(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液は、(i)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液をアルカリ金属塩で中和する工程と、(ii)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を有機アミンで中和する工程とを必須として製造されることを特徴とする請求項1に記載の無機粒子分散剤の製造方法。
請求項1に記載のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を製造する方法であって、該製造方法は、過硫酸塩をポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いる全単量体1モルに対して0.1g以上、1.9g以下使用し、次亜リン酸及び/又は次亜リン酸塩を、その使用量の合計がポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いる全単量体1モルに対して、1.0g以上、5.0g以下となるように使用してポリ(メタ)アクリル酸系重合体を製造する工程と、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を、有機アミンで中和する工程を含むことを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[ポリ(メタ)アクリル酸系重合体]
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液(本発明の重合体水溶液とも言う。)は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む。
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体とは、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造を含んでいる重合体を表し、該(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造とは、(メタ)アクリル酸(塩)がラジカル重合することにより形成される構造であって、−CH
2CR(COOM)−、で表される構造である。該構造中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩を表す。上記金属原子としては、Li、Na、K等のアルカリ金属原子、Ca、Mg等のアルカリ土類金属原子等が例示される。
上記(メタ)アクリル酸(塩)とは、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩を表し、これらの中でも、アクリル酸、アクリル酸塩が好ましい。これら(メタ)アクリル酸(塩)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記(メタ)アクリル酸(塩)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩が好ましく、より好ましくは、ナトリウム塩である。これら(メタ)アクリル酸(塩)における塩は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基は、少なくとも一部が有機アミン塩で中和されていることを特徴としており、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基のすべてが中和されている構造であっても(中和型)、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基の一部が中和された構造であり、残りが酸型の構造であっても(部分中和型)構わない。
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基の、酸型のカルボキシル基/有機アミンで中和されたカルボキシル基(有機アミン塩型カルボキシル基)/有機アミン塩型カルボキシル基以外のカルボキシル基の塩の割合は、特に限定されないが、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン及び有機アミン塩(本明細書においては、「有機アミン(塩)」とも表する。)に由来する構造とのモル比が100:10〜100:75であることが重要である。好ましくは、100:15〜100:70であり、100:20〜100:65であることがより好ましい。
【0023】
上記有機アミン(塩)としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミン、及びそれらの塩のいずれでもよく、1種が単独で用いられても良いし、2種以上を併用しても構わない。そのような有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等のアルキルアミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン;ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピラジン、ピロール、モルホリン等の環状アミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアルキレンアミンが例示される。この中でも、本発明の重合体水溶液の経時的な顔料分散性能が顕著に向上すること、取扱いのしやすさ、比較的安価であること、等の点から、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、アルカノールアミン又はその塩に由来する構造を含むことが好ましい。
【0024】
上記有機アミン(塩)に由来する構造とは、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液を製造する過程において、添加された有機アミン(塩)が反応して形成された構造、及び/又は、未反応のままで存在する有機アミン(塩)を表す。
ここで、添加された有機アミン(塩)が反応して形成された構造としては、例えば(i)酸型及び/又は部分中和型のポリアクリル酸系重合体を含む水溶液に有機アミン(塩)を添加することにより形成された、有機アミンで中和されたカルボキシル基の塩に含まれる構造や、(ii)予め(メタ)アクリル酸等の単量体を有機アミンで中和した、有機アミン塩が重合することにより形成される構造、(iii)添加された有機アミン(塩)がポリアクリル酸系重合体以外の酸性物質と反応して形成された構造が例示される。
経時的な顔料分散性能が向上する傾向にあることから、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は無機塩等の量を極力低減させた形態であることが好ましく、そのため上記有機アミン(塩)に由来する構造は、重合体に含まれる、有機アミンで中和されたカルボキシル基であることが好ましい。したがって、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基100モル%に対する、有機アミンで中和されたカルボキシル基(有機アミン塩型カルボキシル基)の割合は、10〜75モル%であることが好ましく、15〜70モル%であることがより好ましく、20〜65モル%であることが特に好ましい。
【0025】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造のみを有していても構わないが、(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能なその他の単量体由来の構造を含んでいても構わない。
その他の単量体としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸、及びそれらの塩等の(メタ)アクリル酸以外のカルボキシル基含有単量体及びその塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアルキル基のエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体及びそれらの塩;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸等のホスホン酸基を有する単量体;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1〜300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;等が挙げられる。これらその他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体に含まれる全単量体由来の構造(すなわち、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造とその他の単量体由来の構造との合計)100質量%に対して、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造を酸型換算で80質量%以上含むことが好ましい。80質量%以上であれば、本発明の重合体水溶液の経時的な顔料分散性能がより向上する傾向にある。より好ましくは90質量%以上である。
ここで、酸型換算とは、塩型の単量体を対応する酸型単量体として質量割合を計算することをいい、例えば(メタ)アクリル酸ナトリウム由来の構造であれば、(メタ)アクリル酸由来の構造として質量割合を計算する。その他の単量体も同様に酸型換算で計算する。
【0027】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体に含まれる全単量体由来の構造100質量%に対する、その他の単量体由来の構造が0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましい。
【0028】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは3,000〜50,000であり、より好ましくは4,000〜30,000であり、更に好ましくは5,000〜20,000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になるおそれがある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、クレーや顔料等の分散性が低下し、洗剤ビルダーや顔料分散剤として充分な性能が発揮されなくなるおそれがある。
なお、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0029】
また、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は具体的には、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.5〜2.8、更に好ましくは1.8〜2.6である。この分子量分布の値が小さすぎると、例えばポリ(メタ)アクリル酸系重合体を無機物の分散剤として使用した場合に、無機物を湿式粉砕した場合の粉砕直後のスラリー粘度が増加するおそれがあり、また大きすぎるとスラリーの経時粘度安定性が低下するおそれがある。
なお、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の分子量分布の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0030】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体又は本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液(本明細書においては、これらを合わせて、単に、「ポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)」、又は、「重合体(水溶液)」とも表する。)は、後述する[ポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の製造方法]に記載するように、(i)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液をアルカリ金属塩で中和する工程と、(ii)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を有機アミンで中和する工程とを必須として製造することが好ましい。このようにして製造された本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)は、更に、経時的に色調が良好な(着色が少ない)ものとなる。より好ましくは、(i)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液をアルカリ金属塩で中和する工程と、(ii)前記アルカリ金属塩で中和された部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を有機アミンで中和する工程とを必須として製造することである。
【0031】
[ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液]
本発明の重合体水溶液中には、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体が必須に含まれる。このほか、未反応の(メタ)アクリル酸(塩)、未反応のその他の単量体、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物等が含まれうる。
上記重合体水溶液中に存在する未反応の単量体の含有量((メタ)アクリル酸(塩)とその他の単量体との合計の含有量)は、使用する単量体の種類によっても異なるが、重合体水溶液の固形分100質量%に対して1質量%未満が好ましい。より好ましくは0.5質量%未満であり、更に好ましくは0.1質量%未満である。
【0032】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、特に制限されるものではないが、後述する水系溶媒中でポリ(メタ)アクリル酸系重合体を製造した後に、不純物除去等の精製工程を経て製造されるものであっても構わないが、生産効率性の観点から、精製工程を経ずに得られるものが好ましい。更に、水系溶媒中でポリ(メタ)アクリル酸系重合体を合成する重合工程の後に、得られた重合体水溶液を、取扱いの便等のため、少量の水にて希釈(得られた重合体水溶液100質量%に対して1〜400質量%程度)したり、濃縮したりしたものも、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる。
【0033】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の他、水を必須とする溶媒を含むことになる。その場合、溶媒の含有量は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して、50〜500質量%が好ましく、60〜400質量%がより好ましく、80〜300質量%が更に好ましく、90〜200質量%が最も好ましい。
また、本発明の重合体水溶液における、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の含有量は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液100質量%に対して、16〜66質量%が好ましく、20〜62質量%がより好ましく、25〜55質量%が更に好ましい。
【0034】
後述するように、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の使用上の制限から、また、性能向上の観点から、本発明の重合体水溶液の有機溶剤の含有量は極力低減させることが好ましく、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液100質量%に対し、有機溶剤の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0035】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度が、本発明の重合体水溶液に対して1000〜10000ppmであることを特徴としている。硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度が10000ppmを超えると、重合体水溶液の経時的な顔料分散性能が低下する傾向にある。硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度を1000ppm未満に設定すると、経時的な顔料分散性能が優れた重合体水溶液を製造することが困難となる。
上記硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンとしては、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン等が例示される。
上記重合体水溶液は、後述する有効成分値を35〜45%に調整したときの硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度が上記範囲になるようにすることが好ましい。
【0036】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、固形分(不揮発分)濃度を35〜70質量%に調整したときの粘度(25℃)が400〜2000mPa・sであることが好ましい。上記範囲に設定することにより、重合体水溶液の色調等の保存安定性が良好になり、また、例えば顔料分散剤として使用したときに、スラリー製造設備上の操作性が向上する。ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の粘度は、使用する開始剤種や使用量、中和剤種やその使用量、中和度等で容易に調整できる。より好ましくは、500〜1500mPa・sであり、更に好ましくは550〜1000mPa・sであり、特に好ましくは600〜900mPa・sであり、最も好ましくは600〜800mPa・sである。
なお、粘度は、B型粘度計を使用し、測定条件としては、ローターNo.4、60rpm、5分間で測定した値をいう。
【0037】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、固形分(不揮発分)濃度を35〜70質量%に調整したときのpHが2.5〜9.0であることが好ましい。上記範囲に設定することにより、重合体水溶液の色調等の保存安定性が良好になり、また、例えば顔料分散剤として使用したときに、良好な分散性を発現することが可能となる。ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液のpHは、使用する開始剤種や使用量、中和剤種やその使用量、中和度等で容易に調整できる。より好ましくは、4.0〜8.5であり、更に好ましくは4.5〜8.0である。特に好ましくは5.0〜8.0である。
【0038】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、着色が少ないことが好ましく、例えば、製造直後及び室温(25℃)で1ヶ月経過後の重合体水溶液有姿での色相APHAが200以下であることが好ましく、180以下であることがより好ましい。更に好ましくは160以下である。本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の製造方法によれば、重合体水溶液の着色を低く抑える(色調を良好とする)ことが可能である。着色が少ないと、例えば分散剤用途や洗剤ビルダー用途に好ましく使用することができる。
なお、APHAは、色差計等により測定することができる。
【0039】
[ポリ(メタ)アクリル酸系重合体組成物]
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、乾燥、又は、その他の溶剤で置換・希釈して使用することもできる(ポリ(メタ)アクリル酸系重合体組成物という)。本発明のポリアクリル酸系重合体水溶液を乾燥後水に再溶解したり、乾燥後に他の任意な成分を添加したものも本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体組成物に含まれる。
なお、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体組成物に含まれる未反応の単量体の含有量、溶媒や有機溶剤の含有量、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の含有量、硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度、粘度、pH、及びAPHAは、それぞれ上述した本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液と同様であることが好ましい。
【0040】
[ポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の製造方法]
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)を必須として重合することにより製造されることが好ましい。本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)に加えて、上述したその他の単量体を共重合することにより製造しても構わない。本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いる全単量体((メタ)アクリル酸(塩)とその他の単量体との合計をいう)100質量%に対する(メタ)アクリル酸(塩)の割合は、酸型換算で80質量%以上であることが好ましい。80質量%以上であれば、得られる重合体水溶液の経時的な顔料分散性能が向上する傾向にある。より好ましくは90質量%以上である。
ここで、上記の通り、酸型換算とは、塩型の単量体を対応する酸型単量体として質量割合を計算することをいい、例えば(メタ)アクリル酸ナトリウムであれば、(メタ)アクリル酸として質量割合を計算する。その他の単量体も同様に酸型換算で計算する。
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の製造方法としては、(メタ)アクリル酸(塩)として、アクリル酸、アクリル酸塩を使用することが好ましい。
【0041】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を、有機アミンで中和する工程(又は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液に、有機アミンを添加する工程)を含むことにより製造することが好ましい。該製造方法によれば、得られる重合体水溶液の色調等が特に良好になり、また、例えば顔料(無機粒子)分散剤として使用したときに、特に良好な分散性を発現する傾向にある。上記中和する工程(又は、上記添加する工程)に使用される有機アミンとしては、上述した有機アミンと同様のものが挙げられ、好ましくは、重合体水溶液の経時的な顔料分散性能が顕著に向上することから、アルカノールアミンである。
【0042】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)が、上記有機アミンで中和する工程を含んで製造される場合、有機アミンの他にその他の中和剤を使用しても構わないが、その場合、中和反応時の着色を低減する為に、最初に酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を、その他の中和剤で中和する工程を行い、その後に、酸型及び/又は部分中和型のポリアクリル酸系重合体を含む水溶液を、有機アミンで中和する工程を行うことが、色調が良好になることから好ましいが、その逆の工程順序とすることも可能である。なお、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造のモル比が上述した範囲になる限りにおいて、中和点を越えて過剰の有機アミン(塩)を加えても良い。ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造のモル比を上述した範囲に設定することにより、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液が顔料の経時的な分散力を顕著に発現することとなる。
上記有機アミン以外のその他の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属塩、アンモニア等が挙げられる。
ただし、製造工程の簡略化を目的として、(メタ)アクリル酸の有機アミン塩を必須として重合を行うことによってポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液を製造しても構わない。この場合、着色が大きくなり、洗剤添加物や顔料分散剤としては使用し難くなる場合がある。
【0043】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を有機アミンで中和する工程(又は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液に、有機アミンを添加する工程、この工程を「工程N2」とも言う)を含んで製造される場合、更に、(メタ)アクリル酸(塩)を必須として重合することにより酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を製造する工程(この工程を「工程B」とも言う)を含んで製造することが好ましい。この場合、工程Bにより製造される(工程B後の)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の中和率(全酸基(中和及び未中和)に対する中和されている酸基の割合)としては、経時的な顔料分散性能や水溶液に色調が向上する傾向にあることから、0〜90%が好ましく、0〜85%がより好ましく、0〜35%が更に好ましく、0〜10%が特に好ましい。
【0044】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液をその他の中和剤により部分中和する工程(この工程を「工程C」とも言う)を含んで製造することが好ましい。工程Cを行う順序は特に制限されないが、工程Cは工程Bの後に実施することが特に好ましい。工程Cにより製造される(工程C後の)部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の中和率としては、色調が向上する傾向にあることから、5〜90%が好ましく、10〜85%がより好ましく、15〜80%が特に好ましい。
【0045】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の製造方法としては、上述した方法の中でも、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液をアルカリ金属塩により中和(部分中和)する工程(この工程を「工程N1」とも言う)と、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を有機アミンで中和する工程(工程N2)とを必須として含む形態が特に好ましい。そのような形態とすることによって、得られるポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の色調を経時的に良好なものとすることが可能となる。
【0046】
上記工程N1後の部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体のアルカリ金属塩による中和率(全酸基100モル%に対するアルカリ金属塩により中和されている酸基のモル%)としては、得られる重合体水溶液の色調が向上する傾向にあることから、25〜90モル%が好ましく、30〜85モル%がより好ましく、35〜80モル%が特に好ましい。
【0047】
上記工程N1に使用されるアルカリ金属塩としては、例えばLi、Na、K等の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等であり、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が例示される。工程N1においては、アルカリ金属塩を必須として使用するが、アルカリ土類金属塩等の他のアルカリ物質(中和剤)を併用しても構わない。この場合、工程N1に使用する全中和剤100モル%に対して、アルカリ金属塩が80モル%以上であることが好ましい。
【0048】
上記工程N1の温度は、使用するアルカリ金属塩の種類に応じて適宜選択すればよいが、40〜100℃で行われることが好ましく、45〜95℃がより好ましく、50〜90℃が特に好ましい。100℃を超えて中和反応を行うと、得られる重合体水溶液の色調が悪くなるおそれがあるので好ましくない。また、40℃より低い温度で中和する場合は、重合後に得られる重合体水溶液を40℃より低い温度まで冷却する必要があり、生産性の面から好ましくない。
また、工程N1に要する時間は、使用するアルカリ金属塩の種類や使用量に応じて適宜選択すればよいが、通常、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下が更に好ましい。
【0049】
上記工程N2後の部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有機アミンによる中和率(全酸基100モル%に対する有機アミンにより中和されている酸基のモル%)は、得られる重合体水溶液の顔料の経時的な分散力が向上する面からは、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸系重合体に含まれる有機アミン(塩)に由来する構造のモル比を上記範囲に設定することが好ましい。
【0050】
上記工程N2に使用される有機アミンとしては、上記の例示と同様のものが例示されるが、重合体水溶液の経時的な顔料分散性能が顕著に向上することから、アルカノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンが特に好ましい。工程N2においては、有機アミンを必須として使用するが、他のアルカリ物質(中和剤)を併用しても構わない。該中和剤は、上述した有機アミン以外のその他の中和剤と同様である。この場合、工程N2に使用する全中和剤100モル%に対して、有機アミンが80モル%以上であることが好ましい。
【0051】
上記工程N2の温度は、使用する有機アミンの種類に応じて適宜選択すればよいが、40〜100℃で行われることが好ましく、45〜95℃がより好ましく、50〜90℃が特に好ましい。100℃を超えて中和反応を行うと、得られる重合体水溶液の色調が悪くなるおそれがあるので好ましくない。また、40℃より低い温度で中和する場合は、重合後に得られる重合体水溶液を40℃より低い温度まで冷却する必要があり、生産性の面から好ましくない。
また、工程N2に要する時間は、使用する有機アミンの種類や使用量に応じて適宜選択すればよいが、通常、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下が更に好ましい。
【0052】
上記工程N1と工程N2とを必須として含む製造方法の形態においては、工程N1と工程N2との順番は、特に限定されるものではなく、工程N1を先に行ってもよく、工程N2を先に行ってもよく、工程N1と工程N2を同時に行っても良い。しかし、有機アミンは熱履歴等により着色するおそれがあるため、長時間、高温に曝すのは避けた方が好ましいことから、工程N1が先に行われることが好ましい。工程N1が先に行われる場合には、一部は重なって行うことも可能であり、例えば、工程N1で添加されるアルカリ金属塩の内、50モル%以上が反応液に添加された時点で、工程N2を開始することも可能である。より好ましくは工程N1で添加されるアルカリ金属塩の内、70モル%以上が添加された時点で工程N2を開始することであり、更に好ましくは工程N1で添加されるアルカリ金属塩の内、90モル%以上が添加された時点であり、最も好ましくは工程N1で添加するアルカリ金属塩の添加が終了した後に工程N2を開始することである。上記の順番で中和工程(工程N1、N2)を行うことにより、上記好ましい範囲でのpH調整がしやすくなり、得られる重合体水溶液の色調等が特に良好になり、また、例えば顔料分散剤として使用したときに、特に良好な分散性を発現する傾向にある。
【0053】
上記工程N1と工程N2とを必須として含む製造方法の形態においては、上記工程Bを含んでポリ(メタ)アクリル酸系重合体を製造することが好ましい。
【0054】
後述する(重合溶液)に記載の通り、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、溶液重合で製造することが好ましく、この際、水又は水と有機溶剤との混合溶媒を使用することができる。有機溶剤を使用する場合、脱溶剤工程(工程D)が必要となるが、工程Dは、中和工程(工程N1、N2)の前に行ってもよく、中和工程(工程N1、N2)の後に行ってもよく、中和工程N1と中和工程N2の間に行ってもよい。重合時の温度や圧力、中和時の温度や圧力、脱溶剤時の温度や圧力といった各工程の条件を考慮し、得られるポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の着色を低く抑えることができるように、工程D、工程N1、工程N2の順番は適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、有機アミンは熱履歴等により着色するおそれがあるため、工程N2を最後に行うのがより好ましい。すなわち、先に工程Dを行い、次いで工程N1を行い、最後に工程N2を行うという順番、又は、先に工程N1を行い、次いで工程Dを行い、最後に工程N2を行うという順番、がより好ましい。
【0055】
(重合開始剤)
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)を必須として含む単量体組成物を、重合開始剤(開始剤とも言う)の存在下に重合して得ることができる。
上記重合開始剤としては、通常重合開始剤として用いられているものを使用することができ、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ
バレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。重合体の分子量分布が小さくなる傾向にあるので、1種のみを使用することが好ましい。
上記重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、15g以下であることが好ましい。より好ましくは0.1〜12gである。
【0056】
上記重合開始剤の中でも、得られるポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の顔料の分散性に大きな影響を及ぼさないものとして、過硫酸塩を使用することが特に好ましい。ただし、顔料の経時的な分散力が向上することから、過硫酸塩の使用量を全単量体1モルに対して、1.9g以下とすることが好ましく、1.6g以下とすることがより好ましく、1.2g以下とすることが更に好ましく、1.1g以下とすることが特に好ましい。過硫酸塩の使用量の下限としては、全単量体1モルに対して、0.1g以上が好ましく、0.5g以上がより好ましい。
【0057】
上記重合開始剤の添加方法としては、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。このように重合開始剤は連続的に滴下するのが好ましいが、その滴下速度は適宜設定することができる。
【0058】
上記重合開始剤を連続的に滴下して添加する場合の滴下時間についても、特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤を用いる場合には、単量体の滴下終了時間までは滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下終了後から5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、重合体における単量体の残量を著しく減じることができる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
【0059】
上記比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、特に2種以上の開始剤を併用して用いる併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、又は、終了してから、別の開始剤の滴下を開始しても良い。いずれも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0060】
(連鎖移動剤)
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法においては、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を使用することも可能である。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、通常連鎖移動剤として用いられているものを使用することができる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン
酸、3−メルカプトプロピオン
酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びそれらの水和物等;亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びそれらの塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物及びそれらの塩等が挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記連鎖移動剤の添加量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、1〜20gであることが好ましい。より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、連鎖移動剤が残留したり、重合体純分が低下したりするおそれがある。
【0061】
上記連鎖移動剤の中でも、得られるポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の顔料(無機粒子)の分散力等が向上することから、次亜リン酸塩、亜硫酸塩、及び/又は亜硫酸水素塩を使用することが好ましい。但し、顔料の経時的な分散力が向上することから、次亜リン酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩(併用する場合はそれらの合計)は、その使用量を全単量体1モルに対して、5.0g以下とすることが好ましく、4.5g以下とすることがより好ましく、4.0g以下とすることが更に好ましく、使用量の下限は、全単量体1モルに対して、1.0g以上が好ましく、1.5g以上がより好ましい。
次亜リン酸塩、亜硫酸塩、及び/又は亜硫酸水素塩の使用量が全単量体1モルに対して、上記上限を超えると、連鎖移動に寄与しない次亜リン酸塩、亜硫酸塩、及び/又は亜硫酸水素塩(重合体末端に取り込まれない次亜リン酸塩、亜硫酸塩、及び/又は亜硫酸水素塩)が増加し、無機陰イオン量が増加することに起因して、経時的な分散力が低下したり、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の色相が悪化したりするおそれがある。
【0062】
(分解触媒、還元性化合物)
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物(反応促進剤ともいう)を使用(重合系に添加)してもよい。
【0063】
上記重合開始剤の分解触媒や還元性化合物として作用する化合物としては、重金属イオン(又は重金属塩)が挙げられる。すなわち、本発明のポリアクリル酸系重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重金属イオン(又は重金属塩)を使用(重合系に添加)してもよい。
なお、本明細書において、重金属イオンとは、比重が4g/cm
3以上の金属を意味する。
【0064】
上記重金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。
上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe
2+であっても、Fe
3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
【0065】
上記重金属イオンは、本発明においては、重金属塩(重金属化合物)を溶解してなる水溶液又は水性溶液を重合系に添加することにより、反応系に加えられることとなる。その際に用いる重金属塩は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH
4)
2(SO
4)
2・6H
2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属塩等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属塩を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取扱い性に優れることになる。
なお、上記重金属塩を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造において、重合反応を著しく妨げるものでなければ、重金属塩の溶解性を損ねない範囲で使用できる。
【0066】
上記重金属イオンは、重金属塩の水溶液又は水性溶液として重合系に添加されるが、本発明の製造方法において、当該重金属塩は重合系内に供給する際に、重金属塩とカルボキシル基含有化合物とを含む水溶液として供給されることが好ましい。重金属塩は重合系内に供給する際に、重金属塩とカルボキシル基含有化合物とを含む水溶液として供給することにより、重金属イオンの効果を安定して発揮することができる為、得られる重合体の分子量のばらつきが少なく、所望の分子量の重合体を安定して製造することができるという効果を奏する。なお、「重合系」とは、重合反応が行われる、又は行われている反応容器の内部を意味し、通常は初期仕込みの重合溶媒、又は重合中の重合溶液内を意味する。上記重金属塩とカルボキシル基含有化合物とを含む場合における、重金属塩とカルボキシル基含有化合物との比率は、重金属塩100質量部に対し、カルボキシル基含有化合物が1〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。
【0067】
重合系に添加する際の重金属塩水溶液は、水溶液のpHが8以下になるように設定することが好ましく、7以下になるように設定することがより好ましく、6以下になるように設定することが特に好ましい。
【0068】
上記カルボキシル基含有化合物としては、カルボキシル基を有する有機化合物であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蟻酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、グリオキシル酸等でも構わないが、不純物低減の観点から、重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、そのような化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸等及びそれらの無水物が例示される。
【0069】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が充分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を例えば洗剤ビルダーとして用いる場合に、洗剤用ビルダーの汚れの原因となるおそれがある。
【0070】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体を引き続きアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
重合系に添加する、重金属化合物を溶解してなる水溶液又は水性溶液中の重金属化合物の濃度は、0.1質量%〜10質量%とすることが好ましい。
【0071】
重金属イオン(重金属塩)以外の、重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、それらのエステル及びそれらの金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミン及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
また、重金属イオン(重金属塩)以外の、還元性化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル付加物、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とそれらの置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0073】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、上記重合開始剤、連鎖移動剤、反応促進剤の他にも、必要に応じてpH調節剤、緩衝剤等を用いることができる。
【0074】
(重合溶液)
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、溶液重合で製造することが好ましい。この際使用できる溶媒は、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒又は水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。また、上記連鎖移動剤を使用する場合には、連鎖移動効率を高め(連鎖移動剤を重合体末端により多く取り込む)、不純物である無機陰イオンを低減するために、溶剤自体は連鎖移動しにくいものが好ましい。その観点から、溶媒としては水のみを使用するか、有機溶剤を併用する場合にはその使用量を極力低減することが好ましい。
上記観点から、例えば、有機溶剤を使用する場合であっても、重合終了後の反応液100質量%に対して、30質量%以下にすることが好ましく、20質量%以下にすることがより好ましく、10質量%以下にすることが更に好ましい。特に好ましくは、5質量%以下にすることであり、最も好ましくは、1質量%以下にすることである。
有機溶剤を使用する場合、脱溶剤工程が必要となるが、脱溶剤工程における圧力、温度、時間等の条件は、得られるポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の着色を低く抑えることができるように、使用する有機溶媒の種類や使用量に応じて、適宜選択することができ、例えば、脱溶剤時の圧力としては、常圧でもよく、減圧でもよく、加圧でもよく、温度は30〜150℃が好ましく、40〜130℃がより好ましく、50〜110℃が特に好ましい。また脱溶剤に要する時間は10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下が特に好ましい。
ここで重合の際、水とともに使用できる溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
重合反応は、好ましくは、重合終了後の固形分濃度(溶液の内、不揮発分の濃度であり、後述する測定方法で測定される)が、重合溶液100質量%に対して10〜60質量%であり、15〜50質量%がより好ましく、20〜45質量%が更に好ましい。
【0076】
(その他の製造条件)
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、回分式(バッチ式)、連続式、半連続式のいずれの重合方法も採用することができる。本発明のポリアクリル酸系重合体を製造する条件は、上記の方法の他、特に断りの無い限りは、重合方法として通常知られている方法又はそれを修飾した方法が使用できる。
【0077】
重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、更に好ましくは80〜105℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなり、重合体の分散性が向上する傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0078】
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0079】
[ポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液、組成物)の用途]
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体組成物(以下、本発明の重合体等とも言う)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(又は洗剤組成物)等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用等、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0080】
<水処理剤>
本発明の重合体等は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0081】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0082】
<繊維処理剤>
本発明の重合体等は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体(組成物)を含む。
【0083】
上記繊維処理剤における本発明の重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは5〜100質量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0084】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物及び界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0085】
本発明の重合体若しくは重合体組成物と、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体1質量部に対して、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100質量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0086】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維、並びに、それらの織物及び混紡品が挙げられる。
【0087】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の本発明の重合体等と、アルカリ剤及び界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
【0088】
<顔料分散剤>
本発明の重合体等(重合体、重合体水溶液、重合体組成物)は、顔料分散剤に用いることができる。すなわち、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)を含む顔料分散剤もまた、本発明の一つである。
本発明の重合体等は単独で顔料分散剤として使用することができるが、本発明の顔料分散剤には、必要に応じて、水等の溶媒や、他の配合剤として、縮合リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0089】
上記顔料分散剤中における、本発明の重合体の含有量は、顔料分散剤全体に対して、好ましくは0.5〜10質量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
本発明によれば、低粘度で粘性の経時安定性を有し、かつ高濃度の製紙用顔料スラリーを提供することが可能となる。ひいては、該スラリーを用いて塗工した際に塗工欠陥を抑制し、良好な原紙被覆性、印刷光沢、耐ブリスター性、ムラのない印刷面感を与え、かつ顔料が本来持つ白色度、不透明度、インキ受理性の有意点を備えた印刷用塗工紙を提供することが可能となる。
【0090】
本発明に用いられる顔料としては、特に制限はないが、例えばカオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、プラスティックピグメント等が挙げられる。
【0091】
本発明において、顔料を調整する方法としては、通常用いられる方法が適宜参照される、又は、組み合わされることにより行うことができるが、例えば、一次分散を行い、それを湿式粉砕処理する方法が挙げられる。この方法は、低粘度であり、かつ分散安定性に優れた高濃度の顔料スラリーを得ることができる点で好適である。無論、本発明における顔料の調整方法は、この湿式粉砕処理法に限定されるものではなく、湿式粉砕処理を施さない調整方法をとることもなんら制限されるものではない。上記顔料の調整方法において、一次分散の方法は特に制限されるものではないが、ミキサーで混合することが好ましく、例えば、高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル、コーレスミキサー、撹拌式ディスパー等の剪断力の高いものを用いることが好適である。
【0092】
湿式粉砕処理の際、本発明の重合体を粉砕機に仕込んで粉砕しても良い。このような場合、該重合体は粉砕助剤としての役割も発揮する。
【0093】
上記スラリーに含まれる顔料の平均粒径としては、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。なお、ここで言う平均粒径は、後述の実施例で用いられたような、レーザー粒度分布計もしくはX線検出器を有する粒度分布計にて計測された粒径である。また、所望の粒径が好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であることが好ましい。
【0094】
上記顔料分散剤を顔料の分散剤として用いる場合、該顔料分散剤の使用量は本発明の重合体を顔料100質量部に対して、0.1〜5.0質量部とすることが好ましい。該顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、充分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0095】
本発明における顔料スラリーとしてはまた、固形分濃度が60質量%以上であるものであることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
【0096】
上記顔料スラリーの粘度は、特に制限はされないが、スラリー濃度により大きく異なるため、75質量%に調整した直後に、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは800mPa・s以下である。
なお、上記顔料スラリー粘度は、B型粘度計を使用し、測定条件としては、ローターNo.4、60rpm、5分間で測定した値をいう。
【0097】
<洗剤組成物>
本発明の重合体等は、洗剤組成物にも添加しうる。
洗剤組成物における本発明の重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、本発明の重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において通常知られている知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリ
コシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、更に好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下するおそれがある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、本発明の重合体等に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩等のアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、更に好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、50質量%を超えると経済性が低下するおそれがある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、更に好ましくは0.5〜65質量%であり、更により好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、更に好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
また、本発明の重合体等を洗剤ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは400mg/L以下であり、更に好ましくは300mg/L以下であり、特に好ましくは200mg/L以下であり、最も好ましくは100mg/L以下である。カオリン濁度の値としては、以下の手法により測定される値を採用するものとする。
【0098】
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色工業社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
【0099】
[無機粒子スラリー]
また、本発明の重合体等(重合体、重合体水溶液、重合体組成物)は、無機粒子スラリーに用いることができる。すなわち、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む無機粒子スラリーもまた、本発明の一つである。
【0100】
<ポリ(メタ)アクリル酸系重合体>
本発明の無機粒子スラリーに含まれるポリ(メタ)アクリル酸系重合体としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基の、酸型のカルボキシル基/有機アミンで中和されたカルボキシル基(有機アミン塩型カルボキシル基)/有機アミン塩型カルボキシル基以外のカルボキシル基の塩の割合は、特に限定されず、上述した割合と同様とすることができるが、本発明の無機粒子スラリーに含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比が100:10〜100:75であることが重要である。好ましくは、100:15〜100:70であり、100:20〜100:65であることがより好ましい。
【0101】
なお、無機粒子スラリーに含まれる(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造とは、無機粒子スラリーを構成する化合物に含まれる(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造を言い、無機粒子スラリーに含まれる有機アミン(塩)に由来する構造とは、無機粒子スラリーを構成する化合物に含まれる有機アミン(塩)に由来する構造を言う。
【0102】
上記有機アミン(塩)としては、上述したものと同様のものが例示されるが、この中でも、無機粒子スラリーの経時的な粘度安定性が顕著に向上し、かつ高pHを維持可能な点から、無機粒子スラリーがアルカノールアミン又はその塩に由来する構造を含むことが好ましい。
【0103】
上記有機アミン(塩)に由来する構造とは、いずれかの酸性物質で中和され有機アミン塩として存在する構造及び/又は有機アミンのままで存在する構造を表す。いずれかの酸性物質で中和され有機アミン塩として存在する構造とは、例えば(i)上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の塩として存在する構造や、(ii)(メタ)アクリル酸等の単量体又はその他の酸性物質の塩として存在する構造が例示される。
無機粒子スラリーの経時的な粘度安定性が向上する傾向にあることから、本発明の無機粒子スラリーは無機塩等の量を極力低減させた形態であることが好ましく、そのため上記有機アミン(塩)に由来する構造は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基の有機アミン塩として存在する構造であることが好ましい。したがって、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基100モル%に対する、有機アミンで中和されたカルボキシル基(有機アミン塩型カルボキシル基)の割合は、10〜75モル%であることが好ましく、15〜70モル%であることがより好ましく、20〜65モル%であることが特に好ましい。
【0104】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体に含まれる全単量体由来の構造(すなわち、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造とその他の単量体由来の構造との合計)100質量%に対して、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造を酸型換算で80質量%以上含むことが好ましい。80質量%以上であれば、無機粒子スラリーの経時的な粘度安定性がより向上する傾向にある。より好ましくは、90質量%以上である。
ここで、酸型換算とは、上述したとおりである。
【0105】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体に含まれる全単量体由来の構造100質量%に対する、その他の単量体由来の構造が0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましい。
【0106】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは3,000〜50,000であり、より好ましくは4,000〜30,000であり、更に好ましくは5,000〜20,000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、無機粒子スラリーの粘性を充分に低くできなくなるおそれがある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、無機粒子スラリーの経時的な粘度安定性を充分に向上できなくなるおそれがある。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0107】
また、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は具体的には、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.5〜2.8、更に好ましくは1.8〜2.6である。この分子量分布の範囲内であれば、無機粒子スラリーの粘性や経時的な粘度安定性が特に向上する傾向にある。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の分子量分布の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0108】
<無機粒子>
本発明の無機粒子スラリーは、無機粒子を含むものであるが、用いられる無機粒子としては、特に制限されず、例えば、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、プラスティックピグメント等が挙げられる。
【0109】
<無機粒子スラリーの組成>
本発明の無機粒子スラリーは、無機粒子スラリー100質量%に対し、無機粒子を70質量%以上含有することが好ましい。無機粒子スラリーに含まれる無機粒子が70質量%未満であれば、例えば、紙塗工用顔料スラリーとして使用した場合に、紙の生産性が低下するおそれがある。より好ましくは73質量%以上であり、更に好ましくは75質量%以上である。特に好ましくは78質量%以上である。また、無機粒子の含有量の上限は例えば85質量%である。
【0110】
本発明の無機粒子スラリーは、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を無機粒子スラリー100質量%に対し、0.05〜10質量%(酸型換算)含むことが好ましい。より好ましくは0.1〜5.0質量%、更に好ましくは0.15〜1.0質量%、特に好ましくは0.2〜0.8質量%である。
【0111】
本発明の無機粒子スラリーは、有機アミンに由来する化合物を、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比が上記の範囲になるような割合で含有する。
【0112】
本発明の無機粒子スラリーは、固形分濃度が75質量%以上であるものである。固形分濃度として好ましくは78質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上である。また、無機粒子スラリーの固形分濃度の上限は例えば90質量%である。
なお、固形分濃度は後述する測定方法により測定される値である。
【0113】
本発明の無機粒子スラリーは、通常は水を含んでおり、その場合の水の含有量は25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは22質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以下である。また、無機粒子スラリーにおける水の含有量の下限は例えば10質量%である。
【0114】
本発明の無機粒子スラリーに含まれる無機粒子の平均粒径としては、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。なお、ここで言う平均粒径は、後述の実施例で用いられたような、レーザー粒度分布計にて計測された粒径である。また、本発明の無機粒子スラリーに含まれる無機粒子は、全無機粒子100質量%に対して、粒径が2μm以下の粒子が90〜100質量%含まれているものであり、好ましくは91〜100質量%含まれているものである。粒径が上記範囲にあれば、本発明の無機粒子スラリーを例えば紙塗工用顔料分散剤として使用した場合に、紙の光沢や白色度が良好なものとなる。
【0115】
本発明の無機粒子スラリーは、必要に応じて、有機溶媒や、他の配合剤として、縮合リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0116】
本発明の無機粒子スラリーは、硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度が、本発明の無機粒子スラリーに対して100〜400ppmであることを特徴としている。硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度が400ppmを超えると、無機粒子スラリーの経時的な粘度安定性が低下する傾向にある。硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度を100ppm未満に設定しようとすると、開始剤、連鎖移動剤、溶媒の組み合わせによっては高価格なものとなってしまう為、好ましくない。
上記硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンとしては、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン等が例示される。
【0117】
<無機粒子スラリーの物性>
本発明の無機粒子スラリーの粘度は、特に制限はされず、スラリー濃度により大きく異なるが、無機粒子スラリーの固形分濃度を75質量%に調整した直後に、1000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは900mPa・s以下である。
なお、無機粒子スラリーの粘度は、B型粘度計を使用し、測定条件としては、ローターNo.4、60rpm、5分間で測定した値をいう。
【0118】
[無機粒子スラリーの製造方法]
本発明の無機粒子スラリーの製造方法は、(i)(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とを含むポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液及び無機粒子を混合する工程を必須として製造する方法、(ii)ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含むポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液と、有機アミン(塩)と、無機粒子とを混合する工程を必須として製造する方法、のいずれかである。(ii)の製造方法の場合、3つの成分の内2つを予め混合してから残りの1つと混合してもよいし、3つを同時に混合しても構わない。
なお、本発明の無機粒子スラリーの製造方法は、上記混合工程を含む限り、溶媒や他の配合剤を混合する工程を含んでいてもよい。
【0119】
<ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液>
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液としては、上述した本発明の重合体水溶液と同様のものを用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比が100:10〜100:75であることが好ましい。別途ポリ(メタ)アクリル酸系重合体や有機アミン(塩)を添加することにより無機粒子スラリーの(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比が上記範囲になるように調整することも可能であるが、無機粒子スラリーの生産効率の点で、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比を上記範囲に設定することが好ましい。そのような範囲に設定することにより、無機粒子スラリーの経時的な粘度の安定性を顕著に発現することが可能となる。より好ましくは、100:15〜100:70であり、100:20〜100:65であることが更に好ましい。
【0120】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液が有機アミン(塩)に由来する構造を含む場合、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる有機アミン(塩)に由来する構造、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造の態様は、特に言及する場合を除き、無機微粒子スラリーにおける態様と同様である。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる有機アミン(塩)に由来する構造としては、例えば(i)酸型及び/又は部分中和型のポリアクリル酸系重合体を含む水溶液に有機アミンを添加することにより形成された、有機アミンで中和されたカルボキシル基の塩に含まれる構造や、(ii)予め(メタ)アクリル酸等の単量体を有機アミンで中和した、有機アミン塩が重合することにより形成される構造、(iii)未反応の有機アミンとして存在する構造等が例示される。
無機粒子スラリーの経時的な粘度安定性が向上する傾向にあることから、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液は無機塩等の量を極力低減させた形態であることが好ましく、そのため有機アミン(塩)由来の構造は、カルボキシル基の有機アミン塩として存在する構造であることが好ましい。上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の有するカルボキシル基100モル%に対する、有機アミンで中和されたカルボキシル基の割合は、無機粒子スラリーにおける態様と同様である。
【0121】
<ポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の製造方法>
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)を製造する方法としても、上述した本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0122】
<その他の無機粒子スラリーの製造方法>
本発明の無機粒子スラリーの製造方法としては、通常無機粒子スラリーを製造する際に用いられる製造方法が適宜参照される、又は、組み合わされることにより行うことができるが、典型的には、一次分散を行い、それを湿式粉砕処理する方法が挙げられる。この方法は、低粘度であり、かつ分散安定性に優れた高濃度の顔料スラリーを得ることができる点で好適である。無論、本発明における無機粒子スラリー調整方法は、この湿式粉砕処理法に限定されるものではなく、湿式粉砕処理を施さない調整方法をとることもなんら制限されるものではない。上記無機粒子スラリーの調整方法において、一次分散の方法は特に制限されるものではないが、ミキサーで混合することが好ましく、例えば、高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル、コーレスミキサー、撹拌式ディスパー等の剪断力の高いものを用いることが好適である。
【0123】
本発明の無機粒子微粒子の製造方法は、(i)(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とを含むポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液及び無機粒子を混合した後に、又は、(ii)ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含むポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液と、有機アミン(塩)と、無機粒子とを混合した後に、無機粒子を湿式粉砕する工程を含むことが好ましい。この場合、無機粒子スラリーに含まれる無機粒子の粒度を効率よく所望の範囲に設定することができる。このような場合、本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)は粉砕助剤としての役割も発揮する。
【0124】
[無機粒子スラリーの用途]
本発明の無機粒子スラリーは、紙塗工用、紙加工用、セラミック成型用、繊維処理用、エマルション塗料用等に用いることができる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明の重合体の重量平均分子量、数平均分子量、未反応の単量体の定量、重合体水溶液及び重合体組成物の固形分量、重合体水溶液の有効成分値は、下記の方法に従って測定した。
【0126】
<重合体水溶液、重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、110℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を2時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0127】
<有効成分測定>
有効成分値は重合して得られたポリマーのカルボキシル基濃度として平沼産業社製 自動滴定装置COM−1500にて測定、算出した。まず1N NaOH水溶液で完全にポリマー中のカルボン酸を中和した後、1N HCl水溶液にて滴定曲線を作成し、その曲線の第二変曲点と第一変曲点の差(1N HCl溶液量)から以下のように算出した。
有効成分値(%)=9.4×(第2変曲点での1N HCl量(質量)−第1変曲点での1N HCl量(質量))×HCl力価/分析物量(質量)。
なお、上記分析物量とは、分析したポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の質量を表す。
【0128】
<重量平均分子量及び数平均分子量の測定条件(GPC)>
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、下記条件で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて行った。
装置:日立製作所社製 L−7000シリーズ
検出器:HITACHI RI Detector L−2490
カラム:東ソー社製 TSK−GEL G3000PWXL
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学社製 POLY SODIUM ACRYLATE STANDARD
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液。
【0129】
<重合体水溶液、重合体組成物中の単量体等の測定>
該単量体の測定は、下記条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:日立製作所社製 L−7000シリーズ
検出器:日立製作所社製 UV検出器 L−7400
カラム:昭和電工社製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min。
【0130】
<陰イオン濃度分析(イオンクロマト分析)>
陰イオン濃度分析は、下記条件にてイオンクロマト分析を行った。
装置 :Metrohm社製 762 Interface
検出器 :Metrohm社製 732 IC Detecter
イオン分析方式:サプレッサー法
カラム :Shodex IC SI−90 4E
ガードカラム :Shodex SI−90 G
カラム温度 :40℃
溶離液 :NaHCO
3水(2gを水で2000gに希釈)
流速 :1.0mL/min。
下記実施例で得られた重合体水溶液を分析したところ、過硫酸ナトリウム由来の硫酸イオンと次亜リン酸ナトリウム由来の次亜リン酸イオンとが検出された。
【0131】
<スラリーの固形分濃度の測定>
空気雰囲気下、150℃に加熱したオーブンで無機粒子スラリーを0.5時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)を算出した。
【0132】
<評価例>
市販の丸尾カルシウム社製、重質炭酸カルシウム粉体200質量部を500mlSUS製容器に投入し、保温材を巻いたガラス製四つ口セパラブルフラスコの蓋上部の一番広い口に撹拌シールを取り付けたものに3段ピンを装着したSUS製攪拌翼を装着、残りの口はシリコーンゴム栓で蓋をして、SUS製容器とガラス製蓋上部を固定用の止め具で2箇所固定する。このSUS製攪拌翼と強力な撹拌モーターを接続し、粉砕途中で緩まないように容器全体を支柱にしっかりと固定した。
続いて、四つ口セパラブルフラスコのシリコーンゴム栓の一つを開けて、ロートを差し込み、撹拌モーターを200〜300rpm程度の低速回転の状態で撹拌しながら、ここから、有効成分値10%に調整した(水で希釈又は濃縮等)ポリマー水溶液8質量部と純水46質量部を混合したものと、2mmセラミックビーズ500質量部を順に少しずつ投入していった。すべて投入後、一気に1000rpmまで回転数を上昇させ、ビーズの状態を確認後、更に1500rpmまで回転数をあげた。粉砕開始40分後に10%ポリマー水溶液を4質量部、更に70分後と90分後に2質量部ずつ投入した。この状態で2μm以下の粒径が90%以上に到達するまで粉砕を継続した。最終的には重質炭酸カルシウムに対し0.80質量%のポリマー添加量となった。粉砕後、内容物をセラミックと分離し、回収した。
粒径は日立製作所社製 レーザー式粒度分布測定装置LA−910にて分析した。
スラリーの粘度をB型粘度計で、回転子No.4、60rpm、5分後の粘度を測定し(直後のスラリー粘度)、比較した。なお、回収したスラリーは、測定直前まで25℃の環境下で保存した。
【0133】
上記サンプルを1週間、25℃で保管したのち、B型粘度計で、回転子No.4、60rpm、5分後の粘度を測定した(1週間後のスラリー粘度)。
【0134】
<実施例1>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、還流冷却装置を有する反応装置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。まずイオン交換水362質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を還流するま
で昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)925質量部を180分間と、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)49質量部を185分間、45質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)を17質量部、20分間と更に続いて70質量部を160分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、45%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。
その後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液600質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和し、続いて、モノエタノールアミン(以下、「MEA」とも称する)175質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和した。以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(1)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(1)という)の固形分値は52.7%、有効成分値は44.7%であった。重合体水溶液(1)のブルックフィールド粘度は850mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5200、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は2.15であった。重合体水溶液(1)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、5900ppmであった。
当該重合処方
と分析結果を表1に、
評価結果を表2に示した。表2において、硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度をイオン濃度合計と記した。
重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕終了1時間後のスラリー粘度は950mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3380mPa・sであった。
【0135】
<実施例2>
重合条件を表1に記載の方法に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(2)を得た。得られた水溶液中(重合体水溶液(2)という)の固形分値は59.0%、有効成分値は45.4%であった。また重合体水溶液(2)のブルックフィールド粘度は990mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5400、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.14であった。当該重合処方
と分析結果を表1に、重合体の
評価結果を表2に示した。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は630mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2090mPa・sであった。
【0136】
<実施例3>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路及び除熱装置)を有する反応装
置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。イオン交換水515質量部、45質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)16質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を82℃まで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)900質量部、45%SHPを67質量部、および15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)67質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AAおよび45%SHPは150分間に亘って、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して155分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。
その後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液583質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和し、続いて、モノエタノールアミン171質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和した。なお、重合体を中和する間、常に反応液を外部循環させながら、除熱装置によって当該反応液を冷却した。
以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(3)を得た。得られた水溶液(3)(重合体水溶液(3)という)の固形分値は52.4%、有効成分値は40.2%であった。重合体水溶液(3)のブルックフィールド粘度は800mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。当該重合処方
と分析結果を表1に、重合体の
評価結果を表2に示した。
重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1000mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3450mPa・sであった。
【0137】
<実施例4>
重合条件を表1に記載の方法に変更する以外は、実施例3と同様にしてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(4)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(4)という)の固形分値は56.9%、有効成分値は40.3%であった。重合体水溶液(4)のブルックフィールド粘度は950mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5700、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.18であった。当該重合処方
と分析結果を表1に、得られた重合体
の評価結果を表2に示した。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は890mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2210mPa・sであった。
【0138】
<比較例1>
実施例1と同様に重合条件を表1に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(5)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(5)という)の固形分値は46.6%、有効成分値は44.5%であった。重合体水溶液(5)のブルックフィールド粘度は900mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5900、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.30であった。当該重合処方
と分析結果を表1に、得られた重合体の
評価結果を表2に示した。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1800mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は4700mPa・sであった。
【0139】
<比較例2>
実施例3と同様に重合条件を表1に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(6)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(6)という)の固形分値は43.3%、有効成分値は41.3%であった。重合体水溶液(6)のブルックフィールド粘度は780mPa・s、重量平均分子量は(Mw)5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.20であった。当該重合処方
と分析結果を表1に、得られた重合体の
評価結果を表2に示した。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1400mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3800mPa・sであった。
【0140】
実施例1〜4及び比較例1〜2における、重合処方を表1に、重合体の測定結果と評価結果を表2にまとめた。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
表2に示す結果から、本発明の重合体は従来の重合体と比較して、良好な初期の分散力と、経時的な分散力とを有することが明らかとなった。
【0144】
<実施例5>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路及び除熱装置)を有する反応装置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。まずイオン交換水362質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常圧下、外部ジャケットにより水溶液の温度を還流するまで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)925質量部を180分間と、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)49質量部を185分間、45質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)を17質量部、20分間と更に続いて70質量部を160分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、45%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、水溶液が還流した状態を保持したまま30分間熟成した。このときの水溶液の温度は103℃を示した。
その後、外部冷却循環装置を用いて、水溶液の温度を65℃まで冷却し、水溶液の温度が65〜80℃を維持するようにして、48質量%水酸化ナトリウム水溶液600質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に60分かけて滴下して、重合体を中和し(工程N1)、続いて、モノエタノールアミン(以下、「MEA」とも称する)175質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に30分かけて滴下して、重合体を中和した(工程N2)。工程N1と工程N2に要した時間の合計は90分であった。以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(7)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(7)という)の固形分値は52.7%、有効成分値は44.7%であった。重合体水溶液(7)のブルックフィールド粘度は850mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5200、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。重合体水溶液(7)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、5900ppmであった。
また、重合体水溶液(7)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は60であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは140であった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。表3において、硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度をイオン濃度合計と記した。
重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕終了1時間後のスラリー粘度は950mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3380mPa・sであった。
【0145】
<実施例6>
重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、実施例5と同様にしてポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(8)を得た。得られた水溶液中(重合体水溶液(8)という)の固形分値は59.0%、有効成分値は44.7%であった。また重合体水溶液(8)のブルックフィールド粘度は990mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5400、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.14であった。重合体水溶液(8)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6100ppmであった。また、重合体水溶液(8)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は70であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは150であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は630mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2090mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0146】
<実施例7>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路及び除熱装置)を有する反応装置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。イオン交換水515質量部、45質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)16質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を82℃まで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)900質量部、45%SHPを67質量部、および15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)67質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AAおよび45%SHPは150分間に亘って、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して155分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、水溶液の還流を保持した状態で30分間熟成した。
その後、外部循環冷却装置を用いて、水溶液の温度を65℃まで冷却し、水溶液の温度が65〜80℃を維持するようにして、48質量%水酸化ナトリウム水溶液583質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に60分かけて滴下して、重合体を中和し(工程N1)、続いて、モノエタノールアミン171質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に30分かけて滴下して、重合体を中和した(工程N2)。工程N1と工程N2に要した時間の合計は90分であった。
以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(9)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(9)という)の固形分値は52.4%、有効成分値は40.2%であった。重合体水溶液(9)のブルックフィールド粘度は800mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。重合体水溶液(9)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6400ppmであった。また重合体水溶液(9)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は60であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは140であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1000mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3450mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0147】
<実施例8>
重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、実施例7と同様にしてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(10)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(10)という)の固形分値は56.9%、有効成分値は40.3%であった。重合体水溶液(10)のブルックフィールド粘度は950mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5700、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.18であった。重合体水溶液(10)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6500ppmであった。また重合体水溶液(10)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は75であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは150であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は890mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2210mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0148】
<実施例9>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路及び除熱装置)、溶媒留去装置を有する反応装置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。イオン交換水350質量部、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」とも称する)200質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常圧下、外部ジャケットにより混合溶液が還流するまで昇温させた(混合溶媒の温度は80℃であった)。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)900質量部、45%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)83質量部、および15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)67質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AAおよび45%SHPは150分間に亘って、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して155分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。15%NaPSを滴下終了後、混合溶液の還流を保持した状態で30分間熟成を行った。
熟成終了後、重合釜内のIPAが無くなるまでIPAと水の混合物を80〜103℃の温度で120分かけて留去(工程D)した後、イオン交換水220質量部を重合釜内に投入して水溶液の温度が70℃になるようにした。外部循環冷却装置を用いて、水溶液の温度が70〜85℃を維持するようにして、48質量%水酸化ナトリウム水溶液583質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に60分かけて滴下して、重合体を部分中和(工程N1)した後、続いて、モノエタノールアミン171質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に30分かけて滴下して、重合体を中和(工程N2)した。工程N1と工程N2に要した時間の合計は90分であった。以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(11)を得た。
得られた水溶液(重合体水溶液(11)という)の固形分値は52.5%、有効成分値は40.3%であった。重合体水溶液(11)のブルックフィールド粘度は600mPa・s、重量平均分子量(Mw)は4500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。また、重合体水溶液(11)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6500ppmであった。また、重合体水溶液(11)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は70であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは150であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は900mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3400mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0149】
<実施例10>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路及び除熱装置)、溶媒留去装置を有する反応装置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。イオン交換水350質量部、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」とも称する)200質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常圧下、外部ジャケットにより混合溶液が還流するまで昇温させた(混合溶媒の温度は80℃であった)。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)900質量部、45%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)83質量部、および15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)67質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AAおよび45%SHPは150分間に亘って、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して155分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。15%NaPSを滴下終了後、混合溶液の還流を保持した状態で30分間熟成を行った。
熟成終了後、外部循環冷却装置を用いて、混合溶液の温度が65℃になるまで冷却し、混合溶液の温度が65〜80℃を維持するようにして、48質量%水酸化ナトリウム水溶液583質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に60分かけて滴下して、重合体を部分中和(工程N1)した後、続いて、モノエタノールアミン171質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に30分かけて滴下して、重合体を中和(工程N2)した。工程N1と工程N2に要した時間の合計は90分であった。
次に、重合釜内のIPAが無くなるまでIPAと水の混合物を80〜103℃で120分かけて留去(工程D)した後、イオン交換水220質量部を重合釜内に投入して、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(12)を得た。
得られた水溶液(重合体水溶液(12)という)の固形分値は52.6%、有効成分値は40.4%であった。重合体水溶液(12)のブルックフィールド粘度は620mPa・s、重量平均分子量(Mw)は4600、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。また、重合体水溶液(12)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6400ppmであった。また、重合体水溶液(12)の、有姿での色相(APHA)は90であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは160であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は920mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3450mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0150】
<比較例3>
実施例5と同様に重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(13)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(13)という)の固形分値は46.6%、有効成分値は44.5%であった。重合体水溶液(13)のブルックフィールド粘度は900mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5900、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.30であった。また、重合体水溶液(13)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、5800ppmであった。また、重合体水溶液(13)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は60であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは130であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1800mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は4700mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0151】
<比較例4>
実施例7と同様に重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(14)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(14)という)の固形分値は43.3%、有効成分値は41.3%であった。重合体水溶液(14)のブルックフィールド粘度は680mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.20であった。また、重合体水溶液(14)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6200ppmであった。また、重合体水溶液(14)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は70であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは140であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1700mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は4800mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0152】
<比較例5>
実施例9と同様に重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(15)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(15)という)の固形分値は43.1%、有効成分値は41.1%であった。重合体水溶液(15)のブルックフィールド粘度は650mPa・s、重量平均分子量(Mw)は4500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.20であった。また、重合体水溶液(15)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、6400ppmであった。また、重合体水溶液(15)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は75であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは160であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1400mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は4200mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0153】
<比較例6>
実施例5と同様に重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(16)を得た。なお、重合液の熟成時及び中和時(工程N1及び工程N2)には、水溶液が還流した状態を保持し、このときの水溶液の温度は103℃であった。得られた水溶液(重合体水溶液(16)という)の固形分値は53.2%、有効成分値は44.9%であった。重合体水溶液(16)のブルックフィールド粘度は900mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.17であった。また、重合体水溶液(16)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、5500ppmであった。また、重合体水溶液(16)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は80であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは250であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1000mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3500mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0154】
<比較例7>
実施例6と同様に重合条件を表3に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(17)を得た。なお、重合液の熟成時及び中和時(工程N1及び工程N2)には、水溶液が還流した状態を保持し、このときの水溶液の温度は103℃であった。得られた水溶液(重合体水溶液(17)という)の固形分値は59.2%、有効成分値は44.9%であった。重合体水溶液(17)のブルックフィールド粘度は1100mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.19であった。また、重合体水溶液(17)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、5600ppmであった。また、重合体水溶液(17)の、製造直後の有姿での色相(APHA)は80であり、室温(25℃)で1ヶ月経過後のAPHAは300であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は800mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2700mPa・sであった。当該重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4に示した。
【0155】
実施例5〜10及び比較例3〜7における、重合処方及び重合体の分析結果を表3に、評価結果を表4にまとめた。表4には、評価結果に加え、「ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液に含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比」をまとめた。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
表4に示す結果から、本発明の重合体は従来の重合体と比較して、良好な初期の分散力と、経時的な分散力とを有し、更に、(i)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液をアルカリ金属塩で中和する工程と、(ii)酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を有機アミンで中和する工程と、を必須として製造されることによって、経時的に良好な色調をも有するものとなることが明らかとなった。
【0159】
<実施例11>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、還流冷却装置を有する反応装置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。まずイオン交換水362質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を還流するまで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)925質量部を180分間と、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)49質量部を185分間、45質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)を17質量部、20分間と更に続いて70質量部を160分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、45%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。
その後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液600質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和し、続いて、モノエタノールアミン(以下、「MEA」とも称する)175質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和した。以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(18)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(18)という)の固形分値は52.7%、有効成分値は44.7%であった。重合体水溶液(18)のブルックフィールド粘度は850mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5200、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。重合体水溶液(18)中の硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度(主として硫酸イオンと次亜リン酸イオンが検出された)の合計は、5900ppmであった。
評価例に従い、重合体水溶液(18)を使用して本発明の無機粒子スラリー(重質炭酸カルシウムスラリー(18))を得た。重質炭酸カルシウムスラリー(18)の2μm以下の無機粒子の割合は90.1質量%、固形分濃度は77.6質量%であった。
重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕終了1時間後のスラリー粘度は950mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3380mPa・sであった。
重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6に示した。
【0160】
<実施例12>
重合条件を表5に記載の方法に変更する以外は、実施例11と同様にしてポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(19)を得た。得られた水溶液中(重合体水溶液(19)という)の固形分値は59.0%、有効成分値は45.4%であった。また重合体水溶液(19)のブルックフィールド粘度は990mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5400、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.14であった。
評価例に従い、重合体水溶液(19)を使用して本発明の無機粒子スラリー(重質炭酸カルシウムスラリー(19))を得た。重質炭酸カルシウムスラリー(19)の2μm以下の無機粒子の割合は90.2質量%、固形分濃度は77.4質量%であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は630mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2090mPa・sであった。
重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6に示した。
【0161】
<実施例13>
バッチ型重合釜(SUS製、容積5m
3)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路及び、ジャケット、供給経路(重合用組成物用及び中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路および除熱装置)を有する反応装
置を用い、以下に示す重合処方・条件で重合を行った。イオン交換水515質量部、45質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下、「45%SHP」とも称する)16質量部を仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を82℃まで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)900質量部、45%SHPを67質量部、及び15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)67質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AA及び45%SHPは150分間に亘って、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して155分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。
その後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液583質量部(AA中和率70%分)をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和し、続いて、モノエタノールアミン171質量部(AA中和率28%分)を別の供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に滴下して、重合体を中和した。なお、重合体を中和する間、常に反応液を外部循環させながら、除熱装置によって当該反応液を冷却した。
以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム・モノエタノールアミン塩水溶液(20)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(20)という)の固形分値は52.4%、有効成分値は40.2%であった。重合体水溶液(20)のブルックフィールド粘度は800mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.15であった。
評価例に従い、重合体水溶液(20)を使用して本発明の無機粒子スラリー(重質炭酸カルシウムスラリー(20))を得た。重質炭酸カルシウムスラリー(20)の2μm以下の無機粒子の割合は90.3質量%、固形分濃度は77.5質量%であった。
重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1000mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3450mPa・sであった。
重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6に示した。
【0162】
<実施例14>
重合条件を表5に記載の方法に変更する以外は、実施例13と同様にしてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(21)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(21)という)の固形分値は56.9%、有効成分値は40.3%であった。重合体水溶液(21)のブルックフィールド粘度は950mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5700、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.18であった。
評価例に従い、重合体水溶液(21)を使用して本発明の無機粒子スラリー(重質炭酸カルシウムスラリー(21))を得た。重質炭酸カルシウムスラリー(21)の2μm以下の無機粒子の割合は90.5質量%、固形分濃度は77.7質量%であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は890mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は2210mPa・sであった。
当該重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6に示した。
【0163】
<比較例8>
実施例11と同様に重合条件を表5に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(22)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(22)という)の固形分値は46.6%、有効成分値は44.5%であった。重合体水溶液(22)のブルックフィールド粘度は900mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5900、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.30であった。
評価例に従い、重合体水溶液(22)を使用して本発明の無機粒子スラリー(重質炭酸カルシウムスラリー(22))を得た。重質炭酸カルシウムスラリー(22)の2μm以下の無機粒子の割合は90.2質量%、固形分濃度は77.3質量%であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1800mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は4700mPa・sであった。
当該重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6に示した。
【0164】
<比較例9>
実施例13と同様に重合条件を表5に記載の方法に変更する以外は、同様の方法でポリアクリル酸ナトリウム水溶液(23)を得た。得られた水溶液(重合体水溶液(23)という)の固形分値は43.3%、有効成分値は41.3%であった。重合体水溶液(23)のブルックフィールド粘度は780mPa・s、重量平均分子量(Mw)は5500、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.20であった。
評価例に従い、重合体水溶液(23)を使用して本発明の無機粒子スラリー(重質炭酸カルシウムスラリー(23))を得た。重質炭酸カルシウムスラリー(23)の2μm以下の無機粒子の割合は90.1質量%、固形分濃度は77.6質量%であった。
実施例1と同様に、重質炭酸カルシウムのスラリー粘度を上述の方法で評価したところ、粉砕直後のスラリー粘度は1400mPa・sで、1週間後のスラリー粘度は3800mPa・sであった。
当該重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6に示した。
【0165】
実施例11〜14及び比較例8〜9における、重合処方及び重合体の分析結果を表5に、評価結果を表6にまとめた。
表5において「構造のモル比」とは、「ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液に含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比((メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造/有機アミン(塩)に由来する構造)」を表す。表5において、重合体水溶液に含まれる硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度をイオン濃度合計と記した。
また、表6において「構造のモル比」とは、「無機粒子スラリーに含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造と有機アミン(塩)に由来する構造とのモル比((メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造/有機アミン(塩)に由来する構造)」を表す。表6において、無機粒子スラリーに含まれる硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度をイオン濃度合計と記した。
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
表6に示す結果から、本発明の無機粒子スラリーは従来の無機粒子スラリーと比較して、良好な初期の粘性と、経時的な粘度安定性を有することが明らかとなった。