特許第5872996号(P5872996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872996
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】背負式散布装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 9/08 20060101AFI20160216BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B05B9/08
   A01M7/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-268517(P2012-268517)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-113531(P2014-113531A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】諫山 和博
(72)【発明者】
【氏名】行方 重樹
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−126737(JP,A)
【文献】 特開2005−118674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−3/18;7/00−9/08
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が背負いながら液体を散布する背負式散布装置(1)であって、
前記作業者が背負い、液体を貯留するタンク(2)と、
前記タンク(2)内の液体を散布すべく圧送するポンプ(3)と、を備え、
前記ポンプ(3)は、前記タンク(2)の下部であって後部の外周面に凹設された凹部(21)の後方を向く壁面(22)に取り付けられており、
前記タンク(2)は、前記凹部(21)の後方を向く前記壁面(22)の平面に連なり当該タンク(2)の底面(24)よりも下方に突出すると共に左右方向に延在する水切り部(25)を有している、背負式散布装置(1)。
【請求項2】
前記タンク(2)に取り付けられ、前記ポンプ(3)を下方及び後方より覆うブラケット(6)を備え、
前記ブラケット(6)の底部(61)の前縁は、前記水切り部(25)よりも上方に位置している、請求項1記載の背負式散布装置(1)。
【請求項3】
前記タンク(2)及び前記ブラケット(6)は、それぞれその下端部に下方に突出する脚部(26,67)を有しており、
前記水切り部(25)の下端部は、前記タンク(2)の脚部(26)の下端部及び前記ブラケット(6)の前記脚部(67)の下端部よりも上方に位置している、請求項2記載の背負式散布装置(1)。
【請求項4】
前記タンク(2)の前記脚部(26)は、前記水切り部(25)よりも前方に配置されており、
前記タンク(2)の前記脚部(26)の底面は、後方から前方に向かって下方に傾斜する傾斜面である、請求項3記載の背負式散布装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が背負いながら液体を散布する背負式散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、背負式散布装置として、例えば薬液を噴霧する噴霧機が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の噴霧機は、薬液を貯留する薬液タンク、薬液タンク内の薬液を噴霧ノズルに圧送するポンプ、及び、噴霧圧を調節する調圧弁等を備えている。この噴霧機では、薬液タンクの下部であって、前側(前後方向において作業者と当接する側)の部分に、前方、下方及び側方に開放された凹部が設けられている。凹部には、ポンプ及び調圧弁等が配置され、ポンプ及び調圧弁等を覆うようにカバーが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4181474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような背負式散布装置においては、ポンプ等から薬液が漏れた場合に、薬液が作業者に付着することを抑制できる技術の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、液体が作業者に付着することを抑制できる背負式散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の背負式散布装置(1)は、作業者が背負いながら液体を散布する背負式散布装置(1)であって、作業者が背負い、液体を貯留するタンク(2)と、タンク(2)内の液体を散布すべく圧送するポンプ(3)と、を備え、ポンプ(3)は、タンク(2)の下部であって後部の外周面に凹設された凹部(21)の後方を向く壁面(22)に取り付けられており、タンク(2)は、凹部(21)の後方を向く壁面(22)の平面に連なり当該タンク(2)の底面(24)よりも下方に突出すると共に左右方向に延在する水切り部(25)を有している。
【0007】
この背負式散布装置(1)では、液体を圧送するためのポンプ(3)は、タンク(2)に対して後側に取り付けられており、タンク(2)は、その底面(21)に左右方向に延在し、底面(21)よりも下方に突出する水切り部(25)を有している。ポンプ(3)等から液体が漏れた場合、前側へ向かう液体は、水切り部(25)から下方に落下することになる。従って、漏れた液体が作業者に付着することを抑制できる。
【0008】
ここで、本発明の背負式散布装置(1)は、タンク(2)に取り付けられ、ポンプ(3)を下方及び後方より覆うブラケット(6)を備え、ブラケット(6)の底部(61)の前縁は、水切り部(25)よりも上方に位置していてもよい。この場合、ポンプ(3)等から液体が漏れた際に、前側へ向かう液体が水切り部(25)を回り込みにくくなる。従って、液体が作業者に付着することをさらに抑制できる。
【0009】
また、タンク(2)及びブラケット(6)は、それぞれその下端部に下方に突出する脚部(26,67)を有しており、水切り部(25)の下端部は、タンク(2)の脚部(26)の下端部及びブラケット(6)の脚部(67)の下端部よりも上方に位置していてもよい。この場合、例えば、背負式散布装置(1)を地面等に載置した際に、水切り部(25)の摩耗及び変形等を抑制できる。
【0010】
また、タンク(2)の脚部(26)は、水切り部(25)よりも前方に配置されており、タンク(2)の脚部(26)の底面は、後方から前方に向かって下方に傾斜する傾斜面であってもよい。この場合、タンク(2)は、例えば、水切り部(25)から前側の部分を成型する前型と、水切り部(25)よりも後側の部分を成型する後型とにより成型することが可能であり、前型を離型する際に、脚部(26)の傾斜面に沿って比較的容易に離型できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体が作業者に付着することを抑制できる背負式散布装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る背負式散布装置の背面図である。
図2図1に示す背負式散布装置の右側面図である。
図3図2中のA部を示す拡大図である。
図4図1に示す背負式散布装置の左側面図である。
図5図1に示す背負式散布装置を後方且つ下方から見た斜視図である。
図6図5においてブラケットが外された背負式散布装置を示す斜視図である。
図7図1に示す背負式散布装置を前方且つ下方から見た斜視図である。
図8図6中のポンプユニット及び蓋を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る背負式散布装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下及び前後の語は、装置を背負った作業者を基準とした方向であり、左右の語は、装置を背負った作業者を外部から見た場合を基準とした方向である。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る背負式散布装置の背面図、図2は、図1に示す背負式散布装置の右側面図、図3は、図2中のA部を示す拡大図、図4は、図1に示す背負式散布装置の左側面図、図5は、図1に示す背負式散布装置を後方且つ下方から見た斜視図、図6は、図5においてブラケットが外された背負式散布装置を示す斜視図、図7は、図1に示す背負式散布装置を前方且つ下方から見た斜視図、図8は、図6中のポンプユニット及び蓋を示す分解斜視図である。
【0015】
図1図8に示されるように、背負式散布装置である背負式動力噴霧機1は、作業者が薬液タンク2等を背負いながら、薬液タンク2内に貯留された薬液(液体)を噴霧するものである。背負式動力噴霧機1は、薬液タンク2に加えて、ポンプ3、調圧弁4及びモータ5を有するポンプユニットU(図6参照)等を備えている。なお、図面において、作業者が薬液タンク2等を背負うための背負バンドは取り外されている。
【0016】
図6に示されるように、薬液タンク2は、ポンプユニットU等が配置される凹部21を有している。凹部21は、薬液タンク2の下部であって後部の外周面に凹設されている。凹部21は、後述するブラケット6が外された状態において、下方、後方及び左右側方に向かって開放されている。薬液タンク2は、ポンプ3に薬液を供給する供給口を有している。供給口は、凹部21を形成する壁面のうち、後方を向く壁面22から後方に向かって突出しており、吸水ポート23a及び余水ポート23b(図8参照)を有する蓋23により覆われている。蓋23は、供給口に外挿され、バンドB1により締め付けられている。図2〜4に示されるように、薬液タンク2の前面には、作業者の背中に当接する背当てCが取り付けられている。なお、図7においては、背当てCは取り外されている。
【0017】
図6に示されるように、上述のように、ポンプユニットUは、凹部21に配置されている。すなわち、ポンプユニットUは、薬液タンク2に対して後側に取り付けられている。ポンプ3は、薬液タンク2内の薬液をノズル(不図示)から散布すべく圧送するためのものであり、薬液タンク2に接続されている。図8に示されるように、ポンプ3は、薬液タンク2から薬液を吸入するポンプ入口管31が、蓋23の吸水ポート23aに取り付けられることにより、薬液タンク2に取り付けられている。吸水ポート23aとポンプ入口管31との間には、薬液を吸入するための吸水ホースHが介されており、吸水ポート23a、吸水ホースH及びポンプ入口管31は、板バンドB2により共締めにされている。
【0018】
調圧弁4は、ポンプ3とノズルとの間に接続されており、ノズルから散布される薬液の圧力を調節する。調圧弁4は、余剰分の薬液を薬液タンク2に戻す余水管41が、蓋23の余水ポート23bに取り付けられることにより、薬液タンク2に取り付けられている。余水ポート23bは、板バンドB3により余水管41に締め付けられている。また、調圧弁4の調圧弁入口管42にポンプ3のポンプ出口管32が内挿されていることにより、配管を介することなくポンプ3と調圧弁4とが接続されている。モータ5は、ポンプ3に固定されている。なお、図面において、調圧弁4とノズルとを接続する配管は取り外されている。
【0019】
図1〜7に示されるように、薬液タンク2は、その底面24に、下方に突出する水切り部25を有している。水切り部25は、底面24と後方を向く壁面22とが交わる部分、すなわち底面24の後端部に設けられ、底面24において、薬液タンク2の左端部から右端部に亘って左右方向に延在している。水切り部25は、延在方向の全域において、底面24よりも下方に突出しており、底面24と一体に形成されている。
【0020】
凹部21には、ブラケット6が取り付けられている。ブラケット6は、ポンプユニットUを下方、後方及び左右側方から覆っている。具体的には、ブラケット6は、底部61(図5参照)、後部62、右側部63及び左側部64を有し、底部61、後部62、右側部63及び左側部64が、ポンプユニットUを、それぞれ下方、後方、右側方及び左側方から覆っている。
【0021】
底部61の前縁、後部62の上縁、右側部63の前縁並びに上縁、及び、左側部64の前縁並びに上縁は、ブラケット6における薬液タンク2への合わせ部となっている。底部61の前縁は、水切り部25よりも上方に位置している。右側部63には、背負式動力噴霧機1の電源スイッチ65が設けられている。左側部64には、モータ5のバッテリが収容されるバッテリケース66が設けられている(図4参照)。
【0022】
薬液タンク2及びブラケット6は、それぞれその下端部に下方に突出する一対の脚部26,26及び脚部67,67を有している。
【0023】
薬液タンク2の脚部26,26は、底面24において、それぞれ左端部付近及び右端部付近から下方に突出しており、左右方向に離間している。脚部26は、水切り部25よりも前方に設けられている。脚部26の底面は水切り部25の基部(水切り部25と底面24とが交わる部分)付近から前方に向けて下方に傾斜する傾斜面になっており、薬液タンク2の前端部付近に接地箇所が配置されている。脚部26は、底面24と一体に形成されている。
【0024】
ブラケット6の脚部67,67は、底部61の底面において、それぞれ左端部付近及び右端部付近から下方に突出しており、左右方向に離間している。脚部67は、ブラケット6の底部61の後部に設けられている。脚部67は、底部61と一体に形成されている。
【0025】
水切り部25の下端部は、薬液タンク2の脚部26の下端部及びブラケット6の脚部67の下端部よりも上方に位置している。
【0026】
以上のような背負式動力噴霧機1では、薬液タンク2内の薬液が、ポンプ3の圧力により、ポンプ3及び調圧弁4を通過して、ノズルから噴霧されるようになっている。
【0027】
特に、背負式動力噴霧機1では、液体を圧送するためのポンプ3は、薬液タンク2に対して後側に取り付けられており、薬液タンク2は、その底面24に左右方向に延在し、底面24よりも下方に突出する水切り部25を有している。このため、ポンプ3及び調圧弁4等から液体が漏れた場合、前側へ向かう液体は、水切り部25から下方に落下することになる。従って、漏れた液体が作業者に付着することを抑制できる。
【0028】
また、背負式動力噴霧機1は、薬液タンク2に取り付けられポンプ3及び調圧弁4等を下方、後方及び側方より覆うブラケット6を備えており、ブラケット6の底部61の前縁は、水切り部25よりも上方に位置している。このため、ポンプ3及び調圧弁4等から液体が漏れた際に、前側へ向かう液体が水切り部25を回り込みにくい。従って、液体が作業者に付着することをさらに抑制できる。
【0029】
また、薬液タンク2及びブラケット6は、それぞれその下端部に下方に突出する脚部26,26及び脚部67,67を有しており、水切り部25の下端部は、薬液タンク2及びブラケット6の脚部26,26及び脚部67,67の下端部よりも上方に位置している。このため、例えば、背負式動力噴霧機1を地面等に載置した際に、水切り部25が接地せず、水切り部25の摩耗及び変形等を抑制できる。
【0030】
また、薬液タンク2の脚部26は、水切り部25よりも前方に配置されており、薬液タンク2の脚部26の底面は、後方から前方に向かって下方に傾斜する傾斜面となっている。このため、薬液タンク2は、例えば、水切り部25から前側の部分を成型する前型と、水切り部25よりも後側の部分を成型する後型とにより成型することが可能であり、前型を離型する際に、脚部26の傾斜面に沿って比較的容易に離型できる。すなわち、離型できないような形状(アンダーカット形状)ではないため、脚部26の傾斜面に沿って前型を離型することは、比較的容易に行える。また、このように、水切り部25及び脚部26が薬液タンク2の底面24と成型により一体に形成されているため、構造が簡単であり、製造コストを低減できる。
【0031】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、背負式散布装置は、薬液を噴霧する背負式動力噴霧機1であるが、他の液体を散布する装置であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…背負式動力噴霧機(背負式散布装置)、2…薬液タンク、3…ポンプ、6…ブラケット、24…タンクの底面、25…水切り部、26…タンクの脚部、61…ブラケットの底部、67…ブラケットの脚部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8