(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁歪軸の軸方向の他端部側と前記クランク軸との間に、前記磁歪軸に捩れを生じさせることを許容する軸受けが設けられている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の磁歪軸結合構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の構造では、クランク軸に形成されたスプラインの軸部に磁歪軸に形成されたスプラインの孔部が嵌合されているため、クランク軸と磁歪軸とが相対的に移動するのを防止するための抜け止め構造が必要となる。このため、寸法精度によってはクランク軸と磁歪軸との間にガタツキが発生する可能性があると共に、組み付け工程が煩雑となる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、クランク軸と磁歪軸との間のガタツキの発生を抑制し、組み付け時の作業性を向上することができる磁歪軸結合構造及び自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る磁歪軸結合構造は、両端部にクランクアームが取り付けられるクランク軸と、前記クランク軸の軸方向の一端側に設けられた雄ねじ部と、自転車に固定された支持部材に対して回転可能に設けられると共に中空状に形成され、前記クランク軸の軸方向の
一端側から他端側
までの外周面に外挿されると共に前記クランク軸と一体的に回転し、前記クランク軸に作用するトルクに応じて生じる歪により透磁率が変化する磁歪軸と、前記磁歪軸の軸方向の一端部に形成され、前記雄ねじ部に締結される雌ねじ部と、を有
し、前記クランク軸の前記雄ねじ部が、自転車の前進方向に対して前記クランク軸の軸方向の左側に設けられている。
【0008】
請求項1に記載の発明では、クランク軸の軸方向の一端側に雄ねじ部が設けられている。磁歪軸は、自転車に固定された支持部材に対して回転可能に設けられると共に中空状に形成されており、磁歪軸の軸方向の一端部に雌ねじ部が形成されている。磁歪軸はクランク軸の軸方向の
一端側から他端側
までの外周面に外挿されると共に、磁歪軸の雌ねじ部とクランク軸の雄ねじ部とが締結されることで、クランク軸と一体的に磁歪軸が回転する。
さらに、クランク軸の雄ねじ部が、自転車の前進方向に対してクランク軸の軸方向の左側に設けられている。これにより、磁歪軸に、クランク軸に作用するトルクの大小に応じた捩れを生じさせることができる。
【0009】
この構成では、磁歪軸の雌ねじ部とクランク軸の雄ねじ部とが締結されることで、組み付け時の作業性が向上する。また、磁歪軸の雌ねじ部とクランク軸の雄ねじ部とが締結されることで、クランク軸と磁歪軸との間のガタツキの発生が抑制され、磨耗による精度劣化が発生しにくい。また、クランク軸と磁歪軸との間のガタツキの発生が抑制されるため、磁歪軸を用いたトルク検出の反応性が良好となる。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は請求項2に記載の磁歪軸結合構造において、前記磁歪軸の軸方向の他端部に駆動側回転部材が取り付けられている。
【0011】
請求項
3に記載の発明では、磁歪軸の軸方向の一端部の雌ねじ部とクランク軸の雄ねじ部とが締結されていることで、クランク軸と一体的に磁歪軸が回転し、磁歪軸の回転により磁歪軸の軸方向の他端部に取り付けられた駆動側回転部材が回転する。このため、クランク軸にトルクが作用すると、磁歪軸に捩れを生じさせ、磁歪軸の歪により透磁率が変化する。これにより、磁歪軸を用いたトルク検出の反応性がより一層良好となる。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、請求項1
から請求項
3までのいずれか1項に記載の磁歪軸結合構造において、前記クランク軸の前記雄ねじ部と隣接する位置に、半径方向外側に突出し、かつ前記雄ねじ部に前記雌ねじ部が締結されたときに前記磁歪軸の端面が突き当たる突起部を備える。
【0013】
請求項
4に記載の発明では、クランク軸の雄ねじ部と隣接する位置に、半径方向外側に突出した突起部が設けられており、磁歪軸の端面が突起部に突き当たるまでクランク軸の雄ねじ部に磁歪軸の雌ねじ部を締めこむ。これにより、磁歪軸とクランク軸とが相対的に移動するのを防止する抜け止め構造が不要となると共に、組み付け時の作業性が向上する。
【0014】
請求項
2に記載の発明は、
両端部にクランクアームが取り付けられるクランク軸と、前記クランク軸の軸方向の一端側に設けられた雄ねじ部と、自転車に固定された支持部材に対して回転可能に設けられると共に中空状に形成され、前記クランク軸の軸方向の一端側から他端側までの外周面に外挿されると共に前記クランク軸と一体的に回転し、前記クランク軸に作用するトルクに応じて生じる歪により透磁率が変化する磁歪軸と、前記磁歪軸の軸方向の一端部に形成され、前記雄ねじ部に締結される雌ねじ部と、を有し、前記クランク軸の前記雄ねじ部が、自転車の前進方向に対して
前記クランク軸の軸方向の左側に設けられると共に、前記クランク軸と前記磁歪軸が左ねじとされ、又は、前記クランク軸の前記雄ねじ部が、自転車の前進方向に対して
前記クランク軸の軸方向の右側に設けられると共に、前記クランク軸と前記磁歪軸が右ねじとされている。
【0015】
請求項
2に記載の発明では、クランク軸の雄ねじ部が、自転車の前進方向に対して
クランク軸の軸方向の左側に設けられると共に、クランク軸と磁歪軸が左ねじとされていることで、自転車の前進方向のトルク負荷で、左ねじであれば締まり方向になり、磁歪軸
が緩みにくい。又は、クランク軸の雄ねじ部が、自転車の前進方向に対して
クランク軸の軸方向の右側に設けられると共に、クランク軸と前記磁歪軸が右ねじとされていることで、自転車の前進方向のトルク負荷で、右ねじであれば締まり方向になり、磁歪軸
が緩みにくい。つまり、自転車の前進時が締まり方向になるねじにすることで、磁歪軸が緩むことを防止又は抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の磁歪軸結合構造において、前記磁歪軸の軸方向の他端部側と前記クランク軸との間に、前記磁歪軸に捩れを生じさせることを許容する軸受けが設けられている。
【0017】
請求項5に記載の発明では、磁歪軸の軸方向の他端部側とクランク軸との間に軸受けが設けられているため、クランク軸と一体的に磁歪軸が回転したとき、軸受けにより磁歪軸の軸方向の他端部側にクランク軸に対して捩れを発じさせることが可能となる。このため、磁歪軸に、クランク軸に作用するトルクの大小に応じた捩れを生じさせることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の磁歪軸結合構造において、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とに接着剤が充填又は塗布されている。
【0019】
請求項6に記載の発明では、雄ねじ部と雌ねじ部とに接着剤が充填又は塗布されており、磁歪軸とクランク軸とを強固に固定できると共に、雄ねじ部と雌ねじ部とが緩むのを防止又は抑制することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る自転車は、支持部材に設けられ、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の磁歪軸結合構造と、前記磁歪軸の周囲に設けられたトルクセンサと、前記磁歪軸の軸方向の両端部を回転可能に支持するベアリングと、を有する。
【0021】
請求項7に記載の発明では、支持部材に請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の磁歪軸結合構造を備えており、磁歪軸の雌ねじ部とクランク軸の雄ねじ部とが締結されていることで、クランク軸と一体的に磁歪軸が回転する。磁歪軸の軸方向の両端部は、ベアリングにより回転可能に支持されている。このため、クランク軸と磁歪軸との間のガタツキの発生が抑制され、磨耗による精度劣化が発生しにくい。また、磁歪軸の周囲にトルクセンサが設けられており、クランク軸と磁歪軸との間のガタツキの発生が抑制されることで、トルク検出の反応性が良好となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、クランク軸と磁歪軸との間のガタツキの発生を抑制し、組み付け時の作業性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図において適宜示される矢印UPは自転車上方側を示しており、矢印FRは自転車前方側を示しており、矢印Wは自転車幅方向外側又は内側を示している。
【0025】
図6には、本発明の一実施形態である磁歪軸結合構造が適用される自転車10が側面図にて示されている。
【0026】
図6に示されるように、自転車10は、前方側に斜め上下方向に沿って配置されるヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12より後方側に斜め上下方向に沿って配置されるシートパイプ14と、ヘッドパイプ12とシートパイプ14とを前後斜め方向に沿って連結するメインパイプ16と、ヘッドパイプ12の下部に連結された前ホーク18の下端部に回転可能に取り付けられた前輪20と、を備えている。また、自転車10は、メインパイプ16の後方側に配置されて後輪22の中心に向かって延在されるチェーンステー24と、シートパイプ14の上端部とチェーンステー24の後端部とを繋ぐと共に後輪22を回転可能に支持するバックホーク26と、を備えている。
【0027】
さらに、自転車10は、メインパイプ16の下端部に幅方向に沿って取り付けられる(固定される)支持部材としてのハンガーパイプ28と、ハンガーパイプ28の内部に回転可能に設けられるクランク軸30と、クランク軸30の幅方向両側に取り付けられるクランクアーム32と、クランク軸30によって駆動される駆動側回転部材としての駆動スプロケット34と、を備えている。また、自転車10は、バックホーク26の下端部に設けられる後輪軸36と、後輪軸36に回転可能に取り付けられる後スプロケット38と、駆動スプロケット34と後スプロケット38とに掛け渡されるチェーン40と、を備えている。自転車10では、クランクアーム32に設けられたペダルを踏むと、クランク軸30を介して駆動スプロケット34が回転し、チェーン40が周回移動することで後スプロケット38が回転する。後スプロケット38の回転により後輪22に駆動力が伝達され、自転車10が走行するようになっている。
【0028】
また、自転車10の前輪20には、補助電動装置の駆動モータ42が設けられている。シートパイプ14には、補助電動装置の電源であるバッテリー44と、補助電動装置を制御するコントローラ46と、が設けられている。
【0029】
図1には、本発明の一実施形態である磁歪軸結合構造50が適用されるハンガーパイプ28及びセンサユニット52付近の構成が断面図にて示されている。また、
図2には、
図1に示す磁歪軸結合構造50が適用されるハンガーパイプ28及びセンサユニット52付近の構成が分解斜視図にて示されている。
【0030】
図2に示されるように、自転車10は、軸方向が自転車10の幅方向に沿って配置されている前記ハンガーパイプ28と、ハンガーパイプ28の軸方向の一端28A側から矢印A方向に挿入されるセンサユニット52と、ハンガーパイプ28の軸方向の一端28Aとセンサユニット52との間に介在される回り止め部材54と、ハンガーパイプ28の軸方向の他端28B側から矢印B方向に挿入されてセンサユニット52をハンガーパイプ28に固定する円筒状の固定部材56と、を備えている。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、センサユニット52は、略円筒状のハウジング60を備えており、このハウジング60内に、本発明の一実施形態である磁歪軸結合構造50が適用されている。ハウジング60は、ほぼ一定の外径に形成された円筒部60Aと、円筒部60Aの軸方向の端部が円筒部60Aの外径より拡径された大径部60Bと、を備えている。円筒部60Aの軸方向の端部である大径部60Bと反対側の外周面には、雄ねじ部60Cが形成されている。ハウジング60の大径部60Bには、環状体62が外挿されており、環状体62の端縁にはフランジ部62Aが形成されている。本実施形態では、環状体62とハウジング60の大径部60Bとはねじ止めされている。なお、ねじ止めに限定されるものではなく、ハウジング60の大径部60Bが環状体62に圧入される構成でもよい。また、ハウジング60と環状体62は一体で形成されてもよい。
【0032】
図1に示されるように、磁歪軸結合構造50は、軸方向の両端部にクランクアーム32(
図6参照)が取り付けられる前記クランク軸30と、クランク軸30に外挿されると共にクランク軸30の軸方向の一端30A側に固定される中空状(略円筒状)の磁歪軸66と、を備えている。磁歪軸66の軸方向の両端部は、ハウジング60内の軸方向両側に配置されたベアリング64を介してハウジング60に回転可能に支持されている。
【0033】
図1、及び
図3〜
図5に示されるように、磁歪軸66は、外径がほぼ同じに形成された大径部66Aと、軸方向の一端部が大径部66Aよりも小径とされた小径部66Bと、を備えている。小径部66Bの内径は、大径部66Aの内径よりも小径とされている。小径部(軸方向の一端部)66Bの内周面には、雌ねじ部86が形成されている。
【0034】
また、クランク軸30の軸方向の一端30A側の外周面には、雌ねじ部86が螺合される雄ねじ部88が形成されている。また、クランク軸30の軸方向の一端30A側の雄ねじ部88に隣接する端部側には、半径方向外側に突出した突起部90が設けられている。突起部90は、クランク軸30の周方向に沿って設けられている。そして、磁歪軸66の雌ねじ部86をクランク軸30の雄ねじ部88に螺合させ、磁歪軸66の軸方向の一端部である小径部66Bの端面がクランク軸30の突起部90に突き当たるまで締めこむことで、磁歪軸66がクランク軸30の軸方向の一端30A側に固定されている。
【0035】
その際、磁歪軸66の雌ねじ部86とクランク軸30の雄ねじ部88に接着剤が塗布された状態で雌ねじ部86と雄ねじ部88とが螺合され、又は雌ねじ部86と雄ねじ部88との締結部に接着剤が充填されていることが好ましい。このように接着剤を塗布又は充填することで、磁歪軸66をクランク軸30に強固に固定することができると共に、雌ねじ部86と雄ねじ部88とが緩むのを防止又は抑制することができる。
【0036】
また、磁歪軸66の大径部66A(軸方向の中央部及び他端部側)の内周面とクランク軸30の外周面との間には、所定のクリアランスが設けられている(隙間が形成されている)。大径部66Aの軸方向の他端部(小径部66Bと反対側)の内周面とクランク軸30の軸方向の他端30B側の外周面との間には、軸受けとしての円筒状のすべり軸受け68が介在されている。
【0037】
本実施形態では、磁歪軸66の雌ねじ部86をクランク軸30の雄ねじ部88に締結固定した後、大径部66Aの軸方向の他端部とクランク軸30の軸方向の他端30B側の外周面との間にすべり軸受け68をガタなく介挿している。
【0038】
図1に示されるように、磁歪軸66の大径部66Aの周囲には、クランク軸30に作用するトルクを検出するトルクセンサ70が配設されている。トルクセンサ70は、磁歪軸66の外周面を囲むように配置されており、ハウジング60に回転しないように固定されている。トルクセンサ70にはハーネス76が接続されており、ハーネス76はハウジング60に形成された開口61から外側に延びている。
【0039】
また、
図1及び
図4に示されるように、磁歪軸66の大径部66Aの軸方向の他端部には、軸方向に沿って複数の突部が形成された嵌合部66Cが形成されている。その嵌合部66Cに前記駆動スプロケット34の半径方向内側の円筒部34Aが嵌合されている。駆動スプロケット34の円筒部34Aは、大径部66Aの端部に形成された周溝に嵌入された止め輪94によって磁歪軸66に対して抜け止めされており、駆動スプロケット34が磁歪軸66と一体となって回転する(
図3参照)。
【0040】
図3及び
図5に示されるように、磁歪軸66の大径部66Aには、軸方向と交差する方向に配置された複数のスリット67Aが設けられた磁歪効果を持つ磁歪箔が巻きつけられ止着されている。スリット67Aは、周方向に沿ってほぼ平行に複数配置されると共に、これらが軸方向に3列配置されている。また、これらの3列の複数のスリット67Aの図中の右隣りには、3列の複数のスリット67Aと略左右対称に配置された3列の複数のスリット67Bが磁歪箔に設けられている。磁歪箔は、例えば、鉄系アモルファス合金、ニッケル系合金、クロム系合金等の磁歪効果を持つ磁性材料で形成されている。
【0041】
左右のクランクアーム32(
図6参照)によりクランク軸30に回転が伝えられると、磁歪軸66の軸方向一端部の小径部66Bに形成された雌ねじ部86がクランク軸30の一端30A側の雄ねじ部88に締結固定されているため、クランク軸30と一体的に磁歪軸66が回転する。さらに、磁歪軸66の軸方向他端部の嵌合部66Cには駆動スプロケット34が固定されており、駆動スプロケット34に回転が伝えられる。
【0042】
その際、クランクアーム32からクランク軸30にトルクが作用すると、磁歪軸66にトルクの大小に応じた捩り力が作用する。磁歪軸66に捩り力が作用すると、磁歪箔のスリット67A、67Bの一方に引張力が作用し、他方に圧縮力が作用することで、磁歪箔にトルクの大小に応じた捩れ、すなわち歪が発生する。磁歪箔に歪が発生すると、磁歪箔を構成する磁性材料の透磁率が変化する。
図1に示されるように、トルクセンサ70には、軸方向の両側に磁歪軸66の外周面を囲むコイル74が設けられており、透磁率の変化によりコイル74に誘起されるインダクタンスが変化する。このコイル74に誘起されるインダクタンスの変化量を検出することで、クランク軸30に作用するトルクを検出する。
図6に示されるように、コントローラ46では、検出されたトルクに基づき、駆動モータ42を制御し、補助動力を出力して前輪20を駆動するようになっている。
【0043】
本実施形態では、駆動スプロケット34が自転車10の進行方向右側に備えられている(
図6参照)。この構成では、クランク軸30の雄ねじ部88が、自転車10の前進方向に対して左側に設けられると共に、クランク軸30と磁歪軸66が左ねじとされている。これにより、自転車10の前進方向のトルク負荷で、左ねじであれば締まり方向になり、磁歪軸66は突起部90に突き当たっているので緩むことを防止又は抑制できる。逆回転はフリー機構によりトルクはかからない。
【0044】
一方、駆動スプロケットが自転車の進行方向左側に備えられている場合は、クランク軸の雄ねじ部が、自転車の前進方向に対して右側に設けられると共に、クランク軸と前記磁歪軸が右ねじとされていることが好ましい。これにより、自転車の前進方向のトルク負荷で、右ねじであれば締まり方向になり、磁歪軸は突起部に突き当たっているので緩むことを防止又は抑制できる。つまり、自転車の前進時が締まり方向になるねじにすることで、磁歪軸が緩むことを防止又は抑制できる。
【0045】
図2に示されるように、センサユニット52には、ハウジング60内に磁歪軸結合構造50を構成する磁歪軸66及びクランク軸30が予め回転可能に組み込まれている(
図1参照)。この状態でセンサユニット52が、自転車10のメインパイプ16(
図6参照)の下端部に固定されたハンガーパイプ28に組み付けられる。
【0046】
ここで、センサユニット52のハンガーパイプ28への組み付け構造について説明する。
図2に示されるように、センサユニット52は、ハウジング60の雄ねじ部60C側が、ハンガーパイプ28の軸方向の一端28A側から矢印A方向にハンガーパイプ28の内部に挿入される。その際、ハンガーパイプ28の軸方向の一端28Aとセンサユニット52のフランジ部62Aとの間に回り止め部材54が介在されている。
【0047】
センサユニット52のフランジ部62Aには、半径方向内側に凹んだ複数の凹部63が設けられている。本実施形態では、複数の凹部63は、フランジ部62Aの周方向に沿ってほぼ等間隔(フランジ部62Aの中心部に対して約90°の位置)に4つ設けられている。
【0048】
回り止め部材54は、環状の本体部54Aと、本体部54Aの外周部から組み付け時のセンサユニット52側に突出した複数の第1係合部54Bと、本体部54Aの外周部から第1係合部54Bと反対側(組み付け時のハンガーパイプ28側)に突出した複数の第2係合部54Cと、を備えている。本実施形態では、第1係合部54Bは、本体部54Aの中心部から約180°の位置に2つ設けられており、第1係合部54Bがセンサユニット52の凹部63にそれぞれ係合されるようになっている。
【0049】
また、ハンガーパイプ28の一端28A側の外周面には、半径方向内側に窪んだ複数の溝部29が軸方向に沿って形成されている。本実施形態では、溝部29は、ハンガーパイプ28の中心部から約180°の位置に2つ設けられている。また、溝部29の底面は、ハンガーパイプ28の一端28Aの端縁から軸方向内側に向かうに従って徐々に浅くなる傾斜面とされている。
【0050】
回り止め部材54の第2係合部54Cは、本体部54Aの中心部から約180°の位置に2つ設けられており、2つの第1係合部54Bの間にそれぞれ設けられている。回り止め部材54の第1係合部54Bがセンサユニット52の凹部63にそれぞれ係合され、回り止め部材54の第2係合部54Cがハンガーパイプ28の溝部29にそれぞれ係合されることで、センサユニット52のフランジ部62Aがハンガーパイプ28の一端28Aに対して回転しないように連結される。
【0051】
ハンガーパイプ28の軸方向中央部(本実施形態では下部側)には、センサユニット52から延びたハーネス76が取り出される開口部80が形成されている。センサユニット52のフランジ部62Aが回り止め部材54によりハンガーパイプ28の一端28Aに対して回転しないように連結された状態で、センサユニット52の円筒部60Aの外周面とハンガーパイプ28の内周面との間には、所定のクリアランスが設けられている(
図1参照)。このため、センサユニット52をハンガーパイプ28に組み付ける際には、ハーネス76を予めハンガーパイプ28の内側から開口部80を通して外側に引き出した状態で、センサユニット52の雄ねじ部60C側をハンガーパイプ28の内部に挿入することで、センサユニット52から延びたハーネス76をハンガーパイプ28の開口部80を通して外部に取り出すことができる。
【0052】
固定部材56は、内周面にセンサユニット52の雄ねじ部60Cに螺合される雌ねじ部56Aを備えている。固定部材56の外周部には、ハンガーパイプ28の他端28B側の内周面82に当接する当接部56Bが形成されている。固定部材56の当接部56Bは、組み付け時のハンガーパイプ28の軸方向外側に向かうに従って外径が徐々に拡大する傾斜面(テーパー面)とされている(
図1参照)。固定部材56の当接部56Bの軸方向外側(組み付け時のハンガーパイプ28への挿入方向と反対側)には、フランジ部56Cが設けられている。
【0053】
図1に示されるように、ハンガーパイプ28の他端28B側の内周面82は、ハンガーパイプ28の他端28B側の端縁から内径が徐々に縮小する傾斜面(テーパー面)とされている。ハンガーパイプ28の内周面82の軸方向に対する傾斜角度は、固定部材56の当接部56Bの軸方向に対する傾斜角度に合わせて形成されている。これにより、固定部材56の雌ねじ部56Aがセンサユニット52の雄ねじ部60Cに締結された状態で、固定部材56の当接部(傾斜面)56Bがハンガーパイプ28の他端28Bの内周面(傾斜面)82に当接し、センサユニット52の軸芯をハンガーパイプ28の軸芯に位置させる。センサユニット52の軸芯をハンガーパイプ28の軸芯に位置させることで、センサユニット52のハウジング60にベアリング64を介して回転可能に設けられた磁歪軸66及びクランク軸30の軸芯をハンガーパイプ28の軸芯に位置させるようになっている。
【0054】
次に、磁歪軸結合構造50の作用並びに効果について説明する。
【0055】
図1及び
図3〜
図5に示されるように、クランク軸30には、軸方向の一端30A側に雄ねじ部88が形成されており、雄ねじ部88に隣接する端部側には、半径方向外側に突出した突起部90が設けられている。また、磁歪軸66には、軸方向の一端部側の小径部66Bに雌ねじ部86が形成されている。そして、クランク軸30の軸方向の他端30B側から磁歪軸66を外挿し、磁歪軸66の雌ねじ部86をクランク軸30の雄ねじ部88に螺合させ、磁歪軸66の小径部66Bの端面がクランク軸30の突起部90に突き当たるまで締めこむ。これにより、クランク軸30の軸方向の一端30A側に磁歪軸66が固定される。
【0056】
すなわち、磁歪軸66の小径部66B以外の内周面(大径部66Aの内周面)とクランク軸30の外周面との間に隙間が設けられた状態で、クランク軸30の軸方向の一端30A側に磁歪軸66の軸方向の一端部側の小径部66Bが固定されており、クランク軸30と一体的に磁歪軸66が回転する。また、磁歪軸66の大径部66Aにおける軸方向の他端部(小径部66Bと反対側)とクランク軸30の軸方向の他端30B側の外周面との間にすべり軸受け68が介在されている。このため、磁歪軸66にトルクの大小に応じた捩り力が作用すると、磁歪軸66の大径部66Aにおける軸方向の他端部とクランク軸30の外周面とにすべりを発生させることが可能となる。このため、磁歪軸66にトルクの大小に応じた捩れ、すなわち歪を発生させることができる。
【0057】
この磁歪軸結合構造50では、磁歪軸66の雌ねじ部86をクランク軸30の雄ねじ部88に締結するため、組み付け時の作業性が向上する。また、磁歪軸66の雌ねじ部86をクランク軸30の雄ねじ部88に締結するため、クランク軸30と磁歪軸66との間のガタツキの発生が抑制され、磨耗による精度劣化が発生しにくい。さらに、クランク軸30と磁歪軸66との間のガタツキの発生が抑制されるため、磁歪軸66の周囲に設けられたトルクセンサ70によるトルク検出の反応性が良好となる。
【0058】
さらに、磁歪軸66に雌ねじ部86を形成し、クランク軸30に雄ねじ部88を形成するため、従来のスプライン嵌合と比較して、加工性が良い。また、従来のスプライン嵌合と比較して、クランク軸30と磁歪軸66との抜け止めのための止め輪や、クランク軸30に止め輪を嵌入するための周溝を形成する必要がない。
【0059】
また、磁歪軸66の軸方向の一端部側の小径部66Bがクランク軸30に締結固定され、磁歪軸66の軸方向の他端部側(小径部66Bと反対側)の嵌合部66Cには駆動スプロケット34が取り付けられている。このため、クランク軸30と一体的に磁歪軸66が回転すると、磁歪軸66の軸方向の雌ねじ部86と反対側に取り付けられた駆動スプロケット34が回転する。このため、クランク軸30にトルクが作用すると、磁歪軸66にトルクの大小に応じた捩り力が作用し、磁歪軸66に巻きつけられた磁歪箔に歪が発生することで、磁歪箔の透磁率が変化する。これにより、磁歪軸66の周囲に設けられたトルクセンサ70によるトルク検出の反応性がより一層良好となる。
【0060】
さらに、クランク軸30の雄ねじ部88と隣接する位置に、半径方向外側に突出する突起部90が設けられており、クランク軸30の雄ねじ部88に磁歪軸66の雌ねじ部86を小径部66Bの端面が突起部90に突き当たるまで締め込むことで、磁歪軸66がクランク軸30に組み付けられる。このため、従来のスプライン嵌合と比較して、磁歪軸66がクランク軸30から抜けるのを防止する抜け止め構造が不要となると共に、組み付け時の作業性が向上する。
【0061】
さらにまた、磁歪軸66の雌ねじ部86とクランク軸30の雄ねじ部88とに接着剤を予め塗布し、又は磁歪軸66の雌ねじ部86とクランク軸30の雄ねじ部88に接着剤を充填することで、磁歪軸66とクランク軸30とを強固に固定できると共に、雄ねじ部88と雌ねじ部86とが緩むのを防止又は抑制することができる。
【0062】
なお、磁歪軸66に形成された複数のスリット67A、67Bの形状、配置などは、本実施形態に限定されるものではなく、他の形状及び配置に変更可能である。
【0063】
なお、本実施形態では、自転車に固定されるハンガーパイプ28に磁歪軸結合構造が適用されているが、これに限定されず、自転車に固定される電動ユニット、ケース部材などの支持部材に本発明の磁歪軸結合構造を適用してもよい。
【0064】
また、本実施形態では、磁歪軸に駆動スプロケットが設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、駆動プーリーと後プーリーに掛け渡させるベルトを用いた自転車においても本発明が適用可能である。ベルトを用いた自転車の場合、磁歪軸の軸方向の他端部に駆動側回転部材としての駆動プーリーを設けることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態では、磁歪軸66とクランク軸30との間にすべり軸受け68が設けられているが、これに限定されるものではない。磁歪軸66とクランク軸30との間に、例えば、玉軸受けやコロ軸受けなどの転がり軸受けを設けてもよい。