特許第5872967号(P5872967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872967
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】細骨材水分量の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20160216BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G01N33/24 E
   G01N27/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-128026(P2012-128026)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-253802(P2013-253802A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】下茂 道人
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−121578(JP,A)
【文献】 特開2011−002448(JP,A)
【文献】 特開2002−022689(JP,A)
【文献】 実開平06−061346(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0218462(US,A1)
【文献】 特開2001−215203(JP,A)
【文献】 特開昭64−046683(JP,A)
【文献】 特開2002−062362(JP,A)
【文献】 特開2003−194758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00−33/46
G01N 27/00−27/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂の表面に4つの電極、すなわち電流電極2本と電圧電極2本とを設置し、電流電極間に一定電流を流す測定手段と、
流した際の電圧電極間の電圧差を比抵抗値として取り出す手段と、
事前に求めた水分量と比抵抗値の関係から管理値を設定して記憶する管理値記憶手段と、
前記の測定手段から得た比抵抗値と、管理値記憶手段に記憶させた管理値とを比較する判定手段と、
判定手段で比較した結果、比抵抗値が管理値に達したことを表示する表示手段と、
から構成したことを特徴とする細骨材水分量の管理方法。
【請求項2】
砂の表面に4つの電極、すなわち電流電極2本と電圧電極2本とを設置し、電流電極間に一定電流を流す測定手段と、
流した際の電圧電極間の電圧差を電気導電度として取り出す手段と、
事前に求めた水分量と電気導電度の関係から管理値を設定して記憶する管理値記憶手段と、
前記の測定手段から得た電気導電度と、管理値記憶手段に記憶させた管理値とを比較する判定手段と、
判定手段で比較した結果、電気導電度が管理値に達したことを表示する表示手段と、
から構成したことを特徴とする細骨材水分量の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細骨材水分量の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートダムの合理化施工方法として開発されたRCD工法は、セメント量を少なくした超硬練りのコンクリートをブルドーザで敷均しをし、振動ローラで締め固める工法である。
この工法の高速化には表面水分量を8〜10%程度に調整した細骨材をできるだけ短い時間間隔で安定的に現場へ供給する必要がある。
しかし原石山で採取した骨材は多量の水分を含んでいるために、その水分を短時間で低減する必要がある。
そのために、水分が重量で下方へ移動することによる自然排水方法と、ウエルなどを砂山に挿入して負圧を与えて吸引する強制排水工法とが採用されている。
このいずれの方法を採用するにしても、排水の進行程度、排水完了の判断が必要となる。
そのために排水量を測定して管理する方法、水分計を砂山内に設置する方法、経験的に水分量を予測する方法などが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−27653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の細骨材水分量の管理方法にあっては、次のような問題点がある。なお、以下では、細骨材を砂、その山を砂山などと表現する。
<1> 排水量を測定することにより、砂山の内部の水分量を推定することは可能である。しかし、すべての排水を集めるための、堰、排水路、排水タンク流量測定装置などを設置する必要がある、累積湧水量の測定は一般的には測定精度が低い、精度を上げるためには計器の設置に高い費用がかかる、排水量は水分の低下とともに減少するから、微妙な変化から判断する必要があり、排水量だけから、排水の完了時期を決定することは困難である、といった問題がある。
【0005】
<2> 水分計を砂山内に設置することは可能である。しかし水分センサーで得られる情報はセンサー周辺の局所的な水分量に関するものであって砂山全体に関するものではない、という問題がある。その問題はセンサーの数を増やして対応できるが、経済的な負担とともに、骨材をダンプに積み替えるたびにすべてのセンサー、ケーブルを撤去する必要があって現実的ではない。砂山ではなくズリ瓶に細骨材を貯蔵する方式では、瓶内に人が入ることを想定していないから、砂中への水分計の設置や撤去はできない。
【0006】
<3> 経験的に水分量を予測することは可能である。しかしこの方法では排水時間と水分量との関係を求めるまで試行錯誤が必要となり品質低下の原因となる。また砂山に投入される細骨材の粒度分布や水分量によって排水時間が大きく左右されるため、原石山での採取箇所の地質条件により骨材の性質が変化する場合には安全率を大きく取らざるを得ず、効率的な排水管理を行うことは困難である。また砂山にウエルを差し込むような強制排水方法では、砂山中の水分を把握しながら柔軟に排水位置や吸引圧を変えるなどの排水管理を行う場合には、砂山中の水分量の把握が不可欠であり、経験的に予測する方法は採用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明の細骨材水分量の管理方法は、砂の表面に4つの電極、すなわち電流電極2本と電圧電極2本とを設置し、電流電極間に一定電流を流す測定手段と、流した際の電圧電極間の電圧差を比抵抗値として取り出す手段と、事前に求めた水分量と比抵抗値の関係から管理値を設定して記憶する管理値記憶手段と、前記の測定手段から得た比抵抗値と、管理値記憶手段に記憶させた管理値とを比較する判定手段と、判定手段で比較した結果、比抵抗値が管理値に達したことを表示する表示手段と、から構成したことを特徴とするものである。
さらに本発明の細骨材水分量の管理方法は、砂の表面に4つの電極、すなわち電流電極2本と電圧電極2本とを設置し、電流電極間に一定電流を流す測定手段と、流した際の電圧電極間の電圧差を電気導電度として取り出す手段と、事前に求めた水分量と電気導電度の関係から管理値を設定して記憶する管理値記憶手段と、前記の測定手段から得た電気導電度と、管理値記憶手段に記憶させた管理値とを比較する判定手段と、判定手段で比較した結果、電気導電度が管理値に達したことを表示する表示手段と、から構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の細骨材水分量の管理方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 砂山の表面に電極を差し込むだけで、すなわち砂山の内部に計測器を設置することなしに砂山の内部の水分変化を継続して把握することができる。
<2> 砂中の排水の状況が、下方飽和上昇中、表面水量減衰期、表面水量安定期のどの時期にあるかを知ることができる。
<3> 比抵抗値などを連続してモニタリングできるから、砂中の排水過程の進行状況を把握することができる。
<4> 強制排水の場合に、比抵抗値などが所定の値に達する前に変化速度が鈍くなったとすると、排水ウエルの配置位置や、設置数、吸引圧の変更などの排水効率を促進する対策を採用すべきか否かの判断の客観的材料として採用することができる。
<5> またそれらの対策を行った後の比抵抗値の変化から、排水促進工法の効果を確認することができる。
<6> 比抵抗値が所定の表面水量に対応する値まで低下したことを確認することで、それ以降の余分に排水時間を伸ばす必要がなく、経済的に排水を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の細骨材水分量の管理方法の実施例の説明図。
図2】ズリ瓶へ設置した場合の説明図。
図3】比抵抗測定原理の説明図。
図4】細骨材水分量の変化の説明図。
図5】他の実施例の水分量の変化の説明図。
図6】本発明の管理方法のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
<1>電極の配置
砂の表面に4つの電極、すなわち電流電極C1、C2の2本と、電圧電極P1、P2の2本とを設置する。
電極は、砂山1の下部の両側のほぼ正対する位置に、一対を埋め込んで設置する。
その場合に両電流電極Cは、両電圧電極Pよりも砂山の外側か下方に配置する。
砂山ではなくズリ瓶2に砂を集積する場合にも、ズリ瓶の両側に、一対を埋め込んで設置する。(図2
なおここで「ズリ瓶」とは、骨材ビン、土砂ビンなどといい、これら材料の集設用設備のことをいう。
この電極C1、C2、P1、P2は、砂山1やズリ瓶2へ砂を投入した後に砂中に挿入し、排水が完了したと判断したら、砂の搬出前に引き抜いて取り除く。
したがって砂の投入作業や搬出作業に支障を及ぼすことがない。
【0012】
<2>測定方法
電圧電極P1、P2よりも外側か下方に位置する電流電極C1、C2の間に一定電流を流す。
するとその際の電圧電極P1、P2間の電圧差を得ることができるから、その結果から電極間の砂山1、ズリ瓶2の内部の比抵抗値、あるいはその逆数である電気伝導度を測定する。
この電圧差から比抵抗値を測定する手法は公知であるが、以下の方法で行うことができる。
すなわち、砂中に2つの電流電極C1、C2と二つの電圧電極P1、P2を図3のように配置した場合、その比抵抗値は次式で得られる。(物理探査ハンドブック、p253−254、物理探査学会1998)
R=G(V/I)
ここに、V:電圧
Gは電極配置(電極間距離)で決定される係数である。
なお以下の記載では「比抵抗値」だけを記載するが、その逆数である電気伝導度も同時に意味しているものである。
【0013】
<3>測定条件の入力
管理用パソコンに、測定条件、管理値R*を入力する。
ここに測定条件とは、測定時間の間隔Δtその他の条件である。
管理値R*については後述する。
【0014】
<4>比抵抗測定
電極間に一定の電流を流した際の電圧電極P1、P2間の電圧差から測定した比抵抗測定値をデータとして取り出して管理用のパソコンに入力する。
測定値は最初の一度の値Rtだけではなく、測定条件にしたがって、測定時間Δtの経過ごとの値Rt+Δt、・・・を入力する。
その理由は、砂中の水は、砂山1でもズリ瓶2でも、内部への砂の投入後に引力によって下方に移動するからである。
その現象を説明すると、初期にはまず砂山中の水は重力により下に移動するため砂山の下部の水分量が上昇する。
その後、排水がさらに進むと下部の水も排水される。
そのために、砂山の下部に電極を設置し、砂の投入後の比抵抗値を測定すると、図7に示すように変化する。
すなわちまず初期の状況からいったん比抵抗値は低下し、その後に上昇し、所期の比抵抗値よりさらに上昇し、その後に一定値となる。
上記のような比抵抗値の変化を、時間間隔Δtで連続モニタリングすることによって、砂中の排水過程の進行状況を把握することができる。
【0015】
<5>管理値R*の決定
まず比抵抗値と骨材水分量の関係を事前に求めておく必要がある。
それは、ある砂山1、ズリ瓶2内の砂が原石山のどこから採取したか、その出所によって比抵抗値と骨材水分量の関係が異なるからである。
そのために砂からサンプルを採取し、その水分量を水分計で測定し、同時にその際の比抵抗値を測定して両者の関係を得る。
複数の関係値の中で、排水完了と判断してよいと思われる水分量に対応する比抵抗値を、目標管理値R*として設定しパソコンにデータとして記憶させる。
なお目標管理値R*は目標水分量に対応する室内試験結果を入力するが、操業時に得られた結果をもとに修正することもできる。
【0016】
<6>判定手段
前記の測定手段により時間差Δtをとって連続して得た比抵抗値Rt、Rt+Δt、・・・・を、管理値記憶手段に記憶させた管理値R*と継続して比較する。
徐々に変化する比抵抗値が、やがて管理値R*に近づく。
【0017】
<6−1>未達成
判定手段では、Rt+Δtが管理値R*より小さい場合には、その砂山の水分量はいまだ目標値に達していない、と判断する。
その際に、測定した比抵抗値Rt+Δtと、比抵抗値Rtとの差を時間差Δtで除した値が負であれば、比抵抗は低下中であり、下方飽和上昇中(判定I)と判断する。
その際に、測定した比抵抗値Rt+Δtと、比抵抗値Rtとの差を時間差Δtで除した値が正であれば、比抵抗は上昇中であり、表面水量は減少中(判定II)と判断する。
その場合には比抵抗の測定を繰り返すことになる。
【0018】
<6−2>達成
Rt+Δtが管理値R*より大きい場合には、その砂の水分量はすでに目標値に達している(判定III)と判断する。
すなわちある時点の比抵抗Rt+Δtが目標管理値R*を超えた時点をもって排水完了と判断し、判定結果をパソコンの表示画面に表示する。
このような判断ができることによって、余分に排水時間を延長することなく、負圧による排水作業、あるいは重力による排水作業を終了でき、コンクリートの混練用に取り出すことができるので経済的である。
【0019】
<7>変化する数値の活用
以上の方法は、時間ごとに変化する比抵抗値が目標管理値に一致した場合にその後の排水を終了する方法である。
それとは別に、強制排水の場合、比抵抗値が所定の値に達する前に変化速度が鈍くなった場合には排水ウエルの配置や配置数、吸引圧などを変更して最適の条件に修正して無駄な排水の継続を避けるような方法として、本発明の管理方法を利用することができる。
またこのような排水ウエルの設置条件の変更を行った場合に、それが適正な変更であったのかどうかを、比抵抗値の変化から確認することができる。
【符号の説明】
【0020】
C1、C2:電流電極
P1、P2:電圧電極
1:砂山
2:ズリ瓶
図1
図2
図3
図4
図5
図6