(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
湿式電子写真装置に使用されるロール等の構成部材として、シリコーンゴム硬化物が使用されている。このシリコーンゴム組成物は、物理的強度に優れ、適度な導電性を有することが求められている。
【0003】
従来、室温硬化型シリコーンゴム組成物は、シーラントとしての使用に適することが知られているが、引張強さ、および耐溶剤性等に問題があり、その使用が制限されていた。そこで、これらの問題を解決するために、フルオロシリコーンゴムを用いることが提案されている。
【0004】
例えば、特開平2−43264号公報では、引張強さを改良したシーラントを提供するために、フルオロシリコーン重合体および強化用シリカを含む組成物が提案されている。また、特開平6−262621号公報および特表2004−505134号公報では、シーラントの耐溶剤性等を改良するために、シラノール末端フルオロシリコーンを含む組成物が提案されている。しかし、これらのシーラントは導電性を有するものではなく、あくまでもシーラントとして有用な組成物を提案するものに過ぎなかった。
【0005】
これに対し、湿式電子写真装置に用いる部材としてフルオロシリコーンゴムを使用することも提案されている。例えば、特開平11−167295号公報および特開平7−295403号公報では、湿式写真装置の金属ドラムの表面層として、導電性のフルオロシリコーンゴムを使用することが提案されている。しかし、これらのフルオロシリコーンゴムの具体的な組成等については十分に開示されておらず、その導電性、ならびに硬化後の物理的強度および表面平滑性等の特性についても、必要とされる性能を全て充足することができるものではなかった。
【0006】
また、特開2004−221071号公報では、導電性塗料または導電性接着剤において、その導電性、マイグレーションの防止等を目的として、特定の構造を有する気相法炭素繊維と、黒鉛粒子および/または非晶質炭素粒子とを含む導電性組成物用炭素質材料が提案されている。さらに、その樹脂製分としてシリコーンが例示されている。この組成物は導電性に優れるものの、硬化後の引張強さ等の物理的強度については問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、従来の室温硬化型シリコーンゴム組成物は、導電性を有する用途として使用する場合、十分な導電性と優れた物理的強度を兼ね備えることができないという欠点があった。また、硬化後の表面平滑性、耐溶剤性、および接着性についても満足できるものではなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、硬化後の優れた物理的強度と導電性を兼ね備えた硬化物を与えるための導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。また、取扱い性に優れた粘度を有し、硬化後の表面平滑性、耐溶剤性、および接着性にも優れる導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、
(A)25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサン、
(B)BET比表面積50m
2/g以上のシリカ微細粉末、
(C)カーボンブラック、
(D)グラフェン構造を有する繊維状の炭素同素体、および
(E)架橋剤
を含み、(D)成分は(A)成分100質量部に対して1.5質量部以上の量で含まれる、導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物によって達成される。
【0011】
前記(A)成分は、
HO(R
1R
2SiO)
nOH
(式中、R
1は炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、R
2のうち50〜100モル%は炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基であり、残りのR
2は炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、nは25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sとなる値である)
で表されるフルオロポリシロキサンであることが好ましく、nは100〜500の値であることが特に好ましい。
【0012】
前記(B)成分は、前記(A)成分100質量部に対して6〜50質量部の量で含まれることが好ましい。
【0013】
前記(C)成分は、前記(A)成分100質量部に対して1〜20質量部の量で含まれることが好ましい。
【0014】
前記(D)成分は、カーボンナノファイバまたはカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0015】
前記(D)成分は、前記(A)成分100質量部に対して5.0質量部以下の量で含まれることが好ましい。
【0016】
前記(E)成分は、トリケトキシモシランまたはトリアセトキシシランであることが好ましい。
【0017】
前記(E)成分は、前記(A)成分100質量部に対して1〜30質量部の量で含まれることが好ましい。
【0018】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、さらに(F)25℃における粘度が1〜900mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサンを含むことができる。
【0019】
前記(F)成分は、前記(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の量で含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、硬化後の引張強さ等の物理的強度に優れ、かつ導電性を示す導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物を提供することができる。
【0021】
また、本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、硬化後の表面平滑性、耐溶剤性、および接着性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、
(A)25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサン、
(B)BET比表面積50m
2/g以上のシリカ微細粉末、
(C)カーボンブラック、
(D)グラフェン構造を有する繊維状の炭素同素体、および
(E)架橋剤
を含み、(D)成分は(A)成分100質量部に対して1.5質量部以上の量で含まれることを特徴とする。
【0023】
(A)成分は、25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・s、好ましくは5,000〜500,000mPa・s、より好ましくは10,000〜100,000mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサンである。
【0024】
本発明の(A)成分は、25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサンであれば特に限定されないが、
HO(R
1R
2SiO)
nOH
(式中、R
1は炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、R
2のうち50〜100モル%は炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基であり、残りのR
2は炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、nは25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sとなる値である)
で表されるフルオロポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
R
1およびR
2の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、およびヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、およびフェネチル基等のアラルキル基;ならびにクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、およびノナフルオロブチルエチル基等の置換アルキル基が例示される。
【0026】
R
2のフッ素置換アルキル基は、その1つ以上の水素がフッ素で置換されたアルキル基を表し、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびヘプチル基が例示される。フッ素置換アルキル基としては、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、およびノナフルオロブチルエチル基等のパーフルオロアルキル基が例示される。
【0027】
nは25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sとなる値であるが、100〜500の値であることが好ましい。
【0028】
本発明の(B)成分は、BET比表面積50m
2/g以上のシリカ微細粉末であり、未硬化時および硬化後の組成物の物理的強度を高める働きをする。シリカ微細粉末としては、例えばヒュームドシリカ等の乾式シリカ、湿式シリカ等の合成シリカ、およびこれらの混合物が使用される。これらのシリカは表面に多量のシラノール基を有しているため、例えばハロゲン化シラン、アルコキシシラン、および各種シラザン化合物(例えばヘキサメチルジシラザン、およびテトラメチルジビニルジシラザン)等のシリル化剤により表面処理されたいわゆる疎水性シリカとして使用することもできる。なお、疎水性シリカを使用する代わりに、(A)成分のフルオロポリシロキサンとシリカ微細粉末とを混合して得られたマスターバッチを使用することも可能である。
【0029】
本発明の(B)成分のシリカ微細粉末は、BET法で測定した比表面積が50m
2/g以上であり、100〜300m
2/gであることが好ましい。比表面積が50m
2/g未満では、十分な強度特性を付与できないおそれがあるからである。
【0030】
本発明の(B)成分のシリカ微細粉末は、前記(A)成分100質量部に対して6〜50質量部の量で含まれることが好ましく、10〜20質量部の量で含まれることがより好ましい。(B)成分の量が上記範囲に含まれる場合、硬化物に十分な引張強さを与えることができる。
【0031】
本発明の(C)成分はカーボンブラックであり、硬化物に導電性を付与する働きをする。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、ガスブラック、ランプブラック、サーマルブラックおよびチャンネルブラックが例示される。なお、(A)成分のフルオロポリシロキサンとカーボンブラックとを混合して得られたマスターバッチを使用することも可能である。
【0032】
本発明の(C)成分のカーボンブラックは、前記(A)成分100質量部に対して1〜20質量部の量で含まれることが好ましく、5〜10質量部の量で含まれることがより好ましい。(C)成分の量が上記範囲に含まれる場合、硬化物を導通させ、体積抵抗率を低下させることができる。
【0033】
本発明の(D)成分はグラフェン構造を有する繊維状の炭素同素体であり、硬化物の体積抵抗率を低下させる働きをする。グラフェン構造を有する繊維状の炭素同素体は、カーボンナノファイバまたはカーボンナノチューブであることが好ましい。カーボンナノファィバのグラフェン層の配向構造は特に限定されず、プレート状構造、ヘリンボーン型構造、カップスタック型構造、およびリボン型構造が例示される。カーボンナノチューブは中空で繊維状の炭素材料を意味し、一方の端部が閉じられた円錐状を呈するカーボンナノホーンであってもよい。カーボンナノチューブのグラフェン面は単層、二層、または三層以上の多層であってもよい。気相成長炭素繊維はカーボンナノチューブの一種であり、炭素網面の結晶が年輪状に巻かれて積層した構造を有している炭素繊維であり、内部に中空部を有するものである。
【0034】
(D)成分の外径は2〜1000nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましい。また、長さは10nm〜100μmであることが好ましく、100nm〜20μmであることがより好ましい。外径および長さが上記範囲に含まれる場合、良好な表面平滑性を得ることができる。
【0035】
本発明の(D)成分のグラフェン構造を有する繊維状の炭素同素体は、前記(A)成分100質量部に対して1.5質量部以上の量で含まれることが必要であり、5.0質量部以下の量で含まれることが好ましい。(D)成分の量が上記範囲に含まれる場合、硬化物の体積抵抗率を低下させることができ、良好な表面平滑性を得ることができる。
【0036】
本発明の(E)成分は(A)成分の架橋剤であり、ケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個または4個有する。一般式:R
3aSiX
4-a(式中、R
3は炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、aは0または1である)で表されるオルガノシラン、およびその部分加水分解縮合物であるオルガノシロキサンオリゴマーが代表的である。Rの一価炭化水素基としては、R
1およびR
2で例示したものと同じものを例示することができ、Xとしては、ジメチルケトキシモ基,メチルエチルケトキシモ基などのケトキシモ基(ケトキシミノ基と称されることもあり、一般式:-O-N=CR
4R
5で示される基(式中、R
4およびR
5は同一または異なるアルキル基であり、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい)];メトキシ基、およびエトキシ基などのアルコキシ基;アセトキシ基などのアシロキシ基;N−ブチルアミノ基、およびN、N−ジエチルアミノ基などのアルキルアミノ基;N−メチルアセトアミド基などのアシルアミド基;ならびにN,N−ジエチルアミノキシ基などのN,N−ジアルキルアミノキシ基;プロペノキシ基などのアルケニロキシ基が例示される。なかでも、ケトキシモ基およびアシロキシ基が好ましい。
【0037】
(E)成分の架橋剤は、テトラケトキシモシラン、トリケトキシモシラン、トリアセトキシシランおよびこれらの混合物が好ましい。トリケトキシモシランとしては、メチルトリケトキシモシラン、およびビニルトリケトキシモシランが例示され、トリアセトキシシランとしては、メチルトリアセトキシシラン、およびエチルトリアセトキシシランが例示される。
【0038】
本発明の(E)成分の架橋剤は、前記(A)成分100質量部に対して1〜30質量部の量で含まれることが好ましい。(E)成分の量が上記範囲に含まれる場合、組成物を十分に硬化させることができ、また、優れた接着性を得ることができる。
【0039】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、さらに(F)25℃における粘度が1〜900mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサンを含むことができる。
【0040】
本発明の(F)成分の25℃における粘度が1〜900mPa・sの分子鎖末端水酸基封鎖フルオロポリシロキサンは、前記(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の量で含まれることが好ましい。
【0041】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他の任意成分として、各種の添加剤、例えば、ヒュームド酸化チタン等の補強充填剤;珪藻土、アルミノ珪酸、酸化鉄、酸化亜鉛、および炭酸カルシウム等の非補強充填剤;酸化アルミニウム、および銀粉末などの熱伝導性充填剤;ならびにこれらの充填剤をオルガノシラン、およびポリオルガノシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理したものを配合してもよい。また、必要に応じてメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどの溶媒、顔料、染料、耐熱剤、難燃剤、内部離型剤、可塑剤、ミネラルオイル、および無官能のシリコーンオイル等のシリコーンエラストマー組成物に汎用される添加剤を配合してもよい。
【0042】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、上記(A)〜(E)成分、好ましくは上記(A)〜(E)成分および(F)成分を配合した組成物、またはこれらに必要に応じて上記の各種添加剤を配合した組成物を公知の混合手段により均一に混合することにより容易に製造することができる。ここで、使用する混合手段としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー、およびプラネタリーミキサーが例示されるが、少なくとも(A)〜(E)成分を均一に混合できるものであれば特に限定されるものではない。なお、(B)シリカ微細粉末および(C)カーボンブラックは、予め、(A)成分の一部と(B)シリカ微細粉末または(C)カーボンブラックとを配合したシリカマスターバッチまたはカーボンマスターバッチを調製した後、これらのマスターバッチと残りの(A)成分および他の成分を混合することが好ましい。
【0043】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、いわゆる一成分硬化型でも二成分硬化型でもよいが、作業性の点では一成分硬化型であることが好ましい。本発明の接着剤が一成分硬化型の場合は、本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は密閉カートリッジ等の容器中に封入されて貯蔵され、使用時に当該容器から取り出して空気中に曝露した状態で使用される。これにより、一成分硬化型の本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は空気中に存在する水分によって硬化して、ゴム弾性を有するシリコーンゴムとなる。
【0044】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、JIS K 6251に規定された破断時の引張強さおよび伸びが、それぞれ、2.0MPa以上、200%以上であることが好ましい。導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物の引張強さおよび伸びがこの範囲であると、硬化物が薄い被膜等であっても十分な柔軟性と強度を有するからである。
【0045】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、5V印加時の体積抵抗率が1×10
2〜1×10
12Ω・cmであることが好ましく、1×10
5〜1×10
11Ω・cmであることがより好ましい。
【0046】
本発明の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、湿式電子写真装置に使用される中間転写体等のロールやベルト等の構成部材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、部はいずれも質量部を意味する。
【0048】
<導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の調製>
(シリカマスターバッチの作製)
25℃における粘度が約60Pa.sの両末端水酸基封鎖トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン100部をプラネタリーミキサーに投入した。次にヘキサメチルジシラザンで処理したヒュームドシリカ[日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRDX200(BET法比表面積200m
2/g)]40部を攪拌と投入を繰り返しながら10分割にて投入した。次に1333Pa以下になるようタンク内を減圧し、175℃に加熱しながら90分間攪拌した。続いて減圧レベルをキープしながら、冷却攪拌を60分間実施した。次いで攪拌を止め、窒素パージさせながら常圧に戻し、シリカマスターバッチを作成した。
【0049】
(カーボンマスターバッチ−1の作製)
25℃における粘度が約60Pa・sの両末端水酸基封鎖トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン100部とカーボンブラック(電気化学工業(株)製、デンカブラック(登録商標))12部をプラネタリーミキサーに投入し、常圧下、常温にて攪拌した。次に得られた混合物を3本ロールミルにかけ、5パスさせることによってカーボンブラックを均一分散させたカーボンマスターバッチを作成した。カーボンの分散性はグラインドメーターを用いて、JIS K5400に基づいて測定し、1μm以上は不合格とした。
【0050】
(カーボンマスターバッチ−2の作製)
カーボンブラック(電気化学工業(株)製、デンカブラック(登録商標))の部数を17部にした以外は同様の方法で、カーボンマスターバッチ−2を作製した。
【0051】
[実施例1]
25℃における粘度が約60Pa・sの両末端水酸基封鎖トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンを24.2部、カーボンマスターバッチ−1を51.3部、シリカマスターバッチを42部、直径が150nm、長さが約8μmのマルチウォールカーボンナノチューブ(気相成長炭素繊維)を2.0部、および25℃における粘度が約10mPa.sの両末端水酸基封鎖トリフルオロプロピルメチルシロキサンを6.0部、容量250ccのプラスチックボトルに投入した。これをシンキー(株)製スーパーミキサー(AR−250)に投入し、攪拌モードにて2分間混合した。底部および内面をかき落とした後、再度同じ条件で2分間混合し、ベースとした。あらかじめTECHCOM SYSTEMS社製ミックスヘッドをセットした325mLカートリッジにベース125.5部を移し、遠心分離してカートリッジ内の空気を強制的に排気したのち、真空引きしたチャンバー内にて23±2℃、相対湿度55±5%環境下で一晩放置した。
【0052】
このベース粘度を、25℃においてTAインスツルメンス社製AR−500を用いてコンティニュアスランプステップモードにて測定し、せん断速度が10(1/s)における見掛粘度を粘度とした。この結果を表1に示す。
【0053】
ベース125.5部に対して、14.7部のケトキシモシラン(ハネウェル社製:商品名OS−4015:テトラキス(メチルエチルケトキシモ)シランとビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シランの混合物)を8インチラムロッドに投入した後、前述のカートリッジに取り付け、パッケージキットを作成した。これをTECHCOM SYSTEMS社製TECKKIT MIXER TS6500に装着して密閉下にてベースとオキシムシランを5分間混合した。混合後、ラムロッドを外してその箇所にノズルをとりつけ、シーラントコーキング用ガンにセットした。2mm厚シート状になるよう打設して、23±2℃、相対湿度55±5%で2週間硬化させた後にJIS K 6249に基づいて測定したゴム物性を表2に示す。
【0054】
[実施例2および比較例1〜6]
表1の組成で組成物を調製した以外は実施例1と同様にして、粘度およびゴム物性を評価した。結果を表1および表2に示す。なお、表1中の「展開後組成」とは、シリカマスターバッチおよびカーボンマスターバッチに含まれる成分を、それぞれ両末端水酸基封鎖トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンとヒュームドシリカ、および両末端水酸基封鎖トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンとカーボンブラックのそれぞれの成分とした場合の組成を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
<硬化物の評価方法>
(1)タックフリータイム
テフロン(登録商標)シート上に未硬化の試料を平らになるように置き、エチルアルコールで清浄にした指先でゴム表面に触れた。時間経過とともに異なる場所でそれを繰り返し、指先に試料が付着しなくなるまでの時間を計測した。
【0057】
(2)硬さ
JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータを用いて測定した。
【0058】
(3)引張強さおよび伸び
JIS K 6251に規定の方法により、破断時の引張強さおよび伸びを測定した。
【0059】
(4)体積抵抗率
厚さ2mmのゴムシートをSUS304製金属板に乗せ、この上に直径50mmのSUS304製円筒電極を置いた。金属板および電極を日置電機株式会社製ハイテスター3222に結線して5V電圧印加したときの体積抵抗率を測定した。電極をゴムシートに載せてから1分後の体積抵抗率を読み取り、5回測定した平均値とした結果を表2に示す。
【0060】
(5)アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)との接着性および耐溶剤性
NBR製スポンジを覆うように室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物をコーティングして、23±2℃、相対湿度55±5%の環境にて2週間かけて硬化させた。このサンプルをイソパラフィン系溶剤(エクソンモービル社製、アイソパーG)中に浸漬した。浸漬開始から1週間後の膨潤度合い、およびNBRとの接着性を、目視およびコーティングを爪により剥がすことにより評価した。膨潤度合いはコーティング層の長さ方向の寸法変化で評価し、膨潤度合いが5%以下であり、コーティング層に亀裂や剥離が認められなかったサンプルを良好と判断した。
【0061】
(6)表面平滑性
室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物100部をメチルイソブチルケトン(MIBK)100部に均一溶解させた後、テフロン(登録商標)シート上にコーティングし、室温下でドラフト内で1日放置し、MIBKを揮発させた。次いで23±2℃、相対湿度55±5%環境にて2週間かけて硬化させた。株式会社ハイロックス社製デジタルマイクロスコープKH−7700を用いて表面観察を実施した。1000μm×600μm範囲中の凸部分の数をカウントし、10μm以上の高さの突部分の数が10個以上のものの表面性を不良、5個以上のものをやや良好、5個未満のものを良好とした。
【0062】
【表2】
【0063】
表2から明らかなように、実施例1および2の導電性室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物を硬化した場合には、適度な体積抵抗率を有し、硬さ、引張強さ、接着性、耐溶剤性、および表面平滑性のいずれも良好な硬化物が得られた。気相成長炭素繊維を含まない比較例1および4、ならびにその配合量が少ない比較例5の室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、導電性を示さなかった。また、シリカの配合量が少ない比較例2および3の室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、引張強さが小さく、物理的強度が劣っていた。さらに、気相成長炭素繊維の配合量の多い比較例6の室温硬化型フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、表面平滑性が劣っていた。