(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、(B)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂を含み、
前記(A)と前記(B)との質量比が、(A)/(B)=10/90〜25/75、
前記アイオノマー樹脂の中和度が、30〜105モル%であるゴルフボール用樹脂組成物。
前記(A)がアクリル酸及び/又はメタクリル酸、前記(B)がアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフボール用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、(B)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂であって、該(A)及び(B)の質量比、該中和度をそれぞれ特定範囲に調整したものを含む。
【0014】
オレフィンを含まない特定のアイオノマー樹脂を使用することにより、軟らかいコンプレッション、高反発係数を得ながら、ドライバーショット時の低スピン化が可能となり、その結果、従来に比べて飛距離を延ばすことができる。これは、従来のエチレン系アイオノマーに代えてオレフィンを含まないアイオノマー樹脂を中間層材料などに使用した場合に、高硬度が発揮されることでリコイルが効果的に発生するとともに、低い曲げ剛性率も発揮されて軟らかいコンプレッション(圧縮変形量)も得られるためであると推察される。
【0015】
先ず、本発明で樹脂成分として使用される(A)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、(B)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂について説明する。
【0016】
前記アイオノマー樹脂は、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの二元共重合体の金属イオン中和物であって、共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されたものを挙げることができる。
【0017】
前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また、前記α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。
【0018】
前記アイオノマー樹脂において、(A)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、前記(B)炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの質量比〔(A)/(B)〕は、10/90〜25/75、好ましくは15/85〜25/75、より好ましくは18/82〜25/75である((A)+(B)=100質量%)。(A)の含有率が10質量%以上であれば、軟らかいコンプレッション、高反発係数、ドライバーショット時の低スピン性能が発揮される。また、該含有率が25質量%以下であれば、耐久性が保持される。
【0019】
前記アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、30モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上である。該中和度は、105モル%以下、好ましくは104モル%以下、より好ましくは103モル%以下である。30モル%以上であれば、軟らかいコンプレッション、高反発係数、ドライバーショット時の低スピン性能が発揮される。一方、105モル%以下であれば、耐久性が保持される。
【0020】
なお、前記アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中に含まれる金属イオンのモル数×金属イオンの価数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0021】
前記アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。なかでも、反発性、耐久性などに優れ、本発明の効果が充分に得られるという点から、マグネシウムイオンが好ましい。
【0022】
前記アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、好ましくは140MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは160MPa以上である。該曲げ剛性率は、好ましくは550MPa以下、より好ましくは500MPa以下、更に好ましくは450MPa以下である。曲げ剛性率が低すぎると、中間層の弾性率が低くなり、高打出角化及び低スピン化の効果が小さくなるおそれがある。曲げ剛性率が高すぎると、中間層の弾性率が高くなりすぎ、ゴルフボールの耐久性や打球感が低下するおそれがある。なお、本発明において曲げ剛性率とは、ISO178に準じて測定した値をいう。
【0023】
前記アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で10以上が好ましく、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。また、該スラブ硬度(ショアD硬度)は、90以下が好ましく、より好ましくは85以下、更に好ましくは82以下である。10以上であれば、得られる構成部材の反発性が良好となる。また、90以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0024】
本発明では、前記アイオノマー樹脂として、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルと共重合体の金属イオン中和物を使用することが特に好ましい。これにより、軟らかいコンプレッション、高反発係数、ドライバーショット時の低スピン性能が発揮され、高飛距離が実現する。
【0025】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分として、上述したアイオノマー樹脂のみを含有することが好ましい態様であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有しても良い。他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有する場合、樹脂成分中、前記アイオノマー樹脂の合計含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0026】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、更に、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料、蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0027】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、前記アイオノマー樹脂、必要に応じて添加剤をドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
【0028】
前記ゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性率は、好ましくは140MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは160MPa以上であり、また、好ましくは550MPa以下、より好ましくは500MPa以下、更に好ましくは450MPa以下である。140MPa以上とすることにより、中間層の硬度が高くなり、高打出角化及び低スピン化の効果が得られ、また550MPa以下とすることにより、組成物の成形性が低下することがなく、また、中間層が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性が良好となる。
【0029】
前記ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で15以上が好ましく、より好ましくは60以上、更に好ましくは68以上であり、また、90以下が好ましく、より好ましくは85以下、更に好ましくは82以下である。15以上とすることにより、中間層の硬度が高くなり、高打出角化及び低スピン化の効果が得られ、また90以下とすることにより、中間層が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性が良好となる。ここで、ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度とは、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0030】
ここで、スラブ硬度、曲げ剛性率は、後述する測定方法により測定する。なお、ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度、曲げ剛性率は、前記アイオノマー樹脂の種類や組合せ、添加剤の含有量などを適宜選択することによって、調整することができる。
【0031】
本発明のゴルフボールは、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ワンピースゴルフボール;単層コアと、前記単層コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆する一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーを有するマルチピースゴルフボール(前記スリーピースゴルフボールを含む)を構成するいずれかの構成部材が本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されているゴルフボールを挙げることができる。なかでも、センターと前記センターを被覆する一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも一片又は一層が、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様が好ましい。
【0032】
以下、本発明のゴルフボールの一例を、センターと前記センターを被覆する一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも一片又は一層が、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様に基づいて詳述するが、本発明は斯かる態様に限定されない。
【0033】
先ず、ゴルフボールに用いられるコアについて説明する。
本発明のゴルフボールのコアの構造としては、例えば、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコア;センターと前記センターを被覆する複数もしくは複層の中間層とからなるコアなどを挙げることができる。また、コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。一方、センターの形状としては、球状が一般的であるが、球状センターの表面を分割するように突条が設けられていても良く、例えば、球状センターの表面を均等に分割するように突条が設けられていても良い。前記突条を設ける態様としては、例えば、球状センターの表面にセンターと一体的に突条を設ける態様、あるいは、球状センターの表面に突条の中間層を設ける態様などを挙げることができる。
【0034】
前記突条は、例えば、球状センターを地球とみなした場合に、赤道と球状センター表面を均等に分割する任意の子午線とに沿って設けられることが好ましい。例えば、球状センター表面を8分割する場合には、赤道と、任意の子午線(経度0度)、及び、斯かる経度0度の子午線を基準として、東経90度、西経90度、東経(西経)180度の子午線に沿って設けるようにすれば良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数の中間層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の中間層によって充填するようにして、コアの形状を球形とするようにすることが好ましい。前記突条の断面形状は、特に限定されることなく、例えば、円弧状、あるいは、略円弧状(例えば、互いに交差あるいは直交する部分において切欠部を設けた形状)などを挙げることができる。
【0035】
そして前記中間層としては、前記センターを単層もしくは複層の中間層で被覆している場合には、その中間層のうちの少なくとも1層が、センターの表面に設けられた突条によって仕切られる凹部を、複数の中間層によって充填するような場合には、その複数の中間層のうち少なくとも1つが、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている。なお、コアが、センターと前記センターを被覆する複数もしくは複層の中間層とからなる場合には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ゴルフボール用樹脂組成物以外の中間層用組成物から形成される中間層を有していてもよい。この場合には、コアの最外層が、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成された中間層とすることが好ましく、複数もしくは複層の中間層のすべてが、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることが好ましい。
【0036】
前記ゴルフボール用樹脂組成物以外の中間層用組成物としては、例えば、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられ、更に、硫酸バリウム、タングステン等の比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
【0037】
前記中間層を形成する方法としては、例えば、センターを前記ゴルフボール用樹脂組成物、それ以外の中間層用組成物で被覆して中間層を成形する。中間層を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ゴルフボール用樹脂組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてセンターを包み、130℃〜170℃で1分間〜5分間加圧成形するか、又はゴルフボール用樹脂組成物を直接センター上に射出成形してセンターを包み込む方法などが用いられる。
【0038】
形成される中間層は、その厚みを3.0mm以下とすることが好ましく、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2.0mm以下であり、また、0.1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.8mm以上である。中間層の厚みを3.0mm以下とすることにより、ゴルフボールの反発の低下及び打球感の低下を抑制でき、また、0.1mm以上とすることにより、ゴルフボールの耐久性が良好となる。
【0039】
前記センターには、従来公知のゴム組成物(以下、単に「センター用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができ、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤及び充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0040】
前記基材ゴムとしては、天然ゴム及び/又は合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0041】
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であり、また、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。0.3質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を増加する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0042】
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸又はその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
【0043】
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、55質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは48質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、センターが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
【0044】
センター用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの比重を1.0〜1.5の範囲に調整するための比重調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えると、ゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向がある。
【0045】
前記センター用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤及び充填剤に加えて、更に、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
【0046】
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。前記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、また、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0047】
前記老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0048】
前記センターは、前述のゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃〜180℃、圧力2.9MPa〜11.8MPaで10分間〜40分間で行われ、例えば、前記ゴム組成物を130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは、130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
【0049】
前記センターの直径は、25mm以上が好ましく、より好ましくは30mm以上であり、また、41mm以下が好ましく、より好ましくは40mm以下である。前記センターの直径が25mmよりも小さいと、中間層又はカバー層を所望の厚さより厚くする必要があり、その結果反発性が低下する場合がある。一方、センターの直径が41mmを超える場合は、中間層又はカバー層を所望の厚さより薄くする必要があり、中間層又はカバー層の機能が十分発揮されない。
【0050】
前記センターは、直径25mm〜41mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、1.5mm以上が好ましく、より好ましくは2.0mm以上であり、また、5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.0mm以下である。前記圧縮変形量が、1.5mm未満では打球感が硬くて悪くなり、5.0mmを超えると、反発性が低下する場合がある。
【0051】
前記センターの表面硬度Hs1は、ショアD硬度で、好ましくは40以上、より好ましくは48以上、更に好ましくは54以上であり、また、好ましくは75以下、より好ましくは67以下、更に好ましくは64以下である。センターの表面硬度Hs1がショアD硬度で40より小さいと、柔らかくなり過ぎて反発性が低下し、飛距離が低下する傾向がある。一方、センターの表面硬度Hs1がショアD硬度で75より大きいと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなる場合がある。
【0052】
本発明のゴルフボールのコアの直径は、30mm以上であることが好ましく、より好ましくは35mm以上、更に好ましくは37mm以上である。コアの直径を30mm以上とすることにより、カバーが厚くなり過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好となる。また、コアの直径は、41.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは41.25mm以下、更に好ましくは41.0mm以下である。コアの直径を41.5mm以下とすることにより、カバーの厚みを確保でき、カバーによる保護効果が十分に得られる。
【0053】
本発明のゴルフボールのコアとして、表面硬度Hsが中心硬度Hoより大きいコアを使用することも好ましい態様である。コアの表面硬度Hsと中心硬度Hoとの硬度差(Hs−Ho)は、ショアD硬度で10以上であることが好ましく、更に好ましくは15以上、特に好ましくは20以上である。コアの表面硬度を中心硬度より大きくすることによって、打出角が高くなり、スピン量が低くなって、飛距離が向上する。また、コアの表面硬度と中心硬度とのショアD硬度差は、55以下であることが好ましく、より好ましくは50以下、特に好ましくは40以下である。硬度差が大きくなりすぎると、耐久性が低下するおそれがある。
【0054】
更に、前記コアの中心硬度Hoは、ショアD硬度で20以上であることが好ましく、より好ましくは27以上であり、更に好ましくは32以上である。コアの中心硬度HoをショアD硬度で20以上とすることにより、軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、コアの中心硬度Hoは、ショアD硬度で60以下であることが好ましく、より好ましくは53以下であり、更に好ましくは48以下である。前記中心硬度HoをショアD硬度で60以下とすることにより、硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
【0055】
本発明のゴルフボールのコアの表面硬度Hsは、ショアD硬度で40以上が好ましく、より好ましくは48以上、更に好ましくは54以上である。前記表面硬度HsをショアD硬度で40以上とすることにより、軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、コアの表面硬度Hsは、ショアD硬度で75以下が好ましく、より好ましくは67以下、更に好ましくは64以下である。前記表面硬度HsをショアD硬度で75以下とすることにより、硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0056】
次に、本発明のゴルフボールのカバーについて説明する。前記カバーを形成するカバー用組成物の樹脂成分としては、ポリウレタン樹脂、従来公知のアイオノマー樹脂のほか、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でもポリウレタン樹脂が好適である。
【0057】
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、ポリウレタン樹脂を50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。なお、カバー用組成物中の樹脂成分としてポリウレタン樹脂のみを用いることが最も好ましい。
【0058】
前記ポリウレタン樹脂は、分子内にウレタン結合を複数有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物であり、必要に応じて、更に低分子量のポリオールや低分子量のポリアミンなどにより鎖長延長反応させることにより得られるものである。
【0059】
前記ポリウレタン樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で、10以上が好ましく、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、また、65以下が好ましく、より好ましくは60以下、更に好ましくは55以下である。ポリウレタン樹脂の硬度が低すぎると、ドライバーでのショットの際にスピン量が増加する場合がある。また、ポリウレタン樹脂の硬度が高すぎると、アプローチウェッジでのショットの際にスピン量が低下しすぎる場合がある。前記ポリウレタン樹脂の具体例としては、BASFジャパン株式会社製のエラストラン(登録商標)XNY90A、XNY75A、ET880などを挙げることができる。
【0060】
本発明において、前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、酸化チタン、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料又は蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0061】
前記白色顔料(酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、カバーの耐久性が低下する場合がある。
【0062】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で60以下が好ましく、より好ましくは53以下、更に好ましくは48以下である。カバー用組成物のスラブ硬度を60以下とすることによって、ショートアイアンなどのアプローチショット時のスピン安定性速度が高くなる。その結果、アプローチショット時のコントロール性に優れるゴルフボールが得られる。アプローチショット時のスピン速度を十分確保するためには、前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは27以上、更に好ましくは32以上である。
【0063】
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバー用組成物をコア上に射出成形してカバーを成形する場合、カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、加熱溶融されたカバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、980KPa〜1,500KPaの圧力で型締めした金型内に、150℃〜230℃に加熱溶融したカバー用組成物を0.1秒〜1秒で注入し、15秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0064】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法又は射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。上記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0065】
また、カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上であり、また、好ましくは25μm以下、より好ましくは18μm以下である。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が25μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0066】
本発明において、ゴルフボールのカバーの厚みは、3mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2mm以下が更に好ましい。カバーの厚みを3mm以下とすることによって、反発性や打球感が良好になるからである。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上が更に好ましい。0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
【0067】
本発明では、センターと前記センターを被覆する一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも一片又は一層が、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されているゴルフボールの中でも、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーを有するスリーピースゴルフボールであって、前記中間層が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様が最も好ましい。
【0068】
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.1mm以上、更に好ましくは2.2mm以上であり、また、4.2mm以下が好ましく、より好ましくは4.1mm以下、更に好ましくは4.0mm以下である。前記圧縮変形量を、2.0mm以上とすることにより良好な打球感が得られ、また、4.2mm以下とすることにより、良好な反発性が得られる。
【実施例】
【0069】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0070】
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
【0071】
(2)曲げ剛性率(MPa)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、射出成形により、長さ80.0±2mm、幅10.0±0.2mm、厚み4.0±0.2mmの試験片を作製し、23℃で2週間保存した。このシートの曲げ剛性率を、ISO178に準じて測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHで行った。
【0072】
(3)センター、コア硬度(ショアD硬度)
ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、センター又はコアの表面部において測定したショアD硬度をセンター表面硬度Hs1、コア表面硬度Hsとした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したショアD硬度をセンター又はコア中心硬度Hoとした。
【0073】
(4)圧縮変形量(コンプレッション、mm)
ゴルフボール又はコアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボール又はコアが縮む量)を測定した。
【0074】
(5)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物及びゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度及び重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は、各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を反発係数とした。
【0075】
(6)ドライバーでのショット
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(SRIスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード50m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のスピン速度を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。
【0076】
(7)アプローチウェッジでのショット
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットM/Cに、サンドウェッジを取り付け、ヘッドスピード21m/sでゴルフボールを打撃した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行い、その平均値をスピン速度とした。
【0077】
[ゴルフボールの作製]
(1)センターの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、170℃で30分間加熱プレスすることによりセンターを得た。
【0078】
【表1】
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR−730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸留社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
【0079】
なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.4gとなるように適量加えた。
【0080】
(2)カバー用組成物の調製
表2に示した配合材料を用いて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
【0081】
【表2】
エラストランXNY85A:BASF社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0082】
(3)中間層用組成物の調製
表3に沿って配合したモノマー(全量約500gスケール)に、AIBNを0.6質量%添加し、モノマーの2倍の質量のアセトンを溶媒として使用した。窒素置換雰囲気下において攪拌し、80℃で60分反応させた。次いで、水酸化マグネシウムを表3に従って添加し、ニーダーで160℃、15分混練した後、160℃でプレス成型して中間層用組成物を作製した。
【0083】
【表3】
アクリル酸:和光純薬工業社製
アクリル酸エチル:和光純薬工業社製
アクリル酸ブチル:和光純薬工業社製
メタクリル酸:和光純薬工業社製
メタクリル酸エチル:和光純薬工業社製
メタクリル酸ブチル:和光純薬工業社製
アセトン:和光純薬工業社製
AIBN(アゾビスイソブチロニトリル):和光純薬工業社製
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
サーリン6910:デュポン社製
【0084】
(4)ゴルフボール本体の作製
上記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得たセンター上に射出成形することにより、前記センターを被覆する中間層を形成して、球状コアを作製した。続いて、前記球状コア上にカバー用組成物を射出成型することによりカバーを形成して、ゴルフボールを作製した。成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.8mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。
【0085】
得られたゴルフボールの反発係数、圧縮変形量などについて評価した結果を表4に示した。
【0086】
【表4】
【0087】
中間層材料として、アクリル酸とアクリル酸エチルの共重合体のマグネシウム中和物で、特定配合比及び中和度に調整したアイオノマー樹脂を用いたゴルフボールNo.1〜6、8〜11は、軟らかいコンプレッションを維持しながら、高反発化し、且つ、ドライバーショット時の低スピン性能が同時に得られ、サーリン6910を用いたNo.16に比べて、大きく性能が改善された。また、モノマーを他のα,β−不飽和カルボン酸やα,β−不飽和カルボン酸エステルに変更したゴルフボールNo.13〜15でも同様の性能改善効果が発揮された。これに対し、アクリル酸量を30質量%、中和度を110モル%に調整したゴルフボールNo.7、12は、ゴルフボールが割れ、測定不能であった。