(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアとこのコアに巻装したコイルとを有する固定子と、前記コイルに対向して配置され、前記コイルに対して通電制御を行うことで往復移動する可動子とを有する複数のリニアモータと、
締結部材を締め付けることにより前記コアが固定された複数の取付部を有する取付フレームとを備えたリニアモータユニットであって、
前記コアと前記取付部とが前記締結部材の締付方向に交互に配置されており、
隣り合う前記コアの一方を固定する前記締結部材の軸心と、隣り合う前記コアの他方を固定する前記締結部材の軸心とをずらして配置することで、隣り合う前記コアの間に配された前記複数の取付部のうちの一の前記取付部には、隣り合う前記コアの一方を固定する前記締結部材の軸部と隣り合う前記コアの他方を固定する前記締結部材の軸部とが前記締結部材の軸心をずらした方向に並んで、かつ締結方向に重複して配されており、前記複数の取付部のうちの他の前記取付部には、隣り合う前記コアの一方を固定する前記締結部材の軸部と隣り合う前記コアの他方を固定する前記締結部材の頭部とが前記締結部材の軸心をずらした方向に並んで、かつ締結方向に重複して配されていることを特徴とするリニアモータユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品実装機は、スペースや重量軽減などの観点から小型化が望まれており、ヘッドユニットにおいては、リニアモータの固定子全体の幅寸法を小さくしてリニアモータユニットを小さくすることで、ヘッドユニットを小型化することが検討されている。
ところが、取付フレームに対してコアを確実に固定して固定子と可動子との間のギャップを適切に維持するためには、コアを取付フレームに固定するための固定ボルトの雌ねじ部分へのねじ込みの深さ寸法を、ある限度以上に短くすることはできない。このため、固定子全体の幅方向寸法を小さくしようとすると、コアの幅方向の厚み寸法を薄くせざるを得ず、そうするとコアの磁気抵抗が増大してリニアモータの推力が低下する懸念がある。
また、上記のリニアモータユニットでは、幅方向に並べたリニアモータの固定ボルトが同軸上に連なるため、隣り合う固定ボルト同士が互いに突き当たらないように、隣り合うボルト間に同軸上のクリアランスを設ける必要があり、そのために固定子の全体寸法を薄型化できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リニアモータの推力を維持しつつ、リニアモータユニットの小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、コアとこのコアに巻装したコイルとを有する固定子と、前記コイルに対向して配置され、前記コイルに対して通電制御を行うことで往復移動する可動子とを有する複数のリニアモータと、締結部材を締め付けることにより前記コアが固定された複数の取付部を有する取付フレームとを備えたリニアモータユニットであって、前記コアと前記取付部とが前記締結部材の締付方向に交互に配置されており、隣り合う前記コアの一方を固定する前記締結部材の軸心と、隣り合う前記コアの他方を固定する前記締結部材の軸心とをずらして配置することで、隣り合う前記コアの間に配された前記
複数の取付部のうちの一の前記取付部には、隣り合う前記
コアの一方を固定する前記締結部材の軸部と
隣り合う前記
コアの他方を固定する前記締結部材の軸部
とが前記締結部材の
軸心をずらした方向に並んで、
かつ締結方向に重複して配されており、前記複数の取付部のうちの他の前記取付部には、隣り合う前記コアの一方を固定する前記締結部材の軸部と隣り合う前記コアの他方を固定する前記締結部材の頭部とが前記締結部材の軸心をずらした方向に並んで、かつ締結方向に重複して配されているところに特徴を有する。
【0007】
このような構成のリニアモータユニットによると、隣り合うコアの間に配された取付部に、隣り合うコアを固定する双方の締結部材の頭部もしくは軸部を共通して配置することができるので、締結部材の頭部の高さ寸法と、締結部材のねじ込みの深さ寸法と、コアの厚さ寸法とを確保しつつ、固定子における締付方向の大きさを小さくすることができる。これにより、リニアモータの推力を維持もしくは向上させつつ、リニアモータにおける締付方向の大きさを小さくすることができる。
また、リニアモータを小さくできる割には、コアの厚さ寸法を大きく確保できるので、コアからの磁束の漏れを低減させることができ、ひいてはリニアモータの推力を確保できる。これにより、リニアモータを締付方向に並べて締結部材を同軸上に連ねる従来のリニアモータユニットに比べて、リニアモータをさらに小型化することができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
隣り合う前記コアの一方を固定する前記締結部材の軸心と、隣り合う前記コアの他方を固定する前記締結部材の軸心とが前記
締結部材の軸心をずらした方向に交互にずれた千鳥状に前記締結部材が配置されていることが好ましい。
このような構成によると、締結部材を階段状にずらして配置する場合に比べて、締結部材のずれ方向に取付フレームを大きくする必要がない。これにより、リニアモータユニットをさらに小型化することができる。
【0009】
前記コアは、前記締付方向と交差する方向に並ぶ複数のティースと、前記ティースのそれぞれの一端を前記締付方向と交差する方向に一体に連結するヨーク部とを有し、前記締結部材は、前記ヨーク部において、前記ティースが設けられた領域とは異なる領域に設けられている構成としてもよい。
【0010】
ヨーク部のうちティースが連設された領域に締結部材が設けられていると、締結部材のためにヨーク部における磁気抵抗が高くなり、ひいてはティースの磁束の強さが低下して、リニアモータの推力を低下させてしまう。また、締結部材においては渦電流が流れやすくなるため、ヨーク部における鉄損を増大させてしまう。ところが、上記のような構成によると、ヨーク部におけるティースが設けられた領域と異なる領域に締結部材が設けられていることから、隣り合うティース間を連結するヨーク部には磁束の流れを妨げる締結部材がなく、ヨーク部ひいてはティースの磁束を強くすることができる。また、隣り合うティース間を連結するヨーク部には、締結部材がないため渦電流の発生を抑制することができる。これにより、ヨーク部に締結部材が設けられているものに比べてリニアモータの推力を向上させることができる。
【0011】
前記リニアモータは、前記可動子の位置を検出するエンコーダをさらに備え、前記固定子における前記締結部材の
軸心をずらした方向の一端側には、前記エンコーダが配され固定されている構成としてもよい。
本発明では、コアの厚さ寸法を大きく確保してコアの磁気抵抗を低減させてもギャップにおける磁束密度は比較的高く確保できる。この結果、コアにおけるティースの数を減らすことができるので、可動子の移動方向の両端において余裕ができ、その空いた領域にエンコーダを配置することができる。これにより、可動子における固定子と反対側にエンコーダを配したリニアモータユニットに比べて、固定子と可動子とが対向するギャップ方向の大きさを小さくすることができる。
【0012】
電子部品を保持する複数の部品保持部を上下に移動させる部品保持部駆動機構を備えるヘッドユニットであって、前記部品保持部駆動機構が前記リニアモータユニットである構成としてもよい。
このような構成のヘッドユニットによると、部品保持部を上下に駆動させる部品保持部駆動機構として、上記のリニアモータユニットを適用しているので、ヘッドユニットを小型化、かつ、軽量化することができる。
【0013】
複数の前記部品保持部駆動機構を有する前記のヘッドユニットにおいて、複数の前記部品保持部駆動機構が前記固定子と前記可動子とが対向するギャップ方向に並んで配されている構成としてもよい。
ヘッドユニットにおける締付方向の大きさを大きくすることができない場合には、リニアモータの数を減らして調整することになる。ところが、上記の小型化されたリニアモータユニットをギャップ方向に並べて適用させることで、リニアモータの数を減らすことなく、リニアモータユニットにおける締付方向の大きさを小さくすることができる。
【0014】
部品供給部を備えた部品供給ユニットと、回路基板を保持して搬送する基板搬送ユニットと、前記部品供給部の位置から前記回路基板の所定の位置まで前記ヘッドユニットを移動させるヘッドユニット駆動機構とを備えた部品実装機。
このような構成部品実装機によると、前記のリニアモータユニットを部品保持部駆動機構として適用して小型化されたヘッドユニットを備えているので、結果として、部品実装機を小型化、かつ、軽量化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リニアモータの推力を維持しつつ、リニアモータユニットの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について
図1乃至
図12を参照して説明する。
本実施形態における部品実装機10は、回路基板に電子部品を実装するものであって、
図1に示すように、基台11と、基台11上に取り付け固定された基板搬送ユニット12と、この基板搬送ユニット12の上面を覆うように基台11に取り付け固定された実装機本体13と、実装機本体13に着脱可能な部品供給台車(「部品供給ユニット」の一例)14とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、前側とは
図1における左手前側のことをいい、後側とは右奥側のことをいうものとする。
【0018】
基板搬送ユニット12は、基台11の上面に固定されており、基台11の左右両側の一方から図示しない回路基板を実装機本体13に搬送し、他方から回路基板を外部へ搬出するようになっている。また、基板搬送ユニット12によって、回路基板が所定の位置にまで搬送されると、回路基板が図示しない支持装置によって下方から支持されるようになっている。
【0019】
部品供給台車14は、基台11の前後両側に凹設された取付凹部Tに着脱可能とされている。また、部品供給台車14には、複数のテープフィーダを左右方向に並べて構成した部品供給部15が設けられている。各テープフィーダには、集積回路(IC)やコンデンサ等の電子部品を収納したテープが巻かれたリール15Aが取り付けられており、このリール15Aからテープを繰り出すことにより部品供給位置に電子部品を供給するようになっている。
【0020】
実装機本体13は、
図1に示すように、基台11の上面に載置されて固定されており、基台11から上方に立ち上がる左右一対のYフレーム30,30と、一方のYフレーム30から他方のYフレーム30に向けて片持ち状に張り出す複数の実装ユニット40とを備えて構成されている。また、実装機本体13には、前後方向に2列、左右方向に2列の合計4つの実装ユニット40が搭載されており、各実装ユニット40は、個別に制御可能とされている。例えば、4枚の短尺の回路基板が基板搬送ユニット12によって、所定の位置にセットされると、各回路基板に対して各実装ユニット40が部品実装作業を行うようになっており、例えば、1枚の長尺の基板が所定の位置にセットされると、長尺の回路基板1枚に対して4つの実装ユニット40,40,40,40が同時に部品実装作業を行うようになっている。
【0021】
一対のYフレーム30,30は、
図1に示すように、左右方向に対向した形態で前後方向に延びて形成されている。また、両Yフレーム30の前後方向略中央部には、一対の開口30A,30Aが設けられている。一方の開口30Aは回路基板を基板搬送ユニット12に搬送する搬入口であり、他方の開口30Aは回路基板を搬出する搬出口とされている。
【0022】
Yフレーム30には、上下一対のYレール31,31が取り付け固定されている。上側のYレール31は、Yフレーム30の上端部においてその前端から後端に亘って前後方向に延びる形態で設けられている。一方、下側のYレール31は、Yフレーム30の内側面における下端部に配されており、その前端から後端に亘って前後方向に延びる形態で設けられている。また、Yフレーム30の内側面には、マグネットプレート32が取り付け固定されており、マグネットプレート32の内部には、複数の永久磁石が前後方向に並んで配置されている。
【0023】
実装ユニット40は、
図1および
図2に示すように、Yフレーム30の内側面から内側に向かって突出したXフレーム41と、Xフレーム41に取り付け固定された上下一対のXレール42、42と、両Xレール42,42によって左右方向に移動可能に支持されたヘッドユニット50とを備えて構成されている。また、実装ユニット40は、各Yフレームに2つずつ前後方向に並んで取り付けられており、前後方向に並んだ2つの実装ユニット40は、互いにヘッドユニット43を内側に配した状態で取り付けられている。
【0024】
Xフレーム41における両Yレール31,31と対応する位置には、Yレール31に嵌合可能な一対のYスライダ44,44が取り付けられており、このYスライダ44がYレール31に嵌合することによってY方向リニアガイドが構成されている。また、Xフレーム41の基端部には、Yフレーム30のマグネットプレート32と対向する位置にコイル部45が設けられており、このコイル部45とマグネットプレート32によってY方向リニアモータ(「ヘッドユニット駆動機構」の一例)33が構成されている。したがって、コイル部45に対して通電制御することで、マグネットプレート32に対して実装ユニット40が前後方向に移動可能とされている。
【0025】
一対のXレール42,42は、Xフレーム41の内側面においてその基端部から先端部に亘って左右方向に延びる形態で設けられている。一方、ヘッドユニット43には、一対のXレール42,42と対応する位置に、Xレール42に嵌合可能な一対のXスライダ46,46が取り付け固定されており、このXスライダ46がXレール42に嵌合することによってX方向リニアガイドが構成されている。また、Xフレーム41における基端部の上側には、サーボモータ(「ヘッドユニット駆動機構」の一例)47が取り付け固定されている。このサーボモータ47は、Xフレーム41に取り付けられた図示しないボールねじに対して連動可能とされており、ボールねじを回動させることでヘッドユニット43を左右方向に移動させることができるようになっている。すなわち、サーボモータ47とY方向リニアモータ33とによってヘッドユニット50を前後方向および左右方向に移動させることで、部品供給位置から回路基板の所定の位置までヘッドユニット50を移動させることができるようになっている。
【0026】
ヘッドユニット50は、
図3および
図4に示すように、上下方向に延びた形態をなし、複数の部品保持部51と、複数の部品保持部51が下端部に取り付け固定された複数のリニアモータユニット60などを備えて構成されている。なお、ヘッドユニット50の説明においては、前後方向におけるXフレーム側を後側として説明する。
【0027】
部品保持部51は、ヘッドユニット50の下端部に配されており、電子部品を吸着するノズル52と、ノズル52が下端部に取り付けられた上下方向に延びる駆動シャフト53などを備えて構成されている。ノズル52は、駆動シャフト53内に設けられた内部空間や樹脂製のパイプ54等を介して負圧発生装置(図示せず)に接続されており、部品吸着時には、ノズル52の下端部に負圧発生装置から負圧吸引力が与えられることにより電子部品を吸着して保持するようになっている。
【0028】
リニアモータユニット60は、複数の部品保持部51を上下に駆動させることで部品供給部や回路基板に対してノズル52を上下方向に移動させるための駆動機構であって、
図3および
図4に示すように、左右方向に2列、前後方向に2列、合計4つのリニアモータユニット60がヘッドユニット50に装着されている。また、ヘッドユニット50の前側において左右方向に2つ並んだリニアモータユニット60Fには、後述するリニアモータ70が左右方向に3つずつ並んで設けられており、ヘッドユニット50の後側において左右方向に2つ並んだリニアモータユニット60Bには、リニアモータ70が左右方向に2つずつ並んで設けられている。なお、以下の説明においては、ヘッドユニット50の前側に配されたリニアモータユニット60Fについて説明し、リニアモータユニット60Bの説明は省略する。
【0029】
リニアモータユニット60は、
図5乃至
図8に示すように、金属製の取付フレーム61と、この取付フレームに固定される複数のリニアモータ70と、これらのリニアモータ70に対応して設けられた複数のリニアエンコーダ62などを備えて構成されている。
取付フレーム61は、上下方向に貫通する角筒状をなしており、取付フレーム内には、
図6,
図8及び
図9に示すように、3つのリニアモータ70が左右方向に並んで収容されている。
【0030】
取付フレーム61の前面における上側には、前後方向に貫通する略矩形状の貫通孔63が設けられている。貫通孔63は、取付フレームの左右方向の幅いっぱいに設けられており、貫通孔63から取付フレーム61の内部に収容された各リニアモータ70に対して電源ケーブル64が挿通されている。
【0031】
リニアモータ70は、固定子72及び可動子73からなるリニアモータ本体71と、可動子73を上向きに付勢するスプリング74などを備えて構成されている。
固定子72は、櫛形板状の電磁鋼板を積層してなるコア75にコイル76が巻装されて構成されている。詳細には、コア75は、
図12に示すように、上下方向の延びるヨーク部77と、ヨーク部77の一側面に間欠的に上下方向に連設された複数のティース78とから構成されており、コイル76が各ティース78に対して巻装されることで、固定子72が構成されている。また、ヨーク部77の上下方向両端部には、上下一対の取付片77A,77Aが設けられている。一対の取付片77A,77Aは、ティース78が連設された領域77Bから上下方向に突出する形態に設けられており、各取付片77Aの中央には、ヨーク部77を左右方向に貫通する2つのボルト挿通孔79が上下に並んで設けられている。
【0032】
一方、取付フレーム61の貫通孔63の内面には、
図6及び
図8に示すように、上下一対の取付凹部65,65が左右方向に3つ並んで形成されている。一対の取付凹部65,65のうち、上側の取付凹部65が前方および下方に開口されており、下側の取付凹部65が前方および下方に開口されている。また、一対の取付凹部内65,65には、ヨーク部77の一対の取付片77A,77Aが前方からそれぞれ嵌合可能となっており、取付フレーム61の貫通孔63に対して固定子72のティース78を前方から挿入すると共に、一対の取付凹部65,65内に一対の取付片77A,77Aを嵌合させることで、取付フレーム61に対して固定子72が組み付けられるようになっている。すなわち、全ての取付凹部65に取付片77Aが組み付けられると、
図6及び
図9に示すように、取付フレーム61とヨーク部77とが左右方向に交互に配されて、3つの固定子72が左右方向に配列されるようになっている。
【0033】
また、各ヨーク部77は、取付フレーム61の左右方向両側に設けられたボルト差込孔66から固定ボルト(「締結部材」の一例)Bを挿し込んで、取付片77Aのボルト挿通孔79に固定ボルトBを挿通させた後、隣り合う取付凹部65の間に配された取付フレーム61に固定ボルトBを左右方向から締め付けることで、各ヨーク部77が隣り合う取付凹部65の間に配された取付フレーム61に固定されるようになっている。
【0034】
可動子73は、固定子72におけるコイル76が巻装されたティース78との間に、前後方向に所定寸法のギャップを有した状態で、固定子72の後方に対向して設けられている。可動子73は、上下方向に延びるZレール80を有しており、取付フレーム61の後面にボルト固定された複数のスライドベース81に対してZレール80を嵌合させることで、上下方向に移動可能となっている。また、可動子73の下端部には、部品保持部51の駆動シャフト53が固定されており、可動子73が上下に移動することで、部品保持部51が上下に移動するようになっている。
【0035】
Zレール80の前面には、N極とS極とが交互に配置されるように複数の永久磁石82が上下方向に並んで固定されている。そして、固定子72のコイル76に対して通電制御が行われると、固定子72におけるコア75のティース78と可動子73の永久磁石82との間に吸引力が発生し、固定子72に対して可動子73が上下方向に往復移動する構成となっている。
【0036】
ところで、ティース78を流れる磁束は、ヨーク部77を通して隣り合うティース78に流れることになるため、固定ボルトがヨーク部におけるティースが連設された領域に設けられていると、固定ボルトがヨーク部における磁束の流れを妨げてヨーク部における磁気抵抗が高くなり、リニアモータの推力を低下させてしまう。また、固定ボルトには渦電流が流れやすくなるため、ヨーク部における鉄損を増大させてしまう。ところが、本実施形態によると、固定ボルトBが挿通されるボルト挿通孔79がヨーク部77におけるティース78が連設された領域77Bとは異なる上下方向両端部の取付片77Aに設けられていることから、隣り合うティース78間を繋ぐヨーク部77の領域77Bには磁束の流れを妨げる固定ボルトBが配されない。また、ヨーク部77の領域77Bには、固定ボルトBがないため電磁鋼板の積層効果によって渦電流の発生を抑制することができる。これにより、ヨーク部77における磁束を強くすることができ、ヨーク部77に固定ボルトBが挿通されるものに比べてリニアモータ70の推力を向上させることができるようになっている。
【0037】
また、固定子72の下側には、可動子73の位置を検出するリニアエンコーダ62がリニアモータ70に対応するように左右方向に3つ並んで取り付けられている。リニアエンコーダ62は、可動子73におけるZレール80の下部に固定される磁気プレート67と、取付フレーム61の下部に固定されるセンサ部68とから構成されている。センサ部68は、上下方向に細長い形態をなしており、金属製のセンサ基台68Aと、センサ基台68Aの背面に固定された磁気センサ68Bとを備えて構成されている。センサ基台68Aは、取付フレーム61の前面における下側において、左右方向に3つ並んで設けられた取付孔69にそれぞれ嵌合可能とされており、センサ基台68Aを取付孔69に嵌合させて、固定子72と同様に、取付フレーム61の左右両側に設けられたボルト差込孔66から複数の固定ボルトBを挿し込んで、固定ボルトBを取付フレーム61に締め付けることで、センサ部68が取付フレーム61に固定されるようになっている。
【0038】
磁気プレート67には、上下方向に磁気的に目盛りが付されており、センサ部68の磁気センサ68Bにより、磁気プレート67の目盛りを読み取ることで、可動子73の位置が検出されるようになっている。
【0039】
また、リニアエンコーダ62と可動子73のZレール80との間には、上下方向に延びるスプリング74がZレール80の前面に沿って配されている。スプリング74は、同スプリング74の上端が取付フレーム61に固定され、スプリング74の下端がZレール80の下端部に固定されることで、Zレール80が常に上向きに付勢された状態となっている。これにより、固定子72のコイル76に対して通電が行われず、固定子72と可動子73との間に吸引力が働かない場合おいても、可動子73が下方に下がらないようになっている。
【0040】
さて、隣り合う取付凹部65の間には、
図10に示すように、固定ボルトBの軸部B2が締め込まれる締結孔65Aもしくは固定ボルトBの頭部B1を収容する収容孔65Bが上下方向に並んで形成された取付部90が設けられている。詳細には、隣り合う取付凹部65の間に配された取付部90のうち、左側に位置する上下一対の左取付部90L,90Lには、固定ボルトBの締付方向と交差する方向である上下方向に締結孔65Aが2つ並んで形成されており、隣り合う取付凹部65の間に配された取付部90のうち、右側に位置する上下一対の右取付部90R,90Rには、上下方向に締結孔65Aと収容孔65Bとが並んで形成されている。
【0041】
一方、固定ボルトBは、固定子72におけるヨーク部77の上下一対の取付片77A,77Aに各一本ずつ挿通され、隣り合う取付凹部65の間に配された取付部90の締結孔65Aに締め付けることで、固定子72のヨーク部77を左取付部90Lもしくは右取付部90Rに固定するようになっている。詳細には、左側に位置する固定子72のヨーク部77は、左側のボルト差込孔66から挿入された固定ボルトBを左取付部90Lの上側の締結孔65Aにそれぞれ締め付けることで、左取付部90Lに固定されており、右側に位置する固定子72のヨーク部77は、右側のボルト差込孔66から挿入された固定ボルトBを右取付部90Rの締結孔65Aにそれぞれ締め付けることで、右取付部90Rに固定されている。また、中央に位置する固定子72のヨーク部77は、右側のボルト差込孔66から挿入された固定ボルトBを右側から左取付部90Lの下側の締結孔65Aに締め付けることで左取付部90Lに固定されており、中央のヨーク部77を固定する固定ボルトBの頭部B1は、右取付部90Rの収容孔65Bに収容されている。
【0042】
すなわち、
図10に示すように、隣り合うヨーク部77の一方を固定する固定ボルトBの軸心Qと、隣り合うヨーク部77の他方を固定する固定ボルトBの軸心Qとは、上下方向に交互にずれて千鳥状に配置された状態となっており、左取付部90Lは左側及び中央のヨーク部77を固定する2本の固定ボルトBの軸部B2を上下方向(固定ボルトのずれ方向Z)に並べて配する共通の取付部90とされ、右取付部90Rは右側のヨーク部77を固定する固定ボルトBの軸部B2と、中央のヨーク部77を固定する固定ボルトBの頭部B1とを上下方向(固定ボルトのずれ方向Z)に並べて配する共通の取付部90とされている。
【0043】
本実施形態の部品実装機は上記のような構造であって、続いてリニアモータユニット60の作用効果を説明する。
一般に、部品実装機は、スペースや重量軽減などの観点から小型化が望まれており、部品実装機に搭載されるヘッドユニットの駆動機構であるリニアモータユニットについても小型化が望まれている。
【0044】
リニアモータユニットを小型化するためには、コイルを巻装したコアを有する固定子全体の幅寸法を小さくすることが考えられるが、コアを取付フレームに固定する固定ボルトの頭部の高さ寸法と、固定ボルトのねじ込みの深さ寸法とを確保しつつ、固定子全体の幅寸法を小さくしようとすると、コアの厚みを薄くするしかない。しかしながら、コアの厚みが十分に確保できないとコアの磁気抵抗が増大して、リニアモータユニット内のリニアモータの推力が低下する虞がある。
【0045】
ところが、本実施形態によると、左取付部90Lおよび右取付部90R内に、固定ボルトBの軸部B2もしくは固定ボルトBの頭部B1を上下方向(固定ボルトのずれ方向Z)に並べて配することで、従来のように、各ヨーク部を個別に固定する取付フレーム設けて、固定ボルトを同軸上に並べて配するリニアモータユニットに比べて、固定ボルトBの軸部B2もしくは固定ボルトBの頭部B1が左右方向にオーバーラップした長さ寸法分だけ、リニアモータユニット60の左右方向の大きさを小型化すると共に、コア75の厚さ寸法を従来のコアよりも大きくすることができる。
【0046】
また、本実施形態によると、コア75の厚さ寸法を従来よりも大きく確保してコア75におけるティース78からの磁束の漏れを低減させることができるようになったことから、従来のものに比べて、各リニアモータの推力を向上させつつ、コア75におけるティース78の数を減らして固定子72全体を小型化することができるようになっている。これにより、リニアモータユニット60を小型化することできる。
【0047】
また、本実施形態によると、隣り合うヨーク部77の一方を固定する固定ボルトBの軸心Qと、隣り合うヨーク部77の他方を固定する固定ボルトBの軸心Qとが、上下方向に交互にずれた千鳥状に配置された形態となっていることから、固定ボルトを階段状にずらして配置する場合に比べて、リニアモータユニット60の上下方向(固定ボルトのずれ方向Z)の大きさをさらに小型化することができる。
【0048】
さらに、本実施形態によると、リニアモータ本体71における固定子72全体を小型化することで、固定子72の下側に空いた領域ができたことから、この空いた領域にリニアエンコーダ62を配することができる。これにより、可動子73にの後方にリニアエンコーダを配するリニアモータユニットに比べて、前後方向の大きさを小さくすることができる。
【0049】
すなわち、本実施形態によると、リニアモータユニット60を小型化したことによりヘッドユニット50を小型化することができ、実装ユニット40、ひいては、部品実装機10を小型化することできる。
【0050】
ところで、本実施形態の部品実装機10のように、実装ユニット40が左右に2列に並んで配されるような場合には、ヘッドユニット50の左右方向の大きさが制限されることになる。このため、従来のリニアモータユニットを適用させる場合には、リニアモータの数を減らすことで左右方向の大きさを調整する必要がある。ところが、本実施形態によると、固定子72の下側にリニアエンコーダ62を配置して、前後方向にリニアモータユニット60を小型化したことから、前後方向にリニアモータユニット60を並べることで、リニアモータ70の数を減らすことなく、左右方向の大きさを小型化することができる。
【0051】
<実施例>
本発明の実施例について
図13を参照して説明する。
本実施例は、リニアモータへの投入電流と、リニアモータの推力との関係を
図13に示したものである。
図13に示したグラフにおいて、縦軸はリニアモータへの投入電流の大きさ表したものであり、横軸は投入電流に対するリニアモータの推力の大きさを表したものである。
【0052】
このグラフには、コアの厚さ寸法が異なると共に、ティースの数が異なる二種類のリニアモータの測定結果が示されている。グラフ内の実線αは、本実施形態におけるリニアモータ70を示し、破線βは、本実施形態のコアよりも厚さ寸法が小さく、本実施形態よりもティースの数が3本多い従来のリニアモータを示している。
【0053】
ここで、縦軸Aにおける二種類のリニアモータの推力を比較すると、本実施形態の実線αは、従来のリニアモータの破線βに比べて推力が約1.4倍となっている。このように、本実施形態では、ティース78の数を従来のリニアモータに比べて少なくしたにもかかわらず、コア75の厚さ寸法を従来に比べて大きくしたことで、同じ大きさの電流を投入した場合のリニアモータの推力を向上させることができるようになっている。
【0054】
以上のことから、本実施形態においては、隣り合うヨーク部77の一方を固定する固定ボルトBの軸心Qと、隣り合うヨーク部77の他方を固定する固定ボルトBの軸心Qとを上下方向(固定ボルトのずれ方向Z)にずらして千鳥状に配置したことで、取付フレーム61に対するリニアモータ70の固着力を維持しつつ、リニアモータユニット60を小型化すると共に、リニアモータ70の推力を向上させることができる。これにより、ヘッドユニット50や実装ユニット40、ひいては、部品実装機10を小型化することができる。
また、ヨーク部77における固定ボルトBが挿通されるボルト挿通孔79を磁束が流れる領域77Bとは異なる位置に設けて、磁束の流れを良くすると共に、電磁鋼板の積層の効果によって渦電流の発生を抑制したことから、ヨーク部77ひいてはティース78における磁束を強くすることができ、リニアモータ70の推力をさらに向上させることができるようになっている。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、リニアモータユニット60を前後方向に並べて、部品保持部51が前後方向に2列となるように構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、リニアモータユニットを左右方向に3つや4つ並べて、部品保持部51が横1列になるように構成してもよい。
(2)上記実施形態では、リニアモータユニット60を駆動機構とする実装ユニット40を部品実装機10に適用させた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、実装ユニット40を部品供給部15から部品検査部への部品を出し入れする部品検査機に適用させてもよい。
(3)上記実施形態では、コア75の厚さ寸法を従来に比べて大きくした構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、コアの厚さ寸法はそのままで、リニアモータユニットの左右方向の大きさのみを小さくしてもよい。