はそれぞれ、頂部及び底部の交叉流管など、交叉流管9.1、9.2を介して排出段の吸込開口に接続される。
【0033】
2段及び二重渦巻を有する従来の渦巻ポンプ・ケーシングでは、排出段の第1の流管6.1IIが、排出段の第2の渦巻の周り及び第2の流管6.2IIの上に覆われ、それにより、ポンプでくみ上げられた媒体の排出が、共通の排出開口を通してなされる。更に、渦巻ポンプ・ケーシングは、図5に示さない吸込導管又は吸込流管を含んでよい。
【0034】
図6に示すような、本発明による渦巻ポンプ・ケーシング1の第2の実施例は、第1の段及び少なくとも第2の段即ち排出段を含む。各段は、例えばモータで駆動されるときに、回転軸2aの周りに回転するために共通シャフト2に組み付けられたインペラ4、4IIを収容するためのチャンバを有する。インペラ4、4IIは、通常、シャフト2の上で、背中合わせの配置で組み付けられ、中央ブッシュ2bで分離される。
【0035】
第2の実施例の第1の段は、ポンプでくみ上げられた媒体を集めるための流路と、流路にそれぞれ接続された第1の流管6.1及び第2の流管6.2とを含み、一方、排出段は、通常、円周の約半分以下にわたってそれぞれ延びる第1の渦巻及び第2の渦巻に分割された流路を形成する渦巻チャンバと、第1及び第2の渦巻にそれぞれ接続された第1の流管6.1II及び第2の流管6.2IIとを含み、第1の流管6.1IIは長い流管と呼ばれ、第2の流管6.2IIは短い流管と呼ばれる。
【0036】
第2の実施例による渦巻ポンプ・ケーシング1では、排出段の第1の即ち長い流管6.1IIが、排出段の第2の即ち短い流管6.2IIに対して及び/又は排出段の第2の渦巻に対して軸方向にずらされ、例えば、第1の即ち長い流管6.1IIの全長の大部分即ち半分超が、第2の即ち短い流管6.2IIに対して及び/又は第2の渦巻に対して軸方向にずれている。排出段の長い流管6.1IIの最終部又は最後部は、例えば、軸方向に、排出段の短い流管6.2IIの側部に又は排出段の短い流管と並んで配置されてよい。
【0037】
有利には、排出段は、排出段の第1の流管6.1IIを排出段の第2の渦巻から及び/又は排出段の第2の流管6.2IIから分離する少なくとも1つの分離リブ壁3’を含む。第1の段の流管6.1、6.2はそれぞれ、頂部及び底部の交叉流管など、交叉流管9.1、9.2を介して排出段の吸込開口に接続される。
【0038】
図6に示す第2の実施例では、二重渦巻配置は、典型的に、従来の二重渦巻ポンプ・ケーシングの配置のままになっている。しかし、好ましくは、排出段の長い流管6.1IIは、異なる設計構成を取り、例えば、この流管の長さに沿った横断面領域は、隣接する横断面領域が、シャフト2周りの半径方向により近く、且つ排出段の短い流管6.2IIの側部に配置される程度に、軸方向に漸次ずらされる。排出段の長い流管6.1II及び排出段の短い流管6.2IIそれぞれの最終横断面は、通常、共通の排出導管に合流する。更に、第2の実施例の渦巻ポンプ・ケーシング1は、図6に示さない吸込導管又は吸込流管を含んでよい。
【0039】
有利な一実施例の変形では、排出段の第1及び第2の渦巻は、それぞれ単一の流管6.1II、6.2IIに接続される。他の有利な実施例の変形では、排出段の流管6.1II、6.2IIは、それぞれ、二重排出を形成する最終部又は最後部を有する。
【0040】
別の有利な実施例の変形では、排出段の長い流管6.1IIは、渦巻ポンプ・ケーシング1の中央ブッシュ2bと交叉流管9.1、9.2との間を通過する。
【0041】
有利な一実施例では、排出段の第1の即ち長い流管6.1IIが、以下で内壁6.1aIIと呼ばれる、回転軸2aにより近い壁を有している。回転軸2aと内壁6.1aIIとの間の半径方向の距離が、排出段の長い流管6.1IIの全長の少なくとも一部にわたって減少する。他の有利な実施例では、回転軸2aと排出段の長い流管6.1IIの内壁6.1aIIとの間の半径方向の距離は、長い流管の全長の一部にわたって排出段のインペラ4IIの半径より小さい。別の有利な実施例では、渦巻ポンプ・ケーシングは入口導管を備え、排出段の長い流管6.1IIの全長の一部にわたって、回転軸2aと排出段の長い流管の内壁6.1aIIとの間の半径方向の距離は、入口導管の直径の半分よりも小さく、又は入口導管の最小直径の半分よりも小さい。排出段の長い流管6.1IIの内壁6.1aIIは、図6に示すように真っ直ぐである必要はなく、実際には、円、楕円又は曲線形状など、軸方向横断面において任意の適切な形状を取ってよい。
【0042】
更に、本発明は、上で説明した実施例及び実施例の変形のうちの1つ又は複数による、回転軸2aの周りにインペラを回転させるためのシャフト2に組み付けられた少なくとも1つのインペラ4と、渦巻ポンプ・ケーシング1とを設けられた遠心ポンプを含む(参照番号に関して図2図2A及び図4並びに図6参照)。本発明による遠心ポンプは、通常、半径流式又は斜流式である。
【0043】
有利な一実施例では、遠心ポンプは多段ポンプである。有利な一実施例の変形では、遠心ポンプは、背中合わせに配置されたインペラ4、4IIと排出段とを含む多段ポンプであり、排出段の長い流管6.1IIが、多段ポンプの中央ブッシュ2bと交叉流管9.1、9.2の間を通過する(参照番号に関して図6参照)。
【0044】
従来技術と比較すると、本発明による渦巻ポンプ・ケーシング及び遠心ポンプは、半径方向においてよりコンパクトな解決策を、また多段ポンプに適用されるときにはより経済的な材料使用法を、提供することができるという利点を有する。
【符号の説明】
【0045】
1 渦巻ポンプ・ケーシング
2 シャフト
2a 回転軸
2b 中央ブッシュ
3、3’ 壁
4、4、4II インペラ
5.1 第1の渦巻
5.2 第2の渦巻
6.1、6.1、6.1II 第1の流管
6.1a、6.1aII 内壁
6.2、6.2、6.2II 第2の流管
7.1、7.2 前縁部又は水切りリップ
8 開口
8a フランジ
9.1、9.2 交叉流管
図1
図1A
図2
図2A
図3
図4
図5
図6