特許第5872951号(P5872951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872951
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20160216BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20160216BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20160216BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20160216BHJP
【FI】
   H01M8/02 Y
   H01M4/86 M
   H01M4/86 U
   !H01M8/10
   !H01M8/12
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-97214(P2012-97214)
(22)【出願日】2012年4月21日
(65)【公開番号】特開2013-225422(P2013-225422A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【弁理士】
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】大野 猛
(72)【発明者】
【氏名】籔田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】谷村 良二
(72)【発明者】
【氏名】林 千栄
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−155046(JP,A)
【文献】 特開2013−055042(JP,A)
【文献】 特表2002−503381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の電解質体の表裏面にそれぞれ電極が形成されたセル本体と、
前記セル本体の前記電極に対向して配置され導電性を有するコネクタと、
前記電極と、前記コネクタとの間に配置され、前記電極と前記コネクタを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池であって、
前記集電部材は、
一方の表面が前記コネクタに対向し他方の表面が前記電極に対向するように前記コネクタと前記電極の間に配置され、導電性を備えたシート状のシート部材と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記一方の表面に配置され前記シート部材と前記コネクタを電気的に接続するコネクタ側集電体と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記他方の表面に配置され前記シート部材と前記電極を電気的に接続する電極側集電体と、を備えると共に、
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と前記電極側集電体が重ならないように配置されており、
さらに前記シート部材は、前記コネクタ側集電体および前記電極側集電体のいずれよりも変形しやすい材質の部材で構成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と前記電極側集電体間の距離(L)は、前記セル本体の厚み方向における前記コネクタ側集電体の厚み(H1)と前記セル本体の厚み方向における電極側集電体の厚み(H2)のいずれよりも大きくなるように設定されている請求項に記載の燃料電池。
【請求項3】
対向して配置された前記セル本体と前記シート部材の間において、
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と重なる位置に第1介在部材が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
対向して配置された前記コネクタと前記シート部材の間において、
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記電極側集電体と重なる位置に第2介在部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記シート部材は、通気孔を有する構造を備えることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記シート部材は、メッシュであることを特徴とする請求項に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記電極側集電体は、Niセルメット、フェルト又は不織布の少なくとも一種で構成されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記コネクタが、二つの主面を形成する板状をなし、
隣接する二つの前記セル本体が前記コネクタの二つの主面側にそれぞれ配置され、
二つの前記セル本体の一方を第1セル本体とし、他方を第2セル本体とした場合に、
前記コネクタの前記第1セル本体側の一方の主面に、前記第1セル本体と前記コネクタとを電気的に接続する第1集電部材が配置され、
前記コネクタの前記第2セル本体側の他方の主面に、前記第2セル本体と前記コネクタとを電気的に接続する第2集電部材が配置され、
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記第1集電部材の前記電極側集電体と、前記第2集電部材の前記コネクタ側集電体が重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池。
【請求項9】
第1、 第2の主面を有する板状のコネクタと、
板状の第1の電解質体の両側にそれぞれ第1、第2の電極を備え、前記第1の電極を前記コネクタの前記第1の主面に向けて配置された第1のセル本体と、
板状の第2の電解質体の両側にそれぞれ第3、第4の電極を備え、前記第4の電極を前記コネクタの前記第2の主面に向けて配置された第2のセル本体と、
前記コネクタの前記第1の主面に形成され、前記第1のセル本体の前記第1の電極の表面に接触する接触部と、
前記第2のセル本体の前記第4の電極と、前記コネクタの前記第2の主面との間に配置され、前記第4の電極と前記コネクタを電気的に接続する集電部材と、
を備えた燃料電池であって、
前記集電部材は、
一方の表面が前記コネクタに対向し他方の表面が前記第4の電極に対向するように前記コネクタと前記第4の電極の間に配置され、導電性を備えたシート状のシート部材と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記一方の表面に配置され前記シート部材と前記コネクタを電気的に接続するコネクタ側集電体と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記他方の表面に配置され前記シート部材と前記第4の電極を電気的に接続する電極側集電体と、を備えると共に、
前記コネクタの厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と前記電極側集電体、および、前記コネクタ側集電体と前記接触部が重ならないように配置されており、
さらに前記シート部材は、前記コネクタ側集電体および前記電極側集電体のいずれよりも変形しやすい材質の部材で構成されていることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の電解質体の表裏面に二つの電極を設け、それぞれの電極に反応ガスを供給して発電する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な燃料電池は、板状の電解質体の表裏面にそれぞれ電極が形成されたセル本体と、該セル本体の表裏面の電極にそれぞれ対向して配置された導電性を有する一対のコネクタと、セル本体の電極とコネクタとの間に配置されて両者を電気的に接続する集電部材と、を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
このような燃料電池は、温度サイクルや反応ガスの圧力の変動などによってセル本体とコネクタの間隔に広狭の変位が生じ得る。したがって、セル本体とコネクタを電気的に接続する集電部材は、このような間隔の変位に対し適宜変形して応力を緩和し、セル本体とコネクタを安定的に接続させ得るように様々な構造が考えられている。
【0004】
その一つに、図15に示したように、セル本体(図示せず)とコネクタ(図示せず)に接する半楕円状の突起500,500…を上下の位置と向きとを違えてベース部材600に複数個形成し、そうして突起500自身の変形と、突起500を支えるベース部材600の変形とを組み合わせるようにした集電部材700が、例えば特許文献1の図9に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−147021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら図15に示した集電部材700は、単一材料で形成されていて応力を緩和する能力が十分でないため、セル本体とコネクタの間隔が広がる方向に変位した場合に、集電部材700の突起500とセル本体の界面に残応力が伝わりやすくて隙間が出来る可能性があった。また、セル本体とコネクタの間隔が狭まる方向に変位した場合に、集電部材700の突起500とセル本体の界面に残応力が伝わりやすくてセル本体が破壊される可能性があった。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、セル本体とコネクタの間隔の変位に応じて変形し、そうして応力を緩和して長期の使用においても良好な電気的接続性が維持可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、請求項1に記載したように、
板状の電解質体の表裏面にそれぞれ電極が形成されたセル本体と、
前記セル本体の前記電極に対向して配置され導電性を有するコネクタと、
前記電極と、前記コネクタとの間に配置され、前記電極と前記コネクタを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池であって、
前記集電部材は、
一方の表面が前記コネクタに対向し他方の表面が前記電極に対向するように前記コネクタと前記電極の間に配置され、導電性を備えたシート状のシート部材と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記一方の表面に配置され前記シート部材と前記コネクタを電気的に接続するコネクタ側集電体と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記他方の表面に配置され前記シート部材と前記電極を電気的に接続する電極側集電体と、を備えると共に、
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と前記電極側集電体が重ならないように配置されており、
さらに前記シート部材は、前記コネクタ側集電体および前記電極側集電体のいずれよりも変形しやすい材質の部材で構成されている燃料電池を提供する。
【0009】
また、請求項に記載したように、前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と前記電極側集電体間の距離(L)は、前記セル本体の厚み方向における前記コネクタ側集電体の厚み(H1)と前記セル本体の厚み方向における電極側集電体の厚み(H2)のいずれよりも大きくなるように設定されている請求項に記載の燃料電池を提供する。
【0010】
また、請求項に記載したように、対向して配置された前記セル本体と前記シート部材の間において、前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記コネクタ側集電体と重なる位置に第1介在部材が配置されている請求項1又は2に記載の燃料電池を提供する。
【0011】
また、請求項に記載したように、対向して配置された前記コネクタと前記シート部材の間において、前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記電極側集電体と重なる位置に第2介在部材が配置されている請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池を提供する。
【0012】
また、請求項に記載したように、前記シート部材は、通気孔を有する構造を備える請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池を提供する。
【0013】
また、請求項に記載したように、前記シート部材は、メッシュである請求項に記載の燃料電池を提供する。
【0014】
また、請求項に記載したように、前記電極側集電体は、Niセルメット、フェルト又は不織布の少なくとも一種で構成されている請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池を提供する。
【0015】
また、請求項に記載したように、
前記コネクタが、二つの主面を形成する板状をなし、
隣接する二つの前記セル本体が前記コネクタの二つの主面側にそれぞれ配置され、
二つの前記セル本体の一方を第1セル本体とし、他方を第2セル本体とした場合に、
前記コネクタの前記第1セル本体側の一方の主面に、前記第1セル本体と前記コネクタとを電気的に接続する第1集電部材が配置され、
前記コネクタの前記第2セル本体側の他方の主面に、前記第2セル本体と前記コネクタとを電気的に接続する第2集電部材が配置され、
前記セル本体の厚み方向に沿って見たとき、前記第1集電部材の前記電極側集電体と、前記第2集電部材の前記コネクタ側集電体が重ならないように配置されている請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池を提供する。
【0016】
また、請求項に記載したように、
第1、 第2の主面を有する板状のコネクタと、
板状の第1の電解質体の両側にそれぞれ第1、第2の電極を備え、前記第1の電極を前記コネクタの前記第1の主面に向けて配置された第1のセル本体と、
板状の第2の電解質体の両側にそれぞれ第3、第4の電極を備え、前記第4の電極を前記コネクタの前記第2の主面に向けて配置された第2のセル本体と、
前記コネクタの前記第1の主面に形成され、前記第1のセル本体の前記第1の電極の表面に接触する接触部と、
前記第2のセル本体の前記第4の電極と、前記コネクタの前記第2の主面との間に配置され、前記第4の電極と前記コネクタを電気的に接続する集電部材と、
を備えた燃料電池であって、
前記集電部材は、
一方の表面が前記コネクタに対向し他方の表面が前記第4の電極に対向するように前記コネクタと前記第4の電極の間に配置され、導電性を備えたシート状のシート部材と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記一方の表面に配置され前記シート部材と前記コネクタを電気的に接続するコネクタ側集電体と、
前記セル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成され、前記シート部材の前記他方の表面に配置され前記シート部材と前記第4の電極を電気的に接続する電極側集電体と、を備えると共に、
前記コネクタの厚み方向に沿って見たとき、
前記コネクタ側集電体と前記電極側集電体、および、前記コネクタ側集電体と前記接触部が重ならないように配置されており、
さらに前記シート部材は、前記コネクタ側集電体および前記電極側集電体のいずれよりも変形しやすい材質の部材で構成されている燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の燃料電池は、集電部材が、シート部材とコネクタ側集電体と電極側集電体の三部材を組み合わせた構造になっているため、コネクタ側集電体と電極側集電体をセル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成し、さらにそれらを支えるシート部材を面方向に変形し得る材料で形成する、というように各部材の材質を適宜選択して、前記した温度サイクルや反応ガスの圧力の変動などによってセル本体とコネクタの間隔に広狭の変位が生じた場合の応力緩和性能を高めることができる。
【0018】
また、シート部材をコネクタ側集電体および電極側集電体のいずれよりも変形しやすい材質の部材で構成すれば、小さい変位に対してコネクタ側集電体および電極側集電体の変形に依らずともシート部材の変形で俊敏に対応することができる。
【0019】
また、請求項に記載したように、セル本体の厚み方向に沿って見たとき、コネクタ側集電体と電極側集電体間の距離(L)、換言すれば、セル本体の厚み方向にセル本体又は電極にコネクタ側集電体と電極側集電体を投影したときの両者間の距離(L)を、セル本体の厚み方向におけるコネクタ側集電体の厚み(H1)とセル本体の厚み方向における電極側集電体の厚み(H2)のいずれよりも大きく設定することにより、シート部材の緩衝作用が大きくなってシート部材の変形で俊敏に対応できる幅が広がる。
【0020】
また、請求項に記載したように、対向して配置されたセル本体とシート部材の間において、セル本体の厚み方向に沿って見たとき、コネクタ側集電体と重なる位置に第1介在部材を配置することで、シート部材の材質として仮にセル本体の電極に焼き付き得るものを選択した場合でも、第1介在部材の介在によって焼き付きが防止できる。したがってシート部材の材質選択の幅が広がる。
【0021】
また、請求項に記載したように、対向して配置されたコネクタとシート部材の間において、セル本体の厚み方向に沿って見たとき、電極側集電体と重なる位置に第2介在部材を配置することで、シート部材の材質として仮にコネクタに焼き付き得るものを選択した場合でも、第2介在部材の介在によって焼き付きが防止できる。したがってシート部材の材質選択の幅が広がる。
【0022】
また、請求項に記載したように、シート部材を通気孔を有する材質で形成することにより、反応ガスがシート部材を通過して電極に接触し得るため、シート部材を大きくしてしっかりと電極側集電体とコネクタ側集電体を支持させることができる。このようなシート部材として具体的に請求項に記載したようにメッシュがある。
【0023】
また、請求項に記載したように、電極側集電体をNiセルメット、フェルト又は不織布のような通気性を有する素材で構成すれば、電極側集電体を大きくして電極との接触面を大きくすることができる。
【0024】
また、請求項に記載の燃料電池は、請求項1〜請求項に記載の集電部材を電極とコネクタの間の全てに配置するようにしたものであるが、その際、第1集電部材の電極側集電体と、第2集電部材のコネクタ側集電体が重ならないように配置することにより、全ての電極側集電体とコネクタ側集電体同士が一つのコネクタの表裏で線対称位置に並ぶことがない(図11参照)。これにより各集電部材同士がセル本体やコネクタを介して影響を及ぼし合うことが殆ど無く、各要素の変位が吸収しやすくなる。
【0025】
また、請求項に記載の燃料電池は、請求項1に記載の燃料電池と同様に、集電部材が、シート部材とコネクタ側集電体と電極側集電体の三部材を組み合わせた構造になっているため、コネクタ側集電体と電極側集電体をセル本体の厚み方向に弾性を有する材料で形成し、さらにそれらを支えるシート部材を面方向に変形し得る材料で形成する、というように各部材の材質を適宜選択して、前記した温度サイクルや反応ガスの圧力の変動などによってセル本体とコネクタの間隔に広狭の変位が生じた場合の応力緩和性能を高めることができる。加えて、集電部材のコネクタ側集電体の配置をコネクタの第1の主面に形成された接触部と重ならない配置にしたことにより、コネクタ側集電体の変形に接触部が影響を与えないため、コネクタ側集電体の変位の吸収作用が効率良く行われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】燃料電池の分解斜視図である。
図2】分解パーツを絞った燃料電池の分解斜視図である。
図3】燃料電池の斜視図である。
図4】燃料電池の中間を省略した一部拡大図を含む縦断面図である。
図5図4のA−A線断面図である。
図6図4のB−B線断面図である。
図7】集電部材の一部拡大図を含む斜視図である。
図8】集電部材の分解斜視図である。
図9】積層体にした燃料電池の斜視図である。
図10】積層体にした燃料電池の要部拡大断面図である。
図11】他の形態を示すもので、積層体にした燃料電池の要部拡大断面図である。
図12】他の形態を示すもので、積層体にした燃料電池の中間を省略した縦断面図である。
図13】他の形態を示す集電部材の分解斜視図である。
図14】他の形態を示す集電部材の分解斜視図である。
図15】従来技術を示す集電部材の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
現在、燃料電池には電解質体の材質により大別して、高分子電解質体膜を電解質体とする固体高分子形燃料電池(PEFC)と、リン酸を電解質体とするリン酸形燃料電池(PAFC)と、Li−Na/K系炭酸塩を電解質体とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と、例えばZrO系セラミックを電解質体とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の4タイプがある。各タイプは、作動温度(イオンが電解質体中を移動できる温度)が異なり、現時点において、PEFCは常温〜約90℃、PAFCは約150℃〜200℃、MCFCは約650℃〜700℃、SOFCは約700℃〜1000℃である。
【0028】
図1図10に示した燃料電池1は、例えばZrO系セラミックを電解質体2とするSOFCである。この燃料電池1は、一つの電解質体2を含むセル本体3と、燃料電池1に一方の反応ガスたる空気を供給する空気供給流路4と、その空気を外部に排出する空気排気流路5と、同じく燃料電池1にもう一方の反応ガスたる水素等の燃料ガスを供給する燃料供給流路6と、その燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7と、を有する。なお、この燃料電池1は発電の最小単位であって、実際の燃料電池100は、複数の燃料電池1を図9に示したように直列に積層した積層体8と、該積層体8を一体に固定する固定部材9と、積層体8を納める容器10と、積層体8で発電した電気を出力する出力部材11と、から概略構成される。
【0029】
[燃料電池]
燃料電池1は平面視正方形であり、図1に示したように、二つの主面を有する四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された上(※ここでの「上」又は「下」は図面の記載を基準とするが、これはあくまでも説明の便宜上のものであって絶対的な上下を意味しない。以下同じ。)のコネクタ12と、同じく二つの主面を有する四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された下のコネクタ13と、上下のコネクタ12,13のほぼ中間に位置すると共に板状の電解質体2の上のコネクタ12の内向き主面(下面)に対向する表面に電極(以下、空気極ともいう。)14を形成すると共に下のコネクタ13の内向き主面(上面)に対向する裏面に電極(以下、燃料極ともいう。)15を形成したセル本体3と、上のコネクタ12と空気極14との間に形成された空気室16と、下のコネクタ13と燃料極15との間に形成された燃料室17と、空気室16の内部に配置され空気極14と上のコネクタ12とを電気的に接続する空気極14側の集電部材18と、前記燃料室17の内部に配置され燃料極15と下のコネクタ13とを電気的に接続する燃料極15側の集電部材19と、を有し、正方形のコーナー部分を含む適宜な位置に前記固定部材9の後述する締め付け部材46a〜46dを通す締付通孔47,47…を貫通状態に形成したものである。
【0030】
[電解質体]
前記電解質体2は、ZrO系セラミックの他、LaGaO系セラミック、BaCeO系セラミック、SrCeO系セラミック、SrZrO系セラミック、CaZrO系セラミック等で板状に形成される。
【0031】
[燃料極]
前記燃料極15の材質は、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO系セラミック、CeO系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。また、燃料極15の材質は、Pt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属でもよく、これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の合金にしてもよい。さらに、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
【0032】
[空気極]
前記空気極14の材質は、例えば各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。前記金属としてはPt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。さらに、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La、SrO、Ce、Co、MnO及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−XSrCoO系複酸化物、La1−XSrFeO系複酸化物、La1−XSrCo1−yFeO系複酸化物、La1−XSrMnO系複酸化物、Pr1−XBaCoO系複酸化物及びSm1−XSrCoO系複酸化物等)が挙げられる。
【0033】
[燃料室]
前記燃料室17は、図1図2に示したように、集電部材19の周りを囲う状態にして下のコネクタ13の上面に設置された額縁形態の燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と、額縁形態であって前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される燃料極フレーム22と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0034】
[燃料室側の集電部材]
燃料室17側の集電部材19は、図4図7図8に示したように、一方の表面がコネクタ13に対向し、他方の表面が燃料極15に対向するようにコネクタ13と燃料極15の間に配置された導電性を有するシート状のシート部材19aと、該シート部材19aのコネクタ13に対向する方の表面に配置されてシート部材19aとコネクタ13を電気的に接続するコネクタ側集電体19bと、該シート部材19aの燃料極15に対向する方の表面に配置されてシート部材19aと燃料極15を電気的に接続する電極側集電体19cと、を備えている。
【0035】
[シート部材]
前記シート部材19aは、燃料室17内にほぼ整合する大きさの例えばCu製で、図8に示したように網目状の通気孔を有するメッシュや、Cu箔に多数の通気孔を有するパンチング構造(図示せず)になっており、面方向に柔軟性を有する。
【0036】
[コネクタ側集電体]
前記コネクタ側集電体19bは、厚み方向に適度な変形弾性を有する導電性の多孔体であって、例えば、Niセルメット、フェルト又は不織布等で形成されている。このコネクタ側集電体19bは、図7図8に示したように、燃料ガスの流れ方向に細長いコネクタ側短冊片19bT,19bT…を複数本間隔を離して並べたものであり、シート部材19aに接合されている。
【0037】
[電極側集電体]
前記電極側集電体19cは、厚み方向に適度な変形弾性を有する導電性の多孔体であって、例えば、Niセルメット、フェルト又は不織布等で形成されている。この電極側集電体19cは、図7図8に示したように、燃料ガスの流れ方向に細長い複数本の電極側短冊片19cT,19cT…を前記コネクタ側集電体19b,19b…のコネクタ側短冊片19bT,19bT…の間の位置に並べてシート部材19aに接合されている。
【0038】
ところで、コネクタ側集電体19bと電極側集電体19cの双方又は何れか一方がNiか又はNi合金であると、発電時の高温環境下でコネクタ13との接触面又は燃料極15との接触面が拡散接合により一体になる。したがって集電部材19による電気的接続がより安定的に維持される。
なお、好ましくは燃料極15にNiOペーストを塗布して接合層を形成しておくとよい。そうすることによりH中の通電でNiOがNiになるから電極側集電体19cと燃料極15の接合性がさらに向上する。前記接合層は、燃料極15にPtペーストを塗布することによって形成してもよい。
【0039】
[コネクタ側集電体−電極側集電体]
コネクタ側集電体19bと電極側集電体19cは、上記のように前記セル本体3の厚み方向に沿って見たとき、互いに重ならないように配置されている。具体的には、図4においてセル本体3の厚み方向に沿って見たとき、コネクタ側集電体19bと電極側集電体19cの間の距離(L)は、セル本体3の厚み方向におけるコネクタ側集電体19bの厚み(H1)とセル本体3の厚み方向における電極側集電体19cの厚み(H2)のいずれよりも大きくなるように設定されている。こうすることによりシート部材19aの変形領域が広くなって緩衝力が大きくなる。また、シート部材19aは、コネクタ側集電体19bと電極側集電体19cのいずれよりも変形しやすくなっており、これによりシート部材19aの緩衝力を優先的に作用させることができる。
【0040】
一方、コネクタ側集電体19bと電極側集電体19cの間の距離(L)が両集電体19b,19cの厚み(H1,H2)のいずれよりも大きいと、コネクタ側集電体19bに押されたシート部材19aがセル本体3の燃料極15に接触するおそれがあり、また、電極側集電体19cに押されたシート部材19aがコネクタ13に接触するおそれがある。この場合、接触し合う部材同士(シート部材19aと燃料極15、シート部材19aとコネクタ13)の材質の組合せによっては発電時の高温(燃料電池作動温度域)で焼結する可能性があり、もし焼結するとその部分ではシート部材19aの緩衝作用が機能しない。
【0041】
そこで実施形態では、セル本体3とシート部材19aの間において、セル本体3の厚み方向に沿って見たとき、コネクタ側集電体19bと重なる位置にシート部材19aと燃料極15の焼き付きを防止する第1介在部材20aが配置され、また、コネクタ13とシート部材19aの間において、セル本体3の厚み方向に沿って見たとき、電極側集電体19cと重なる位置にシート部材19aとコネクタ13の焼き付きを防止する第2介在部材20bが配置されている。第1介在部材20a及び第2介在部材20bの材質としては、マイカ、アルミナ、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの何れか自体か、或は少なくとも何れか1種を主成分とするものでもよい。
なお、第1介在部材20aと第2介在部材20bは、重なり部分の全てをカバーし得る形状が好ましいが、対象となる部材同士の直接的な接触を生じさせない機能を有する限りにおいて重なり部分の一部をカバーする形状であってもよい。
【0042】
[空気室]
前記空気室16は、図1図2図4に示したように、四角い額縁形態であって下面に前記電解質体2が取着された導電性を有する薄い金属製のセパレータ23と、該セパレータ23と上のコネクタ12との間に設置されて集電部材18の周りを囲う額縁形態の空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0043】
[空気室側の集電部材]
空気室16側の集電部材18は、細長い板材形状で、緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され、電解質体2の表面の空気極14と上のコネクタ12の内向き主面(下面)に当接する状態にして複数本(実施形態では電極側集電体19cと同数)を、図4に示したようにセル本体3の厚み方向に沿って見たとき電極側集電体19cと重なる位置に配設したものである。
【0044】
なお、空気室16側の集電部材18は、燃料室17側の集電部材19と同じ構造にしてもよい。その場合の好ましい形態を示したのが図11の縦断面図である。すなわち、図11は燃料電池1を複数積層したものであり、二つの主面を有するコネクタ12−13(積層体8のコネクタは、後述するように上下に隣り合うコネクタ12,13を共有するため、そのようなコネクタに「12−13」の符合を付す。以下同じ)を挟んで隣接する二つのセル本体3の一方を第1セル本体3/1とし、他方を第2セル本体3/2とした場合に、コネクタ12−13の第1セル本体3/1側の一方の主面に、第1セル本体3/1とコネクタ12−13とを電気的に接続する第1集電部材19/1が配置され、コネクタ12−13の第2セル本体3/2側の他方の主面に、第2セル本体3/2とコネクタ12−13とを電気的に接続する第2集電部材18/2が配置され、セル本体3の厚み方向に沿って見たとき、第1集電部材19/1の電極側集電体19cと、第2集電部材18/2のコネクタ側集電体19bが重ならないように配置されている。この状態は、前記集電部材19を各層毎に平行移動させた状態であり、図11に示したように全てのコネクタ側集電体19bと電極側集電体19cに、シート部材19aを介して緩衝空間Sが対応するから、集電部材19/1,18/2同士がセル本体3やコネクタ12−13を介して影響を及ぼし合うことが殆ど無く、各要素の変位が吸収されやすくなる。
【0045】
また、空気室16側の集電部材18は、コネクタ12(13)と一体の接触部180に変更してもよい。その形態を示したものが図12の縦断面図である。すなわち、図12は燃料電池1を複数積層したものであり、第1、 第2の主面を有する板状のコネクタ12−13と、板状の第1の電解質体2/1の両側にそれぞれ第1、第2の電極(以下、第1の空気極14/1、第2の燃料極15/2という。)を備え、前記第1の空気極14/1をコネクタ12−13の第1の主面に向けて配置された第1のセル本体3/1と、板状の第2の電解質体2/2の両側にそれぞれ第3、第4の電極(以下、第3の空気極14/3、第4の燃料極15/4という。)を備え、第4の燃料極15/4をコネクタ12−13の第2の主面に向けて配置された第2のセル本体3/2と、コネクタ12−13の第1の主面に形成され、第1のセル本体3/1の第1の空気極14/1の表面に接触する接触部180と、第2のセル本体3/2の第4の燃料極15/4と、コネクタ12−13の第2の主面との間に配置され、第4の燃料極15/4とコネクタ12−13を電気的に接続する集電部材19と、を備えている。
そして、集電部材19は、一方の表面がコネクタ12−13に対向し他方の表面が第4の燃料極15/4に対向するようにコネクタ12−13と第4の燃料極15/4の間に配置されて導電性を備えたシート状のシート部材19aと、シート部材19aの一方の表面に配置されてシート部材19aとコネクタ12−13を電気的に接続するコネクタ側集電体19bと、シート部材19aの他方の表面に配置され、シート部材19aと第4の燃料極15を電気的に接続する電極側集電体19cと、を備えている。
そしてさらに各要素は、コネクタ12−13の厚み方向に沿って見たとき、コネクタ側集電体19bと電極側集電体19c、および、コネクタ側集電体19bと接触部180が重ならないように配置されている。
かかる構成においてコネクタ12−13と一体の接触部180は殆ど変形しないため、変位の吸収は専ら燃料室17側の集電部材18によって行われる。
【0046】
以上のように燃料電池1は、下のコネクタ13と、燃料極絶縁フレーム21と、燃料極フレーム22と、セパレータ23と、空気極絶縁フレーム24と、上のコネクタ12と、の組合せによって燃料室17と空気室16を形成し、その燃料室17と空気室16を電解質体2で仕切って相互に独立させ、さらに、燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24で燃料極15側と空気極14側を電気的に絶縁している。
【0047】
また、燃料電池1は、空気室16の内部に空気を供給する空気供給流路4を含む空気供給部25と、空気室16から空気を外部に排出する空気排気流路5を含む空気排気部26と、燃料室17の内部に燃料ガスを供給する燃料供給流路6を含む燃料供給部27と、燃料室17から燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7を含む燃料排気部28と、を備えている。
【0048】
[空気供給部]
空気供給部25は、四角い燃料電池1の一辺側であってコーナー寄りの位置に上下方向に開設した空気供給通孔29と、該空気供給通孔29に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気供給連絡室30と、該空気供給連絡室30と空気室16の間を仕切る隔壁31の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気供給連絡部32と、前記空気供給通孔29に挿通して外部から前記空気供給連絡室30に空気を供給する前記空気供給流路4と、を備えている。
【0049】
[空気排気部]
空気排気部26は、燃料電池1の空気供給部25の反対側の一辺側コーナー寄りの位置に上下方向に開設した空気排気通孔33と、該空気排気通孔33に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気排気連絡室34と、該空気排気連絡室34と空気室16の間を仕切る隔壁35の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気排気連絡部36と、前記空気排気通孔33に挿通して空気排気連絡室34から外部に空気を排出する管状の前記空気排気流路5と、を備えている。
【0050】
[燃料供給部]
燃料供給部27は、四角い燃料電池1の前記空気供給部25と同じ一辺側であって前記空気供給通孔29と反対側のコーナー寄りの位置に上下方向に開設した燃料供給通孔37と、該燃料供給通孔37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料供給連絡室38と、該燃料供給連絡室38と燃料室17の間を仕切る隔壁39の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料供給連絡部40と、前記燃料供給通孔37に挿通して外部から前記燃料供給連絡室38に燃料ガスを供給する管状の前記燃料供給流路6と、を備えている。
【0051】
[燃料排気部]
燃料排気部28は、燃料電池1の燃料供給部27の反対側の一辺側コーナー寄りの位置に上下方向に開設した燃料排気通孔41と、該燃料排気通孔41に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料排気連絡室42と、該燃料排気連絡室42と燃料室17の間を仕切る隔壁43の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料排気連絡部44と、前記燃料排気通孔41に挿通して燃料排気連絡室42から外部に燃料ガスを排出する管状の燃料排気流路7と、を備えている。
【0052】
[積層体]
前記のように燃料電池1は、発電の最小単位であって単独でも発電可能であるが、実際は、複数の燃料電池1を図9に示したように直列に積層して固定部材9で固定した積層体8の状態で発電する。なお、燃料電池1を複数積層した場合において、下に位置する燃料電池1の上のコネクタ12と、その上に載る燃料電池1の下のコネクタ13は、一体にして上下の燃料電池1,1同士で共有する。
前記固定部材9は、積層体8の上下を挟む一対のエンドプレート45a,45bと、該エンドプレート45a,45bと積層体8をエンドプレート45a,45bのコーナー孔(図示せず)と積層体8の前記締付通孔47にボルトを通してナットで締め付ける6組の締め付け部材46a〜46fと、を組み合わせたものである。締め付け部材46a〜46fの材質は、例えばインコネル601である。
【0053】
この燃料電池1の積層体8に対し前記空気供給流路4は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と前記空気供給通孔29を上下に貫く状態にして取り付けられており、管状流路の端部を閉じ前記空気供給連絡室30毎に対応させて図5に示したように横孔48を設けることにより、該横孔48を介して空気供給連絡室30に空気が供給されるようになっている。
【0054】
同様に空気排気流路5は空気排気連絡室34毎に対応させた横孔49から空気を取り込んで外部に排出し、燃料供給流路6は図6に示したように燃料供給連絡室38毎に対応させた横孔50から燃料ガスを供給し、燃料排気流路7は燃料排気連絡室42毎に対応させた横孔51から燃料ガスを取り込んで外部に排出する。
【0055】
[容器]
積層体8を収める容器10は、耐熱且つ密閉構造であって、図9に示したように、開口部にフランジ52a,52bを有する二個の半割体53a,53bを向かい合わせにして接合したものである。この容器10の頂部から前記締め付け部材46a〜46fのボルトが外部に突出しており、この締め付け部材46a〜46fの突出部分にナット54を螺合させて積層体8を容器10内に固定する。また、容器10の頂部から前記空気供給流路4、空気排気流路5、燃料供給流路6、燃料排気流路7も外部に突出しており、その突出部分に空気や燃料ガスの供給源等が接続されている。
【0056】
[出力部材]
燃料電池1で発電した電気を出力する出力部材11は、積層体8のコーナー部分に位置する前記締め付け部材46a〜46dと前記エンドプレート45a,45bであって、対角線上で向かい合う一対の締め付け部材46a,46cを正極である上のエンドプレート45aに電気的に接続し、また、他の一対の締め付け部材46b,46dを負極である下のエンドプレート45bに電気的に接続する。もちろん正極に接続した締め付け部材46a,46dや負極に接続した締め付け部材46b,46cは、他極のエンドプレート45a(45b)に対しては絶縁座金55(図9参照)を介在させ、また、積層体8に対しては締付通孔47との間に隙間を設けるなどして絶縁されている。よって、固定部材9の締め付け部材46a,46cは、上のエンドプレート45aにつながった正極の出力端子としても機能し、また、他の締め付け部材46b,46dは、下のエンドプレート45bにつながった負極の出力端子としても機能する。
【0057】
[発電]
上記燃料電池1の空気供給流路4に空気を供給すると、その空気は、図5の上側から下側に流れ、上側の空気供給流路4と、空気供給連絡室30と、空気供給連絡部32とからなる空気供給部25を通って空気室16に供給され、この空気室16の集電部材18同士の間のガス流路56を通り抜け、さらに空気排気連絡部36と、空気排気連絡室34と、空気排気流路5とからなる空気排気部26を通って外部に排出される。
【0058】
同時に燃料電池1の燃料供給流路6に燃料ガスとして例えば水素を供給すると、その燃料ガスは、図6の上側から下側に流れ、上側の燃料供給流路6と、燃料供給連絡室38と、燃料供給連絡部40とからなる燃料供給部27を通って燃料室17に供給され、この燃料室17の集電部材19のガス流路57を拡散しながら通り抜け、さらに燃料排気連絡部44と、燃料排気連絡室42と、燃料排気流路7とからなる燃料排気部28を通って外部に排気される。
【0059】
このような空気と燃料ガスの供給・排気を行いつつ前記容器10内の温度を700℃〜1000℃にまで上昇させると、空気と燃料ガスが空気極14と電解質体2と燃料極15を介して反応を起こすため、空気極14を正極、燃料極15を負極とする直流の電気エネルギが発生する。なお、燃料電池セル3内で電気エネルギが発生する原理は周知であるため説明を省略する。
【0060】
前記のように空気極14は、集電部材18を介して上のコネクタ12に電気的に接続され、一方、燃料極15は、集電部材19を介して下のコネクタ13に電気的に接続されており、また、積層体8は複数の燃料電池1を積層して直列に接続された状態であるから、上のエンドプレート45aが正極で、下のエンドプレート45bが負極になり、その電気エネルギーが出力端子としても機能する締め付け部材46a〜46dを介して外部に取り出すことができる。
【0061】
以上のように燃料電池1は、発電時に温度が上昇し、発電停止により温度が下降する、という温度サイクルを繰り返す。したがって、燃料室17や空気室16を構成する全ての部材や前記締め付け部材46a〜46fについて熱膨張と収縮が繰り返され、それに伴い燃料室17や空気室16の間隔も拡大と縮小が繰り返される。
また、燃料圧や空気圧も変動する場合があり、その圧力の変動でセル本体3が変形することによっても燃料室17や空気室16の間隔が拡大又は縮小する。
このような燃料室17や空気室16の拡大方向の変化に対して、実施形態ではシート部材19aの面方向への変形とコネクタ側集電体19bと電極側集電体19cの伸びで緩和し、逆に、燃料室17や空気室16の間隔が縮小する方向の変化に対して、実施形態では、シート部材19aの面方向への変形とコネクタ側集電体19bと電極側集電体19cの収縮で応力を緩和する。
【0062】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シート部材19aを図13のように複数本の短冊状にしてコネクタ側集電体19bや電極側集電体19cと交差させ、そうして集電部材19全体を格子状にして通気性を高めるようにしてもよい。
また、コネクタ側集電体19bや電極側集電体19cを図14のように四角いチップ状にしてシート部材19aに接着するようにしてもよい。
また、実施形態では、セル本体3とシート部材19aの間に第1介在部材20aを配置すると共にコネクタ13とシート部材19aの間に第2介在部材20bを配置したが、これらの一部又は全部を使用しない場合でも従来との比較において本発明を実施することにより得られる利益は大きい。
【符号の説明】
【0063】
1 …燃料電池
2 …電解質体
2/1 …第1の電解質体
2/2 …第2の電解質体
3 …セル本体
3/1 …第1セル本体
3/2 …第2セル本体
8 …燃料電池スタック
12,13,12−13 …コネクタ
14 …電極(空気極)
14/1 …第1の電極(空気極)
14/3 …第3の電極(空気極)
15 …電極(燃料極)
15/2 …第2の電極(燃料極)
15/4 …第4の電極(燃料極)
18 …集電部材
18/2 …第2集電部材
180 …接触部
19 …集電部材
19/1 …第1集電部材
19a …シート部材
19b …コネクタ側集電体
19c …電極側集電体
20a …第1介在部材
20b …第2介在部材
L …距離
H1 …コネクタ側集電体の厚み
H2 …電極側集電体の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15