(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記歩行者位置に所定時間光を照射したときに、光が照射されている領域の上端を下方に移動させるよう前記車両用スポットランプによる光の照射を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用スポットランプ制御装置。
前記位置検出装置は、撮像装置によって撮像され生成された画像データを解析して歩行者画像を特定し、前記歩行者画像のうち幅が所定条件を満たして縮小した先の部分を前記顔の位置として検出することを特徴とする請求項5に記載の車両用スポットランプシステム。
前記位置検出装置は、撮像装置によって撮像され生成された画像データを解析して歩行者画像を特定し、前記歩行者画像のうち高さ方向において所定割合を占める上部を顔の位置として検出することを特徴とする請求項5に記載の車両用スポットランプシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献に記載の技術によれば、歩行者の位置などを運転者に認識させることで、危険をより簡易に回避することができる。しかしながら、例えば歩行者の位置に光を照射させると、歩行者に車両の存在を認識させることは可能となるが、歩行者にグレアを与える可能性がある。一方、歩行者へのグレアの付与を回避するために歩行者の位置に光を照射させずに歩行者に向かって伸びる光を路面に照射すれば、運転者に歩行者の位置を認識させることは可能であるが、歩行者に車両の存在を適切に認識させることは逆に困難となる。このため、歩行者に与えるグレアの抑制と、当該歩行者に車両の存在を適切に認識させることと、当該歩行者の存在を運転者に適切に認識させることを両立させることが可能な技術の開発が求められている。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、歩行者に与えるグレアを抑制しつつ当該歩行者に車両の存在を適切に認識させ、さらに当該歩行者の存在を運転者に適切に認識させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用スポットランプ制御装置は、位置検出装置によって検出された歩行者位置を取得する歩行者位置取得部と、照射位置を変更可能な車両用スポットランプによる光の照射を制御する制御部と、を備える。制御部は、歩行者位置が取得された場合、歩行者位置を含む領域に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御する。
【0007】
歩行者の顔は歩行者の上部通常位置する。この態様によれば、いったんは歩行者位置に光を照射させることで歩行者に車両の存在を適切に認識させることができる。また、光が照射されている領域の上端を下方に移動させることにより、歩行者の顔の位置に光を照射させる可能性を低減させることができる。このため、歩行者へのグレアの付与を抑制しつつ、運転者に歩行者の存在を適切に認識させることができる。
【0008】
位置検出装置は、歩行者の顔の位置を検出し、歩行者位置取得部は、位置検出装置から顔の位置を取得し、制御部は、顔の位置に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を顔の位置よりも下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御してもよい。この態様によれば、検出された顔の位置を利用することで、より適切に、歩行者へのグレアの付与を抑制することができる。
【0009】
制御部は、歩行者位置に所定時間光を照射したときに、光が照射されている領域の上端を下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御してもよい。この態様によれば、所定時間光を歩行者位置に照射するため、歩行者に車両の存在を適切に認識させることができる。
【0010】
本発明の別の態様は、車両用スポットランプシステムである。この車両用スポットランプシステムは、照射位置を変更可能な車両用スポットランプと、歩行者位置を検出する位置検出装置と、車両用スポットランプによる光の照射を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、歩行者位置が検出された場合、歩行者位置を含む領域に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御する。
【0011】
この態様によれば、いったんは歩行者位置に光を照射させることで歩行者に車両の存在を適切に認識させることができる。また、光が照射されている領域の上端を下方に移動させることにより、歩行者の顔の位置に光を照射させる可能性を低減させることができる。このため、歩行者へのグレアの付与を抑制しつつ、運転者に歩行者の存在を適切に認識させることができる。
【0012】
なお、位置検出装置が、歩行者の顔の位置を検出し、制御装置は、顔の位置に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を顔の位置よりも下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御してもよい点は上述と同様である。
【0013】
このとき位置検出装置は、撮像装置によって撮像され生成された画像データを解析して歩行者画像を特定し、歩行者画像のうち幅が所定条件を満たして縮小した先の部分を顔の位置として検出してもよい。この態様によれば、歩行者画像を用いて歩行者の顔の位置を簡易に検出することができる。
【0014】
また、位置検出装置は、撮像装置によって撮像され生成された画像データを解析して歩行者画像を特定し、歩行者画像のうち高さ方向において所定割合を占める上部を顔の位置として検出してもよい。この態様によっても、歩行者画像を用いて歩行者の顔の位置を簡易に検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、歩行者に与えるグレアを抑制しつつ当該歩行者に車両の存在を適切に認識させ、さらに当該歩行者の存在を運転者に適切に認識させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両用スポットランプ10の鉛直断面図である。車両には、左前部および右全部の各々にこの車両用スポットランプ10が設けられている。車両用スポットランプ10は、車両用前照灯であるロービーム用光源およびハイビーム用光源とは別に設けられる。
【0019】
車両用スポットランプ10は、投影レンズ12および光照射装置14を備える。投影レンズ12は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置される。投影レンズ12は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面F上に形成される光源像を、反転像として車両用スポットランプ10前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。したがって投影レンズ12は、光照射装置14からの光を集光する光学部材として機能する。
【0020】
光照射装置14は、発光素子基板16およびヒートシンク18を有する。発光素子基板16は、基板20および発光素子ユニット22を有する。発光素子ユニット22は複数の発光素子24を含む。発光素子24は、半導体発光素子であるLEDによって構成される。光照射装置14は、複数の発光素子24の各々の発光面が投影レンズ12の後方焦点面Fに位置するよう配置される。なお、発光素子24がLED以外の半導体発光素子によって構成されていてもよい。また、発光素子24に代えて、例えばハロゲンランプ、白熱灯、または放熱灯が用いられてもよい。
【0021】
基板20はプリント配線基板であり、基板20の表面などに形成された導電性部材を介して発光素子24へ電力が供給される。ヒートシンク18は、アルミニウムなど放熱性の高い放熱材料によって形成される。ヒートシンク18は発光素子基板16に直接取り付けられ、発光素子ユニット22および基板20が発する熱を外部へ放散させる。
【0022】
図2は、第1の実施形態に係る発光素子ユニット22を灯具後方から見た図である。
図2に示すように、発光素子ユニット22を構成する複数の発光素子24の各々は、略正方形の発光面を有する。なお、発光素子24の各々が、例えば長方形など正方形以外の発光面を有していてもよい。第1の実施形態では、発光素子24は24個設けられ、鉛直方向に3列、水平方向に8列に互いに隙間無く並ぶよう基板20上に実装されている。
【0023】
図2において、H−H線は、投影されたときに水平線に位置する仮想線であり、V−V線は、投影されたときに車両前方中央を通過する鉛直線に位置する仮想線である。第1の実施形態では、24個の発光素子24は、4列がV−V線よりも左に、他の4列がV−V線よりも右に配置される。また、24個の発光素子24は、最下段の発光素子24にH−H線が通過するよう配置される。これにより、最下段の発光素子24が点灯したときは水平線よりも上方に光が照射されることになる。したがって、水平線よりも上方に顔が位置する歩行者がいた場合に、その顔に光を照射することができ、歩行者にも車両の存在を気づかせることが可能となる。なお、発光素子24の数や配置がこれに限られないことは勿論である。例えば複数の発光素子24のすべてがH−H線よりも上方に配置されていてもよい。
【0024】
以下、
図2に示すように、24個の発光素子24の各々を識別するために、発光素子24の各々を「発光素子24Pxy」と表す。xは右から何番目の列かを示し、yは下から何番目の列かを示す。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る車両用スポットランプ10による投影像を示す図である。投影像の各領域に示される「領域Rxy」は、発光素子24Pxyによって形成される配光パターンを示す。したがって、例えば「領域R11」は、発光素子24P11が点灯することにより形成される配光パターンを示す。
図3は、車両前方の仮想鉛直スクリーンに形成される配光パターンを示している、なお
図3には表していないが、路面は通常水平なため路面に投影される配光パターンは車両を中心に放射状に広がるように形成される。
【0026】
第1の実施形態では、車両用スポットランプ10は、歩行者が存在する領域とその手前の領域に光を照射することにより、歩行者に向けて延在する配光パターンを形成して光の延在方向に歩行者が存在することを運転者に報知する。例えば領域R31に歩行者位置が検出された場合、車両用スポットランプ10は、発光素子24P31を点灯させて領域R31の配光パターンを形成するだけでなく、発光素子24P32および発光素子24P33も点灯させて領域R31の手前の領域R32およびR33の配光パターンも形成する。これにより、領域R33、領域R32、および領域R31と一直線状に延在する配光パターンを形成し、歩行者が存在する方向を運転者に適切に報知することができる。
【0027】
図4は、車両用スポットランプシステム100の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図4はCPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックは、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。車両用スポットランプシステム100は、車両電子制御ユニット(以下、「車両ECU(Electronic Control Unit)」という)120、モードスイッチ122、画像処理部130、カメラ132、スポットランプ電子制御ユニット(以下、「スポットランプECU」という)150、車両左前部に設けられた左スポットランプ10L、および右前部に設けられた右スポットランプ10Rを含む。
【0028】
モードスイッチ122は、車両運転席付近に設けられる。運転者は、モードスイッチ122を操作することにより、歩行者スポットライトモードの開始および終了を指示することができる。
【0029】
撮像装置であるカメラ132は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含み、撮像して得られた画像を画像データとして出力する。カメラ132は、車両前方を撮像できるよう、例えばフロントガラスの内側など車両室内に設置されている。カメラ132には、ステレオカメラが採用されている。なお、カメラ132に他のカメラが採用されてもよい。カメラ132は、車両前方を撮像し、静止画または動画の画像データを生成して画像処理部130に出力する。
【0030】
画像処理部130は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。画像処理部130は、カメラ132によって撮像された画像データを取得し、画像処理を施す。カメラ132により生成された画像データを取得する画像データ取得部として機能する。
【0031】
画像処理部130は、歩行者位置検出部134を有する。歩行者位置検出部134は、車両前方を撮像したカメラ132からの画像データに画像処理を施すことにより、歩行者画像を特定し、これにより歩行者位置を検出する。したがってカメラ132および画像処理部130は、歩行者位置を検出する位置検出装置として機能する。歩行者画像を特定する技術や歩行者位置を検出する技術は公知であるため説明を省略する。検出された歩行者位置は、車両ECU120に送信される。
【0032】
第1の実施形態では、車両との衝突を回避すべき対象物の位置として歩行者位置を検出しているが、カメラ132と画像処理部130とが位置を検出する対象物が歩行者に限られないことは勿論である。例えば、歩行者位置検出部134に代えて、車両との衝突を回避すべき動物や路面上障害物など他の対象物の位置も検出する対象物位置検出部が設けられてもよい。対象物位置検出部は、カメラ132からの画像データに画像処理を施すことによりこのような対象物の画像を特定し、これにより対象物の位置を検出してもよい。
【0033】
なお、カメラ132が車両ECU120に接続されていてもよい。車両ECU120は、カメラ132からの画像データを用いて歩行者画像を特定し、これにより歩行者位置を検出してもよい。また、カメラ132がスポットランプECU150に接続されていてもよい。スポットランプECU150は、カメラ132からの画像データを用いて歩行者画像を特定し、これにより歩行者位置を検出してもよい。
【0034】
車両ECU120もまた、CPU、ROM、RAMを有する。車両ECU120は、モードスイッチ122の操作に応じて、スポットランプモードの開始要求や終了要求を取得する。
【0035】
スポットランプECU150は、灯室の外部に配置され、左スポットランプ10Lおよび右スポットランプ10Rの各々の発光素子24の点灯を制御する。したがってスポットランプECU150は、車両用スポットランプ10による光の照射を制御する制御部または制御装置として機能する。
【0036】
スポットランプECU150は、歩行者位置取得部152および点灯制御部154を有する。車両ECU120は、画像処理部130から受信した歩行者位置をスポットランプECU150に送信する。歩行者位置取得部152は、車両ECU120から受信した歩行者位置を取得する。なお、歩行者位置取得部152に代えて、上述の対象物位置検出部によって検出された、車両との衝突を回避すべき対象物の位置を取得する対象物位置取得部が設けられてもよい。
【0037】
点灯制御部154は、左スポットランプ10Lおよび右スポットランプ10Rの各々の発光素子基板16にオンオフ信号を出力することにより、左スポットランプ10Lおよび右スポットランプ10Rに設けられた複数の発光素子24の各々の点灯を制御する。
【0038】
第1の実施形態では、点灯制御部154は、歩行者位置の領域と、歩行者位置よりも車両に近い領域、すなわち歩行者位置から車両寄りの領域と、に光が照射されるよう、これらの領域に光を照射するための発光素子24を点灯させる。例えば領域R61に歩行者が位置しているとき、点灯制御部154は領域R61だけでなく、領域R61よりも車両寄りの領域R62および領域R63も光を照射するよう、発光素子24P61、P62、およびP63を点灯させる。このように歩行者位置の領域だけでなく歩行者位置から車両寄りの領域にも光を照射することにより、歩行者位置に向けて直線状に伸びる光を路面に照射することができる。
【0039】
しかしながら、例えば歩行者位置である領域に光を照射させると、歩行者に車両の存在を認識させることは可能となるが、歩行者にグレアを与える可能性がある。一方、歩行者位置に光を照射させずに歩行者位置よりも下方の領域に光を照射すれば、歩行者に向かって伸びる光を路面に照射することができ、運転者に歩行者の位置を認識させることは可能となるが、歩行者に車両の存在を適切に認識させることは逆に困難となる。このため、点灯制御部154は、歩行者位置が取得された場合、歩行者位置を含む領域に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御する。
【0040】
具体的には、歩行者位置検出部134は、歩行者位置を検出したとき、歩行者の顔の位置も検出する。歩行者位置取得部152は、顔の位置を歩行者位置検出部134から取得する。点灯制御部154は、顔の位置が取得された場合、顔の位置に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を顔の位置よりも下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御する。
【0041】
このように歩行者の顔の位置にいったん光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を歩行者の顔の位置よりも下方に移動させることにより、歩行者に車両の存在を認識させるとともに、歩行者に与えるグレアを抑制することができる。また、歩行者の顔の位置よりも下方に照射領域の上端が移動した後も引き続き歩行者位置に向けて光が照射されることから、運転者にも歩行者位置を適切に認識させることができる。
【0042】
図5は、第1の実施形態における歩行者の顔の位置の検出方法を示す図である。歩行者位置検出部134は、カメラ132によって撮像され生成された画像データを解析して、
図5に示すような人間の形状の歩行者画像を特定する。このような歩行者画像の特定方法は公知であるため説明を省略する。歩行者位置検出部134は、歩行者画像のうち幅が所定条件を満たして縮小した先の部分を顔の位置として検出する。
【0043】
具体的には、歩行者位置検出部134は、歩行者画像の延在方向の長さL1とし、L1と平行に所定長さごとの測定ポイントを設ける。歩行者位置検出部134は、下方の測定ポイントから、L1と垂直な方向の幅、すなわちこの部分の幅W2を算出する。歩行者位置検出部134は、(その部分の幅W2/歩行者画像の幅W1)が所定値以下となるか否かを判定する。第1の実施形態では、この所定値は0.7に設定されている。なお、所定値が0.7以外の値であってもよいことは勿論であり、所定値がゼロより大きく1未満の値に設定されてもよい。歩行者位置検出部134は、この判定を測定ポイントを上方に移動させながら繰り返す。(その部分の幅W2/歩行者画像の幅W1)が所定値以下となった場合、歩行者位置検出部134は、その測定ポイントから上方の部分L2を、歩行者の顔の位置と判定する。
【0044】
図6は、歩行者スポットライトモードにおける照射制御の実行手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおける処理は、モードスイッチ122が操作され歩行者スポットライトモードの開始要求が取得されたときに開始する。開始された当該処理は、モードスイッチ122が操作され歩行者スポットライトモードの終了要求が取得されるまで所定時間毎に繰り返し実行される。
【0045】
点灯制御部154は、歩行者位置取得部152によって歩行者位置が取得されたか否かを判定することで、歩行者位置が検出されたか否かを判定する(S10)。歩行者位置が検出されていない場合(S10のN)、車両前方に歩行者が存在しないと判定して本フローチャートにおける処理を一旦終了する。なお、歩行者が車両用スポットランプ10による照射可能領域の内部から外部に移動したなどによって、歩行者位置が検出されていない領域に対応する発光素子24が点灯していた場合、点灯制御部154は、その発光素子24を消灯させる。
【0046】
歩行者位置が検出された場合(S10のY)、点灯制御部154は、その歩行者位置が検出されてから所定時間を経過したか否かを判定する(S12)。所定時間を経過していない場合(S12のN)、点灯制御部154は、第1領域に光を照射する(S16)。第1の実施形態では、「第1領域」とは、歩行者位置の領域と、歩行者位置から車両寄りの領域を合わせた領域をいう。第1の実施形態では、所定時間として0.5秒が設定されている。なお、所定時間がこれに限られないことは勿論である。
【0047】
所定時間を経過した場合(S12のY)、点灯制御部154は、第2領域に光を照射する(S14)。第1の実施形態では、「第2領域」とは、第1領域から歩行者の顔の位置を含む領域を削除した領域をいう。上述のように歩行者位置検出部134は、歩行者位置が検出されたときに、歩行者の顔の位置も検出する。歩行者位置取得部152は、顔の位置を歩行者位置検出部134から取得する。点灯制御部154は、取得された顔の位置を含む領域を第1領域から削除することで、第2領域を画定する。こうして点灯制御部154は、顔の位置に光を照射した後に、光が照射されている領域の上端を顔の位置よりも下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御する。
【0048】
また、点灯制御部154は、歩行者位置に所定時間光を照射したときに、光が照射されている領域の上端を下方に移動させるよう車両用スポットランプによる光の照射を制御する。このように歩行者位置に所定時間光を照射することにより、歩行者に車両の存在を適切に認識させることができる。なお、歩行者位置に光を照射する所定時間は、一定でもよく、例えば歩行者位置または車速に応じて変化させてもよい。
【0049】
また、歩行者位置取得部152は、顔の位置を取得しなくてもよい。点灯制御部154は、第1領域に光を照射した後、第1領域から最上位の領域を削除した第2領域に光を照射させてもよい。歩行者の顔の位置は歩行者位置の最上位に通常位置する。このため、第1領域から最上位の領域を削除することで、歩行者の顔に光を照射させる可能性を低減させることができ、歩行者に与えるグレアを抑制することができる。
【0050】
図7(a)は、歩行者位置が検出され、第1領域に光を照射したときの一例を示す図である。歩行者H1の例では、歩行者位置は、領域R61、R62にまたがっている。このため、第1領域は、歩行者位置である領域R61、R62と、歩行者位置より車両寄りの領域である領域R63とによって構成される。点灯制御部154は、この第1領域に光を照射すべく、発光素子24P61、P62、P63を点灯させる。
【0051】
歩行者H2の例では、歩行者位置は領域R41となっている。このため、第1領域は、歩行者位置である領域R41と、歩行者位置より車両寄りの領域である領域R42、R43とによって構成される。点灯制御部154は、この第1領域に光を照射すべく、発光素子24P41、P42、P43を点灯させる。
【0052】
歩行者H3の例では、歩行者位置は領域R21、R22、R23となっている。このため、第1領域は、歩行者位置である領域R21、R22、R23によって構成される。点灯制御部154は、この第1領域に光を照射すべく、発光素子24P21、P22、P23を点灯させる。
【0053】
図7(b)は、
図7(a)の状態から所定時間が経過し、第2領域に光を照射したときの一例を示す図である。歩行者H1の例では、歩行者位置は領域R61と領域R62とにまたがっているが、歩行者の顔の位置は領域R61となっている。このため点灯制御部154は、第1領域である領域R61、R62、R63から、顔の位置を含む領域R61を削除した領域R62、R63を第2領域とする。点灯制御部154は、領域R62、R63への光の照射を継続するため発光素子24P62、P63の消灯を回避して点灯を継続させるが、領域R61への光の照射を停止させるため発光素子24P61を消灯させる。
【0054】
これにより、歩行者H1の顔に所定時間光を照射させることができるため、歩行者に車両の存在を適切に認識させることができる。また、所定時間経過後も、歩行者H1の顔から下の部分と、歩行者H1から車両寄りの路面に光を照射させることができる。このため、歩行者H1へのグレアの付与を抑制しつつ、運転者に引き続き歩行者H1の位置を適切に認識させることができる。
【0055】
歩行者H2の例では、歩行者位置も顔の位置も領域R41となっている。このため点灯制御部154は、第1領域である領域R41、R42、R43から、顔の位置を含む領域R41を削除した領域R42、R43を第2領域とする。点灯制御部154は、領域R42、R43への光の照射を継続するため発光素子24P42、P43の消灯を回避して点灯を継続させるが、領域R41への光の照射を停止させるため発光素子24P41を消灯させる。
【0056】
これにより、歩行者H2の顔に所定時間光を照射させることができるため、歩行者に車両の存在を適切に認識させることができる。また、所定時間経過後も、歩行者H2から車両寄りの路面に光を照射させることができる。このため、歩行者H2へのグレアの付与を抑制しつつ、運転者に引き続き歩行者H2の位置を適切に認識させることができる。
【0057】
なお、この場合、所定時間経過後は歩行者H2の顔から下の部分に光を照射させることが困難となる。このため、歩行者位置検出部134は、歩行者位置を含む領域と顔の位置を含む領域が同一の場合、運転者が歩行者を視認できることを優先するため、顔の位置の領域への光の照射停止を回避してもよい。この場合、歩行者にグレアを与える可能性が高まるが、歩行者に引き続き光を照射することができ、運転者に歩行者の存在を適切に認識させることができる。
【0058】
歩行者H3の例では、歩行者位置は領域R21、R22、R23とにまたがっており、歩行者の顔の位置も領域R21、R22にまたがっている。このため点灯制御部154は、第1領域である領域R21、R22、R23から、顔の位置を含む領域R21、R22を削除した領域R23を第2領域とする。点灯制御部154は、領域R23への光の照射を継続するため発光素子24P23の消灯を回避して点灯を継続させるが、領域R21、R22への光の照射を停止させるため発光素子24P21、P22を消灯させる。
【0059】
歩行者H3の例においても、所定時間経過後も、歩行者H3の顔から下の部分と、歩行者H3から車両寄りの路面に光を照射させることができる。このため、歩行者H3へのグレアの付与を抑制しつつ、運転者に引き続き歩行者H3の位置を適切に認識させることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態における歩行者の顔の位置の検出方法を示す図である。なお、特に言及しない限り、第2の実施形態に係る車両用スポットランプ10の構成および動作は、第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
歩行者位置検出部134は、カメラ132によって撮像され生成された画像データを解析して特定した歩行者画像のうち、高さ方向において所定割合を占める上部を顔の位置として検出する。具体的には、歩行者位置検出部134は、歩行者画像のうち3分の1を占める上部を顔の位置として検出する。なお、所定割合が3分の1に限られないことは勿論であり、例えば4分の1、5分の1、など、ゼロより大きく1未満の別の割合に設定されてもよい。例えば歩行者がかがんでいても、歩行者画像のうち3分の1を占める上部であれば、顔が位置する可能性が高い。このため、このように顔の位置を検出することにより、より簡易に顔の位置を検出することができる。
【0062】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0063】
ある変形例では、車両用スポットランプは、例えばモータなどのアクチュエータを作動させることによって傾斜角度を変更可能に設けられており、これによって照射方向を鉛直方向に変更可能に設けられている。なお、このようにアクチュエータによって鉛直方向に照射方向を変更可能とする技術は公知であるため、その構成についての詳細な説明は省略する。この場合、光源として、平面状に並べられた発光素子による発光素子ユニット22に代えて、例えば単一のハロゲンランプ、放電灯、または半導体発光素子によって構成されてもよい。
【0064】
この場合、スポットランプECU150は、アクチュエータの作動を制御することにより車両用スポットランプによる光の鉛直方向の照射方向を制御する照射方向制御部を有する。照射方向制御部は、歩行者位置が取得された場合、歩行者位置に光が照射される第1の方向に光を照射した後、第1の方向から下方に照射方向を移動させるよう、車両用スポットランプの照射方向を制御する。これによっても、光の照射方向を下方に移動させることで歩行者の顔の位置に光を照射させる可能性を抑制でき、歩行者に与えるグレアを抑制することができる。
【0065】
具体的には、歩行者位置検出部134は、歩行者の顔の位置を検出する。顔の位置の検出方法は上述と同様である。照射方向制御部は、顔の検出が取得された場合、顔の位置を含むよう第1の方向に光を照射した後、第1の方向から顔の位置への光の照射が回避されるまで下方に照射方向を移動させるよう、車両用スポットランプの照射方向を制御する。また、この場合も照射方向制御部は、第1の方向に所定時間光が照射されたとき、第1の方向から下方に照射方向を移動させるよう車両用スポットランプの照射方向を制御する。
【0066】
ある別の変形例では、車両用スポットランプは、アクチュエータをさせてシェードを駆動することにより、光が照射されている領域の上端を下方に移動可能に設けられている。この場合も、スポットランプECU150は、アクチュエータの作動を制御することにより、光が照射されている領域の上端の下方への移動を制御する照射制御部を有する。照射制御部は、歩行者位置が取得された場合、歩行者位置を含む領域に光を照射した後に、アクチュエータを作動させて、光が照射されている領域の上端を下方に移動させる。この場合も、照射制御部は、顔の位置に光を照射した後に、アクチュエータを作動させて、光が照射されている領域の上端を顔の位置よりも下方に移動させる。これによっても、歩行者に車両の存在を適切に認識させるとともに、歩行者のグレアを抑制しつつ運転者に歩行者の位置を適切に認識させることができる。
【0067】
ある別の変形例では、歩行者位置検出部134は、歩行者の足の位置を検出する。歩行者の足の位置の検出方法は公知であるため説明を省略する。点灯制御部154は、歩行者が移動しているか停止しているかを判定する。歩行者が移動している場合、点灯制御部154は、その歩行者の足を照射し、足よりも上方への光の照射を回避するよう、複数の発光素子24の点灯を制御する。歩行者が停止している場合、足の上端を正確に検出することが困難なため、点灯制御部154は、歩行者の全体に光を照射するよう、複数の発光素子24の点灯を制御する。
【0068】
ある別の変形例では、車両に車速センサが設けられている。点灯制御部154は、歩行者位置または車速センサによって検出された車速に基づいて危険度を算出する。例えば、点灯制御部154は、歩行者位置を用いて歩行者までの距離を推定し、この距離を車速で割ることで歩行者までの推定到達時間を算出する。この推定到達時間が所定時間以下になったときに、危険度が大きくなったと判定する。点灯制御部154は、歩行者スポットランプモードにおいて、危険度が大きいときに歩行者位置が検出された場合に、歩行者位置に向けて上述のように光を照射し、危険度が大きくないときは歩行者位置が検出された場合であっても、歩行者位置に向けた光の照射を回避する。
【0069】
ある別の変形例では、点灯制御部154は、歩行者画像の鉛直方向の長さを用いて、歩行者が子供か否かを判定する。歩行者が子供と判定した場合、点灯制御部154は、歩行者位置を含む領域への光の照射を回避し、歩行者位置から車両寄りの領域にのみ光が照射されるよう、複数の発光素子24の点灯を制御する。なお、点灯制御部154は、歩行者が子供と判定した場合、点灯制御部154は、歩行者の顔の位置を含む領域への光の照射を回避し、顔の位置から車両よりの領域にのみ光が照射されるよう、複数の発光素子24の点灯を制御してもよい。
【0070】
ある別の変形例では、複数の発光素子24の各々の水平方向の長さが、上述の発光素子24よりも細く形成されている。点灯制御部154は、複数の発光素子24の各々に対し、供給する電力を制御することにより、複数の発光素子24の各々の光度を制御する。点灯制御部154は、水平方向に強弱パターンが設けられるよう、複数の発光素子24の各々の光度を制御する。例えば、点灯制御部154は、水平方向に並ぶ複数の発光素子24の光度を、強、弱、強、弱などとして強弱パターンを設けてもよい。