【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について説明する。
図1は実施例1に係るランヤード保持具1を示した斜視図であり、
図2(a)から(d)は同じく正面図、右側面図、底面図及び正面図中央横断面図である。これらの図に示すように、ランヤード保持具1は、基部となりフック掛止体17を一体的に設けたベルト挿通体11と、ランヤード押え具12と、固定軸13と、バネ14より構成される。
【0019】
このベルト挿通体11は、ベルト挿通部110として、相対する縁部二方それぞれに、外側へ向け所定長切欠した2本のベルト挿通溝111,112が設けられている。
図4はロープ式ランヤードにおける実施例1に係るランヤード保持具1の使用状態を示した説明図であるが、実施例1はハーネス型安全帯用であり、ランヤード保持具1を取り付ける位置は作業者の胸前が望ましいので、ハーネス型安全帯6の肩ベルト61に取り付けることとなる。従って、ベルト挿通部110を構成する2本のベルト挿通溝111,112を設ける位置は、ベルト挿通体11の上下縁部となる。
【0020】
そして、2本のベルト挿通溝111,112の長さと幅は、肩ベルト61に仮固定できる寸法である。具体的には、直線的な横長形状の2本のベルト挿通溝111,112を平行に設け、肩ベルト61の長さ×幅が45×t2mmの場合で、47×3.5mm程度である。また、切欠部分の長さは、肩ベルト61の剛性にもよるが、肩ベルト61を幅方向に折り曲げて2本のベルト挿通溝111,112それぞれに入れ、弾性により元の状態に復帰できる長さである。これは、ランヤード保持具1を作業者が既に所有して使用中であるハーネス型安全帯6に、任意の位置に後付けできる寸法である。また、本実施例では、この2本のベルト挿通溝111,112を平行に設けているが、平行でなくともよく、直線的な横長形状でなくともよく、肩ベルト61に仮固定できればよい。
【0021】
図3(a)から(c)は実施例1に係るランヤード押え具12が回動した状態(開状態)を示した左側面図、正面図及び底面図である。尚、
図3以外の図は基本となる「閉状態」であるが、本実施例の説明において「閉状態」の表示は省略する。
図2(a)から(d)及び
図3(a)から(c)に示すように、前記ベルト挿通体11にランヤード押え具12の一端部を固定軸13で回動自在に軸止して他端側を開放して開放口16が設けられている。具体的には、ベルト挿通体11を平板状部材で成形し、ベルト挿通体11の一方側に押え具取付片113,113を突設し、その間にランヤード押え具12の一端部を配置して、固定軸13で軸止する。
【0022】
このとき、開放口16の方向は、水平方向から鉛直方向の間のいずれかに向いている。
図4では、開放口16が水平方向(人体外側)を向いており、保持されたランヤード5は上下方向に束ねられているが、水平方向(人体内側)でも、鉛直方向でも、斜め45°方向でもよく、保持したランヤード5が極端に人体より突出しておらず、万一束ねて保持したランヤード5のロープ52が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合に、ロープ52がランヤード保持具1から外れて重力によって下に落ちればよい。しかしながら、開放口16を水平方向(人体外側又は内側)に設けることにより、ベルト挿通体11の大きさが最小化でき、ランヤード5が上下方向に束ねられて人体に沿うように保持できるので、水平方向が最も好ましい。
【0023】
ここで、ベルト挿通体11を平板状部材で成形したとき、ランヤード押え具12のベルト挿通体11と対応する面を側面視略弧又は略コの字に凹ませた形状とすることで、ベルト挿通体11とランヤード押え具12とにより、略円弧状又は略方形状の断面空間で成るランヤード保持空間15が形成される。正確には「閉状態」において、ベルト挿通体11の一面と、ランヤード押え具12の内面(ベルト挿通体11側の面)により、略円弧状又は略方形状断面のランヤード保持空間15が形成される。例えば、ランヤード押え具12をその断面が略コの字の押出型材のような形状(一方向が同一の断面)で製作する手法がある。しかしながら、ランヤード押え具12の外面はランヤード保持空間15に影響しないので、中央部を膨らませて丸みを持たせたり、リブを設けてもよい。また、ベルト挿通体11を平板状部材で成形しなくとも、束ねたランヤード5が保持できる大きさのランヤード保持空間15が形成できればよい。
【0024】
次に、
図2(a)及び(d)に示すように、固定軸13にバネ14を配置して、ランヤード押え具12がベルト挿通体11を押圧する方向に付勢させる。これによって、ランヤード保持空間15にランヤード5のロープ52を保持することができる。万一束ねて保持したロープ52が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合には、ロープ52がランヤード保持具1から外れる。詳しくは、ランヤード5のロープ部分(ロープ52)がランヤード保持具1から外れ、ランヤード余長部の輪が大きくなって引っ張られる荷重が解除され、危険な状態は瞬間的に回避される。ここで、このバネ14はねじりコイルバネであり、そのバネ力は、作業者の移動等により振動が加わっても、保持したロープ52が脱落しない程度のバネ力である。
【0025】
更に好ましくは、ランヤード5先端のフック51が掛止可能なフック掛止孔171を設けたフック掛止体17を、ベルト挿通体11のいずれかの縁部に一体的に設けることにより、ランヤード保持とフックハンガーの機能を一体化できるのでコストダウンが図れる。
【0026】
これら本実施例を構成する部品の材質は、特に特定するものではないが、軽量であることが望ましいので、固定軸13とバネ14以外は樹脂を主材料とすることが好ましい。また、固定軸13にリベットを用いて軸止しているが、ボルト連結等、ランヤード押え具12が回動自在に軸止されればよい。
【0027】
図4はロープ式ランヤード(ランヤード2本式)における、実施例1に係るランヤード保持具1の使用状態を示した説明図であり、
図5は同じく要部拡大図である。また、
図6(a)及び(b)は実施例1に係るランヤード保持具1にロープ52及びストラップ72が保持された状態を示した正面断面図である。ロープ52とストラップ72は同じロープ式ランヤードのタイプであり、
図4と
図6(a)はロープタイプを、
図5と
図6(b)はストラップタイプの状態を示している。
【0028】
このハーネス型安全帯6は一般高所作業用の1本吊り専用安全帯であり、そのランヤード5のロープ52には、φ11mmのナイロン製ロープが多く用いられている。
図4に示すように、休止状態のランヤード5のフック51はランヤード保持具1のフック掛止体17に掛止され、余長のロープ52がランヤード保持具1に保持されている。従って、
図6(a)に示すように、ランヤード保持空間15には、ロープ52が2本収納されており、ランヤード保持空間15のスペースは、その2本のφ11mmのロープ52を強く押さえない程度の大きさである。その理由は、余長のロープ52が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合、先ずロープ52は、
図4における下方向に引かれ、その後、ランヤード押え具12が開放されてランヤード保持具1より外れるので、強く固定しない方が外れ易いためである。従って、本実施例では、φ10〜φ12mmのロープ径への対応を主とし、φ16mmまで対応できるようにしているが、各サイズ専用とした方がより好ましい。
【0029】
図5に示すランヤード7のストラップ72は、衝撃吸収機能を内蔵した厚ベルトであり、ランヤード5の場合と同様に、休止状態のランヤード7のフック71はフック掛止体17に掛止され、余長のストラップ72がランヤード保持具1に保持されている。従って、
図6(b)に示すように、ランヤード保持空間15には、ストラップ72が2本収納されており、ランヤード保持空間15のスペースは、その2本のストラップ72を強く押さえない程度の大きさである。
【0030】
図3(a)から(c)に示すように、ランヤード5のロープ52又はランヤード7のストラップ72(以下「ロープ52等」という)を保持する保持力を向上させるため、ベルト挿通体11に滑り止め114が設けられ、ランヤード押え具12に滑り止め121が設けられている。これによって、作業者の移動等により振動が加わっても保持したロープ52等が容易に脱落しない。また、ランヤード押え具12を回動する際の作業性を向上するため、ランヤード押え具12の端部に突設した取っ手部122が設けられている。これによって、作業者はランヤードの脱着がより容易に行えるので取り外しに時間を要しない。
【0031】
尚、本実施例のランヤード保持具1は、ベルト挿通体11の相対する縁部二方それぞれに外側へ向け所定長切欠した2本のベルト挿通溝111,112を設けて、ハーネス型安全帯6の肩ベルト61に挿通し、作業者が既に所有して使用中であるハーネス型安全帯6に任意の位置に後付けするものであるが、ハーネス型安全帯6を製造する際に、予め肩ベルト61に挿通してもよい。このときは、切欠部分の長さを短くしてもよい。
【0032】
また、ベルト挿通部110を構成する2本のベルト挿通溝111,112の幅を広くすれば、肩ベルト61をスライドし易くなり、取付位置の調節がし易くなるが、把持力は低下する。逆に、2本のベルト挿通溝111,112の幅を狭くすれば、肩ベルト61をスライドし難くなり、取付位置の調節がし難くなるが、把持力は向上する。更に、より把持力が必要な場合は、ベルト挿通体11と肩ベルト61に孔を明けリベット等で固定してもよい。
【0033】
本発明のランヤード保持具1を用いることで、万一束ねて保持したロープ52等(ランヤード5のロープ52又はランヤード7のストラップ72)が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合に、ロープ52等がランヤード保持具1から外れるので転倒事故が防止できる。その際に、部品が破損して散乱することも防止できる。また、束ねたロープ52等を脱着する際は、ランヤード押え具12を回動させて、配したバネ14に抗して挟み込むだけであるので、ロープ52等の脱着が容易に行え、取り外しに時間を要しない。更に、ランヤード保持とフックハンガーの機能を一体化することによりコストダウンが図れる。
【0034】
<実施例1−2>
以下、実施例1の変形例である実施例1−2について説明する。上記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1に対し、実施例1−2のうち差異を有する構造のみについて説明する。実施例1のランヤード保持具1はバネ14にねじりコイルバネを用いたが、実施例1−2のランヤード保持具3ではバネ34に圧縮コイルバネを用いる。
【0035】
図7(a)及び(b)は実施例1−2に係るランヤード保持具3を示した正面図及び底面図である。
図7(a)及び(b)に示すように、ランヤード保持具3は、基部となりフック掛止体37を一体的に設けたベルト挿通体31と、ランヤード押え具32と、固定軸13と、バネ34と、バネ軸341より構成される。
【0036】
このランヤード保持具3は、実施例1と同様に、ベルト挿通体31とランヤード押え具32とでランヤード保持空間15を形成し、開放口36が水平方向(人体外側又は内側)に設けられている。このランヤード押え具32には、実施例1のような突設した取っ手部122は設けずに、取っ手部322が固定軸13に対して開放口36と反対の方向に設けられている。この取っ手部322とベルト挿通体31が「閉状態」で同軸となる位置に穿孔され、圧縮コイルバネであるバネ34の内径に通したバネ軸341で軸止されている。作業者はこの取っ手部322をクリップのように握ることで、ランヤードの脱着が容易に行える。このとき、バネ34は圧縮されて縮む。また、前記のベルト挿通体31の孔とランヤード押え具32の孔は、バネ軸341の径より若干大きめの径で穿孔されており、バネ34が圧縮されて縮んだとき、これらの孔の中をバネ軸341がスライドする。
【0037】
また、ベルト挿通体31は、実施例1と同様に、相対する縁部二方それぞれに外側へ向け所定長切欠した2本のベルト挿通溝111,112が設けられてベルト挿通部110を構成しており、フック掛止孔371を備えたフック掛止体37が、開放口36側の縁部に一体的に設けられている。このフック掛止体37は、実施例1と同様に、ベルト挿通体31のいずれかの縁部に設ければよい。
【0038】
本発明のランヤード保持具3を用いることで、万一束ねて保持したロープ52等(ランヤード5のロープ52又はランヤード7のストラップ72)が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合に、ロープ52等がランヤード保持具3から外れるので転倒事故が防止できる。その際に、部品が破損して散乱することも防止できる。また、束ねたロープ52等を脱着する際は、ランヤード押え具32を回動させて、配したバネ34に抗して挟み込むだけであるので、ロープ52等の脱着が容易に行え、取り外しに時間を要しない。更に、ランヤード保持とフックハンガーの機能を一体化することによりコストダウンが図れる。
【0039】
尚、この実施例1−2ではバネ34に圧縮コイルバネを用い、取っ手部322を固定軸13に対して開放口36と反対の方向に設けたが、ねじりコイルバネのバネ14を用いる実施例1においても、ランヤード押え具12に突設した取っ手部122を設けず、実施例1−2のように取っ手部322を固定軸13に対して開放口16と反対の方向に設けてもよい。このとき、フック掛止体17は、取っ手部322のクリップ動作の障害にならないよう、開放口16側に設ける方が好ましい。
【0040】
<実施例1−3>
以下、実施例1の変形例である実施例1−3について説明する。前記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1に対し、実施例1−3のうち差異を有する構造のみについて説明する。この実施例1−3は、実施例1の「閉状態」におけるランヤード保持具1にロック機構を付加するものである。
【0041】
図8(a)及び(b)は実施例1−3に係るランヤード保持具8Aを示した正面図及び一部断面の底面図である。
図8(b)に示すように、ランヤード押え具82の取っ手部122側の先端部近傍にロック切り込み821が設けられ、ベルト挿通体81に、「閉状態」においてロック切り込み821が係止する位置にロック片811が設けられている。
【0042】
本実施例のランヤード保持具8Aは、これらベルト挿通体81とランヤード押え具82を樹脂で成形し、その材料の有する弾性によりロックの作動と解除を行うものである。実施例1のランヤード保持具1において、バネ14のバネ力と、滑り止め114及び滑り止め121を施すことにより、保持したロープ52等が容易に脱落しない手段を施したが、このロック機構により、保持したロープ52等が、更に脱落し難い。
【0043】
しかしながら、万一束ねて保持したロープ52等が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合に、ロープ52等がランヤード保持具8Aから外れる必要があるので、ロック片811とロック切り込み821によるロックの解除に要する力は、そのときに各部が破損せずにロックが解除できる程度の力である。
【0044】
また、
図8(a)及び(b)に示すように、ランヤード保持具8Aが「開状態」にあるときにロックするよう、ランヤード押え具82の固定軸13側の端部に凸部822を設け、ベルト挿通体81の押え具取付片113近傍に凹部812を設け、これらを嵌合させて「開状態」を維持するよう、2段階のロック機構を備えてもよい。この別のロック機構により、ランヤード保持具8Aへのロープ52等の保持が片手でも操作できる。
【0045】
<実施例1−4>
以下、実施例1の変形例である実施例1−4について説明する。前記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1に対し、実施例1−4のうち差異を有する構造のみについて説明する。実施例1では、ベルト挿通部110を構成する2本のベルト挿通溝111,112を外側へ向け所定長切欠したが、この実施例1−4は、ランヤード保持具8Bのベルト挿通溝861,862を切欠ぜす、複数の閉鎖した長孔とするものである。
【0046】
図9(a)及び(b)は実施例1−4に係るランヤード保持具8Bを示した正面図及び底面図である。これらの図に示すように、ランヤード保持具8Bは、ベルト挿通体86にベルト挿通部860を構成する2本のベルト挿通溝861,862が設けられている。これら2本のベルト挿通溝861,862は閉鎖した(切欠部のない)長孔である。このランヤード保持具8Bのハーネス型安全帯6への取付方法は、ベルト挿通体86の表面より一方のベルト挿通溝861(又は862)に肩ベルト61を挿通し、ベルト挿通体86の裏面より他方のベルト挿通溝862(又は861)に挿通する。この手段を用いるためには、ハーネス型安全帯6を製造する際に、予め肩ベルト61に挿通しておく必要がある。このようにすることで、ランヤード保持具8B自体がハーネス型安全帯6の肩ベルト61から外れることがない。尚、ベルト挿通体86の裏面とは、装着時に人体側となる面であり、ベルト挿通体86の表面とは、ランヤード押え具82を設ける側の面をいう。
【0047】
ここで、本実施例では2本のベルト挿通溝861,862で構成したが、2本以上であればよく、その数を増やすことで、より確実に肩ベルト61に固定できる。但し、最初にベルト挿通体86の表面より肩ベルト61を挿通し、最後にベルト挿通体86の裏面より挿通することで上下対称となり、肩ベルト61の収まりがよいので、その数は偶数とすることが望ましい。実使用においては、2本又は4本で製作することが実用的である。
【実施例2】
【0048】
以下、本発明の実施例2について説明する。前記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1に対し、実施例2のうち差異を有する構造のみについて説明する。実施例1のランヤード保持具1はハーネス型安全帯用であるが、実施例2のランヤード保持具2は胴ベルト型安全帯用である。
【0049】
図10(a)及び(b)は実施例2に係るランヤード保持具2を示した正面図及び底面図である。これらの図に示すように、ランヤード保持具2は、基部となりフック掛止体27を一体的に設けたベルト挿通体21と、ランヤード押え具22と、固定軸13と、バネ14より構成される。
【0050】
このベルト挿通体21は、ベルト挿通部210として、相対する縁部二方それぞれに、外側へ向け所定長切欠した2本のベルト挿通溝211,212が設けられている。
図13は一般的なランヤード2本式の胴ベルト型安全帯9を示した正面図であるが、この実施例2は胴ベルト型安全帯用であり、ランヤード保持具2を取り付ける位置は作業者の腰部となるので、胴ベルト91に取り付けることとなる。従って、ベルト挿通部210を構成する2本のベルト挿通溝211,212を設ける位置は、ベルト挿通体21の両側縁部となる。
【0051】
そして、2本のベルト挿通溝211,212の長さと幅は、胴ベルト91が仮固定できる寸法である。具体的には、直線的な縦長形状の2本のベルト挿通溝211,212を平行に設け、胴ベルト91の長さ×幅が50×t2mmの場合で、52×3.5mm程度である。また、切欠部分の長さは、胴ベルト91の剛性にもよるが、胴ベルト91を幅方向に折り曲げて2本のベルト挿通溝211,212それぞれに入れ、弾性により元の状態に復帰できる長さである。これは、ランヤード保持具2を作業者が既に所有して使用中である胴ベルト型安全帯9に、任意の位置に後付けできる寸法である。また、本実施例では、この2本のベルト挿通溝211,212を平行に設けているが、平行でなくともよく、直線的な縦長形状でなくともよく、胴ベルト91に仮固定できればよい。
【0052】
実施例1と同様に、ベルト挿通体21にランヤード押え具22の一端部を固定軸13で回動自在に軸止して他端側を開放して開放口26が設けられている。具体的には、ベルト挿通体21を平板状部材で成形し、ベルト挿通体21の一方側に押え具取付片213,213を突設し、その間にランヤード押え具22の一端部を配置して、実施例1と同様に、バネ14を配置した固定軸13で軸止する。このとき、開放口26の方向は、水平方向から鉛直方向の間のいずれかに向いている。しかしながら、保持したロープ52等が重力によって鉛直方向に垂れることと、ベルト挿通体21を最小化するために、開放口26の方向は鉛直方向に向くことが好ましい。
【0053】
また、保持するロープ52等は実施例1と同じであるので、ベルト挿通体21とランヤード押え具22により形成されるランヤード保持空間15も実施例1と同形状である。つまり、「閉状態」において、ベルト挿通体21の一面と、ランヤード押え具22の内面(ベルト挿通体21側の面)も同形状である。
【0054】
実施例1と同様に、ランヤード5先端のフック51が掛止可能なフック掛止孔271を設けたフック掛止体27を、ベルト挿通体21のいずれかの縁部に一体的に設けるが、実施例2は胴ベルト型安全帯用であり、フック51が重力によって垂れ下がるので、下側に設けることが好ましい。
【0055】
図13に示すように、ランヤード2本式の胴ベルト型安全帯9は、胴ベルト91と、2本のロープ52等を備えている。このランヤード5(ロープタイプ)又はランヤード7(ストラップタイプ)の組み合わせは自由である。また、休止状態のロープ52等の余長分は、フック51又はフック71と共に、それぞれ収納袋92,92に収納される。しかしながら、この収納袋92を2ケ装備することは、作業者の腰回りが繁雑となるので、収納袋92の代わりに本実施例のランヤード保持具2を一方又は両方に取り付けることで、腰回りがすっきりとし、作業性が向上する。
【0056】
本発明のランヤード保持具2を用いることで、万一束ねて保持したロープ52等が構造物に引っ掛かる等の大きな荷重が加わった場合に、ロープ52等がランヤード保持具2から外れるので転倒事故が防止できる。その際に、部品が破損して散乱することも防止できる。また、束ねたロープ52等を脱着する際は、ランヤード押え具22を回動させて、配したバネ14に抗して挟み込むだけであるので、ロープ52等の脱着が容易に行え、取り外しに時間を要しない。更に、ランヤード保持とフックハンガーの機能を一体化することによりコストダウンが図れる。
【0057】
<実施例2−2>
以下、実施例2の変形例である実施例2−2について説明する。上記実施例2と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例2に対し、実施例2−2のうち差異を有する構造のみについて説明する。実施例2では、ベルト挿通部210を構成する2本のベルト挿通溝211,212を外側へ向け所定長切欠したが、この実施例2−1は、ランヤード保持具4Aのベルト挿通溝411,412を切欠ぜす、複数の閉鎖した長孔とするものである。
【0058】
図11(a)及び(b)は実施例2−2に係るランヤード保持具4Aを示した正面図及び底面図である。これらの図に示すように、ランヤード押え具22、ランヤード保持空間15及びフック掛止体27は、実施例2と同じである。
【0059】
図11(a)に示すように、実施例2−2のランヤード保持具4Aは、ベルト挿通体41にベルト挿通部410を構成する2本のベルト挿通溝411,412が設けられている。これら2本のベルト挿通溝411,412は閉鎖した(切欠部のない)長孔である。このランヤード保持具4Aの胴ベルト型安全帯9への取付方法は、ベルト挿通体41の表面より一方のベルト挿通溝411(又は412)に胴ベルト91を挿通し、ベルト挿通体41の裏面より他方のベルト挿通溝412(又は411)に挿通する。胴ベルト型安全帯9の場合、ベルト挿通溝411,412を閉鎖タイプとしても、胴ベルト91と2本のランヤード部に分解できるので、分解した後、ベルト挿通体41に胴ベルト91を挿通して、再び組み立てることができるので、ランヤード保持具4Aを胴ベルト91に後付けすることが可能である。従って、ランヤード保持具4Aを胴ベルト91に、脱落しないよう確実に固定したいとき等は、この方法でもよい。また、胴ベルト型安全帯9を製造する際に予めランヤード保持具4Aを組み付けておいてもよい。
【0060】
ここで、本実施例では2本のベルト挿通溝411,412で構成したが、2本以上であればよく、その数を増やすことで、より確実に胴ベルト91に固定できる。但し、最初にベルト挿通体41の表面より胴ベルト91を挿通し、最後にベルト挿通体41の裏面より挿通することで左右対称となり、胴ベルト91の収まりがよいので、その数は偶数とすることが望ましい。実使用においては、2本又は4本で製作することが実用的である。
【0061】
<実施例2−3>
以下、実施例2の変形例である実施例2−3について説明する。上記実施例2と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例2に対し、実施例2−3のうち差異を有する構造のみについて説明する。実施例2では、ベルト挿通部210を構成する2本のベルト挿通溝211,212を設けたが、この実施例2−3は、ベルト挿通体46の裏面(胴ベルト型安全帯9装着時の人体側)に、ベルト挿通部460を構成するベルト挿通溝461を設けるものである。
【0062】
図12(a)及び(b)は実施例2−3に係るランヤード保持具4Bを示した正面図及び底面図である。これらの図に示すように、ランヤード押え具22、ランヤード保持空間15及びフック掛止体27は、実施例2と同じである。
【0063】
図12(b)に示すように、実施例2−3のランヤード保持具4Bは、ベルト挿通体46の裏面に、外側へ向け所定長切欠したベルト挿通溝461が設けられている。また、図示しないが、このベルト挿通溝461を外側へ向けて切欠せず、閉鎖した長孔としてもよい。このベルト挿通溝461を外側へ向け所定長切欠した場合、胴ベルト型安全帯9を組み立てた状態で、ランヤード保持具4Bを胴ベルト91に後付けすることが可能である。一方、ベルト挿通溝461を閉鎖した長孔とした場合は、胴ベルト型安全帯9を胴ベルト91と2本のランヤード部に分解した後、ベルト挿通体46に胴ベルト91を挿通して、再び組み立てる必要がある。
【0064】
このランヤード保持具4Bの胴ベルト91への取付方法は、特許文献2に開示されている胴ベルト型安全帯用の「フックハンガー」と同様の手法を用いて、ランヤード保持具4Bを胴ベルト91に固定するものであるが、この方法でも、ランヤード保持具4Bを胴ベルト91に確実に、且つ容易に固定できる。