(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872932
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】線状部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20160216BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160216BHJP
F16B 5/12 20060101ALI20160216BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H02G3/32
B60R16/02 623Q
B60R16/02 623H
F16B5/12 J
F16B2/08 U
F16B2/08 A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-51786(P2012-51786)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-188024(P2013-188024A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】今井 博也
(72)【発明者】
【氏名】大園 直樹
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−285755(JP,A)
【文献】
特開2011−73655(JP,A)
【文献】
特開2010−132242(JP,A)
【文献】
特開2005−73309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
B60R 16/02
F16B 2/08
F16B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材を固定用部材に保持した状態で、該固定用部材を取付対象に設けられた取付用部材に取り付けるための取付構造において、
前記取付用部材は、前記固定用部材を保持するための固定用部材保持部と、該固定用部材保持部における前記固定用部材の保持位置を規制する位置規制部とを備えると共に、前記取付対象と一体的に構成され、
前記固定用部材保持部において、前記固定用部材の保持位置と、前記位置規制部との間の箇所は、隙間部として構成される
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の取付構造において、
前記取付対象は、第1面と、該第1面に連なり且つ前記第1面とは異なる方向に延出する第2面とを有し、
前記取付用部材の少なくとも一部は、前記第1面と前記第2面とに連結されている
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の取付構造において、
前記取付用部材は、前記固定用部材保持部と、該固定用部材保持部の一端から延出する第1延出部と、前記固定用部材保持部の他端から延出する第2延出部とから構成され、
前記位置規制部としての前記第1延出部及び前記第2延出部は、互いに離間する方向に延出している
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項4】
請求項3記載の取付構造において、
前記第1延出部は、前記第1面及び前記第2面にそれぞれ連結され、
前記固定用部材保持部及び前記第2延出部は、前記第2面に連結されている
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の取付構造において、
前記取付対象は、車両のドアライニングであり、
前記第1面は、前記ドアライニングを構成するドアポケットでの前記車両の外側の面であり、
前記第2面は、前記ドアライニングの側面であり、
前記固定用部材は、前記ドアポケットでの前記車両の外側の面から延出した前記取付用部材により、前記線状部材と前記ドアポケットでの前記車両の外側の面との間で支持される
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の取付構造において、
前記第1面には、第1取付用部材が前記取付対象の前方側に設けられると共に、第2取付用部材が前記取付対象の後方側に設けられ、
前記第1取付用部材の固定用部材保持部は、前記取付対象の前方に向って、前記第1面との間隔が広がるように形成され、
前記第2取付用部材の固定用部材保持部は、前記取付対象の後方に向って、前記第1面との間隔が広がるように形成されている
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の取付構造において、
前記第2面から離間するにつれて、前記固定用部材保持部と前記第1面との間隔が広がる
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の取付構造において、
前記第1面には、第1取付用部材が前記取付対象の前方側に設けられると共に、第2取付用部材が前記取付対象の後方側に設けられ、
前記第1取付用部材では、前記取付対象の前方に向かうように、第1延出部、固定用部材保持部及び第2延出部が順に形成され、
前記第2取付用部材では、前記取付対象の後方に向かうように、第1延出部、固定用部材保持部及び第2延出部が順に形成されている
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項9】
請求項8記載の取付構造において、
前記第1取付用部材の第2延出部と、前記第2取付用部材の第2延出部とは、前記取付対象の前後方向の幅に収まるように、それぞれ形成されている
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項10】
請求項8又は9記載の取付構造において、
前記第1面は、前記取付対象の前方から後方に向かって下方に傾斜し、
前記第1取付用部材及び前記第2取付用部材は、前記取付対象の前後方向に沿って、略同一の形状及び幅を有し、
前記第1取付用部材及び前記第2取付用部材では、それぞれ、前記第1面から上方に延出する第1延出部に対して、固定用部材保持部及び第2延出部が順に形成されている
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の取付構造において、
前記取付対象は、車両のドアライニングであり、
前記第1面は、前記ドアライニングを構成するドアポケットの上面であり、
前記第2取付用部材は、前記ドアポケットの前記上面及び前記ドアライニングの後方側の側面によって形成される角部に設けられる
ことを特徴とする線状部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状部材の取付構造に関し、より詳細には、線状部材としてのワイヤハーネスを、取付対象である車両の内装部材に取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両内において、線状部材としてのワイヤハーネスを、固定用部材としてのクリップの基端部に固定し、該クリップを取付用部材としてのフランジに狭持させることにより、該ワイヤハーネスを、フランジを介して、取付対象としての車体側に固定することが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−299913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車体側が車両の内装部材である場合に、該内装部材とフランジとが別体であれば、内装部材に対してフランジを固定する工程と、ワイヤハーネスをクリップの基端部に固定する工程と、クリップをフランジに狭持する工程とが必要となり、作業工数が増加する。
【0005】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、取付対象への線状部材の取付作業性を向上することができる取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、線状部材を固定用部材に保持した状態で、該固定用部材を取付対象に設けられた取付用部材に取り付けるための取付構造に関するものであり、前記取付用部材は、前記固定用部材を保持するための固定用部材保持部
と、該固定用部材保持部における前記固定用部材の保持位置を規制する位置規制部とを備えると共に、前記取付対象と一体的に構成され
、前記固定用部材保持部において、前記固定用部材の保持位置と、前記位置規制部との間の箇所は、隙間部として構成されることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
この場合、前記取付対象は、第1面と、該第1面に連なり且つ前記第1面とは異なる方向に延出する第2面とを有し、前記取付用部材の少なくとも一部は、前記第1面と前記第2面とに連結されていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
この場合、前記取付用部材は、前記固定用部材保持部と、該固定用部材保持部の一端から延出する第1延出部と、前記固定用部材保持部の他端から延出する第2延出部とから構成され、前記位置規制部としての前記第1延出部及び前記第2延出部は、互いに離間する方向に延出していることが好ましい(請求項
3)。
【0010】
また、前記第1延出部は、前記第1面及び前記第2面にそれぞれ連結され、前記固定用部材保持部及び前記第2延出部は、前記第2面に連結されていることが好ましい(請求項
4)。
【0011】
ここで、前記取付対象は、車両のドアライニングであり、前記第1面は、前記ドアライニングを構成するドアポケットでの前記車両の外側の面であり、前記第2面は、前記ドアライニングの側面であり、前記固定用部材は、前記ドアポケットでの前記車両の外側の面から延出した前記取付用部材により、前記線状部材と前記ドアポケットでの前記車両の外側の面との間で支持される(請求項
5)。
また、前記第1面には、第1取付用部材が前記取付対象の前方側に設けられると共に、第2取付用部材が前記取付対象の後方側に設けられ、前記第1取付用部材の固定用部材保持部は、前記取付対象の前方に向って、前記第1面との間隔が広がるように形成され、前記第2取付用部材の固定用部材保持部は、前記取付対象の後方に向って、前記第1面との間隔が広がるように形成されている(請求項6)。
【0012】
この場合、前記第2面から離間するにつれて、前記固定用部材保持部と前記第1面との間隔が広がることが好ましい(請求項7)。
【0013】
また、前記第1面には、第1取付用部材が前記取付対象の前方側に設けられると共に、第2取付用部材が前記取付対象の後方側に設けられ、前記第1取付用部材では、前記取付対象の前方に向かうように、第1延出部、固定用部材保持部及び第2延出部が順に形成され、前記第2取付用部材では、前記取付対象の後方に向かうように、第1延出部、固定用部材保持部及び第2延出部が順に形成されていることが好ましい(請求項8)。
【0014】
さらに、前記第1取付用部材の第2延出部と、前記第2取付用部材の第2延出部とは、前記取付対象の前後方向の幅に収まるように、それぞれ形成されていることが好ましい(請求項9)。
また、前記第1面は、前記取付対象の前方から後方に向かって下方に傾斜し、前記第1取付用部材及び前記第2取付用部材は、前記取付対象の前後方向に沿って、略同一の形状及び幅を有し、前記第1取付用部材及び前記第2取付用部材では、それぞれ、前記第1面から上方に延出する第1延出部に対して、固定用部材保持部及び第2延出部が順に形成されていることが好ましい(請求項10)。また、前記取付対象は、車両のドアライニングであり、前記第1面は、前記ドアライニングを構成するドアポケットの上面であり、前記第2取付用部材は、前記ドアポケットの前記上面及び前記ドアライニングの後方側の側面によって形成される角部に設けられることが好ましい(請求項11)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、取付用部材と取付対象とが一体的に構成されているので、線状部材を固定用部材に保持した状態で、該固定用部材を前記取付用部材に取り付ければ、前記取付対象に対する前記線状部材の取付作業が完了する。従って、特許文献1の技術と比較して、前記取付対象への前記線状部材の取付作業性を向上することができる。
また、固定用部材保持部における固定用部材の保持位置と位置規制部との間の箇所が隙間部として構成されるので、該隙間部がない場合と比較して、前記固定用部材の取付スペースを広く取ることができる。この結果、前記固定用部材を取付用部材に容易に取り付けることが可能となり、取付作業性を一層向上することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、取付用部材の少なくとも一部が取付対象の第1面及び第2面に連結されているので、該取付用部材の剛性が向上する。
【0018】
請求項
3に係る発明によれば、位置規制部としての第1延出部及び第2延出部が互いに離間する方向に延出しているので、固定用部材保持部に対する固定用部材の取付時や、前記固定用部材保持部に対する前記固定用部材の取り外し時に、前記第1延出部及び前記第2延出部が邪魔になることを抑制することができる。また、このように構成されることで、型構造的にも作りやすい形状とすることができる。
【0019】
請求項
4に係る発明によれば、第1延出部が第1面及び第2面にそれぞれ連結され、固定用部材保持部及び第2延出部は、前記第2面に連結されているため、前記第1延出部、前記固定用部材保持部及び前記第2延出部の剛性を向上することができる。
【0020】
請求項
5に係る発明によれば、ドアポケットでの前記車両の外側の面から取付用部材が延出し、固定用部材は、線状部材と前記ドアポケットでの前記車両の外側の面との間で、前記取付用部材により支持される。これにより、前記ドアポケットでの前記車両の外側の面から延出される前記取付用部材の長さは、ドアライニングから車両の車幅方向に沿って取付用部材が延出した場合と比較して、短くなる。この結果、取付用部材が肥大化することを回避することができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、第2面から離間するにつれて、固定用部材保持部と第1面との間隔が広がるので、車両にドアライニングを組み込む前に取付用部材に固定用部材を取り付ける際、該固定用部材の取付作業が容易になる。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、取付対象の前後方向で広がるように第1取付用部材及び第2取付用部材がそれぞれ設けられるので、取付対象での前記第1取付用部材及び前記第2取付用部材間のスペースが広くなって、該スペースを有効利用することができる。また、スペースが広がることで、固定用部材の取付作業を効率よく行うことができる。
【0023】
請求項9に係る発明によれば、取付対象の前後方向の幅に収まるように、第1取付用部材の第2延出部と、第2取付用部材の第2延出部とが、それぞれ形成されているので、前記取付対象の周辺の部材に対して、前記各第2延出部が邪魔になることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係るワイヤハーネスの取付構造が適用されるドアライニングの斜視図である。
【
図2】
図1のドアライニングの背面側の斜視図である。
【
図3】
図2のドアポケットの上面側を拡大した斜視図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、ワイヤハーネス、各固定用部材及び各取付用部材の斜視図である。
【
図7】固定用部材保持部への固定用部材の保持を図示した説明図である。
【
図8】ドアライニングと取付用部材との一体的な構成を図示した説明図である。
【
図9】ドアポケットの上面側における2つの取付用部材の位置関係を図示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る線状部材の取付構造について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る線状部材の取付構造は、例えば、
図1及び
図2に示すように、車両のドアパネルの車室内側に取り付けられるドアライニング(ドアトリム)10に、線状部材としてのワイヤハーネス12を、取付構造14を介して取り付ける場合に適用される。但し、本実施形態の取付構造14は、この一実施形態に限定されるものではなく、ドアライニング10以外の車両の内装部材を含む各種の車両部品を取付対象として、該取付対象にワイヤハーネス12を取り付けることも可能である。また、車両部品以外の物体を取付対象として、該取付対象にワイヤハーネス12を取り付けることも可能である。さらに、取付対象に取り付けられる線状部材としては、ワイヤハーネス12に限定されることはなく、例えば、1本の電線や棒状部材のように、線状の部材であればよい。以下の説明では、ワイヤハーネス12を取付構造14を介してドアライニング10に取り付ける場合について説明する。
【0027】
プラスチック等からなるドアライニング10の中央部分には、ドアアームレスト16が車両の前後方向(矢印A方向)に沿って設けられ、ドアライニング10の下方には、物品を収納するドアポケット18を含むロア部17と、スピーカを収納するスピーカ収納部20とが設けられている。ドアポケット18は、その一部を凹ませることにより、物品を収納可能な凹部22を形成している。
【0028】
図2に示すドアライニング10の背面側(車室の外側)において、凹部22を画成するドアポケット18の上面24には、ワイヤハーネス12が取付構造14を介して取り付けられている。ワイヤハーネス12は、車両のバッテリからの電力供給や、車載機器間の信号の送受信に用いられる複数の電線を束にしたものである。なお、本実施形態では、一例として、ドアポケット18の上面24に対し、取付構造14を介してワイヤハーネス12を取り付ける場合について説明するが、ドアポケット18の凹部22を画成する他面(側面又は底面)に対して、取付構造14を介してワイヤハーネス12を取付可能であることは勿論である。
【0029】
図2及び
図3に示すように、ドアライニング10の背面側において、上面24から矢印C1方向に延出するロア部17の上端部26には、取付孔30を有する複数の取付部32が形成されている。これらの取付部32と、ドアアームレスト16の下端部34に形成された複数の爪部36とがそれぞれ係合することにより、ドアアームレスト16に対してロア部17を装着することができる。これらの取付部32と、取付構造14を構成する後述の第1取付用部材40及び第2取付用部材42とは、矢印A方向に沿った位置をずらして配置されているため、ドアアームレスト16に対するロア部17の取り付け及び取り外しの際、第1取付用部材40及び第2取付用部材42の存在が邪魔になることはない。なお、ドアアームレスト16及びドアポケット18以外のドアライニング10の構成は、公知のドアライニングと略同じ構成であるため、その詳細な説明については省略する。
【0030】
次に、取付構造14について、
図4A〜
図10を参照しながら、詳しく説明する。
【0031】
取付構造14は、ドアポケット18の上面24において、車両の前方方向である矢印A1方向側に設けられた第1取付用部材40と、車両の後方方向である矢印A2方向側にあって、凹部22を画成する上面24と側面とによって形成される角部に設けられた第2取付用部材42とから構成される。第1取付用部材40及び第2取付用部材42は、略同じ形状であり、ドアポケット18の矢印A方向に沿った幅W内に収まるように、樹脂成形等によりドアポケット18の上面24と一体的に構成されている。また、
図2、
図3、
図9及び
図10に示すように、上面24のうち、第2取付用部材42が設けられる矢印A2方向側は、矢印A2方向に向かって下方に傾斜する湾曲形状に構成されている。そのため、第2取付用部材42は、第1取付用部材40よりも低い位置に設けられている。
【0032】
第1取付用部材40は、
図2、
図3、
図4B、
図5B及び
図9に示すように、車幅方向である矢印B方向(
図7及び
図8参照)から視ると略Z字状の形状であり、ワイヤハーネス12を保持する第1固定用部材44を取付可能に構成されている。具体的に、第1取付用部材40は、上面24から矢印C1方向に延出する第1延出部40aと、第1延出部40aの先端部から斜め前方(矢印A1方向及び矢印C1方向)に延出し且つ第1固定用部材44を取付可能な固定用部材保持部40bと、固定用部材保持部40bの先端部から矢印C1方向に延出する第2延出部40cとから構成される。
【0033】
すなわち、第1取付用部材40は、車両の前方に向かって、第1延出部40a、固定用部材保持部40b及び第2延出部40cが順に形成されている。従って、固定用部材保持部40bの一端から第1延出部40aが矢印C2方向に延出すると共に、他端から第2延出部40cが矢印C1方向に延出している。つまり、第1延出部40a及び第2延出部40cは、固定用部材保持部40bの両端から互いに離間する方向にそれぞれ延出している。
【0034】
第1固定用部材44は、ワイヤハーネス12の一部を保持した状態で、固定用部材保持部40bの略中央部分に取り付けられる。この場合、固定用部材保持部40bにおける第1固定用部材44の保持位置と、第1延出部40a及び第2延出部40cとの間の箇所は、隙間部46a、46cとして形成される。すなわち、第1延出部40a及び第2延出部40cは、固定用部材保持部40bにおける第1固定用部材44の保持位置を規制する位置規制部として機能する。このような隙間部46a、46cが設けられることにより、固定用部材保持部40bに対して第1固定用部材44を取り付けやすくなる。
【0035】
一方、矢印A2方向側の角部に形成された第2取付用部材42は、
図2、
図3、
図4A、
図5A、
図9及び
図10に示すように、第1取付用部材40と同様に、矢印B方向(
図7及び
図8参照)から視ると略Z字状の形状であり、ワイヤハーネス12を保持する第2固定用部材48を取付可能に構成されている。具体的に、第2取付用部材42は、前記角部から矢印C1方向に延出する第1延出部42aと、第1延出部42aの先端部から斜め後方(矢印A2方向及び矢印C1方向)に延出し且つ第2固定用部材48を取付可能な固定用部材保持部42bと、固定用部材保持部42bの先端部から矢印C1方向に延出する第2延出部42cとから構成される。
【0036】
すなわち、第2取付用部材42は、車両の後方に向かって、第1延出部42a、固定用部材保持部42b及び第2延出部42cが順に形成されている。従って、第1取付用部材40の場合と同様に、第1延出部42a及び第2延出部42cは、固定用部材保持部42bの両端から互いに離間する方向(矢印C1方向及び矢印C2方向)にそれぞれ延出している。
【0037】
第2固定用部材48は、ワイヤハーネス12の一部を保持した状態で、固定用部材保持部42bの略中央部分に取り付けられるが、固定用部材保持部42bにおける第2固定用部材48の保持位置と、第1延出部42a及び第2延出部42cとの間の箇所は、隙間部50a、50cとして形成される。すなわち、第1延出部42a及び第2延出部42cは、固定用部材保持部42bにおける第2固定用部材48の保持位置を規制する位置規制部として機能し、従って、隙間部50a、50cの存在によって、固定用部材保持部42bに対し第2固定用部材48を取り付けやすくなる。
【0038】
このように、第1取付用部材40は、矢印A1方向に向かって上面24から延出すると共に、第2取付用部材42は、矢印A2方向に向かって上面24における矢印A2方向側の角部から延出している。すなわち、第1取付用部材40及び第2取付用部材42は、矢印A方向に沿って、互いに離間する方向に延出している。また、第1取付用部材40及び第2取付用部材42は、前述のように、幅W内で収まるように、上面24と一体的に構成されている。さらに、固定用部材保持部40b、42bに対して、第1延出部40a、42aと、第2延出部40c、42cとは、それぞれ、互いに離間する方向に延出している。
【0039】
そのため、ワイヤハーネス12を第1固定用部材44及び第2固定用部材48で保持し、第1固定用部材44を第1取付用部材40の固定用部材保持部40bに取り付けると共に、第2固定用部材48を第2取付用部材42の固定用部材保持部42bに取り付ければ、上面24から所定高さ(距離H)だけワイヤハーネス12を離間させた状態で保持することができる。すなわち、取付構造14では、ワイヤハーネス12と上面24との間に第1取付用部材40及び第2取付用部材42を設けた状態で、ワイヤハーネス12を保持することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、上述のようにワイヤハーネス12を保持することができるのであれば、第1取付用部材40及び第2取付用部材42の形状を、
図6A及び
図6Bに示す形状に変更することも可能である。
図6A及び
図6Bは、第1取付用部材40及び第2取付用部材42の変形例をそれぞれ図示したものである。第1取付用部材40において、第1延出部40a及び第2延出部40cは、斜め前方にそれぞれ延出すると共に、第2取付用部材42において、第1延出部42a及び第2延出部42cは、斜め後方にそれぞれ延出している。このようにすれば、第1固定用部材44及び第2固定用部材48での固定用部材保持部40b、42bに対する取付スペースをより広く確保することができる。
【0041】
図7及び
図8は、ワイヤハーネス12を保持する第1固定用部材44及び第2固定用部材48が、第1取付用部材40及び第2取付用部材42に対してそれぞれ取り付けられた状態を、車両の前後方向(矢印A方向)に沿って視た場合を図示したものである。
【0042】
第1固定用部材44及び第2固定用部材48は、略同一形状を有する。
【0043】
具体的に、第1固定用部材44は、固定用部材保持部40bを狭持するクリップ部44aと、該クリップ部44aの上板部分に設けられたバンド係止部44bと、ワイヤハーネス12に巻き付けた状態で、先端部がバンド係止部44bを挿通することによりワイヤハーネス12を締め付けるバンド44cとから構成される。すなわち、バンド係止部44b及びバンド44cは、ワイヤハーネス12に対する結束バンド(ケーブルタイ)として機能し、ワイヤハーネス12が締付固定された状態で、固定用部材保持部40bの車両外側部分(矢印B2方向側の箇所)をクリップ部44aで挟むことにより、ワイヤハーネス12及び第1固定用部材44を固定用部材保持部40bに取り付けることができる。なお、クリップ部44aを開いて矢印B2方向に退動させると、固定用部材保持部40bからワイヤハーネス12及び第1固定用部材44を取り外すことができる。
【0044】
一方、第2固定用部材48は、固定用部材保持部42bを挟み込むクリップ部48aと、該クリップ部48aの上板部分に設けられたバンド係止部48bと、ワイヤハーネス12に巻き付けた状態で、先端部がバンド係止部48bを挿通することによりワイヤハーネス12を締め付けるバンド48cとから構成される。この場合でも、バンド係止部48b及びバンド48cは、ワイヤハーネス12に対する結束バンドとして機能し、ワイヤハーネス12が締付固定された状態で、固定用部材保持部42bの矢印B2方向側の箇所をクリップ部48aで狭持することにより、ワイヤハーネス12及び第2固定用部材48を固定用部材保持部42bに取り付けることができる。なお、クリップ部48aを開いて矢印B2方向に退動させると、固定用部材保持部42bからワイヤハーネス12及び第2固定用部材48を取り外すことができる。
【0045】
そして、第1取付用部材40及び第2取付用部材42は、
図8に示すように、ドアポケット18を構成する上面24(第1面)に加え、矢印C1方向に延出する上端部26(第2面)にも連結されている。すなわち、第1取付用部材40及び第2取付用部材42は、上面24における矢印B2方向側の箇所と上端部26との間に設けられ、上面24及び上端部26と一体的に構成されている。
【0046】
この場合、第1延出部40a、42aは、上面24及び上端部26と連結され、固定用部材保持部40b、42b及び第2延出部40c、42cは、上端部26とそれぞれ連結されている。また、矢印C方向に沿ったワイヤハーネス12と上面24との間の距離Hは、矢印B方向に沿ったワイヤハーネス12と上端部26との間の距離Dよりも短く設定されている(H<D)。
【0047】
また、固定用部材保持部40b、42bは、矢印B方向に沿って略水平に上端部26から延出している。これに対して、上面24は、上端部26から矢印B2方向に向かって下方に傾斜している。つまり、固定用部材保持部40b、42bと上面24との間隔は、車両の外側である矢印B2方向に向かうにつれて広がるように設定されている。
【0048】
なお、
図8に示すように、第1延出部40a、42aの矢印C方向に沿った長さ(高さ)は、上面24が傾斜していることにより、矢印B2方向に向かうにつれて長くなる。一方、固定用部材保持部40b、42b及び第2延出部40c、42cの矢印C方向に沿った各長さは、それぞれ、矢印B方向に沿って略同じ長さに維持されている。また、第1延出部40a、42aの上端部26側の高さは、固定用部材保持部40b、42b及び第2延出部40c、42cの上端部26側の高さと、略同じ大きさに設定されている。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るワイヤハーネス12の取付構造14によれば、第1取付用部材40及び第2取付用部材42と、取付対象であるドアライニング10を構成するドアポケット18の上面24及び上端部26とが一体的に構成されているので、ワイヤハーネス12を第1固定用部材44及び第2固定用部材48に保持した状態で、第1固定用部材44を第1取付用部材40に取り付けると共に、第2固定用部材48を第2取付用部材42に取り付ければ、ドアポケット18に対するワイヤハーネス12の取付作業が完了する。従って、特許文献1の技術と比較して、ドアポケット18へのワイヤハーネス12の取付作業性を向上することができる。
【0050】
また、第1取付用部材40及び第2取付用部材42がドアポケット18の上面24及び上端部26に連結されているので、第1取付用部材40及び第2取付用部材42の剛性を向上させることができる。
【0051】
さらに、第1取付用部材40では、固定用部材保持部40bにおける第1固定用部材44の保持位置と、第1延出部40a及び第2延出部40cとの間の箇所が隙間部46a、46cとして形成される。一方、第2取付用部材42でも、固定用部材保持部42bにおける第2固定用部材48の保持位置と、第1延出部42a及び第2延出部42cとの間の箇所が隙間部50a、50cとして形成される。これにより、隙間部46a、46c、50a、50cがない場合と比較して、第1固定用部材44及び第2固定用部材48の取付スペースを広く取ることができる。この結果、第1固定用部材44を第1取付用部材40に容易に取り付けると共に、第2固定用部材48を第2取付用部材42に容易に取り付けることが可能となり、取付作業性を一層向上することができる。
【0052】
しかも、第1取付用部材40及び第2取付用部材42において、第1延出部40a、42a及び第2延出部40c、42cは、互いに離間する方向に延出しているので、固定用部材保持部40bに対する第1固定用部材44の取付時及び取り外し時や、固定用部材保持部42bに対する第2固定用部材48の取付時及び取り外し時に、第1延出部40a、42a及び第2延出部40c、42cが邪魔になることを抑制することができる。また、このように構成されることで、第1取付用部材40及び第2取付用部材42を型構造的にも作りやすい形状とすることができる。なお、
図6の変形例のように構成すれば、固定用部材保持部40b、42bでの第1固定用部材44及び第2固定用部材48の取付スペースが広がるので、取付作業が一層容易なものとなる。
【0053】
また、第1延出部40a、42aがドアポケット18の上面24及び上端部26にそれぞれ連結され、固定用部材保持部40b、42b及び第2延出部40c、42cが上端部26に連結されているため、第1延出部40a、42a、固定用部材保持部40b、42b及び第2延出部40c、42cの剛性を向上することができる。
【0054】
さらに、第1取付用部材40及び第2取付用部材42は、ドアポケット18の上面24から上方に延出し、第1固定用部材44及び第2固定用部材48は、ワイヤハーネス12と上面24との間で、第1取付用部材40及び第2取付用部材42によりそれぞれ支持される。これにより、上面24から延出される第1取付用部材40及び第2取付用部材42の長さは、上端部26から矢印B方向に沿って延出する場合と比較して、短くすることができる。すなわち、
図8に示すように、ドアポケット18に対してワイヤハーネス12を取り付けるための距離は、上面24で取り付ける場合(距離H)の方が、上端部26で取り付ける場合(距離D)よりも確実に短い(H<D)。従って、本実施形態によれば、第1取付用部材40及び第2取付用部材42が肥大化することを回避することができる。
【0055】
さらに、矢印B2方向に向かうにつれて、固定用部材保持部40b、42bとドアポケット18の上面24との間隔が広がるので、車両にドアライニング10を組み込む前に、第1取付用部材40及び第2取付用部材42に第1固定用部材44及び第2固定用部材48をそれぞれ取り付ける際、第1固定用部材44及び第2固定用部材48の取付作業が容易になる。
【0056】
さらにまた、
図2、
図3及び
図9に示すように、本実施形態では、矢印A方向に沿って互いに広がるように、第1取付用部材40及び第2取付用部材42がそれぞれ上面24に設けられている。この場合、第1取付用部材40の第2延出部40cと第2取付用部材42の第2延出部42cとの間の距離をW1とすれば、該距離W1は、二点鎖線に示す第1取付用部材40と第2取付用部材42とが互いに近づくように向かい合う場合での各第2延出部40c、42c間の距離W2と比較し、確実に広くなる(W1>W2)。このように、本実施形態では、上面24での第1取付用部材40及び第2取付用部材42間のスペースが広くなって、該スペースを有効利用することができる。また、スペースが広がることで、第1取付用部材40及び第2取付用部材42に対する第1固定用部材44及び第2固定用部材48の取付作業が一層容易なものとなる。
【0057】
また、
図10に二点鎖線で示すように、第1延出部42aが矢印A2方向側に形成されていれば、第1延出部42aが長くなってしまい、第2取付用部材42の肥大化を招くと共に、ドアポケット18の周辺の部材に対して第2取付用部材42の存在が邪魔になる。これに対して、本実施形態では、第1延出部42a、固定用部材保持部42b及び第2延出部42cが矢印A2方向に向かって順に形成されているため、長さh分だけ、第2取付用部材42の肥大化を抑制することができる。この結果、第2取付用部材42がドアポケット18の周辺の部材にとって邪魔になることを回避することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、第2取付用部材42が上面24及び側面により画成される矢印A2方向の角部に設けられている。角部は剛性が高いため、このような箇所に第2取付用部材42に設ければ、第2取付用部材42の剛性を一層高めることができる。
【0059】
さらにまた、本実施形態では、ドアポケット18の矢印A方向に沿った幅W内に収まるように、第1取付用部材40の第2延出部40cと、第2取付用部材42の第2延出部42cとがそれぞれ形成されているので、ドアポケット18の周辺の部材に対して、第2延出部40c、42cが邪魔になることを回避することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…ドアライニング 12…ワイヤハーネス
14…取付構造 18…ドアポケット
24…上面 26…上端部
40…第1取付用部材 40a、42a…第1延出部
40b、42b…固定用部材保持部 40c、42c…第2延出部
42…第2取付用部材 44…第1固定用部材
44a、48a…クリップ部 44b、48b…バンド係止部
44c、48c…バンド
46a、46c、50a、50c…隙間部 48…第2固定用部材