(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873020
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】半導体処理プロセス、特に化学機械研磨プロセスからのスラリーを含有する廃水をリサイクルするためのリサイクル方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20160216BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20160216BHJP
B01D 61/22 20060101ALI20160216BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20160216BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20160216BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20160216BHJP
B24B 57/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H01L21/304 622E
B01D61/14 500
B01D61/22
B01D65/02
H01L21/306 M
B23Q11/00 U
B24B57/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-532455(P2012-532455)
(86)(22)【出願日】2010年10月6日
(65)【公表番号】特表2013-507754(P2013-507754A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】DE2010075106
(87)【国際公開番号】WO2011042017
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年8月15日
(31)【優先権主張番号】102009044204.9
(32)【優先日】2009年10月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512088453
【氏名又は名称】エイチアイジーエイチキュー−ファクトリー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ブルマー
【審査官】
谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−331456(JP,A)
【文献】
特開2008−034827(JP,A)
【文献】
特開2003−309091(JP,A)
【文献】
特表2002−513178(JP,A)
【文献】
特開平10−118899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B01D 61/14
B01D 61/22
B23Q 11/00
B24B 57/00
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理プロセスからのスラリー廃水のためのリサイクル方法であって、以下のプロセスステップ、すなわち、
−新規スラリー含有廃水が循環槽(10)に連続的に供給される一方で前記循環槽(10)から混合廃水が連続的に取り出され、取り出された前記混合廃水は限外ろ過装置(20)を通って送られ、それにより流体取り出しによって濃縮されて濃縮廃水が得られ、前記濃縮廃水は前記循環槽(10)に送られ、前記循環槽(10)の内容物と混合されて前記混合廃水が得られるろ過ステップと、
−前記循環槽(10)への前記新規廃水の前記供給が減らされるかまたは遮断される一方で前記循環槽(10)から混合廃水が連続的に取り出され、取り出された前記混合廃水は前記限外ろ過装置(20)を通って送られ、それにより流体取り出しによって濃縮されて濃縮廃水が得られ、前記濃縮廃水中の固体濃度を前記混合廃水と比べて増加させ、前記濃縮廃水はリサイクルスラリーが得られるまで前記循環槽(10)に送られる、時間的に前記ろ過ステップの後になる濃縮ステップと
を含み、
前記濃縮ステップは、前記循環槽(10)中の固体濃度が予め定められた高濃度しきい値を超えるまで実行され、超えたら、時間的にその後に続く充填ステップにおいて前記混合廃水が前記循環槽(10)からリサイクルスラリーとして取り出され、
前記濃縮ステップの間にだけ凝集抑制剤が加えられる方法。
【請求項2】
前記プロセスが化学機械研磨プロセスであることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項3】
前記循環槽(10)から取り出された前記混合廃水は、膜利用限外ろ過装置に送られ、それにより透過液の取り出しによって濃縮されて濃縮廃水が得られることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項4】
前記濃縮ステップは、前記ろ過ステップの直後に行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項5】
前記濃縮ステップは、前記循環槽(10)の中の固体濃度が予め定められた低濃度しきい値を超えると導入されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項6】
前記濃縮ステップは、前記循環槽(10)から取り出された前記混合廃水への凝集抑制剤の連続添加を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項7】
前記限外ろ過装置を通る間に、前記混合廃水から取り出された液体は、液体槽に導入され、そこから前記半導体加工プロセスに供給されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項8】
前記濃縮ステップが実行される濃縮時間と前記ろ過ステップが実行されるろ過時間との間の比が5%未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項9】
前記濃縮ステップが実行される濃縮時間と前記ろ過ステップが実行されるろ過時間との間の比が3%未満であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項10】
前記濃縮ステップは前記循環槽(10)中の固体濃度が予め定められた高濃度しきい値を超えるまで実行され、超えたら、時間的に後に続く充填ステップにおいて前記混合廃水は前記循環槽(10)から前記リサイクルスラリーとして取り出されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項11】
前記新規スラリー含有廃水、前記混合廃水、前記濃縮廃水、前記限外ろ過装置によって前記混合廃水から取り出された前記液体、および/または前記リサイクルスラリーは、金属を含まないで誘導され、および/または貯蔵されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項12】
前記混合廃水は、前記循環槽(10)の中で不活性気体によって覆われることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項13】
前記限外ろ過装置を通るときに、前記廃水から取り出された液体が、ろ過膜付着物を脱離させるために前記限外ろ過装置を通って逆の方向に送られる、等しい隔たりの時間間隔で導入される逆洗ステップを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項14】
半導体加工プロセスからのスラリー廃水をリサイクルするためのリサイクル装置であって、
−スラリー含有廃水を受け入れるための循環槽(10)、
−前記循環槽(10)と接続された廃水供給ライン(101)、
−限外ろ過供給ライン(201)によって前記循環槽(10)と接続された、前記循環槽(10)から連続的に取り出された混合廃水を流体取り出しによって濃縮するための限外ろ過装置、
−前記濃縮廃水を前記循環槽(10)に送るための廃水戻りライン(105)、および
−請求項1〜13のいずれか1項に記載のリサイクル方法を実行するように構成された制御装置、
を含むリサイクル装置。
【請求項15】
前記半導体加工プロセスが化学機械研磨プロセスであることを特徴とする、請求項14に記載のリサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加工プロセス、特に化学機械研磨プロセスからのスラリー廃水をリサイクルするためのリサイクル方法およびリサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体材料を研磨するための標準的な方法として化学機械研磨法(CMP)が確立された。特に、CMPは、半導体ウエハへの機能層の堆積後に堆積時に生じた凹凸をならすために使用されている。この場合、半導体ウエハと研磨表面との間に研磨用スラリーと呼ばれる化学的および機械的に活性なコロイドが分布する。半導体ウエハ表面は、半導体ウエハと研磨表面との間の相対運動の支援下に化学的に攻撃され、研磨される。
【0003】
そのような研磨プロセスにおいて、最適な研磨性能を実現するために研磨表面に新規スラリーが絶えず供給されなければならない。この研磨プロセスにおいては研磨液(一般に水およびスラリー)に加えて研磨の摩損の結果生じる不純物も含有する廃水が形成される。さらに、一般に、廃水は、研磨プロセスを制御する追加の化学物質を含有する。これらは、プロセスの種類に応じてpH調節剤、酸化剤および/または安定剤を含んでよい。一般に、スラリー廃水は取り出され、処分される。スラリーだけでなく研磨液も取得する費用が高いので、スラリーリサイクルプロセスは大きなコスト削減の可能性を提供する。
【0004】
スラリー廃水からスラリーを回収するための公知の方法において、CMP装置から取り出された廃水は、混合および/またはろ過プロセスによって回収およびリサイクルされる。たとえば、欧州特許出願公開第0,822,033号(A1)にそのような方法が開示されている。この公知の方法においては、廃水はポンプを用いる吸引によって研磨プロセスから取り出され、一種の混合装置に送られる。この混合装置の中には別の処理物質、さらには新規スラリーもラインを通して導入される。混合装置から得られる処理済み混合物は、リサイクルスラリーとして熱交換器、複数のセンサ、さらには最後にフィルタを通って送られ、新規スラリーとして研磨プロセスに供給される。時間的に互いに前後する複数のプロセスステップの後で廃水が研磨プロセスに供給されて戻るこの種の直線的なリサイクル方法は、リサイクル装置の個々の構成部分の非常に高い要求性能が実現されなければならず、これは一般的に満たされることがなく、この方法は不利である。
【0005】
それに対して、米国特許第6,722,958号(B2)は循環方式のスラリーのリサイクル法を開示している。この特許によれば、CMPプロセスからの廃水は槽に入れられ、そこから限外ろ過フィルタを通して送られる。この場合、ろ過して廃水から分けられた水は処分される。ろ過の間に得られたろ過生成物は濃縮スラリーとして槽に送り返される。次に、または同時に精製プロセスが実行される。精製プロセスにおいては濃縮スラリーを希釈および洗浄し、このようにして溶解により不純物、例えば塩および有機物質を抽出するために、精製水が定期的に槽の中に導入される。しかし、この方法は複雑である上に高濃度のリサイクルスラリーを効率的に得る目的を満たさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、たとえばスラリー廃水からのスラリーおよび/またはさらに別の流体、たとえば水のコストおよび時間の効率がよいリサイクルのためのリサイクル方法およびリサイクル装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するリサイクル方法および請求項12の特徴を有するリサイクル装置によって実現される。従属請求項には本発明の有利な発展形が示されている。
【0008】
本発明は、第1に、リサイクルされるスラリー含有廃水を循環中または回路内の流体取り出しによって濃縮する原理にもとづく。この目的のために、廃水は、まず循環槽に送られる。廃水はそこで回路内で生成した濃縮廃水と混合されて混合廃水を形成する。循環プロセスにおいては、循環槽から混合廃水が取り出され、限外ろ過装置を通して送られ、このプロセスにおいて形成された濃縮廃水は循環槽に送り返される。
【0009】
従って、限外ろ過装置は、循環槽から取り出された混合廃水が通って限外ろ過装置に導入される少なくとも1つの入り口と、少なくとも2つの出口とを含む。限外ろ過装置においては導入される混合廃水から液体が取り出され、従って廃水の濃縮が実現される。濃縮廃水は、次に限外ろ過装置の出口の1つを通り、廃水戻りラインを通って循環槽に送られる。混合廃水から取り出された液体は、限外ろ過装置の第2の出口を通って吐出され、次に、好ましくは回収および再利用することができる。
【0010】
リサイクル方法は、この場合、実質的に2つのプロセス局面、すなわちろ過ステップが実行される第1の局面と濃縮ステップが実行される第2の局面とを含む。ろ過ステップにおいては、循環槽と限外ろ過装置との間の回路内で廃水が濃縮される一方、新規スラリー廃水が循環槽に送られ、このスラリー廃水が濃縮廃水と混合される。
【0011】
これに対して、濃縮ステップは、回路内の廃水の濃縮時に循環槽への新規スラリー廃水の供給が減らされるかまたは実質的に遮断される点が異なる。第1の局面と第2の局面との間の切り替えはリサイクル装置の制御装置を用いて進められる。切り替え操作は、たとえば時間によって制御するかまたはトリガー式にしてよい。しかし、切り替え操作は、好ましくは、リサイクル装置中に配置されたセンサを用いて決定される測定値、および理論値とのその比較にもとづいて制御される。
【0012】
表現「新規廃水」は、この場合にこれが既に記載されている廃水を濃縮するために回路の循環槽に送ることによって導入される廃水であることを意味する。従って、この新規廃水は、限外ろ過装置の出口から循環槽に送られる濃縮廃水とは異なる。新規廃水は、半導体プロセス、たとえば化学機械研磨プロセス(CMPプロセス)において生成するスラリー含有廃水であり、侵食された材料およびその他の化学物質によって汚染されたスラリーを含む。
【0013】
新規廃水は、たとえば、まず予備貯蔵タンクに貯蔵され、そこから1つ以上の予備ろ過段階を経て循環槽に送られる予備ろ過された廃水であってもよい。好ましくは、予備ろ過は、たとえばCMPプロセスにおけるパッド摩耗による微粒子汚染物質が循環槽に入り込まないように2段階方式で、かつ非常に小さな保持率で進行する。この手段によって、限外ろ過装置の急速な目詰まりが予防される。これは、特に中空糸膜を有する膜利用限外ろ過装置において非常に重要である。
【0014】
限外ろ過装置は、その中に導入され、それを通って流れる混合廃水から液体を分離するのに適しているろ過装置である。一般に、この液体は水であるが、半導体加工プロセスにおいておそらく用いられる他の液体または液体混合物も混合廃水から取り出すことができる。限外ろ過装置においては、混合廃水から取り出される液体の中にある粒子が最大約0.01μmから約0.1μmの粒子サイズを有することが確実である。これは、たとえば、取り出される液体が0.1μmを超える大きさのオーダーの粒子を有し得る精密ろ過と対照的である。言い換えると、この場合、表現「限外ろ過装置」における表現「限外」は、ろ過装置によって液体とともに混合水から分離される粒子サイズの特徴を表すために用いられている。
【0015】
限外ろ過装置を通ると、混合廃水は濃縮されて濃縮廃水が得られる。これは、濃縮廃水中のスラリーが限外ろ過装置に導入された混合廃水中より高い体積濃度で存在することを意味する。濃縮は限外ろ過装置中の流体取り出しによって進行し、濃縮廃水中の固体濃度を混合廃水と比べて増加させる。
【0016】
好ましい実施態様においては、循環槽から取り出された混合廃水は膜利用限外ろ過装置を通って送られ、それにより透過液の取り出しによって濃縮されて濃縮廃水が得られるものとされる。特に、この場合、これは接線流または交差流ろ過とも呼ばれるクロスフローろ過装置であってよい。限外ろ過装置の膜は、好ましくはポリマー、たとえばポリアクリロニトリルで作られている。
【0017】
有利な発展形においては、濃縮ステップはろ過ステップの直後に実行されるものとされる。これは、濃縮ステップとろ過ステップとの間の時間にさらに別のプロセスステップが実行されることがないことを意味する。ろ過ステップにおける混合廃水は循環槽から取り出され、次に、限外ろ過装置を通って送られ、循環槽に返されるが、制御装置によって制御される循環槽への新規廃水の供給は、濃縮ステップを開始するために減らされるか、または好ましくは完全に遮断される。
【0018】
好適な実施態様によれば、濃縮ステップは、循環槽中の固体濃度が予め定められた低濃度しきい値を超えると導入されるものとされる。言い換えると、循環槽への新規スラリー廃水の導入は、低濃度しきい値に達したら直ちに止められる。低濃度しきい値は、約1%から3%の間の値、好ましくは約2%の値を有する。固体濃度は、循環槽中および/または混合廃水取り出しライン中でたとえば光学式オンライン分析装置を用いて測定される。
【0019】
好ましくは、濃縮ステップは、循環槽から取り出された混合廃水への凝集抑制剤の連続添加を含むものとされる。用いられる凝集抑制剤は、好ましくは苛性アルカリ液である。苛性アルカリ液は、コロイドスラリーを安定化して等電点(IEP)と呼ばれるものからの隔たりをできるだけ高く保つために働く。好ましくは、元のスラリー中、すなわち半導体プロセスにおけるスラリーの使用時にも存在した苛性アルカリ液が用いられる。有効な凝集抑制剤の例は、アンモニア(NH
3)である。
【0020】
ここで、アルカリ液のためのコストを減らし、さらに透過液の汚染を回避するためにできるだけ少ないアルカリ液が透過液中に送られるべきであることに注意しなければならない。本リサイクル方法において、これは、非常に短い時間の間、すなわち、循環槽への新規廃水の供給が停止される濃縮ステップの間にだけ加えられる凝集抑制剤によって実現される。凝集抑制剤の流入のために用いられるラインはプラスチックで形成されてよく、好ましくはペルフルオロアルコキシアルカンを含んでよい。
【0021】
好適な実施態様においては、限外ろ過装置を通る間に、混合廃水から取り出された液体は、液体槽に導入され、そこから半導体加工プロセスに供給されるものとされる。液体槽への導入の前、および/または半導体加工プロセスに送られる前に、液体はさらに別の処理、たとえばさらに別のろ過または精製ステップに付されてよい。膜利用限外ろ過装置が用いられるなら、取り出された液体は透過液と呼ばれてよく、従って貯蔵装置は透過液槽と呼ばれてよい。
【0022】
有利な実施態様において、濃縮ステップが実行される濃縮時間とろ過ステップが実行されるろ過時間との間の比は約5%未満、好ましくは約3%未満であるものとされる。言い換えると、リサイクル装置は、時間で見ると全プロセス持続時間の約97%をろ過ステップが実行されるろ過局面において過ごし、濃縮ステップが実行される濃縮局面においては全プロセス時間の約3%しか過ごさない。
【0023】
好ましい発展形によれば、濃縮ステップは、循環槽中の固体濃度が予め定められた高濃度しきい値を超えるまで実行され、超えたら、時間的にその後に続く充填ステップにおいて混合廃水が循環槽からリサイクルスラリーとして取り出されるものとされる。この場合における充填ステップは、たとえば比較的大きな粒子、たとえば約1μmの粒子サイズを超える粒子をリサイクルスラリーから分離するために、さらに別のろ過ステップおよび/または処理ステップを含んでよい。
【0024】
廃水、混合廃水、濃縮廃水、限外ろ過装置によって混合廃水から取り出された液体および/またはリサイクルスラリーが実質的に金属を含まないで誘導され、および/または貯蔵されるものとするとより有利である。言い換えると、そのために用いられるラインおよび槽は、好ましくは完全にプラスチックで形成されている金属を含まない内部表面を有する。好ましくは、これは、本リサイクル装置中に用いられているライン、槽および/またはポンプのすべてにあてはまる。さまざまな廃水および液体の金属を含まない誘導および/または貯蔵には、金属不純物が廃水中に送られない利点がある。「実質的に」金属を含まない誘導または貯蔵に限定することは、それぞれの構成部分またはそれらの全体の中のそれぞれの構成部分の内部表面に金属物質は製造による必然分しかなく、かつ痕跡量しかないことを意味する。
【0025】
好ましい実施態様によれば、混合廃水は、循環槽中において不活性気体で覆われるものとされる。言い換えると、不活性気体が循環槽中の混合廃水充填レベルより上に、不活性気体層がそこに形成されるように導入される。あるいは、不活性気体を循環槽の充填レベルより上に入れてもよい。不活性気体は、好ましくは加湿される。不活性気体で覆うと、特に湿った不活性気体で覆うと、循環槽の内壁における混合廃水の乾燥または外皮形成が妨げられる利点がある。従って、好ましくは、リサイクル装置のすべての他の槽およびタンクに湿った不活性気体を入れる。不活性気体の流入のために用いられるラインは、プラスチックで形成されてよく、好ましくはペルフルオロアルコキシアルカンを含んでよい。不活性気体は、たとえば窒素(N
2)であってよい。
【0026】
リサイクル装置中のさまざまな回路をできるだけ緊密かつ漏れのないものとするために、好ましくは、液体および/または気体を輸送するために本発明において用いられるポンプの一部または全部からベアリングおよびシールをなくすべきである。これは、新規廃水、廃水、混合廃水および/または濃縮廃水を輸送するためのポンプだけでなく凝集抑制剤およびさらには不活性気体を輸送するために用いられるポンプにもあてはまる。
【0027】
好ましくは、定期的に導入される逆洗ステップが提供される。逆洗ステップにおいては、限外ろ過装置を通るときに、廃水から取り出された液体が、ろ過膜付着物を脱離させるために限外ろ過装置を通って逆方向に送られる。そのようなろ過膜付着物は、フィルタケーキと呼ばれるものと同じようにろ過装置の有効機能を低下させることがある。逆洗ステップは、一定の、等しい隔たりの時間間隔で実行されてよい。あるいは、またはさらに、逆洗ステップは、膜のファウリングの度合いを示す測定値、たとえば流れ抵抗値をトリガーとしてもよい。
【0028】
本方法のコスト効果を高めるには、有効な逆洗を確実にするように注意しなければならない。特に、逆洗は、廃水から取り出された液体に加えて、または代りに気体を用いると有利である。好ましくは、不活性気体、たとえば窒素、または不活性気体と液体との混合物が逆洗のために用いられる。好ましくは、液体、気体または混合物は中空糸を通って強制的に送られてろ過膜に形成されたフィルタケーキをそぎ落とす。逆洗の結果得られる逆洗廃水は、好ましくは、回路に送り返されない。
【0029】
以下に実施例にもとづき、図を参照して本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】スラリー廃水用のリサイクル装置の図を示す。
【
図2】
図1にもとづくろ過ステップの実体化を示す。
【
図3】
図1にもとづく逆洗ステップの実体化を示す。
【
図4】
図1にもとづく濃縮ステップの実体化を示す。
【
図5】
図1にもとづく充填ステップの実体化を示す。
【
図6】リサイクル装置の下流に接続されたスラリー分配構成の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、スラリー廃水用リサイクル装置の図式的な構成を有する図を示している。リサイクル装置の中央の構成部分が循環槽10および限外ろ過装置20を形成する。循環槽10および限外ろ過装置20は、混合廃水取り出しライン105、限外ろ過供給ライン201および廃水戻りライン103とともに、既に循環槽10に送られた廃水を濃縮するための回路を形成する。循環槽10は、この事例においては約500リットルの容量を有する。
【0032】
限外ろ過装置20を通ると混合廃水から液体が取り出され、この液体は液体槽30、流体取り出しライン203および逆洗ライン205を含む流体回路内にある。ただし、逆洗ラインはときどきしか用いられない。本実施態様における限外ろ過装置20は、膜207、好ましくはたとえば安価かつ耐久性のあるポリアクリロニトリルで作られている高分子膜を有する膜フィルタである。混合廃水から取り出された液体は、従って、透過液である。従って、液体槽30は、以後透過液タンク30とも呼ばれる。本実施例における透過液タンク30は、約200リットルの容量を有する。
【0033】
さらに、
図1において、スラリー含有廃水が予備フィルタ42を通り、廃水供給ライン101に沿って循環槽10に送られる前に貯蔵される貯蔵タンク40が示されている。
【0034】
N
2供給603を通り、N
2加湿装置60を用いて加湿された窒素がリサイクル装置に供給され、N
2ライン501を通って貯蔵タンク40、循環槽10、およびNH
3槽50、503に供給される。貯蔵タンク40および循環槽10において、そのような湿ったN
2で覆うことによってタンク壁または槽壁における乾燥スラリーの外皮形成が妨げられる。このようにしないと、乾燥スラリー粒子がリサイクルスラリー中に送り返され、後で半導体加工プロセスにおいて加工される半導体基板のはなはだしい引っかき傷の原因となるリスクがある。一度乾燥してしまったスラリーを再び安定させることはできない。
【0035】
本明細書において参照されるリサイクル装置の構成部分、およびさらに別の構成部分が、リサイクル方法の個々のステップを参照して以下により詳細に説明される。関連する
図2から
図5において、リサイクル装置の最も重要な活動ライン、すなわち流れが送られているラインは、太線を用いて表され、従って残余のラインに対して強調されている。さらに、
図2から5は、
図1と同じリサイクル装置の特徴を示している。
【0036】
図2は、
図1にもとづくろ過ステップの実体化を例示している。新規廃水のポンプ73を用いて、貯蔵タンク40の1つに貯蔵されている新規廃水が廃水供給ライン101を通って循環槽10に導入される。新規廃水の供給が連続的に進行する一方、循環ポンプ70によって混合廃水が混合廃水取り出しライン105を通って循環槽10から圧送され、限外ろ過供給ライン201を通って限外ろ過装置20まで送られる。限外ろ過装置20から出る濃縮廃水は、廃水戻りライン103を通って循環槽10に送り返される。
【0037】
限外ろ過装置20を通る間に廃水から液体または透過液が取り出され、流体取り出しライン203を通って透過液タンク30に送られる。次に、透過液は、ポンプ71を用いて透過液タンク30から液体容器出口301を通って取り出され、液体使用ライン303を通って使用者に利用可能となる。たとえば、透過液は、半導体加工装置に戻すことができる。この目的のために、まず透過液をさらに別の処理ステップに付すことが必要なことがある。しかし、好ましくは、透過液は液体使用ライン303から取り出され、それ以上の処理なしで、特にそれ以上のろ過なしで、新規廃水が元々発生した半導体加工プロセス、たとえばCMPプロセスに供給される。
【0038】
限外ろ過装置20中のろ過の働きは、透過液に対して透過性である膜207の機能によって得られる。フィルタ付着物からの膜207上のフィルタケーキ形成を回避するために、膜207は定期的な時間間隔で清浄化しなければならない。
図3は、膜207を清浄化するための、
図1にもとづくそのような逆洗ステップの実体化を例示している。この目的のために、透過液ポンプ71を用いて液体槽出口301を通って透過液タンク30から取り出された透過液は、逆洗ライン205を通り、膜207を通って逆方向に送られて膜207に蓄積したあらゆる付着物を剥がし、洗い流す。付着物で汚染されている透過液は、限外ろ過供給ライン201を通って循環槽10に誘導される。
【0039】
図4は、
図1にもとづく濃縮ステップの実体化を例示する。さらに、濃縮ステップの間にも、
図2との関連において本明細書において既に記載された循環槽10と限外ろ過装置20との間の廃水の回路が実質的に維持される。従って、さらに、循環槽10から混合廃水取り出しライン105を通って混合廃水が取り出され、限外ろ過供給ライン201を通って限外ろ過装置20まで送られる。そこから、廃水戻りライン103を通って濃縮廃水が循環槽10に送られる。限外ろ過装置20中で混合廃水から取り出された透過液は、流体取り出しライン203を通って透過液タンク30に送られ、そこから液体槽出口301および液体使用ライン303を通ってさらなる使用のために提供される。
【0040】
しかし、ろ過ステップと異なり、新規廃水は循環槽10に送られない。従って、本リサイクル方法のこの局面において、新規廃水のポンプ73は停止状態のままである。しかし、代ってNH
3槽50からのアンモニア(NH
3)がNH
3ライン601の1つを通って混合廃水取り出しライン105中で混合廃水に加えられる。NH
3槽50が空になるとNH
3貯蔵容器503がNH
3の供給を確保する。アンモニアは凝集抑制剤として働き、混合廃水中の固体の凝集を防ぐ。濃縮ステップにおける混合廃水中の固体濃度は新規スラリー廃水がないために急速に増加する。
【0041】
図5は、同様に
図2にもとづく充填ステップの実体化を例示している。このステップは、濃縮ステップによって循環槽10の中の混合廃水の固体濃度が予め定められた高濃縮しきい値を超えるように濃縮された後に開始される。リサイクル装置は、流れセンサ、温度センサ、濃度センサ、湿度センサ、および類似物を含んでよい複数の計測器72によって監視される。固体濃度は、濃度測定装置にもとづいて決定され、制御装置(図には示されていない)中で高濃縮しきい値と比較される。
【0042】
図6において、スラリー分配構成の概略が示されている。この構成は、
図5に示されている充填ステップにおいて分配ライン107を通って循環槽10から取り出されたリサイクルスラリーを、そのために提供されているリサイクルスラリー槽82に分配するために働く。任意選択として、リサイクルスラリーは、たとえば1つ以上のろ過段階によるろ過などの後処理にあらかじめ付される。本事例においては、
図6に示されている分配構成は、少なくとも2μmの粒子サイズを有する粒子を除去するための第1のろ過段階のフィルタ83を含み、少なくとも0.5μmの粒子サイズを有する粒子を除去するための第2のろ過段階のフィルタ84も含む。
【0043】
リサイクルスラリーは、バルブ74を用いてフィルタ83、84を通って送られた後にリサイクルスラリー容器82に入れられる。濃縮液ポンプ85とバルブ74との対応する作動の場合には、出口87を通してリサイクルスラリーを濃縮液廃水処理に送る可能性もある。さらに、バルブ74を適切に作動させることによって、分配されたスラリー中の粒子の粒子サイズをさらに制御することができ、任意選択として、それらの粒子密度および組成も同様である。これらのパラメータは、オンライン分析装置89によって制御および監視される。
【0044】
さらに、
図6に示されているスラリー分配構成は、新規スラリー槽81および脱イオン水用の入り口86を含む。新規スラリーおよび/または脱イオン水を用いて、さらに任意選択として別の化学物質も用いて、リサイクルスラリーをさらなる使用のために最適に調整することができる。最後に、リサイクルスラリー槽82は、それぞれが好ましくは湿った窒素を槽82に入れるために窒素供給ライン88を有する。
【符号の説明】
【0045】
10 循環槽
101 廃水供給ライン
103 廃水戻りライン
105 混合廃水取り出しライン
107 分配ライン
20 限外ろ過装置
201 限外ろ過供給ライン
203 流体取り出しライン
205 逆洗ライン
207 膜
30 液体槽(透過液タンク)
301 液体槽出口
303 液体使用ライン
40 貯蔵タンク
42 予備フィルタ
50 NH
3槽
501 NH
3ライン
503 NH
3貯蔵槽
60 N
2加湿機
601 N
2ライン
603 N
2供給
70 循環ポンプ
71 透過液ポンプ
72 計測器
73 新規廃水ポンプ
74 バルブ
81 新規スラリー槽
82 リサイクルスラリー槽
83 第1ろ過段階のフィルタ
84 第2ろ過段階のフィルタ
85 濃縮液ポンプ
86 脱イオン水用入り口
87 濃縮液廃水処理用出口
88 窒素供給ライン
89 オンライン分析装置