(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、小径の軸受を用いることで、軸受内部での回転時における摩擦抵抗を軽減して、スプールのフリー回転性能の向上が図られている。しかしながら、スプールのフリー回転性能に影響を及ぼす要因は、摩擦抵抗だけではない。スプールの慣性モーメントもスプールのフリー回転性能に大きな影響を及ぼす。特許文献1では、スプールのフリー回転性能の向上を図る上でこのスプールの慣性モーメントが考慮されていない。また、スプールのフリー回転性能の向上が図られても耐久性が軽視されては、前述したような通常の釣糸巻き取り操作やキャスティング操作に充分対応できる要求性能を達成できない。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、スプールのフリー回転性能の向上を図りつつ軸受(ボールベアリング)に作用する負荷を低減させて耐久性の向上も図ることができる魚釣用両軸受型リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、釣糸が巻回されるスプールに固定されるスプール軸の両端側がリール本体にボールベアリングを介して回転可能に支持されて成る魚釣用両軸受型リールであって、
前記スプールは、釣糸が巻回される巻回胴部と、前記スプール軸を固定するスプール軸支持部と前記巻回胴部とを接続するように径方向に延びるリムとを有し、前記スプールの糸巻き領域の平均径をφA、前記ボールベアリングの外輪の外径をφBとしたときに、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式が成り立つ
ように、凹状の溝または貫通孔が前記巻回胴部および前記リムに設けられることを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の発明によれば、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式を満たす
ように凹状の溝または貫通孔を巻回胴部およびリムに設けることにより、すなわち、スプールの糸巻き領域の平均径φAに対するボールベアリングの外輪の外径φBの比率φB/φAをこれらの範囲内(15.9%以上26%以下)に低く抑えることにより、実釣時の釣糸に水分が含まれた状態を考慮したスプールのスプール軸周りの慣性モーメントを小さくできるとともに、ボールベアリングの慣性モーメントも小さくできるため、キャスト抵抗を極めて小さくでき、スプールのフリー回転性能を格段に向上させることができ
る。そのため、軽い仕掛けを狙ったポイントへ正確に投入操作するキャスティングが可能となる。
また、凹状の溝または貫通孔の存在により、外周側の肉抜き効果でスプールの慣性モーメント低下に寄与でき、キャスト抵抗の低減が図れるだけでなく、リムの剛性も低くなるため、リムが変形し易くなり、したがって、釣糸からの衝撃をスプールが受けた際にその衝撃をリムの変形により緩和させることができ、ボールベアリングへの衝撃力の伝達を抑制できる。そのため、ボールベアリングの耐久性を向上させることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記巻回胴部の内周面から前記スプール軸の中心軸までの距離をL、
前記スプール軸支持部の外周面から前記巻回胴部の内周面へ接続するように前記スプール軸側から径方向に延びる薄肉状の
前記リムの長さをL1としたときに、0.694≦L1/L≦0.780の関係式が成り立つことを特徴とする。
【0010】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、0.694≦L1/L≦0.780の関係式を満たすことにより、釣糸からの衝撃をスプールが受けた際にその衝撃をリムの変形により緩和させて、大きな衝撃力がボールベアリングに伝わり難くすることができ、ボールベアリングの耐久性を向上させることができる。特に、ボールベアリングの外輪の外径を小さくした場合、ボールベアリングのボール(コロ)径も小さくなり、耐久性が低くなる(滑らかな回転が持続できる期間が短くなる)が、これは上記効果により解決できる。
【0013】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項
1または請求項2に記載の発明において、
前記凹状の溝または前記貫通孔の少なくとも一部が前記巻回胴部と前記リムとの接続領域に設けられることを特徴とする。
【0014】
この請求項
3に記載の発明によれば、請求項
1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、剛性が高くなり易い巻回胴部とリムとの接続(接合)領域(一般的には、肉厚が増大される所定の曲率を有するいわゆるR形状の接続領域である)に凹状の溝または貫通孔が設けられるため、剛性を低下させる効果が大きく、その結果、リムに前記接続部を加えた部分が変形し易くなり、釣糸からの衝撃をスプールが受けた際にその衝撃をリムの変形により十分に緩和させることができ、ボールベアリングへの衝撃力の伝達を更に抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の魚釣用両軸受型リールによれば、スプールのフリー回転性能の向上を図りつつ軸受(ボールベアリング)に作用する負荷を低減させて耐久性の向上も図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の魚釣用両軸受型リールの実施形態について具体的に説明する。
図1〜
図3は本発明の第1の実施形態を示している。
図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用両軸受型リールのリール本体1は、左右フレーム2a,2bと各フレーム2a,2bを覆う左右カバー3a,3bとによって構成される左右側板1A,1Bを有している。両側板1A,1B(左右フレーム2a,2b)間には、スプール軸5aが軸受としての両側の2つのボールベアリング7,7(本実施形態では同一のボールベアリング)を介して回転自在に支持されており、スプール軸5aには、釣糸が巻回されるスプール5が一体的に装着されている。
図1〜
図3に示されるように、スプール5は、釣糸が巻回される巻回胴部5bと、巻回胴部5bから径方向外側に延びて巻回胴部5bと共に糸巻き領域Sを形成するフランジ部5eと、スプール軸5aが回り止め嵌合状態で内部に貫通される筒状のスプール軸支持部5cと、スプール軸支持部5cと巻回胴部5bとを接続するようにスプール軸支持部5cから径方向に延びる薄肉状のリム5dとを有する。また、
図3に示されるように、各ボールベアリング7は、リ−ル本体1側に固定される外輪7aと、スプール軸5aの外周に嵌合する内輪7bと、外輪7aと内輪7bとの間で転動自在に支持される複数のボール状の転動体(コロ)7cとから環状に構成されて成る。
【0018】
また、
図1に示されるように、右フレーム2bから突出するスプール軸5aの端部には、スプール軸5aの軸方向に沿って移動可能なピニオンギア8が取り付けられている。このピニオンギア8は、公知のクラッチ機構10によって、スプール軸5aと係合してスプール軸5aと一体に回転する係合位置(動力伝達状態;
図1参照)と、スプール軸5aとの係合状態が解除される非係合位置(動力遮断状態)との間で移動される。また、ピニオンギア8には、右側板1B側に軸受12aを介して回転可能に支持されているハンドル軸12に対して回転可能に装着されたドライブギア15が噛合しており、ハンドル軸12の先端部に設けられたハンドル13を回転操作すると、ハンドル軸12、ドライブギア15、および、例えば真鍮製のピニオンギア8を介して、スプール軸5aが回転駆動され、それに伴ってスプール5が回転される。なお、ドライブギア15は、ドラグ機構20によって、ハンドル軸12との間で所望の制動力が加わった状態で回転可能に装着されている。
【0019】
また、スプール5の前方側の左右側板1A,1B間には、レベルワインド機構17が設置されており、このレベルワインド機構17は、釣糸を挿通案内する釣糸案内体17aを備えている。釣糸案内体17aは、ハンドル軸12の基端部に設けられたギア17bと右フレーム2bに支持された入力ギア17cとを介して回転駆動されるウォームシャフト17dと係合しており、ハンドル13を回転操作すると、ギア17bおよび入力ギア17cを介してウォームシャフト17dが回転駆動され、これに係合する釣糸案内体17aが左右側板1A,1B間で往復駆動される。これにより、ハンドル13を回転操作すると、前述したように、スプール5が回転駆動されることから、同期駆動する釣糸案内体17aを介して、スプール5には釣糸が均等に巻回される。
【0020】
また、本実施形態の魚釣用両軸受型リールでは、実釣時の釣糸に水分が含まれた状態を考慮した上でのスプール5のスプール軸5a(スプール軸5aの中心軸O)周りの慣性モーメント(実釣時の釣糸に水分が含まれた状態の慣性モーメント)が小さくなるようにすることでスプール5のフリー回転性能を向上させるための工夫が施されている。具体的には、
図3に示されるように、スプール5の糸巻き領域Sの平均径をφA、ボールベアリング7の外輪7aの外径をφBとしたときに、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式が成り立つように寸法関係が設定されている。なお、「実釣時の釣糸に水分が含まれた状態の慣性モーメント」とは、スプール自体の慣性モーメントと湿った状態の釣糸の慣性モーメントとを合わせた慣性モーメントを意味し、釣糸を考慮しない場合は、むしろ釣糸巻回胴部5bの外径が小さい方が慣性モーメントは小さくなるが、発明者は、多くの実験を行なうことで、スプール単体と水分を含んだ釣糸を巻回したスプールとでは、評価が反対となることを発見した。
【0021】
ここで、スプール5の糸巻き領域Sとは、巻回胴部5bの外周面30とフランジ部5eとの間の釣糸が巻回可能な凹状の領域(
図3の下側にハッチングで示される領域)のことである。また、スプール5の糸巻き領域Sの平均径φAは、一般的な巻回胴部5bの外周面30がスプール軸5aと平行なものに関しては、巻回胴部5bの外周面30の直径φCとフランジ部5eの最大外径部である最大外周部34の直径φDとの平均値で求められる。なお、巻回胴部5bの外周面30の形状が複雑な形状(スプール軸5aと平行でない形状)のものに関しては、スプール軸5aを通る任意の平面でスプール5を切断した際の釣糸が巻回されている部分の断面形状(
図3の下側にハッチングで示される断面部分)における図心Gからスプール軸心Oまでの寸法の2倍の値によってスプール5の糸巻き領域Sの平均径φAを定義することができる。
【0022】
また、ボールベアリング7の外輪7aの外径φBとは、本実施形態のようにスプール軸5aの両側のボールベアリング7を互いに同一径としている場合には、それぞれのボールベアリング7の外輪7aの外径φBのことであるが、必ずしも同一のものを使用する必要はなく、異ならせてもよく、その場合には、これらの2つのボールベアリング7の外輪の外径の平均値で定義される。また、スプール軸5aを支持するボールベアリング7がスプール軸5aの一方側に複数配置されている場合には、それぞれのボールベアリング7とスプール軸5aとの間のクリアランスを考慮し、スプール軸5aの支持に関して実質的に機能しているボールベアリング7の外輪の外径で定義される。
【0023】
また、本実施形態の魚釣用両軸受型リールでは、特にボールベアリング7の耐久性を向上させるための工夫も施されている。具体的には、
図3に示されるように、釣糸が巻回されるスプール5の巻回胴部5bの内周面32からスプール軸5aの中心軸Oまでの距離(巻回胴部半径)をL、スプール5のスプール軸5aを固定するスプール軸支持部5cの外周面から巻回胴部5bの内周面32へ接続するようにスプール軸5a側から径方向に延びる薄肉状のリム5dの長さ(リム高さ)をL1としたときに、0.694≦L1/L≦0.780の関係式が成り立つように寸法関係が設定されている。
【0024】
このように、本実施形態では、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式を満たすことにより、すなわち、スプール5の糸巻き領域Sの平均径φAに対するボールベアリング7の外輪7aの外径φBの比率φB/φAをこれらの範囲内(15.9%以上26%以下)に低く抑えることにより、実釣時の釣糸に水分が含まれた状態を考慮したスプール5のスプール軸5a周りの慣性モーメントを小さくできるとともに、ボールベアリング7の慣性モーメントも小さくできるため、キャスト抵抗を極めて小さくでき、スプール5のフリー回転性能を格段に向上させることができるため、軽い仕掛けを狙ったポイントへ正確に投入操作するキャスティングが可能となる。なお、巻回胴部5bの内周面32がスプール軸と平行でないような複雑な形状に形成された場合は、内周面32のリム5dに最も近い部位によって前記LおよびL1は定義される。
【0025】
このような作用効果を実証する実験が本発明者によってなされている。以下の表1は、キャスト抵抗を本発明と従来例とで比較した評価実験のデータ結果を示している。この実験では、4つの従来例(比率φB/φAが異なる従来例1〜従来例4)と、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式を満たす4つの本発明例(比率φB/φAが異なる本発明例1〜本発明例4)とがキャスト抵抗に関して比較された。キャスト抵抗の評価は5段階でなされ、表1中の評価1はキャスト抵抗が最も高く、表1中の評価5はキャスト抵抗が最も低く、評価5から評価1へと徐々に(あるいは段階的に)キャスト抵抗が大きくなることを意味する。具体的に、各評価値の基準として、評価1は、重量が重いルアーを使い、キャスト抵抗が操作上気にならない程度のレベルであり、評価2は、重量が中位のルアーを使い、キャスト抵抗が操作上気にならない程度のレベルであり、評価3は、重量が中位のルアーを使い、釣糸が十分湿った状態まで投入操作を繰り返してもキャスト抵抗が操作上気にならない程度のレベルであり、評価4は、重量が軽量のルアーを使い、釣糸が十分湿った状態においてもキャスト抵抗が操作上問題にならないレベルであり、評価5は、重量が超軽量のルアーを使い、釣糸が十分湿った状態においてもキャスト抵抗が操作上問題にならないレベルといった基準がとられた。
【0027】
表1から分かるように、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式を満たす4つの本発明例(比率φB/φAが異なる本発明例1〜本発明例4)では、キャスト抵抗の評価値が4,5であり、キャスト抵抗の十分な低減が実証された。特に、軽量ルアー(ワームを含む)を使い、釣糸が湿った状態において良い評価が得られている。一方、比率φB/φAが0.260を超えると、キャスト抵抗が急に大きくなった(本発明例1の評価4→従来例4の評価1)。また、この実験では、比較例1と本発明例1〜4との比較も行なわれた。表1中の比較例1は、比率φB/φAが0.159未満の例であり、キャスト抵抗が評価3という中間値を示すが、スプール軸5aの剛性が不足して、スプール5の回転振れが生じた。
【0028】
また、本実施形態では、0.694≦L1/L≦0.780の関係式を満たすことにより、すなわち、スプール5の巻回胴部5bの内周面32からスプール軸5aの中心軸Oまでの距離Lに対するリム5dの長さL1の比率L1/Lをこれらの範囲内(69.4%以上78%以下)で大きく確保することにより、言い換えると、リム5dの長さL1の割合を大きくすることにより、釣糸からの衝撃をスプール5が受けた際にその衝撃をリム5dの変形により緩和させて、大きな衝撃力がボールベアリング7に伝わり難くすることができ、ボールベアリング7の耐久性を向上させることができる。特に、ボールベアリングの外輪の外径を小さくした場合、ボールベアリングのボール(コロ)径も小さくなり、耐久性が低くなる(滑らかな回転が持続できる期間が短くなる)が、これは上記効果により解決できる。また、ボールベアリング7への衝撃力が小さくなるため、結果としてリール全体の耐久性を向上させる効果も得ることができる。
【0029】
また、スプール5に対する釣糸の巻回端がフランジ部5e側にあった状態で合わせ(フッキング)を行なったり、根掛かりした状態で合わせた場合には、大きな負荷がスプール5およびスプール軸5aにかかる。具体的には、スプール5に曲げモーメントM(
図3参照)が作用してボールベアリング7に大きな負荷がかかるが、本実施形態のようにリム5dの長さL1を長く確保して前記曲げモーメントMの作用時にリム5dを変形させ易くすることで、リム5dの変形により瞬間的な衝撃力を緩和させて、ボールベアリング7に作用する負荷を軽減することができる。特に、スプール5の糸巻き領域Sの平均径φAを大きくした本実施形態の場合、釣糸巻回量が少ないため、大きな魚が掛かった場合、釣糸が全て引き出される場合があり、その場合、釣糸の結合端P(巻回基点・・・
図3参照)がスプール5の巻回胴部5bの外周側(フランジ部5eの近傍)に位置していると、ドラグが全く機能しないため、非常に大きな負荷が突然掛かってしまう場合があり、上記構成にすることで、このようなケースにおいても特に有効に機能する。
【0030】
このような作用効果を実証する別の実験データも本発明者によってなされている。以下の表2は、キャスト抵抗とともに耐久性を比較した評価実験のデータ結果を示しており、この実験では、0.159≦φB/φA≦0.260の関係式を満たす13個の本発明例(比率φB/φAが異なる本発明例1a〜本発明例4d)の間で比率L1/Lの値を変えてキャスト抵抗および耐久性の比較がなされた。また、この実験においては、4つのタイプの本発明例が比較された。4つのタイプa(本発明例1a〜4a)はL1/Lが一般的なタイプ(先の実験の表1の本発明例1〜4に対応する)のものであり、4つのタイプb(本発明例1b〜4b)はL1/Lを比較的大きめにしたタイプのものであり、4つのタイプc(本発明例1c〜4c)はL1/Lを更に大きめにしたタイプのものであり、1つのタイプd(本発明例1d)はL1/Lをタイプcよりも更に大きめにしたタイプのものである。この場合、タイプbおよびタイプcに関しては0.694≦L1/L≦0.780の関係式が成り立つように寸法関係が設定されている。これに対し、タイプaは比率L1/Lの値が0.694未満に設定され、タイプdは比率L1/Lの値が0.780を超えた値に設定された。
【0031】
また、この実施形態では、先の表1の実験と同様の基準でキャスト抵抗が5段階で評価されるとともに、耐久性についても5段階で評価された。表2中の評価1は耐久性が最も低く、表2中の評価5は耐久性が最も高く、評価5から評価1へと徐々に(あるいは段階的に)耐久性が低くなることを意味する。具体的に、耐久性の各評価値の基準として、ルアーを付けて2000投後のハンドル巻き時の回転フィールとキャスト評価で判定し、評価1は、回転時のゴリゴリ感(スプール回転時にゴリゴリとした感触を伴う態様)が大きくキャスト抵抗が大きいレベル、評価2は、回転時にゴリゴリ感およびキャスト抵抗を感じるレベル、評価3は、回転時にゴリゴリ感をやや感じ、キャスト抵抗も僅かに感じるレベル、評価4は、回転時に滑らかだが、かすかなゴリゴリ感を感じ、キャスト抵抗は殆ど感じないレベル、評価5は、回転フィールもキャスト抵抗も変化を感じないレベルといった基準で評価された。
【0033】
この表2から分かるように、キャスト抵抗に関しては、いずれの本発明例も0.159≦φB/φA≦0.260の関係式を満たすため評価値が高い(評価値4,5のみ)が、比率L1/Lが0.780を超えるタイプdの本発明例(4d)では、今までの傾向とは逆に評価1となっている。リム5dの割合が長くなりすぎると、リム5dの耐久性に問題が生じる可能性があるだけでなく、スプール軸5aの外径やリム5dとスプール軸5aおよび巻回胴部5bとの接続部の肉厚を十分にとることが困難となり、ボールベアリング7以外の耐久性に問題が生じてしまうことが以下の表3から分かる。一方、比率L1/Lが0.694未満のタイプaの本発明例(1a〜4a)では、耐久性が急に低下した(本発明例1bの評価4→本発明例4aの評価1)。
【0034】
なお、表1と表2の各例の各種寸法を以下の表3に示す。この表3中には、スプール外径φD(
図3参照)、巻回胴部5bの深さh(
図3参照)、スプール軸5aの外径φd(
図3参照)、スプール軸支持部5cの肉厚t2(
図3参照)、巻回胴部5bの肉厚t1といった具体的な数値も示されている。
【0036】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る魚釣用両軸受型リールのスプール軸5aを有するスプール5を示している。図示のように、本実施形態では、スプール5のリム5dの径方向外側にその周方向に沿って所定の角度間隔を隔てて複数の貫通孔50が形成されている。これらの貫通孔50はそれぞれ、スプール軸5aの軸方向と平行に延びており、その一部が巻回胴部5bとリム5dとの接続領域60に位置されている。特に、本実施形態では、接続領域60が所定の曲率を有するいわゆるR形状の領域Rとして形成されており、この領域Rの一部を肉抜きするように各貫通孔50がリム5dを貫いている。
【0037】
このように、本実施形態によれば、貫通孔50の存在によりリム5dの剛性を低くできるため、リム5dが変形し易くなり、したがって、釣糸からの衝撃をスプール5が受けた際にその衝撃をリム5dの変形により十分に緩和させることができ、ボールベアリング7への衝撃力の伝達を緩和できる。そのため、ボールベアリング7の耐久性を向上させることができる。特に、本実施形態では、肉厚が増大されるR形状の接続領域Rの一部を肉抜きするように各貫通孔50がリム5dを貫いているため、剛性を低下させる効果が大きく、前記作用効果が促進される。また、外周側の肉抜き効果によりスプール5の慣性モーメント低下にも寄与でき、キャスト抵抗の低減に貢献できる。
【0038】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る魚釣用両軸受型リールのスプール軸5aを有するスプール5を示している。図示のように、本実施形態では、スプール5のリム5dに凹状の溝52が設けられている。この溝52は、スプール5の巻回胴部5bの外周面30を基点としてスプール軸5の軸方向に対して垂直な方向(スプール軸5aの軸方向と交差する方向)でリム5dへ向かって延びてリム5dに達しており、巻回胴部5bの外周面30の中心部(リム5dが接続する部分)に位置する環状溝として形成される。このような溝52であってもリム5dの変形(剛性低下)に寄与することができ、したがって、釣糸からの衝撃をスプール5が受けた際にその衝撃をリム5dの変形により十分に緩和させることができ、ボールベアリング7への衝撃力の伝達を抑制できる。そのため、ボールベアリング7の耐久性を向上させることができる。また、外周側の肉抜き効果によりスプール5の慣性モーメント低下にも寄与でき、キャスト抵抗の低減に貢献できる。
【0039】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る魚釣用両軸受型リールのスプール軸5aを有するスプール5を示している。図示のように、本実施形態は、第2の実施形態と第3の実施形態との組み合わせであり、第3の実施形態における溝52が巻回胴部5bとリム5dとのR形状の接続領域を越えて延び、リム5dの径方向外側にその周方向に沿って所定の角度間隔を隔てて配列される複数の貫通孔として且つ巻回胴部5bの中心部で周方向に沿って所定の角度間隔を隔てて配列される前記貫通孔に連通する複数の溝として形成される複合穴52Aを備える。したがって、第2および第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
以上説明した第1〜第4の実施形態の耐久性(前述した作用効果に伴うボールベアリング7の耐久性)を比較したものが以下の表4に示されている。この表4から分かるように、リム5dに凹状の溝または貫通孔が設けられた第2ないし第4の実施形態(実施例2ないし実施例4)はいずれもリム5dに凹状の溝または貫通孔が設けられていない第1の実施形態(実施例1)よりも耐久性が向上する。なお、表4は第1の実施形態(実施例1)に対する比較であるため、表4中には第1の実施形態(第1の実施例)の耐久性評価が示されていない。他の第2〜第3の実施形態(実施例)の耐久性の向上が表4中に○で示されている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した凹状の溝や貫通孔の数、形状、配置形態は任意である。また、前述した実施形態では、スプールとスプール軸とを別部材で構成したが、これらが一体に形成されていてもよい。