特許第5872984号(P5872984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872984
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20160216BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20160216BHJP
   H02M 7/537 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H02M7/487
   H02M7/48 E
   H02M7/537 D
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-190300(P2012-190300)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-50192(P2014-50192A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松崎 昭憲
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−016161(JP,A)
【文献】 特開2012−130228(JP,A)
【文献】 特開平07−075345(JP,A)
【文献】 特開平06−090569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正負両端に直列に接続された第1コンデンサ及び第2コンデンサと、
前記直流電源の直流電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する三相電力供給部と、
前記三相電力供給部に駆動信号を出力する駆動信号出力部と、
前記第1コンデンサの電圧と前記第2コンデンサの電圧との差電圧、前記三相電力供給部から出力されるU相電圧、U相電流及びW相電圧、W相電流を用いて、前記差電圧を0にするためのパルス信号を前記駆動信号出力部に出力するパルス信号生成部と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記パルス信号生成部は、
前記差電圧、前記U相電流、前記W相電流のそれぞれの時間的な変動を平均化する平均化処理部と、
前記平均化処理部で平均化した前記差電圧、前記U相電流、前記W相電流のそれぞれに対してゲインを掛けるゲイン付加部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記パルス信号生成部は、
平均化してゲインを掛けたU相電圧指令補正信号及びU相電流をU相基準電圧にフィードバックし、平均化してゲインを掛けたW相電圧指令補正信号及びW相電流をW相基準電圧にフィードバックし、平均化してゲインを掛けた差電圧を前記U相基準電圧及び前記W相基準電圧にフィードバックすることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記U相電圧指令補正信号及び前記U相電流を前記U相基準電圧にするフィードバックは減算フィードバックであり、前記W相電圧指令補正信号及び前記W相電流を前記W相基準電圧にするフィードバックは減算フィードバックであり、前記差電圧を前記U相基準電圧及び前記W相基準電圧にするフィードバックは加算フィードバックであることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記パルス信号生成部は、
三角波の搬送波を発生させる搬送波発生器と、
前記差電圧、前記U相電圧指令補正信号、前記U相電流、前記W相電圧指令補正信号、前記W相電流をフィードバックした後のU相電圧指令及びW相電圧指令を、前記搬送波発生器で発生した搬送波と比較する比較器と、を有し、
前記比較器から前記駆動信号出力部に出力するパルス信号を出力することを特徴とする請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記三相電力供給部は、
第1スイッチング素子から第4スイッチング素子を直列に接続した第1アームと第2アームとを備え、
前記第1アーム及び第2アームそれぞれの、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の接続点と前記第1コンデンサ及び第2コンデンサの接続点との間には第1ダイオードが接続され、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子の接続点と前記第1コンデンサ及び第2コンデンサの接続点との間には第2ダイオードが接続され、
前記第1アームの第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子の接続点は三相のU相またはW相のいずれかの三相出力点であり、
前記第2アームの第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子の接続点は第1アームとは異なる三相のU相またはW相のいずれかの三相出力点であり、
前記第1コンデンサ及び第2コンデンサの接続点は三相のV相の三相出力点であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記駆動信号出力部は、
前記三相電力供給部が備える第1アーム及び第2アームの第1スイッチング素子から第4スイッチング素子に、それぞれのスイッチング素子をON、OFFさせるための駆動信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記三相のU相、V相、W相は非接地であることを特徴とする請求項6または7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定的に対称三相交流電圧を出力でき、三相交流電流に重畳される直流成分を抑制できる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルで発電した直流電力を三相交流負荷に供給するためには、太陽電池パネルと三相交流負荷との間にパワ−コンデイショナと称される電力変換装置を介在させる。太陽電池パネルから出力される電力は直流電力であるので、三相交流負荷に電力を供給させるためには、太陽電池パネルから出力される直流電力から交流電力に変換する必要がある。
【0003】
電力変換装置が直流電力を交流電力に変換するときに、電力変換装置から対称的な三相の相電圧または線間電圧が出力されれば良いが、実際には、負荷の不均衡やその他の要因(パルス幅のバラツキ、コンデンサ容量のバラツキなど)によって、安定的に対称三相交流電圧を出力することが難しい。安定的に対称三相交流電圧が出力できないと、出力される三相交流電流に直流成分が含まれることになる。直流成分は商用電源が備えるトランスを偏磁させ、電力の安定供給に支障をきたす。
【0004】
太陽電池パネルを三相交流負荷に電力を供給する電力変換装置において、出力電流に重畳される直流成分を抑制するための技術としては、下記特許文献1に示すようなものがある。
【0005】
特許文献1に示す技術は、出力の1相が接地された3レベルインバータにおいて、直流電源の正負両端に直列接続した第1及び第2コンデンサの中性点の電圧と直流電源の電圧とに基づいて三相電圧補正指令を求め、三相電圧補正指令をd−q軸上の電圧補正指令に変換し、d−q軸上の電圧指令をd−q軸上の電圧補正指令で補正することによって、中性点の電圧の変動を抑制している。中性点の電圧の変動を抑制すると、出力電流に重畳する直流成分も抑制されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−16161号公報(段落0011、0013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明に係る電力変換装置は、3レベルインバータを採用しているものの、特許文献1に開示されている3レベルインバータとは回路構成が異なるため、出力電流に重畳する直流成分を抑制するために、特許文献1に開示されている技術をそのまま適用することはできず、独自の工夫を凝らす必要がある。
【0008】
一般的に3レベルインバータは、PWM出力パルス幅のバラツキや直列接続した第1及び第2コンデンサの容量のアンバランスによって、中間電位のコンデンサに電流が流れ込むため、第1及び第2コンデンサに電圧差が生じやすい。
【0009】
また、2アーム構成の3レベルインバータによって三相電圧を出力すると、第1及び第2コンデンサの中点から三相出力の内の1つの相を引き出すことになるので、負荷のアンバランスによって第1及び第2コンデンサの電圧差が生じやすい。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、安定的に対称三相交流電圧を出力でき、三相交流電流に重畳される直流成分を抑制できる電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る電力変換装置は、第1コンデンサ及び第2コンデンサ、三相電力供給部、駆動信号出力部及びパルス信号生成部を有する。
【0012】
第1コンデンサ及び第2コンデンサは、直列に接続されたコンデンサであり、直流電源の正負両端に接続される。
【0013】
三相電力供給部は直流電源の直流電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する。
【0014】
駆動信号出力部は三相電力供給部に駆動信号を出力し三相電力供給部から負荷に要求される電力が供給されるようにする。
【0015】
パルス信号生成部は、第1コンデンサの電圧と第2コンデンサの電圧との差電圧、三相電力供給部から出力されるU相電圧、U相電流及びW相電圧、W相電流を用いて、差電圧を0にするためのパルス信号を駆動信号出力部に出力する。
【0016】
以上の構成によって、第1コンデンサの電圧と第2コンデンサの電圧との差電圧を抑制でき、三相電力供給部からは対称三相交流電圧が出力されるようになって、三相交流電流に重畳される直流成分が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電力変換装置によれば、第1コンデンサの電圧と第2コンデンサの電圧との差電圧、三相電力供給部から出力されるU相電圧、U相電流及びW相電圧、W相電流を用いて、差電圧を抑制するためのパルス信号を生成しているので、安定的に対称三相交流電圧を出力でき、三相交流電流に重畳される直流成分を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
図2図1に示したパルス信号生成部の構成図である。
図3】本実施形態に係る電力変換装置が3レベルインバータとなる場合の、動作説明に供する図である。
図4】本実施形態に係る電力変換装置が3レベルインバータとなる場合の、動作説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本実施形態に係る電力変換装置の構成と動作について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る電力変換装置の構成図である。また、図2は、図1に示したパルス信号生成部の構成図である。
【0020】
(電力変換装置の構成)
図1に示すように、電力変換装置100は、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2、三相電力供給部120、駆動信号出力部140、パルス信号生成部150を有する。
【0021】
直流電源110は、図示していない太陽電池パネルまたは、太陽電池パネルからの直流電圧を昇圧する昇圧器とを含む。太陽電池パネルは、太陽光の受光量に応じた電圧を出力し、昇圧器は、太陽電池パネルが出力した電圧を一定の電圧にまで昇圧する。
【0022】
直流電源110の正負の両端には、直列に接続された第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2を接続する。第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2は、直流電源110が出力した電力を一時的に蓄えるために設けてある。
【0023】
第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNが一致しているときには、電力変換装置100は線間電圧及び相電圧が等しい対称三相交流電圧を出力できる。ところが、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNが一致せず、差電圧VbusOが生じてしまっていると、電力変換装置100は線間電圧及び相電圧が等しくない非対称の三相交流電圧を出力する。非対称の三相交流電圧は、出力電流に直流分の電流を含む。なお、本実施形態では第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2に電解コンデンサを用いる。
【0024】
三相電力供給部120は、直流電源110の直流電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する。
【0025】
三相電力供給部120は、第1スイッチング素子121、第2スイッチング素子122、第3スイッチング素子123、第4スイッチング素子124を直列に接続した第1アームM1を有する。
【0026】
三相電力供給部120は、第1スイッチング素子125、第2スイッチング素子126、第3スイッチング素子127、第4スイッチング素子128を直列に接続した第2アームM2を有する。
【0027】
なお、第1アームには、図4に示すようなパルス信号が供給される。第2アームにも、第1アームと同様なパルス信号が供給される。このパルス信号については後に詳しく説明する。
【0028】
第1アームM1の第1スイッチング素子121及び第2スイッチング素子122の接続点と第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の接続点との間には第1ダイオードD1が接続される。第3スイッチング素子123及び第4スイッチング素子124の接続点と第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の接続点との間には第2ダイオードD2が接続される。
【0029】
第2アームM2の第1スイッチング素子125及び第2スイッチング素子126の接続点と第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の接続点との間には第1ダイオードD3が接続される。第3スイッチング素子127及び第4スイッチング素子128の接続点と第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の接続点との間には第2ダイオードD4が接続される。本実施形態ではスイッチング素子としてIGBTモジュールを用いる。
【0030】
第1アームM1の第2スイッチング素子122及び第3スイッチング素子123の接続点は三相のW相の三相出力点である。第2アームM2の第2スイッチング素子126及び第3スイッチング素子127の接続点は三相のU相の三相出力点である。第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の接続点は三相のV相の三相出力点である。三相のU相、V相、W相は非接地である。
【0031】
三相電力供給部120は、U相の電圧を検出するためのコンデンサ130とU相に流れる電流を検出するための電流検出器135を有し、また、W相の電圧を検出するためのコンデンサ131とW相に流れる電流を検出するための電流検出器136を有する。
【0032】
三相電力供給部120は、第1アームM1の第2スイッチング素子122及び第3スイッチング素子123の接続点に、三相のW相の三相出力点の電圧を平均化するリアクトル137を有する。また、第2アームM2の第2スイッチング素子126及び第3スイッチング素子127の接続点に、三相のU相の三相出力点の電圧を平均化するリアクトル138を有する。
【0033】
駆動信号出力部140は三相電力供給部120に駆動信号を出力する。
【0034】
駆動信号出力部140は、三相電力供給部120が備える第1アームM1の第1スイッチング素子121から第4スイッチング素子124に、及び、第2アームM2の第1スイッチング素子125から第4スイッチング素子128にそれぞれの3レベル(図3参照)でスイッチング素子をON、OFFさせるための駆動信号を出力する。
【0035】
パルス信号生成部150は、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNとの差電圧VbusOを、三相電力供給部120から出力されるU相電圧Vu、U相電流Iu及びW相電圧Vw、W相電流Iwをそれぞれ入力し、差電圧VbusOを0Vにするためのパルス信号S1U、S1D、S2U、S2Dを駆動信号出力部140に出力する。
【0036】
図2は、図1に示したパルス信号生成部の構成図である。
【0037】
パルス信号生成部150は、平均化処理部151−155、ゲイン付加部161−165、搬送波発生器170、比較器181−184を有する。
【0038】
平均化処理部151は、U相に流れるU相電流Iuの時間的な変動を平均化する。平均化処理部152は、演算処理された信号Y3の時間的な変動を平均化する。平均化処理部153は、W相に流れるW相電流Iwのそれぞれの時間的な変動を平均化する。平均化処理部154は、演算処理された信号Y5の時間的な変動を平均化する。平均化処理部155は、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNとの差電圧VbusOの時間的な変動を平均化する。
【0039】
ゲイン付加部161、163は、平均化されたU相電流Iu、W相電流IwをゲインK2倍する。ゲイン付加部162、164は、平均化された信号Y3,Y5をゲインK3倍する。ゲイン付加部165は、平均化された差電圧VbusOのゲインをK1倍する。
【0040】
ゲイン付加部161、162は、平均化されゲインを掛けたU相電流Iu、信号Y3を、U相基準電圧から減算フィードバックする。ゲイン付加部163、164は、平均化されゲインを掛けたW相電流Iw、信号Y5を、W相基準電圧から減算フィードバックする。ゲイン付加部165は、平均化してゲインを掛けた差電圧VbusOをU相基準電圧及びW相基準電圧に加算フィードバックする。
【0041】
搬送波発生器170は三角波の搬送波を発生させる。
【0042】
比較器181は、U相電流Iu、信号Y3、差電圧VbusOをフィードバックした後のU相基準電圧を、搬送波発生器170で発生した搬送波と比較し、駆動信号出力部140に出力するパルス信号S1Uを出力する。
【0043】
比較器182は、比較器181と同じく、U相電流Iu、信号Y3、差電圧VbusOをフィードバックした後のU相基準電圧を、搬送波発生器170で発生した搬送波と比較し、駆動信号出力部140に出力するパルス信号S1Dを出力する。
【0044】
比較器183は、W相電流Iw、信号Y5、差電圧VbusOをフィードバックした後のW相基準電圧を、搬送波発生器170で発生した搬送波と比較し、駆動信号出力部140に出力するパルス信号S2Uを出力する。
【0045】
比較器184は、比較器183と同じく、W相電流Iw、信号Y5、差電圧VbusOをフィードバックした後のW相基準電圧を、搬送波発生器170で発生した搬送波と比較し、駆動信号出力部140に出力するパルス信号S2Dを出力する。
【0046】
(電力変換装置の動作)
電源110から直流電圧が出力されると、パルス信号生成部150はパルス信号S1U、S1D、S2U、S2Dを駆動信号出力部140に出力する。駆動信号出力部140は入力したパルス信号S1U、S1D、S2U、S2Dを用いて、三相電力供給部120の第1アームM1の第1スイッチング素子121−第4スイッチング素子124及び第2アームM2の第1スイッチング素子125−第4スイッチング素子128に図4に示すようなパルス信号出力する。
【0047】
第1アームM1の第1スイッチング素子121−第4スイッチング素子124及び第2アームM2の第1スイッチング素子125−第4スイッチング素子128がON/OFFすることにより、図3に示すようなパルス状の出力電圧を生成する。図3のパルス電圧は、リアクトル137、138、コンデンサ130、131により平滑されて正弦波交流電圧を出力する。
【0048】
具体的には、第1アームM1の第1スイッチング素子121には、図4で示すS1Uのパルス状の出力電圧を出力し、第2スイッチング素子122には、XS1Dのパルス状の出力電圧を出力し、第3スイッチング素子123には、XS1Uのパルス状の出力電圧を出力し、第4スイッチング素子124には、S1Dのパルス状の出力電圧を出力する。同様に、第2アームM2の第1スイッチング素子125には、S2Uのパルス状の出力電圧を出力し、第2スイッチング素子126には、XS2Dのパルス状の出力電圧を出力し、第3スイッチング素子127には、XS2Uのパルス状の出力電圧を出力し、第4スイッチング素子128には、S2Dのパルス状の出力電圧を出力する。
【0049】
駆動信号出力部140に入力されたS1U、S1Dは、駆動信号出力部140によって、S1Uの信号が反転され、IGBTの短絡を防止するデッドタイム時間を付加してXS1Uの信号が生成され、また、S1Dの信号が反転され、デッドタイム時間を付加してXS1Dの信号が生成される。同様に、S2U、S2Dは、駆動信号出力部140によって、S2Uの信号が反転され、デッドタイム時間を付加してXS2Uの信号が生成され、また、S2Dの信号が反転され、デッドタイム時間を付加してXS2Dの信号が生成される。
【0050】
各スイッチング素子は図4に示す信号に応じてスイッチングを繰り返す。各スイッチング素子のスイッチングによってU相、V相、W相の三相出力点から、電源110の直流電力を変換した、電気角で120度の位相角を有する三相交流電力を出力する。
【0051】
三相電力供給部120が三相電力を負荷に供給している間、パルス信号生成部150は、図2に示すように、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNとを入力し、両電圧の差電圧VbusOを求める。また、パルス信号生成部150は、U相電圧Vu、V相電圧Vv、W相電圧Vw、及び、U相電流Iu、W相電流Iwを入力する。
【0052】
パルス信号生成部150が求めた差電圧は、図2に示すように、平均化処理部155によって時間的な変動が平均化され、ゲイン付加部165によってK1のゲインが掛けられて信号Y1とされる。信号Y1はU相基準電圧及びW相基準電圧に加算される。
【0053】
パルス信号生成部150は、電流検出器135から入力したU相電流Iuの時間的な変動を平均化処理部151によって平均化する。平均化したU相電流Iuはゲイン付加部161によってK2のゲインが掛けられ信号Y12とされる。信号Y12はU相基準電圧から減算されて信号Y2となる。
【0054】
パルス信号生成部150は、電流検出器136から入力したW相電流Iwの時間的な変動を平均化処理部153によって平均化する。平均化したW相電流Iwはゲイン付加部163によってK2のゲインが掛けられ信号Y22とされる。信号Y22はW相基準電圧から減算されて信号Y4となる。
【0055】
このように、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNの差電圧VbusOによるフィードバックだけではなく、U相電流Iu及びW相電流Iwによるフィードバックを加えるのは次のような理由からである。
【0056】
三相電力供給部120の出力電流が大きくなる(高負荷時)と、差電圧VbusOによるフィードバックだけでは、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNが安定しなくなる。このため、出力電流を平均化した一定量を基準電圧から減算することとした。これにより、高負荷時に生じる差電圧VbusOの変動を迅速に制御することができる。
【0057】
U相基準電圧は図2には図示していないが、U相電圧Vuに同期した正弦波信号である。同様にW相基準電圧は図2には図示していないが、W相電圧Vwに同期した正弦波信号である。
【0058】
パルス信号生成部150は、前記信号Y2の時間的な変動を平均化処理部152によって平均化する。平均化した信号にゲイン付加部162によってK3のゲインが掛けられU相電圧指令補正信号Y13とされる。信号Y2から信号Y13を減算されて信号Y3となる。
【0059】
パルス信号生成部150は、前記信号Y4の時間的な変動を平均化処理部154によって平均化する。平均化した信号にゲイン付加部164によってK3のゲインが掛けられW相電圧指令補正信号Y23とされる。信号Y4から信号Y23を減算されて信号Y5となる。
【0060】
このように、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNの差電圧VbusOによるフィードバック、及び、U相電流Iu及びW相電流Iwによるフィードバックだけではなく、前記信号Y13及びY23によるフィードバックを加えるのは次のような理由からである。
【0061】
三相電力供給部120の出力電流が小さくなる(低負荷時)と、差電圧VbusOによるフィードバックとU相電流Iu及びW相電流Iwによるフィードバックだけでは、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNが安定しなくなる。このため、U相電圧指令補正信号Y13及びW相電圧指令補正信号Y23をU相基準電圧及びW相基準電圧から減算することとした。これにより、低負荷時に生じる差電圧VbusOの変動を迅速に制御することができる。
【0062】
差電圧VbusOによるフィードバック、U相電流Iu及びW相電流Iwによるフィードバック、U相電圧指令補正信号Y13及びW相電圧指令補正信号Y23によるフィードバック、の3つのフィードバックを加えたU相電圧指令IuxとW相電圧指令Iwxは、比較器181−184に出力される。また、搬送波発生器170の三角波の搬送波も比較器181−184に出力される。
【0063】
U相電圧指令Iuxと搬送波は比較器181、182に出力される。比較器181、182はU相電圧指令Iuxと搬送波の電圧値を比較し、比較結果からパルス信号S1UとS1Dとを生成する。
【0064】
W相電圧指令Iwxと搬送波は比較器183、184に出力される。比較器183、184はW相電圧指令Iwxと搬送波の電圧値を比較し、比較結果からパルス信号S2UとS2Dとを生成する。
【0065】
比較器181−184が生成したパルス信号S1U、S1D、S2U、S2Dは駆動信号出力部140に出力される。駆動信号出力部140は、パルス信号S1U、S1D、S2U、S2Dを用いて、図4に示すようなパルス状の信号を第1スイッチング素子−第4スイッチング素子124−128のそれぞれに出力する。
【0066】
このように、本実施形態に係る電力変換装置100は、差電圧VbusOによるフィードバック、U相電流Iu及びW相電流Iwによるフィードバック、U相電圧指令補正信号Y13及びW相電圧指令補正信号Y23によるフィードバック、の3つのフィードバックを掛けている。差電圧VbusOによるフィードバック、U相電流Iu及びW相電流Iwによるフィードバックにより、高負荷時、低負荷時、通常負荷時のどの負荷状況においても、第1コンデンサC1の電圧VbusPと第2コンデンサC2の電圧VbusNの差電圧VbusOを抑制できる。また、U相電圧指令補正信号Y13及びW相電圧指令補正信号Y23によるフィードバックをさらに付加したことによって、三相交流電流に重畳される直流成分を抑制できる。したがって、本実施形態に係る電力変換装置100によれば、安定的に対称三相交流電圧を出力でき、三相交流電流に重畳される直流成分を抑制できる。
【符号の説明】
【0067】
100 電力変換装置、
110 電源、
120 三相電力供給部、
121、125 第1スイッチング素子、
122、126 第2スイッチング素子、
123、127 第3スイッチング素子、
124、128 第4スイッチング素子、
130、131 コンデンサ、
135、136 電流検出器、
137、138 リアクトル、
140 駆動信号出力部、
150 パルス信号生成部、
151−155 平均化処理部、
161−165 ゲイン付加部、
170 搬送波発生器、
181−184 比較器、
C1 第1コンデンサ、
C2 第2コンデンサ、
M1 第1アーム、
M2 第2アーム、
D1、D3 第1ダイオード、
D2、D4 第2ダイオード。
図1
図2
図3
図4