【実施例】
【0016】
実施例に係る防食コアにつき、
図1,2及び
図5を参照して説明する。
図2に示すように、本実施例の流体管1は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、防食処理として、内周面がモルタル層や防食塗料、粉体樹脂塗装等によって被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製であってもよい。更に尚、流体管の内部を流れる流体は、例えば上水、工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。尚、以下、
図2及び
図5における紙面左方を鉛直上方として説明する。
【0017】
図1(a)〜(c)に示されるように、防食コア10は、後述のように流体管1(
図2参照)の管壁を穿孔し形成した穿孔部2を防食するために用いる防食コアであって、穿孔部2の内周面に亘って当接する防食部材12を備えた胴部14と、流体管の内方に突出する先端部13とを有し、先端部13は、穿孔部2よりも小径の先端縁から防食部材12側に向けて穿孔部2よりも漸次大径に拡径するテーパ面17を備えている。また胴部14は、該胴部14より肉薄である肉薄部20が設けられており、肉薄部20は少なくとも胴部14の一部と、先端部13における嵌挿方向の端部とに架けて形成され、且つ防食コア10の内周面において凹状に形成されている。尚、肉薄部20の厚みは、胴部14の後端側の厚みの1/3から2/3になるように形成されることが望ましい。
【0018】
胴部14の後端側には、穿孔部2よりも十分に大径に形成される後端部18が延設されており、防食部材12は、後端部18と鍔部15との間に配置されることにより、嵌挿方向への過挿入が規制されるようになっている。
【0019】
上述した先端部13と胴部14及び後端部18は一体に形成されており、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリアセタール、ウレタン樹脂等の樹脂、或いはステンレス等の金属で形成されている。
【0020】
防食部材12は、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー等の比較的軟質の樹脂材から成り、この樹脂材と同等種の若しくは異種であって防食部材12よりも硬質の材料から成る胴部14の外周面に、図示しない接着部材により接着されており、その自然状態においては穿孔部2よりも大径で弾性を有し、胴部14よりも弾性変形し易く形成されている。尚、防食部材12はスチレン系熱可塑性エラストマーに限らず、軟質塩ビ、スチレン系及びオレフィン系等の軟質樹脂や、エンプラ、ブチルゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴムなどの弾性体及びパテ、エポキシ樹脂系等の接着剤で形成されていてもよい。更に尚、防食部材12は、上記した接着部材を用いず、例えば胴部14の外周面に熱溶着されていてもよい。
【0021】
先端部13は、後述する流体管1に穿設された穿孔部2の曲面形状に沿うように曲面形状に形成され、穿孔部2よりも小径の先端縁から防食部材12側に向けて穿孔部2よりも自然状態において漸次大径に形成されたテーパ面17a,17b,17c及び17dを備えている。
【0022】
図1(a),(b)に示すように、先端部13の嵌挿方向端部の成す円弧R’の中心O’が、鍔部15の外周縁15aの成す円弧Rの中心Oよりも防食コア10に近いため、防食コア10各側の先端部13a,13b,13c及び13dのテーパ面17a,17b,17c及び17dのテーパ角度が、先端部13a,13b,13c及び13dの全周に亘り略同じ角度に形成されている。尚、上記したテーパ面17a,17b,17c及び17dのテーパ角度とは、各テーパ面17a,17b,17cまたは17dと、防食コア10の嵌挿方向の中心軸線Cを含む仮想面とが成す角度を意味する。
【0023】
次に、防食コア10の穿孔部2への嵌挿について説明する。先ず、
図5に示すように、流体管1への穿孔について説明すると、流体管1にカバー11を取付けた後に、カバー11のフランジ11aに接続した筐体35に対し、穿孔装置50を密封状に配設する。穿孔装置50は、図示しない駆動手段に接続され筐体35内を流体管1に向け軸方向に伸出するとともに軸周りに回転する軸部材51と、軸部材51の先端に固設され流体管1を穿設するカッタ部材52とから主に構成されており、本実施例ではカッタ部材52を略水平方向に流体管1の外面にアプローチして穿孔し、流体管1の管壁に穿孔部2を穿設する。穿孔部2の内周面2aは、流体管1を構成する金属材の素地が露出している。尚、上述した穿孔時において、先端のカッタ部材52の重みにより軸方向に延びた軸部材51が僅かに撓むことで、穿孔角度及び穿孔位置が設計値よりも若干下方にずれる(ずれα)。
【0024】
図2(a)に示されるように、防食コア10は、取付け用の治具60により穿孔部2に対し取付けられるが、上述したように穿孔部2は穿孔角度及び穿孔位置が設計値よりも下方にずれており、且つ上記したカッタ部材52よりも軽量の防食コア10は設計値通りの穿孔位置に向けて導入されるため、防食コア10の上方の先端部13aが穿孔部2の周縁部の上部2bに設計位置よりも高い位置で当接する。
【0025】
図2(b)に示すように、上述した状態において治具60が更に穿孔部2に向けて送られることにより、上方の先端部13aが穿孔部2の周縁部の上部2bに誘導されて防食コア10が下向きに傾いて嵌挿される。
【0026】
また、防食部材の端面12aは、先端部13及び胴部14における肉薄部20が形成されている部位が穿孔部2の内径方向に向けて比較的柔軟に弾性変形して縮径することで、穿孔部2の周縁部の下部2cを乗り越えるようになっている。続いて、後端部18が穿孔部2の周縁部に当接するまで嵌挿され、穿孔部2に対する防食コア10の取付けが完了する。尚、流体管1内方に突出する先端部13の中心軸線C方向の突出長さは、流体管1内の流体への影響及び流体管1内を通過する洗管用のピグへの影響を極力抑えるために、流体管内面1aから5.5mm以内が望ましい。更に尚、上記したテーパ面17a,17b,17c及び17dを備えた先端部13aにおける胴部14側の最大外径は、流体管1の穿孔部2に確実に係止でき、且つ縮径可能に弾性変形できるように、穿孔部2の開口径よりも2mm以内に大径であることが望ましい。
【0027】
このように本発明の防食コア10は、流体管1の管壁を穿孔形成した穿孔部2を防食するために嵌挿される防食コアであって、穿孔部2の内周面に亘って当接する防食部材12を備えた胴部14と、流体管の内方に突出する先端部13とを有し、先端部13は、穿孔部2よりも小径の先端縁から防食部材12側に向けて穿孔部2よりも漸次大径に自然状態において形成されたテーパ面17aを備え、胴部14の後端側よりも肉薄である肉薄部20が、胴部14の先端側と先端部13の先端縁とに架けて形成されている。これによれば、防食コア10の嵌挿の際、防食部材12の端面12aは、先端部13及び胴部14における肉薄部20が形成されている部位が穿孔部2の内径方向に向けて撓むことで、穿孔部2の周縁部を乗り越えることができるため、防食部材12の端面12aが穿孔部2の周縁部に引掛ることを防止できる。このため、穿孔角度若しくは穿孔位置がずれてしまっている場合であっても、確実に防食部材102を穿孔部内周面に亘って当接させることができ、十分な防食効果を発揮することができる。
【0028】
また、肉薄部20は、防食コア10の内周面において凹状に形成されており、設計時において防食コアの外周面に手を加える必要無く肉薄部を形成することができるため、設計が容易である。
【0029】
また、防食コア10の先端部13の嵌挿方向端部の成す円弧R’の中心O’が、鍔部15の外周縁15aの成す円弧Rの中心Oよりも防食コア10に近く、各側の先端部13a,13b,13c及び13dのテーパ面17a,17b,17c及び17dのテーパ角度が、先端部13a,13b,13c及び13dの全周に亘り略同じ角度に形成されているため、テーパ面17a,17b,17c及び17dの周方向のいずれの箇所が穿孔部2と当接しても、先端部13a,13b,13c及び13dにかかる負荷を局所集中させずに周方向に分散でき、均一な態様で弾性変形して縮径させることができる。
【0030】
更に、防食コア10の先端部13の嵌挿方向端部の成す円弧R’の中心O’が、鍔部15の外周縁15aの成す円弧Rの中心Oよりも防食コア10に近く、各側の先端部13a,13b,13c及び13dのテーパ面17a,17b,17c及び17dを長く形成できるため、テーパ面17a,17b,17c及び17dが穿孔部2と摺接する長さを大きく採ることができ、摺接の際に急激にかかる負荷を低減できる。
【0031】
また、肉薄部20が胴部14における防食部材12の配設位置まで形成されているため、少なくとも防食部材12の端面12aが穿孔部2の内径方向へ撓むため、穿孔部2の周縁部に引掛ることを防止できる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
例えば本発明の変形例として
図3(a)〜(c)に示されるように、防食コア10’の先端部13’の嵌挿方向端部の成す円弧の中心Qと、鍔部15の外周縁15aの成す円弧の中心Q’とを同心とすることで、管軸方向における両側の先端部13c’,13d’のテーパ面17c’,17d’のテーパ角度が、管軸方向視における両側の先端部13a’,13b’のテーパ面17a’,17b’のテーパ角度よりも小さく形成されても構わない。これによれば、管軸方向視における穿孔部2に穿孔角度若しくは穿孔位置のずれが生じた場合であっても、管軸方向における両側の先端部13c’,13d’のテーパ面17c’,17d’のテーパ角度が、比較的小さく形成されているため、当該テーパ面17c’,17d’を穿孔部2に対し緩やかに摺接させながら、摺接箇所に大きな負荷を与えることなくずれを漸次修正することができる。
【0034】
また例えば、管軸方向視における両側の先端部13a,13bのテーパ面17a,17bのテーパ角度が、管軸方向両側の先端部13c,13dのテーパ面17c,17dのテーパ角度よりも小さく形成されるようにしてもよく、この場合、管軸方向視における穿孔部2の上下方向に穿孔角度及び穿孔位置のずれが生じた場合において、管軸方向視における両側の先端部13a,13bの穿孔部2の内径方向への撓み量を大きくすることができるため、防食コア10の嵌挿が容易である。
【0035】
また例えば、本実施例の肉薄部20は、防食コア10の内周面に設けられているが、本発明の肉薄部は、例えば防食コアの内周面に替えて若しくは加えて、防食コアの外周面に設けられていてもよい。更に例えば、本実施例の肉薄部20は、防食コア10の先端部13の先端縁と胴部14の先端側とに架けて形成されているが、本発明の肉薄部は、例えば防食コアの軸方向に亘り形成されていてもよいし、複数箇所に点在していても構わない。
【0036】
また、流体管1への穿孔の際、穿孔角度及び穿孔位置等様々な原因により、多様なずれαが考えられるが、本発明の防食コア10は、先端部13及び胴部14における肉薄部20が形成されている部位が弾性変形して縮径することで、穿孔部2の周縁部の下部2cを乗り越える態様であるため、多様なずれαが生じた穿孔部2に対応し、確実に防食部材102を穿孔部内周面に亘って当接させることができる。