特許第5872948号(P5872948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5872948-グロメット 図000002
  • 特許5872948-グロメット 図000003
  • 特許5872948-グロメット 図000004
  • 特許5872948-グロメット 図000005
  • 特許5872948-グロメット 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872948
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20160216BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20160216BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160216BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H02G3/22
   F16L5/02 A
   B60R16/02 622
   H01B17/58 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-91029(P2012-91029)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-219997(P2013-219997A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西山 寛
(72)【発明者】
【氏名】世良 博史
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−141959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルの電線貫通穴に取り付けされ、前記電線貫通穴の周縁のパネル面に多重に密着する複数のリップ部を有するグロメットであって、
最外周の前記リップ部と最内周の前記リップ部の間の位置に開口し、外部に連通する排水通路が設けられ
複数の前記リップ部が密着する前記車体パネルの反対側の前記パネル面に係止する複数のインナーロック部が設けられ、
前記リップ部間に開口する前記排水通路の入口部が前記インナーロック部の間の位置に設けられたことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
請求項1記載のグロメットであって、
前記排水通路は、前記リップ部間に開口する前記入口部が他の通路箇所よりも広く設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のグロメットであって、
前記車体パネルへの取付面は水平向きであり、前記排水通路は前記リップ部間の位置で、且つ、間隔を置いて複数設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のグロメットであって、
前記車体パネルへの取付面は水平向き以外の向きであり、前記排水通路は前記リップ部間の位置の中で低い位置に設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のグロメットであって、
複数の前記リップ部が設けられたグロメット本体と、前記グロメット本体の内側に配置され、前記グロメット本体よりも剛性の高いグロメットインナーとを備え、前記グロメットインナーに前記インナーロック部が設けられたことを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体パネルの電線貫通穴に取り付けされ、電線貫通穴の防水等を行うグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線貫通穴の周縁のパネル面に多重に密着する複数のリップ部を有するグロメットが種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この種のグロメットの一従来例が図5に示されている。図5において、グロメット50は、ゴム材等より形成されたグロメット本体51と、このグロメット本体51の内側に配置され、グロメット本体51よりも剛性の高い合成樹脂材より形成されたグロメットインナー60とを備えている。グロメット本体51は、車体パネル70の電線貫通穴71の周縁に二重に密着する外周側リップ部52と内周側リップ部53を有する。
【0003】
上記構成のグロメット50は、車体パネル70とグロメット50との間が外周側リップ部52と内周側リップ部53によって二重にシールされ、防水性が強化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−336224号公報
【特許文献2】特開平8−287757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示すように、高圧水が車体パネル70とグロメット50の外周側リップ部52の間に掛かると、外周側リップ部52が弾性変形し外周側リップ部52と内周側リップ部53の間に水が浸入する。外周側リップ部52と内周側リップ部53の間に溜まる水量が一定量を超えると、内周側リップ部53も水圧を受けて弾性変形して水が内周側リップ部53の内側に浸入するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、高水圧が作用しても防水性を確保できるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体パネルの電線貫通穴に取り付けされ、前記電線貫通穴の周縁のパネル面に多重に密着する複数のリップ部を有するグロメットであって、最外周の前記リップ部と最内周の前記リップ部の間の位置に開口し、外部に連通する排水通路が設けられ、複数の前記リップ部が密着する前記車体パネルの反対側の前記パネル面に係止する複数のインナーロック部が設けられ、前記リップ部間に開口する前記排水通路の入口部が前記インナーロック部の間の位置に設けられたことを特徴とするグロメットである。
【0008】
前記排水通路は、前記リップ部間に開口する入口部が他の通路箇所よりも広く設けられていることが好ましい。
【0009】
前記車体パネルへの取付面は水平向きであり、前記排水通路は前記リップ部間の位置で、且つ、間隔を置いて複数設けられていることが好ましい。
【0010】
前記車体パネルへの取付面は水平向き以外の向きであり、前記排水通路は前記リップ部間の位置の中で低い位置に設けられていることが好ましい。
【0011】
複数の前記リップ部が設けられたグロメット本体と、前記グロメット本体の内側に配置され、前記グロメット本体よりも剛性の高いグロメットインナーとを備え、前記グロメットインナーに前記インナーロック部が設けられたものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高圧水が車体パネルとグロメットの最も外周側のリップ部の間に掛かると、最も外周側のリップ部が弾性変形し最も外周側のリップ部と内周側のリップ部の間に水が浸入するが、浸入した水が排水通路より外部に排出される。そのため、最も外周側のリップ部と内周側のリップ部の間に一定量以上の水が溜まらず、溜まった水による水圧によって内周側のリップ部が弾性変形しないため、水が内周側リップ部の内側に浸入するような事態が発生しない。以上より、高水圧が作用しても防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示し、グロメットの要部断面図である。
図2】本発明の実施形態を示し、グロメットの排水通路箇所の拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態を示し、グロメットの車両取付前の平面図である。
図4】本発明の他の実施形態を示し、グロメットの車両取付前の平面図である。
図5】従来例を示し、グロメットの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施形態)
図1図3は本発明の実施形態を示す。図1において、車体パネル1には電線貫通穴2が形成されている。この電線貫通穴2に電線(図示せず)が貫通されている。この電線を被うようにして電線貫通穴2にグロメット10が取り付けられている。電線貫通穴2が設けられた車体パネル1の箇所は、車両高さ方向に直交する向き(水平面)である。つまり、グロメット10の取付面は、この実施形態では水平向きである。
【0016】
グロメット10は、ゴム材等の剛性の低い材料より形成されたグロメット本体11と、このグロメット本体11の内側に配置され、グロメット本体11よりも剛性の高い合成樹脂材より形成されたグロメットインナー20とを備えている。
【0017】
グロメット本体11は、車体パネル1の一方面側で、且つ、電線貫通穴2を塞ぐようにして配置されている。グロメット本体11は、車体パネル1の電線貫通穴2より大径の円盤ベース部12と、この円盤ベース部12より前方に向かって突出された筒部13と、円盤ベース部12より筒部13の反対側に突出された電線引出し筒部14とを有する。円盤ベース部12の内周側の根本には、インナー係止溝15が形成されている。
【0018】
筒部13の先端面には、各リング状の外周側リップ部(最外周のリップ部)16と内周側リップ部(最内周のリップ部)17が二重に突設されている。外周側リップ部16と内周側リップ部17は、それぞれ弾性変形によって電線貫通穴2の周縁の車体パネル1に各先端側が密着されている。外周側リップ部16と内周側リップ部17は、電線貫通穴2の全周縁を二重にシールしている。
【0019】
筒部13には、円周方向に沿って等間隔に排水通路18が3箇所設けられている。各排水通路18は、図2に詳しく示すように、その一端側の入口部18aが外周側リップ部16と内周側リップ部17の間に開口し、他端側の出口部18bが外部に開口している。入口部18aは、他の通路箇所よりも広く(大径に)形成されている。各排水通路18は、入口部18aが出口部18bより下方に位置している。3箇所の排水通路18は、下記するインナーロック部22の間の位置に設定されている。
【0020】
グロメットインナー20の外周には、係止鍔部21が突設されている。この係止鍔部21がインナー係止溝15に入り込んでいる。これにより、グロメットインナー20は、グロメット本体11に固定されている。グロメットインナー20は、その大部分がグロメット本体11の筒部13内に隙間なく挿入されている。これにより、グロメットインナー20は、グロメット本体11の形態を補強している。
【0021】
グロメットインナー20のグロメット本体11より突出している箇所には、図3に示すように、円周方向に沿って等間隔にインナーロック部22が3箇所に設けられている。各インナーロック部22は、電線貫通穴2の周縁のパネル面に係止されている。グロメット10は、グロメットインナー20のインナーロック部22とグロメット本体11の筒部13(詳細には、外周側リップ部16及び内周側リップ部17)とで車体パネル1を挟み込むことによって取り付けされている。
【0022】
上記構成において、図1に示すように、高圧水が車体パネル1とグロメット10の外周側リップ部16の間に掛かると、外周側リップ部16が弾性変形し外周側リップ部16と内周側リップ部17の間に水が浸入する事態が発生し得る。外周側リップ部16の内側に浸入した水は、排水通路18を通って外部に排出される。そのため、外周側リップ部16と内周側リップ部17の間に一定量以上の水が溜まらず、溜まった水の水圧によって内周側リップ部17が弾性変形しないため、浸入した水が内周側リップ部17より内側に入り込むするような事態が発生しない。以上より、高水圧が作用しても防水性を確保できる。
【0023】
排水通路18は、入口部18aが他の通路箇所よりも広く(大径に)設けられている。従って、外周側リップ部16と内周側リップ部17の間に浸入した水が入口部18aに入り込み易く、浸入水を効率良く排水できる。
【0024】
グロメット10は、車体パネル1への取付面が水平向きであり、各排水通路18は、外周側リップ部16と内周側リップ部17間の位置で、且つ、間隔を置いて3箇所に設けられている。従って、外周側リップ部16と内周側リップ部17の空間の底面にほぼ高低差がないため、外周側リップ部16の内側に浸入した水は、近くの排水通路18より外部に順次排出されるため、浸入水が外周側リップ部16と内周側リップ部17の間に勢いよく浸入しても一定量以上溜まるような事態を確実に防止できる。尚、排水通路18の個数は、1個でも、3個以外の複数個でも良い。
【0025】
排水通路18は、複数のインナーロック部22の間の位置に入口部18aが設けられている。グロメット本体11は、インナーロック部22の近傍では弾性変形し難いために外周側リップ部16が高圧水を受けても弾性変形し難い。一方、グロメット本体11は、インナーロック部22より離れた位置では弾性変形し易いために高圧水によって外周側リップ部16が弾性変形し易く、高圧水が浸入し易い。このように水が浸入する可能性の高い位置に排水通路18が開口しているため、浸入水を効率良く排水できる。
【0026】
(変形例)
図4には、変形例に係るグロメット10Aが示されている。変形例のグロメット10Aは、ゴム材より形成された単一部材のみで構成されている。つまり、前記実施形態のようなグロメットインナーを有しない。グロメット10Aは、車体パネル1の取付面が水平向きであり、排水通路18は、円周方向に沿って等間隔に4箇所設けられている。尚、排水通路18の個数は、1個でも、4個以外の複数個でも良い。
【0027】
この変形例でも、前記実施形態と同様の作用・効果を有する。
【0028】
(その他)
前記実施形態及び前記変形例では、グロメット10,10Aの車体パネル1への取付面は水平向きであり、排水通路18は外周側リップ部16及び内周側リップ部17の間の位置で、且つ、間隔を置いて複数設けられている。グロメット10,10Aの車体パネル1への取付面が水平向き以外の向きである場合には、排水通路18は外周側リップ部16と内周側リップ部17の間の位置の中で低い位置に設けることが好ましい。このようにすれば、外周側リップ部16と内周側リップ部17間に浸入した水は、確実に排水通路18が通って外部に排出される。又、排水通路18は、外周側リップ部16と内周側リップ部17の間の位置で最も低い位置に設けることがより好ましい。
【0029】
前記実施形態及び前記変形例では、グロメット10,10Aは、外周側リップ部16と内周側リップ部17の2つで二重にシールするよう構成されているが、3つ以上のリップ部によって3重以上にシールするよう構成しても良い。この場合には、排水通路18は、最外周のリップ部と最内周のリップ部の間のいずれかの位置に設ければ良い。最外周のリップ部と2番目に外周のリップ部との間に設けることが好ましい。このように構成すれば、電線貫通穴2からより遠い位置で排水できるため、防水性能が向上する。
【符号の説明】
【0030】
1 車体パネル
2 電線貫通穴
10,10A グロメット
11 グロメット本体
16 外周側リップ部(最外周のリップ部)
17 内周側リップ部(最内周のリップ部)
18 排水通路
18a 入口部
20 グロメットインナー
22 インナーロック部
図1
図2
図3
図4
図5