特許第5872929号(P5872929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872929動画像符号化装置、動画像復号装置、動画像符号化方法、動画像復号方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872929
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】動画像符号化装置、動画像復号装置、動画像符号化方法、動画像復号方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/593 20140101AFI20160216BHJP
【FI】
   H04N19/593
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-48772(P2012-48772)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-187583(P2013-187583A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年7月31日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/超高精細映像符号化技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭
(72)【発明者】
【氏名】内藤 整
【審査官】 堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−124846(JP,A)
【文献】 特開2010−239423(JP,A)
【文献】 特開2005−039841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N19/00−19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色信号成分を含む動画像を符号化する動画像符号化装置であって、
前記複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、前記複数の色信号成分のうち非参照信号成分をチャネル間予測する符号化側予測手段と、
前記参照信号成分または前記非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、前記符号化側予測手段に非参照信号成分のチャネル間予測を行わせる変更手段と、
前記符号化側予測手段によるチャネル間予測結果を用いて、前記複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定する決定手段と、
前記決定手段による決定結果を含む符号化情報を生成する符号化情報生成手段と、
前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分をチャネル間予測するものとして前記動画像を符号化し、符号化データを生成する符号化手段と、を備え
前記符号化側予測手段は、
非参照信号成分のフレーム内予測信号に、参照信号成分の残差信号の1/2倍したものを加算し、
参照信号成分のフレーム内予測信号に、変更を加えないことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
請求項に記載の動画像符号化装置において、
前記決定手段は、前記参照信号成分を変換および量子化したものと、前記非参照信号成分を変換および量子化したものと、を用いて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を決定することを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動画像符号化装置において、
前記決定手段は、前記参照信号成分の残差信号を用いて前記非参照信号成分をチャネル間予測するものとして前記動画像を符号化した後に復号して復号画像を生成し、当該復号画像と前記動画像との差分を用いて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を決定することを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の動画像符号化装置において、
前記符号化手段は、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分をチャネル間予測するものとして前記動画像を符号化する場合と、当該参照信号成分の残差信号を用いた当該非参照信号成分のチャネル間予測を行わないものとして前記動画像を符号化する場合と、を選択することを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の動画像符号化装置において生成された符号化データを復号する動画像復号装置であって、
前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号と前記符号化情報とを取得する復号手段と、
前記符号化情報に含まれる色参照信号指示子に基づいて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、前記選択手段により選択された非参照信号成分をチャネル間予測する復号側予測手段と、を備え
前記復号側予測手段は、
非参照信号成分のフレーム内予測信号に、参照信号成分の残差信号の1/2倍したものを加算し、
参照信号成分のフレーム内予測信号に、変更を加えないことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項6】
請求項に記載の動画像復号装置において、
前記復号手段は、前記符号化情報を取得した後に前記動画像復号装置が受信した前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号を取得することを特徴とする動画像復号装置。
【請求項7】
符号化側予測手段、変更手段、決定手段、符号化情報生成手段、および符号化手段を備え、複数の色信号成分を含む動画像を符号化する動画像符号化装置における動画像符号化方法であって、
前記符号化側予測手段が、前記複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、前記複数の色信号成分のうち非参照信号成分をチャネル間予測する第1のステップと、
前記変更手段が、前記参照信号成分または前記非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、前記符号化側予測手段に非参照信号成分のチャネル間予測を行わせる第2のステップと、
前記決定手段が、前記符号化側予測手段によるチャネル間予測結果を用いて、前記複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定する第3のステップと、
前記符号化情報生成手段が、前記決定手段による決定結果を含む符号化情報を生成する第4のステップと、
前記符号化手段が、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分をチャネル間予測するものとして前記動画像を符号化し、符号化データを生成する第5のステップと、を備え
前記第1のステップでは、前記符号化側予測手段が、
非参照信号成分のフレーム内予測信号に、参照信号成分の残差信号の1/2倍したものを加算し、
参照信号成分のフレーム内予測信号に、変更を加えないことを特徴とする動画像符号化方法。
【請求項8】
復号手段、選択手段、および復号側予測手段を備え、請求項に記載の動画像符号化装置において生成された符号化データを復号する動画像復号装置における動画像復号方法であって、
前記復号手段が、前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号と前記符号化情報とを取得する第6のステップと、
前記選択手段が、前記符号化情報に含まれる色参照信号指示子に基づいて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を選択する第7のステップと、
前記復号側予測手段が、前記選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、前記選択手段により選択された非参照信号成分をチャネル間予測する第8のステップと、を備え
前記第8のステップでは、前記復号側予測手段が、
非参照信号成分のフレーム内予測信号に、参照信号成分の残差信号の1/2倍したものを加算し、
参照信号成分のフレーム内予測信号に、変更を加えないことを特徴とする動画像復号方法。
【請求項9】
符号化側予測手段、変更手段、決定手段、符号化情報生成手段、および符号化手段を備え、複数の色信号成分を含む動画像を符号化する動画像符号化装置における動画像符号化方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記符号化側予測手段が、前記複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、前記複数の色信号成分のうち非参照信号成分をチャネル間予測する第1のステップと、
前記変更手段が、前記参照信号成分または前記非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、前記符号化側予測手段に非参照信号成分のチャネル間予測を行わせる第2のステップと、
前記決定手段が、前記符号化側予測手段によるチャネル間予測結果を用いて、前記複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定する第3のステップと、
前記符号化情報生成手段が、前記決定手段による決定結果を含む符号化情報を生成する第4のステップと、
前記符号化手段が、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分をチャネル間予測するものとして前記動画像を符号化し、符号化データを生成する第5のステップと、をコンピュータに実行させ
前記第1のステップでは、前記符号化側予測手段が、
非参照信号成分のフレーム内予測信号に、参照信号成分の残差信号の1/2倍したものを加算し、
参照信号成分のフレーム内予測信号に、変更を加えないためのプログラム。
【請求項10】
復号手段、選択手段、および復号側予測手段を備え、請求項に記載のプログラムをコンピュータで実行することにより生成された符号化データを復号する動画像復号装置における動画像復号方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記復号手段が、前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号と前記符号化情報とを取得する第6のステップと、
前記選択手段が、前記符号化情報に含まれる色参照信号指示子に基づいて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を選択する第7のステップと、
前記復号側予測手段が、前記選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、前記選択手段により選択された非参照信号成分をチャネル間予測する第8のステップと、をコンピュータに実行させ
前記第8のステップでは、前記復号側予測手段が、
非参照信号成分のフレーム内予測信号に、参照信号成分の残差信号の1/2倍したものを加算し、
参照信号成分のフレーム内予測信号に、変更を加えないためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像符号化装置、動画像復号装置、動画像符号化方法、動画像復号方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画像を符号化する動画像符号化装置は、カラー映像を扱う際に色空間を考慮する。色空間としては、例えばRGBやYUVやYCbCrが用いられる。
【0003】
非特許文献1には、動画像符号化方式HEVCの作業草案が示されている。
【0004】
非特許文献2には、動画像符号化方式におけるフレーム内予測として、チャネル間予測が示されている。このチャネル間予測は、色空間の成分同士には相関性があるという性質を利用する。例えば、YCbCr色空間では、Cb成分とCr成分との間には相関性があるため、チャネル間予測により、Cr成分の予測値を以下の数式(1)のように求めることができる。
【0005】
【数1】
【0006】
なお、数式(1)において、PredCrは、Cr成分の予測値を示し、RegCrは、Cr成分のフレーム内予測信号を示す。また、ResiCbは、逆変換したCb成分の残差信号を示す。フレーム内予測信号については、非特許文献1に示されている。
【0007】
特許文献1には、非特許文献2と同様にチャネル間予測が示されており、具体例として、YUV色空間において、Y成分のイントラ予測残差から、U成分やV成分のイントラ予測残差を線型予測する場合が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−310941号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B. Bross, et. al. "WD5: Working Draft 5 of High-Efficiency Video Coding," JCTVC-G1103, Nov. 2011.
【非特許文献2】Y. Chiu, et. al. "Cross-channel intra chroma residual prediction," JCTVC-G173, Nov. 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献2や特許文献1に示されている手法によれば、チャネル間予測を用いることで、符号化性能を向上させることができる。
【0011】
しかしながら、非特許文献2に示されている手法は、常にCb成分からCr成分を予測する。このため、Cb成分とCr成分との画像品質(例えばPSNR(Peak Signal−to−Noise Ratio))の向上が不均衡になるため、Cb成分とCr成分とで符号化性能の向上に不均衡が生じる場合があった。なお、一般的に品質制御に用いられる量子化パラメータでは、この不均衡を解消できない。
【0012】
また、特許文献1に示されている手法では、U成分のイントラ予測残差とV成分のイントラ予測残差との間に存在する冗長性を削減できず、U成分とV成分とで符号化性能の向上に不均衡が生じる場合があった。
【0013】
そこで、本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、色信号成分間で符号化性能の向上に不均衡が生じてしまうのを抑制できる動画像符号化装置、動画像復号装置、動画像符号化方法、動画像復号方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
【0015】
(1) 本発明は、複数の色信号成分(例えば、後述のCb成分およびCr成分に相当)を含む動画像(例えば、後述の原画像に相当)を符号化する動画像符号化装置であって、前記複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、前記複数の色信号成分のうち非参照信号成分を予測する符号化側予測手段(例えば、図1の加算部15、25に相当)と、前記参照信号成分または前記非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、前記符号化側予測手段に非参照信号成分の予測を行わせる変更手段(例えば、図1の選択部30に相当)と、前記符号化側予測手段による予測結果を用いて、前記複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定する決定手段(例えば、図1のコスト算出部40に相当)と、前記決定手段による決定結果を含む符号化情報(例えば、図2のスライスヘッダに相当)を生成する符号化情報生成手段(例えば、図1のコスト算出部40に相当)と、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして前記動画像を符号化し、符号化データ(例えば、図1のビットストリームに相当)を生成する符号化手段(例えば、図1のエントロピー符号化部50に相当)と、を備えることを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0016】
この発明によれば、動画像符号化装置に、符号化側予測手段、変更手段、決定手段、符号化情報生成手段、および符号化手段を設けた。そして、符号化側予測手段により、複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、複数の色信号成分のうち非参照信号成分を予測することとした。また、変更手段により、参照信号成分または非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、符号化側予測手段に非参照信号成分の予測を行わせることとした。また、決定手段により、符号化側予測手段による予測結果を用いて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定することとした。また、符号化情報生成手段により、決定手段による決定結果を含む符号化情報を生成することとした。また、符号化手段により、決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして動画像を符号化し、符号化データを生成することとした。
【0017】
このため、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を適宜設定し、設定するごとに参照信号成分の残差信号を用いて非参照信号成分を予測して、予測結果に基づいて、参照信号成分および非参照信号成分を最終的に決定する。したがって、色信号成分間で符号化性能の向上に不均衡が生じてしまわないように、参照信号成分および非参照信号成分を決定することができる。よって、色信号成分間で符号化性能の向上に不均衡が生じてしまうのを抑制できる。
【0018】
(2) 本発明は、(1)の動画像符号化装置について、前記符号化側予測手段は、前記参照信号成分の残差信号を用いてチャネル間予測を行って、前記非参照信号成分を予測することを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0019】
この発明によれば、(1)の動画像符号化装置において、符号化側予測手段により、参照信号成分の残差信号を用いてチャネル間予測を行って、非参照信号成分を予測することとした。このため、チャネル間予測において色信号成分間で符号化性能の向上に不均衡が生じてしまうのを抑制できる。
【0020】
(3) 本発明は、(1)または(2)の動画像符号化装置について、前記決定手段は、前記参照信号成分を変換および量子化したもの(例えば、図1の係数CbCoeffや係数CrCoeffに相当)と、前記非参照信号成分を変換および量子化したもの(例えば、図1の係数CrCoeffやCbCoeffに相当)と、を用いて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を決定することを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0021】
この発明によれば、(1)または(2)の動画像符号化装置において、決定手段により、参照信号成分を変換および量子化したものと、非参照信号成分を変換および量子化したものと、を用いて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0022】
(4) 本発明は、(1)〜(3)のいずれかの動画像符号化装置について、前記決定手段は、前記参照信号成分の残差信号を用いて前記非参照信号成分を予測するものとして前記動画像を符号化した後に復号して復号画像を生成し、当該復号画像と前記動画像との差分を用いて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を決定することを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0023】
この発明によれば、(1)〜(3)のいずれかの動画像符号化装置において、決定手段により、参照信号成分の残差信号を用いて非参照信号成分を予測するものとして動画像を符号化した後に復号して復号画像を生成し、この復号画像と動画像との差分を用いて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0024】
(5) 本発明は、(1)〜(4)のいずれかの動画像符号化装置について、前記符号化手段は、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして前記動画像を符号化する場合と、当該参照信号成分の残差信号を用いた当該非参照信号成分の予測を行わないものとして前記動画像を符号化する場合と、を選択することを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0025】
この発明によれば、(1)〜(4)のいずれかの動画像符号化装置において、符号化手段により、決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして動画像を符号化する場合と、参照信号成分の残差信号を用いた非参照信号成分の予測を行わないものとして動画像を符号化する場合と、を選択することとした。このため、動画像に応じて、参照信号成分の残差信号を用いて非参照信号成分を予測するものとして動画像を符号化したり、参照信号成分の残差信号を用いた非参照信号成分の予測を行わないものとして動画像を符号化したりすることができる。
【0026】
(6) 本発明は、(1)〜(5)のいずれかの動画像符号化装置において生成された符号化データ(例えば、図3のビットストリームに相当)を復号する動画像復号装置であって、前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号と前記符号化情報とを取得する復号手段(例えば、図3の逆量子化部111、121と逆変換部112、122とエントロピー復号部140とに相当)と、前記符号化情報に含まれる色参照信号指示子(例えば、図2のフラグ「inter_ch_control」に相当)に基づいて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を選択する選択手段(例えば、図3の選択部130に相当)と、前記選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、前記選択手段により選択された非参照信号成分を予測する復号側予測手段(例えば、図3の加算部113、123に相当)と、を備えることを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0027】
この発明によれば、(1)〜(5)のいずれかの動画像符号化装置において生成された符号化データを復号する動画像復号装置に、復号手段、選択手段、および復号側予測手段を設けた。そして、復号手段により、符号化データを復号して、色信号成分の残差信号と符号化情報とを取得することとした。また、選択手段により、符号化情報に含まれる色参照信号指示子に基づいて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を選択することとした。また、復号側予測手段により、選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、選択手段により選択された非参照信号成分を予測することとした。
【0028】
このため、動画像符号化装置において決定された参照信号成分および非参照信号成分を、符号化情報から求め、参照信号成分の残差信号を用いて非参照信号成分を予測することができる。
【0029】
(7) 本発明は、(6)の動画像復号装置について、前記復号側予測手段は、前記参照信号成分の残差信号を用いてチャネル間予測を行って、前記非参照信号成分を予測することを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0030】
この発明によれば、(6)の動画像復号装置において、復号側予測手段により、参照信号成分の残差信号を用いてチャネル間予測を行って、非参照信号成分を予測することとした。このため、参照信号成分の残差信号を用いて非参照信号成分をチャネル間予測できる。
【0031】
(8) 本発明は、(6)または(7)の動画像復号装置について、前記復号手段は、前記符号化情報を取得した後に前記動画像復号装置が受信した前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号を取得することを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0032】
この発明によれば、(6)または(7)の動画像復号装置において、復号手段により、符号化情報を取得した後に動画像復号装置が受信した符号化データを復号して、色信号成分の残差信号を取得することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0033】
(9) 本発明は、符号化側予測手段(例えば、図1の加算部15、25に相当)、変更手段(例えば、図1の選択部30に相当)、決定手段(例えば、図1のコスト算出部40に相当)、符号化情報生成手段(例えば、図1のコスト算出部40に相当)、および符号化手段(例えば、図1のエントロピー符号化部50に相当)を備え、複数の色信号成分(例えば、後述のCb成分およびCr成分に相当)を含む動画像(例えば、後述の原画像に相当)を符号化する動画像符号化装置における動画像符号化方法であって、前記符号化側予測手段が、前記複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、前記複数の色信号成分のうち非参照信号成分を予測する第1のステップと、前記変更手段が、前記参照信号成分または前記非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、前記符号化側予測手段に非参照信号成分の予測を行わせる第2のステップと、前記決定手段が、前記符号化側予測手段による予測結果を用いて、前記複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定する第3のステップと、前記符号化情報生成手段が、前記決定手段による決定結果を含む符号化情報(例えば、図2のスライスヘッダに相当)を生成する第4のステップと、前記符号化手段が、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして前記動画像を符号化し、符号化データ(例えば、図1のビットストリームに相当)を生成する第5のステップと、を備えることを特徴とする動画像符号化方法を提案している。
【0034】
この発明によれば、符号化側予測手段により、複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、複数の色信号成分のうち非参照信号成分を予測することとした。また、変更手段により、参照信号成分または非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、符号化側予測手段に非参照信号成分の予測を行わせることとした。また、決定手段により、符号化側予測手段による予測結果を用いて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定することとした。また、符号化情報生成手段により、決定手段による決定結果を含む符号化情報を生成することとした。また、符号化手段により、決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして動画像を符号化し、符号化データを生成することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0035】
(10) 本発明は、復号手段(例えば、図3の逆量子化部111、121と逆変換部112、122とエントロピー復号部140とに相当)、選択手段(例えば、図3の選択部130に相当)、および復号側予測手段(例えば、図3の加算部113、123に相当)を備え、(9)の動画像符号化装置において生成された符号化データ(例えば、図3のビットストリームに相当)を復号する動画像復号装置における動画像復号方法であって、前記復号手段が、前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号と前記符号化情報とを取得する第6のステップと、前記選択手段が、前記符号化情報に含まれる色参照信号指示子(例えば、図2のフラグ「inter_ch_control」に相当)に基づいて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を選択する第7のステップと、前記復号側予測手段が、前記選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、前記選択手段により選択された非参照信号成分を予測する第8のステップと、を備えることを特徴とする動画像復号方法を提案している。
【0036】
この発明によれば、復号手段により、符号化データを復号して、色信号成分の残差信号と符号化情報とを取得することとした。また、選択手段により、符号化情報に含まれる色参照信号指示子に基づいて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を選択することとした。また、復号側予測手段により、選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、選択手段により選択された非参照信号成分を予測することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0037】
(11) 本発明は、符号化側予測手段(例えば、図1の加算部15、25に相当)、変更手段(例えば、図1の選択部30に相当)、決定手段(例えば、図1のコスト算出部40に相当)、符号化情報生成手段(例えば、図1のコスト算出部40に相当)、および符号化手段(例えば、図1のエントロピー符号化部50に相当)を備え、複数の色信号成分(例えば、後述のCb成分およびCr成分に相当)を含む動画像(例えば、後述の原画像に相当)を符号化する動画像符号化装置における動画像符号化方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記符号化側予測手段が、前記複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、前記複数の色信号成分のうち非参照信号成分を予測する第1のステップと、前記変更手段が、前記参照信号成分または前記非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、前記符号化側予測手段に非参照信号成分の予測を行わせる第2のステップと、前記決定手段が、前記符号化側予測手段による予測結果を用いて、前記複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定する第3のステップと、前記符号化情報生成手段が、前記決定手段による決定結果を含む符号化情報(例えば、図2のスライスヘッダに相当)を生成する第4のステップと、前記符号化手段が、前記決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて当該決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして前記動画像を符号化し、符号化データ(例えば、図1のビットストリームに相当)を生成する第5のステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0038】
この発明によれば、プログラムを実行することで、符号化側予測手段により、複数の色信号成分のうち参照信号成分の残差信号を用いて、複数の色信号成分のうち非参照信号成分を予測することとした。また、変更手段により、参照信号成分または非参照信号成分の少なくともいずれかを変更して、符号化側予測手段に非参照信号成分の予測を行わせることとした。また、決定手段により、符号化側予測手段による予測結果を用いて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を決定することとした。また、符号化情報生成手段により、決定手段による決定結果を含む符号化情報を生成することとした。また、符号化手段により、決定手段により決定された参照信号成分の残差信号を用いて決定手段により決定された非参照信号成分を予測するものとして動画像を符号化し、符号化データを生成することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0039】
(12) 本発明は、復号手段(例えば、図3の逆量子化部111、121と逆変換部112、122とエントロピー復号部140とに相当)、選択手段(例えば、図3の選択部130に相当)、および復号側予測手段(例えば、図3の加算部113、123に相当)を備え、(11)のプログラムをコンピュータで実行することにより生成された符号化データ(例えば、図3のビットストリームに相当)を復号する動画像復号装置における動画像復号方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記復号手段が、前記符号化データを復号して、前記色信号成分の残差信号と前記符号化情報とを取得する第6のステップと、前記選択手段が、前記符号化情報に含まれる色参照信号指示子(例えば、図2のフラグ「inter_ch_control」に相当)に基づいて、前記複数の色信号成分の中から前記参照信号成分および前記非参照信号成分を選択する第7のステップと、前記復号側予測手段が、前記選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、前記選択手段により選択された非参照信号成分を予測する第8のステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0040】
この発明によれば、プログラムを実行することで、復号手段により、符号化データを復号して、色信号成分の残差信号と符号化情報とを取得することとした。また、選択手段により、符号化情報に含まれる色参照信号指示子に基づいて、複数の色信号成分の中から参照信号成分および非参照信号成分を選択することとした。また、復号側予測手段により、選択手段により選択された参照信号成分の残差信号を用いて、選択手段により選択された非参照信号成分を予測することとした。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、色信号成分間で符号化性能の向上に不均衡が生じてしまうのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態に係る動画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
図2】前記動画像符号化装置から出力されるスライスヘッダの一部を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る動画像復号装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0044】
[動画像符号化装置AAの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る動画像符号化装置AAの構成を示すブロック図である。動画像符号化装置AAは、変換部11、21と、量子化部12、22と、逆量子化部13、23と、逆変換部14、24と、加算部15、25と、記憶部16、26と、イントラ予測部17、27と、選択部30と、コスト算出部40と、エントロピー符号化部50と、を備えており、YCbCr信号により表される原画像を符号化してビットストリームを生成する。
【0045】
変換部11には、原画像に含まれるCbFrameから、イントラ予測部17から出力された後述のCb成分のフレーム内予測信号と、選択部30から加算部15に出力された信号と、を減算したものが入力される。この変換部11は、入力された信号を変換して出力する。
【0046】
変換部21には、原画像に含まれるCrFrameから、イントラ予測部27から出力された後述のCr成分のフレーム内予測信号と、選択部30から加算部25に出力された信号と、を減算したものが入力される。この変換部21は、入力された信号を変換して出力する。
【0047】
量子化部12には、変換部11から出力された信号が入力される。この量子化部12は、入力された信号を量子化して、Cb成分の係数CbCoeffを出力する。
【0048】
量子化部22には、変換部21から出力された信号が入力される。この量子化部22は、入力された信号を量子化して、Cr成分の係数CrCoeffを出力する。
【0049】
逆量子化部13には、Cb成分の係数CbCoeffが入力される。この逆量子化部13は、入力されたCb成分の係数CbCoeffを逆量子化して、出力する。
【0050】
逆量子化部23には、Cr成分の係数CrCoeffが入力される。この逆量子化部23は、入力されたCr成分の係数CrCoeffを逆量子化して、出力する。
【0051】
逆変換部14には、逆量子化部13から出力された信号が入力される。この逆変換部14は、入力された信号を逆変換して、Cb成分の残差信号を出力する。
【0052】
逆変換部24には、逆量子化部23から出力された信号が入力される。この逆変換部24は、入力された信号を逆変換して、Cr成分の残差信号を出力する。
【0053】
選択部30には、Cb成分の残差信号と、Cr成分の残差信号と、コスト算出部40から出力された後述の選択信号と、が入力される。この選択部30は、選択信号に応じて、Cb成分およびCr成分の中から参照信号成分と非参照信号成分とを選択し、選択結果に応じた信号を出力する。具体的には、選択信号が「0」の場合には、参照信号としてCb成分を選択するとともに、非参照信号としてCr成分を選択し、ゼロを加算部15に出力するとともに、Cb成分の残差信号を1/2倍したものを加算部25に出力する。一方、選択信号が「1」の場合には、参照信号としてCr成分を選択するとともに、非参照信号としてCb成分を選択し、Cr成分の残差信号を1/2倍したものを加算部15に出力するとともに、ゼロを加算部25に出力する。
【0054】
加算部15には、逆変換部14から出力されたCb成分の残差信号と、選択部30からの出力と、イントラ予測部17から出力された後述のCb成分のフレーム内予測信号と、が入力される。この加算部15は、後述の選択信号が「0」の場合には、以下の数式(2)に表す信号を記憶部16に出力する。一方、後述の選択信号が「1」の場合には、以下の数式(3)に表す信号を記憶部16に出力する。
【0055】
【数2】
【0056】
【数3】
【0057】
なお、上述の数式(2)および数式(3)において、RegCbは、イントラ予測部17から出力されたCb成分のフレーム内予測信号を示す。また、ResiCbは、Cb成分の残差信号を示し、ResiCrは、Cr成分の残差信号を示す。
【0058】
以上のように、後述の選択信号が「0」の場合には、記憶部16には、Cb成分のフレーム内予測信号と、Cb成分の残差信号と、を加算したものが出力される。一方、後述の選択信号が「1」の場合には、記憶部16には、Cb成分のフレーム内予測信号と、Cr成分の残差信号を1/2倍したものと、Cb成分の残差信号と、を加算したものが出力される。
【0059】
記憶部16は、入力された信号を格納し、適宜イントラ予測部17に出力する。
【0060】
加算部25には、逆変換部24から出力されたCr成分の残差信号と、選択部30からの出力と、イントラ予測部27から出力された後述のCr成分のフレーム内予測信号と、が入力される。この加算部25は、後述の選択信号が「0」の場合には、以下の数式(4)に表す信号を記憶部26に出力する。一方、後述の選択信号が「1」の場合には、以下の数式(5)に表す信号を記憶部26に出力する。
【0061】
【数4】
【0062】
【数5】
【0063】
なお、上述の数式(4)および数式(5)において、RegCrは、イントラ予測部27から出力されたCr成分のフレーム内予測信号を示す。また、ResiCbは、Cb成分の残差信号を示し、ResiCrは、Cr成分の残差信号を示す。
【0064】
以上のように、後述の選択信号が「0」の場合には、記憶部26には、Cr成分のフレーム内予測信号と、Cb成分の残差信号を1/2倍したものと、Cr成分の残差信号と、を加算したものが出力される。一方、後述の選択信号が「1」の場合には、記憶部26には、Cr成分のフレーム内予測信号と、Cr成分の残差信号と、を加算したものが出力される。
【0065】
記憶部26は、入力された信号を格納し、適宜イントラ予測部27に出力する。
【0066】
イントラ予測部17には、記憶部16に格納された信号が入力される。このイントラ予測部17は、入力された信号を用いてイントラ予測を行って、Cb成分のフレーム内予測信号を出力する。
【0067】
イントラ予測部27には、記憶部26に格納された信号が入力される。このイントラ予測部27は、入力された信号を用いてイントラ予測を行って、Cr成分のフレーム内予測信号を出力する。
【0068】
コスト算出部40には、CbFrameと、CrFrameと、Cb成分の係数CbCoeffと、Cr成分の係数CrCoeffと、記憶部16に格納された信号と、記憶部26に格納された信号と、が入力される。このコスト算出部40は、スライスごとに、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するのか、を決定する。
【0069】
具体的には、コスト算出部40は、まず、上述の2つのうちどちらでチャネル間予測を行うのかを決定するスライスについて、Cb成分からCr成分をチャネル間予測する場合のコスト値を数式(2)(4)を用いて算出するとともに、Cr成分からCb成分をチャネル間予測する場合のコスト値を数式(3)(5)を用いて算出する。コスト値は、以下の数式(6)により算出する。
【0070】
【数6】
【0071】
なお、上述の数式(6)において、発生係数の符号量とは、係数CbCoeff、CrCoeffをエントロピー符号化して得られたビットストリームの長さのことである。また、λは、予め定められた係数のことである。また、符号化誤差とは、原画像と復号画像との差分のことである。数式(2)(4)を用いてコスト値を算出する場合には、復号画像とは、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するものとして原画像を符号化した後に、符号化した結果を復号することにより生成されるもののことである。数式(3)(5)を用いてコスト値を算出する場合には、復号画像とは、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するものとして原画像を符号化した後に、符号化した結果を復号することにより生成されるもののことである。
【0072】
コスト算出部40は、次に、数式(2)(4)を用いて算出したコスト値と、数式(3)(5)を用いて算出したコスト値と、のうち、コスト値の小さい方でチャネル間予測を行うと決定する。具体的には、数式(2)(4)を用いて算出したコスト値の方が小さい場合には、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するものと決定し、上述の選択信号として「0」を出力する。一方、数式(3)(5)を用いて算出したコスト値の方が小さい場合には、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するものと決定し、上述の選択信号として「1」を出力する。
【0073】
また、コスト算出部40は、図2に示すSH(スライスヘッダ)のフラグ「inter_ch_control」に、選択信号の値を記述する。
【0074】
図2は、動画像符号化装置AAから出力されるスライスヘッダの一部を示す図である。フラグ「first_mb_in_slice」は、スライス中に存在する最初のマクロブロックが、画面全体では何番目に該当するかを示す。フラグ「slice_type」は、スライスの種類を示すもので、Iスライス、Pスライス、Bスライスのいずれかを示す。フラグ「pic_parameter_set_id」は、PPS(ピクチャーパラメータセット)のうち、このスライスで利用する番号(ID)を示す。フラグ「slice_qp_delta」は、スライス中のマクロブロックに適用する量子化ステップについて、現在の量子化ステップと、このスライスにおける量子化ステップと、の差を示す。
【0075】
フラグ「inter_ch_control」は、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するのか、すなわちCb成分およびCr成分のうち、どちらが参照信号で、どちらが非参照信号であるか、を示す。具体的には、フラグ「inter_ch_control」が「0」の場合には、参照信号がCb成分で、非参照信号がCr成分であることを示す。一方、フラグ「inter_ch_control」が「1」の場合には、参照信号がCr成分で、非参照信号がCb成分であることを示す。
【0076】
図1に戻って、エントロピー符号化部50には、Cb成分の係数CbCoeffと、Cr成分の係数CrCoeffと、選択信号の値がフラグ「inter_ch_control」に記述されたスライスヘッダと、が入力される。このエントロピー符号化部50は、入力された信号をエントロピー符号化して、ビットストリームデータとして出力する。
【0077】
[動画像復号装置BBの構成]
図3は、本発明の一実施形態に係る動画像復号装置BBの構成を示すブロック図である。動画像復号装置BBは、逆量子化部111、121と、逆変換部112、122と、加算部113、123と、記憶部114、124と、イントラ予測部115、125と、選択部130と、エントロピー復号部140と、を備えており、動画像符号化装置AAにおいて生成されたビットストリームを復号する。
【0078】
エントロピー復号部140には、動画像符号化装置AAにおいて生成されたビットストリームが入力される。このエントロピー復号部140は、入力されたビットストリームデータをエントロピー復号して、Cb成分の係数CbCoeffと、Cr成分の係数CrCoeffと、スライスヘッダと、を出力する。
【0079】
逆量子化部111には、エントロピー復号部140から出力されたCb成分の係数CbCoeffが入力される。この逆量子化部111は、入力されたCb成分の係数CbCoeffを逆量子化して、出力する。
【0080】
逆量子化部121には、エントロピー復号部140から出力されたCr成分の係数CrCoeffが入力される。この逆量子化部121は、入力されたCr成分の係数CrCoeffを逆量子化して、出力する。
【0081】
逆変換部112には、逆量子化部111から出力された信号が入力される。この逆変換部112は、入力された信号を逆変換して、Cb成分の残差信号を出力する。
【0082】
逆変換部122には、逆量子化部121から出力された信号が入力される。この逆変換部122は、入力された信号を逆変換して、Cr成分の残差信号を出力する。
【0083】
なお、上述のエントロピー復号部140は、スライスヘッダを取得した後に動画像復号装置BBが受信したビットストリームを復号して、Cb成分の係数CbCoeffと、Cr成分の係数CrCoeffと、を取得して出力する。このため、Cb成分の残差信号およびCr成分の残差信号は、エントロピー復号部140によりスライスヘッダが取得された後に動画像復号装置BBが受信したビットストリームから、求められることになる。
【0084】
選択部130には、エントロピー復号部140から出力されたスライスヘッダと、Cb成分の残差信号と、Cr成分の残差信号と、が入力される。この選択部130は、スライスヘッダに応じて、Cb成分およびCr成分の中から参照信号成分と非参照信号成分とを選択し、選択結果に応じた信号を加算部113、123に出力する。具体的には、スライスヘッダに含まれるフラグ「inter_ch_control」が「0」の場合には、参照信号としてCb成分を選択するとともに、非参照信号としてCr成分を選択し、ゼロを加算部113に出力するとともに、Cb成分の残差信号を1/2倍したものを加算部123に出力する。一方、フラグ「inter_ch_control」が「1」の場合には、参照信号としてCr成分を選択するとともに、非参照信号としてCb成分を選択し、Cr成分の残差信号を1/2倍したものを加算部113に出力するとともに、ゼロを加算部123に出力する。
【0085】
加算部113には、逆変換部112から出力されたCb成分の残差信号と、選択部130からの出力と、イントラ予測部115から出力された後述のCb成分のフレーム内予測信号と、が入力される。この加算部113は、スライスヘッダに含まれるフラグ「inter_ch_control」が「0」の場合には、以下の数式(7)に表す信号を記憶部114に出力する。一方、フラグ「inter_ch_control」が「1」の場合には、以下の数式(8)に表す信号を記憶部114に出力する。
【0086】
【数7】
【0087】
【数8】
【0088】
なお、上述の数式(7)および数式(8)において、RegCbは、イントラ予測部115から出力されたCb成分のフレーム内予測信号を示す。また、ResiCbは、Cb成分の残差信号を示し、ResiCrは、Cr成分の残差信号を示す。
【0089】
以上のように、フラグ「inter_ch_control」が「0」の場合には、記憶部114には、Cb成分のフレーム内予測信号と、Cb成分の残差信号と、を加算したものが出力される。一方、フラグ「inter_ch_control」が「1」の場合には、記憶部114には、Cb成分のフレーム内予測信号と、Cr成分の残差信号を1/2倍したものと、Cb成分の残差信号と、を加算したものが出力される。
【0090】
加算部123には、逆変換部122から出力されたCr成分の残差信号と、選択部130からの出力と、イントラ予測部125から出力された後述のCr成分のフレーム内予測信号と、が入力される。この加算部123は、スライスヘッダに含まれるフラグ「inter_ch_control」が「0」の場合には、以下の数式(9)に表す信号を記憶部124に出力する。一方、フラグ「inter_ch_control」が「1」の場合には、以下の数式(10)に表す信号を記憶部124に出力する。
【0091】
【数9】
【0092】
【数10】
【0093】
なお、上述の数式(9)および数式(10)において、RegCrは、イントラ予測部125から出力されたCr成分のフレーム内予測信号を示す。また、ResiCbは、Cb成分の残差信号を示し、ResiCrは、Cr成分の残差信号を示す。
【0094】
以上のように、フラグ「inter_ch_control」が「0」の場合には、記憶部124には、Cr成分のフレーム内予測信号と、Cb成分の残差信号を1/2倍したものと、Cr成分の残差信号と、を加算したものが出力される。一方、フラグ「inter_ch_control」が「1」の場合には、記憶部124には、Cr成分のフレーム内予測信号と、Cr成分の残差信号と、を加算したものが出力される。
【0095】
記憶部114は、入力された信号を格納し、適宜イントラ予測部115に出力する。記憶部124は、入力された信号を格納し、適宜イントラ予測部125に出力する。また、記憶部114に格納された信号と、記憶部124に格納された信号とは、復号画像として出力される。
【0096】
イントラ予測部115には、記憶部114に格納された信号が入力される。このイントラ予測部115は、入力された信号を用いてイントラ予測を行って、Cb成分のフレーム内予測信号を出力する。
【0097】
イントラ予測部125には、記憶部124に格納された信号が入力される。このイントラ予測部125は、入力された信号を用いてイントラ予測を行って、Cr成分のフレーム内予測信号を出力する。
【0098】
以上の動画像符号化装置AAによれば、スライスごとに、Cb成分からCr成分をチャネル間予測する場合のコスト値と、Cr成分からCb成分をチャネル間予測する場合のコスト値と、に基づいて、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するのか、を決定する。このため、Cb成分とCr成分とで符号化性能の向上に不均衡が生じてしまわないように、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するのか、を決定することができる。したがって、チャネル間予測において色信号成分間で符号化性能の向上に不均衡が生じてしまうのを抑制できる。
【0099】
また、以上の動画像符号化装置AAによれば、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するのか、をスライスヘッダに記述して、動画像復号装置BBに送信する。このため、動画像復号装置BBは、このスライスヘッダに基づいて、Cb成分からCr成分をチャネル間予測したり、Cr成分からCb成分をチャネル間予測したりすることができる。
【0100】
なお、本発明の動画像符号化装置AAの処理や動画像復号装置BBの処理を、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶し、記録媒体に記録されたプログラムを動画像符号化装置AAや動画像復号装置BBに読み込ませ、実行することによって、本発明を実現できる。
【0101】
また、上述のプログラムは、このプログラムを記憶装置などに格納した動画像符号化装置AAや動画像復号装置BBから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネットなどのネットワーク(通信網)や電話回線などの通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0102】
また、上述のプログラムは、上述の機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述の機能を動画像符号化装置AAや動画像復号装置BBにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0103】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【0104】
例えば、上述の実施形態では、動画像符号化装置AAおよび動画像復号装置BBは、YCbCr信号を扱うものとしたが、これに限らず、例えばRGB信号やYUV信号などの、複数の色信号成分を有する他の信号についても扱うことができる。
【0105】
また、上述の実施形態では、動画像符号化装置AAおよび動画像復号装置BBは、イントラ予測を用いるものとしたが、これに限らず、インター予測といった他の予測方式を用いることもできる。
【0106】
また、上述の実施形態では、コスト算出部40は、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するのか、をスライスごとに決定するものとしたが、これに限らず、例えばフレームごとに決定するものとしてもよい。
【0107】
また、上述の実施形態では、フラグ「inter_ch_control」、すなわちCb成分およびCr成分のそれぞれを参照信号および非参照信号のどちらとするかを示す情報を、スライスヘッダに記述するものとしたが、これに限らず、例えばピクチャーパラメータセットに記述するものとしてもよい。なお、ピクチャーパラメータセットに記述する場合には、参照信号と非参照信号との切り替えは、ピクチャー単位で行われることになる。
【0108】
また、上述の実施形態では、フラグ「inter_ch_control」は、フラグ「slice_qp_delta」の後の位置に記述されるものとしたが、これに限らず、どこの位置に記述してもよい。
【0109】
また、上述の実施形態では、動画像符号化装置AAおよび動画像復号装置BBは、チャネル間予測において参照信号の残差信号に乗ずる係数を1/2としたが、これに限らず、任意の予測係数αを乗ずるものとしてもよい。この予測係数αは、動画像符号化装置AAおよび動画像復号装置BBに予め記憶されるものとしたり、スライスヘッダやピクチャーパラメータセットに記述されるものとしたりすることができる。
【0110】
また、上述の実施形態では、常にチャネル間予測を行うものとして符号化を行うものとしたが、これに限らず、チャネル間予測を行うものとして符号化を行う場合と、チャネル間予測を行わないものとして符号化を行う場合と、を切り替えることができるものであってもよい。チャネル間予測を行わないものとして符号化を行う場合には、記憶部114に入力される信号CbBuffは、上述の数式(2)で表され、記憶部124に入力される信号CrBuffは、上述の数式(5)で表されることになる。
【0111】
また、上述の実施形態では、Cb成分からCr成分をチャネル間予測するのか、または、Cr成分からCb成分をチャネル間予測するものとした。すなわち、2つの色信号成分のうち、一方から他方をチャネル間予測するか、または、他方から一方をチャネル間予測するものとした。しかし、これに限らず、例えば、第1の成分から第2の成分をチャネル間予測するか、または、第3の成分から第2の成分をチャネル間予測するものであってもよい。また、例えば、第1の成分から第2の成分をチャネル間予測するか、第3の成分から第4の成分をチャネル間予測するか、または、第5の成分から第6の成分をチャネル間予測するものであってもよい。
【符号の説明】
【0112】
AA・・・動画像符号化装置
BB・・・動画像復号装置
11、21・・・変換部
12、22・・・量子化部
13、23、111、121・・・逆量子化部
14、24、112、122・・・逆変換部
15、25、113、123・・・加算部
16、26、114、124・・・記憶部
17、27、115、125・・・イントラ予測部
30、130・・・選択部
40・・・コスト算出部
50・・・エントロピー符号化部
140・・・エントロピー復号部
図1
図2
図3