特許第5872881号(P5872881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872881バックリングが改善されたフィルムロールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872881
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】バックリングが改善されたフィルムロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 71/02 20060101AFI20160216BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B29C71/02
   G02B5/30
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-279080(P2011-279080)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-129090(P2013-129090A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀川 晃玄
(72)【発明者】
【氏名】安部 隆志
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 弘志
(72)【発明者】
【氏名】大西 誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡弘
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−244035(JP,A)
【文献】 特開平07−195381(JP,A)
【文献】 特開平03−114735(JP,A)
【文献】 特開昭61−143115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 71/02
B29C 35/00−35/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックリングが発生したフィルムロールを加熱してバックリングを改善させる加熱工程と、
加熱された前記フィルムロールを巻いた状態のまま、バックリングを改善させた状態を維持しながら徐々に冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とするバックリングが改善されたフィルムロールの製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程は、前記フィルムロールを30℃以上に加熱する工程であることを特徴とする請求項1に記載のバックリングが改善されたフィルムロールの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムロールは、ノルボルネン系フィルムにポリエチレン系フィルムを積層したものであり、前記冷却工程は、前記フィルムロールの冷却開始から15分間を初期冷却速度1.2℃/分未満で冷却する工程であることを特徴とする請求項1または2に記載のバックリングが改善されたフィルムロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイス用、包装用、工業用として広範に用いられる高分子フィルムをロール状に巻いたフィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどの表示装置に用いられる位相差フィルムや偏光板などの光学フィルムは、液晶パネルの軽量化や薄型化のために、その厚みを薄くする傾向にある。これらの光学フィルムは、フィルムメーカーで樹脂原料(ペレット)を長尺のフィルム形状に加工しロール状に巻取ってフィルムロールとされ、二次加工メーカーや液晶パネルメーカーへはフィルムロールの形で輸送・保管される。このように、フィルムロールは輸送・保管される際、夏場であれば高温に、また冬場であれば低温に曝されることになり、ロール状に巻取った直後には良好な状態であっても、周囲の温度変化が大きい環境下に置かれた場合、温度変化に伴って伸縮を繰り返す結果、一部が座屈してシワが発生する現象(以下、バックリングと称することがある)が見られる場合がある。特に、バックリングの発生は薄いフィルムを巻いたフィルムロールで顕著である。
【0003】
このバックリングは、フィルムロールの外観を著しく損ねるうえ、該フィルムロールからフィルムを引き出して次工程で使用する時、フィルムロールに生じたシワがフィルムの搬送や他のフィルムとの貼合時に副次的な問題を生じる可能性があるばかりでなく、光学フィルムの光学特性を劣化させてしまうという問題がある。このバックリングは、周囲の温度変化が大きい場合に、フィルムロールの巻き芯に近い部分と表層に近い部分との間に温度差が生じ、これらの間の熱膨張差や光学フィルムとプロテクトフィルムとの間の熱膨張差等によって生じるものである。
【0004】
バックリングの防止に関しては、例えば特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる長尺の光学フィルムの片面に該光学フィルムと熱膨張率の異なる熱可塑性樹脂からなる長尺の保護フィルムを剥離可能に積層してロール状に巻回したフィルムロール表面の少なくとも一部を断熱シートで覆うことにより、フィルムロールの輸送・保管時における温度変化に伴うバックリングの発生を抑え、光学フィルムの光学特性の劣化を抑制できることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸して薄い位相差フィルムとし、低温で長期間保管後、常温に戻した場合には、開梱したときシワなどの欠陥が生じているという課題に対し、その解決方法として、ロール状に巻き取った厚さが50μm以下の光学フィルムを、表面の熱輻射値が0.2未満の断熱シートで覆って梱包し保管することにより、温度変化を伴った環境下に保管された後でも、巻取り直後の良好な状態を維持できることが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている方法は、巻取り直後の良好な状態のフィルムロールを、輸送・保管する際にバックリングを生じさせない梱包方法であって、ひとたびバックリングの生じたフィルムロールを矯正し、バックリングを改善する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−221625
【特許文献2】特開2011−154256
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は既にバックリングが発生しているフィルムロールのバックリングを改善し、バックリングの発生していない巻き取り直後の良好な状態に改善するフィルムロールの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、バックリングの発生したフィルムロールを加熱してバックリングを改善させた後、冷却初期に該フィルムロールの冷却を徐々に行うことで、該フィルムロールに生じたバックリングが改善されたままの状態で冷却できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
(1)バックリングが発生したフィルムロールを加熱してバックリングを改善させる加熱工程と、加熱された前記フィルムロールを巻いた状態のまま、バックリングを改善させた状態を維持しながら徐々に冷却する冷却工程と、を備えるバックリングが改善されたフィルムロールの製造方法が提供され、
(2)前記加熱工程は、前記フィルムロールを30℃以上に加熱する工程である(1)に記載のバックリングが改善されたフィルムロールの製造方法が提供され、
(3)前記フィルムロールは、ノルボルネン系フィルムにポリエチレン系フィルムを積層したものであり、前記冷却工程は、前記フィルムロールの冷却開始から15分間を初期冷却速度1.2℃/分未満で冷却する工程である(1)または(2)に記載のバックリングが改善されたフィルムロールの製造方法、が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、ひとたびフィルムロールに生じたバックリングを、加熱後徐冷するという簡易かつ大量処理に向いた方法でバックリングが改善でき、得られたフィルムロールは正常品と同様に使用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フィルムロールを加熱、冷却した際のフィルムロール表面の温度変化を示す図である。
図2図1のフィルムロールを加熱、冷却した際の幅方向のフィルムロール表面の歪み変化を示す図である。
図3】加熱したフィルムロールを冷却した際のフィルムロール表面の温度変化を示す図である。
図4図3の加熱したフィルムロールを冷却した際の幅方向のフィルムロール表面の歪み変化を示す図である。
図5】初期冷却速度の求め方を説明するためのフィルムロールの冷却時間とフィルムロール表面温度との関係を示した図である。
図6】フィルムロールを加熱・冷却するためのフィルムロール用架台の一実施形態を示す正面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明が適用可能な熱可塑性樹脂からなる高分子フィルムとしては、光学フィルムやプロテクトフィルム、包装用および工業用フィルム、さらには、プロテクトフィルムを貼合した光学フィルム等を挙げることができる。特に、光学フィルムは透明性が要求され、外部ヘイズを小さくするためにその表面粗さが小さくなっており、結果として、ロール状に巻き取った際のフィルム同士が滑り難く、輸送・保管環境の温度変化による伸縮のためにバックリングが発生しやすい。
【0014】
光学フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、脂環式構造を有する重合体、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド等を挙げることができる。また、光学フィルムのプロテクトフィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を挙げることができる。これらのプロテクトフィルムは単層でも良く、軟質系ポリオレフィンを共押出しした多層フィルムであっても良く、さらには、その片面に粘着剤を塗布したプロテクトフィルムであっても良い。
【0015】
前記光学フィルムとしては、偏光子であるポリビニルアルコールおよび少なくともその片面に貼合される保護フィルム、偏光子へ保護フィルムを貼合した偏光フィルム、前記熱可塑性樹脂から得られたフィルムを所定の方向に延伸した位相差フィルム等を挙げることができる。
【0016】
包装用および工業用として用いられる高分子フィルムとしては、上記以外に、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリメチルペンテン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリパラキシレン、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる高分子フィルムの厚さは、100μm以下が好ましく、さらには60μm以下が好ましい。高分子フィルムの厚さが100μmを超える場合は、輸送・保管環境に急激な温度変化が起こってもバックリングが発生し難い。また、高分子フィルムの幅は500mm以上、好ましくは1000mm以上が好ましい。巻き長さは、500m以上、さらには1500m〜10000mが好ましい。高分子フィルムの巻き長さが短い場合は、ロールの巻き外と巻き芯との距離が短いために、輸送・保管時の温度が急激に変化しても、巻き外と巻き芯との間の温度差が小さく、バックリング現象が発生し難い。
【0018】
本発明に用いられる高分子フィルムは、熱可塑性樹脂をそれぞれの樹脂に応じた方法で、例えば、有機溶剤に溶解させた熱可塑性樹脂を金属製のバンドまたはドラムに流延し、溶剤を乾燥除去してフィルムを得る溶液流延法、カレンダー法、熱可塑性樹脂をその溶融温度以上に加熱・混練し、ダイより押出して冷却ドラムで冷却することによりフィルムを得る溶融押出法等により得ることができる。溶融押出法では、単層フィルムを得ることもできるし、共押出法にて多層フィルムを得ることもできる。さらに、任意の光学特性を付与するために延伸して位相差フィルムとしたり、偏光子に保護フィルムを貼合して偏光フィルムとしたりするなど、目的とする用途に応じた特性を持たせるために延伸や他のフィルムとの貼合などを行ってもよい。本発明で用いられるフィルムロールは、これらの方法で得られた高分子フィルムをロール状に巻き取ることにより得られる。
【0019】
これらの中でも、所定の方向に延伸して所望のレタデーション値が付与された位相差フィルムは、表面粗さが小さいためロール状に巻き取った際にフィルム同士が滑り難く、また延伸操作が施されて内部応力が残っているためか、保管・輸送中の温度変化に伴う膨張−収縮を繰り返す結果、最初の巻取り状態を維持できずにシワなどの欠陥(バックリング)を生じやすい。本発明は、このようなバックリングを生じたフィルムロールのバックリングを改善するのに有効である。
【0020】
次に、フィルムロールを加熱−冷却した時のフィルムロールの表面温度変化および表面の歪み変化を測定した試験方法について述べる。フィルムロールとしては、下記のバックリングが発生しているものを用いた。
<フィルムロール>
試験用のフィルムロールとして、ノルボルネン系位相差フィルム(厚み35μm)にポリエチレン製のプロテクトフィルム(厚み30μm)を貼合したフィルム(幅1240mm)を直径6インチの巻き芯(以下コアと称する)に2500m巻いたもので、バックリングが発生しているフィルムロールを用いた。
【0021】
<初期冷却速度>
フィルムロールの表面に貼り付けた線径0.1mmのK型熱電対と温度計測ユニットNR−TH08を備えたデータロガーNR−600(キーエンス社製)により1分間隔でフィルムロールの表面温度を測定し、図5に示すように、フィルムロール表面の温度が下がり始めた点(冷却開始点)より5分間隔で4点の温度データを抜き出し、フィルムロール表面温度を縦軸に、横軸に冷却開始時点からの経過時間をプロットした図を作成し、当該プロットに近似直線をあてはめたときの、直線の傾きを初期冷却速度(℃/分)とした。
【0022】
<フィルムロール表面の歪み測定>
フィルムロールの表面へシアノアクリレート系接着剤を用いて歪みゲージKFG−5−120−C1−11L3M3R(共和電業製)を取り付け、歪み計測ユニットNR−ST04を備えたデータロガーNR−600(キーエンス社製)にて1分毎にフィルムロール表面の歪みを測定した。なお、図2および図4に示すフィルムロール表面のロール幅方向の歪み、例えば、200μStrainは幅1mのフィルムロールが200μm伸びたことを、−200μStrainは幅1mのフィルムロールが200μm収縮したことを表している。
【0023】
<加熱−冷却によるフィルムロール表面温度および歪み変化>
本発明者等は、バックリングが発生したフィルムロールのバックリングを改善する方法について鋭意検討を行った。図1および図2は、厚さ35μmのノルボルネン系フィルムに厚さ30μmのポリエチレン製のプロテクトフィルムを貼合した幅1240mmのフィルムを6インチコアに2500m巻き取ったフィルムロールを加熱、冷却を繰り返した際のフィルムロールの表面温度とフィルムロール表面の幅方向の歪み変化を示したものである。フィルムロールは加熱により幅方向に膨張し、室温に戻すと幅方向に収縮し、その大きさは加熱温度が高くなると大きくなった。このように、フィルムロールは加熱により幅方向に膨張しており、加熱された状態ではバックリングが改善されているものと推察される。バックリングの改善に必要な温度は、バックリングの程度、フィルムの熱膨張率およびガラス転移温度などで変わるが、30℃以上、さらには35℃以上に加熱するのが好ましく、バックリングが改善する温度で加熱すればよい。
【0024】
また、加熱に必要な時間も、フィルムロールの材質や巻き長さによって変わる。前述したように、バックリングを改善するにはフィルムロールを加熱してフィルムロールを膨張させる必要がある。フィルムロールの表層付近の温度は短時間で所定の温度に上昇しているが(図1参照)、フィルムロールの巻き芯に近い部分の温度が所定の温度まで上昇するには、フィルムロール内部への熱拡散を待つ必要があるため時間を要する。この時間はフィルムの熱伝導率、フィルム層間に取り込まれた空気の量、フィルムの厚み、巻き長さなどによって変わるので、適宜選択する必要がある。
【0025】
バックリングが発生したフィルムロールをテストチャンバー内で60℃に加熱しバックリングを改善した後、異なる冷却速度で冷却した。具体的には、テストチャンバーの電源を切り、チャンバー入口を開放して外気を10分間送風し急冷したフィルムロール(初期冷却速度1.2℃/分)とチャンバーの設定温度を25℃にして徐冷したフィルムロール(初期冷却速度0.8℃/分)について、それぞれのロール表面の温度変化およびフィルムロール表面部分の歪み変化を測定し、その結果を図3および図4に示している。なお、この試験で急冷されたフィルムロールはバックリングによるシワが発生しており、徐冷されたフィルムロールにはバックリングは発生しなかった。
【0026】
この試験において、徐冷されたフィルムロールはチャンバーの設定温度を25℃に下げて冷却したが、チャンバー内で常にロール表面に風が当っており、フィルムロールの表面温度は、冷却開始から約40分後には急冷されたフィルムロールの表面温度よりも低くなった(図3参照)。それに伴い徐冷されたフィルムロール表面の歪みは急冷されたフィルムロールのそれよりも大きくなった(図4参照)が、バックリングは発生しなかった。通常、バックリングはロール表面の歪みが大きい程発生しやすいと考えられるが、この試験結果は予想に反しており、バックリングが発生するか否かはフィルムロール表面の歪みの大小でなく、冷却初期の歪み変化、言い換えれば、冷却初期の温度変化に依存しているものと推察される。この結果より、バックリングの発生を抑えるには、冷却開始から15分以内の初期の冷却を徐々に行うのが有効であり、初期冷却速度は1.2℃/分未満に設定することが好ましく、さらには、初期冷却速度は1.0℃/分以下が好ましいことが明らかになった。
【0027】
これらフィルムロールの加熱、冷却工程は、フィルムロールを適切な架台に設置して行うのが好ましい。例えば、図6に示すように、フィルムロール1のコア2に側板3を取り付け、運搬用パレット4に載置するといった方法があり、温度変化に伴って生じるフィルムロール1の膨張−収縮を拘束しないようフィルムロールを架台に宙吊りの状態に設置して行うのが好ましい。この際、フィルムロールをゴミ等による汚染から避けるため、ポリエチレンやポリプロピレン等からなるフィルムをフィルムロールに巻くのが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。以下の実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するものではない。
【0029】
[実施例1]
直径6インチのコアに、ポリエチレン製のプロテクトフィルム(厚み30μm)を貼合したノルボルネン系位相差フィルム(厚み35μm)を2500m巻いたフィルムロール(幅1240mm)で、バックリングが発生しているフィルムロールを60℃のテストチャンバーに入れ、8時間加熱した。加熱後のフィルムロールはバックリングが消失していた。その後、チャンバーの設定温度を25℃に変更しチャンバー内の温度を徐々に下げた。このときの初期冷却速度は0.7℃/分であった。チャンバーの設定温度を25℃にしてから16時間後にフィルムロールの表面を確認したところバックリングの発生は見られず、バックリングが改善された状態で常温まで戻すことができた。
【0030】
[実施例2]
実施例1で用いたバックリングの発生しているフィルムロールを40℃のテストチャンバー内で8時間加熱した。加熱後のロールはバックリングが消失していた。その後、チャンバーの設定温度を25℃に変更し、チャンバー内の温度を徐々に下げた。このときの初期冷却速度は0.6℃/分であった。チャンバーの設定温度を25℃に変更してから16時間後にフィルムロールの表面を確認したところバックリングの発生は見られず、バックリングが改善された状態で常温まで戻すことができた。
【0031】
[比較例1]
実施例1でバックリングが消失したフィルムロールを再び60℃のテストチャンバー内で8時間加熱した。加熱後のフィルムロールにはバックリングは見られなかった。次いでチャンバーの電源を切り、チャンバー入口を開放し、入口からファンにて10分間送風を行い、フィルムロール表面の温度を急激に低下させた。このときの初期冷却速度は1.2℃/分であった。フィルムロールの冷却開始後16時間経過後にフィルムロールの表面を確認した結果、バックリングが発生していた。
【0032】
[比較例2]
実施例1で用いたバックリングの発生しているフィルムロールを60℃のテストチャンバー内で8時間加熱した。加熱後のフィルムロールはバックリングが消失していた。チャンバーの電源を切り、チャンバー入口を開放し、入口からファンにて10分間送風を行い、フィルムロールの表面温度を急激に低下させた。このときの初期冷却速度は1.7℃/分であった。フィルムロールの冷却開始後16時間経過後にフィルムロールの表面を確認した結果、バックリングが発生していた。
【0033】
以上のように、実施例1および2は、バックリングの発生しているフィルムロールを加熱しバックリングを消失させた後、初期冷却速度1.2℃/分未満で徐々に冷却することにより、バックリングを発生させずにフィルムロールを室温まで戻すことができた。一方、比較例1および2は、加熱された状態ではバックリングは消失しているが、初期冷却速度1.2℃/分以上で急激に冷却を行ったため、冷却によるバックリングの発生を抑えることができなかった。
【符号の説明】
【0034】
1 フィルムロール
2 コア
3 側板
4 搬送用パレット


図1
図2
図3
図4
図5
図6