(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チューブポンプは、前記希釈液供給チューブから押し出される希釈液の量を調節する希釈比調整手段を備えて成ることを特徴とする前記請求項1に記載の定量サンプリング装置。
共通移動押圧部材が希釈液供給チューブ及び希釈生体液導出チューブそれぞれを押し潰すことのできる複数の共通ローラを備え、前記希釈比調整手段は、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材に含められ、かつ前記共通ローラよりも外径の小さい細径部を備え、この細径部により希釈液供給チューブを閉塞しない程度に押圧するように構成された細径ローラである前記請求項2に記載の定量サンプリング装置。
共通移動押圧部材が希釈液供給チューブ及び希釈生体液導出チューブそれぞれを押し潰すことのできる複数の共通ローラを備え、前記希釈比調整手段は、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材に含められ、かつ付勢部材により前記希釈液供給チューブを押圧する程度を調節可能な押圧力可変ローラである前記請求項2又は3に記載の定量サンプリング装置。
【背景技術】
【0002】
生体成分測定装置等に用いられる定量サンプリング装置は、生体成分測定用のセンサ等に生体液のサンプルを供給する。通常、センサで生体液のサンプルを測定するだけならサンプリング装置の定量性はそれほど問題にはならない。
【0003】
しかし、サンプルを希釈液等で希釈しながらサンプリングする場合は、希釈液とサンプルとの流量の変化でサンプル中に含まれる生体成分の見かけの濃度が変化する。このような測定誤差を無くすため、生体成分測定装置等に用いられる定量サンプリング装置のポンプには定量性のあるポンプが用いられている。定量ポンプとしては、容積タイプのポンプが一般的であり、特に、生体成分測定装置等に用いられる定量サンプリング装置用のポンプとしては、定量性、少容量対応、衛生管理上の配慮等からチューブポンプがよく用いられている。例えば、特許文献1には、カテーテルに定量的に希釈液を送液し、そのカテーテルから血液等の生体成分を希釈液ごと定量的に吸入する生体成分測定装置用の定量サンプリング装置が開示されている。この定量サンプリング装置には、チューブポンプの一種であるローラポンプが好適に使用できるとされている。その他にも、生体成分測定装置のサンプル採取用に定量ポンプが利用されている例として、特許文献2及び特許文献3に記載された発明を挙げることができる。特許文献2及び特許文献3では、定量的にサンプルを採取できる人工膵臓装置、及び血液中の血糖値モニタが開示されている。
【0004】
チューブポンプは、弾性チューブを押圧しながらしごくことによりチューブ内の流体を移送する装置であり、ローラポンプ、しごきポンプ、ペリスタルティックポンプ、蠕動ポンプ等と呼ばれている類似のポンプもあり、これらも含めてチューブポンプと呼ぶ。これらのチューブポンプはいずれも、基本的な同じ原理にてポンプ機能を発揮する。
【0005】
さらに詳述すると、あるチューブポンプは、駆動源例えばモータにより回転することのできる回転軸と、その回転軸に放射状に取り付けられた複数の、かつ同じ長さの軸体と、前記軸体それぞれの先端部に回転自在に取り付けられたローラと、少なくとも2個の隣接するローラに架け渡され、かつ液体を流通させることのできる内部空間を有するように形成され、かつ押し潰すことのできる程度の弾力性を有する素材で作成されたチューブと、前記チューブを前記ローラにより押し潰すことができるように配置された押え板とを備える。
【0006】
このチューブポンプにおいては、複数のローラそれぞれは回転軸の回転によって前記回転軸を中心とする円形の軌跡を描いて回動する。前記押え板の前記ローラに臨む面は円弧を描くような凹面に形成される。押え板の凹面側にチューブが配設される。軸体の先端部に取り付けられているローラは、前記押え板の凹面にチューブを押さえつけてそのチューブを押しつぶすように、前記押え板の凹面に沿って回動移動することができるように、配置される。この押え板の凹面の、ローラが回動する方向における長さは、あるローラが押え板に対してチューブを押し付けてそのチューブを押し潰している位置から、そのローラに隣接する他のローラが押え板に対してチューブを押し付けてそのチューブを押し潰している位置までの円弧状長さを少なくとも、必要とする。押え板の凹面に、少なくとも2個のローラがチューブを押し潰しているので、チューブの内部空間は2個のローラによって閉塞空間が形成されることになる。この閉塞空間はポンプ室とみることができる。
【0007】
このような従来のチューブポンプは、以下のように作用する。説明の便宜上、複数のローラが時計方向に円軌道を描いて回動するものと、する。初期状態においては、押え板の凹面に対して2個のローラがチューブを押し付け、チューブを押し潰しているとする。2個のローラを、下流側のローラ(L)及び上流側のローラ(U)と便宜上称することがある。この状態を出発状態にして、ローラが時計方向に回動すると、上流側及び下流側の2個のローラ(L、U)は、押え板に対してチューブを押し付け、かつ押し潰しているチューブ上を、移動する。2個のローラ(L、U)は軸体の先端部に回転可能に取り付けられているから、ローラはチューブ上を回転しつつその押し付け位置を変更する。ローラの位置変更によりチューブにおける押し潰された部位が下流側に変更される。下流側に位置するローラについても上流側に位置するローラと同様にして、チューブを押し付ける位置を変更し、これによって下流側のローラがチューブを押し付ける位置を変更する。このようにして、2個のローラが押え板に対してチューブを押し潰す位置を変更しつつ、かつ2個のローラが円軌道を描きつつ回転軸を中心にして回転する。
【0008】
2個のローラが回転するうちに、下流側のローラ(L)が押え板の下流側端部から離れると、そのローラ(L)はチューブを押し潰すために必要な押え板が存在しないことにより、そのローラ(L)に接するチューブは押し潰されていた状態から押し潰されていない状態になり、その結果、そのローラが押え板に対してチューブを押し付けていた状態が維持されているときには2個のローラによって形成されていた閉塞空間が開放空間となる。このように開放空間が形成された時点における、下流側のローラ(L)がチューブに接触している部位ではチューブが押し潰されていないので、下流側のローラ(L)がチューブに接触している部位は、チューブ内部を開放している部位、つまり開放部位であると言える。
【0009】
一方、回転軸の回転により上流側のローラ(U)は押え板の凹面に沿って時計方向にチューブを押し潰しながら移動して行く。そうすると、チューブの内部における閉塞空間に存在していた液体が時計方向に移送されていく。そして、下流側のローラ(L)が押え板とでチューブを押し潰している位置からさらに離れて押え板でチューブを押し潰すことのできない位置に至ると、チューブの閉塞空間が開放空間になり、さらに、上流側のローラ(U)により押し潰されている位置が時計方向に移動すると、上流側のローラ(U)によりチューブ内の液体が時計方向に押されて行く。
【0010】
上流側のローラ(U)が押え板と協働してチューブを押し潰している位置からさらに時計方向に回動して押え板とでチューブ押し潰すことのできない位置にその位置を変更した時点で初期状態におけるチューブ内の閉塞空間内に貯留されていた液体が吐出されることになる。
【0011】
初期状態において押え板に対してチューブを押し付けてそのチューブをその部位にて押し潰していた2個のローラ(L、U)それぞれを、上流側のローラ(U)及び下流側のローラ(L)と称していた。チューブポンプには複数のローラが設けられているので、上述した上流側のローラ(U)及び下流側のローラ(L)が果たした機能及び作用が、任意の隣接する二つのローラについても奏される。
【0012】
その結果として、ローラが押え板に対してチューブを押し潰しつつローラが回動することにより、隣接する二つのローラ(L、U)が押え板に対してチューブを押し潰すことにより形成されていた閉塞空間に充填されていた液体が、ローラの回動とともにチューブ内を押し流されていく。
【0013】
チューブポンプにおいては、チューブの内径と複数のローラの回転速度を一定にしておけば、一定流量で流体を移送することができるはずである。
【0014】
このようなチューブポンプは、構造の単純さ、精密な定量性、信頼性、チューブの交換容易性等の利点があると期待される。特に、ローラポンプは小流量で、吐出圧が低く、流量の定量性が要求され、流体の流路を頻繁に交換すべき用途で好適に利用される。誤作動による高圧発生の恐れもなく、医療現場等で用いられるカテーテル、注射器等の薬液投与用の装置、尿、血液、リンパ液、その他の体液等の採取・排出装置等の医療支援装置等や光学分析等に用いる微小量サンプル採取・導入装置等に適用するのに好適なポンプとされている。さらに、最近ではプリンタ用のインク供給装置や精密機械用のマイクロマシンとしての定量ポンプ等にも用途が広がっている。また、ローラポンプの改良も多数提案されている。例えば、特許文献4及び特許文献5には、チューブの耐久性を向上させるためのポンプの構造が提案されている。特許文献6には小型化を目指したローラポンプが開示されている。特許文献7にはプリンタ等に使用するインクジェット記録装置用のローラポンプが開示されている。さらに、上述のローラポンプとは構造の異なったタイプのローラポンプ等も各種提案されている(特許文献8)。
【0015】
人口膵臓装置等に使用される定量サンプリング装置により採取される血液等の生体液につき、患者負担を軽減するために生体液の採取量はできるだけ少なくすることが要請される。また、人口膵臓装置等に使用される定量サンプリング装置では採取される生体液が少量であるから生体液中の生体成分を測定するためには希釈液で生体液を希釈しなければならず、したがって、前記人口膵臓装置及び生体成分測定装置等に使用される定量サンプリング装置にあっては、採取する生体液の量と生体液及び希釈液の合計量との比である希釈比を厳密に管理する必要がある。
【0016】
定量サンプリング装置における希釈比についてさらに説明する。
【0017】
患者から採取する生体液の量たとえば血液量は、通常の場合、たとえば1〜3mL/hrである。このように患者から採取する生体液量は、患者自身による血液再生量を考慮することによりたとえば前記したような少量になるのである。
【0018】
チューブポンプを使用した定量サンプリング装置には、希釈液を移送するチューブと生体液及び希釈液の混合液を移送するチューブとが装備されている。このようなチューブ及びチューブポンプを備えた定量サンプリング装置における希釈比は、たとえば以下の式にて決定される。
希釈比=(希釈液量と生体液量との混合液の導出量)/(希釈液量と生体液量との混合液の導出量−希釈液量)
なお、上記式における量は単位時間における量である。
【0019】
希釈液を移送するチューブ及び生体液と希釈液との混合液を移送するチューブそれぞれの内径は0.5mm〜0.8mmといった極めて小さな値の範囲にある。
【0020】
定量サンプリング装置における希釈比を正確に定めるには、チューブポンプにより移送される液量を正確にし、そのためにはチューブの内径を厳密に管理しなければならない。
【0021】
ところが、前記のようなきわめて小さな内径を有するチューブであって長手方向(軸線方向)に沿って常に一定の内径を有するチューブは至難である。通常はチューブの内径はその長手方向に沿って微妙に変化している。
【0022】
たとえばチューブポンプを使用して希釈比を7にすると設定した場合に、希釈液を移送するチューブの内径が0.7mmであるとすると、希釈液と生体液との混合液を移送するチューブの内径が0.756mmになる(なお、計算の手順は省略する。以下においても同様)。前記したように製造されるチューブの内径が微妙に変化しているので、内径が0.756mmであるチューブを選択することは現実的ではない。実際には、チューブの内径の公差をたとえば0.03に設定するとすれば、公差が−0.03であるときのチューブを選択してこれを希釈液と生体液との混合液を移送するチューブに採用するとそのチューブの内径が0.73mmになる。そして、内径が0.7mmのチューブを、希釈液を移送するチューブとし、内径が0.73mmであるチューブを、希釈液と生体液との混合液を移送するチューブとすれば、それらチューブを使用したときの希釈比は5倍になる。公差が+0.03であるときのチューブを選択してこれを希釈液と生体液との混合液を移送するチューブに採用するとそのチューブの内径が0.79mmになる。そして、内径が0.7mmのチューブを、希釈液を移送するチューブとし、内径が0.79mmであるチューブを、希釈液と生体液との混合液を移送するチューブとすれば、それらチューブを使用したときの希釈比は14倍になる。希釈比をたとえば7にするという目標がありながら、製造されるチューブの内径がその軸線方向に沿って微妙に変化するので、希釈比を一定に維持するにはきわめて厳格なチューブ内径の管理せざるを得なかった。
【0023】
したがって、従来の定量サンプリング装置にあっては、チューブポンプに使用されるチューブとして安価な材料を使用するにしても希釈比を一定にするために、採用されるチューブの内径を厳密に選定しなければならないという品質管理上のコストが大きくかかっていた。換言すると、希釈比を一定にするために必要とされる内径を有するチューブが選定される一方、選定されなかったチューブは廃棄せざるを得なかったのである。これはチューブポンプを有する定量サンプリング装置における製造上の大きな問題点である。
【0024】
一方、チューブポンプを組み込んだ定量サンプリング装置を有するたとえば人口膵臓装置においては、患者毎にチューブを交換しなければならない。ある患者に使用した人口膵臓装置をそのまま他の患者に使いまわすことは、絶対的に禁止される。したがって、ある患者に使用した人口膵臓装置を他の患者に使用するときには、チューブポンプに組み込まれているチューブを新品のチューブに交換しなければならない。
【0025】
前述したようにチューブポンプ用に製造されるチューブはその内径が一定になるように品質管理がなされているとはいうものの、チューブ内径の公差を相当に小さなたとえば±0.03に設定したとしても、そのような公差の範囲内で選択されるチューブを新たなチューブとしてチューブポンプに組み込むと、希釈比を7倍に設定しても前記したように希釈比が最低5倍から最大14倍にまでバラついてしまう。
【0026】
したがって、チューブポンプに適用されるチューブを交換するごとに校正をせざるを得なくなる。なぜなら、チューブポンプに使用されるチューブを交換した後に校正をすることなくそのチューブポンプを組み込んだ人口膵臓装置を新たなる患者に適用すると、インスリンを多く投与し、あるいは少なく投与するといった事態を招来してきわめて危険であるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
この発明は、回転軸を共有して連動する複数の押圧部材により複数のチューブがしごかれることにより複数のチューブ内の液を移送するマルチポンプを利用した定量サンプリング装置において、
従来のチューブポンプにおけるのと同様にチューブ内径の厳密な管理をするにもかかわらず従来においては設定される希釈比のバラつきが生じていたという製造上の問題点を解決し、さらにはチューブポンプにおけるチューブの交換を行っても校正の必要性のない定量サンプリング装置、このサンプリング装置を用いた生体成分測定装置及び人工膵臓装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この発明は、チューブポンプにおいて、ローラ等によって扱かれるチューブの内容積であるポンプ室容積を変化させればチューブ内径が一定であっても流量を変化させられるという着想に基づき、チューブが扱かれる区間内にて、押圧部材が異なる区間を設けることにより高精度で一定の吐出量ないし希釈率が得られるようにしたことを特徴とする。
【0030】
すなわち前記課題を解決するための手段は、
(1) 希釈液供給流路により供給される希釈液で、採取された生体液を、希釈してなる希釈生体液を希釈生体液導出流路へ導出するカテーテルと、
前記希釈液供給流路に希釈液を供給する希釈液供給チューブと前記希釈生体液導出流路から供給される希釈生体液を受け入れる希釈生体液導出チューブとを同時に押し潰してしごくことにより希釈液及び希釈生体液を押し出す複数の共通移動押圧部材と、複数の前記共通移動押圧部材を回転させる回転軸に支持され、かつ前記共通移動押圧部材間に配置され、前記希釈液供給チューブを押圧する希釈液供給チューブ用の移動押圧部材とを有するチューブポンプとを備え、
前記希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとが、長尺のチューブから隣り合うようにして切り出された一対のチューブであることを特徴とする定量サンプリング装置であり、
(2) 前記チューブポンプは、前記希釈液供給チューブから押し出される希釈液の量を調節する希釈比調整手段を備えて成ることを特徴とする前記(1)に記載の定量サンプリング装置であり、
(3) 共通移動押圧部材が希釈液供給チューブ及び希釈生体液導出チューブそれぞれを押し潰すことのできる複数の共通ローラを備え、前記希釈比調整手段は、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材に含められ、かつ前記共通ローラよりも外径の小さい細径部を備え、この細径部により希釈液供給チューブを閉塞しない程度に押圧するように構成された細径ローラである前記(2)に記載の定量サンプリング装置であり、
(4) 共通移動押圧部材が希釈液供給チューブ及び希釈生体液導出チューブそれぞれを押し潰すことのできる複数の共通ローラを備え、前記希釈比調整手段は、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材に含められ、かつ付勢部材により前記希釈液供給チューブを押圧する程度を調節可能な押圧力可変ローラである前記(2)又は(3)に記載の定量サンプリング装置である。
【0031】
前記課題を解決するための他の手段は、
前記(1)から(4)までの何れか一項に記載した定量サンプリング装置を備えた生体成分測定装置である。
【0032】
前記課題を解決するためのその他の手段は、
前記(5)に記載の生体成分測定装置を血糖値測定装置として備えた人工膵臓装置である。
【発明の効果】
【0033】
この発明に係る定量サンプリング装置においては、共通移動押圧部材と希釈液供給チューブ用の移動押圧部材とにより希釈液供給チューブがしごかれることにより、共通移動押圧部材と希釈液供給チューブ用の移動押圧部材との間隔により決定される所定量Aの希釈液がカテーテルに供給される。
【0034】
一方、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材によって希釈生体液導出チューブはしごかれずに共通移動押圧部材によって希釈生体液導出チューブがしごかれることにより共通移動押圧部材の間隔により決定される所定量Bの希釈生体液がカテーテルから希釈生体液導出流路へと導出され、ポンプから排出される。
【0035】
希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとは長尺の1本のチューブから隣り合わせになるように切り出されてなるから、希釈液供給チューブの内径と希釈生体液導出チューブの内径とが同一になっている。
【0036】
したがって、希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとの内径が同じであるから、前記所定量Aと前記所定量Bとで決まる希釈割合で希釈された希釈生体液を調製することができる。
【0037】
よって、前記(1)に記載の構成を有する発明によると、希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとが同じ内径を有すること、及び共通移動押圧部材及び移動押圧部材によるしごき作用とによって、所定の希釈倍率の希釈生体液を所定量サンプリングすることができる。一方、このようにして希釈液供給用と希釈生体液導出用とに同一内径のチューブを使用できることから、チューブの取り違え等の操作ミスを完全に回避できるだけでなく、同一のチューブを必要な長さに切断して使い分けることにより、チューブ内径に少々の寸法誤差があったとしても安定して精度の高い希釈倍率が得られるという利点もある。さらに、チューブ内径を精密に測定し及び確認する必要がないので、そのための設備及び作業を省くことができ、すなわち省力化及び低コスト化を図ることもできる。
【0038】
前記(2)に係るこの発明の定量サンプリング装置においては、希釈比調整手段を備えている。この希釈比調整手段により、移動押圧部材が希釈液供給チューブを押圧する程度を可変することにより、共通移動押圧部材と他の共通移動押圧部材とで希釈液供給チューブを2点で押し潰すことにより形成される希釈液供給チューブの内部空間の容積が可変されることになる。希釈液供給チューブの内部空間の容積が可変されると、希釈液供給チューブにより押し出される希釈液の供給量が変更される。希釈生体液導出流路から導出される希釈生体液は実質的に一定量であるから、カテーテル内に供給される希釈液の量を変更することにより、カテーテル内に吸引される生体量も可変されることになり、故に生体液を希釈液で希釈するときの希釈比が調整されることになる。その結果、所定の希釈率に調節された量の希釈生体液が希釈生体液導出流路から導出されることができる。
【0039】
前記(3)に係るこの発明の定量サンプリング装置における希釈比調整手段は、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材におけるローラが、前記共通ローラよりも外径の小さい細径部を備え、この細径部により希釈生体液導出チューブを閉塞しない程度に押圧するように構成して成るので、直径の異なる希釈液供給用ローラを複数種類用意することにより、所望の希釈倍率の希釈生体液を得ることができる。
【0040】
前記(4)に係るこの発明の定量サンプリング装置においては、希釈比調整手段は、共通ローラ間に配設され、付勢部材により希釈生体液導出チューブを押圧する程度を調節可能な押圧力可変ローラを有する。これにより、希釈生体液供給チューブを押圧する程度を調節することにより、希釈液供給量を調節することができ、その結果、調節された量の希釈生体液が希釈生体液導出チューブから排出されることができる。
【0041】
前記(5)に係るこの発明の生体成分測定装置及び前記(6)に係るこの発明の人工膵臓装置は、カテーテルへの希釈液の供給量及びカテーテルから希釈生体液を導出する導出量の定量性がよい。従来のようにチューブ径が違う希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとの径および組合せを厳密に管理することで希釈比を安定にする方法は、径がわずかに変動するだけで大きな希釈比の変動をおこしやすい。これに比して、希釈液供給用ローラが押す容積分が生体液量を決定する本考案の方法は、チューブ内径の変動に影響されにくく非常に希釈比の安定が得やすく、したがって、採取試料の希釈比が一定に維持されるという利点を備えている。特に、チューブ交換による影響を受け難く、採取試料の希釈比の安定性に優れているので、人工膵臓装置及びその血糖値測定に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
この発明の定量サンプリング装置の一形態は、希釈液供給流路により供給される希釈液で、採取された生体液を、希釈してなる希釈生体液を希釈生体液導出流路へ導出するカテーテルと、
前記希釈液供給流路に希釈液を供給する希釈液供給チューブと前記希釈生体液導出流路から供給される希釈生体液を受け入れる希釈生体液導出チューブとを同時に押し潰してしごくことにより希釈液及び希釈生体液を押し出す複数の共通移動押圧部材と、
複数の前記共通移動押圧部材を回転させる回転軸に支持され、かつ前記共通移動押圧部材間に配置され、前記希釈液供給チューブを押圧する希釈液供給チューブ用の移動押圧部材とを有するチューブポンプとを備え、
前記希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとが、長尺のチューブから隣り合うようにして切り出された一対のチューブであることを特徴とする。
【0044】
以下において、前記共通移動押圧部材を第1移動押圧部材と称し、希釈液供給チューブ用の移動押圧部材を第2移動押圧部材と称することがある。
【0045】
この発明の定量サンプリング装置は、サンプル採取装置であるカテーテルに希釈液を供給することにより、カテーテルで採取した生体液を希釈液で希釈し、生体液を希釈液で希釈してなる生体希釈液をカテーテルから導出する。カテーテルへの希釈液の供給やカテーテルからの希釈生体液の導出にはチューブポンプを採用している。このカテーテルへ希釈液を供給するために用いられる希釈液供給チューブと、カテーテルから希釈生体液を導出するために用いられる希釈生体液導出チューブとは、長尺のチューブから隣り合うようにして切り出された一対のチューブであることにより、同一の内径を有している。
【0046】
通常は、これらのチューブポンプは主要な移動押圧部材を共有している。このようにふたつ以上のチューブポンプが移動押圧部材の一部を共有している場合、このふたつ以上のチューブポンプはまとめてマルチポンプと呼ばれている。この発明においては、第1移動押圧部材が希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとをしごくので定量サンプリング装置はマルチポンプを有する。
【0047】
以下に説明する具体的な構成においては、前記移動押圧部材としてローラを備えたローラポンプをチューブポンプとして適用しており、前記の第1移動押圧部材、第2移動押圧部材は、それぞれ共通ローラ、希釈液供給用ローラと称することがある。
【0048】
この発明の定量サンプリング装置の全体構成を説明する。
【0049】
図1には、この発明の定量サンプリング装置の概略説明図を示した。この態様における定量サンプリング装置10は、例えば軸線方向に沿って同一内径を有するチューブである希釈液供給チューブと軸線方向に沿って同一内径を有し、前記希釈液供給チューブの内径と同じ内径を有する希釈生体液導出チューブとを備えたふたつのローラポンプからなるマルチポンプ7を備えている。
【0050】
このような、希釈液供給チューブの内径と同じ内径を有する希釈生体液導出チューブを得るには、たとえば長尺のチューブから所定長さの1本のチューブを切り出し、次いでその1本のチューブを切断して2本のチューブにし、2本のチューブの内の一方のチューブを希釈液供給チューブとし、他方のチューブを希釈生体液導出チューブとするのが良い。
【0051】
ひとつのローラポンプは希釈液供給用のポンプで、もうひとつのローラポンプは希釈生体液導出用のポンプである。この態様の定量サンプリング装置10では、希釈液タンク14からマルチポンプ7により単位時間あたり所定量の希釈液を、希釈液供給流路18を通して体液採取器であるカテーテル12に導入する。
【0052】
カテーテル12は生体液、例えば血液を採取し、カテーテル12により採取された生体液は希釈液供給流路18を通して導入された希釈液とともにマルチポンプ7により希釈生体液導出流路17を通して吸引される。この際、カテーテル12に供給される希釈液の流量よりも、吸引される希釈液と生体液とを合わせた希釈生体液の流量のほうが多くなるようにマルチポンプ7におけるそれぞれのポンプの流量比が設定されている。
【0053】
このようにして、血液はカテーテル12中で希釈液により希釈され、希釈生体液としてマルチポンプ7により、定量サンプリング装置10の外部にあるセンサ13に導かれ、そのセンサ13により生体成分が測定される。具体的には、そのセンサ13が例えば血糖値センサであればその血糖値センサで血糖値が測定される。
【0054】
生体液中の生体成分を測定する一連の生体液測定操作が終了したら、生体液の採取を停止し、例えば希釈液で希釈生体液導出流路17内を洗浄してからマルチポンプ用のチューブを取り外し、別途準備したマルチポンプ用のチューブに交換する。
【0055】
この際、交換用に準備するマルチポンプ用のチューブは、交換するべき希釈液供給チューブ及び希釈生体液導出用チューブを切り出したもとのチューブと同じチューブから所定長さの1本のチューブを切り出し、次いでその1本のチューブを切断して2本のチューブにし、2本のチューブの内の一方のチューブを交換用の希釈液供給チューブとし、他方のチューブを交換用の希釈生体液導出チューブとするのが良い。交換用の希釈液供給チューブと交換用の希釈生体液導出チューブとは共に同じ内径を有し、しかも交換前の希釈液供給チューブ及び希釈生体液導出チューブと同じ内径を有する。したがって、チューブを交換しても交換前後において同じ希釈比で希釈生体液を導出することができ、センサでの測定の精度も保ち易く、再度校正をする必要もなくなる。
【0056】
図2には、この発明の定量サンプリング装置を一体化して備えている態様の生体成分測定装置の概略説明図を示した。この態様における生体成分測定装置11における定量サンプリング装置は、上述の定量サンプリング装置と同様、軸線方向に沿って同じ内径を有するとともに隣接するチューブの内径がいずれも同じ内径である複数のチューブを有するローラポンプからなるマルチポンプ7を備えている。
【0057】
さらに、この態様の生体成分測定装置11では、定量サンプリング装置に加えて校正液供給システム及びサンプル測定システムを備えている。
【0058】
サンプル採取については上述の定量サンプリング装置と同様であり、サンプル測定システムはセンサ13、排液流路21及び排液タンク16からなっている。そして、サンプル測定時は上記と同様に、希釈生体液がマルチポンプ7によりセンサ13に導入されて血糖値等が測定される。
【0059】
この態様の生体成分測定装置11のマルチポンプ7は3つのローラポンプを備えており、それぞれのローラポンプは、軸線方向に沿って同じ内径を有し、3つのローラポンプにおけるそれぞれのチューブは、互いに同じ内径を有することが好ましい。そして、センサ13の校正をする際には切替弁20を切り替えて、希釈生体液に替えて校正液をセンサ13に導入してセンサの校正を行う。センサ13の校正の場合も希釈生体液の流量と校正液の流量との比率が一定であることが望ましく、この態様の生体成分測定装置においては、マルチポンプ7のチューブを交換しても、上述のようにマルチポンプ7を構成するそれぞれのローラポンプに対し同じ製造ロットのチューブを使用すれば、容易にそれぞれの流路に対応する流量の比率を一定にすることができる。
【0060】
この発明の定量サンプリング装置に備えられたローラポンプの形態例について
図12を参照にしながら説明する。
図12は希釈生体液導出用のローラポンプと希釈液供給用のローラポンプとを備えたマルチポンプの説明用斜視図である。
【0061】
この発明の定量サンプリング装置に備えられたローラポンプは、
図12に示すように希釈液供給用のローラポンプと希釈生体液導出用のポンプとが共通ローラ3a,3b,3c,3dを共有して連動する所謂マルチポンプであり、それぞれのローラポンプは、円盤状の支持体5により回転軸と平行に支持され回転軸の周囲に配置された複数の共通ローラ3a,3b,3c,3dが、回転軸を中心に回転し、回転する共通ローラ3a,3b,3c,3dの回転面の外側に設けた円弧状の押さえ板2の内面の円弧に沿って配置した弾性を持つ希釈生体液導出チューブ8と希釈液供給チューブ9を閉塞するように押さえ板2と協働して押さえつけながらしごいて、チューブ内の流体を移送する。前記希釈生体液導出チューブ8と希釈液供給チューブ9は、それぞれ前出の
図1または
図2に示した希釈生体液導出流路17、希釈液供給流路18に接続するポンプ要素としてのチューブである(以下、それぞれ単に「チューブ」と称することがある。)。
【0062】
チューブ9を押さえつけている希釈液供給用のローラポンプは、チューブ内部を完全に閉塞させながらチューブ9をしごく複数の共通ローラ3a,3b,3c,3dのほかに、共通ローラ3a,3b,3c,3dと同一の支持体5に支持されたローラであって、共通ローラ3a,3b,3c,3dと同時に回転し、ローラとの当接部におけるチューブ9の内部を完全に閉塞させるようにチューブ9を押さえつけてしごく希釈液供給用ローラ3eを備えている。一方、チューブ8を備えた希釈生体液導出用のローラポンプは、希釈液供給用のローラポンプと共通ローラ3a,3b,3c,3dは共有しているが、希釈液供給用ローラ3eにより押さえつけられることはなく、通常のローラポンプと同様の形態をしている。
【0063】
この発明の定量サンプリング装置に使用されるマルチポンプでは、マルチポンプを形成するそれぞれのローラポンプにおけるチューブの内径を同じにしておく。そして、ローラポンプのチューブ交換時に新たに装着されるチューブすなわち希釈液供給用チューブと希釈生体液導出用チューブとが、同じ長尺状のチューブから隣り合わせの関係にあるように切り出された一対のチューブであるようにすると、切り出された一対のチューブすなわち希釈液供給用チューブの内径と希釈生体液導出用チューブの内径とが同一になる。
【0064】
隣接している関係となるように切り出された一対のチューブをマルチポンプ用のチューブとして取り替えれば、取り替え前のチューブとは内径が多少異なっていても、取り替えられたチューブ相互の内径のばらつきは小さい。このため、マルチポンプにおけるそれぞれのローラポンプの吐出流量はそれぞれ変化しても、チューブ取り替え後のそれぞれのローラポンプの吐出流量比はほとんど変わりがない。このようにしてチューブを取り替えても吐出流量比に変化のないマルチポンプとすることができる。
【0065】
そうすれば、この発明の定量サンプリング装置は、サンプルの希釈比等の流量比を一定に保つことができる。チューブには製造時等の内径に誤差があり、特に頻繁に交換をする機会の多い医療用のマルチポンプなどでは、経済的理由のため比較的内径の誤差の大きいチューブを使用せざるを得ない場合が多い。この発明で使用されるような弾性のあるチューブは、比較的安価に製造しようとすると、内径の誤差は避けられないが、長尺状のチューブから隣り合わせになるように切り出された一対のチューブは内径が同じであるから、希釈比を一定に維持することができる。
【0066】
それ故、この発明の定量サンプリング装置は、希釈液の供給量や生体液の採取量の定量性がよい。さらに、チューブポンプを組合せたマルチポンプのチューブ取り替えに際しての各チューブポンプの流量比の安定性により、採取試料の希釈比の安定性、校正液等との流量比の安定性等の利点を備えている。特に、チューブ交換による影響を受け難く、採取試料の希釈比の安定性に優れており、好適な定量サンプリング装置として血糖値測定装置等の生体成分測定装置用に利用できる。
【0067】
この発明の定量サンプリング装置に備えられたローラポンプの形態例について
図3〜6、及び
図12を参照にしながら説明する。
【0068】
この発明の定量サンプリング装置の一形態として、希釈生体液導出用のローラポンプと希釈液供給用のローラポンプとで構成されるマルチポンプの内、希釈生体液導出用のローラポンプは通常のローラポンプの形態とし、希釈液供給用のローラポンプが特別の構造をしている場合について説明する。まず、希釈生体液導出用のローラポンプの作動機構について説明する。
【0069】
図3,4は希釈生体液導出用のローラポンプの作動状況説明図である。
【0070】
図3は、4つの共通ローラ3a,3b,3c,3dを備えたローラポンプの断面図であり、例えば、これから共通ローラ3a,3b,3c,3dが時計回り方向に回転してチューブ6(
図12のチューブ9に相当。)の内部で共通ローラ3aと3bとによって閉じ込められた流体6aをしごいて図の右側へ押出していく。
【0071】
図4は、
図3の状態から共通ローラ3a,3b,3c,3dが90度回転して、共通ローラ3aの位置に共通ローラ3bが到達し、共通ローラ3bの位置に共通ローラ3cが到達した状態を表わしている。
【0072】
このように共通ローラ3a,3b,3c,3dが90度回転すると、
図3においてローラポンプ内のチューブ6内に閉じ込められていた流体6aは
図4の右側のローラポンプの外、すなわち吐出側に吐出されている。一方、
図3においてローラポンプの吸入側である共通ローラ3bの左側のチューブ6内の流体が、
図4の状態においてはローラポンプ内に流体6aとして取り込まれている。そして、ローラポンプの機能としては、
図4の状態は
図3の状態に戻っている。共通ローラ3a,3b,3c,3dがさらに回転を続ければ、上述の作動工程が繰り返され、連続的なポンプ機能を果たすことになる。
【0073】
つぎに、希釈液供給用のローラポンプの作動機構について説明する。
図5,6は希釈液供給用のローラポンプの作動状況説明用の断面図である。この発明における希釈液供給用のローラポンプは、上述の希釈生体液導出用のローラポンプと同様、円弧状の押さえ板2の内面の円弧に沿って円弧状に配置した弾性を持つチューブ6(
図12のチューブ8に相当。)を、回転軸の周囲に支持され回転軸を中心に回転する複数の共通ローラ3a,3b,3c,3dにより押さえ板2と協働して押さえつけながらしごいて、チューブ6内の流体6aを移送する構造をしている。そして、このローラポンプは、共通ローラ3a,3b,3c,3dとの当接部におけるチューブ6のチューブ内部を閉塞させながらチューブ6をしごく複数の共通ローラ3a,3b,3c,3dのほかに、共通ローラ3a,3b,3c,3dと同一の回転軸に支持されたローラであって、ローラとの当接部におけるチューブ6の内部を閉塞させながらチューブ6を押さえつけてしごく希釈液供給チューブ用ローラ3eを備えている。通常は、共通ローラ3a,3b,3c,3dも希釈液供給用ローラ3eもそれぞれ同じ形状で、回転軸から同じ距離の位置に支持されていればよい。
【0074】
図5に示す形態に従って説明すると、
図5の状態をローラポンプの作動開始状態とする。すなわち、押さえ板2に対してチューブ6を希釈液供給用ローラ3a、3b及び3eで押圧することによりチューブ6が希釈液供給用ローラ3a、3b及び3eで押し潰されてしまい、希釈液供給用ローラ3bと希釈液供給用ローラ3eとでチューブ6の内部が閉塞されてポンプ室が形成されて流体6aが充填され、希釈液供給用ローラ3eと希釈液供給用ローラ3aとでチューブ6の内部が閉塞されて第2のポンプ室が形成されて流体が充填される。希釈液供給用ローラ3bと希釈液供給用ローラ3eとで形成されるポンプ室の容積と希釈液供給用ローラ3eと希釈液供給用ローラ3aとで形成されるポンプ室の容積とは、同じである。
【0075】
チューブ6内部の上流側の流体6a(
図5で示せば共通ローラ3bの右側)は、共通ローラ3bと希釈液供給用ローラ3eとがチューブ6を押さえ板2と共に押さえつけてチューブ6を押し潰すことによりチューブ6の内部を完全に閉塞しているので、流体6a自らは自由に移動することができない状態になっている。この状態からローラポンプが作動し、共通ローラ3b、希釈液供給用ローラ3eが回転軸4を中心に
図5の矢印のように時計回りに回転しながらチューブ6をしごいていくと、共通ローラ3bと希釈液供給用ローラ3eとに押さえつけられて内部が完全に閉塞しているチューブ6の当接部、換言すると押し潰し部は、
図5のチューブ6内を右側へ移動していく。チューブ6は弾性があるので、最初に共通ローラ3bに押さえつけられていた部分は膨らんでもとのチューブ形状に戻ろうとする。そのため、チューブ6の共通ローラ3bの左側である上流側にあった流体は、チューブ6内を共通ローラ3bの移動に伴って
図5の中央左部分の流体6aのあった部分に移動する。
【0076】
なお、この場合、共通ローラ3a,3b,3c,3d、及び希釈液供給用ローラ3eはローラ断面が円形であることが好ましく、それぞれ共通ローラ3a,3b,3c,3d及び希釈液供給用ローラ3e自体の中心軸を中心に回転、所謂自転してチューブ6表面上を転がりながらチューブ6をしごいていくと、摩擦抵抗が少なくて好ましい。
【0077】
そして、回転軸4が45度回転すると、共通ローラ3bと共通ローラ3cとの間にある希釈液供給用ローラ3eが回転してきて最初に共通ローラ3bがあった位置のポンプ入口付近のチューブ6を押し潰してその部分のチューブ6の内部を完全に閉塞する。そして、回転軸4がさらに45度回転すると、共通ローラ3cが回転してきて最初に共通ローラ3bがあった位置のポンプ入口付近のチューブ6を押さえつけてその部分のチューブ6内部を完全に閉塞する。ローラポンプのこの状態を
図6に示している。この
図5と
図6との回転軸4を中心とした共通ローラ3a,3b,3c,3d及び希釈液供給用ローラ3eの回転関係は、上述のこの
図3と
図4との回転軸4を中心とした共通ローラ3a,3b,3c,3dの回転関係と同じである。そして、この間に希釈液供給用のローラポンプが押出す送液量は、チューブ6が希釈液供給用ローラ3eに抑え付けられている分だけ、希釈生体液導出用のローラポンプが押し出す送液量より少なくなっている。
【0078】
希釈液供給用ローラ3eは、ローラ断面は多角形等でもよいが円形であることが好ましく、希釈液供給用ローラ3e自体の中心軸を中心に回転、所謂自転してチューブ6の表面上を転がりながらチューブ6をしごいていくことが、摩擦抵抗が少なくて好ましい。
【0079】
図6における希釈液供給用のローラポンプの状態としては、
図5に示す状態に戻ったことになる。ただし、共通ローラ3a,3b,3c,3dは回転軸4を中心に90度回転しており、
図5の共通ローラ3a,3b,3c,3dに相当する位置には共通ローラ3b,3c,3d,3aが進んできている。この状態から共通ローラ3a,3b,3c,3dがさらに回転して進んでいけば、上述したと同じようにしてチューブ6内の上流側の流体が下流側へと連続的に移送されていき、ローラポンプとしての作用を奏することになる。この場合、
図5,6に示すように4本の希釈液供給用ローラ3eが4本の共通ローラ3a,3b,3c,3dの間にそれぞれ配置されているが、この発明における希釈液供給用のローラポンプ1の機能を発揮するためには、希釈液供給用ローラ3eは少なくとも1本あればよく、2〜3本でもよい。また、共通ローラ3a,3b,3c,3dの間に希釈液供給用ローラ3eを2本以上配置して、共通ローラ3a,3b,3c,3dの数より多くの、例えば8本の希釈液供給用ローラ3eを配置してもよい。通常は、ポンプの吐出量の安定性からは、
図5,6に示すようにすべての共通ローラ3a,3b,3c,3dの間に同じ間隔で同じ形状の希釈液供給用ローラ3eが同じ数ずつ配置されていることが好ましい。このように希釈液供給用ローラ3eを多数備えたローラポンプは、従来のローラポンプと同じチューブ6を用いてもポンプ吐出量を少流量化できる。また、希釈液供給用ローラ3eが共通ローラ3a,3b,3c,3dの間にあるチューブ6を押さえ付けることにより、従来のローラポンプに比べて共通ローラ3a,3b,3c,3dの間にあるチューブ6内の容積の変化を小さくし、ローラポンプ特有の現象である吐出されていく流体の脈動も小さくすることができる。なお、希釈液供給用ローラ3eは必ずしもチューブ6の当接部を閉塞するように押さえつけなくても、流量を減少させる機能をする。
【0080】
この発明に使用される希釈生体液導出用のローラポンプとして、希釈生体液導出チューブから押し出される希釈生体液の量を調節する希釈比調整手段を備えた態様がある。そのひとつの態様として、希釈比調整手段として共通ローラとは異なる直径を有し、希釈生体液導出チューブ用の共通ローラと同軸であり、希釈液供給チューブを閉塞しない程度に押圧する補助ローラを備えた希釈液供給用のローラポンプがある。
【0081】
図7,8にその作動状況を示す。
図7,8は、
図5,6と同様にローラポンプの作動状況を表わし、
図8は
図7から共通ローラが90度回転した後の状態を表している。なお、
図7,8においては、
図5,6における希釈液供給用ローラ3eがなくて、代わりに補助ローラ3fを備えている。そして、補助ローラ3fは
図5,6における希釈液供給用ローラ3eと異なってチューブ6を閉塞しない程度に押圧している。
【0082】
希釈液供給用のローラポンプにおいて説明したと同じように、この希釈比調整手段である補助ローラ3fを備えた希釈液供給用のローラポンプは、補助ローラ3fがチューブ6を押さえつけている。補助ローラ3fがチューブ6を押さえつけていることにより、共通ローラ3aと共通ローラ3bとにより両側を閉塞されたチューブ6の内部空間に閉じ込められている流体6aは、補助ローラ3fがない場合に比べ、チューブ6が補助ローラ3fに押さえつけられている分だけ少なくなっている。図で示せば、
図7,8に示す希釈液供給用のローラポンプの場合、共通ローラ3aと共通ローラ3bとにより両側を閉塞されたチューブ6の内部の孤立空間内に閉じ込められている流体6aの容量は、
図3、4に示す希釈生体液導出用のローラポンプの場合に較べ、チューブ6が補助ローラ3fに押さえつけられている分だけ、
図3、4に示す流体6aの量より少ないことが、両図の比較からも判る。この補助ローラ3fの大きさや位置を調節することにより、この希釈液供給用のローラポンプは希釈生体液の導出量を調節することができる。なお、補助ローラ3fもローラ断面は多角形等でもよいが、円形であることが好ましく、補助ローラ3f自体の中心軸を中心に回転、所謂自転してチューブ6表面上を転がりながらチューブ6をしごいていくことが摩擦抵抗が少なく好ましい。
【0083】
希釈比調整手段を備えた希釈液供給用のローラポンプの他の態様として、共通ローラ間に配設され、付勢部材と付勢部材により希釈液供給チューブを押圧する程度を調節可能な押圧力可変ローラとを備えた希釈液供給用のローラポンプがある。
【0084】
このローラポンプは、
図9に示すように、付勢部材5aを介して押圧可変ローラ3gの希釈液供給チューブを押圧する程度を、回転軸に支持する支持体5により可変にして、調整できるようにすることができる。
図9にこのような態様のローラポンプの断面図を示す。
図9においては、支持体5の一部に長さ可変の付勢部材5aを備えている。付勢部材5aは、例えば長めのボルトとナットの組合せによる距離調節機構とすればよい。付勢部材5aで押圧可変ローラ3gがチューブ6を押しつける距離を変えることにより、チューブ6の内部に形成された孤立空間の大きさが変わり、この孤立空間内の流体6aの量が変化する。すなわち、この態様のローラポンプは同じ回転速度で回転軸4が回転していても、支持体5に備えた付勢部材5aの長さを変えることによりポンプの流量を調整することができる。
【0085】
この発明の定量サンプリング装置におけるローラポンプの別の態様として、
図10,11に示すように、少なくとも一本の希釈液供給用ローラ3eは複数のチューブ当接部3x,3yを備え、それぞれのチューブ当接部3x,3yは異なったローラ径とすることができる。この態様のローラポンプでは、
図10及び
図11に示すように2つのチューブ当接部3x,3yを備えた希釈液供給用ローラ3eの場合、チューブ6を当接させるべき希釈液供給用ローラ3eのチューブ当接部3x,3yの位置を調整できるようにする。すなわち、
図10のようにチューブ6を同一の希釈液供給用ローラ3eにおける相対的に細いローラ径の部分におけるチューブ当接部3xに当接させたり、
図11のように相対的に太いローラ径の部分におけるチューブ当接部3yに当接させたりすることができる。この態様のローラポンプでは、このように希釈液供給用ローラ3eにおいて実際にチューブを当接させる位置を細いローラ径の部分におけるチューブ当接部3xから太いローラ径の部分におけるチューブ当接部3yに変更することにより、チューブ6内に形成される閉塞空間の大きさを変えてポンプ流量を調整することができる。
図10及び
図11にこの態様のローラポンプの斜視図を示した。
図10及び
図11においては、説明の便宜のため、押さえ板2の裏側の部分のチューブ6等は点線で表示している。
図10に示す態様は、チューブ6が希釈液供給用ローラ3eの当接部3xに当接している状態である。一方、
図11に示す態様は、チューブ6が希釈液供給用ローラ3eの当接部3yに当接している状態である。両方の態様とも共通ローラ3a,3b,3c,3dにより押し付けられてチューブ6内部に形成された孤立空間内には流体6aが存在する。
【0086】
しかし、
図10に示した態様のチューブ6内部の孤立空間は、
図11に示した態様のチューブ6内部の孤立空間に比べて、希釈液供給用ローラ3eにより押さえつけられている程度が少なく、孤立空間内の容積が大きくなっている。言い換えれば、
図10におけるチューブ6の孤立空間内の流体6aのほうが、
図11におけるチューブ6の孤立空間内の流体6aより多い。
図10及び
図11の状態で、それぞれローラポンプとして同じ回転数で作動させれば、
図10に示すローラポンプは
図11に示すローラポンプに比べ、孤立空間内の容積が大きくなっている分だけポンプ吐出流量が多くなる。このように、チューブ6の当接する場所によりローラ径の異なる希釈液供給用ローラ3eを用い、チューブ6に対する当接部3x,3yを変更することにより同じローラポンプで流量を変更することができる。なお、
図10及び
図11においては、好ましい態様として全ての希釈液供給用ローラ3eが同じ形状をしているが、それぞれの希釈液供給用ローラ3eは異なった形状をしていてもよい。このようなローラポンプを備えたマルチポンプを、この発明の定量サンプリング装置に採用することにより、この発明の定量サンプリング装置は、サンプルの希釈比等の流量比を特定の値に制御することができる。
【0087】
この発明の定量サンプリング装置においては、マルチポンプは、複数のチューブが回転軸を共有して連動する複数のローラポンプの集合であり、そのうちの少なくともひとつのローラポンプは上述のようなローラポンプで形成されている。
【0088】
具体的な態様として、
図12に示すマルチポンプ7が挙げられる。
図12に示すマルチポンプ7は
図10または
図11に示すローラポンプ1において、チューブを
図10に示した部分と
図11に示した部分とに2本配置した2連のローラポンプである。このマルチポンプ7においては、内径が同じであるチューブ8及びチューブ9が形成するそれぞれのローラポンプのポンプ吐出流量が異なる。そして、チューブ8の内径とチューブ9の内径とが互いに同じであれば、一定の流量比のふたつのポンプとなる。この態様の定量サンプリング装置では、前述のとおりチューブ8が希釈生体液導出用のローラポンプを、チューブ9が希釈液供給用のローラポンプを形成している。
【0089】
上述したようなチューブポンプの集合であるマルチポンプ7は、容易にチューブ8,9を交換して使用することができ、また、チューブ8,9は交換することを前提にしていることが多い。一般に、チューブ交換にあたっては、マルチポンプ7のチューブ8,9を全て一緒に交換する。チューブ8,9を交換してもポンプ流量を厳密に交換前と同じにするためには、ローラ等からなる移動押圧部材の運転速度を一定とすれば、チューブ8,9の内径及び弾性を厳密に交換前と同じにせねばならない。しかし、医療用途をはじめ多くの用途では、チューブ8及びチューブ9に対応するチューブポンプの絶対的な流量を厳密に制御するよりは、およその流量が制御できれていれば、チューブ8及びチューブ9に対応するポンプの相対的な流量比を制御することが重要である。例えば、一方のポンプが希釈生体液導出用のポンプで、他方のポンプが希釈液供給用のポンプであれば、両方の流体を混合した際の混合比の制御が重要である。このためには、ふたつのポンプの絶対的な吐出流量よりも、相対的な吐出流量比が重要である。この発明の定量サンプリング装置におけるマルチポンプは、簡単な構造で特別の流量制御機構を持たなくても、チューブを取り替えた際にこのような相対的な流量比を一定に保ち易い構造をしている。
【0090】
この発明の定量サンプリング装置や、これを備えた生体成分測定装置及び人工膵臓装置等の医療用機器には、上述のようなマルチポンプが使用される。
【0091】
そうすれば、異なる形状の移動押圧部材に対して内径の同じチューブを配置して、吐出流量の異なる複数のチューブポンプを連動して作動させることができる。この場合、チューブを取り替える際には、長尺状のチューブから互いに隣り合うようにして切り出された一対のチューブを交換用の希釈液供給用チューブ及び希釈生体液導出用チューブとする。そうすると、この発明で使用されるような弾性のあるチューブは、比較的安価に製造しようとすると、内径の誤差は避けられないが、1本の長尺状のチューブから隣り合うように切り出された一対のチューブ同士では内径のばらつきが小さく無視できる。チューブの弾性のばらつきに付いても同様の傾向がある。そこで、この発明におけるマルチポンプでは、それぞれのポンプに同時に使用するチューブを、1本の長尺状のチューブから隣り合うようにして切り出された一対のチューブで構成することにより、マルチポンプにおけるそれぞれのチューブポンプの吐出流量はそれぞれ変化しても、チューブ取り替え後のそれぞれのチューブポンプの吐出流量比はほとんど変わりがない。このようにしてチューブを取り替えても吐出流量比に変化のないマルチポンプとすることができる。このマルチポンプを使用することにより、この発明によれば、チューブを取り替えても常に一定流量比でそれぞれのチューブポンプを作動させることができる。