(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(2)において、非晶質ポリエステル(a1)と付加重合性モノマー(a2)の重量比〔(a1)/(a2)〕が97/3〜30/70である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
非晶質ポリエステル(a1)が、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端にカルボキシ基を有するジカルボン酸を含有するカルボン酸成分とアルコール成分を縮重合させて得られるものである、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
工程(1)が、水性媒体中で、結晶性ポリエステル(b)を含有する樹脂粒子(B)と凝集剤とを混合して凝集させた後に、樹脂粒子(A)を添加して凝集させ、コアシェル型の凝集粒子の水性分散液を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
工程(2)において、付加重合性モノマー(a2)を、複合化凝集粒子中のポリエステルの合計量に対して0.3〜10重量%となるように添加する、請求項4〜6のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
結晶性ポリエステル(b)と非晶質ポリエステル(c)の重量比〔(b)/(c)〕が5/95〜30/70である、請求項6又は7に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
結晶性ポリエステル(b)が、炭素数4〜12のα,ω−アルカンジオールと炭素数8〜12の脂肪族カルボン酸とを縮重合して得られる結晶性ポリエステルである、請求項4〜8のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
工程(3)が、前記複合化凝集粒子を含む系の温度を非晶質ポリエステル(a1)のガラス転移点より5℃低い温度以上の温度に保持して、融着させて、トナー粒子を得る工程である、請求項1〜11のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、下記の工程(1)〜(3)を含む。
下記の工程(1)〜(3)を含む、静電潜像現像用トナーの製造方法。
工程(1):水性媒体中で、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を主鎖に有する非晶質ポリエステル(a1)を含有する樹脂粒子(A)と凝集剤とを混合して凝集させ、凝集粒子の水性分散液を得る工程
工程(2):前記凝集粒子の水性分散液に、芳香族基を有する付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、複合化凝集粒子の水性分散液を得る工程
工程(3):前記複合化凝集粒子を融着させて、トナー粒子を得る工程
【0010】
本発明の製造方法によって得られた静電潜像現像用トナーが、耐熱保存性と高温高湿環境下での帯電性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の製造方法によると、樹脂粒子を凝集させて凝集粒子にした後で、芳香族基を有する付加重合性モノマーと重合させて複合化粒子にしているため、当該付加重合性モノマーに由来する芳香族基は、複合化粒子の表面部分に高密度に存在すると考えられる。このようにして、芳香族基がトナーの表面部分に高密度に存在することになり、トナーが耐熱保存性及び高温高湿環境下での帯電性に優れたものになるものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分及び工程等について説明する。
【0011】
[樹脂粒子(A)]
本発明の樹脂粒子(A)は、主鎖に非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)を含有する。
このように、樹脂粒子(A)は非晶質ポリエステルを含有するため、得られるトナーの耐熱保存性及び帯電性が良好なものとなる。また、樹脂粒子(A)を構成する非晶質ポリエステル(a1)は主鎖に非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するため、芳香族基を有する付加重合性モノマー(a2)と良好に重合する。
樹脂粒子(A)には、非晶質ポリエステル(a1)以外に任意の成分として、非晶質ポリエステル(a1)以外の非晶質ポリエステル、結晶性ポリエステル、着色剤を含有してもよい。
本発明の好適態様である、コアシェル型のトナーを得る場合には、結晶性ポリエステル及び着色剤を含有しないことが好ましい。
【0012】
〔非晶質ポリエステル(a1)〕
本発明において、非晶質性ポリエステルとは、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、〔(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))〕で定義される結晶性指数が1.4よりも大きいものであり、帯電性の観点から、1.45以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.6以上が更に好ましい。
非晶質ポリエステル(a1)は、主鎖に非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステルであり、構成単位の由来する原料モノマー(以下、単に「非晶質ポリエステル(a1)の原料モノマー」ともいう)は、アルコール成分とカルボン酸成分であり、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。
【0013】
非晶質ポリエステル(a1)の原料モノマーであるアルコール成分としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端に水酸基を有するジオール等が挙げられ、トナーの耐熱保存性及び帯電性を向上させる観点から、ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)を用いることが好ましい。
【0014】
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端に水酸基を有するジオールとしては、例えば不飽和脂肪族ジオールを含むアルコール成分を用いることが好ましい。
その他のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、アリルアルコール又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。前記アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
非晶質ポリエステル(a1)の原料モノマーであるカルボン酸成分には、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端にカルボキシ基を有するジカルボン酸、例えば不飽和脂肪族ジカルボン酸及び/又は不飽和脂環式ジカルボン酸を含むことが好ましい。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端にカルボキシ基を有するジカルボン酸を用いることで、得られるポリエステルの主鎖に炭素−炭素不飽和結合を導入することが出来る。
【0016】
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端にカルボキシ基を有するジカルボン酸(不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂環式ジカルボン酸)としては、フマル酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。反応性の観点から、フマル酸、マレイン酸及びテトラヒドロフタル酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
【0017】
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有し、その両端にカルボキシ基を有するジカルボン酸の含有量は、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜80モル%、更に好ましくは40〜70モル%である。
【0018】
その他のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。トナーの帯電性及び耐熱保存性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。前記カルボン酸成分は、単独で又は2種以上が含まれていてもよい。
なお、非晶質ポリエステル(a1)の原料モノマーのうち、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する原料モノマーとして、不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂環式ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジオールから選ばれる1種以上を含めばよいが、反応性の観点から、不飽和脂肪族ジカルボン酸及び/又は不飽和脂環式ジカルボン酸を含むことが好ましく、不飽和脂肪族ジカルボンのみであることがより好ましい。
【0019】
本発明において、非晶質ポリエステル(a1)に含有される酸基としては、カルボキシ基が、酸基のうち90モル%以上であることが好ましく、実質的に100モル%であることが好ましい。
【0020】
非晶質ポリエステル(a1)は、例えば、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより好適に製造することができる。
トナーの耐熱保存性の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。ポリエステルの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。スズ触媒としては、酸化ジブチルスズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ等が好ましく用いられる。
また、本発明においては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を用いるため、ラジカル重合禁止剤を用いることが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、ハイドロキノン、4−t−ブチルカテコール等が好ましい。
【0021】
トナーの耐熱保存性の観点から、非晶質ポリエステル(a1)の軟化点は好ましくは80〜165℃であり、ガラス転移温度は好ましくは50〜85℃である。樹脂粒子分散液の分散安定性並びにトナーの耐熱保存性及び帯電性の観点から、非晶質ポリエステル(a1)の酸価は、5〜40mgKOH/gであり、好ましくは5〜35mgKOH/g、より好ましくは10〜30mgKOH/gであり、更に好ましくは15〜25mgKOH/gである。
非晶質ポリエステル(a1)の数平均分子量は、トナーの耐久性、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、1,000〜50,000が好ましく、1,500〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が更に好ましく、2,000〜4,000が更に好ましい。
本発明において、非晶質ポリエステル(a1)のガラス転移温度、軟化点、数平均分子量、及び結晶性指数は、実施例記載の方法によって求められる。なお、非晶質ポリエステル(a1)を2種以上併用する場合、ガラス転移温度、及び軟化点、数平均分子量は、すべての非晶質ポリエステル(a1)を使用する比率で混合した混合物を用いて、実施例記載の方法によって求められる。
ガラス転移温度、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
【0022】
なお、樹脂粒子(A)中には、樹脂として、非晶質ポリエステル(a1)以外の樹脂を含んでいてもよいが、トナーの帯電性及び耐熱保存性の観点から、樹脂粒子(A)を構成する樹脂中における非晶質ポリエステル(a1)の含有量は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが更に好ましい。また、後述する樹脂粒子(B)を用いる場合には、樹脂粒子(A)を構成する樹脂中における非晶質ポリエステル(a1)の含有量は、60重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましく、実質100重量%であることが更に好ましい。
樹脂粒子(A)中に、含まれる非晶質ポリエステル(a1)以外の樹脂としては、トナーの低温定着性を向上させる観点から、結晶性ポリエステルが好ましく、樹脂粒子(A)中に結晶性ポリエステルを含む場合の樹脂粒子(A)における非晶質ポリエステル(a1)と結晶性ポリエステルとの重量比((a1)/(結晶性ポリエステル))は、95/5〜70/30であることが好ましく、92/8〜75/25がより好ましく、90/10〜80/20が更に好ましく、88/12〜83/17がより更に好ましい。
【0023】
〔着色剤〕
着色剤は、樹脂粒子(A)中に含有してもよく、また、後述する樹脂粒子(B)を用いる場合には樹脂粒子(B)中に含有することが好ましい。樹脂粒子(A)中に着色剤を含有する場合の詳細(種類、含有量等)は、後述する樹脂粒子(B)中に着色剤を含有する場合と同様である。
【0024】
〔樹脂粒子(A)の製造〕
樹脂粒子(A)は、非晶質ポリエステル(a1)を含む樹脂及び着色剤等の前記の任意成分を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(A)を含有する分散液として得る方法によって製造することが好ましい。
分散液を得る方法としては、樹脂等を水性媒体に添加し、分散機等によって分散処理を行う方法、樹脂等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられ、得られるトナーを小粒径とする観点から、転相乳化による方法が好ましい。以下、転相乳化による方法について述べる。
【0025】
まず、非晶質ポリエステル(a1)を含む樹脂、アルカリ水溶液、及び着色剤等の前記の任意成分を溶融して混合し、樹脂混合物を得る。
非晶質ポリエステル(a1)を含む樹脂が、複数の樹脂からなる場合には、予め、非晶質ポリエステル(a1)とその他の樹脂を混合したものを用いてもよいが、前記アルカリ水溶液及び任意成分を添加する際に同時に添加し、溶融して混合することによって得てもよい。
また、混合の際には、樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。
【0026】
アルカリ水溶液中のアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等やアンモニア等が挙げられるが、樹脂の分散性向上の観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。また、アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、1〜30重量%が好ましく、1〜25重量%がより好ましく、1.5〜20重量%が更に好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、なかでもノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤を併用することがより好ましく、樹脂を十分に乳化させる観点から、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを併用することが更に好ましい。
ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを併用する場合、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との重量比(ノニオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤)は、樹脂を十分に乳化させる観点から、0.3〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましい。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、なかでも樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類としては、ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリチレングリコ−ルモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、なかでも樹脂の乳化安定性の観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウムが好ましい。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、0.1〜10重量部が更に好ましく、0.5〜10重量部が更に好ましい。
【0029】
樹脂混合物を得る方法としては、非晶質ポリエステル(a1)、アルカリ水溶液、好ましくは界面活性剤、及び必要に応じて任意成分を容器に入れ、撹拌器によって撹拌しながら、樹脂を溶融して均一に混合する方法が好ましい。
樹脂を溶融し混合する際の温度は、非晶質ポリエステル(a1)のガラス転移点以上が好ましい。
【0030】
次に、前記の樹脂混合物に水性媒体を添加して、転相し、樹脂粒子(A)を含有する分散液を得る。
水性媒体としては水を主成分とするものが好ましく、転相乳化の安定性及び環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更に好ましく、実質100重量%が更に好ましい。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましく用いられる。
水以外の成分としては、炭素数1〜5の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキル(炭素数1〜3)ケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、トナーへの混入を防止する観点から、ポリエステルを溶解しない炭素数1〜5の脂肪族アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールがより好ましい。
【0031】
水性媒体を添加する際の温度は、均質な樹脂粒子を得る観点から、非晶質ポリエステル(a1)のガラス転移点以上が好ましい。
水性媒体の添加速度は、樹脂粒子を小粒径とする観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部/分であること好ましく、0.1〜30重量部/分であることがより好ましく、0.5〜10重量部/分であることが更に好ましく、0.5〜5重量部/分であることが更に好ましい。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
水性媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100重量部に対して100〜2000重量部が好ましく、150〜1500重量部がより好ましく、150〜500重量部が更に好ましい。
得られる樹脂粒子分散液の安定性及び取扱い容易性等の観点から、その固形分濃度は、好ましくは7〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜35重量%である。なお、固形分は樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
【0032】
得られた樹脂粒子(A)を含有する分散液中の樹脂粒子(A)の体積中位粒径(D
50)は0.02〜2μmであることが好ましい。高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、0.02〜1.5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが更に好ましい。ここで、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
また、樹脂粒子の粒度分布の変動係数(CV値)(%)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、40%以下であることが好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましく、28%以下が更に好ましい。なお、CV値は、下記式で表される値であり、具体的には実施例記載の方法で求められる。
CV値(%)=[粒度分布の標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)]×100
【0033】
また、トナーの耐熱保存性及び定着性を向上する観点から、樹脂粒子(A)に含まれるポリエステル樹脂を架橋することが好ましく、オキサゾリン基を有する化合物により架橋することがより好ましい。架橋の方法及びオキサゾリン基を有する化合物は、後述の樹脂粒子(B)の製造の場合と同様である。なお、樹脂粒子(B)を用いる場合には、樹脂粒子(B)を架橋することが好ましく、樹脂粒子(B)のみを架橋することがより好ましい。
【0034】
[凝集剤]
本発明において、トナー粒子とするための凝集粒子を得るために、凝集剤を用いて樹脂粒子(A)等を凝集させて、凝集粒子の分散液を得る。凝集剤を添加することによって凝集を効率的に行うことができる。
凝集剤は、過剰な凝集を防ぎつつ、目的の粒径のトナーを得る目的から、電解質を用いることが好ましく、塩を用いることがより好ましい。その価数としては1〜5価が好ましく、1〜2価がより好ましく、1価が更に好ましい。すなわち、1価の塩が好ましい。1価の塩としては、アンモニウム塩が好ましい。
凝集剤の具体例としては、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が用いられる。
無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられ、硫酸アンモニウムがより好ましい。
凝集剤の使用量は、トナーの帯電性の観点から、用いられる全ての樹脂粒子(樹脂粒子(A)及び(B))を構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下、更に好ましくは30重量部以下である。また、樹脂粒子の凝集性の観点から、全ての樹脂粒子を構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、更に好ましくは5重量部以上である。以上の点を考慮して、1価の塩の使用量は、全ての樹脂粒子を構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜40重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。
【0035】
[付加重合性モノマー(a2)]
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)は、芳香族基を有する付加重合性モノマーである。この付加重合性モノマー(a2)を用いて得られたトナーは芳香族基を有ゆするため、耐熱保存性及び高温高湿下での帯電性に優れる。
付加重合性モノマー(a2)の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸ベンジル(「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び又はメタクリル酸をいう)等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらのなかで、スチレン、メチルスチレン、及び(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく、トナーの帯電性、耐熱保存性の観点からは、スチレンがより好ましい。
本発明では、付加重合性モノマー(a2)とともに、他の付加重合性モノマーを凝集粒子に重合させてもよい。
他の付加重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の芳香族基を有さない(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。付加重合性モノマー(a2)とともに、他の付加重合性モノマーを重合する場合、複合化凝集粒子中の付加重合性モノマーを由来とする構成単位のうち、芳香族基を有する付加重合性モノマー(a2)を由来とする構成単位の含有量は、トナーの耐熱保存性の観点から、構成単位に係る付加重合性モノマーに換算して、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。
【0036】
[樹脂粒子(B)]
本発明の樹脂粒子(B)は、任意の成分であるが、本発明の好適態様である、コアシェル型のトナーを得る場合には、得られるトナーの帯電性を向上させる観点から、樹脂粒子(B)が好ましく用いられる。
本発明の樹脂粒子(B)は、結晶性ポリエステル(b)を含有する。
〔結晶性ポリエステル(b)〕
本発明において、結晶性ポリエステルとは、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、〔(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))〕で定義される結晶性指数が0.6〜1.4のものであり、トナーの低温定着性の観点から、0.8〜1.3のものが好ましく、0.9〜1.2のものがより好ましく、0.9〜1.1のものが更に好ましい。
結晶性ポリエステル(b)は、樹脂粒子分散液の分散安定性及び乳化性の観点から、分子末端に酸基を有することが好ましい。該酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の分散性と得られるトナーの保存安定性との両立の観点から、カルボキシ基が好ましい。
【0037】
結晶性ポリエステル(b)の融点は、トナーの耐熱保存安定性の観点から、50〜150℃が好ましく、55〜130℃がより好ましく、60〜90℃が更に好ましく、60〜80℃が更に好ましい。
結晶性ポリエステル(b)の軟化点は、同様の観点から、50〜140℃が好ましく、55〜130℃がより好ましく、60〜110℃が更に好ましく、60〜85℃が更に好ましい。
結晶性ポリエステル(b)の酸価は、トナーの樹脂粒子分散液の分散安定性及び帯電量の観点から、5〜30mgKOH/gが好ましく、10〜27mgKOH/gがより好ましく、10〜25mgKOH/gがより好ましく、15〜25mgKOH/gが更に好ましく、15〜22mgKOH/gが更に好ましい。
結晶性ポリエステル(b)の数平均分子量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、1,500〜50,000が好ましく、2,000〜10,000がより好ましく、2500〜5,000が更に好ましい。
【0038】
なお、結晶性ポリエステル(b)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、2種以上併用する場合、融点は、得られるトナーに含有される結晶性ポリエステル(b)中、最も重量比の大きい結晶性ポリエステル(b)の融点を、本発明における結晶性ポリエステル(b)の融点とする。なお、全てが同一の比率の場合は、最も低い値とする。
本発明において、結晶性ポリエステル(b)の融点、軟化点、数平均分子量、及び結晶性指数は、実施例記載の方法によって求められる。なお、結晶性ポリエステル(b)を2種以上併用する場合、数平均分子量、及び軟化点は、すべての結晶性ポリエステル(b)を使用する比率で混合した混合物を用いて、実施例記載の方法によって求められる。一方、融点は、最も重量比の大きい結晶性ポリエステル(b)を用いて、実施例記載の方法によって求められた値とし、すべてが同一の比率の場合には最も低い値とする。
【0039】
結晶性ポリエステル(b)は、酸成分とアルコール成分とを、好ましくは触媒存在下、重縮合反応させることによって好適に製造することができる。
酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられ、なかでもトナーの耐熱保存性及び帯電性の観点から、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
酸成分には、遊離の酸だけでなく、反応によって酸を生成する酸の無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。
脂肪族ジカルボン酸としては、トナーの耐熱保存性の観点から、炭素数2〜18が好ましく、炭素数8〜12がより好ましい。
炭素数2〜18の脂肪族カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等が挙げられ、なかでもトナーの耐熱保存性の観点から、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
脂環式ジカルボン酸の具体例としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
カルボン酸成分中、脂肪族カルボン酸は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、実質的に100モル%であることが更に好ましい。
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
アルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、ビスフェノールAの水素添加物、3価以上の多価アルコール等が挙げられ、なかでも、ポリエステルの結晶性を促進させ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールのなかでも、ポリエステルの結晶性を促進させ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、α,ω−アルカンジオールが好ましい。
α,ω−アルカンジオールとしては、得られるトナーの耐熱保存性の観点から、炭素数2〜18が好ましく、炭素数4〜12がより好ましく、炭素数6〜12が更に好ましい。
炭素数2〜18のα,ω−アルカンジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられ、なかでも得られるトナーの耐熱保存性の観点から、1,6−ヘキサンジオール及び1,9−ノナンジオールが好ましく、1,9−ノナンジオールがより好ましい。
炭素数2〜18のα,ω−アルカンジオールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
芳香族ジオールの具体例としては、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0041】
アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエステルの結晶性を促進する観点から、アルコール成分中、炭素数2〜18のα,ω−アルカンジオールが、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、実質的に100モル%であることが更に好ましい。
【0042】
酸成分とアルコール成分との好ましい組合せとしては、得られるトナーの低温定着性、耐熱保存性及びトナー飛散抑制の観点から、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの好ましい組合せが好ましく、炭素数4〜12のα,ω−アルカンジオールと炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸との好ましい組合せが更に好ましい。
【0043】
触媒としては、非晶質ポリエステルを得る際に用いるものと同様のものを用いることができ、なかでも縮重合反応の効率の観点から、スズ化合物がより好ましく、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズが好ましい。
触媒の使用量に制限はないが、酸成分とアルコール成分との総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.6重量部がより好ましい。
【0044】
縮重合反応は、反応容器に、酸成分及びアルコール成分を入れ、140〜200℃で5〜15時間維持して行うことが好ましく、更にその後、触媒を加え140〜200℃で1〜5時間維持して反応を進行させ、5.0〜20kPaに減圧して1〜10時間維持することで、結晶性ポリエステルを得る方法が好ましい。
【0045】
〔非晶質ポリエステル(c)〕
本発明の樹脂粒子(B)は、得られるトナーのシェル部分との密着性を高め、耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(c)を含有することが好ましい。
非晶質ポリエステル(c)は、得られるトナーのシェル部分との密着性を高め、耐熱保存性及び帯電性を向上させる観点から、樹脂粒子(A)中のポリエステルと同一の酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させて得られたポリエステルを含有することが好ましく、同一のポリエステルを含有することがより好ましく、樹脂粒子(A)中のポリエステルと同一の酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させて得られたポリエステルからなることがより好ましく、同一のポリエステルからなることが更に好ましい。樹脂粒子(A)中のポリエステルとは、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を主鎖に有する非晶質ポリエステル(a1)のことをいい、更に任意成分として前記非晶質ポリエステル(a1)以外の非晶質ポリエステル及び/又は結晶性ポリエステルを含有する場合には、更に当該非晶質ポリエステル及び/又は結晶性ポリエステルを加えた総てのポリエステルのことをいう。
樹脂粒子(B)における結晶性ポリエステル(b)及び非晶質ポリエステル(c)の総量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、樹脂粒子(B)を構成する樹脂中、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、実質的に100モル%であることが更に好ましい。樹脂粒子(B)における結晶性ポリエステル(b)と非晶質ポリエステル(c)との重量比((b)/(c))は、トナーの低温定着性、耐熱保存性を向上させる観点から、5/95〜50/50であることが好ましく、5/95〜30/70がより好ましく、89/2〜25/75がより好ましく、10/90〜20/80が更に好ましく、12/88〜17/83がより更に好ましい。
【0046】
非晶質ポリエステル(c)は、酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させることによって製造することができる。
酸成分としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられ、なかでもジカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸と3価以上の多価カルボン酸とを併用することがより好ましい。
ジカルボン酸としては、炭素数9〜14の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸、炭素数9〜14の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸、及び芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が好ましく、炭素数9〜14の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸及び/又は炭素数9〜14の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸と芳香族ジカルボン酸とを併用することがより好ましい。
【0047】
炭素数9〜14の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸及び/又は炭素数9〜14の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸の中でも、結晶性ポリエステルとの親和性を高め、ひいてはトナーの定着性を高める観点から、炭素数9〜14の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸が好ましい。
また、結晶性ポリエステルとの親和性を高め、ひいてはトナーの定着性を高める観点から、分岐アルキル基あるいは分岐アルケニル基の炭素数は10〜14が好ましく、12〜14がより好ましい。
炭素数9〜14の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸及び/又は炭素数9〜14の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられ、トナーの定着性を高める観点から、ドデセニルコハク酸が好ましい。
分岐構造はアルキル基及びアルケニル基のいかなる部分に存在してもよいが、複数の分岐構造を有する混合物であることが非晶質ポリエステルとの相溶性を高める観点から好ましい。
炭素数9〜14の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸及び/又は炭素数9〜14の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸は、結晶性ポリエステルとの親和性を高め、ひいてはトナーの定着性を高める観点から、好ましくは酸成分中に5〜60モル%含有され、より好ましくは20〜50モル%含有され、更に好ましくは30〜40モル%含有される。
【0048】
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
3価以上の多価カルボン酸としては、3〜5価の芳香族カルボン酸が好ましい。
3〜5価の芳香族カルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられ、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、トリメリット酸が好ましい。
3〜5価の芳香族カルボン酸は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、酸成分中に好ましくは5〜30モル%含有され、より好ましくは7〜23モル%含有され、更に好ましくは9〜12モル%含有される。
【0049】
好ましいアルコール成分として、芳香族ジオールが挙げられ、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)が好ましい。
【0050】
非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点は、トナーの耐久性、及び耐熱保存性の観点から、45〜70℃が好ましく、50〜68℃がより好ましく、58〜66℃が更に好ましい。
非晶質ポリエステル(c)の軟化点は、トナーの耐熱保存性の観点から、70〜165℃が好ましく、70〜140℃がより好ましく、90〜140℃が更に好ましく、100〜130℃が更に好ましい。
非晶質ポリエステル(c)の数平均分子量は、トナーの耐久性、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、1,000〜50,000が好ましく、1,500〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が更に好ましく、2,000〜4,000が更に好ましい。
本発明において、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度、軟化点、数平均分子量、及び結晶性指数は、実施例記載の方法によって求められる。なお、非晶質ポリエステル(c)を2種以上併用する場合、ガラス転移温度、及び軟化点、数平均分子量は、すべての非晶質ポリエステル(c)を使用する比率で混合した混合物を用いて、実施例記載の方法によって求められる。
【0051】
非晶質ポリエステル(c)の酸価は、樹脂の水性媒体中における乳化性の観点から、6〜35mgKOH/gが好ましく、10〜35mgKOH/gがより好ましく、15〜35mgKOH/gが更に好ましい。
非晶質ポリエステル(c)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
〔着色剤〕
樹脂粒子(B)は、樹脂のみからなる粒子であってもよく、着色剤を含有する着色剤含有樹脂粒子であってもよいが、トナーの粒度分布をシャープにする観点から、着色剤を含有する着色剤含有樹脂粒子であることが好ましい。
樹脂粒子(B)が着色剤含有樹脂粒子である場合、着色剤の含有量は、トナーの画像濃度の観点から、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
【0053】
なお、本発明において着色剤を用いる場合は、上記のとおり樹脂粒子(B)中に含有させて着色剤含有樹脂粒子として用いることに代えて又は用いると共に、水性媒体中に樹脂粒子(B)と共に含有させてもよいが、上記のとおり、トナーの粒度分布をシャープにする観点から、樹脂粒子(B)に含有させて用いることが好ましい。
着色剤としては、顔料及び染料が用いられ、トナーの画像濃度の観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料等が挙げられる。
シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましく、マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料の具体例としては、アクリジン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系等が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
〔樹脂粒子(B)の製造〕
樹脂粒子(B)は、結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂及び着色剤等の前記の任意成分を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(B)を含有する分散液として得る方法によって製造することが好ましい。
分散液を得る方法としては、前記の樹脂粒子(A)と同様であるが、樹脂等を水性媒体に添加し、分散機等によって分散処理を行う方法、樹脂等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられ、得られるトナーを小粒径とする観点から、転相乳化による方法が好ましい。以下、転相乳化による方法について述べる。
なお、樹脂粒子(A)の製造と同様の記載は、その旨を指摘して省略する。
【0055】
まず、結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂、アルカリ水溶液、及び着色剤等の前記の任意成分を溶融して混合し、樹脂混合物を得る。
結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂が、複数の樹脂からなる場合には、予め、結晶性ポリエステル(b)とその他の樹脂を混合したものを用いてもよいが、前記アルカリ水溶液及び任意成分を添加する際に同時に添加し、溶融して混合することによって得てもよい。例えば、結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂が、非晶質ポリエステル(c)を含有する場合には、結晶性ポリエステル(b)、非晶質ポリエステル(c)、アルカリ水溶液、及び前記の任意成分を溶融して混合し、樹脂混合物を得る方法が、トナーの低温定着性の観点から好ましい。
また、混合の際には、樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。
アルカリ水溶液中のアルカリの種類及び濃度は、前記の樹脂粒子(A)の製造の場合と同様である。
界面活性剤の種類及び含有量は、前記の樹脂粒子(A)の製造の場合と同様である。
【0056】
樹脂混合物を得る方法としては、結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂、アルカリ水溶液、及び前記の任意成分、好ましくは界面活性剤を容器に入れ、撹拌器によって撹拌しながら、樹脂を溶融して均一に混合する方法が好ましい。
樹脂を溶融し混合する際の温度は、結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂が、非晶質ポリエステル(c)を含む場合には、そのガラス転移点以上が好ましく、均質な樹脂粒子を得る観点から、より好ましくは結晶性ポリエステル(b)の融点以上がより好ましい。
【0057】
次に、前記の樹脂混合物に水性媒体を添加して、転相し、樹脂粒子(B)を含有する分散液を得る。
水性媒体としては水を主成分とするものが好ましく、転相乳化の安定及び環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更に好ましく、実質100重量%が更に好ましい。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましく用いられる。
水以外の成分については、前記の樹脂粒子(A)の製造の場合と同様である。
水性媒体を添加する際の温度は、結晶性ポリエステル(b)を含む樹脂が非晶質ポリエステル(c)を含む場合には、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点以上が好ましく、均質な樹脂粒子を得る観点から、結晶性ポリエステル(b)の融点以上がより好ましい。
水性媒体の添加速度及び使用量は、前記の樹脂粒子(A)の製造の場合と同様である。
得られた樹脂粒子(B)を含有する分散液中の樹脂粒子(B)の体積中位粒径(D
50)及び粒度分布の変動係数(CV値)(%)は、前記の樹脂粒子(A)の製造の場合と同様である。
【0058】
〔架橋〕
トナーの耐熱保存性及び定着性を向上する観点から、樹脂粒子(B)に含まれるポリエステル樹脂を架橋することが好ましく、オキサゾリン基を有する化合物により架橋することがより好ましい。
オキサゾリン基を有する化合物としては、分子内にオキサゾリン基を複数含有するものを使用することができるが、オキサゾリン基を含有するポリマーが好ましい。その重量平均分子量は、ポリエステル樹脂との反応性の観点から、好ましくは500〜2,000,000、より好ましくは1,000〜1,000,000である。
オキサゾリン基を含有するポリマーの市販品としては、(株)日本触媒社製のエポクロスWSシリーズ(水溶性タイプ、主鎖アクリル)、Kシリーズ(エマルションタイプ、主鎖スチレン/アクリル)等が挙げられる(いずれも商品名)。
前記オキサゾリン基を有する化合物の含有量あるいは添加量は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、樹脂分散液中、樹脂100重量部に対して、固形分として好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは1〜10重量部である。
【0059】
オキサゾリン基を有する化合物が添加され、かつ所定温度で混合することにより、樹脂分散液に分散している樹脂粒子の一部が架橋される。この時の温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜98℃である。オキサゾリン基を有する化合物による樹脂の架橋の存在は、架橋によって生成するアミド基により確認することができる。
【0060】
[離型剤粒子]
離型剤粒子は、凝集性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が好ましく、カルボキシ基を含有するアニオン性界面活性剤がより好ましく、ポリカルボン酸ナトリウムが更に好ましい。界面活性剤を使用する場合の含有量は、凝集性および得られるトナーの帯電性の観点から、離型剤100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
離型剤粒子の体積中位粒径は、得られるトナーの帯電性およびホットオフセットを防ぐ観点から0.1〜1μmが好ましく、0.1〜0.7μmがより好ましく、0.1〜0.5μmが更に好ましい。
離型剤粒子のCV値は、得られるトナーの帯電性の観点から、15〜50%が好ましく、15〜40%がより好ましく、15〜35%が更に好ましい。
【0061】
〔離型剤〕
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;シリコーンワックス類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等が挙げられる。これらの離型剤は、単独で又は2種以上を併用することができ、2種以上を併用することが好ましい。更に植物系ワックスと鉱物・石油系ワックスを併用することが、トナーの低温定着性の観点から、好ましい。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、60〜100℃が好ましく、65〜90℃がより好ましく、70℃〜90℃がさらに好ましく、75〜90℃がより更に好ましい。2種以上を併用する場合、トナーの低温定着性の観点から、いずれもの融点が60〜90℃であることが好ましい。
本発明において、離型剤の融点は、実施例記載の方法によって求められる。なお、離型剤を2種以上併用する場合、融点は、最も重量比の大きい離型剤を用いて、実施例記載の方法によって求められた値とし、すべてが同一の比率の場合には最も低い値とする。
離型剤の使用量は、トナーの離型性を向上して低温定着性を向上させる観点から、トナー中の樹脂100重量部に対して、通常1〜20重量部が好ましく、2〜15重量部がより好ましい。
【0062】
〔離型剤粒子の製造〕
離型剤粒子は、離型剤を水性媒体に分散して離型剤粒子の分散液として得ることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、離型剤と水性媒体とを、界面活性剤の存在下、離型剤の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。用いる分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
本製造で用いる水性媒体及び界面活性剤は、前記の樹脂混合物を得る際に用いられるものが好ましく用いられる。
【0063】
[静電潜像現像用トナーの製造方法]
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、下記の工程(1)〜(3)を含む。
工程(1):水性媒体中で、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を主鎖に有する非晶質ポリエステル(a1)を含有する樹脂粒子(A)と凝集剤とを混合して凝集させ、凝集粒子の水性分散液を得る工程
工程(2):前記凝集粒子の水性分散液に、芳香族基を有する付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、複合化凝集粒子の水性分散液を得る工程
工程(3):前記複合化凝集粒子を融着させて、トナー粒子を得る工程
【0064】
[工程(1)]
工程(1)は、水性媒体中で、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を主鎖に有する非晶質ポリエステル(a1)を含有する樹脂粒子(A)と凝集剤とを混合して凝集させ、凝集粒子の水性分散液を得る工程である。
本工程においては、いかなる方法で樹脂粒子(A)と凝集剤を混合してもよい。たとえば、樹脂粒子(A)の分散液に凝集剤を添加する方法、凝集剤を含有する水性媒体中に樹脂粒子(A)の分散液を添加する方法等が挙げられる。
このうち、本発明の好適な態様であるコアシェル型のトナーを得る場合には、凝集剤を含有する水性媒体中に樹脂粒子(A)の分散液を添加する方法が好ましく、その場合、本工程が、水性媒体中で、結晶性ポリエステル(b)を含有する樹脂粒子(B)に凝集剤を混合して、凝集させた後に、更に、樹脂粒子(A)を添加して、凝集させ、コアシェル型の凝集粒子の水性分散液を得るものであることが好ましい。
以下に、好適態様であるコアシェル型のトナーを得る場合について説明する。
【0065】
本工程においては、離型剤粒子を用いることが好ましく、離型剤粒子を用いる場合には、まず、樹脂粒子(B)及び離型剤粒子を水系媒体中で混合して、混合分散液を得ることが好ましい。
なお、任意の成分として着色剤を混合することが好ましいが、着色剤はそれのみで別の粒子として混合してもよく、樹脂粒子(B)に含まれていてもよいが、凝集制御の観点から、樹脂粒子(B)に含まれていることが好ましい。
混合の順に制限はなく、いずれかを順に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
【0066】
混合分散液中、樹脂粒子(B)は、10〜40重量部が好ましく、20〜30重量部がより好ましい。水系媒体は60〜90重量部が好ましく、70〜80重量部となるように混合することがより好ましい。
また、着色剤は、画像濃度の観点から、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、3〜15重量部がより好ましい。離型剤粒子は、トナーの離型性及び帯電性の観点から、樹脂粒子(B)を構成する樹脂と着色剤との合計100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
混合温度は、凝集制御の観点から、0〜40℃が好ましい。
【0067】
次に、凝集剤を混合して、混合分散液中の粒子を凝集させて、凝集粒子の分散液(以下、凝集粒子(1)の分散液ともいう)を得る。
凝集の方法としては、混合分散液の入った容器に、凝集剤を好ましくは水溶液として滴下する。凝集剤は一時に添加してもよいし、断続的あるいは連続的に添加してもよいが、添加時及び添加終了後には、十分な撹拌を行うことが好ましい。凝集制御およびトナー製造時間短縮の観点から、凝集剤の滴下時間は1〜120分が好ましい。また、滴下温度は凝集制御の観点から0〜50℃が好ましい。
得られた凝集粒子(1)の体積中位粒径は、小粒径化の観点から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜9μm、更に好ましくは3〜6μmである。また、CV値は、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは25%以下である。
【0068】
更に、樹脂粒子(A)を添加して、凝集させ、コアシェル型の凝集粒子の水性分散液を得る。この場合、凝集粒子(1)の分散液に、樹脂粒子(A)の分散液を添加して、凝集粒子(1)に更に樹脂粒子(A)を付着させ、凝集粒子(2)を得ることが好ましい。
凝集粒子(1)分散液に樹脂粒子(A)分散液を添加するときには、凝集粒子(1)に樹脂粒子(A)を効率的に付着させるために、前記凝集剤を更に用いてもよい。
系内の温度は、トナーの耐熱保存性の観点から、樹脂粒子(B)に含まれる結晶性ポリエステル(b)の融点より5℃以上低く、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点より3℃以上低いことが好ましく、5℃以上低いことがより好ましい。当該温度範囲で凝集粒子(2)の製造を行うと、得られるトナーの低温定着性や保存安定性が良好になる。その理由は定かではないが、凝集粒子(2)同士の融着が生じないために、粗大粒子の発生が抑制されることと、結晶性ポリエステル(b)の結晶性が維持できるためであると考えられる。
【0069】
樹脂粒子(A)の添加量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)との重量比(樹脂粒子(A)/樹脂粒子(B))が、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.1〜0.5、更に好ましくは0.2〜0.4となる量が好ましい。
樹脂粒子(B)に比べ、樹脂粒子(A)を少量添加することで、結晶性ポリエステル(b)と非晶質ポリエステル(c)が混合された、本発明のトナーのコア部分の効果を十分に発現することができ、更に高温オフセット性を向上させ、耐熱保存性も向上させることができる。
【0070】
樹脂粒子(A)分散液は、一定の時間をかけて連続的に添加してもよく、一時に添加してもよく、複数回に分割して添加してもよいが、一定の時間をかけて連続的に添加するか、複数回に分割して添加することが好ましい。前記のように添加することで、樹脂粒子(A)が凝集粒子(1)に選択的に付着しやすくなる。なかでも選択的な付着を促進する観点及び製造の効率化の観点から一定の時間を掛けて連続的に添加することが好ましい。連続的に添加する場合の時間は、均一な凝集粒子(2)を得る観点および製造時間短縮の観点から、1〜10時間が好ましく、2〜7時間がより好ましい。
【0071】
樹脂粒子(A)の全量を添加し、トナーとして適度な粒径に成長したところで凝集を停止させる。
凝集を停止させる粒径としては、体積中位粒径が、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜10μm、更に好ましくは3〜9μm、更に好ましくは4〜6μmである。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられるが、不必要な凝集を確実に防止する観点から、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。凝集停止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
凝集停止剤の添加量は、凝集停止性およびトナーへの凝集停止剤の残留を低減する観点から、系中の樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.1〜8重量部である。凝集停止剤は、いかなる形態で添加してもよいが、生産性の観点から、水溶液で添加することが好ましい。
【0072】
工程(1)で得られる凝集粒子(2)の体積中位粒径は、トナーの高画質化の観点から、1〜10μmであることが好ましく、2〜10μmがより好ましく、3〜9μmが更に好ましく、4〜6μmが更に好ましい。
【0073】
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)で得られた凝集粒子(2)の水性分散液に、芳香族基を有する付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、複合化凝集粒子の水性分散液を得る工程である。
本工程は、後述の工程(3)と同時に行ってもよく、同時に開始することが好ましい。すなわち、付加重合性モノマー(a2)を添加した後に、工程(1)で得られた凝集粒子の融着が開始する温度まで昇温して、その温度に維持することによって、付加重合性モノマー(a2)の重合と凝集粒子の融着が同時に進行させることができる。
【0074】
本工程の重合には、任意の重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて添加する。重合開始剤としては、水溶性の開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましく、過硫酸塩が更に好ましい。比較的低温で重合を低温で進行させるという観点から、過硫酸ナトリウムもしくは過硫酸アンモニウムが好ましい。更に還元剤を組み合わせて、レドックス開始剤として用いることが好ましい。組み合わせる還元剤としては、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、アミン化合物が好ましく、アスコルビン酸及びその塩がより好ましく、アルコルビン酸塩が更に好ましい。
前記の凝集粒子、好ましくは凝集粒子(2)の分散液と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは65〜80℃である。
本工程における付加重合性モノマー(a2)の添加量は、得られるトナーの耐熱保存性と高温高湿下での帯電性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(a1)と付加重合性モノマー(a2)の重量比〔(a1)/(a2)〕が、99/1〜70/30であることが好ましく、98/2〜80/20であることがより好ましく、97/3〜90/10であることが更に好ましい。
【0075】
本工程における付加重合性モノマー(a2)の添加量は、得られるトナーの耐熱保存性と高温高湿下での帯電性を向上させる観点から、複合化凝集粒子中のポリエステルの合計量に対して、0.3〜10重量%であることが好ましく、0.9〜7重量%であることが好ましく、1.1〜5重量%であることが更に好ましい。
また、複合化凝集粒子中のポリエステルを由来する全カルボン酸成分中における、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有しその両端にカルボキシ基を有するジカルボン酸の含有量は、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは6〜45モル%、更に好ましくは7〜40モル%である。
ここで、「複合化凝集粒子中のポリエステル」とは、(i)複合化凝集粒子の構成要素のうち樹脂粒子(A)及び樹脂粒子(B)のみにポリエステルが含まれる場合には、樹脂粒子(A)中のポリエステルと樹脂粒子(B)中のポリエステルの総てのことをいい、(ii)複合化凝集粒子が樹脂粒子(A)及び樹脂粒子(B)以外にもポリエステルを含有する構成要素を含む場合には、更に当該構成要素中のポリエステルを加えた総てのポリエステルのことをいう。樹脂粒子(A)中のポリエステルとは、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を主鎖に有する非晶質ポリエステル(a1)のことをいい、更に任意成分として前記非晶質ポリエステル(a1)以外の非晶質ポリエステル及び/又は結晶性ポリエステルを含有する場合には、更に当該非晶質ポリエステル及び/又は結晶性ポリエステルを加えた総てのポリエステルのことをいう。樹脂粒子(B)中のポリエステルとは、結晶性ポリエステル(b)のことをいい、更に任意成分として非晶質ポリエステル(c)を含有する場合には、更に当該非晶質ポリエステル(c)を加えた総てのポリエステルのことをいう。
【0076】
[工程(3)]
工程(3)は、前記複合化凝集粒子を融着させて、トナー粒子を得る工程である。本工程は、前述の通り、工程(2)と同時に行ってもよく、同時に開始することが好ましい。同時に開始することによって、複合化凝集粒子の表面形状の平滑化と付加重合性モノマー(a2)の重合による付加重合樹脂の形成が並行して進行し、トナーの表面部分に高密度の付加重合性樹脂が存在するトナー粒子が得られ、それによって、ポリエステル樹脂が芳香族基を有する付加重合性樹脂で効率的に覆われ、高温高湿度下においても帯電性の低下がなく、耐熱保存性も良好になるものと考えられる。また、融着を行う温度においては、ポリエステル樹脂の運動性が増すため、非晶質ポリエステル(a1)に含まれる非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合と付加重合性モノマー(a2)との反応性も向上し、付加重合性樹脂のグラフトかが効率的に進行するものと考えられる。
【0077】
融着性及びトナー生産性の観点から、本工程においては、好ましくは非晶質ポリエステル(a1)のガラス転移点より10℃低い温度以上、より好ましくはガラス転移点より5℃低い温度以上、更に好ましくはガラス転移点以上、更に好ましくはガラス転移点より5℃高い温度以上の温度で保持し、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、本工程においては、好ましくは非晶質ポリエステル(a1)のガラス転移点より30℃高い温度以下、より好ましくは20℃高い温度以下、更に好ましくは15℃高い温度以下の温度で保持する。
本工程においては、粒子融着性の観点から、好ましくは55〜85℃、より好ましくは60〜80℃、更に好ましくは65〜75℃で保持する。
本工程における保持時間は、粒子融着性、耐熱保存性、帯電性及びトナー生産性の観点から、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは0.7〜18時間、更に好ましくは1〜12時間である。
【0078】
高画質の画像を得る観点から、本工程で得られるコアシェル粒子の体積中位粒径は、好ましくは2〜10μm、より好ましくは2〜8μm、より好ましくは2〜7μm、更に好ましくは3〜8μm、更に好ましくは4〜6μmである。
なお、本工程で得られる融着したトナー粒子の平均粒径は、凝集粒子(2)の平均粒径以下であることが好ましい。すなわち、本工程において、トナー粒子同士の凝集、融着が生じないことが好ましい。
【0079】
[後処理工程]
本発明においては、工程(3)の後に後処理工程を行ってもよく、トナー粒子を単離することによってトナーを得ることが好ましい。
工程(3)で得られたトナー粒子は、水性媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。樹脂粒子(A)及び(B)の製造の際にノニオン性界面活性剤を用いた場合、添加したノニオン性界面活性剤も除去することが好ましいため、ノニオン性界面活性剤の曇点以下で水性溶液により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましいが、乾燥時の温度は、トナー粒子自体の温度が結晶性ポリエステルの融点より5℃以上低くなるように設定することが好ましく、10℃以上低くなるように設定することがより好ましい。乾燥方法としては、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等を用いることが好ましい。乾燥後の水分含量は、トナーの帯電性の観点から、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下に調整される。
【0080】
[静電潜像現像用トナー]
(トナー)
乾燥等を行うことによって得られたトナー粒子を本発明のトナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものを静電潜像現像用トナーとして用いることが好ましい。
得られたトナーの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは60〜140℃、より好ましくは60〜130℃、更に好ましくは60〜120℃である。また、ガラス転移点は、低温定着性、耐久性及び保存安定性の観点から、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。
トナーの体積中位粒径は、トナーの高画質化と生産性の観点から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜8μm、更に好ましくは3〜7μm、更に好ましくは4〜6μmである。
トナーのCV値は、高画質化と生産性の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは27%以下、更に好ましくは25%以下、更に好ましくは22%以下である。
【0081】
(外添剤)
本発明の静電潜像現像用トナーは、前記トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、任意の微粒子が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、外添剤による処理前のトナー粒子100重量部に対して、好ましくは1〜6重量部、より好ましくは2〜5重量部である。
【0082】
本発明により得られる静電潜像現像用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤としてより好適に使用することができる。
【実施例】
【0083】
ポリエステル、樹脂粒子、トナー等の各性状値については次の方法により測定、評価した。
【0084】
[ポリエステルの酸価]
JIS K0070に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0085】
[ポリエステルの軟化点、吸熱の最大ピーク温度、融点、ガラス転移点及び結晶性指数]
(1)軟化点
フローテスター((株)島津製作所製、商品名:CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)融点及びガラス転移点
示差走査熱量計(PerkinElmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度50℃/分で0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)とした。結晶性ポリエステルの時には該ピーク温度を融点とした。また、非晶質ポリエステルの場合に吸熱ピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移点とした。
(3)結晶性指数
示差走査熱量計(PerkinElmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温した。観測されるピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度(2)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(2)(℃))により、結晶性指数を求めた。
【0086】
[ポリエステルの数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出する。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、ポリエステル試料を溶媒(クロロホルム)に溶解させる。次いで、この溶液をメッシュ0.45μmのフッ素樹脂フィルター[アドバンテック(株)製、「DISMIC−25JP」]を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量分布測定
下記装置を用いて、溶媒(クロロホルム)を毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の2.63×10
3、2.06×10
4、1.02×10
5、ジーエルサイエンス社製の2.10×10
3、7.00×10
3、5.04×10
4)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC−8220 GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMH
XL+G3000H
XL(東ソー(株)製)
【0087】
[樹脂粒子及び離型剤粒子の体積中位粒径(D
50)、体積平均粒径(D
v)及び粒度分布]
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機((株)堀場製作所製、商品名:LA−920)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D
50)を測定した。
また、粒度分布としてCV値(%)は、前記粒径測定機で表示される体積平均粒径(D
v)と標準偏差から下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径(D
v))×100
【0088】
[樹脂粒子分散液、離型剤粒子分散液の固形分濃度]
赤外線水分計((株)ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、水分%を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M
M:水分(%)=[(W−W
0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
W
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0089】
[トナーの体積中位粒径(D
50)]
トナーの体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定機:コールターマルチサイザーIII(商品名、ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:マルチサイザーIIIバージョン3.51(商品名、ベックマンコールター社製)
・電解液:アイソトンII(商品名、ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、商品名
:エマルゲン109P、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5重量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求めた。
【0090】
[トナーの高温高湿度下での帯電性評価(HH帯電量)]
気温30℃、相対湿度85%にてトナー2.1gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業社製、平均粒子径:40μm)27.9gとを50ccの円筒形ポリプロピレン製ボトル((株)ニッコー製)に入れ、縦横に10回ずつ振り、その後、ボールミルを用いて混合し、混合時間が1時間における帯電量を、q/mメーター(EPPING社製)を用いて測定し、帯電量を得た。帯電量の絶対値が高いほど、帯電性が良好である。
なお測定機器、設定等は下記の通りである。
測定機器:EPPING社製 q/m−meter
設定:メッシュサイズ:635メッシュ(目開き:24μm、ステンレス製)
ソフトブロー、ブロー圧(1000V)
吸引時間:90秒
帯電量(μC/g)=90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)
【0091】
[トナーの耐熱保存性評価]
内容積100mlの広口ポリビンにトナー20gを入れて密封し、温度50℃環境下で12時間静置した。その後、25℃の温度下で密封したまま12時間以上静置して冷却し、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社(株))製、商品名)の振動台に、目開き250μmのフルイをセットし、その上に前記トナー20gを乗せ30秒間振動を行い、フルイ上に残ったトナー重量を測定した。数値が小さいほど、トナーがブロッキングしておらず耐熱保存性に優れることを表す。
【0092】
[ポリエステルの製造]
製造例1
(結晶性ポリエステルX1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,9−ノナンジオール3936g、セバシン酸4848gを入れた。撹拌しながら、140℃に昇温し、140℃で3時間維持した後、140℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ50gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて4時間維持し、結晶性ポリエステルX1を得た。
【0093】
製造例2
(非晶質ポリエステルY1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1750g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1625g、テレフタル酸1145g、ドデセニルコハク酸無水物161g、トリメリット酸無水物480g、及び酸化ジブチルスズ10gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、220℃に昇温し、220℃で5時間維持した後、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶質ポリエステルY1を得た。
【0094】
製造例3
(非晶質ポリエステルY2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3374g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン33g、テレフタル酸672g、及び酸化ジブチルスズ10gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、5時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸696g、tert−ブチルカテコール0.49gを加え、210℃の温度下で5時間維持した後に、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて4時間維持させて、非晶質ポリエステルY2を得た。
【0095】
製造例4
(非晶質ポリエステルY3の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3528g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1404g、テレフタル酸1248g、ドデセニルコハク酸無水物1541g、及び酸化ジブチルスズ20gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で6時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物300gを入れ、215℃で1時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて3時間維持させて、非晶質ポリエステルY3を得た。
【0096】
製造例5
(非晶質ポリエステルY4の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3500g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3250g、テレフタル酸1594g、アジピン酸286g、トリメリット酸無水物576g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)スズ46gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で5時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、27.0kPaにて1時間維持させて、ポリエステル樹脂Y4を得た。
【0097】
製造例6
(非晶質ポリエステルY5の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3004g、フマル酸996g、tert−ブチルカテコール2g、及び酸化ジブチルスズ8gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、5時間かけて210℃まで昇温し、210℃で2時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3KPaにて1時間維持した後、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が100℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶質ポリエステルY5を得た。
【0098】
製造例7
(非晶質ポリエステルY6の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン32g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2896g、テレフタル酸1524g、グリセリン83g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)スズ20gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で3.5時間維持し、非晶質ポリエステルY6を得た。
以上のポリエステルの物性を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
[樹脂粒子の製造]
製造例8
(樹脂粒子分散液1の製造)
撹拌機を装備したフラスコに、非晶質ポリエステルY1 210g、非晶質ポリエステルY2 300g、結晶性ポリエステルX1 90g、銅フタロシアニン顔料(商品名:ECB301、大日精化工業(株)製)45g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤、商品名:エマルゲン150、花王(株)製)8.5g、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、商品名:ネオペレックスG−15、花王(株)製)80.0g、5重量%水酸化カリウム水溶液278.5gを入れ、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
次に、系の温度を95℃に保持し、撹拌しながら、脱イオン水1222gを6g/分の速度で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、25℃で撹拌しながら、オキサゾリン基含有ポリマー水溶液((株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−700、不揮発分25重量%、アクリル主鎖)28gを添加し、その後95℃に温度を上げ95℃で1時間保持した。次に、25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュ(目開き105μm)の金網を通して、樹脂粒子分散液1を得た。固形分濃度は32%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は286nm、CV値は29%であった。
【0101】
製造例9
(樹脂粒子分散液2の製造)
製造例8において、非晶質ポリエステルY1 210gと非晶質ポリエステルY2 300gを、非晶質ポリエステルY3 510gに置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子分散液2を得た。固形分濃度は32%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は154nm、CV値は26%であった。
【0102】
製造例10
(樹脂粒子分散液3の製造)
製造例8において、非晶質ポリエステルY1 210gと非晶質ポリエステルY2 300gを、非晶質ポリエステルY3 210gと非晶質ポリエステルY4 300gに置き換えた以外は製造例9と同様にして樹脂粒子分散液3を得た。固形分濃度は32%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は301nm、CV値は26%であった。
【0103】
製造例11
(樹脂粒子分散液4の製造)
撹拌機を装備したフラスコに、非晶質ポリエステルY1 210g、非晶質ポリエステルY2 390g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤、商品名:エマルゲン150、花王(株)製)6g、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、商品名:ネオペレックスG−15、花王(株)製)40g、5重量%水酸化カリウム水溶液268gを入れ、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
次に、系の温度を95℃に保持し、撹拌しながら、脱イオン水1145gを6g/分の速度で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュの金網を通し、樹脂粒子分散液4を得た。固形分濃度は31%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は158nm、CV値は24%であった。
【0104】
製造例12
(樹脂粒子分散液5の製造)
製造例11において、非晶質ポリエステルY1 210g及び非晶質ポリエステルY2 390gを、非晶質ポリエステルY2 600gに置き換えた以外は製造例11と同様にして樹脂粒子分散液5を得た。固形分濃度は31%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は142nm、CV値は24%であった。
【0105】
製造例13
(樹脂粒子分散液6の製造)
製造例11において、非晶質ポリエステルY1 210g及び非晶質ポリエステルY2 390gを、非晶質ポリエステルY5 600gに置き換えた以外は製造例11と同様にして樹脂粒子分散液6を得た。固形分濃度は31%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は116nm、CV値は23%であった。
【0106】
製造例14
(樹脂粒子分散液7の製造)
製造例11において、非晶質ポリエステルY2 390gを、非晶質ポリエステルY6 390gに置き換えた以外は製造例11と同様にして樹脂粒子分散液7を得た。固形分濃度は31%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D
50)は139nm、CV値は25%であった。
【0107】
[離型剤粒子の製造]
製造例15
(離型剤粒子分散液の製造)
ビーカーで、脱イオン水200gにポリカルボン酸ナトリウム水溶液としてアクリル酸ナトリウム−マレイン酸ナトリウム共重合体水溶液(花王(株)製、商品名:ポイズ521、有効濃度40重量%)3.8gを溶解させた後、これにカルナウバワックス((株)加藤洋行製、商品名:カルナウバワックス1号、融点83℃)5g及びパラフィンワックス(日本精鑞(株)製、商品名:HNP−9、融点75℃)45gを添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、カルナウバワックスとパラフィンワックスとが一体となって溶融した溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を含んだ水溶液を更に90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名:US−600T)で30分間分散処理を行った後に室温まで冷却し、ここにイオン交換水を加え、離型剤固形分20重量%に調整し、離型剤粒子分散液を得た。離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D
50)は450nm、CV値は30%であった。
【0108】
[トナーの製造]
実施例1
(トナー1の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液1 250g、脱イオン水52g、及び離型剤粒子分散液14gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を25℃で撹拌しながら、硫酸アンモニウム20.1gを脱イオン水165gに溶解した水溶液を25℃で30分かけて滴下した後、55℃まで120分かけて昇温し、55℃を保持することで、凝集粒子の体積中位粒径が4.5μmの凝集粒子を含む分散液を得た。
この凝集粒子を含む分散液を25℃まで冷却し、攪拌しながら、フラスコ内を窒素置換した後、窒素雰囲気下、スチレンモノマー1.10gを滴下した。次いで、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:エマールE27C、固形分:28重量%)11.9g及び脱イオン水941gを混合した水溶液を添加した後、1時間かけて70℃まで昇温した。70℃に到達後、1%過硫酸ナトリウム水溶液1.72gを添加し続いて1%アスコルビン酸ナトリウム水溶液0.18gを添加し、70℃で3時間保持し、体積中位粒径が4.4μmの融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を25℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、乾燥を行って、トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:RY50、個数平均粒径;0.04μm)2.5重量部、疎水性シリカ(キャボット社製、商品名:キャボシールTS720、個数平均粒径;0.012μm)1.0重量部、及びポリマー微粒子(日本ペイント(株)製、商品名:ファインスフェアP2000、個数平均粒径;0.5μm)0.8重量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのふるいを通過させてトナー1を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0109】
実施例2
(トナー2の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液1 250g、脱イオン水52g、及び離型剤粒子分散液18gを25℃で混合した。次に、該混合物を25℃で撹拌しながら、硫酸アンモニウム20.1gを脱イオン水165gに溶解した水溶液を25℃で30分かけて滴下した後、55℃まで120分かけて昇温し、55℃で保持し、体積中位粒径が4.6μmの凝集粒子を含む分散液(1)を得た。
前記凝集粒子分散液(1)(全量)の温度を50℃に冷却した後、分散液を毎時1℃の速度で昇温しながら、樹脂粒子分散液4 70gと脱イオン水22gとを混合した混合液を、前記分散液に180分かけて滴下し、体積中位粒径が5.0μmの凝集粒子分散液(2)を得た。
凝集粒子分散液(2)を25℃まで冷却し攪拌しながら、フラスコ内を窒素置換した後、窒素雰囲気下、スチレンモノマー1.10gを滴下した。次いで、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:エマールE27C、固形分:28重量%)15.5g及び脱イオン水1223gを混合した水溶液を添加した後、1時間かけて70℃まで昇温した。70℃に到達後、1%過硫酸ナトリウム水溶液1.72gを添加し、続いて1%アスコルビン酸ナトリウム水溶液0.18gを添加し、3時間保持し、体積中位粒径が4.9μmの融着したコアシェル粒子の分散液を得た。その後、25℃まで冷却した。
得られたコアシェル粒子分散液を25℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、乾燥を行って、トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:RY50、個数平均粒径;0.04μm)2.5重量部、疎水性シリカ(キャボット社製、商品名:キャボシールTS720、個数平均粒径;0.012μm)1.0重量部、及びポリマー微粒子(日本ペイント(株)製、商品名:ファインスフェアP2000、個数平均粒径;0.5μm)0.8重量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのふるいを通過させてトナー2を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0110】
実施例3
(トナー3の作製)
実施例2において、樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液2に変更した以外は実施例2と同様にしてトナー3を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0111】
実施例4
(トナー4の作製)
実施例3において、スチレンモノマー1.10gを0.76gに、1%過硫酸ナトリウム水溶液1.72gを1.18gに、1%アスコルビン酸ナトリウム水溶液0.18gを0.12gに、変更した以外は実施例3と同様にしてトナー4を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0112】
実施例5
(トナー5の作製)
実施例3において、スチレンモノマー1.10gを1.70gに、1%過硫酸ナトリウム水溶液1.72gを2.65gに、1%アスコルビン酸ナトリウム水溶液0.18gを0.28gに変更した以外は実施例3と同様にしてトナー5を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0113】
実施例6
(トナー6の作製)
実施例2において、樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液2に、樹脂粒子分散液4を樹脂粒子分散液5に変更した以外は実施例2と同様にしてトナー6を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0114】
実施例7
(トナー7の作製)
実施例2において、樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液2に、樹脂粒子分散液4を樹脂粒子分散液6に変更した以外は実施例2と同様にしてトナー7を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0115】
実施例8
(トナー8の作製)
実施例2において、樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液3に変更した以外は実施例2と同様にしてトナー8を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0116】
比較例1
(トナー9の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液1 250g、脱イオン水52g、及び離型剤粒子分散液14gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を25℃で撹拌しながら、硫酸アンモニウム20.1gを脱イオン水165gに溶解した水溶液を25℃で30分かけて滴下した後、55℃まで120分かけて昇温し、55℃を保持することで、凝集粒子の体積中位粒径が4.6μmの凝集粒子を含む分散液を得た。
この凝集粒子を含む分散液を25℃まで冷却し、攪拌しながら、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:エマールE27C、固形分:28重量%)11.9g及び脱イオン水941gを混合した水溶液を添加した後、1時間かけて70℃まで昇温した。70℃に到達後、70℃で1時間保持し、体積中位粒径が4.5μmの融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を25℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、乾燥を行って、トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:RY50、個数平均粒径;0.04μm)2.5重量部、疎水性シリカ(キャボット社製、商品名:キャボシールTS720、個数平均粒径;0.012μm)1.0重量部、及びポリマー微粒子(日本ペイント(株)製、商品名:ファインスフェアP2000、個数平均粒径;0.5μm)0.8重量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのふるいを通過させてトナー9を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0117】
比較例2
(トナー10の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液2 250g、脱イオン水52g、及び離型剤粒子分散液18gを25℃で混合した。次に、該混合物を25℃で撹拌しながら、硫酸アンモニウム20.1gを脱イオン水165gに溶解した水溶液を25℃で30分かけて滴下した後、55℃まで120分かけて昇温し、55℃で保持し、体積中位粒径が4.7μmの凝集粒子を含む分散液(1)を得た。
前記凝集粒子分散液(1)(全量)の温度を50℃に冷却した後、分散液を毎時1℃の速度で昇温しながら、樹脂粒子分散液4 70gと脱イオン水22gとを混合した混合液を、前記分散液に180分かけて滴下し、体積中位粒径が5.0μmの凝集粒子分散液(2)を得た。
凝集粒子分散液(2)を25℃まで冷却し攪拌しながら、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:エマールE27C、固形分:28重量%)15.5g及び脱イオン水1223gを混合した水溶液を添加した後、1時間かけて70℃まで昇温した。70℃で1時間保持し、体積中位粒径が4.9μmの融着したコアシェル粒子の分散液を得た。
得られたコアシェル粒子分散液を25℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、乾燥を行って、トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:RY50、個数平均粒径;0.04μm)2.5重量部、疎水性シリカ(キャボット社製、商品名:キャボシールTS720、個数平均粒径;0.012μm)1.0重量部、及びポリマー微粒子(日本ペイント(株)製、商品名:ファインスフェアP2000、個数平均粒径;0.5μm)0.8重量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのふるいを通過させてトナー10を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0118】
比較例3
(トナー11の作製)
実施例2において、樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液2に、樹脂粒子分散液4を樹脂粒子分散液7に変更した以外は実施例2と同様にしてトナー11を得た。トナーの物性及び評価を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2から、実施例の静電潜像現像用トナーは、比較例の静電潜像現像用トナーに比べて、きわめて耐熱保存性に優れ、高温高湿環境下での帯電性にも優れることがわかる。