【実施例】
【0028】
以下に本実施の形態を実施例によって更に具体的に説明する。以下の各実施例および各比較例に係る蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clで表される。
【0029】
(実施例1)
実施例1に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.35、y=0.040である。はじめに、原料としてCa
2P
2O
7、CaCO
3、SrCO
3、Eu
2O
3、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCa
2P
2O
7:CaCO
3:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4Cl=1.50:0.05:1.75:0.10:1.00となるよう秤量し、秤量した各原料をアルミナ乳鉢に入れ粉砕混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をアルミナ坩堝に入れ、2〜5%のH
2を含むN
2雰囲気中で、温度1000℃で5時間焼成し、焼成物を得る。この焼成物を温純水で丹念に洗浄し、余剰の塩化物を洗い流すことにより青色蛍光体を得ることができる。
【0030】
(実施例2)
実施例2に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.20、y=0.016である。はじめに、原料としてCaCO
3、SrCO
3、NH
4H
2PO
4、Eu
2O
3、およびCaCl
2を用い、これらの原料をモル比がCaCO
3:SrCO
3:NH
4H
2PO
4:Eu
2O
3:CaCl
2=3.42:1.00:3.00:0.04:0.50となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0031】
(実施例3)
実施例3に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.20、y=0.040である。はじめに、原料としてCaCO
3、SrCO
3、NH
4H
2PO
4、Eu
2O
3、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCaCO
3:SrCO
3:NH
4H
2PO
4:Eu
2O
3:NH
4Cl=3.80:1.00:3.00:0.10:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0032】
(実施例4)
実施例4に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.25、y=0.040である。はじめに、原料としてCaHPO
4、CaCO
3、SrCO
3、Eu
2O
3、およびCaCl
2を用い、これらの原料をモル比がCaHPO
4:CaCO
3:SrCO
3:Eu
2O
3:CaCl
2=3.00:0.05:1.75:0.10:0.50となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0033】
(実施例5)
実施例5に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.20、y=0.008である。はじめに、原料としてCaHPO
4、CaCO
3、SrCO
3、Eu
2O
3、NH
4H
2PO
4、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCaHPO
4:CaCO
3:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4H
2PO
4:NH
4Cl=3.00:0.96:1.00:0.02:0.01:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0034】
(実施例6)
実施例6に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.20、y=0.020である。はじめに、原料としてCa
2P
2O
7、CaCO
3、SrCO
3、Eu
2O
3、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCa
2P
2O
7:CaCO
3:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4Cl=1.50:0.86:1.00:0.07:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0035】
(比較例1)
比較例1に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Mg
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clで表され、Srは添加されていない。はじめに、原料としてCaHPO
4、CaCO
3、MgCO
3、Eu
2O
3、およびCaCl
2を用い、これらの原料をモル比がCaHPO
4:CaCO
3:
MgCO
3:Eu
2O
3:CaCl
2=3.00:1.17:0.50:0.04:0.50となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0036】
(比較例2)
比較例2に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.04、y=0.002である。はじめに、原料としてCaHPO
4、CaCO
3、SrCO
3、Eu
2O
3、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCaHPO
4:CaCO
3:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4Cl=3.00:1.79:0.20:0.005:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0037】
(比較例3)
比較例3に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.60、y=0.040である。はじめに、原料としてCaHPO
4、SrCO
3、Eu
2O
3、NH
4H
2PO
4、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCaHPO
4:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4H
2PO
4:NH
4Cl=1.80:3.00:0.10:1.20:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0038】
(
参考例)
参考例に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.35、y=0.060である。はじめに、原料としてCaHPO
4、SrCO
3、Eu
2O
3、NH
4H
2PO
4、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCaHPO
4:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4H
2PO
4:NH
4Cl=2.95:1.75:0.15:0.05:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0039】
(比較例4)
比較例4に係る青色蛍光体は、一般式(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clにおいて、x=0.10、y=0.016である。はじめに、原料としてCa
2P
2O
7、CaCO
3、SrCO
3、Eu
2O
3、およびNH
4Clを用い、これらの原料をモル比がCa
2P
2O
7:CaCO
3:SrCO
3:Eu
2O
3:NH
4Cl=1.50:1.87:0.50:0.04:1.00となるよう秤量した。その後は、実施例1と同じ方法で青色蛍光体を合成した。
【0040】
<組成決定方法>
各蛍光体の組成は以下の手順により決定した。
(1)XRD(粉末X線回折)により単相であることを確認した後に、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法にてサンプルの組成を分析した。
(2)同一サンプルをEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用い、粒子1粒の半定量により組成分析した結果がICP発光分光分析法で得られた値と一致したため、全てのサンプルについてEPMAを用い、粒子一粒で組成分析を行った。
【0041】
<耐光性評価方法>
上述の蛍光体と半導体発光素子とを備えた発光モジュールを蛍光体毎に作製し、耐光性評価を行った。
図1は、実施の形態に係る発光モジュールの概略断面図である。
図1に示す発光モジュール10は、マウント部材12と、半導体発光素子14と、枠部材16と、蛍光部材18と、を備える。半導体発光素子14は、マウント部材12により固定されている。半導体発光素子14の上方には、半導体発光素子14を覆う蛍光部材18が設けられている。また、枠部材16は、マウント部材12上に固定され、半導体発光素子14の側方の周囲を囲んでいる。
【0042】
発光素子には、紫外線又は短波長可視光を発光するLEDやLD等を用いることができる。本実施例に係る半導体発光素子14としては、近紫外線又は短波長可視光を発するLED(nUV−LED:ピーク波長405nm)を用いている。マウント部材12は、例えば銀ペースト等の導電性接着剤又は金錫共晶はんだ等である。
【0043】
蛍光部材18は、前述の各蛍光体が分散されたバインダー部材によってシート状に形成されている。バインダー部材としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等を用いることができる。特に、本実施例に係る発光モジュールは、励起光源として紫外線又は短波長可視光を用いることから、耐紫外線性能に優れたシリコーン樹脂等のバインダー部材が好ましい。
【0044】
本実施例に係る蛍光部材18は、シート厚みが120μmであり、分散されている蛍光体の濃度は30vol%である。
【0045】
次に、前述のように構成された発光モジュール10を約1W/mm
2で発光するように1A程度の投入電流で駆動する。この状態で、各蛍光体を含む発光モジュールにおける初期の発光強度と1000h点灯後の発光強度を測定した。
【0046】
ここで、1000h後の発光強度=初期発光強度×(1000h後の耐光維持率)とした。また、今回の評価では、発光モジュールの1000h後の発光強度が0.70以上のものを合格レベルとしている。なお、合格レベルの根拠は、日本工業標準調査会標準部発行“照明用白色LED装置性能要求事項”“TSC8153”に基づいている。
【0047】
各実施例および各比較例に係る蛍光体をそれぞれ備えた発光モジュールでの耐光性評価結果を表1に示す。また、
図2は、実施例1に係る発光モジュールの初期の発光スペクトルと1000h発光後の発光スペクトルを比較した図である。
図3は、比較例1に係る発光モジュールの初期の発光スペクトルと1000h発光後の発光スペクトルを比較した図である。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、実施例1に係る発光モジュールにおいて、耐光維持率(1000h点灯時)95%を達成している。また、その他の各実施例に係る発光モジュールにおいても、耐光維持率70%以上を達成している。このように、高出力の近紫外LEDを備えた発光モジュールにおいて経時での発光強度の低下が少ない青色蛍光体が実現できた。
【0050】
一方、比較例3においては、xの値が0.60とSrの含有量が多く、初期の発光強度が低い。また、比較例1、比較例4においては、いずれもxの値が0.10以下とSrの含有量が少なく、1000h後の発光強度の低下が大きく、UV耐光性が低い。そのため、一般式が(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clで表されている各実施例に係る蛍光体は、Srの含有量と相関のあるxの値が0.10<x<0.60の範囲である。
【0051】
また、比較例2においては、yの値が0.002とEuの含有量が少なく、初期の発光強度が低い。また、
参考例においては、yの値が0.060とEuの含有量が多く、初期の発光強度は高いものの、耐光維持率が70%未満である。そのため、一般式が(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Clで表されている各実施例に係る蛍光体は、Euの含有量と相関のあるyの値が0.002<y<0.060の範囲である。
【0052】
また、各実施例に係る発光モジュールは、初期発光強度も高く、耐光維持率を70%以上である。各実施例の蛍光体において、SrとEuの合計含有量に対するEuの含有量の割合と相関のあるy/(x+y)の値は、0.020<y/(x+y)<0.17の範囲であり、より好ましくは、0.029≦y/(x+y)≦0.167の範囲である。
【0053】
このように、一般式が(Ca
1−x−y,Sr
x,Eu
y)
5(PO
4)
3Cl(ここで、x、yは、0.10<x<0.60、0.002<y<0.060、0.02<y/(x+y)<0.17を満たす範囲である)で表されている青色蛍光体は、耐光性が向上している。また、このような青色蛍光体を含む、実施例に係る発光モジュールは、紫外線又は短波長可視光に対する青色蛍光体の耐光性が向上しているため、長期使用における発光強度の低下が抑制される。
【0054】
特に、400mW以上の光出力が可能な発光素子を備える発光モジュールの蛍光体として好適である。より好ましくは、600mW以上の光出力が可能な発光素子、更により好ましくは、800mW以上の光出力が可能な発光素子と組み合わせることで、耐光性のより顕著な効果が現れる。このように、光出力の高い発光素子を用いた発光モジュールであっても長寿命を実現できる。
【0055】
発光素子は、350〜420nmの波長域にピーク波長を有する紫外線又は短波長可視光を発しているものが好ましい。これにより、発光スペクトルの異なる複数種の蛍光体、例えば、各実施例に係る青色蛍光体と前述の黄色蛍光体を用いて白色光を実現できる。また、発光素子の光を直接用いずに青色光と黄色光との混色で白色光を実現できる。また、長期にわたる使用における青色光の出力の低下が抑制されるため、黄色光と混色して実現される白色光の経年による色ズレが小さくなる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態や実施例をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。