特許第5872877号(P5872877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872877
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】薄膜太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/076 20120101AFI20160216BHJP
【FI】
   H01L31/06 510
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-274509(P2011-274509)
(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-65805(P2013-65805A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年7月16日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0093029
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ ドンジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ビュンキ
(72)【発明者】
【氏名】リ ホンミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン スンテ
(72)【発明者】
【氏名】リ スンウン
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135053(JP,A)
【文献】 特開2011−060811(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140371(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/007593(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/07
H01L 31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の中央領域に位置し、第1光電変換部をそれぞれ含む少なくとも一つの第1セルと、
前記基板の端領域に位置し、第1光電変換部をそれぞれ含む少なくとも一つの第2セルと
を含み、
前記第1セルの前記第1光電変換部と前記第2セルの前記第1光電変換部は同一層に位置し、同一の物質で形成され、前記第2セルの前記第1光電変換部は前記第1セルの前記第1光電変換部より高いバンドギャップエネルギーを有する、薄膜太陽電池モジュール。
【請求項2】
記第1セルと前記第2セルの開放電圧相対量{(第2セルの開放電圧)/(第1セルの開放電圧)}と短絡電流密度の相対量{(第1セルの短絡電流密度)/(第2セルの短絡電流密度)}は100%乃至120%をそれぞれ満足する、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項3】
記第1セルと前記第2セルの開放電圧相対量{(第2セルの開放電圧)/(第1セルの開放電圧)}と短絡電流密度の相対量{(第1セルの短絡電流密度)/(第2セルの短絡電流密度)}は 102%乃至105%をそれぞれ満足する、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第2セルの前記第1光電変換部の開放電圧は前記第1セルの前記第1光電変換部の開放電圧より高い、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記第1セルの前記第1光電変換部の短絡電流密度は前記第2セルの前記第1光電変換部の短絡電流密度より高い、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項6】
記第2セルは前記基板の端から4cm以内に位置する、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記第1セルの前記第1光電変換部と前記第2セルの前記第1光電変換部は非晶質シリコンゲルマニウム(a−SiGe)を含む真性半導体層をそれぞれ含み、
記第1セルの前記第1光電変換部の真性半導体層は前記第2セルの前記第1光電変換部の真性半導体層より高い濃度でゲルマニウムを含む、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項8】
記第1セルの前記第1光電変換部の真性半導体層に含まれたゲルマニウム濃度は前記端領域近くなるほど減少する、請求項記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項9】
記第1セルの前記第1光電変換部の真性半導体層のバンドギャップエネルギーは前記端領域近くなるほど増加する、請求項記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記第1セルの前記第1光電変換部と前記第2セルの前記第1光電変換部は微結晶シリコン(μc−Si)を含む真性半導体層をそれぞれ含み、
記第1セルの前記第1光電変換部の真性半導体層は前記第2セルの前記第1光電変換部の真性半導体層より高い結晶化度を有する、請求項1記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項11】
記第2セルの前記第1光電変換部の結晶化度は前記第1セルの前記第1光電変換部の結晶化度に比べて7%乃至10%が低い、請求項10記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項12】
記第1セルの前記第1光電変換部の真性半導体層に接触する少なくとも一つのシード層と、
記第2セルの前記第1光電変換部の真性半導体層に接触する少なくとも一つのシード層をさらに含む、請求項10記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項13】
記第1セルの前記第1光電変換部と接触する少なくとも一つのシード層は前記第2セルの前記第1光電変換部と接触する少なくとも一つのシード層より高い結晶化度を有する、請求項12記載の薄膜太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近石油や石炭のような既存エネルギー資源の枯渇が予測されながらこれらを代替する代替エネルギーに対する関心が高くなり、これによって太陽エネルギーから電気エネルギーを生産する太陽電池が注目されている。
【0003】
シリコンウェハなどを利用する単結晶バルクシリコンは現在商用化になっているが製造単価が高くて積極的な活用ができない状況である。
【0004】
このような問題を解決するために近来には薄膜太陽電池に関する研究が活発に成り立っている。特に非晶質シリコン(a−Si:H)を利用した薄膜太陽電池は大面積の太陽電池モジュールを低価で製作することができる技術として注目されている。
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
〔特許文献1〕米国特許出願公開第2008/0121264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、効率が向上した薄膜太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明の一側面による太陽電池モジュールは、基板と、基板の中央領域に位置し、少なくとも一つの光電変換部を含む少なくとも一つの第1セルと、基板の端領域に位置し、少なくとも一つの光電変換部を含む少なくとも一つの第2セルを含み、互いに同一である層に位置する光電変換部において、少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部は少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部より高いバンドギャップエネルギーを有する。
【0007】
少なくとも一つの第1セルと少なくとも一つの第2セルの電圧相対量{(第2セルの電圧)/(第1セルの電圧)}と電流相対量{(第1セルの電流)/(第2セルの電流)}は100% 乃至120%をそれぞれ満足し、望ましくは、少なくとも一つの第1セルと少なくとも一つの第2セルの電圧相対量{(第2セルの電圧)/(第1セルの電圧)}と電流相対量{(第1セルの電流)/(第2セルの電流)}が102%乃至105%をそれぞれ満足する。
【0008】
少なくとも一つの第2セルの電圧は少なくとも一つの第1セルの電圧より高く、少なくとも一つの第1セルの電流は少なくとも一つの第2セルの電流より高い。
【0009】
少なくとも一つの第2セルは基板の端から4cm以内に位置することができる。
【0010】
互いに同一である層に位置する少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部と少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部は非晶質シリコンゲルマニウム(a−SiGe)を含む真性半導体層をそれぞれ含むことができる。この時、 少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの真性半導体層は少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの真性半導体層より高い濃度でゲルマニウムを含む。
【0011】
そして少なくとも一つの第1セルのそれぞれの真性半導体層に含まれたゲルマニウム濃度は端領域に近くなるほど減少することができ、少なくとも一つの第1セルのそれぞれの真性半導体層のバンドギャップエネルギーは端領域に近くなるほど増加することができる。
【0012】
互いに同一である層に位置する少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部と少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部は微結晶シリコン(μc−Si)を含む真性半導体層をそれぞれ含むことができる。この時、少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの真性半導体層は少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの真性半導体層より高い結晶化度を有することができ、少なくとも一つの第2セルの結晶化度は少なくとも一つの第1セルの結晶化度に比べ7%乃至10%が低いことがある。
【0013】
薄膜太陽電池モジュールは少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの真性半導体層に接触する少なくとも一つのシード層及び少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの真性半導体層に接触する少なくとも一つのシード層をさらに含むことができ、少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つのシード層は少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つのシード層より高い結晶化度を有することができる。
【0014】
このような特徴によれば、基板の中央領域に位置する少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部に比べ基板の端領域に位置する少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部のバンドギャップエネルギーが大きくなるので、少なくとも一つの第2セルの電圧は少なくとも一つの第1セルに比べ相対的に増加し、少なくとも一つの第2セルの電流は少なくとも一つの第1セルに比べて相対的に減少する。
【0015】
したがって、少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部と少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部のバンドギャップエネルギーを調節し電圧相対量及び電流相対量が100%以上120%以下になるようにすれば、薄膜太陽電池の効率が増加する。
【発明の効果】
【0016】
このような特徴によれば、基板の中央領域に位置する少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部に比べて基板の端領域に位置する少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部のバンドギャップエネルギーが大きくなるので、少なくとも一つの第2セルの電圧は少なくとも一つの第1セルに比べて相対的に増加し、少なくとも一つの第2セルの電流は少なくとも一つの第1セルに比べて相対的に減少する。
【0017】
したがって、少なくとも一つの第1セルの少なくとも一つの光電変換部と少なくとも一つの第2セルの少なくとも一つの光電変換部のバンドギャップエネルギーを調節し電圧相対量及び電流相対量が100%以上120%以下になるようにすれば、薄膜太陽電池の効率が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る薄膜太陽電池モジュールの平面図である。
図2】第1セルと第2セルの電流-電圧(I−V)曲線を示すグラフである。
図3】電圧相対量と効率の関係を示すグラフである。
図4】電流相対量と効率の関係を示すグラフである。
図5図1の薄膜太陽電池モジュールに使われるセル構造を示す断面図として、2重接合型光電変換部を有するセルの断面図である。
図6図1の薄膜太陽電池モジュールに使われるセル構造を示す断面図として、3重接合型光電変換部を有するセルの断面図である。
図7】光電変換部に含有されたゲルマニウム(Ge)濃度とバンドギャップエネルギーの関係を示すグラフである。
図8】基板位置による光電変換部のゲルマニウム濃度を示すグラフである。
図9】基板位置による光電変換部のバンドギャップエネルギーを示すグラフである。
図10図1の薄膜太陽電池モジュールに使われる3重接合型セル構造を示す断面図として、シード層を含むセルの断面図である。
図11】シード層の結晶化度による結晶質シリコンの結晶化度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では添付した図面を参照して本発明の実施の形態に対して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし本発明はいろいろ異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施の形態に限定されない。そして図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
【0020】
図で多くの層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あると言う時、これは他の部分「真上に」ある場合だけではなくその中間に他の部分がある場合も含む。反対に何れの部分が他の部分「真上に」あると言う時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0021】
また何れの部分が他の部分上に「全体的」に形成されていると言う時には他の部分の全体面(または全面)に形成されていることだけでなく端一部には形成されないことも含む。
【0022】
以下、添付図面を参照し本発明の実施の形態に係る薄膜太陽電池モジュールに対して説明する。
【0023】
先ず、図1を参照すれば、本発明に係る薄膜太陽電池モジュール10は基板100と基板100の上部に配置される複数の薄膜太陽電池200を含む。
【0024】
基板100は中央領域A1及び前記中央領域A1の端に位置する端領域A2を含み、複数の薄膜太陽電池200は中央領域A1と端領域A2にそれぞれ位置する。
【0025】
以下、本発明を説明するにおいて、中央領域A1に位置する複数の薄膜太陽電池は第1セル(C1)(cell)といって、端領域A2に位置する複数の薄膜太陽電池は第2セル(C2)という。
【0026】
大面積の薄膜太陽電池モジュールは通常1.1×1.3m2、1.1×1.4m2、2.2×2.6m2の大きさで市場で流通しており、1.1×1.3m2及び1.1×1.4m2の薄膜太陽電池モジュールは100個以上のセル(cell)を含む。
【0027】
本発明は第1セル(C1)と第2セル(C2)の特性を制御し大面積モジュールの効率を向上するためのもので、本発明の説明において第2セル(C2)は基板の端で4cm以内の端領域A2に位置するセルで定義し、第1セル(C1)は端領域A2の間の中央領域A1に位置したセルで定義する。したがって、第1セル(C1)は第2セル(C2)を除いた残りの全体セルである。
【0028】
以上では端領域A2が基板の端で4cmであることを例にあげて説明するが、モジュールの大きさが増加することによって端領域A2の寸法も増加することができる。
【0029】
図2は第1セルと第2セルの電流-電圧(I−V)曲線を示すグラフである。図2で、 実線は第1セル(C1)の電流-電圧曲線を示し、点線は第2セル(C2)の電流-電圧曲線を示す。
【0030】
図3は電圧相対量と効率の関係を示すグラフであり、図4は電流相対量と効率の関係を示すグラフとして、電圧相対量は{(第2セルの電圧)/(第1セルの電圧)}を百分率で示すことで、電流相対量は{(第1セルの電流)/(第2セルの電流)}を百分率で示すことである。
【0031】
図3及び図4を参照すれば、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ100%以上120% 以下の時のモジュールの効率が増加しモジュールパワーも最大化できることが分かる。
【0032】
以下では電圧相対量と電流相対量がそれぞれ前記した範囲を満足する薄膜太陽電池モジュールに対して説明する。
【0033】
図5図1の薄膜太陽電池モジュールに使われるセル構造を示す断面図として、2重接合型光電変換部を有するセルの断面図である。
【0034】
以下の実施の形態を説明するにおいて、第1セルと第2セルは互いに同一である構造に形成されるので、以下では第1セルの断面構造に対してだけ説明する。
【0035】
図5に示したように、第1セル(C1)は基板100上に順次に積層される第1電極110、光電変換部(PV)及び第2電極120を含む。
【0036】
第1電極110は透明な導電性物質、例えば酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、またはインジウムスズオキサイド(ITO)の内で選択された少なくとも一つの物質で成ることができる。また、透明な導電性物質に一つ以上の不純物を混合した混合物質から成り得る。
【0037】
第1電極110上に位置する光電変換部(PV)は基板100の入射面に入射される光を電気に変換する機能を持つもので、単一接合型、2重接合型または3重接合型構造の内の一つであることがあり、本実施の形態では2重接合型光電変換部に対して説明する。
【0038】
本実施の形態の光電変換部(PV)は第1電極110 上に位置する第1光電変換部(PV1)と、 第1光電変換部(PV1)と第2電極120の間に位置する第2光電変換部(PV2)をさらに含む。
【0039】
第1光電変換部(PV1)は非晶質シリコン(amorphous silicon: a−Si)を含み、近紫外線、紫、青などのような短波長帯域の光を主に吸収する。
【0040】
このような第1光電変換部(PV1)は第1電極120上に順次に積層された第1p型半導体層(PV1−1)、第1真性半導体層(PV1−2)、そして第1n型半導体層(PV1−3)を含む。
【0041】
第1p型半導体層(PV1−1)はシリコン(Si)を含む原料ガスにホウ素、ガリウム、インジウムなどのような3価元素の不純物を含むガスを混合して形成されることができる。本実施の形態で第1p型半導体層(PV1−1)はa−Siまたはa−Si:Hに形成されることができる。
【0042】
第1真性半導体層(PV1−2)はキャリアの再結合率を減らし光を吸収するためのもので、電子と正孔のようなキャリアがここで主に生成される。このような第1真性半導体層(PV1−2)はa−Siまたはa−Si:Hで形成されることができ、 約200nm乃至300nmの厚さを有することができる。
【0043】
第1n型半導体層(PV1−3)はシリコンを含む原料ガスにりん(P)、砒素(As)、 アンチモン(Sb)などのように 5価元素の不純物を含むガスを混合して形成されることができる。
【0044】
このような第1光電変換部(PV1)はプラズマ化学気相成長(plasma enhanced chemical vapor deposition、PECVD)のような化学気相成長(chemical vapor deposition、CVD)によって形成されることができる。
【0045】
第1光電変換部(PV1)の第1p型半導体層(PV1−1)及び第1n型半導体層(PV1−3)のような半導体層は第1真性半導体層(PV1−2)を間に置いてp−n接合を形成し、これによる光起電力効果(photovoltatic effect)によって第1真性半導体層(PV1−2)で生成された電子と正孔は接触電位差によって分離して互いに異なる方向に移動する。
【0046】
例えば、正孔は第1p型半導体層(PV1−1)を通じて第1電極110 の方に移動し、電子は第1n型半導体層(PV1−3)を通じて第2電極120の方へ移動する。
【0047】
第2光電変換部(PV2)は微結晶シリコン(μc−Si)を含み、赤色から近赤外線までの長波長帯域の光を主に吸収する。
【0048】
第2光電変換部(PV2)は第1光電変換部(PV1)の第1n型半導体層(PV1−3)上に順次形成された第2p型半導体層(PV2−1)、第2真性半導体層(PV2−2)、そして第2n型半導体層(PV2−3)を含み、この半導体層は第1光電変換部(PV1)と同様にPECVDのようなCVDにより形成されることができる。
【0049】
第2p型半導体層(PV2−1)はシリコンを含む原料ガスにホウ素、ガリウム、 インジウムなどのような3価元素の不純物を含むガスを混合して形成される。
【0050】
第2真性半導体層(PV2−2)はキャリアの再結合率を減らし光を吸収するためのものである。これにより、 第2真性半導体層(PV2−2)は印加される長波長帯域の光を主に吸収し電子と正孔をここで主に生成する。
【0051】
本実施の形態で、第2真性半導体層(PV2−2)は微結晶シリコン(μc− Si)またはドーピングされた微結晶シリコン(μc− Si:H)に形成され、第2真性半導体層(PV2−2)の厚さは長波長成分の太陽光を充分に吸収するために第1真性半導体層(PV1−2)の厚さより厚いことがある。
【0052】
第2n型半導体層(PV2−3)はシリコンを含む原料ガスにりん(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)などのように5価元素の不純物を含むガスを混合して形成されることができる。
【0053】
第2光電変換部(PV2)の第2p型半導体層(PV2−1)及び第2n型半導体層(PV2−3)は第2真性半導体層(PV2−2)を間に置いてp−n接合を形成し、これによって生成された正孔は第2p型半導体層(PV2−1)を通じて第1電極110の方に移動し収集され、生成された電子は第2n型半導体層(PV2−3)を通じて第2電極120の方に移動し収集される。
【0054】
光電変換部(PV)上に位置する第2電極120は金(Au)、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)の内から選択される一つの金属から成り得、光電変換部(PV)で吸収さできなかった光を光電変換部(PV)の方に反射する反射層をさらに含むことができる。
【0055】
このような構造のセルを有する薄膜太陽電池モジュールにおいて、第1セルと第2セルの電圧相対量{(第2セルの電圧)/(第1セルの電圧)}と電流相対量{(第1セルの電流)/(第2セルの電流)}は100%乃至20%をそれぞれ満足し、望ましくは、第1セルと第2セルの電圧相対量{(第2セルの電圧)/(第1セルの電圧)}と電流相対量{(第1セルの電流)/(第2セルの電流)}が102%乃至105%をそれぞれ満足する。
【0056】
電圧相対量と電流相対量が前記した範囲を満足するようにするために、本実施の形態では第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)と第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーが互いに異なる大きさに形成される。
【0057】
さらに具体的に説明すれば、第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーは第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーより大きく形成される。したがって、第2セル(C2)の電圧は第1セル(C1)の電圧より高く、第1セル(C1)の電流は第2セル(C2)の電流より大きい。
【0058】
ここで、第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーを第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーより大きく形成するため、第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度を第2セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)の決定化度より高く形成する。
【0059】
第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度はラマン(Raman)散乱を利用して測定し、 下の表1は第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度による電圧相対量、電流相対量及び効率を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1を参照すれば、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ100%未満の場合と120%を超過する場合には効率が大きく低下し、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ100%以上120% 以下の場合には効率が良いことが分かった。
【0062】
特に、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ102%以上105%以下の場合効率が一番良いことが分かるが、表1を参照すれば、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ102%以上105%以下を満足する場合には第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度が第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度に比べて7%乃至10%低いことが分かる。したがって、第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度を第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度に比べ 7%乃至10%低く形成するのが望ましい。
【0063】
図6図1の薄膜太陽電池モジュールに使われるセル構造を示す断面図として、3重接合型光電変換部を有するセルの断面図である。
【0064】
3重接合型光電変換部を有するセルにおいて、第1光電変換部は非晶質シリコンを含み、第2光電変換部は非晶質シリコンゲルマニウム(a−SiGe)または微結晶シリコンを含み、第3光電変換部は微結晶シリコン(μc−Si)または微結晶シリコンゲルマニウム(μc−SiGe)を含むことができる。
【0065】
これに、本実施の形態では第1光電変換部(PV1)が非晶質シリコンを含み、第2光電変換部(PV2)が非晶質シリコンゲルマニウムを含み、 第3光電変換部(PV3)が微結晶シリコンを含む場合を例であげて説明する。
【0066】
第1光電変換部乃至第3光電変換部(PV1、PV2、PV3)が前述の図5の実施の形態と同じくそれぞれp−i−n構造に形成されるので、以下では第3光電変換部に対してだけ説明する。
【0067】
第3光電変換部(PV3)は第3p型半導体層(PV3−1)、第3真性半導体層(PV3−2)及び第3n型半導体層(PV3−3)を含む。
【0068】
3重接合型の光電変換部(PV)は第1光電変換部(PV1)と第2光電変換部(P2)で吸収されない光が入射されるので、第3真性半導体層(PV3−2)には少ない量の光が入射する。したがって、第3真性半導体層(PV3−2)の厚さが第2真性半導体層(PV2−2)より厚いと十分な光吸収をすることができる。これに、本実施の形態では第3真性半導体層(PV3−2)を2μm乃至3μmの厚さで形成した。参照のため、図5の実施の形態では第2真性半導体層(PV2−2)を1.5μmの厚さで形成した。
【0069】
一方、示さなかったが、第2光電変換部(PV2)と第3光電変換部(PV3)の間には中間反射膜が位置することもできる。
【0070】
このような構造のセルで、第1セル(C1)と第2セル(C2)の電圧及び電流を調節し電圧相対量及び電流相対量を調節するため、図5の実施の形態と類似の方法で第1セル(C1)の第3真性半導体層(PV3−2)と第2セル(C2)の第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度を調節し、第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度による電圧相対量、電流相対量及び効率を下の表2に示した。
【0071】
表2を参照すれば、図5に示した実施の形態の結果を示す表1と同様の結果を示すことが分かる。
【0072】
すなわち、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ100% 未満の場合と120%を超過する場合には効率が大きく低下し、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ100%以上120%以下の場合には効率が良いことが分かった。
【0073】
また、電圧相対量と電流相対量がそれぞれ102%以上105%以下の場合効率が一番優秀であり、このために、第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度を第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)の結晶化度に比べて7%乃至10%低く形成するのが望ましいことが分かった。
【0074】
【表2】
【0075】
以上では第3光電変換部(PV3)の第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度を第1セル(C1)と第2セル(C2)で互いに異なるように形成することを例にあげて説明したが、電圧相対量及び電流相対量を調節するために第2真性半導体層(PV2−2)に含有されたゲルマニウム(Ge)の濃度を調節し第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)と第2セル(C2)の第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーを調節することも可能である。
【0076】
図7は光電変換部に含有されたゲルマニウム(Ge)濃度とバンドギャップエネルギーの関係を示すグラフを示したもので、図7を参照すれば第2真性半導体層(PV2−2)に含有されたゲルマニウムの濃度によってバンドギャップエネルギーの調節が可能であることが分かる。
【0077】
したがって、PECVDを利用し第2真性半導体層(PV2−2)を蒸着する時、工程変数である電極間のギャップ、H2、SiH4、GeH4を含む工程ガスの流量、ガス比(GeH4/SiH4)などを変化させれば、図8に示したように基板位置によって第2真性半導体層(PV2−2)のゲルマニウム濃度を異なるように形成することができる。
【0078】
したがって、第2真性半導体層(PV2−2)のゲルマニウム濃度を図8に示したグラフによって形成すれば、図9に示したように、第2真性半導体層(PV2−2)は基板位置によって他の大きさのバンドギャップエネルギーを有するようになる。
【0079】
図9はエリプソメータ(ellipsometer)を使って基板位置による第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップを測定したことで、第2セル(C2)のバンドギャップが第1セル(C1)のバンドギャップに比べて高く測定されたことが分かる。
【0080】
そして基板位置によって第2真性半導体層(PV2−2)に含有されたゲルマニウム濃度を調節する時、図9に示したように第1セル(C1)のそれぞれの第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーが端領域に位置した第2セル(C2)と近くなるほど増加するように調節することができる。
【0081】
このように、第1セル(C1)の第2真性半導体層(PV2−2)が第2セル(C2)の真性半導体層(PV2−2)に比べて高い濃度でゲルマニウムを含めば、第2セル(C2)は第1セル(C2)に比べて高いバンドギャップエネルギーを有する。
【0082】
下記の表3は第2真性半導体層(PV2−2)のバンドギャップエネルギーによる電圧相対量、電流相対量及び効率を示したもので、表3を参照すると、第1セル(C1)が第2セル(C2)に比べて低いバンドギャップエネルギーを有するようにすれば電圧相対量及び電流相対量を100%より高く有することができ、これを通じて相対的に高い効率を得ることができた。
【0083】
【表3】
【0084】
したがって、基板の位置によって第2真性半導体層(PV2−2)のゲルマニウム濃度を調節すれば、第1セル(C1)と第2セル(C2)の電圧相対量及び電流相対量が100%以上120%以下を満足するように形成することができる。
【0085】
以上では非晶質シリコンゲルマニウムを含む第2光電変換部(PV2)のゲルマニウム濃度を調節することに対して説明したが、第2光電変換部(PV2)と第3光電変換部(PV3)のバンドギャップエネルギーを一緒に調節することも可能である。
【0086】
この場合、非晶質シリコンゲルマニウムを含む第2光電変換部(PV2)のゲルマニウム濃度を調節する一方、微結晶シリコンを含む第3光電変換部(PV3)の結晶化度を一緒に調節することができる。
【0087】
図10図1の薄膜太陽電池モジュールに使われる3重接合型セル構造を示す断面図として、シード層を含むセルの断面図である。
【0088】
本実施の形態が前述の構造の3重接合型セルと異なることは微結晶シリコンを含む第3p型半導体層(PV3−1)と第3真性半導体層(PV3−2) の間に微結晶にされたシード層(PV3−4)を形成したことであり、他の構造は前述の実施の形態と同様に構成されることができる。
【0089】
以下の実施の形態では3重接合型セルを例にあげて説明するが、前記シード層(PV3−4)は図5に示した2重接合型セルで第2p型半導体層(PV2−1)と第2真性半導体層(PV2−2)の間に形成されることもできる。
【0090】
シード層(PV3−4)は蒸着初期に結晶性を充分に備えており後続蒸着する第3真性半導体層(PV3−2)の結晶成長を手伝ってくれる役目をする。
【0091】
したがって、図11に示したように、シード層(PV3−4)の結晶化度が高ければ後続蒸着する第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度が高くなり、シード層(PV3−4)の結晶化度が低ければ後続蒸着する第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度が低くなる。
【0092】
そして、シード層(PV3−4)の結晶化度は第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度と線形的に比例する。
【0093】
これを利用し、本実施の形態では基板位置によってシード層(PV3−4)の結晶化度を調節した。
【0094】
【表4】
【0095】
前記表4は基板の位置によってシード層(PV3−4)の結晶化度を調節し第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度を調節した結果を示すものである。
【0096】
基板位置によるシード層(PV3−4)の結晶化度は工程変数である電極間ギャップ、圧力、ガス流量及びガス比などを調節することによって調節することができる。
【0097】
このように、シード層(PV3−4)の結晶化度を調節し第3真性半導体層(PV3−2)の結晶化度を調節することで、第1セルと第2セルの電圧相対量及び電流相対量がそれぞれ100%乃至120%を満足するようにできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11