(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トナー用結着樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させた粒子を含む電子写真用トナーの製造方法であって、該水系分散体が下記工程1〜4を経て得られ、前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の原料モノマーとビニル系樹脂の原料モノマーとを重合させることにより得られる複合樹脂であり、該複合樹脂のポリエステル系樹脂の原料モノマーであるカルボン酸成分中、少なくとも不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を30〜80モル%含有し、該複合樹脂が、ポリエステル系樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、更にポリエステル系樹脂の原料モノマー及びビニル系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーとを重合させて得られ、該両反応性モノマーが、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、電子写真用トナーの製造方法。
工程1:少なくとも結着樹脂、有機溶剤及び中和剤を混合して、混合物を得る工程。
工程2:工程1で得られた混合物に少なくとも水を混合して、樹脂分散体を得る工程。
工程3:工程2で得られた樹脂分散体から有機溶剤を除去することにより、結着樹脂の水系分散体を得る工程。
工程4:必要に応じて、工程3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電子写真用トナーの製造方法は、トナー用結着樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させた粒子を含む電子写真用トナーの製造方法であって、該水系分散体が下記工程1〜4を経て得られ、前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の原料モノマーとビニル系樹脂の原料モノマーとを重合させることにより得られる複合樹脂であり、該複合樹脂のポリエステル系樹脂の原料モノマーであるカルボン酸成分中、少なくとも不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を30〜80モル%含有する。
工程1:少なくとも結着樹脂、有機溶剤及び中和剤を混合して、混合物を得る工程。
工程2:工程1で得られた混合物に少なくとも水を混合して、樹脂分散体を得る工程。
工程3:工程2で得られた樹脂分散体から有機溶剤を除去することにより、結着樹脂の水系分散体を得る工程。
工程4:必要に応じて、工程3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程。
【0010】
前記特許文献1に開示された複合樹脂を用いてトナーを作成した場合、凝集工程において、複合樹脂の水系分散体が不安定であり、また離型剤等の他のトナー成分の分散性と異なるため、凝集速度が異なる。その結果、凝集粒子への離型剤等その他トナー成分の取り込みが不十分となり、更に凝集粒子の粒度分布が広がり、大粒子径や小粒子径の凝集粒子が生成する。これらの凝集粒子を融着させて得られるトナー粒子もその粒度分布が広がり、画像定着時において、トナー粒子が加熱された時、大粒子径のトナー粒子では、熱伝播に時間がかかることから、個々のトナー粒子に温度ムラ等が起こり融解挙動に差が生じ低温定着性が悪化する。また、小粒子径トナーや離型剤のみのトナーが存在することで、高温高湿下での保存性や耐久性が悪化するものと考えられる。
これに対し、本発明の作用機構は、その詳細のすべてが解明されているわけではないが、結着樹脂のポリエステル系樹脂の原料モノマーとして不飽和脂肪族ジカルボン酸を含有することにより、水系分散体としたときの分散体表面の親水性が水系分散媒との間で適度な領域となり、分散体の分散性が向上する等により、分散体の粒径はそろったものとなると推定される。その結果、凝集工程において、水系分散体の凝集速度が緩やかとなり、トナー粒子とするために加えられる着色剤、電荷制御剤、離型剤等その他の粒子との凝集速度の差が少なくなるため、凝集粒子の粒径もそろったものとすることができると推定される。更に、複合樹脂がビニル系樹脂部分を含有することから、例えば離型剤等の複合樹脂への内包性が向上し凝集工程での凝集速度がより近いものとなり、トナー粒子径がよりそろったものとなると推定される。その結果、高温高湿下での保存性(HH保存性)、耐久性及び低温定着性が優れたトナーが得られたものと推定している。なお、本発明は、上述した推定作用機構に制限されるものではない。
以下、本発明に用いられる各成分及び各工程について説明する。
【0011】
本発明に用いられる結着樹脂は、ポリエステル系樹脂の原料モノマーとビニル系樹脂の原料モノマーとを重合させることにより得られる。
(ポリエステル系樹脂の原料モノマー)
本発明に用いられるポリエステル系樹脂の原料モノマーは、アルコール成分とカルボン酸成分である。
本発明に用いられる複合樹脂中のポリエステル系樹脂の原料モノマーが縮重合反応して得られるポリエステル系樹脂ユニットは、非晶質樹脂ユニットであっても結晶性ポリエステルユニットであってもよいが、非晶質樹脂ユニットであることが好ましい。ここで、ポリエステル等の樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最大ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1であるポリエステルをいい、「非晶質樹脂」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
上記の「吸熱の最大ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最大ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
本発明に用いられる複合樹脂中のポリエステル系樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
【0012】
<アルコール成分>
本発明に用いられるポリエステル系樹脂の原料モノマーであるアルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂が非晶質樹脂である場合、ポリエステル系樹脂の原料モノマーであるアルコール成分は、樹脂を非晶質化する観点から、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。
【化1】
(式中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を示す。x及びyは正の数を示し、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5である。)
【0013】
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物として、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、トナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物が好ましい。
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、樹脂を非晶質化する観点から、アルコール成分中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%含有される。
【0014】
本発明に用いられるポリエステル系樹脂が結晶性ポリエステルである場合、その原料モノマーであるアルコール成分は、ポリエステルの結晶性を高める観点から、炭素数2〜14、好ましくは炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
炭素数2〜14の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられる。
ポリエステルの結晶性を高める観点から、α,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂が結晶性ポリエステルである場合、炭素数2〜14の脂肪族ジオールは、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%含有される。
なお、非晶質樹脂に、炭素数2〜14の脂肪族ジオールを用いてもよく、結晶性ポリエステルに、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることもできる。
【0015】
アルコール成分として使用し得る、前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及び炭素数2〜14の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分としては、例えば、3価以上のアルコールが挙げられる。
3価以上のアルコールとして、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0016】
<カルボン酸成分>
カルボン酸成分としては、飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明では、トナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を30モル%以上含有し、40モル%以上含有することが好ましく、45モル%以上含有することがより好ましい。また、トナーの高温高湿下での保存性及び耐久性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を80モル%以下含有し、75モル%以下含有することが好ましく、60モル%以下含有することが好ましい。これらの観点を総合すると、カルボン酸成分中の不飽和脂肪族ジカルボン酸成分の含有量は、30〜80モル%であり、40〜75モル%が好ましく、45〜60モル%がより好ましい。
【0017】
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数4〜10の不飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸が挙げられる。これらの中でも、トナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、フマル酸が好ましい。
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸等の炭素数2〜14の飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、飽和脂肪族ジカルボン酸としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸も含まれる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でも、トナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、テレフタル酸が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)が挙げられる。これらの中でも、トナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)が好ましい。
【0018】
なお、分子量の調整及び物性調整の観点から、アルコール成分には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
【0019】
<アルコール成分とカルボン酸成分とのモル比>
縮重合反応の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性、分子量調整及び物性調整の観点から、好ましくは0.75〜1.10であり、より好ましくは0.80〜1.05であり、更に好ましくは0.85〜1.05である。
【0020】
<複合樹脂>
本発明に用いられる結着樹脂は、前記ポリエステル系樹脂の原料モノマーに加えて、(i)ビニル系樹脂の原料モノマー、及び(ii)該ビニル系樹脂の原料モノマーと前記アルコール成分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーを用いて付加重合反応に付すことにより得られる。
【0021】
<ビニル系樹脂成分の原料モノマー>
ビニル系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。反応性等の観点から、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステルが好ましく、スチレン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸メチルがより好ましく、スチレン及びアクリル酸2−エチルヘキシルが更に好ましい。
更に、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、スチレン及び/又は(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが、ビニル系樹脂成分中、50重量%以上含有されていることが好ましく、より好ましくは80〜100重量%である。
ビニル系樹脂成分の原料モノマーの使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、前記アルコール成分100モルに対して、50〜130モルが好ましく、70〜120モルがより好ましく、90〜110モルが更に好ましい。
【0022】
また、ビニル系樹脂成分の原料モノマーの使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂成分とビニル系樹脂成分との重量比率(結着樹脂成分の重量/ビニル系樹脂成分の重量)としては、50/50〜95/5が好ましく、65/45〜90/10がより好ましく、70/30〜85/15が好ましい。
【0023】
<両反応性モノマー>
本発明に用いられる複合樹脂は、ビニル系樹脂の原料モノマーと前記アルコール成分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーを含有することが好ましい。
ビニル系樹脂の原料モノマーと前記アルコール成分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が好ましく、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物がより好ましい。このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。
両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、又はメタクリル酸がより好ましい。
なお、フマル酸も両反応性モノマーと機能し得る化合物の一種であるが、ポリエステル系樹脂成分のカルボン酸成分としてフマル酸が用いられる場合は、両反応性モノマーからフマル酸を除く。
両反応性モノマーの使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、前記アルコール成分100モルに対して、2〜25モルが好ましく、3〜20モルがより好ましく、5〜18モルが更に好ましく、6〜15モルがより更に好ましい。
また、同様の観点から、ビニル系樹脂成分の原料モノマー100モルに対して、2〜25モルが好ましく、3〜20モルがより好ましく、4〜18モルが更に好ましく、5〜13モルがより更に好ましく、5〜10モルがより更に好ましく、5.5〜8モルがより更に好ましい。
【0024】
(複合樹脂の製造方法)
複合樹脂は、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法により製造することが好ましい。なお、両反応性モノマーは、反応性の観点から、ビニル系樹脂成分の原料モノマーと共に反応系に供給されることが好ましい。
(1)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)の後に、ビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて、縮重合系樹脂成分の3価以上の原料モノマー等を架橋剤として重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応や両反応性モノマーとの反応を更に進めることもできる。
【0025】
(2)ビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)を行う方法。
アルコール成分及びカルボン酸成分については、付加重合反応時に反応系内に存在させておき、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒を添加させることにより縮重合反応を開始することもできるし、縮重合反応に適した温度条件下で反応系内に後から添加することにより縮重合反応を開始することもできる。前者の場合は、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで分子量及び分子量分布が調節できる。
【0026】
(3)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)とビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して行う方法。
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、必要に応じて、縮重合系樹脂成分の3価以上の原料モノマー等を架橋剤として重合系に添加し、更に工程(A)の縮重合反応を行うことが好ましい。その際、縮重合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して縮重合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
以上の中でも、方法(1)が、縮重合反応の反応温度の自由度が高いという点から好ましい。
付加重合反応に適した温度は、120℃以上180℃未満が好ましく、165℃以上180℃未満がより好ましい。なお、後述の通り、縮重合反応に適した温度は、180〜250℃が好ましく、180〜230℃が好ましい。
上記(1)〜(3)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
【0027】
(ポリエステル系樹脂ユニットの製造方法)
本発明に用いられる複合樹脂中のポリエステル系樹脂ユニットは、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応により得られる。該縮重合反応はエステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことがより好ましい。
【0028】
<エステル化触媒>
上記縮重合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0029】
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
【0030】
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)が好ましい。
【0031】
上記エステル化触媒の存在量は、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.6重量部がより好ましい。
【0032】
<ピロガロール化合物>
ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部が更に好ましい。ここで、ピロガロール化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール化合物の全配合量を意味する。
ピロガロール化合物とエステル化触媒との重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、反応性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.02〜0.3がより好ましく、0.03〜0.2が更に好ましい。
【0033】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、前記エステル化触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中にて、120〜250℃の温度で行うことができ、140〜240℃が好ましい。
また、例えば樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
【0034】
<結着樹脂の物性>
また、本発明に用いられる結着樹脂の軟化点は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜140℃がより好ましく、65〜130℃が更に好ましく、65〜120℃がより更に好ましく、80〜110℃がより更に好ましい。また、本発明のポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、45〜85℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。なお、ガラス転移温度は非晶質樹脂に特有の物性であり、融解熱の最大ピーク温度とは区別される。
【0035】
結着樹脂の数平均分子量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、1,000〜6,000が好ましく、2,000〜5,000がより好ましい。また、重量平均分子量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、好ましくは6,000〜1,000,000、より好ましくは8,000〜1,000,000、更に好ましくは10,000〜500,000である。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもテトラヒドロフラン可溶分を測定した値をいう。
【0036】
結着樹脂の酸価は、分散した樹脂粒子を安定にし、かつ小粒径のトナーをシャープな粒度分布にし、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、1〜40mgKOH/gが好ましく、2〜35mgKOH/gがより好ましく、3〜30mgKOH/gが更に好ましく、15〜28mgKOH/gが更により好ましい。
結着樹脂の水酸基価は、上記と同様の観点から、1〜70mgKOH/gが好ましく、2〜60mgKOH/gがより好ましく、3〜50mgKOH/gが更に好ましい。
なお、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、重量平均分子量、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
【0037】
(結着樹脂の水系分散体)
本発明に用いられる結着樹脂の水系分散体は、前記複合樹脂、有機溶剤、界面活性剤及び水、更に必要に応じて中和剤を混合した後、有機溶剤を除去することにより調製することができる。
【0038】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、結着樹脂の分散性を向上する観点から、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)で表したとき、15.0〜26.0MPa
1/2であるものが好ましく、16.0〜24.0MPa
1/2であるものがより好ましく、17.0〜22.0MPa
1/2であるものが更に好ましい。
具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、及びイソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、及びジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、及びジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。カッコ内は、SP値を示す。これらの中では、トナーの粒径分布及び高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、酢酸エステルが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0039】
(中和剤)
本発明に用いられる中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。これらの中でも、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、pKaが12以下である中和剤が好ましく、アンモニア(pKa=9.3)、トリエチルアミン(pKa=9.8)が好ましく、アンモニアがより好ましい。
結着樹脂の中和剤による中和度は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、20〜100モル%であることが好ましく、25〜90モル%がより好ましく、30〜80モル%が更に好ましく、30〜70モル%がより更に好ましい。なお、樹脂の中和度(モル%)は、下記式によって求めることができる。
中和度={[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/〔[樹脂の酸価(KOHmg/g)×樹脂の重量(g)]/(56×1000)〕}×100
【0040】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられ、なかでも、結着樹脂の分散性の観点から、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0041】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類あるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリチレングリコ−ルモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウムが好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0042】
(電子写真用トナーの製造方法)
本発明の電子写真用トナーの製造方法は、次に説明するトナー用結着樹脂の水系分散体を得る工程を含む。更に、特に限定はされないが、前記の結着樹脂の水系分散体を凝集工程に付して凝集粒子を得る工程、並びに得られた凝集粒子を合一工程に付して合一粒子(融着粒子)を得る工程を含む製造方法が好ましい。
なお本発明において、「水系分散体」の「水系」とは、有機溶剤等の溶剤を含有していてもよいが、水を好ましくは50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは99重量%以上含有するものをいう。
【0043】
<結着樹脂の水系分散体の製造工程>
本発明に用いられる結着樹脂の水系分散体は、下記工程1〜4を含む工程を経て得られる。
工程1:少なくとも結着樹脂、有機溶剤及び中和剤を混合して、混合物を得る工程。
工程2:工程1で得られた混合物に少なくとも水を混合して、樹脂分散体を得る工程。
工程3:工程2で得られた樹脂分散体から有機溶剤を除去することにより、結着樹脂の水系分散体を得る工程。
工程4:必要に応じて、工程3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程。
【0044】
結着樹脂、有機溶剤、界面活性剤、中和剤及び水の混合・分散にあたっては、転相乳化法などの化学的分散法や、ホモジナイザー、超音波分散機等の機械的分散法も用いることができる。
【0045】
〔工程1〕
本発明の工程1は、少なくとも結着樹脂、有機溶剤及び中和剤を混合して、混合物を得る工程である。工程1に用いられる結着樹脂、有機溶剤及び中和剤については前述のとおりである。
【0046】
結着樹脂の含有量は、工程1で得られる分散液中、結着樹脂の分散安定性、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、35〜97重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、60〜95重量%が更に好ましく、60〜90重量%がより更に好ましく、60〜80重量%がより更に好ましく、60〜70重量%がより更に好ましい。
【0047】
有機溶剤の使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、3〜500重量部が好ましく、5〜150重量部がより好ましく、5〜100重量部が更に好ましく、5〜70重量部がより更に好ましく、30〜60重量部がより更に好ましい。
【0048】
また、有機溶剤の使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性の観点から、結着樹脂と有機溶剤との重量比(結着樹脂/有機溶剤)が、好ましくは1/1.5〜1/0.03、より好ましくは1/1.0〜1/0.05、更に好ましくは1/0.7〜1/0.05、更により好ましくは1/0.6〜1/0.3である。
【0049】
工程1において、各原料の添加順序に限定はないが、結着樹脂及び有機溶剤を混合した後、中和剤を混合することが好ましい。
混合の際は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
【0050】
工程1の混合時の温度は、工程温度の安定化、工程時間の短縮、溶液の低粘度化などの観点から、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃、更に好ましくは20〜35℃である。又、撹拌は、著しい分相や不溶物の存在等が無い状態となるまで行うのが好ましく、撹拌時間は、撹拌速度や温度条件にもよるが、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間である。
【0051】
なお、本発明の工程1には、本発明の効果に影響しない範囲で、更に任意の成分を添加してもよい。例えば、無機塩、前述以外の有機溶剤、本発明に限定する濃度以下の界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
〔工程2〕
本発明の工程2は、工程1で得られた混合物に少なくとも水、更に必要に応じて界面活性剤を添加、混合して、樹脂分散体を得る工程である。
【0053】
工程2における水の使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、水と有機溶剤との重量比(水の重量/有機溶剤の重量)が、好ましくは70/30〜98/2、より好ましくは80/20〜98/2、更に好ましくは80/20〜95/5、更により好ましくは87/13〜92/8である。
【0054】
又、工程2における水の使用量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、水と結着樹脂との重量比(水の重量/結着樹脂の重量)が、好ましくは20/80〜98/2、より好ましくは25/75〜95/5、更に好ましくは30/70〜95/5である。
【0055】
混合の際は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
アンカー翼等の混合撹拌装置を用いた場合、撹拌の周速は、分散性の観点から、200〜20m/分が好ましく、150〜40m/分がより好ましく、100〜60m/分が更に好ましい。
【0056】
工程2の混合時の温度は、工程温度の安定化、工程時間の短縮、溶液の低粘度化などの観点から、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃、更に好ましくは20〜35℃である。
【0057】
工程2において、水及び界面活性剤の添加及び混合方法は、特に限定されず、工程1で得られた混合物に、全量を一度に添加しても良いし、数回に分けて、あるいは滴下して断続的に添加してもよいし、ポンプ等を通して連続的に添加してもよい。工程1で得られた混合物の分散性の観点から、水に界面活性剤をあらかじめ溶解した界面活性剤水溶液を断続的、あるいは連続的に添加することが好ましい。添加時間は、工程1で得られた混合物の分散性の観点から、撹拌速度や温度条件にもよるが、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間である。
【0058】
〔工程3〕
本発明の工程3は、工程2で得られた樹脂分散体から有機溶剤を除去することにより、結着樹脂の水系分散体を得る工程である。
【0059】
工程3における有機溶剤の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。また、有機溶剤は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶剤の残存量は、水系分散体中、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、実質的に0%が更に好ましい。
【0060】
蒸留によって有機溶剤の除去を行う場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶剤の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、結着樹脂の分散安定性を維持する観点から、減圧下で、その圧力における使用する有機溶剤の沸点以上の温度に昇温して留去するのがより好ましい。なお、減圧した後昇温しても、昇温した後減圧してもよい。結着樹脂の分散安定性を維持する観点から、温度及び圧力を一定にして留去するのが好ましい。
【0061】
〔工程4〕
本発明の工程4は、必要に応じて、工程3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程である。
【0062】
界面活性剤添加時の際は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
アンカー翼等の混合撹拌装置を用いた場合、撹拌の周速は、分散性の観点から、200〜20m/分が好ましく、150〜40m/分がより好ましく、100〜60m/分が更に好ましい。
【0063】
工程4の界面活性剤添加時の温度は、界面活性剤の水への分散性などの観点から、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃、更に好ましくは20〜35℃である。
【0064】
界面活性剤は、必要に応じて、工程2及び/又は工程4で混合するのが好ましい。
工程1〜4で添加する界面活性剤の総添加量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部である。
界面活性剤の添加に当たっては、工程1〜4で添加する界面活性剤の総添加量の70〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%を、工程2及び/又は工程4で混合するのが好ましい。
工程4において添加する界面活性剤の量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、工程1〜4で添加する界面活性剤の総添加量の30〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が更に好ましい。
また、工程4において添加する界面活性剤の量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、工程2及び工程4で添加する界面活性剤の総添加量の30〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、80〜100重量%が更に好ましい。
【0065】
工程1〜工程4を含む水系分散体の製造工程を経て得られる水系分散体の固形分濃度は、分散液の安定性及び取扱い容易性等の観点から、適宜水を加えることにより、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは15〜25重量%に調整される。なお、固形分とは、樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
【0066】
トナーの粒径分布、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、工程3又は4の後、好ましくは工程4の後、水系分散体のpHを3以下、好ましくは1〜3、より好ましくは1.5〜2.5に調整することが好ましい。また、その後に水系分散体のpHを4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4.5〜5.5に調整することが好ましい。
【0067】
<凝集工程>
凝集工程では、前記の結着樹脂の水系分散体中の樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子の分散液を得る。
【0068】
凝集工程では、凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤は、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩等の無機系凝集剤が用いられる。トナーの粒径分布、高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、無機系凝集剤が好ましく、なかでも無機金属塩が好ましい。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等が挙げられる。無機金属塩の中心金属の価数は、トナーの粒径分布、高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、2価以上であることが好ましい。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、0.005〜7重量部がより好ましく、0.005〜5重量部が更に好ましく、0.01〜1重量部が更により好ましい。
【0069】
凝集剤は、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
凝集工程において、系内の固形分濃度は、均一な凝集を起こさせるために、5〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
凝集工程において、凝集剤を均一に分散し、均一な凝集を起こさせる観点から、凝集剤の添加は、20〜40℃にて行うことが好ましく、凝集剤を添加した後、所定の粒径になるまで40〜60℃に保持することが好ましい。
【0070】
凝集工程では、着色剤、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、及び老化防止剤等の添加剤を添加してから凝集させてもよい。該添加剤は、水系分散体としてから使用することもできる。
【0071】
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。着色剤の添加量は、画像品質を向上する観点から、結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0072】
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられる。各種荷電制御剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。荷電制御剤を添加する場合、その添加量は、画像品質を向上する観点から、結着樹脂100重量部に対して0.1〜8重量部が好ましく、0.3〜7重量部がより好ましい。
【0073】
離型剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、及びステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、及びホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックス;ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス及びシリコーン類等が挙げられる。離型剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。離型剤の融点は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、60〜140℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
離型剤を添加する場合、その添加量は、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、トナー中、1〜30重量%が好ましく、3〜25重量%がより好ましく、5〜20重量%が更に好ましく、12〜18重量%がより更に好ましい。
【0074】
また、着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、樹脂粒子を調製する際に結着樹脂に予め混合してもよく、別途各添加剤を水等の分散媒中に分散させた分散液を調製して、結着樹脂の水系分散体と混合し、凝集工程に供してもよい。
樹脂粒子を調製する際に結着樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予め結着樹脂と添加剤とを溶融混練することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが平行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。したがって、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、通常の二軸押出機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
また、各添加剤の水系分散体は、各添加剤、界面活性剤及び水を混合し、分散機で分散処理することによって得られる。
【0075】
<合一工程>
合一工程では、凝集工程で得られた凝集粒子の水系分散体に必要に応じて凝集停止剤を加えた後、必要に応じて、加熱することにより合一粒子を得る。
合一工程における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点、トナーの高温高湿下での保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂の軟化点−30℃〜+10℃が好ましく、−25℃〜+10℃がより好ましく、−20℃〜+10℃が更に好ましい。また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。具体的には、好ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。
なお、凝集停止剤を用いる場合、凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤のうち、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、アルキルエーテル硫酸塩を用いることが更に好ましい。
【0076】
[電子写真用トナー]
合一工程により得られた合一粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、電子写真用トナー(単にトナーと称することがある)を得ることができる。
洗浄工程では、トナーとして十分な帯電特性及び信頼性を確保する目的から、トナー表面の金属イオンを除去するため、酸を用いることが好ましい。また、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5重量%以下、更には1.0重量%以下に調整することが好ましい。
【0077】
本発明の方法により得られる電子写真用トナーは、前記トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等の助剤(外添剤)をトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、任意の微粒子が挙げられ、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナーの保存安定性を向上する観点から、外添剤による処理前のトナー粒子100重量部に対して、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは1〜3.5重量部、更に好ましくは1〜3重量部である。
トナーの体積中位粒径は、画像品質を向上する観点及び生産性を向上する観点から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜8μm、更に好ましくは3〜7μm、更に好ましくは4〜6μmである。
トナーのCV値は、画像品質を向上する観点及び生産性を向上する観点から、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。なお、CV値は以下の式で計算できる。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積中位粒径(D
50))×100
本発明の方法により得られる電子写真用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0078】
<樹脂物性の測定>
(樹脂の軟化点)
フローテスター((株)島津製作所製、商品名:「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0079】
(樹脂の酸価)
樹脂の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0080】
<樹脂分散体の物性の測定>
(水系分散体中の樹脂粒子、各分散液中の着色剤微粒子、離型剤微粒子、荷電制御剤微粒子及び凝集粒子の体積中位粒径(D
50)及び分散度(CV))
動的光散乱型粒径測定機(マルバーン社製、商品名:「ZETASIZER NANO ZS」)を用いて、以下の条件で体積中位粒径(D
50)及び分散度(CV)を測定した。
固形分濃度:0.1重量%
測定温度:25℃
媒質:水
測定用セル:Glass Cuvette
レーザー仕様:He−Ne、4mW,633nm
検出光学系:NIBS、173℃
測定回数:10回
等温化時間:5分
解析ソフト:Zeta Sizer Softmare 6.2
解析方法:General Purpose Mode(キュムラント法)
【0081】
(水系分散体中の固形分測定)
赤外線水分計((株)ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、水系分散体5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水系分散体の水分(重量%)を測定した。固形分は下記式に従って算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M1
M1:水系分散体の水分(重量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
W0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0082】
(エマルションのpH)
pH測定器(東亜ディーケーケー(株)製、商品名:「HM−20P」)を用い、20℃にて測定した。
【0083】
<トナー評価>
(トナーの耐熱保存性)
25mL容の容器(直径約3cm)にトナー5gを入れ、温度55℃、湿度70%の環境下で72時間放置した。放置後、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、保存性を評価した。評価点C以上が好ましい。
A:48時間後及び72時間後も凝集は全く認められない。
B:48時間後で凝集は認められないが72時間後ではわずかに凝集が認められる。
C:48時間後で凝集は認められないが72時間後では明らかに凝集が認められる。
D:48時間以内で凝集が認められる。
【0084】
(トナーの耐久性)
非磁性一成分現像方式「OKI Microline 18」(沖データ社製)の装置にトナーを実装し、温度30℃、湿度80%の条件下にて、黒化率5.5%の斜めストライプのパターンの耐刷を行った。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジを確認した。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を耐刷枚数とした。数値が大きいほど、耐久性に優れる。
【0085】
(トナーの最低定着温度)
複写機(シャープ(株)製、商品名:「AR−505」)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm
2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度500mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着画像の定着試験を行った。定着画像にセロハン粘着テープ(三菱鉛筆(株)製、商品名:「ユニセフセロハン」、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計(グレタグマクベス社製、商品名:「RD−915」)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れることを示す。
【0086】
<結着樹脂の製造>
製造例1〜4
(結着樹脂A〜D)
表1に示すフマル酸以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒及び没食子酸を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、235℃まで10時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、160℃まで冷却し、表1に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、4−t−ブチルカテコール及びフマル酸を加え、210℃まで昇温し、その後、所望の軟化点に達するまで反応を行って結着樹脂A〜Dをそれぞれ得た。
【0087】
製造例5
(結着樹脂E)
表1に示すポリエステルの原料モノマー、4−t−ブチルカテコール、ピロガロール化合物、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温をおこなった。その後、軟化点が100℃に達するまで反応を行って結着樹脂Dを得た。
【0088】
【表1】
【0089】
<樹脂分散体以外の分散液の調製>
(着色剤分散液の調製)
銅フタロシアニン(大日精化工業(株)製、型番:「ECB−301」)50g、非イオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマルゲン150」)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液を得た。体積中位粒径(D
50)は120nmであった。
【0090】
(離型剤分散液の調製)
パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、商品名:「HNP9」、融点:85℃)60g、カチオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「サニゾールB50」)5g及びイオン交換水300gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤微粒子を含有する離型剤分散液を得た。パラフィンワックスの体積中位粒径(D
50)は400nmであった。
【0091】
(荷電制御剤分散液の調製)
荷電制御剤(オリエント化学工業(株)製、商品名:「ボントロンE−84」)50g、非イオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマルゲン150」)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤の体積中位粒径(D
50)は400nmであった。
【0092】
実施例1
(結着樹脂の水系分散体の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、結着樹脂A150g、酢酸エチル75gを仕込み、30℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、20%アンモニア水溶液を中和度60モル%になるように添加して中和し、30分撹拌した(工程1)。280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら、イオン交換水675gに非イオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマルゲンE430」)を3.15g溶解した水溶液を77分かけて添加した(工程2)。ついで30分かけて50℃に昇温させた後、酢酸エチルを減圧下で留去した(工程3)。その後20℃まで冷却後、分散液の固形分濃度を測定し、20重量%になるようにイオン交換水を加えて水系分散体を得た。その後、250r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら水系分散体を30℃にした後、非イオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマルゲンE430」)を1.35g混合し、完全に溶解させた(工程4)。その後、1規定の塩酸水溶液を滴下してpHを2に調整し、その後1時間撹拌した。その後、250r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら、5重量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを5に調整し、その後1時間撹拌し、結着樹脂分散体A−1を得た。
【0093】
(トナーの製造)
上記で得られた結着樹脂分散体を300g、着色剤分散液8g、離型剤分散液50g、荷電制御剤分散液2g及び脱イオン水52gを2L容の容器に入れ、カイ型の撹拌機で100r/分(周速31m/分)の撹拌下、20℃で0.1重量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら昇温し、50℃になった時点で温度保持した。3時間たった時点で平均粒子径が5μmに達した。その後、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマールE27C」、固形分28重量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加した。次いで80℃まで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これにより合一粒子を形成させた後、20℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150マイクロメートル)の金網でろ過した後、吸引ろ過を行い、洗浄、乾燥工程を経てトナー粒子を得た。
【0094】
(外添工程)
上記トナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:「NAX−50」、個数平均粒子径40nm)1.0重量部、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:「R972」、個数平均粒子径16nm)0.6重量部、酸化チタン(テイカ(株)製、商品名:「JMT−150IB」、個数平均粒子径15nm)0.5重量部を、ST、A0撹拌羽根を装着した10Lヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、3000rpmにて2分間撹拌して、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0095】
実施例2〜4
水を366g(実施例2)、2425g(実施例3)、225g(実施例4)に代えて、水/有機溶剤比を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体A−2〜A−4を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0096】
実施例5〜7
有機溶剤量を120g(実施例5)、7.5g(実施例6)、190g(実施例7)に代えて、結着樹脂/有機溶剤比を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体A−5〜A−7を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0097】
実施例8及び9
実施例1の結着樹脂の水系分散体の製造の各工程における界面活性剤の添加量を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体A−8及びA−9を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。なお、工程1〜4で添加する界面活性剤の総添加量を樹脂100重量部に対して3重量部とした。
【0098】
実施例10
実施例1の結着樹脂の水系分散体の製造の工程4の後、1規定の塩酸水溶液を滴下してpHを2に調整して水系分散体A−10を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0099】
実施例11
実施例1の結着樹脂の水系分散体の製造の工程4の後、pHを調整することなく水系分散体A−11を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0100】
実施例12
実施例1の結着樹脂の水系分散体の製造の工程1における中和剤として、アンモニア水溶液の代わりに5重量%水酸化ナトリウム水溶液を中和度が60モル%になるように添加したこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体A−12を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0101】
実施例13及び14
結着樹脂Aを結着樹脂B又はCに変更したこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体B−1及びC−1を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0102】
比較例1及び2
結着樹脂Aを結着樹脂D又はEに変更したこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体、D−1及びE−1を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0103】
比較例3
実施例1の結着樹脂の水系分散体の製造の工程1において中和剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして結着樹脂分散体A−13を得、トナーを得た。トナー評価結果を表2に示す。
【0104】
【表2-1】
【0105】
【表2-2】
【0106】
表2の結果から、本発明の方法によれば、高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性を同時に満足する電子写真用トナーを得ることができることがわかる。
すなわち、複合樹脂の原料モノマーであるカルボン酸成分中の不飽和脂肪族ジカルボン酸成分が30〜80モル%の範囲外である比較例1及び2、並びに中和剤を使用していない比較例3で得られたトナーは、いずれもトナーの高温高湿下での保存性、耐久性及び低温定着性を同時に満足しないことがわかる。