特許第5872960号(P5872960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872960
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】釜場の構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 19/10 20060101AFI20160216BHJP
   E21F 16/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   E02D19/10
   E21F16/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-112469(P2012-112469)
(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公開番号】特開2013-238067(P2013-238067A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛
(72)【発明者】
【氏名】浅井 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】本田 隆英
(72)【発明者】
【氏名】織田 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 靖
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−072200(JP,A)
【文献】 特開2007−105577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00〜 19/22
E21F 16/00〜 16/02
B03B 1/00〜 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側の外筒と、
外筒の中央に設置した中央筒と、
外筒の内部に着脱自在に設置する有底のらせん水路とで構成し、
らせん水路は平面視、らせん状の壁と、底板を備えた水路であり、
らせん水路の壁面の高さは、外筒の壁面の高さよりも高く設定したことを特徴とする、
釜場の構造。
【請求項2】
外側の外筒と、
外筒の中央に設置した中央筒と、
外筒の内部に着脱自在に設置する有底のらせん水路とで構成し、
らせん水路は平面視、らせん状の壁と、底板を備えた水路であり、
らせん水路の壁面の高さは、外筒の壁面の高さよりも高く設定し、
らせん水路の壁面には、水路間を貫通するスリットを開口したことを特徴とする、
釜場の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事における釜場の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設工事における釜場とは、水が集まりやすい範囲の一部を低く掘り込んだ場所をいう。
そこへ周囲の水を集め、水中ポンプを設置して水を外部へ排水する。
そのために、従来は図5に示すように、ドラム缶aを水平に半割したり、あるいは木矢板で周囲を囲んで水が溜まる空間を作り、その内部に水中ポンプbを設置して排水ホースcから排水する構造が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−72200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の釜場の構造にあっては、次のような問題点がある。
<1> 周囲から釜場に流入した砂分などによって、水中ポンプの回転羽根が摩耗し、吸引力が低下したり、故障の原因となりやすい。
<2> 釜場の内部に貯まった土砂の排除のために、ドラム缶の場合は、ドラム缶をいったん撤去し、内部の土砂を排出し、その後に再度ドラム缶を設置する、という手数を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本願の第1発明に係る釜場の構造は、外側の外筒と、外筒の中央に設置した中央筒と、外筒の内部に着脱自在に設置する有底のらせん水路とで構成し、らせん水路は平面視、らせん状の壁と、底板を備えた水路であり、
らせん水路の壁面の高さは、外筒の壁面の高さよりも高く設定したことを特徴とするものである。
また、本願の第2発明に係る釜場の構造は、外側の外筒と、外筒の中央に設置した中央筒と、外筒の内部に着脱自在に設置する有底のらせん水路とで構成し、らせん水路は平面視、らせん状の壁と、底板を備えた水路であり、らせん水路の壁面の高さは、外筒の壁面の高さよりも高く設定し、らせん水路の壁面には、水路間を貫通するスリットを開口したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の釜場の構造は以上説明したようになるから次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1> 釜場内部の排水路はらせん形であり、現場の泥水の土砂の粒径の沈降速度に合わせて、らせんの長さを決定することができる。したがって設置する現場の状況に応じてあらゆる粒径の土砂に対応することができる。
<2> 釜場の中央では泥水が越流する構造を採用したから、土砂が中央部に直接流入し難く、中央部に設置した水中ポンプの羽根を破損する可能性が低い。
<3> 周囲の外筒の壁面と中央筒とを残して、らせん水路だけを底板とともに引き上げることができる。そのために底板上に沈降した土砂を簡単に排除して、再度外筒内に設置できるので沈降土砂の除去が容易である。
<4> 本発明の釜場を一度設置すれば、外筒はそのまま残っているので釜場の周囲が崩壊することがなく、従来のように沈降土砂の排出後に再度掘削するような作業が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の釜場の構造の実施例の説明図。
図2図1の実施例の平面図。
図3図1の実施例の断面図。
図4】らせん水路を引き出した状態の説明図。
図5】従来の釜場の構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>全体の構成
本発明の釜場の構造は、外側の外筒1と、中央に設置した中央筒2と、外筒1の内部に設置する有底のらせん水路3とで構成する。
【0010】
<2>外筒
周囲の水が集まりやすいように低く掘り込んだ場所に埋設する外筒1は、上面を開放し、底部には外筒底板11を備えた有底の円筒である。
この外筒1が、掘り込んだ低い場所に設置してあるので、後述するように内部のらせん水路3を取り出しても、周囲の土砂が掘り込んだ底部に向けて崩壊してくることがない。
そのために掘り込んだ場所に外筒1を一度設置すれば、外筒1はそのまま残っているので周囲が崩壊して土砂が流れ込むことがなく、従来のように沈降土砂の排出後に再度掘削するような作業が不要である。
【0011】
<3>中央筒
外筒1のほぼ中心には、外筒1の外筒底板11に中央筒2の下端を鉛直に取りつける。
中央筒2は上面を開放した鋼製の筒体であり、外筒1の中央に鉛直に設置した場合に、中央筒2の高さは、後述するらせん水路3の壁面の高さと、ほぼ同一の高さを備えている。
この中央筒2には、その内部に水中ポンプ4を設置して排水ホース5を接続して排水するので、中央筒2の内径は、市販の水中ポンプ4の外径より大きく構成する。
【0012】
<4>らせん水路
らせん水路3は鋼板を平面視、らせん状に形成し、かつ底部には水路底板31を備えた水路である。
らせん状に形成した鋼板が、らせん水路3の壁板となる。
さらにらせん水路3の中央部分には、前記した中央筒2を設置できるだけの空間を開放する。
したがって、らせん水路3は、中央筒2を中央に立設してある外筒1の内部に、上部から落とし込んで設置することができる。
【0013】
<5>らせん水路の排水
らせん水路3の壁面にはスリット32を開設する。
このスリット32は水路と水路を貫通する窓の形状で開設する。
したがってこのスリット32の開口面積が過大であると、水が壁面間を通過してしまうので、適当な面積の開口部とする。
すると後述するように、らせん水路3を引き上げた際に、水路の中に貯まって水は、スリット32から排出でき、沈殿土砂だけを水路底板31の上に搭載した状態で引き上げることができる。
【0014】
<6>壁面の高さ
前記したようにらせん状に形成した鋼板が、らせん水路3の壁板を構成するが、らせん水路3の壁板は、外周が低く、中心に至るにしたがって高くなるように形成する。
そしてらせん水路3の最も低い最外周の壁面の高さは、外筒1の壁面の高さよりも高く、らせん水路3の最も高い中心部の壁面の高さは、外筒1の中央に立設した中央筒2の高さとほぼ同一であるように構成する。
【0015】
<7>機能
次に上記した本発明の釜場の機能を説明する。
【0016】
<8>外筒の設置
周囲から水が集まり低い位置を掘削し、外筒底板11を備えた外筒1を設置し、周囲を埋め戻す。
外筒1の中央にはすでに中央筒2を溶接して立設してある。
【0017】
<9>らせん水路の設置
次に外筒1の内部にらせん水路3を設置する。
らせん水路3は外筒1と中央筒2との間の空間に挿入した状態で設置することができる。
【0018】
<10>土砂の流入
中央筒2の内部に水中ポンプ4を設置し、排水ホース5を外部へ引き出す。
そして水中ポンプ4を駆動する。
釜場を設置した低所は、周囲の地下水や雨水が集中する場所に設置するから、周囲から継続して土砂交じりの泥水が外筒1の内に流入してくる。
【0019】
<11>土砂の沈降
外筒1の中心では水中ポンプ4によって排水をしているから、外筒1の内部へ流入した土砂交じりの泥水は中央に向けてらせん水路3を移動する。
移動しつつ、土砂をらせん水路3の水路底板31の上に沈降させ、徐々に土砂の混じる比率の低い上水が、壁面が徐々に高くなるらせん水路3を通って中央筒2に向けて移動する。
【0020】
<12>越流
泥水は継続的に周囲から外筒1の内部に流れ込むから、らせん水路3の泥水は中央に向けて押し出されて水位が徐々に上昇する。
やがて、水中ポンプ4で継続的に排水して水位の低くなっている中央筒2に至たり、その内部に向けて越流する。
越流するのはほとんどが上水だけであるから、土砂が中央筒2の内部に流入することはない。
この越流水を水中ポンプ4で排水するが、土砂粒がほとんど混入していないから、水中ポンプ4の羽根を損傷することもない。
【0021】
<13>沈降土砂の排出
らせん水路3に沈降した土砂を排出する必要がある。
その際には、水路底板31を備えたらせん水路3だけを、外筒1の内部から引き揚げる。(図4
らせん水路3の壁面には、適当な面積のスリット32が開口しているので、らせん水路3を引き上げた際にはそこから水を外部に排出することができ、水路底板31の上に土砂だけを搭載した状態で引き上げることができる。
引き上げた後にらせん水路3を裏返しにすれば、水路底板31に蓄積した土砂を簡単にらせん水路3から排出することができる。
水路底板31の上の土砂を排出したらせん水路3を、再度外筒1の内部に設置して排水を再開する。
【符号の説明】
【0022】
1:外筒
11:外筒底板
2:中央筒
3:らせん水路
31水路底板
4:水中ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5