(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ローラ群は、全ての第1ローラが同じ回転中心を有する円軌道上を移動するように形成され、前記第2ローラ群は、全ての第2ローラが同じ回転中心を有する円軌道上を移動するように形成され、前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材それぞれにおける押さえ面が部分円周面に形成されてなる前記請求項1又は2に記載のマルチチューブポンプ。
前記第1ローラ群が、回転軸に支持された複数の第1支持体と、前記全ての第1支持体の回転軸とは反対側の先端部に回転可能に装着された第1ローラとを備え、前記第2ローラ群が、前記回転軸に、前記回転軸の軸方向に見たときに第1支持体の取付位置と同じ位置に取り付けられた第2支持体と、前記全ての第2支持体の前記回転軸とは反対側の先端部に回転可能に装着された第2ローラとを備え、第1ローラの自転中心と回転軸の回転中心との間隔と前記第2ローラの自転中心と回転軸の回転中心との間隔とが同一に設定されてなる前記請求項1〜3までのいずれか一項に記載のマルチチューブポンプ。
前記請求項1〜4のいずれか一項に記載のマルチチューブポンプを備え、前記マルチチューブポンプにおける第2弾力性チューブの上流側が希釈液供給手段に接続され、前記第2弾力性チューブの下流側がカテーテルに接続され、前記第1弾力性チューブの上流側が前記カテーテルに接続される定量サンプリング装置。
【背景技術】
【0002】
生体成分測定装置等に用いられる定量サンプリング装置は、生体成分測定用のセンサ等に生体液のサンプルを供給する装置である。通常、サンプルとして採取された生体液をセンサで測定するだけならサンプリング装置の定量性はそれほど問題にはならない。しかし、安定した生体成分の測定を行うためには、サンプル液のpH、電気伝導度などを一定に保つ必要があるため、採取された生体液を希釈液等で希釈して希釈サンプル液を生成する場合がある。この場合は、採取された生体液と希釈液との流量がそれぞれ独立に変化し、あるいは一方だけが変化すると、希釈サンプル液中に含まれる生体成分の濃度が変化する。このような測定誤差を無くすため、生体成分測定装置等に用いられる定量サンプリング装置のポンプには定量性のあるポンプが用いられる。定量ポンプとしては、容積タイプのポンプが一般的であり、特に、生体成分測定装置等に用いられる定量サンプリング装置用のポンプとしては、定量性、少容量対応、衛生管理上の配慮等からチューブポンプがよく用いられている。例えば、特許文献1には、カテーテルに定量的に希釈液を送液し、そのカテーテルから血液等の生体成分を希釈液ごと定量的に吸入する生体成分測定装置用の定量サンプリング装置が開示されている。この定量サンプリング装置には、チューブポンプの一種であるローラポンプが使用できるとされている。その他にも、生体成分測定装置のサンプル採取用に定量ポンプが利用されている例として、特許文献2および特許文献3を挙げる。特許文献2および特許文献3では、定量的にサンプルを採取できる人工膵臓装置や血液中の血糖値モニタを開示している。
【0003】
チューブポンプは、弾力性チューブを押圧しながらしごくことによりチューブ内の流体を移送する装置であり、ローラポンプ、しごきポンプ、ペリスタルティックポンプ、蠕動ポンプ等と呼ばれているポンプもあり、名称の相違があるにせよこれらのポンプはチューブポンプと一般に称されている。これらのチューブポンプの基本的な原理は共通しており、これを
図11(A),(B),(C)に示したローラポンプ1の例で説明すると、内部に流体の入った弾力性チューブ6をローラ3a,3b等により外部から押圧してその押圧部分で弾力性チューブ6を押し潰すことにより、押圧部分のチューブ6内部を閉塞し、弾力性チューブ6を押圧したままローラ3a,3b等で弾力性チューブ6をしごいていき、しごいた分だけ弾力性チューブ6内部の流体6aをしごいた方向へ移動させ、これによってポンプ作用が発揮される。なお、この図では、
図11(A)に示す状態から始まって
図11(B)に示す状態、および
図11(C)に示す状態へとローラ3a.3b,3c等が支持体5に支持されながら、回転軸4を中心に時計回り方向に90度づつ回転した状態を表している。通常のローラポンプは、4〜8個程度の複数のローラを、回転する支持体5の上に回転中心から等距離に配置し、これらのローラ3a,3b等の一部を取り囲むように円弧状に弾力性チューブ6を配置し、ローラ3a,3b等がチューブ6を押圧してチューブ6を押しつぶし易いように、円弧状の押さえ部材(ステータ)2がチューブ6の外側にチューブ6を挟んでローラ3a,3b等とともに押さえつけるように配置されている。支持体5が回転したとき、ローラ3a,3b等も回転し、ローラ3a,3b等に押圧されているチューブ6の閉塞部分は回転方向へ移動していく。なお、この際、弾力性チューブ6は押圧による変形はするが、ローラ3a,3b等と共に移動はしないように固定されている。ローラ3a,3b等の一部を取り囲むように配置されている弾力性チューブ6は、常に少なくとも二つのローラ3a,3b等により押圧されることにより弾力性チューブ6内に閉塞された内部空間が形成されるように配置されている。ローラには、回転軸4を中心に公転するだけでなく自転できる構造が、しばしば採用されている。ローラ3a,3b等が弾力性チューブ6をしごく際に、ローラ3a,3b等が弾力性チューブ6表面を滑って移動すると、摩擦抵抗が大きく、弾力性チューブ6およびローラ3a,3b等が消耗し易い。ローラ3a,3b等がチューブ6の表面上を回転しながらしごいていけばチューブ6とローラ3a,3b等の摩擦抵抗は非常に小さくなる。この種ポンプにあっては、弾力性チューブ6の内径とローラ3a,3b等の回転速度とを一定にしておけば、一定流量で流体を移送することができると、期待できる。
【0004】
このようなチューブポンプには、構造の単純さ、精密な定量性、信頼性、およびチューブの交換容易性等の利点がある。特に、ローラポンプは小流量で、吐出圧が低く、流量の定量性が要求され、流体の流路を頻繁に交換すべき用途に利用される。誤作動による高圧発生の恐れもなく、医療現場等で用いられるカテーテル、注射器等の薬液投与用の装置、尿、血液、リンパ液、その他の体液等の採取・排出装置等の医療支援装置、および光学分析等に用いる微小量サンプル採取・導入装置等に適用するのに好適なポンプとされている。さらに、最近ではプリンタ用のインク供給装置や精密機械用のマイクロマシンとしての定量ポンプ等にも用途が広がっている。また、ローラポンプの改良も多数提案されている。例えば、特許文献4および特許文献5には、チューブの耐久性を向上させるためのポンプの構造が提案されている。特許文献6には小型化を目指したローラポンプが開示されている。特許文献7にはプリンタ等に使用するインクジェット記録装置用のローラポンプが開示されている。さらに、上述のローラポンプとは構造の異なったタイプのローラポンプ等も各種提案されている(特許文献8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、定量サンプリング装置はそれぞれのチューブポンプについて精度の高い定量ポンプを備えていれば、その定量性に問題はない。しかし、生体成分測定装置等に使用する定量サンプリング装置用においては、衛生上の観点等から、流体との接触部品を頻繁に取り替えねばならない。ポンプも取り替え対象であり、チューブポンプであれば、流体との接触部品は弾力性チューブのみの取り替えで済むので、チューブポンプが好適に利用されている。また、弾力性チューブは使用中、常にしごき作用を受けるため、傷み易く消耗品として定期的に交換されている。
【0007】
チューブポンプにおいては、弾力性チューブの内径はポンプ吐出量を特定する重要な要素である。当然のことながら、交換用の弾力性チューブの内径が交換前後において常に一定でないとポンプ吐出量が変化してしまう。そのため、弾力性チューブを交換する前後のポンプ吐出量の定量性を確保するために、厳しく径寸法の管理された交換用弾力性チューブを準備しておくことが一般的であった。この場合、定量サンプリング装置用の弾力性ポンプは、それぞれに吐出流量が異なるので、それぞれのポンプ用に内径の異なる弾力性チューブを準備しておく必要があった。
【0008】
ところが、医療機器特有の問題として、血液等の体液を流通させたチューブは使い捨てとして取り替えることが多く、安価な交換チューブを使う場合が多かった。安価な交換チューブはその内径のばらつきは大きくなり易く、従来のチューブポンプの流量はその内径のばらつきによる影響を受け易く、弾力性チューブ内径の異なる複数のポンプを使用する定量サンプリング装置においては、弾力性チューブを交換する前後の体液採取量等を正確に再現することが難しかった。特に、センサで測定する際に重要になる生体液と希釈液との希釈比率の安定性を保つことが難しかった。このような困難な状況に対応するために従来の人工膵臓装置においては、希釈比率を校正する校正システムを搭載し、これによって希釈比率の安定性を維持しようとしていた。
【0009】
一方、微量なサンプルを希釈しながら行う定量サンプリングでは、希釈液供給量と希釈サンプル液導出量が逆転すると精度どころか測定自体ができなくなる。また、希釈比率が高くなりすぎると正確な測定ができなくなる。したがって、この吐出流量の逆転あるいは高すぎる希釈比率を避けることが、弾力性チューブの内径寸法の厳しい管理が必要な主な理由であった。
【0010】
この発明は、弾力性チューブの内径を厳密に管理する必要がなく、簡易に所要の希釈比率を実現することのできるマルチチューブポンプ、このようなマルチチューブポンプを組み込んで成る定量サンプリング装置と、このサンプリング装置を用いた生体成分測定装置を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、マルチチューブポンプにおいて、同期して移動する複数のローラでしごかれる弾力性チューブにおける、隣接するローラで押しつぶされることにより形成される弾力性チューブの内部容積により決定されるポンプ吐出容積を、ローラと押さえ板とによる挟み具合を変化させれば、弾力性チューブ内を移送される液体の流量を変化させることができるという着想に基づき、弾力性チューブがしごかれる区間内にて、ローラが弾力性チューブに及ぼす圧力が異なる区間を設けることにより高精度で一定の吐出量ないし吐出流量比が得られるようにしたことを技術的な原理としている。
【0012】
即ち、前記課題を解決するための手段は、
(1) 内部を流体が流通する第1弾力性チューブと複数の第1ローラを有する第1ローラ群と前記第1押さえ部材とを有する第1チューブポンプと、
内部を流体が流通する第2弾力性チューブと複数の第2ローラを有する第2ローラ群と前記第2押さえ部材とを有する第2チューブポンプと、を有するマルチチューブポンプであり、
前記複数の第2ローラは、前記第2弾力性チューブに接してこれを押圧しつつ、前記第2弾力性チューブの軸線方向に沿って互いに等間隔rをもって前記第1ローラと同期して移動し、
前記第2押さえ部材は、前記第2ローラに向かう対向部を有し、その対向部には前記第2ローラとで第2弾力性チューブを押しつぶす押さえ面を有して第2弾力性チューブに対向する凹部が形成されることがなく、
前記複数の第1ローラは、その第1弾力性チューブに接してこれを押圧しつつ、前記第1弾力性チューブの軸線方向に沿って互いに等間隔Rをもって移動し、
前記第1押さえ部材は、前記第1ローラに向かうとともに前記第2押さえ部材における対向部の第1弾力性チューブに沿った長さと少なくとも同じ長さに形成された対向部を有し、その対向部には第1ローラによって前記第1弾力性チューブが押しつぶされない凹部と、その凹部の第1ローラの進行方向における前後に前記第1ローラとで第1弾力性チューブを押しつぶす後部第1押さえ面及び前部第1押さえ面とを備え、
第1ローラとこの第1ローラに隣接する他の第1ローラとの間隔Rと第2ローラとこの第2ローラに隣接する他の第2ローラとの間隔rとが同じであり、
前記第1ローラとこの第1ローラに隣接する他の第1ローラとの間隔をR1とし、前記第1押さえ板における凹部の、第1弾力性チューブの軸線方向に平行な軸線方向の長さをSSとし、前記第1押さえ板の、第1ローラの進行方向における上流側端部から前記凹部の下流側端部までの長さをS2とし、第1ローラの進行方向における前記凹部の下流側端部から第1押さえ板の下流側端部までの長さをS1とすると、以下の関係を満たすことを特徴とするマルチチューブポンプである。
【0013】
S1+SS+S2 > 2×R1 ・・・(1)
R1 > SS ・・・(2)
R1 > S1 ・・・(3)
R1 > S2 ・・・(4)
前記マルチチューブポンプの好適な態様は、
(2) 前記第1ローラ群における第1ローラは直径の異なる他の第1ローラに変更可能である前記(1)に記載のマルチチューブポンプであり、
(3) 前記第1ローラ群は、全ての第1ローラが同じ回転中心を有する円軌道上を移動するように形成され、前記第2ローラ群は、全ての第2ローラが同じ回転中心を有する円軌道上を移動するように形成され、前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材それぞれにおける押さえ面が部分円周面に形成されてなる前記(1)又は(2)に記載のマルチチューブポンプであり、
(4) 前記第1ローラ群が、回転軸に支持された複数の第1支持体と、前記全ての第1支持体の回転軸とは反対側の先端部に回転可能に装着された第1ローラとを備え、前記第2ローラ群が、前記回転軸に、前記回転軸の軸方向に見たときに第1支持体の取付位置と同じ位置に取り付けられた第2支持体と、前記全ての第2支持体の前記回転軸とは反対側の先端部に回転可能に装着された第2ローラとを備え、第1ローラの自転中心と回転軸の回転中心との間隔と前記第2ローラの自転中心と回転軸の回転中心との間隔とが同一に設定されてなる前記(1)〜(3)までのいずれか一項に記載のマルチチューブポンプである。
【0014】
この発明の他の手段は、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のマルチチューブポンプを備え、前記マルチチューブポンプにおける第2弾力性チューブの上流側が希釈液供給手段に接続され、前記第2弾力性チューブの下流側がカテーテルに接続され、前記第1弾力性チューブの上流側が前記カテーテルに接続される定量サンプリング装置であり
(6) 前記(5)に記載の定量サンプリング装置と、前記第1弾力性チューブの下流側に接続される生体成分測定センサとを有することを特徴とする生体成分測定装置である。
【0015】
この発明の更に他の手段は、
(7) 前記(6)に記載した生体成分測定装置における生体成分測定センサが血糖値測定センサであることを特徴とする人工膵臓装置である。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係るマルチチューブポンプにおいては、第2ローラ群を構成する複数の第2ローラにより第2弾力性チューブから吐出される流体の吐出量は、第2ローラと第2押さえ部材とで押しつぶされた部位から前記第2ローラに隣接する第2ローラと第2押さえ部材とで押しつぶされた部位までの、第2弾力性チューブ内の空間に含まれることにより決定される量V2である。
【0017】
このマルチチューブポンプにおいては、第1ローラ群を構成する複数の第1ローラが第1押さえ部材に設けられた凹部に位置する第1弾力性チューブに接触しつつ進行し、第1ローラの進行方向において第1押さえ部材における凹部から押さえ面に差し掛かった第1ローラにより第1弾力性チューブが第1押さえ部材とで扱かれることにより第1ローラの進行により第1弾力性チューブ内の液体が押し出されていき、吐出される。このときの第1弾性力チューブから吐出される流体の吐出量は量V1である。
【0018】
このように、この発明に係るマルチチューブポンプにおいては、第1チューブポンプによる吐出量V1と第2チューブポンプによる吐出量V2とが相違する。
【0019】
第1チューブポンプによる吐出量V1と第2チューブポンプによる吐出量V2との差は、第1ローラ及び第2ローラの直径により決定することができる。
【0020】
このマルチチューブポンプにおいては第1ローラ群及び第2ローラ群それぞれが一つの回転中心を中心にして円軌道を描きつつ回転する複数のローラで形成することができる。このように複数の第1ローラ及び複数の第2ローラそれぞれが一つの回転中心を中心にして円軌道を描きつつ移動するので、第1押さえ部材及び第2押さえ部材それぞれにおける押圧面は第1弾力性チューブ及び第2弾力性チューブそれぞれに向かう部分円周面に形成されているのが好ましい。
【0021】
第1弾力性チューブから吐出される流体の吐出量V1と第2弾力性チューブから吐出される流体の吐出量V2が相違するこのマルチチューブポンプを利用して定量サンプリング装置が形成される。
【0022】
すなわち、この定量サンプリング装置にあっては、第2弾力性チューブの上流側に希釈液供給手段が接続され、第2弾力性チューブの下流側にカテーテルが接続され、前記第1弾力性チューブの上流側が前記カテーテルに接続されているので、希釈液供給手段から第2チューブポンプによりカテーテルに供給される希釈液の量はV1であり、第1チューブポンプによりカテーテルから吸い出される液の量はV2である。したがって、[V1−V2]に相当する量がカテーテルにより生体から採取される生体成分の量となる。
【0023】
前記定量サンプリング装置における第1チューブポンプから吐出される液が生体成分測定センサに送り込まれると、前記定量サンプリング装置によって採取された生体が希釈率[(V1−V2)/V1]にて希釈され、その希釈された生体希釈液が測定用のサンプルとして生体成分が測定される。
【0024】
したがって、この定量サンプリング装置を組み込んでなる生体成分測定装置によると、生体から採取する生体採取量を少なくすることができ、生体から生体成分を大量に採取することなく生体成分を測定することができる。
【0025】
また、この定量サンプリング装置を組み込んで成る生体成分測定装置における生体成分測定センサが血糖値測定センサであると、生体採取量を少なくすることができるとともに、生体から生体成分を大量に採取することなく生体成分を測定することのできる人工膵臓装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明に係るマルチチューブポンプの実施形態について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、この発明に係るマルチチューブポンプ7は、弾力性部材で形成された複数の弾力性チューブ30(8,9)と、各弾力性チューブ8,9に対応するように配置された押さえ部材42a、42bと、回転軸23を中心にして回転する複数のローラ軸体26を備えるローラ群26Aとを、備える。
【0029】
図1及び
図2に示されるように、このマルチチューブポンプ7では、相対向して配置された一対の円盤24,24と、それら一対の円盤24,24それぞれの中心に円盤面に対して直角に立設していて一対の円盤24,24を一体に結合する回転軸23と、相対向して配置されている一方の前記円盤24の対向面から他方の前記円盤24の対向面にそれ自体回転可能に架け渡された8本のローラ軸体26とを一体に有する回転ユニット22を備える。
【0030】
図1に示されるように、このマルチチューブポンプ7における8本のローラ軸体26の、円盤24における円盤面の取付位置は、8本のローラ軸体26の回転中心が回転軸23を回転中心とする円周上にあり、ローラ軸体26の回転中心と回転軸23の回転中心とを結ぶ線分とそのローラ軸体26に隣接するローラ軸体26の回転中心と回転軸23の回転中心とを結ぶ線分とのなす角度が45度になるように、設定されている。なお、この発明に係るマルチチューブポンプにおいては、ローラ軸体の個数は、8個に限らず、マルチチューブポンプの用途及び規模等に応じて適宜に決定することができる。ローラ軸体の直径、及び回転軸からローラ軸体までの長さについては、適宜に決定することができる。
【0031】
図2においては、2本の弾力性チューブ8,9が示される。2本の弾力性チューブ8,9は同じ内径及び外径を有する管状体、つまりパイプであり、このマルチチューブポンプ7では交換可能になっている。
【0032】
この回転ユニット22においては、回転軸23が回転すると各ローラ軸体26が円軌道を描いて回転軸23を中心にした円運動をする。よって、回転軸23が回転すると、各ローラ軸体26の回転中心が円軌道を描いて回転移動する。換言すると、回転軸23が回転すると弾力性チューブ8,9に接する各ローラ軸体26は自転しつつ公転する遊星運動をする。
【0033】
図1に示すように、このマルチチューブポンプ7においては、回転ユニット22の上方に、圧板41が配設される。
【0034】
図2に示すように、この圧板41は、前記回転ユニット22の上部を保護する機能を有するように前記回転ユニット22の上部を含む所定の広さを覆蓋する平面広さを有し、前記回転ユニット22を露出して前記回転ユニット22のメンテナンス作業及びローラ軸体27への弾力性チューブ8,9の取り付け作業を容易にすることができるように、前記回転ユニット22を装着する基台29に着脱容易に、あるいは回転ユニット22を露出することができるように開閉自在に、基台41に装着されている。
【0035】
図1及び
図2に示すように、この圧板の裏面であって、回転ユニット22に向かう面には、2基の押さえ部材42a、42bが取り付けられている。
【0036】
図1に示すように、押さえ部材42aは、ローラ軸体26に架け渡した弾力性チューブ8に向かう湾曲凹面42cに形成された押圧面44を有する。この湾曲凹面42cに接触する弾力性チューブ8の内部空間が、円軌道を描いて移動するローラ軸体26により押し潰され、ローラ軸体26による押し潰しによって弾力性チューブ8の内部空間がローラ軸体26の移動方向の前後に分断されるように、この湾曲凹面42cは部分的な円周面に形成されている。この湾曲凹面42cと前記ローラ軸体25とで前記ローラ軸体26に架け渡された弾力性チューブ8が押し潰されるように押圧面44が配置される位置関係をもって押さえ部材42aが圧板41の裏面に取り付けられている。
【0037】
この押さえ部材42aはこの発明に係るマルチチューブポンプにおける第2押さえ部材42aに相当する。第2押さえ部材42aにおける押圧面44には特に凹部が形成されていない。一方、
図1に示す押さえ部材42bはこの発明に係るマルチチューブポンプにおける第1押さえ部材42に相当する。
図3に示すように、第1押さえ部材42bにおける押圧面44には凹部45が形成されている。
【0038】
図3に示されるように、第1押さえ部材42bは、押圧面44に凹部45が形成されていることの他は前記押さえ部材42aと同様の構造を有する。
【0039】
図3に示されるように、凹部45は、押圧面44に設けられた窪み乃至溝であり、湾曲凹面42cのローラ軸体26の進行方向に沿って設けられる。
【0040】
この凹部45は、第1押さえ部材42bとローラ軸体26とで第1弾力性チューブ9を挟んだ場合に、第1弾力性チューブ9を完全には押し潰さない程度に設計される。この凹部45の形状として、例えば、弾力性チューブ9の配設方向に沿って長い寸法を有する長溝の形状を挙げることができる。長溝形状をした凹部45の溝幅は、
図2に示すように上方から見た場合に、第1弾力性チューブ9の幅よりも広い幅に設計され、また、第3図に示すように側面から見た場合に、第1弾力性チューブの外径よりも大きな寸法の溝深さに設計することができる。凹部45は長溝の形状に限定されることなく、第1押さえ部材42bとローラ軸体26とにより第1弾力性チューブ9を完全に押し潰してしまわない形状であれば様々の形状を採用することができる。
【0041】
図1〜3に示される態様のマルチチューブポンプと本願発明のマルチチューブポンプとの関係は以下のとおりである。
【0042】
図1及び2において、本願発明のマルチチューブポンプにおける第1弾力性チューブが弾力性チューブ9であり、8基のローラ軸体26それぞれが第1ローラであり、8基のローラ軸体26からなるローラ群が第1ローラ群であり、押さえ部材42bが第1押さえ部材であり、前記弾力性チューブ9、8基のローラ軸体26、及び押さえ部材42bによって第1チューブポンプが形成される。本発明のマルチチューブポンプにおける第2弾力性チューブが弾力性チューブ8、8基のローラ軸体26それぞれが第2ローラであり、8基のローラ軸体26からなるローラ群が第2ローラ群であり、押さえ部材42aが第2押さえ部材であり、前記弾力性チューブ8、8基のローラ軸体26及び押さえ部材42aによって第2チューブポンプが形成される。
【0043】
また、第1押さえ部材である押さえ部材42bの湾曲凹面42cは本願発明に係るマルチチューブポンプにおける第1ローラに向かう対向部であり、第1押さえ部材である押さえ部材42bにおける押圧面44は本願発明に係るマルチチューブポンプにおける押さえ面である。第2押さえ部材である押さえ部材42aの湾曲凹面42cはこの発明に係るマルチチューブポンプにおける第2ローラに向かう対向部であり、第1押さえ部材である押さえ部材42bにおける押圧面は本願発明に係るマルチチューブポンプにおける押さえ面であり、押さえ部材42bにおける凹部45は本願発明に係るマルチチューブポンプにおける凹部である。
【0044】
回転ユニット22は、前記したように、相対向する一対の円盤24,24を、その円盤24,24の中心に結合された回転軸23で一体に結合するとともに、その回転軸を中心とする円周上に、8個のローラ軸体が、前記一対の円盤24,24に架け渡すように、取り付けられた構造を有し、前記回転ユニット22におけるローラ軸体26に第1弾力性チューブである弾力性チューブ9及び第2弾力性チューブである弾力性チューブ8が架け渡されているので、回転軸23を回転させると第1ローラ群及び第2ローラ群は回転軸23を中心にして、しかも同期して回転運動し、第1弾力性チューブ9及び第2弾力性チューブ8を第1ローラ群及び第2ローラ群が同期してしごくことになる。
【0045】
ここで、押さえ部材42bで示される第1押さえ部材、押圧面44で示される押圧面及び凹部45で示される凹部、並びにローラ軸体26で示されるローラについて以下のような関係が、保持される。
【0046】
なお、説明の便宜のために、円周上に回転中心が位置するように等間隔に配置された8基のローラ軸体26が直線上に配列される場合を
図4に示す。円軌道を描いて回転移動するローラ軸体26が、押さえ部材42bに湾曲凹面状に形成された押圧面に押し付けられつつ弾力性チューブをしごくときに弾力性チューブ9内に存在する流体に対する作用は、直線軌道を描いて直線移動するローラ軸体26が、押さえ部材42bにおける水平面状に形成された押圧面44に押し付けられつつ弾力性チューブをしごくときに弾力性チューブ9内に存在する流体に対する作用と同じである。よって本発明で規定する関係を、
図4を用いて説明する。
【0047】
図4に示すように、本願発明に係るマルチチューブポンプにおいては、第1ローラであるローラ軸体26と隣接するローラ軸体26との間隔、正確にはローラ軸体26の回転中心と隣接するローラ軸体26の回転中心との間隔が等間隔であり、その間隔をR1とし、凹部45における第1弾力性チューブ9の軸線方向に平行な軸線方向の長さをSSとし、前記第1押さえ部材42bの、ローラ軸体26の進行方向における上流側の端部から前記凹部45の上流端部までの長さをS2とし、ローラ軸体26の進行方向における前記凹部45の下流端部から第1押さえ部材42bの下流端部までの長さをS1とすると、以下の関係を満たす。
【0048】
S1+SS+S2 > 2×R1 ・・・(1)
R1 > SS ・・・(2)
R1 > S1 ・・・(3)
R1 > S2 ・・・(4)
前記式(1)は第1弾力性チューブ9の内部に存在する液体が逆流しないようにするための条件である。
【0049】
図4に示される模式図から容易に理解することができるように、例えば3個のローラ軸体A,B,Cにおけるローラ軸体Aの回転中心とローラ軸体Cの回転中心との間隔が第1押さえ部材42bにおける両端間長さよりも大きいと、つまり、「S1+SS+S2 < 2×R1」の関係であると、ローラ軸体Bが凹部に対応する位置にあり、ローラ軸体Aが第1押さえ部材42bを通り過ぎて第1押さえ部材42bから外れた位置にあり、ローラ軸体Cが第1押さえ部材42bに未だ至らない位置にあるという位置関係を生じる。このような位置関係にあっては、第1弾力性チューブ9はローラ軸体A,B,Cのいずれにも押しつぶされていないので、ローラ軸体Bよりも進行方向に存在する第1弾力性チューブ9内の液体がローラ軸体C側に逆流してしまう。そうすると、このような位置関係を発生させるチューブポンプは円滑な吸引吐出作用を発揮することができなくなる。
【0050】
前記式(2)は前記式(1)と同様に第1弾力性チューブ9の内部に存在する液体が逆流しないようにするための条件である。
【0051】
図4に示される模式図から容易に理解することができるように、ローラ軸体Aの回転中心とローラ軸体Bの回転中心との間隔R1及びローラ軸体Bの回転中心とローラ軸体Cの回転中心との間隔R2(=R1)が等しい場合に、ローラ軸体Aの回転中心とローラ軸体Bの回転中心との間隔R1が、凹部45の第1弾力性チューブ9の軸線方向に沿う軸線方向長さSSよりも小さいと、つまり、「R1 < SS」の条件であると、前記式(1)の条件が満たされない場合と同様に、ローラ軸体Bが凹部45に対応する位置にあり、ローラ軸体Aが第1押さえ部材42bを通り過ぎて第1押さえ部材42bから外れた位置にあり、ローラ軸体Cが第1押さえ部材42bに未だ至らない位置にあるという位置関係を生じることがある。その場合には、第1弾力性チューブ9はローラ軸体A,B,Cのいずれにも押しつぶされていないので、ローラ軸体Bよりも進行方向に存在する第1弾力性チューブ9内の液体がローラ軸体C側に逆流してしまう。そうすると、このような位置関係を発生させるチューブポンプは円滑な吸引吐出作用を発揮することができなくなる。
【0052】
前記式(3)及び(4)は、凹部45に関係なくポンプ室容積が決まることがないようにする条件である。
【0053】
図4に示すように、第1弾力性チューブ9の内部を流れる液体の進行方向において、第1押さえ部材42bにおける、凹部45の下流端部から第1押さえ部材42bの下流端部までの長さをS1とする。同様に、第1押さえ部材42bにおける、上流端部から凹部45の上流端部までの長さをS2とする。
【0054】
図4に示される模式図から容易に理解することができるように、ローラ軸体Aの回転中心とローラ軸体Bの回転中心との間隔R1が第1押さえ部材42bにおける長さS1よりも小さいと、つまり、「R1 < S1」であると、AB間又はBC間でポンプ室容積が決定されてしまうため、凹部45がある場合と凹部45がない場合とで吐出流量に差異がなくなってしまうことになる。
【0055】
この発明においては、第1弾力性チューブに沿って配置されている第1押さえ部材における対向部の、第1弾力性チューブに沿った長さL1と、第2弾力性チューブに沿って配置されている第2押さえ部材における対向部の、第2弾力性チューブに沿った長さL2とが同じであるように、前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材が形成される。第1押さえ部材及び第2押さえ部材は、基本的には、ローラ軸体とで弾力性チューブをしごく作用を発揮させる。したがって、前記長さL1及びL2は、押さえ部材の対向部とローラ軸体とで弾力性チューブをしごき始めるしごき開始点からしごきを終了するしごき終了点までの弾力性チューブに沿った長さとなる。
【0056】
次にこの発明に係るマルチチューブポンプの作用について説明する。
【0057】
第2弾力性チューブ8内に存在する液体は次のようにして吐出される。説明の便宜上、ローラ軸体26は回転運動をせずに直進運動をしており、したがって押さえ部材42aにおける押圧面44は湾曲面ではなく平面であるとする。
【0058】
図5に示されるように、ローラ軸体26の上に配設された第2弾力性チューブ8は、押さえ部材42aにおける押圧面44に接している。8基のローラ軸体26は、ローラ軸体26の回転中心それぞれが円軌道を描くように回転軸23の回転により回転移動する。
図5においては、ローラ軸体26(A,B,C)が直線運動をする。移動するローラ軸体26が押圧面44に差し掛かり、さらにそのローラ軸体26が並進移動(実際には回転移動)すると、そのローラ軸体26が第2弾力性チューブ8を押さえ部材42aの押圧面44に対して押し付けることになり、この押しつけにより第2弾力性チューブ8はローラ軸体26により押し潰される。押し潰された第2弾力性チューブ8においては、その内部空間が、押し潰した部位を境にしてローラ軸体26の進行方向における前方に位置する空間と進行方向における後方に位置する空間とに、分断される。
【0059】
図5を参照すると、押さえ部材42aにおける押圧面44に例えば3個のローラ軸体26(A,B,C)が位置していて第2弾力性チューブ8が3個のローラ軸体26(A,B,C)により押圧されると、例えばローラ軸体Aとローラ軸体Bとにより形成される空間及びローラ軸体Bとローラ軸体Cとにより形成される空間が形成され、それぞれの空間に液体が充満していることになる。ローラ軸体A,B,Cが直線移動すると(実際には回転運動すると)、ローラ軸体A,B,Cが第2弾力性チューブ8をしごきながら第2弾力性チューブ8内の液体を押し進めていくことになる。ローラ軸体Aが進行して押さえ部材42bから外れると、ローラ軸体Bにより押し進められる液体が吐出されることになる。吐出する液体の吐出量V2は、ローラ軸体Aが第2弾力性チューブ8を押し潰している部位から隣接するローラ軸体Bが第2弾力性チューブ8を押し潰している部位までの第2弾力性チューブ内空間として決定され、この第2弾力性チューブ内空間が第2チューブポンプにおけるポンプ室容積となる。
【0060】
一方、第1弾力性チューブ9内に存在する液体は次のようにして吐出される。
【0061】
図6を参照する。
図6は押さえ部材42bにおける湾曲凹面が平坦面であるとして表示し、ローラ軸体26が円軌道を描いて移動するのではなく、直線移動するものとして描いてあるが、ローラ軸体26が、第1弾力性チューブ9内に存在する液体を、第1弾力性チューブ9をしごくことによって、押し出して行く作用については、ローラ軸体26が円軌道を描いて移動する場合も直線移動する場合においても同じである。よって、
図1から
図3までに示される第1チューブポンプの作用を
図6により説明することとする。
【0062】
図6において左側に記載された1〜13の数字は状態を区別するために付されている。第1ローラ群を構成するローラ軸体26は、
図6では3個が示され、それら3個のローラ軸体26はA,B及びCの符号を付してある。
【0063】
図6において、弾力性チューブ9内を移動する液体の進行方向に関して凹部45を中にして進行方向前方に位置する押圧面を44aで示し、進行方向後方に位置する押圧面を44bで示すことにする。
【0064】
図6において、状態1では、ローラ軸体Aが押圧面44aに対して第1弾力性チューブである弾力性チューブ9を押圧してこの弾力性チューブ9を押し潰しており、ローラ軸体Bが凹部45に臨む位置にいて弾力性チューブ9を押し潰していない状態であり、ローラ軸体Cが押圧面44bに未だ到達していない。この状態1ではローラ軸体Aが弾力性チューブ9内のローラ軸体Aの進行方向前方にある液体を押し出している。
【0065】
図6において、状態2では、ローラ軸体Aが前方の押圧面44aとで弾力性チューブ9を押し潰し、ローラ軸体Bは凹部45に臨む位置にいて弾力性チューブ9を押し潰さず、ローラ軸体Cは後方の押圧面44bとで弾力性チューブ9を押し潰している。この状態2では、弾力性チューブ9内では、ローラ軸体Aとローラ軸体Cとで一つの独立した内部空間が形成され、その内部空間に液体が充満している。
【0066】
状態2から状態4までは前記弾力性チューブ9内に形成された内部空間に大きな変化がなく、状態2から状態4までに至るようにローラ軸体A,B,Cが並進移動(実際には回転移動)していくと、ローラ軸体A及びCによる弾力性チューブ9のしごきによってローラ軸体Aとローラ軸体Cとで形成された弾力性チューブの内部空間内に存在する液体がローラ軸体A,B,Cの移動とともに前方に進行していく。
【0067】
図6において、状態5では、ローラ軸体Bが凹部45と前方の押圧面44aとの境に置近づきつつある。ローラ軸体Bからみると、ローラ軸体Bは凹部45における溝の前方壁に近づきつつある。ローラ軸体Bが凹部45の前方壁に近づくに連れて、ローラ軸体Bと押圧面44aとにより挟まれている弾力性チューブ9の断面も減少していく。弾力性チューブ9の断面積が減少しつつある一方、ローラ軸体Cは後方の押圧面44bに弾力性チューブ9を押し潰しつつ進行しているので、ローラ軸体Bと押圧面44aの前端部つまり凹部45の前方立ち上がり面とで挟まれて形成される弾力性チューブ9内の小さくなりつつある間隙を通って、ローラ軸体Cが扱きにより押し出す量と同じ量の液体を、ローラ軸体Aとローラ軸体Bとの間の弾力性チューブの内部空間に、押し出して行く。ローラ軸体Bが前方押圧面44aに到達する寸前においては、ローラ軸体Cの扱きにより弾力性チューブ9内の液体が押圧されている圧力と弾力性チューブ9自体の弾力性とにより、ローラ軸体Bと前方の押圧面44aとにより弾力性チューブ9の内部が押し潰される寸前のときに形成される弾力性チューブ9内の間隙を通ってローラ軸体Bとローラ軸体Cとの間に位置する弾力性チューブ9内の空間に存在する液体が高速でローラ軸体Aとローラ軸体Bとの間に位置する弾力性チューブ9内の空間に移動する。
【0068】
ローラ軸体A,B,Cがさらに進行してローラ軸体BCが前方の押圧面44aに到達した瞬間に、ローラ軸体Bが押圧面44aとで弾力性チューブ9を押し潰し、その結果としてローラ軸体Aとローラ軸体Cとの間に形成されていた一つの空間が分断されて、状態6が実現する。状態6に移行する寸前では、ローラ軸体Bに対応する弾力性チューブ9内の液体がローラ軸体Bとローラ軸体Aとの間にある弾力性チューブ9内に移動しており、状態6に移行した瞬間においてはそれまでローラ軸体Bに対応する弾力性チューブ9内に存在する液体がローラ軸体Bとローラ軸体Aとの間にある弾力性チューブ9内への移行を完了している。
【0069】
図6において、状態6では、ローラ軸体Bとローラ軸体Cとの間に存在する弾力性チューブ9は自らの弾力性によりローラ軸体に接触していない状態と同じ状態に戻り、ローラ軸体Bとローラ軸体Cとの間で弾力性チューブ9の元の外径及び内径を有するチューブに戻っている。状態6では、ローラ軸体Aは押圧面44aから離脱しているので、ローラ軸体Bの進行方向においてローラ軸体Bの先に位置する弾力性チューブ9内の液体はローラ軸体Bにより押圧されるもののローラ軸体Aによりせき止められることがない。したがって、状態5の場合にローラ軸体Bに対応する弾力性チューブ9内に存在した液体がローラ軸体Bの前方に位置する弾力性チューブ9内に容易に移動することができるのである。
【0070】
状態6から状態8までは、ローラ軸体Bが弾力性チューブ9内の液体を押し出す。ローラ軸体Bによる液体の押し出し量は、状態2の場合のローラ軸体Aとローラ軸体Cとで形成される弾力性チューブ9内の空間内に存在する液量Xから状態6の場合のローラ軸体Bとローラ軸体Cとで形成される弾力性チューブ9内の空間内に存在する液量Yを差し引いた量V1(=X−Y)である。
【0071】
状態9は状態1と同じである。よって、このマルチチューブポンプによると、状態1から状態8までを一つのサイクルとして第1弾力性チューブである弾力性チューブ9において液量V1(=X−Y)の吐出量が実現される。
【0072】
一方、第2弾力性チューブである弾力性チューブ8によると液量V2=Yの吸引吐出が実現される。
【0073】
故に、このマルチチューブポンプにおいては、第1弾力性チューブ及び第2弾力性チューブの内径が同じであり、第1弾力性チューブをしごくローラ軸体とそのローラ軸体に隣接するローラ軸体との間隔が第2弾力性チューブをしごくローラ軸体とそのローラ軸体に隣接するローラ軸体との間隔とが同じであり、第1弾力性チューブをしごくローラ軸体と第2弾力性チューブをしごくローラ軸体とが同じ直径を有している場合には、第2弾力性チューブにより液量Yが吐出され、第1弾力性チューブにより液量V1(=X−Y)が吐出されるから、第1弾力性チューブでは第2弾力性チューブにおける吐出液量V2よりも(X−2Y)で示される量だけ多い液量が吐出されることになる。
【0074】
第1弾力性チューブの内径と第2弾力性チューブの内径とが相違する場合においても第2マルチチューブの吐出量と第1マルチチューブの吐出量とが相違する。この場合には第1弾力性チューブの内径、第2弾力性チューブの内径、ローラ軸体の直径、ローラ軸体の個数により第2マルチチューブの吐出量と第1マルチチューブの吐出量とを相違させることができ、吐出量の差を決定することができる。したがって、この発明に係るマルチチューブポンプによると、吐出流量又は吐出流量比を容易に設定することができる。
【0075】
図示しつつ以上に説明したマルチチューブポンプは一実施例である。この発明に係るマルチチューブポンプにおいては、第1チューブポンプにおける押圧面に一つの凹部が形成されているが、
図7及び
図8に示されるように、押圧面44に複数の凹部45が形成されていてもよい。
【0076】
この発明に係るマルチチューブポンプを利用して定量サンプリン装置を形成することができる。
【0077】
この発明に係る定量サンプリング装置の一例を
図9に示す。
【0078】
図9に示すように、定量サンプリング装置10は、例えば同一内外径の弾力性チューブである希釈液供給チューブと希釈生体液導出チューブとを有するふたつのチューブポンプ、すなわち第1チューブポンプと第2チューブポンプとを備えるマルチポンプ7を有する。
【0079】
第2チューブポンプは希釈液供給用のポンプであり、第1チューブポンプは希釈生体液導出用のポンプである。この態様の定量サンプリング装置10では、希釈液タンク14からマルチチューブポンプ7により所定量の希釈液を、希釈液供給流路18を通して体液採取器であるカテーテル12に導入する。カテーテル12は生体液、例えば血液を採取し、カテーテル12により採取された生体液は、希釈液供給流路18を通して導入された希釈液とともにマルチチューブポンプ7により希釈生体液導出流路17を通して吸引される。この際、カテーテル12に供給される希釈液の流量よりも、吸引される希釈液と生体液を合わせた希釈生体液の流量のほうが多くなるようにマルチチューブポンプ7におけるそれぞれのチューブポンプの流量比が設定されている。このようにして、血液はカテーテル12中で希釈液により希釈され、希釈生体液としてマルチチューブポンプ7により、定量サンプリング装置10の外部にあるセンサ13に導かれ、例えば血糖値センサで血糖値等が測定される。そして、一連の生体液測定操作が終了したら、体液の採取を停止し、例えば希釈液で希釈生体液導出流路17内を洗浄してからマルチチューブポンプ用の弾力性チューブを取り外し、別途準備したマルチチューブポンプ用の弾力性チューブに交換する。
【0080】
なお、弾力性チューブは、押し出し成形等の成形法により製造される長尺のチューブを所定長さに切断して製造される。したがって、交換用に準備するマルチチューブポンプ用の弾力性チューブは、長尺のチューブを切り出して作成した弾力性チューブからなる群に属する弾力性チューブを採用するのが、好ましい。長尺のチューブを切り出してなる複数の弾力性チューブは同一内外径を有するからであり、使用済の弾力性チューブを得るために切り出す長尺のチューブとは異なる長尺のチューブを切り出して製造された弾力性チューブを交換用の弾力性チューブに採用するとそれら弾力性チューブの内外径が相違することがあり、設定された流量比を実現することができないことがあるからである。
【0081】
図10は、この発明に係る定量サンプリング装置を一体化して備えている態様の生体成分測定装置の一例を示す概略説明図である。
【0082】
この態様における生体成分測定装置11における定量サンプリング装置は、上述の定量サンプリング装置と同様、同一内外径の弾力性チューブで形成されているチューブポンプからなるマルチチューブポンプ7を備えている。さらに、この態様の生体成分測定装置11では、定量サンプリング装置に加え校正液供給システムおよびサンプル測定システムを備えている。サンプル採取については上述の定量サンプリング装置と同様であり、サンプル測定システムはセンサ13、排液流路21および排液タンク16からなっている。そして、サンプル測定時は上記と同様に、希釈生体液がマルチチューブポンプ7によりセンサ13に導かれて血糖値等の測定項目が測定される。この態様の生体成分測定装置11のマルチチューブポンプ7は3基以上のローラポンプを備え、それぞれのチューブポンプは同じ内径のチューブで構成されていることが好ましい。そして、センサ13の校正をする際には、切替弁20a及び切替弁20bを切り替えて、希釈生体液に替えて校正液をセンサ13に導入してセンサの校正を行う。
【0083】
センサの校正は次のようにして行うことができる。
【0084】
すなわち、(1)切替弁20a、20bを切り替えて切替弁20aは、希釈生体液導出流路17がカテーテル12からセンサ13までを導通するが校正液流路19に対して閉鎖する状態にし、切替弁20bは、カテーテル12側と希釈液タンク14側とが導通するように希釈液供給流路18を導通状態にするが校正液タンク15に対して閉鎖する状態にする。このような切替弁20a及び切替弁20bの状態下に、カテーテル12から体液を吸い出さない状態にして、希釈液だけをセンサ13に送り込み、糖濃度零の希釈液を測定するセンサ13からの出力をベース値とする。次いで、(2)前記(1)の工程後に、切替弁20bを切り替えて希釈液供給流路18を不通状態すなわち閉鎖状態にするとともに、切替弁20aを切り替えて校正液流路19とセンサ13に通じる希釈生体液導出流路17とを導通状態にすることにより、センサ13に校正液を送り込み、校正液を検知したセンサ13から出力されるデータをスパン値とする。(3)前記ベース値とスパン値とから糖の独活と出力電流との関係を求めて校正を終了する