特許第5872992号(P5872992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872992
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 25/00 20060101AFI20160216BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20160216BHJP
   B66B 23/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B66B25/00 A
   B66B31/00 B
   B66B23/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-244983(P2012-244983)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-91626(P2014-91626A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 広起
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−023194(JP,A)
【文献】 特開2008−308268(JP,A)
【文献】 特開2007−106541(JP,A)
【文献】 特開昭57−085775(JP,A)
【文献】 特開2003−321183(JP,A)
【文献】 特公昭45−024416(JP,B1)
【文献】 特開平09−272687(JP,A)
【文献】 特開2009−280356(JP,A)
【文献】 米国特許第04631467(US,A)
【文献】 米国特許第06223879(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連なって周回移動する踏段と、前記踏段を周回移動させる駆動部と、前記駆動部の速度を制御する制御部と、を備える乗客コンベアであって、
利用者が前記踏段上に乗る乗降口の床面の濡れ程度を検出するセンサを設け、前記センサによって検出される濡れ程度に応じて前記駆動部による前記踏段の移動速度を複数段階に減速可能であることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記センサは感雨センサであり、前記制御部は前記感雨センサによって検出される複数段階の降雨状態に応じて、前記踏段の移動速度を少なくとも2段階に減速することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記制御部は、前記センサによって検出される前記床面の濡れ程度に応じて前記踏段の移動速度を複数段階に減速させる一方、前記センサによって検出される前記床面の濡れ程度の解消具合に応じて前記踏段の移動速度を複数段階で復帰させることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗客コンベアにおいて、
前記センサは、前記乗降口の床面を構成するランディングプレートにセンサ表面が露出した状態で埋設されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の乗客コンベアにおいて、
利用者に前記踏段の移動速度が変化することを報知する報知部をさらに備え、前記制御部は前記踏段の移動速度の調整に先立って前記報知部により利用者に報知することを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ等の乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商業施設や公共施設などにおいて、エスカレータが広く設置されている。このうちエスカレータが屋外に設置されることがある。この場合、エスカレータの乗降口の床面が雨によって濡れると滑りやすくなり、エスカレータの踏段に乗り込もうとする利用者、および、踏段から降りようとする利用者が滑ってバランスを崩すことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、浸水時に車いす用踏段を安全空間へ迅速に退避させることを課題としたエスカレータ装置が開示されている。このエスカレータ装置は、無端状に連結され、上部条乗降口と下部乗降口間を走行する、車いす用踏段を含む複数の踏段と、下部乗降口の下方に形成された下部の浸水を検出し、浸水検出信号を出力する浸水検出手段と、浸水信号に応じて所定処理を行う制御手段とを備えたエスカレータ装置において、車いす用踏段の位置を検出する手段と、車いす用踏段の位置に応じて、この車いす用踏段の停止制御方法を判断する手段とを備え、浸水検出手段が浸水を検出した際、車いす用踏段の現在位置を判断し、車いす用踏段を退避位置まで移動させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、下部機械室への所定水位以上の浸水を検知してエスカレータ全体が水に濡れることを防止することを課題としたエスカレータ冠水検知装置が開示されている。このエスカレータ冠水検知装置では、下部機械室があるピット内に溜まる水の水位が上昇し、第1の位置まで水が溜まると第1の浸水検知部の抵抗値が変化し、第1の検出部から浸水検知信号が報知手段に出力され、報知手段はエスカレータ下部機械室に水が浸水したとして警報を発し、更に水位が上昇して第2の位置まで水が溜まると、第2の検知部から所定の浸水検知信号が運転制御手段に出力され、運転制御手段はエスカレータの運転を停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−195220号公報
【特許文献2】特開平7−206355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および2に記載されるエスカレータでは、下部機械室があるピット内の浸水を検知して車いす用踏段の退避制御や発報および停止制御を実行するものであるが、エスカレータの乗降口床面が濡れることによって滑り易くなることに対する改善策を何ら提供するものではない。
【0007】
本発明の目的は、乗客コンベアにおいて、乗降口の床面が濡れて滑りやすくなる状況において利用者が滑ってバランスを崩しにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアは、無端状に連なって周回移動する踏段と、前記踏段を周回移動させる駆動部と、前記駆動部の速度を制御する制御部と、を備える乗客コンベアであって、利用者が前記踏段上に乗る乗降口の床面の濡れ程度を検出するセンサを設け、前記センサによって検出される濡れ程度に応じて前記駆動部による前記踏段の移動速度を複数段階に減速可能であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る乗客コンベアにおいて、前記センサは感雨センサであり、前記制御部は前記感雨センサによって検出される複数段階の降雨状態に応じて、前記踏段の移動速度を少なくとも2段階に減速させてもよい。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアにおいて、前記制御部は、前記センサによって検出される前記床面の濡れ程度に応じて前記踏段の移動速度を複数段階に減速させる一方、前記センサによって検出される前記床面の濡れ程度の解消具合に応じて前記踏段の移動速度を複数段階で復帰させてもよい。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアにおいて、前記センサは、前記乗降口の床面を構成するランディングプレートにセンサ表面が露出した状態で埋設されてもよい。
【0012】
さらに、本発明に係る乗客コンベアにおいて、利用者に前記踏段の移動速度が変化することを報知する報知部をさらに備え、前記制御部は前記踏段の移動速度の調整に先立って前記報知部により利用者に報知するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る乗客コンベアによれば、乗降口の床面の濡れ程度をセンサで検出し、その濡れ程度に応じて踏段の移動速度を複数段階に減速する制御を実行する。このように踏段の移動速度が減速されることで、乗降口において利用者は焦り感なく乗降口床面から踏段へ又は踏段から乗降口床面へと乗り移ることができる。その結果、乗降口の床面が濡れて滑りやすくなっている状況下でも、利用者は焦り感無く比較的ゆっくりとした動作で乗り移ることができるので、利用者が乗降口で滑ってバランスを崩すのを抑制することができ、乗客コンベアの安全性が向上する。
【0014】
また、乗降口の床面の濡れ程度に応じて複数段階で減速制御するので、例えば雨の降り始めたときで乗降口の床面がそれほど滑りやすくなっていないときには減速幅を小さくすることができ、乗客コンベアの搬送性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施の形態であるエスカレータの全体構成を概略的に示す図である。
図2】感雨センサの一例を示す平面図と側面図である。
図3図2の感雨センサがランディングプレートに設置された状態を示す図である。
図4】感雨センサの別の例を示す斜視図である。
図5】制御部において実行される踏段の速度制御の処理手順を示すフローチャートである。
図6】制御部によって制御される踏段の速度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0017】
以下において、エスカレータは、屋外に設置されており、雨が降ると乗降口の床面が濡れるものであるとして説明する。ただし、エスカレータ自体は屋内であっても、例えば地上から地下に通じる連絡通路等に設置される場合のように、雨が直接当たらなくても利用者の靴や傘を通じて乗降口の床面が水濡れする場所に設置されるエスカレータに本願発明が適用されてもよい。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態であるエスカレータ10の全体構成を概略的に示す。図1に示すように、エスカレータ10は、上階と下階とに架設されてエスカレータ自体を下方から支持する例えば金属板製のトラス12と、トラス12の上部に設けられる移動手摺り部14および欄干部16とを備える。
【0019】
トラス12は、上階乗降口18の床に設置される上部トラス部12a、下階乗降口20の床に設置される下部トラス部12b、および上部トラス部12aと下部トラス部12bとの間を傾斜した姿勢で連結する傾斜トラス部12cを含んで構成される。
【0020】
上部トラス部12aは、上階乗降口18の床と面一をなす取り外し可能なランディングプレート22で覆われている。このランディングプレート22の表面が上階の乗降口床面の一部を構成している。
【0021】
上部トラス部12a内には、モータ24および減速機等を含む駆動ユニットや、駆動ユニットによって回動駆動される駆動スプロケット26が配置されている。一方、下部トラス部12b内には、従動スプロケット28が配置されている。
【0022】
トラス12内には、多数の踏段30が設けられている。各踏段30の幅方向両端部には、駆動スプロケット26と従動スプロケット28とに掛け渡された無端状のステップチェーン32が固定されている。これにより、モータ24によって駆動スプロケット26が回転駆動されることによって、各踏段30は階段状をなしながら下階と上階との間を上り周回移動または下り周回移動するようになっている。
【0023】
下階乗降口20の床には、下部トラス部12bの上方を覆ってランディングプレート34が設置されている。ランディングプレート34は、下階乗降口20の床と面一をなして取り外し可能に設けられており、その表面が下階の乗降口床面の一部を構成している。
【0024】
下階のランディングプレート34には、下階乗降口20の床面の濡れ程度を検出する感雨センサ36が設けられている。感雨センサ36は、センサ表面が床面と略面一で露出した状態でランディングプレート34の凹部に埋設されている。
【0025】
図2は、感雨センサ36の一例を示す平面図と側面図であり、図3は、図2の感雨センサ36がランディングプレート34に設置された状態を示す図である。図2に示すように、感雨センサ36は、少なくとも一対(図示の例では4個)の電極38a〜38dを有する。
【0026】
これらの各電極38a〜38dは、互いに径の異なる短円筒状または円環状に形成されている。そして、これらの各電極38a〜38dは、互いに互いに同心状に、且つ、互いに非接触に配置されるとともに、それぞれの上面をセンサ表面40に露出した状態で、センサ36を構成する絶縁性の合成樹脂中に埋め込まれている。
【0027】
これにより、上記センサ表面40に水分が付着した場合、上記各電極38a〜38dのうちの少なくとも一対の電極同士が、この水分を介して互いに導通するようにしている。そして、この結果、これら少なくとも一対の電極同士の間を流れる電流値に基づいて、上記センサ表面40ひいてはランディングプレート34の表面の濡れ程度を検出できるなっている。
【0028】
感雨センサ36によって検出された上記電流値は、センサ36の外周面から突出する導出部44を介してリードケーブルによって後述する制御部に送信されるように構成されている。なお、感雨センサ36は、ヒータ42を内蔵してもよい。
【0029】
このように構成される感雨センサ36は、図3に示すように、ランディングプレート34の表面34aに形成された凹部34b内に嵌め込まれて設置される。このとき、感雨センサ36のセンサ表面40がランディングプレート34の表面34aと略面一となるように設置されていることで、エスカレータ利用者の歩行の妨げとなることはない。
【0030】
また、感雨センサ36は、センサ表面40が露出した状態で設けられるので、利用者に踏まれることによってセンサ表面40の電極38a〜38d等が損傷しないようにするため、ランディングプレート34において乗降口20の脇の方に設置するのが好ましい。
【0031】
また、感雨センサ36は、必ずしもランディングプレート34に埋設しなくてもよく、ランディングプレート34の近傍(例えば欄干部16)であって雨が降ったときに濡れる位置および向きに設置されてもよい。
【0032】
さらに、感雨センサ36は、乗降口20に複数設置されてもよい。この場合、各感雨センサ36の出力の平均値に基づいてランディングプレート34の表面の濡れ程度を判別することによって、検出精度を向上および安定化することができる。
【0033】
図4は、感雨センサ36の別の例を示す斜視図である。この例の傾斜型の感雨センサ36は、雨水による濡れ具合を検出するセンサ表面40が傾斜面として形成されており、このセンサ表面40上に櫛歯状にジグザグをなすように電極38eが配置されている。そして、この電極38eの上にある水分を介して電極38eを流れる電流値の変化によってセンサ表面40の濡れ程度を検出できるようにしている。
【0034】
このような傾斜型の感雨センサ36もまた、エスカレータ利用者の歩行の妨げとならないランディングプレート34上の位置または欄干部16等に設置するのが好ましい。
【0035】
図1を再び参照すると、エスカレータ10は、制御部50を備えている。制御部50は、エスカレータ10全体の作動制御を司る機能を有し、本実施形態では特に後述する踏段30の移動速度制御を実行するものある。制御部50は、中央処理装置(CPU)、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などを含んで構成されている。
【0036】
制御部50は、上記感雨センサ36と電気的に接続されており、感雨センサ36のリードケーブル46から出力される検出信号を受信するようになっている。また、制御部50は、インバータ装置52を介してモータ24の駆動を制御することができるように構成されている。
【0037】
エスカレータ10は、報知部54を更に備える。報知部54は、踏段30の移動速度が変化するのを利用者に予め報知させる機能を有する。具体的には、報知部54は、乗降口18,20付近の欄干部16に設けられたスピーカ56を含み、スピーカ56から音声メッセージを発して利用者に対して踏段速度変化に対する注意喚起を行うものである。報知部54は、音声による報知に加えて、図示しない表示部を介して文字情報によっても利用者に対する報知を行ってもよい。
【0038】
続いて、上記の構成からなるエスカレータ10の踏段移動速度の制御について図5および図6を参照して説明する。図5は、制御部50において実行される踏段の速度制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
制御部50は、エスカレータ10の作動中は所定時間ごとに踏段速度制御プログラムを読み出して繰り返し実行する。
【0040】
まず、制御部50は、雨が降っているかどうかを判定する(ステップS10)。この判定は、感雨センサ36からの検出信号に基づいて行われる。そして、雨が降っていないと判定されたときは、踏段30の移動速度を通常速度V0(例えば30m/分)のままとして処理を終了する(ステップS30)。
【0041】
これに対し、ステップS10によって雨が降っていると判定されたとき、続くステップS12において乗降口20の床面の濡れ程度について判定する。ここでは、ランディングプレート34の表面の濡れ程度が小、中、大の3段階に分けて判別する例が示されている。
【0042】
具体的には、本実施形態では、感雨センサ36のセンサ表面40の面積の50%未満が雨水によって濡れたときの状態を「濡れ程度小」、上記センサ表面40の面積の50%以上で100%未満が雨水によって濡れたとき状態を「濡れ程度中」、上記センサ表面40の全面が雨水によって濡れたときの状態を「濡れ程度大」と区分けし、感雨センサ36から送信される検出信号(すなわち電流値)を予め実験、シミュレーション等で求めて記憶しておいた閾値と比較にすることによって、どの濡れ程度にあるかを判別することができる。
【0043】
上記ステップS12において「濡れ程度小」と判定されるとき、続くステップS14により報知部54を用いて利用者に報知をしたうえで、ステップS20により踏段30の移動速度をV1(例えば25m/分)に減速させるように、インバータ装置52を介してモータ24の回転速度を低下させる。
【0044】
そして、続くステップS26において、乗降口20の床面が乾いているか(すなわち濡れていないか)を判定する。これは、感雨センサ36のセンサ表面40が雨水で濡れていないかどうかによって判別することができる。この判定において、乗降口20の床面が乾いていないと判定されたとき(ステップS26でNO)、上記ステップS12に戻る。
【0045】
雨の降り始めから時間が経過して感雨センサ36のセンサ表面40の水濡れ面積が半分以上になると、ステップS12では「濡れ程度中」と判定される。そうすると、続くステップS16により報知部54を用いて利用者に報知をしたうえで、ステップS22により踏段30の移動速度をV2(例えば20m/分)に減速させるように、インバータ装置52を介してモータ24の回転速度をさらに低下させる。
【0046】
そして、上記と同様にステップS26からステップS12に戻る処理を繰り返すうちに、やがて感雨センサ36のセンサ表面40の全面が雨水で濡れた状態となったときステップS12において「濡れ程度大」と判定され、ステップS24において踏段30の移動速度をこの制御で最低速度であるV3(例えば15m/分)に減速させるように、インバータ装置52を介してモータ24の回転速度をさらに低下させる。
【0047】
上述したように本実施形態のエスカレータ10では、乗降口20の床面の濡れ程度に応じて、3段階で踏段移動速度を低下させる。これにより、雨水によって濡れて滑りやすくなっているランディングプレート34の表面から踏段30へと乗り移ろうとする利用者は、踏段30の移動速度が通常よりも遅くなっていることで、それほど焦り感なく乗降口20の床面から踏段30(および踏段30から乗降口18の床面)へと乗り移ることができる。その結果、乗降口20の床面が濡れて滑りやすくなっている状況下でも、利用者は焦り感無く比較的ゆっくりとした動作で乗り移ることができるので、利用者が乗降口20で滑ってバランスを崩すのを抑制することができ、エスカレータ10の安全性が向上する。
【0048】
また、乗降口20の床面の濡れ程度に応じて3段階で減速制御するので、雨の降り始めで乗降口20の床面がそれほど滑りやすくなっていないときには減速幅を小さくすることができ、エスカレータ10の搬送性能の低下を抑制することができる。
【0049】
上記のように踏段移動速度が減速した後の復帰制御は次にように実行される。すなわち、上述したステップS12〜S26を繰り返すことによって、雨が上がって乗降口20の床面が乾燥するにつれて、ステップS12における濡れ程度の判定が「濡れ程度大」から「濡れ程度中」となり、次いで「濡れ程度中」から「濡れ程度小」となる。これに伴って、踏段30の移動速度がV3→V2→V1と段階的に増速されることになる。この場合、各ステップS16およびS14では、利用者に対して踏段30の移動速度が速くなることへの注意喚起を促すよう音声メッセージ等で報知する。
【0050】
そして、感雨センサ36のセンサ表面ひいては乗降口20の床面が乾いたと判定されると(ステップS26でYES)、続くステップS28で利用者に踏段増速を報知したうえで、ステップS30において踏段移動速度をV1から通常速度であるV0に復帰させて、処理を終了する。
【0051】
このように踏段移動速度を通常速度まで戻すときにも段階的に増速させることで、踏段速度の急激な変化とならないようにすることができ、利用者にとっての安全性が向上する。
【0052】
図6は、制御部50によって上記のように制御される踏段30の速度変化を示すグラフである。このグラフでは、横軸は乗降口の濡れ具合を時間経過とともに示し、縦軸は踏段30の移動速度を示す。図6に示すように、乗降口20の濡れ程度が(乾燥)→小→中→大になるにしたがって踏段30の移動速度がV0→V1→V2→V3と段階的に減速され、逆に、乗降口20の濡れ程度が大→中→小→(乾燥)になるにしたがって踏段30の移動速度がV3→V2→V1→V0と段階的にされる。ここで、各速度V0,V1,V2,V3間の変化も緩慢になるように時間的傾斜を持たせて変化させるのが好ましい。これにより、すでに踏段30に乗っている利用者に対しても、踏段30の速度変化をほとんど感じさせることなく、かつ、体勢を崩すといったこともなく、安全快適なエスカレータとなる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲内において種々の改良や変更が可能である。
【0054】
例えば、上記においては、踏段30の減速(および増速)を3段階で行うものとして説明したが、これに限定されるものではなく、感雨センサの分解能にもよるが、2段階で行ってもよいし、4段階以上で行ってもよい。
【0055】
また、上記においては、踏段30の移動速度を一旦減速した後に増速する際には同じように段階的に自動復帰させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、乗降口の床面が濡れている間は踏段の移動速度を最低速度に維持して、乗降口の床面が乾いたと判定されたときに最低速度から通常速度まで自動復帰させてもよいし、あるいは、施設管理人等の手動操作によって最低速度から通常速度に復帰させてもよい。
【0056】
また、上記においては、感雨センサを下階乗降口の床面に設置する場合について例示したが、これに限定されるものではなく、これに代えて又は加えて、上階乗降口の床面に感雨センサを設置してもよい。
【0057】
さらに、上記においては、乗降口の床面の濡れ程度を検出するセンサに感雨センサを用いたが、これに限定されるものではなく、乗降口床面の水分による濡れ程度を検出できるセンサであれば他のセンサ(例えば光学式センサ等)を用いてもよい。
【0058】
さらにまた、本発明は、各踏段が面一をなした状態で水平方向に又は傾斜して移動する動く歩道等の乗客コンベヤに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 エスカレータ(乗客コンベア)、12 トラス、12a 上部トラス部、12b 下部トラス部、12c 傾斜トラス部、14 移動手摺り部、16 欄干部、18 上階乗降口(乗降口)、20 下階乗降口(乗降口)、22,34 ランディングプレート、24 モータ(駆動部)、26 駆動スプロケット、28 従動スプロケット、30 踏段、32 ステップチェーン、34a 表面(床面)、34b 凹部、36 感雨センサ(センサ)、38a−38e 電極、40 センサ表面、42 ヒータ、44 導出部、46 リードケーブル、50 制御部、52 インバータ装置、54 報知部、56 スピーカ、V0 踏段の通常速度、V1,V2,V3 踏段の減速速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6