【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1〜
図3は本発明の実施例を示す機械施工用レール締結・緩解装置の模式図(その1〜その3)、
図4は締結ばねと締結ボルト・ナットのプリセット状態を示す図であり、
図4(a)はその側面図、
図4(b)はその締結ばねの平面図、
図5はタイプレートに締結ばねと締結ボルト・ナットをプリセットした状態を示す図、
図6は締結ばねをレール締結位置に押し込んだ状態を示す図、
図7はそのレールを締結ばねで締結した状態を示す図、
図8はそのレールを締結ばねで締結した状態を示す全体図、
図9はそのレールガイドが設置された状態を示す図、
図10はそのレールガイドの設置状態を示す図である。
【0023】
これらの図を参照して、本発明の実施例を示す機械施工用レール締結・緩解方法について以下に説明する。なお、この実施例では、レールの交換作業について段階的に説明する。
【0024】
(1)
図1(a)に示されるレールの本締結状態では、スラブ100上に絶縁板101が敷設され、その上にタイプレート102が設けられ、さらにその上にレール104が配置され、締結ばね1が締結具としての締結ボルト105、ナット106、座金107によって締結されている。つまり、
図11に示すように、締結ばね、締結ボルト105、ナット106、座金107によってレール104が締結された状態にある。
【0025】
(2)次に、
図1(b)に示すように、レール104を取り替えるため、締結ボルト、ナット105,106を緩めて、締結ばね1及び締結ボルト、ナット105,106を緩解状態とする。
【0026】
(3)次に、
図1(c)に示すように、締結ばね1をプリセット位置(締結ばね1がレール104から外れる位置)へ移動し、
図5に示すような、締結ばね1をタイプレート102にプリセットした状態とする。この時、締結ばね1と締結ボルト、ナット105,106及び座金107は
図4に示すようなプリセット状態にある。
【0027】
(4)次に、
図2(a)に示すように、取り替えるレール104に沿わせるようにしてレールガイド2を設置する。
【0028】
(5)次に、
図2(b)に示すように、レールガイド2を残して、取り替えるレール104を撤去する。
【0029】
(6)次に、
図2(c)に示すように、レールガイド2に沿って新たなレール3を据え付ける。
【0030】
(7)次に、
図3(a)に示すように、レールガイド2を撤去する。
【0031】
(8)次に、
図3(b)に示すように、締結ばね1を
図5に示したプリセット状態から
図6に示した新たなレール3の締結位置に押し込む。
【0032】
(9)最後に、
図3(c)に示すように、締結ばね1を締結ボルト、ナット105,106及び座金107によって締結し、新たなレール3の本締結状態を確立する。この時の締結ばね1の状態が
図7に示される。
【0033】
次に、本発明の実施例を示す機械施工用レール締結・緩解装置の各部材について説明する。
【0034】
本発明においては、
図5に示すように、タイプレート102の形状は従来のままとし、また、スラブ100への締結方法も変更しないため、締結ボルト、ナット105,106及び座金107も現行のものを用いることができる。
【0035】
一方、
図7を
図11の従来図と比較すると分かるように、締結ばね1の形状を改良するとともに、
図2で示したレールガイド2を用いることにより、レール交換時の作業効率を改善することが可能になっている。
【0036】
具体的には、
図4に示されている、締結ばね1と締結ボルト、ナット105,106のプリセット状態では、締結ボルト105の頭部(台形部)は締結ばね1の下ばね1Aの先端部1Bを反力点とし、座金107及びナット106は締結ばね1の上ばね1Dの上面に配置される。
【0037】
締結ばね1の下ばね1Aは、 その先端部1Bが締結ボルト105の頭部(台形部)の幅(直径)の半分程度の位置にくるように延長されている。さらに、上ばね1Dの長さも従来のものより延長されている。
【0038】
図5に示されているタイプレート102へのプリセット状態では、締結ばね1の下ばね1Aは、 タイプレート102のショルダー部103に当接する位置にある。本発明のレール締結・緩解方法で用いる締結ばね1は、下ばね1Aに下方向凸部1Cを設け、 タイプレート102のショルダー部103に当接することによって締結ばね1の移動を拘束する形状としているので、
図5に示すプリセット状態では、下ばね1Aがタイプレート102のショルダー部103を超えて、締結ばね1が
図5の点線Aよりも内側に移動し、新たなレール3の挿入位置を支障するのを防ぐことができる。
【0039】
また、上ばね1Dの締結穴1E
〔図4(b)参照〕は、
図5に示すプリセット状態から
図7に示す締結状態まで対応するように長円形としたため、プリセット状態にある締結ボルト、ナット105,106及び座金107には遊びがあるが、タイプレート102のショルダー部103によって締結ばね1の移動は全体的に拘束されているので、締結穴1Eの端部に締結ボルト105が当接することによって、締結ボルト、ナット105,106及び座金107が
図5の点線Aよりも内側に移動し、新たなレール3の挿入位置を支障するのを防ぐことができる。
【0040】
図7及び
図8に示すように、 締結ばね1がレール締結位置にある場合は、 上記したような下ばね1Aの先端部分(先端部1B)及び上ばね1Dの延長部分は締結機能に直接的に関与しない形状であるため、 従来の板ばねと同様の締結状態が得られる。つまり、
図8に示すように、 レール締結状態における応力発生位置の形状は、
図11に示す従来の板ばねと同様であるため、板ばねの組立時の発生応力及び使用時の変動応力も従来品と同様であり、 発生応力の検討は省略できる。
【0041】
さらに、レール交換作業を機械化する前提として、 新たなレール3が確実にタイプレート102のショルダー部103間に挿入される必要がある。そのために付属品として、
図2、
図9及び
図10に示すようなレールガイド2を用いる。ただし、このレールガイド2の具体的な寸法形状は、レール交換機等の仕様及び機能により決定すべきである。
【0042】
以下、このレールガイド2の使用について説明する。
【0043】
まず、
図2(a)に示すように、取り替えるレール
104に沿ってレールガイド2を設置し、次に、
図2(b)に示すように、取り替えるレール
104を撤去し、次に、
図2(c)に示すように、取り替えられる新たなレール3をレールガイド2によってガイドしながら据え付ける。
【0044】
このレールガイド2は、 レール交換作業時にタイプレート102にプリセットしてある締結ばね1及び締結ボルト105を保護する機能と、新たなレール3を確実にタイプレート102のショルダー部103間に誘導する機能とを有しており、
図10に示すように、レール交換作業前にレール底部の下に左右から挿入し、 タイプレート102を囲んで左右のレールガイド2を固定する構造とする。
図9はそのレールガイド2がセットされた状態を示しており、
図9(a)はその平面図、
図9(b)はその側面図である。このレールガイド2は、タイプレート102に沿って設置されるレールガイド本体2Aと、レールガイド本体2Aから上方へ突設した、新たなレールの設定位置をガイドするレールガイド部2Bとからなる。
【0045】
そして、レールガイド2はレール交換作業後は直ちに撤去することを前提とする。この場合、スラブ及びレール締結装置には何ら加工する必要がない。
【0046】
具体的な使用方法としては、 例えば、レール交換区間の始終端約15m程度の区間には5m程度の間隔で設置し、その他の中間部には10〜15m程度の間隔で設置することができる。
【0047】
したがって、上記したように、締結ばね1と締結ボルト、ナット105,106を、
図3に示すようなプリセット状態で保持できるようにしたので、これらのレール締結装置部材をプリセット状態で施工機械(図示せず)にセットすることが可能である。
【0048】
また、タイプレート102に設置された締結ばね1及び締結ボルト、ナット105,106をレール交換の支障にならないような位置へ後退させて、
図4に示すようなタイプレート102に対するプリセット状態で保持できるようにしたので、従来技術のようなレール交換作業時にレール締結装置部材を撤去する工程が不要になる。
【0049】
このように、本発明によれば、単に締結ばね1を機械施工に適した形状とすることによって、レール締結・緩解作業の機械化を大幅に促進することができる。
【0050】
さらに、機械施工を前提として考えると、適切なレール押え力を確保するのに、部材の表面間の摩擦係数に大きく影響されるトルク管理ではなく、締結ボルト105、またはナット106の回転角に基づいて行うのが適切である。この回転角法による締結管理の場合、ねじ山のピッチとナットの回転角に対応した変位量が締結力に比例するため、ばね定数が明らかな部材を締結する場合により有効である。また、締結される部材の状態に関わらず、設定された回転数に基づいて制御することができるため、施工の機械化をより簡易に実施できるものと考えられる。
【0051】
なお、上記したように、 タイプレート102の形状は従来のままとしたので、タイプレート102のショルダー部103に挿入される締結ボルト105の頭部(台形部)の形状も変更しないものとした。また、従来品との互換性を考えて、締結ボルトのねじ部の形状も従来と同じとした。
【0052】
ただし、機械化及び部品点数の低減のため、 ナット106は座金107付ナットとすることが望ましい。これにより、組立時に締結ボルト105に対して座金107をセットする工程が省略でき、 ナット106を締結ボルト105に直接締め込むことが可能になる。
【0053】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。