特許第5873062号(P5873062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873062接触装置および接触方法ならびにそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873062
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】接触装置および接触方法ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/06 20060101AFI20160216BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20160216BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20160216BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20160216BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20160216BHJP
   C10G 31/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B01F5/06
   B01F3/04 Z
   B01D53/047
   B01D19/00 F
   B01J19/00 321
   C10G31/00
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-217214(P2013-217214)
(22)【出願日】2013年10月18日
(62)【分割の表示】特願2007-543593(P2007-543593)の分割
【原出願日】2005年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-57957(P2014-57957A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2013年11月15日
(31)【優先権主張番号】11/001,701
(32)【優先日】2004年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/632,433
(32)【優先日】2004年11月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507175186
【氏名又は名称】ファイア テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケーニグ、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】リマイエ、サントーシュ
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−096144(JP,A)
【文献】 特開2001−170476(JP,A)
【文献】 特開2004−306031(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/007056(WO,A1)
【文献】 特開2003−077502(JP,A)
【文献】 特開平11−000543(JP,A)
【文献】 特開平05−023553(JP,A)
【文献】 米国特許第05522917(US,A)
【文献】 特開2004−298740(JP,A)
【文献】 特開2002−153741(JP,A)
【文献】 特開平03−232512(JP,A)
【文献】 米国特許第06315815(US,B1)
【文献】 米国特許第06053249(US,A)
【文献】 特表2005−508737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/00
B01D 19/00
B01D 53/047
B01F 3/04
B01J 19/00
C10G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体から流体への成分の移動を促進させるための装置であって、
液体と流体を混合させるように構成された多孔質媒質を備えた接触器であって、前記液体はその中に成分を有し、前記接触器が前記液体と前記流体との間の前記成分の移動を促進させるように構成されており、螺旋状羽根体を有さない、前記接触器、
前記移動が前記液体から前記流体への成分移動を伴うとき、前記流体から前記成分を除去するように構成された流体浄化モジュールであって、前記流体の前記成分の少なくとも一部分が触媒的に消費されるように構成された前記流体浄化モジュール、並びに
前記流体浄化モジュールから前記接触器へ前記少なくとも一部の成分が消費された流体を移動するように構成された再循環ライン、
を備えた前記装置。
【請求項2】
前記多孔質媒質は500ミクロン未満の孔径を有する孔を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記孔径が400ミクロンである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記流体と前記液体との混合物を前記多孔質媒質に提供するように構成された予備混合器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記予備混合器が、
前記多孔質媒質の方に向いた進路内に前記液体を通過させるための複数の実質的に軸方向の流路;及び
前記流体を前記進路内に拡散させるための多孔質体:
とを備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記予備混合器が、前記予備混合器の円周周辺に沿った、前記流体を受け取って前記多孔質体に向けるための環状の通路をさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記多孔質媒質が不活性材料からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記液体が燃料であり、前記成分が成分ガスである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記燃料がディーゼル燃料、ケロシン燃料およびジェット燃料のうちの少なくとも1つである、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記成分ガスが酸素である、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記成分が前記混合前の前記液体中に溶解された成分ガスである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記流体が気体である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記流体が非反応性気体である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記非反応性気体が、窒素、アルゴン、ヘリウム、および二酸化炭素のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米国国防総省によってフィレ・テクノロジーズ社(Phyre Technologies,Inc.)に授与された政府契約番号FA8650−04−C−2457の政府支援でなされたものである。合衆国政府は、一括払いライセンス、および本発明において発行されたどんな特許の所有者にも限られた状況のもと適当な条件で他者にライセンスを供与することを求める権利を含む一定の権利を本発明において有する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、それぞれ全体が本明細書に参照援用されている、2004年11月30日出願の米国特許出願第11/001,701号、および2004年11月30日出願の米国仮出願第60/632,433号の優先権を主張するものである。
【0003】
(発明の分野)
本発明は一般に接触装置および接触方法の分野に関する。具体的な実施形態において、本発明は2つ以上の流体を接触させる装置および方法、ならびに、燃料などの液体からの混入物質の除去またはそれらへの補助物質の添加などへのそれらの使用に関する。他の実施形態においては、本発明は一般に触媒反応装置および触媒反応方法の分野に関する。他の具体的な実施形態では、本発明は2つ以上の流体を触媒反応させる装置および方法、ならびに、燃料などの液体からの混入物質の除去またはそれらへの補助物質の添加などへのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
液体からの物質の除去または液体への物質の添加は、多くの用途で有益となり得る。たとえば、液体への気体の添加は炭酸飲料の生産に必要である。液体からの気体の除去は、たとえば、浄化液体を製造するために望ましいことがある。浄化液体は多くの用途で望ましい。特に液体からの混入物質の除去は多くの商工業の用途で必要とされることがある。たとえば、ディーゼル燃料またはジェット燃料などの燃料の場合、燃料中の不純物は、維持費をかさませ性能を劣化させ得る。たとえば、燃料中に酸素が存在すると、この燃料を用いるジェット・エンジンなどの機械の性能を劣化させ得る。さらに、酸素飽和燃料がコーキングを起こし燃料の流れが制限されるとき、燃料によってもたらされる冷却剤機能または放熱機能が阻害され得る。
【0005】
液体への物質の添加または2つ以上の液体の密接な混合は、多くの触媒用途に有益であり得る。たとえば、液体への気体の添加は、酸化反応などの化学変換を促進させるのに望ましい。更に複合エマルジョン調製の場合、非混和性の高い流体の混合は極めて困難となり得る。
【0006】
燃料からの酸素の除去などの液体から混入物質を除去する従来の方法には重大な欠点がある。たとえば、化学的に酸素を結合させるための還元剤使用は、使用されることのある活性金属に関連した混入問題をさらにもたらすことがある。さらに、このような装置の容積と重量の大きいことが、航空機の機内浄化装置への使用を阻害している。したがって、このような欠点をなくしつつ液体を浄化する進んだ装置および方法への要求が存在する。
このような流体間の触媒変換を促進させる従来の方法にも重大な欠点がある。たとえば、還元剤の使用は使用されることのある活性金属に関連した混入問題をさらにもたらすことがある。したがって、どんな欠点もなくしつつ触媒作用および流体の密接な混合を促進させる進んだ装置および方法への要求も存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、液体から成分を効率よく、かつ/または均一に除去できるようにする液体浄化装置および液体浄化法、ならびに液体に成分を効率よく、かつ/または均一に添加できるようにする液体注入装置および液体注入法に関する。これらの成分は、たとえば、液体から除去すべき不要なものの場合もあり、あるいは液体に添加が望ましいまたは添加すべきものの場合もあるが、それぞれ本明細書では「成分」と呼ぶ。この際、開示した実施形態では、液体と流体との混合を促進させる多孔質媒質中を液体と流体とを通過させることによって液体の浄化または液体への注入をもたらす。液体と流体との間の分圧、活性度、逃散度、または成分濃度の差により、これらの液体と流体との混合物中において液体と流体との間の成分の移動が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明による浄化装置の一実施形態の概略を示す図である。
図1B】本発明による浄化装置の他の実施形態の概略を示す図である。
図1C】本発明による浄化装置のさらに他の実施形態の概略を示す図である。
図2】本発明による浄化装置の他の概略を示す図である。
図3図2に示す接触器モジュールの概略を示す図である。
図4】本発明による触媒作用装置の一実施形態の概略を示す図である。
図5図4に示す装置の他の概略を示す図である。
図6図5に示す接触器モジュールの概略を示す図である。
図7A】本発明の一実施形態による混合器本体を示す図である。
図7B図7Aに示す混合器本体の断面を示す図である。
図8】本発明による混合器本体の他の実施形態の断面上面図である。
図9A】本発明による接触器の一実施形態を示す絵画図である。
図9B】本発明による接触器モジュールの一実施形態を示す絵画図である。
図9C】本発明の一実施形態による、例示的な孔形状を有する例示的な接触器の多孔質体の絵画図である。
図10A】従来技術の装置における混合の際に流体中の成分濃度をグラフで示す図である。
図10B】従来技術の装置における混合の際に流体中の成分濃度をグラフで示す図である。
図10C】本発明の一実施形態による接触器を用いて液体と流体とを混合させる様をグラフで示す図である。
図11】本発明による分離器の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態は、液体と流体との間で成分を移動させる方法に関する。この方法は、燃料などの液体および気体などの流体を多孔質媒質中を通過させるものであり、これらの液体および流体のうちの少なくとも1つには酸素ガスなどの成分が含まれる。この多孔質媒質内でこれらの液体と流体との混合物には成分分圧に差がある。この通過により、これらの液体と流体が混合し、成分の少なくとも一部が液体と流体との間を移動する。この方法には、成分の移動後に液体と流体とを分離することも含まれる。
【0010】
本発明の他の実施形態では、液体と流体との間を移動させる装置が含まれる。この装置は、液体と流体との混合、および成分の少なくとも一部の液体・流体間の移動を促進させるように構成された多孔質媒質と、これらの液体と流体を分離するための分離器とを備える。
【0011】
本発明の他の実施形態では、液体と流体との混合を促進させるための多孔質媒質が含まれる。この多孔質媒質には、多孔質体と、孔であって、そこを流れる流体にそこを流れる成分を有する液体を表面混合させるように構成された孔とが含まれる。具体的な一実施形態では、これらの孔は、表面混合を促進させるのに十分な小さな孔径および複雑な形状を有している。
【0012】
本発明の他の実施形態では、液体と流体とを混合させるように構成された混合用本体が含まれる。この混合用本体には、軸方向流路であって、液体をこの軸方向流路にほぼ整列した進路を通過させるための複数の軸方向流路が含まれる。この混合用本体には、流体をこの進路内に拡散させるための多孔質体も含まれる。
【0013】
他の実施形態において、本発明は、1つまたは複数の流体を触媒相互作用させる装置および方法、ならびに液体からの混入物質の除去、または液体への補助物質の添加などへのそれらの使用を提供する。たとえば、混入物質とは液体から除去すべき不要な成分でよく、補助物質とは液体への添加が望ましい成分または液体に添加すべき成分であってよい。
【0014】
本発明の触媒法の一実施形態では、複数の反応物質を触媒転化(変換)してそれらから生成物を生成するための方法が提供される。この方法にはこれらの複数の反応物質を触媒活性な多孔質媒質中を通過させることが含まれ、この通過によってこれらの複数の反応物質が混合し、また、一つまたは複数の反応物質が化学転化(変換)して、それらから一つまたは複数の生成物が生成される。
【0015】
本発明の触媒法の一実施形態では、複数の反応物質を触媒変換してそれらから生成物を生成するための方法が提供される。この方法にはこれらの複数の反応物質を触媒活性な多孔質媒質中を通過させることが含まれ、この通過によってこれらの複数の反応物質が混合し、また、一つまたは複数の反応物質が化学変換して、それらから一つまたは複数の生成物が生成される。
【0016】
本発明の他の実施形態では、複数の反応物質の触媒変換を促進する触媒活性な多孔質媒質が提供される。この多孔質媒質には、触媒活性な多孔質体と、孔であってそこを流れる流体にそこを流れる成分を有する液体を混合させるのに十分に小さな孔径の孔とが含まれている。
【0017】
(好ましい形態の詳細な説明)
本発明の一実施形態において、液体と流体との間で成分を移動させる装置が含まれる。この装置は、液体および流体の少なくとも1つが成分を有する液体と流体とを混合させるように構成された多孔質媒質が含まれる。さらに、この多孔質媒質は、成分の少なくとも一部分を液体から流体へ移動させるように構成されている。また、この装置は液体と流体とを分離する分離器を備えても良い。
【0018】
本明細書で分離に関して、「成分」は、液体中または流体中、あるいはその両方に混合され、吸着され、懸濁され、または溶解されていてよい。
【0019】
「流体」は、液体、気体、または物質を容易に流動させ得る任意の相にある物質でよい。
【0020】
この装置は、一実施形態において流体から成分を除去するように構成された流体浄化モジュールを備える。この流体浄化モジュールは、具体的な実施形態において圧力スイング吸着モジュールを備える。この浄化モジュールは、他の実施形態においては膜を備えてもよい。たとえば、再循環ラインを設けて流体を流体浄化モジュールから多孔質媒質へ移動させてもよい。
【0021】
本明細書では、「浄化」および「浄化すること」とは流体から1つまたは複数の成分を除去することを意味する。
【0022】
また、一実施形態において、この装置は分離器から多孔質媒質へ流体を移動させるように構成された再循環ラインを備えてもよい。
【0023】
また、一実施形態において、この装置は分離器から流体が混合した蒸発液体を分離するように構成された蒸気トラップを備えてもよい。
【0024】
具体的な実施形態では、この多孔質媒質は500ミクロン未満の孔径を有する孔を備える。一実施形態では、この孔径は100〜500ミクロンである。他の実施形態では、この孔径は200〜500ミクロンである。別の実施形態では、この孔径は300〜500ミクロンである。さらなる具体的な実施形態ではこの孔径は、350〜450ミクロンである。さらなる実施形態では、この孔径は約400ミクロンである。
【0025】
一実施形態では、この装置はこれら流体と液体の混合物を多孔質媒質に提供するように構成された予備混合器も備える。具体的な実施形態では、この予備混合器は液体を多孔質媒質に向いた軸方向進路を通過させるための複数の軸方向流路と、流体をこの軸方向進路に拡散させるための多孔質体とを備える。この予備混合器はまた、その円周周辺に沿った、流体を受け取りこの流体を多孔質体に向けるための環状の通路を備えてもよい。
【0026】
この多孔質媒質は、金属、セラミックス、プラスチック、ガラス、あるいは他の有機材料または無機材料などの不活性な固体材料でなってよい。
【0027】
一実施形態では、この分離器は少なくとも1つの遠心分離器を備える。
【0028】
具体的な実施形態では、液体は燃料であり、成分は気体である。この燃料は、たとえば、ディーゼル燃料、ケロシン燃料、またはジェット燃料でよい。気体は酸素でよい。
【0029】
具体的な実施形態では、成分は液体および流体が多孔質媒質を通過する前に液体中に溶解した気体である。
【0030】
一実施形態では流体は気体である。その具体的な実施形態では、この気体は、窒素、希ガス(たとえば、アルゴンまたはヘリウム)、二酸化炭素、またはそれらの混合物などの動作条件下で非反応性の気体であり、成分をほぼ有さない。
【0031】
本発明の別の実施形態は、液体―流体間で成分を移動させる方法を含む。この方法は、少なくとも一方が成分を含有する液体と流体とを多孔質媒質中を通過させるステップを含み、この通過によってこれらの液体と流体とが混合し、これらの液体と流体間を少なくともいくらかの成分が移動する。更に、この方法は、これらの液体と流体とを分離するステップを含んでよく、これらの分離された液体と流体のうち少なくとも一方が少なくともいくらかの成分を含む。
【0032】
具体的な実施形態においては、この方法は、成分が液体から流体に移動していればこの流体からこの成分を除去する工程(ステップ)も含む。成分除去には圧力スイング吸着を含んでもよい。更なる具体的な実施形態においては、この浄化流体を、この流体の多孔質媒質中の通過を継続させる任意の用途のために再循環させてもよい。
【0033】
具体的な実施形態においては、この方法は、液体から流体を分離した後でこの流体と混合している任意の気化液体を回収するステップも含む。
【0034】
一実施形態では、これらの流体と液体を多孔質媒質中を通過させる前に予備混合器中を通過させるステップを含む。具体的な実施形態では、この予備混合器は、液体を通過させて多孔質媒質に向かう軸方向進路に入れるための複数の軸方向流路と流体をこの軸方向進路に拡散させるための多孔質体とを備える。また、この予備混合器は、その円周周辺に沿った、流体を受け取って多孔質体に向けるための環状の通路も備える。
【0035】
一実施形態では、液体と流体とを分離するステップは、これらの液体と流体とを少なくとも1つの遠心分離器を通過させるステップを含む。
【0036】
本発明の別の実施形態では、液体と流体との混合を促進させるための多孔質媒質を含む。この多孔質媒質は、多孔質体とこの多孔質体中に形成された孔とを備える。これらの孔は、この多孔質体中を流れる、成分を有した液体と、流体とを表面混合させるように構成されている。この孔の孔径は表面混合させるのに十分小さく、その形状は表面混合させるのに十分複雑である。
【0037】
本発明の更に別の実施形態では、液体を浄化する方法を含む。この方法は、成分を含有する液体と、流体とを多孔質媒質中を通過させるステップを含み、この通過によって、これらの液体と流体とが混合し、これらの液体と流体間で少なくともいくらかの成分が移動する。また、この方法は、これらの液体と流体とを分離するステップも含み、分離された流体が少なくともいくらかの成分を含み、この成分をこの流体から除去するステップを含む。この成分を除去された流体は、これらの液体と流体の多孔質媒質中の通過を継続させる任意の用途のために再循環される。
【0038】
本発明の別の実施形態では、液体と流体を混合させるように構成された混合用本体が含まれる。この混合用本体は、軸方向の流路であって、液体をこの軸方向流路にほぼ整列した進路を通過させるための複数の軸方向流路と、流体を進路内に拡散させるための多孔質体とを備える。また、具体的な実施形態では、この混合用本体は、この多孔質体の円周周辺に沿った、流体を受け取って多孔質体に向けるための環状の通路も備える。
【0039】
この点に関して、「軸方向流路にほぼ整列した進路」とは、一般的な流れの方向のことを言う。この進路には、円錐形または放射状の構成部品を備えてもよい。たとえば、ある領域では、軸方向への流れに移行または拡散する放射状構成部品のみを備えてもよい。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、複数の反応物質を触媒変換してそれらから1つまたは複数の生成物を生成するための方法が提供される。本発明の方法は、触媒活性な多孔質媒質中をこれらの複数な反応物質を通過させることを含む。この通過により複数の反応物質が混合し、1つまたは複数の反応物質の化学変換が生じ、それによって、それらから1つまたは複数の生成物が生成される。
【0041】
「触媒的」とは、1つまたは複数の反応物質が関与する反応または相互作用を促進させることを言う。触媒材料には、貴金属、遷移金属、金属酸化物、窒化物、炭化物、及び酵素など、ならびにそれらの様々な組合せを含んでよい。本明細書で意図する貴金属には、白金、パラジウム、金、および銀が含まれる。本明細書で意図する遷移金属酸化物には、RuOx、LaMnOx、およびペロブスカイトが含まれる。
【0042】
具体的な実施形態では、複数の反応物質のそれぞれが流体である。
【0043】
「流体」とは、液体、気体、または容易に流動可能な相にある材料であってよい。
【0044】
具体的な実施形態では、これらの複数の反応物質は、任意選択で成分を含有する1つまたは複数の液体、成分を含有して存在する1つまたは複数の気体、およびそれらの任意の2つ以上の組合せからなる群から選択してよい。
【0045】
本明細書で触媒変換に関して用いるとき、「成分」は液体または流体中に混合され、吸着され、懸濁され、または溶解されていてよい。本明細書で意図される成分は、酸素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなどが含まれる。
【0046】
本発明によれば、触媒活性な多孔質媒質中を通過させるステップは反応の多様性を促進させることができる。たとえば、このような通過によって2つの反応性液体間の反応が促進することがあり、あるいは、このような通過によって反応性液体とその成分との間の反応が促進することがあり、あるいは、このような通過によって反応性液体と気体との間の反応が促進することがあり、あるいは、このような通過によって気体とその成分との間の反応が促進することがある。
【0047】
これらの複数の反応物質は触媒活性な多孔質媒質を、1つあるいは複数の反応物質を所望のレベルの変換を実現し、かつ/または、1つあるいは複数の生成物を所望のレベルの生成を実現するように選択された比率で通過させてよい。
【0048】
具体的な実施形態では、少なくとも1つの反応物質が液体であり得る。この液体反応物質は1つまたは複数の炭化水素を含んでよい。
【0049】
具体的な実施形態では、少なくとも1つの反応物質が気体であり得る。例示的な反応ガスには、水素、酸素、二酸化炭素、NOx、およびメタン、ならびにそれらの2つ以上の任意の混合物が含まれる。
【0050】
具体的な実施形態では、少なくとも1つの反応物質が反応性気体を含有する液体であり得る。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、1つまたは複数の反応物質を触媒変換する装置を含むことができる。この装置は、複数の反応物質を混合させるように構成された触媒活性な多孔質媒質を備えることができる。さらに、この触媒活性な多孔質媒質は、1つまたは複数の反応物質を化学変換してそれらから少なくとも1つの生成物を生成するように構成することができる。
【0052】
具体的な実施形態では、複数の反応物質が、それぞれ任意選択で成分を含有する1つまたは複数の液体、それぞれ任意選択で成分を含有する1つまたは複数の気体、およびそれらの任意の2つ以上の組合せからなる群から選択されることができる。
【0053】
具体的な実施形態では、この装置は、更に、化学変換の後で2つ以上の生成物または反応物質を分離する分離器を備えることができる。この装置は、更に、少なくとも1つの生成物または反応物質の混入物質を除去するように構成された浄化モジュールを備えることができる。この装置は、また、少なくとも1つの生成物または反応物質を反応物質としてこの浄化モジュールから多孔質媒質に移動させるように構成された再循環ラインも備えることができる。
【0054】
具体的な実施形態では、この多孔質媒質は孔径が500ミクロン未満を有する孔を備えることができる。一実施形態では、この孔径は100〜500ミクロンでよい。別の実施形態では、この孔径は200〜500ミクロンでよい。別の実施形態では、この孔径は300〜500ミクロンでよい。さらに別の実施形態では、この孔径は350〜450ミクロンでよい。さらに更なる実施形態では、この孔径は約400ミクロンでよい。
【0055】
具体的な実施形態では、この装置は、更に、2つ以上の反応物質の混合物を多孔質媒質に提供するように構成された予備混合器を備える。この予備混合器は、液体である第1の反応物質を多孔質媒質の方に向かう進路内に通過させるほぼ複数の軸方向の流路と、流体である第2の反応物質をこの進路内に拡散させる多孔質体とを備えてよい。この予備混合器は、さらに、予備混合器の円周周辺に沿った、流体を受け取ってこの流体を多孔質体に向けるための環状の通路を備えてよい。
【0056】
本発明の別の実施形態では、複数の反応物質の触媒変換を促進させる触媒活性な多孔質媒質が、触媒活性な多孔質体と、孔であってそこを流れる流体とそこを流れる成分を有する液体とを混合させるのに十分小さな孔径の孔とを備える。
【0057】
図1Aを参照すると、混入物質などの成分を液体と流体との間で移動させるための例示的な装置が、概略的に示されている。示された例では、不要な成分が浄化すべき液体中に含有されている。他の実施形態では、成分が流体中に含有されてもよく、または成分が流体自体であってもよい。図1Aの例では、浄化すべき液体はそれに吸着された気体酸素などの成分を有する燃料である。他の実施例では、様々な成分を有する他の液体を浄化してもよい。
【0058】
装置100aは、以下に更にずっと詳細に説明する脱酸素モジュール110などの浄化モジュールを含んでいる。この脱酸素モジュール110は、液体燃料と窒素ガスを受け取るように構成されている。この液体燃料は、それに吸着された酸素ガスなどの成分を有してもよい。この窒素ガスは、ほぼ酸素の無いものが好ましい。脱酸素モジュール110の操作は、酸素ガスを燃料から窒素に移動させる。したがって、装置100a中の脱酸素モジュール110の出力は、脱酸素化燃料と吸着酸素を有する窒素ガスである。限定された量の燃料蒸気が窒素/酸素ストリームと共に出力されることがある。
【0059】
図1Bを参照すると、浄化システムの第2の実施形態が示されている。装置100b内では、脱酸素モジュール110が燃料タンク130などの貯蔵所から燃料を受け取るように構成されている。脱酸素モジュール110への燃料の流れは、燃料タンク130と脱酸素モジュール110との間に位置する任意選択のポンプ132によって促進してもよい。これらの燃料タンク130、ポンプ132および脱酸素化モジュール110は、たとえば、チューブまたはラインを用いて接続されている。燃料タンク130の寸法およびポンプ132の性能は、具体的な用途および要件に応じて決定してよい。一実施形態では、脱酸素モジュール110は、燃料を毎分2米ガロン(7.57L)の速度で受け取って処理するように構成されている。
【0060】
脱酸素ジュール110もまた、燃料と混合するためにガスなどの流体の供給を受け取り燃料と混合させるように構成されている。ある実施形態では、この流体は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの非反応性のガスである。示した例では、流体は窒素ガスである。窒素は加圧された窒素容器から受け取られてもよい。他の実施形態では、窒素は、ほぼ酸素の無い窒素(たとえば、99.9%N)を供給する、高度に最適化された圧力スイング吸着(PSA)装置120などの流体浄化モジュールから受け取られる。脱酸素モジュール110の中への窒素の流れは、たとえば、流量計122を用いて調整してもよい。一実施形態では、脱酸素化モジュール110は、所望の燃料出力に基づいた速度で窒素と燃料を受け取るように構成されている。たとえば、より浄化された燃料を得るのに大きな流体―燃料比を使用してよく、一方、あまり浄化されていない燃料を得るのにより小さな流体―燃料比を使用してもよい。具体的な実施形態では、流体−燃料比は10:1、4:1、2:1、1:1、1:2、1:4、または1:10でよい。
【0061】
この脱酸素モジュール110は、酸素ガスなどの成分を燃料から窒素ガスに移動させるように構成されている。この脱酸素モジュール110の特徴は、以下の図2、3、7A、7B、および8〜10Cを参照してさらに詳細に説明する。したがって、脱酸素モジュール110の出力は、脱酸素化燃料140のストリームと酸素を有する窒素の別のストリームとを含む。
【0062】
多くの場合、ある量の液体燃料が、脱酸素モジュール110内で、あるいは脱酸素モジュール110に入る前に蒸発することがある。この点に関して、装置100bは、窒素ストリームを処理する燃料蒸気回収モジュール150を備えている。この燃料蒸気回収モジュール150は、窒素ストリームから燃料蒸気を分離して凝縮燃料を生成するように構成された合体フィルタを備える蒸気トラップでよい。次いで、図1に示すように、この凝縮燃料は、脱酸素モジュール110を出る燃料ストリーム140に送られる。他の実施形態では、脱酸素モジュール110からの燃料140の脱酸素化レベルを維持するために、この回復燃料蒸気を、燃料タンク130に送ってもよい。
【0063】
次いで、燃料蒸気回収モジュール150からの酸素を有する窒素ストリームは、窒素から酸素を分離するPSA装置120に向けられる。次いで、酸素を大気中に放出しつつ、この浄化した窒素を、追加の燃料の脱酸素化に用いることができ、装置100bが、実験室または閉鎖領域内での動作用途などの閉鎖環境内で動作する場合、PSA装置120に向ける前に窒素および酸素のストリームをさらに処理してもよい。窒素と酸素のストリームは、PSA装置なしの装置で同様に処理してもよい。たとえば、PSA処理または大気中への放出の前に、この窒素と酸素のストリームを、活性炭フィルタを通して処理して成分を除去してもよい。他の実施形態では、この活性炭フィルタはPSA装置120の上流に位置してよい。したがって、同様に、成分を窒素から除去してもよい。
【0064】
図1Cは浄化装置のさらに別の実施形態を示すが、装置100cにおいて、窒素ストリーム、ならびに酸素および燃料蒸気が触媒層160中に向けられる。この触媒層160は燃料蒸気と酸素分子間の反応を起こし二酸化炭素と水とを生成するように構成されている。すなわち、この触媒層160の出力は、窒素、水、二酸化炭素、および任意の残留燃料蒸気の混合物である。次いでこの混合物は吸着モジュール170に向けられる。この吸着モジュール170は、ストリームから液体あるいは蒸気のどちらかの水を吸着するように構成されている。このストリームからの水は、吸着モジュール170内に留めてもよく、さもなければストリームの外へ向けてもよい。すなわち、酸素は、二酸化炭素を加えつつ、ストリームから効率的に除去される。この二酸化炭素は、燃料からの酸素の移動において、窒素に加えて酸素の無い流体として働き続けることができる。
【0065】
例示的な浄化装置100は、図2にさらに詳しく示される。ある実施形態では、この装置100は、燃料の前処理モジュールと装置100の様々な特徴を制御するための制御モジュールとを備える。燃料の前処理は、フィルタ装置134を介して燃料を処理して固体粒子などのある成分を除去し、このような成分が脱酸素モジュール110の操作に悪影響を及ぼすのを防ぐステップを含んでよい。このようなフィルタ装置は当業者に周知のものである。
【0066】
さらに、燃料温度調節器136を設けて燃料の温度を制御してもよい。この温度は、燃料を脱酸素化するための機械の要件に基づいて調節を必要とすることがある。この燃料温度調節器136は、燃料温度を増大させるためのヒータ、および/または、燃料温度を上昇あるいは低下させるための熱交換器を備えてよい。ある実施形態では、燃料温度を上昇させて成分の除去を促進してもよい。
【0067】
コントロール装置400は、装置100の様々なモジュールを制御するための各制御モジュールを備えている。流量制御モジュール410を、燃料と窒素ガスの流量を制御するために設ける。この点に関して、この流量制御モジュール410は、上記で説明し図1に示した、流量計122およびポンプ132と通信してそれらを制御するように構成してよい。同様に、温度制御モジュール420を、燃料の温度を調節するための燃料温度調節器136と通信してそれを制御するために設ける。最後に、酸素測定モジュール430を、脱酸素モジュール110の動作をモニターするために設けてもよい。この点に関して、センサ(図示せず)を、脱酸素モジュール110の入力側と出力側とに設けてもよい。これらのセンサは、酸素測定モジュール430にデータを通信して達成される脱酸素化のレベルを決定することができる。いくつかの実施形態では、この酸素測定モジュール430は、操作員にこの脱酸素モジュール110の誤動作を示すためのメッセージを伝えるように構成してもよい。
【0068】
図2に示すように、この脱酸素モジュール110は、燃料−ガス接触器200と燃料−ガス分離器300とを備える。これらの構成部品のそれぞれは以下により詳しく説明する。
【0069】
図3に、図2に示された脱酸素モジュール110の燃料−ガス接触器200の実施形態の概略を示す。この実施形態では、この燃料−ガス接触器200は燃料と窒素の入力の流れを混合させるための予備混合器210を備える。この予備混合器210は、これらの2つの流れの均一混合を促進させて燃料の脱酸素化を促進する。予備混合器210の実施形態を、図7A、7Bおよび8を参照して、以下により詳しく説明する。以下に、図9A〜10Cを参照して詳述するように、この予備混合器210による混合物の出力は、燃料と窒素の表面混合を促進させるための接触器220に向けられる。この接触器220の出力は、燃料−ガス接触器200を外して分離器300に向けられる(図2)。
【0070】
図4を参照すると、2つ以上の反応物質間の反応を促進するための例示的な装置が概略的に示されている。示した例では、成分が第1の反応物質に含有されており、第2の反応物質に移動されることになっている。一例では、これらの第1と第2の反応物質はどちらも流体であり得る。別の例では、第1の反応物質は成分を有する液体でよい。さらに別の例では、成分は液体に吸着された酸素ガスなどの気体でよい。
【0071】
この装置100は、以下にさらに詳細に説明する接触反応モジュール110などの反応モジュールを備える。この接触反応モジュール110は、液体のタンク130などの貯蔵所から第1の反応物質を受け取るように構成されている。第1の反応物質から触媒反応モジュール110への流れを、液体タンク130と触媒反応モジュール110との間に位置する任意選択のポンプ132によって促進してもよい。これらの液体タンク130、ポンプ132および接触反応モジュール110は、たとえば、チューブ、パイプあるいはラインを用いて接続される。液体タンク130の寸法およびポンプ132の能力は、特定の用途および要件に応じて決定してよい。一実施形態では、接触反応モジュール110は毎分2米ガロンの割合で第1の反応物質を受け取って処理するように構成してよい。
【0072】
図4の例示的な接触反応モジュール110もまた、気体などの第2の反応物質の供給を受け取って第1の反応物質と混合させるように構成してもよい。ある実施形態では、この第2の反応物質は、窒素、アルゴン、またはヘリウムなどの非反応性のガスであってもよい。他の実施形態では、第2の反応物質は、反応性ガスでよく、加圧ガス容器から受け取ってもよい。他の実施形態では、ほぼ成分の無いガス(たとえば、99.9%ガス)を供給することができる高度に最適化された圧力スイング吸着(PSA)装置120などの浄化モジュールからガスを受け取ってもよい。第2の反応物質の触媒反応モジュール110への流れは、たとえば、流量計122を用いて調節してよい。一実施形態では、接触反応モジュール110は所望の生成物の生成速度に基づいた速度で第1と第2の反応物質を受け取るように構成することができる。
【0073】
接触反応モジュール110は、第1と第2の反応物質の混合を促進するように構成することができる。一実施形態では、この混合は第1の反応物質から第2の反応物質まで酸素ガスなどの成分の移動をもたらす。接触反応モジュール110のこの特徴は、図2、3、7A、7B、および8〜10Cを参照して、以下により詳細に説明する。すなわち、接触反応モジュール110の出力には、触媒変換を介してなくなる第1の反応物質と第2の反応物質の少なくとも1つを含んでよい生成物の1つまたは複数のストリームを含むことができる。示した例では、接触反応モジュール110の出力は、そこから除去された成分を有する第1の反応物質を含む第1のストリームと、第2の反応物質成分を含むことができる第2のストリームとを含むことができる。
【0074】
多くの場合、ある量の液体の第1の反応物質は、接触反応モジュール110中で、または接触反応モジュール110に入る前に蒸発することがある。この点に関して、装置100は、第2のストリームを処理する蒸気回収モジュール150を備えることができる。この蒸気回収モジュール150は、第2のストリームから第1の反応物質蒸気を分離させるように構成された合体フィルタを備える蒸気トラップであってもよい。次いで、図4に示すように、蒸気は接触反応モジュール110を出る第1のストリーム140へ向けることができる。
【0075】
次いで、蒸気回復モジュール150から成分を有する第2の反応物質のストリームを、第2の反応物質から成分を分離するPSA装置120に向けることができる。次いで、成分が除去された第2の反応物質を、第1の反応物質との触媒反応にさらに用いることができる。
【0076】
例示的な装置100を図5にさらに詳細に示す。この装置100は、ある実施形態では、液体の第1の反応物質の前処理および装置100の様々な特徴を制御するための制御モジュールを含む。この第1の反応物質の前処理は、フィルタ装置134を介して第1の反応物質を処理し、固体粒子などのある成分を除去してこのような成分が触媒反応モジュール110の動作に悪影響を及ぼすのを防ぐステップを含んでよい。このようなフィルタ装置は当業者に周知のものである。
【0077】
さらに、温度調節器136を設けて第1の反応物質の温度を制御してもよい。この温度は、装置100の所望の生成物の要件に基づいた調節を必要とすることがある。この温度調節器136は、燃料温度を増大させるためのヒータ、および/または燃料温度を増大あるいは減少させるための熱交換器を備えてよい。ある実施形態では、燃料の温度を増大させて第1と第2の反応物質の混合を促進させてもよい。
【0078】
制御装置400は、装置100の様々なモジュールを制御するための制御モジュールを備えることができる。流量制御モジュール410を設けて第1と第2の反応物質の流量を制御することができる。この点に関して、この流量制御モジュール410を、上記で説明し図4に示した流量計122とポンプ132と通信して制御するように構成することができる。同様に、温度制御モジュール420を設けて、第2の反応物質の温度を調節するための温度調節器136と通信して制御するように構成することができる。最後に、測定モジュール430を設けて触媒反応モジュール110の動作をモニターしてもよい。この点に関して、センサ(図示せず)を触媒反応モジュール110の入力側と出力側に設けてもよい。これらのセンサは、測定モジュール430とデータを通信して生成物の所望の特性を決めることができる。いくつかの実施形態では、この測定モジュール430は接触反応モジュール110の誤作動を示すメッセージを操作員に送信するように構成してよい。
【0079】
図5に示したように、触媒反応モジュール接触器モジュール200と分離器300とを備えることができる。これらの構成部品のそれぞれは、以下に、より詳細に説明する。
【0080】
図6は、図5に示した接触反応モジュール110の接触器モジュール200の実施形態の概要を示したものである。この実施形態では、接触器モジュール200は、第1と第2の反応物質の入力ストリームを混合させるための予備混合器210を備えることができる。この予備混合器210は、2つの入力ストリームの均一混合を促進させて反応物質の密接な混合を促進させることができる。この予備混合器210の実施形態を、図7A、7Bおよび8を参照して以下により詳細に説明する。以下に図9A〜10Cを参照してより詳細に説明するように、予備混合器210による混合体出力は、第1と第2の反応物質の表面混合を促進させるための触媒接触器220に向けられる。この触媒接触器220の出力を、接触器モジュール200から外して分離器300に向けることができる(図5)。
【0081】
予備混合器210の実施形態を図7Aおよび7Bを参照して説明する。この予備混合器210を設けて、以下に説明する接触器処理の直前に液体の流体と窒素ガスとを混合させることができる。燃料とガスの分布ですら、接触器が、より少ない勾配あるいは接触器を横切りまたは通過するチャネリングでより効率的に作動可能にする。さらに、このような分布は、接触器が重力に対する向きの変化によってほとんど影響されずに作動可能にする。
【0082】
図示した予備混合器210の実施形態では、接触器の近くに比較的均一な窒素ガスの排出を配給可能にする多孔質体212を備えることができる。環状の流路214を設けて、例えばPSA装置から窒素ガスを受け取り、かつ1組の非軸方向の流路216を介してこの多孔質体212の断面を横切ってガスを配給することができる。これらの非軸方向の流路216は、軸方向の進路に沿って多孔質体212中に拡散させるための多孔質体212の様々な区域内に環状流路214から気体を導く。
【0083】
軸方向流路218を予備混合器210中に設けることができ、またこれらは、どんな非軸方向のガス流路216も回避してほぼ均一に分布することができる。これらの軸方向流路218は、液体燃料が予備混合器210中を通り抜けることを可能にする。具体的な実施形態では、多数の軸方向流路218を設けて燃料の均一分配を促進することができる。一実施形態では、軸方向流路18の寸法は十分に大きくなることができるので、粒子状物質は最小限の背圧の液体燃料の通路を遮断することはない。
【0084】
上記で述べたように、予備混合器210の多孔質体212は、好ましくは、液体用の流路を有する多孔質材料から作製することができる。他の実施形態では、この予備混合器を固体片または固体材料の複数片の集合から作製することができる。この点に関して、予備混合器は、流体用の流路と同様に液体用の流路も備えてよい。これらの流体用の流路は、液体用の流路より実質的に小さくてよい。しかし、固体材料を有する予備混合器を製造するコストは、多孔質材料を用いたもののコストに比較して実質的に高くなり得る。
【0085】
予備混合器の気孔率はある基本的なパラメータを満たすように選ぶことができる。たとえば、工程で使用される気体(たとえば、窒素ガス)は、最小限の流量制限、たとえば、作動条件下で1%〜6%の圧力降下、で多孔質体212中を流れるべきである。さらに、処理されている液体(たとえば、液体燃料)は、作動液体圧力より僅かに高い圧力下で多孔質材料を通過してよい。この多孔質材料は、処理される流体と液体とに対して化学的な相性がよいかまたは耐性を持つべきである。
【0086】
多孔質体は、液体用の様々な流れパターンに適合するように設計してよい。たとえば、一実施形態では、液体の流れはほぼ軸方向かつ線形でよい。他の実施形態では、流れは多孔質体中で非線形でよい。さらに、他の実施形態では、流れは、ある領域でほぼ放射状でよい。
【0087】
予備混合器210と接触器220との間に小さな間隔を設けて接触器を横切る圧力を均等化可能にしてよい。一実施形態では、この間隔は約0.25〜1.25mmである。別の実施形態では、図8に示したように、区分された予備混合器を設けることで予備混合器210aと接触器220との直接の嵌め合わせを促進してもよい。この実施形態では、工程出力をばらつかせる向きおよび外力の影響を低減させるために、ぎざぎざを付けた領域299を予備混合器210aの正面上に形成して接触器220への流れを区分してもよい。この点に関して、予備混合器210aに対面する接触器の正面には同様のぎざぎざを付けた領域299を設けてもよい。区分された流れ進路を用いる場合、予備混合器210aの軸方向流路218aは、接触器220の区分された流れ区画に接続するべきである。
【0088】
燃料ガス接触器200を予備混合器なしで動作させてよいことに留意されたい。予備混合器は、向きおよび外力の燃料ガス接触器200への影響を低減させるために設ける。
【0089】
接触器220の実施形態を、図9Aを参照して説明する。この接触器220は多孔質体222を有する多孔質媒質であり得る。この接触器220の多孔質体222は、液体燃料と窒素ガスの表面混合を促進させ、それによって、燃料から窒素への酸素の効率的な移動を可能にするように構成することができる。この点に関して、多孔質体222は微小な気孔率(窒素ガスと液体燃料との表面混合を引き起こすのに十分に小さい孔)を備えることができる。一実施形態では、孔は、500ミクロンまで(たとえば50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または500ミクロン)の平均孔径を有する。この点に関して、単一の多孔質体が径の異なる孔を備えてもよい。具体的な実施形態では、多孔質体222中の孔径は、350〜450ミクロンであり得、より具体的な実施形態では約400ミクロンであり得る。孔径は、流体と液体が孔を通って流れることを可能にしつつ、流体と液体の表面混合を引き起こすのに十分に小さくなるように選択することができる。この点に関して、孔径は、流体と液体との粘性によって決定してもよい。不浸透性の外被223を設けて液体と流体の浸出を防いでもよい。
【0090】
図9Bに、本発明による接触器モジュール200の実施形態を示す。図9Bに示すように、燃料−窒素混合物を複数の接触器220によって処理してもよい。各接触器220は、燃料から窒素ガスまでの酸素の移動をもたらしてもよい。接触器220の数は、燃料を用いる機械によって必要とされる脱酸素化のレベルに応じて変わってよい。さらに、窒素ガスを処理して、接触器220間の酸素を除去して各接触器220で脱酸素プロセスを増強してもよい。
【0091】
図9Cは、接触器の実施形態における例示的な孔形状の多孔質体の実施形態を示す。この孔形状は、大きな表面積を与えて流体と液体の混合とそれらの間の成分の移動とを促進することができる。孔形状は軸方向に沿って一様でなくてもよい。具体的な実施形態では、孔形状を軸方向に連続的に変化させてそこを通って移動する流体および液体の形状を連続的に変化させる。
【0092】
多孔質体222の微小な気孔率は多孔質媒質の長さを横切る圧力差を生み出し、その結果、高度に剪断された流れになる。この環境では、燃料と窒素の高剪断混合が、燃料対窒素における酸素分圧の差異により酸素の移動を可能にする。この考え方を図10A〜10Cに示す。
【0093】
図10Aは、酸素を送り込まれた燃料504の小滴が大容積の窒素ガス502に浸される場合の酸素の移動を示す。酸素分圧の差異により、酸素は燃料小滴504から窒素ガス502に移動される。この点に関して、移動領域506が燃料小滴504の外側表面上に形成される。移動領域506の侵入は限られているので、燃料小滴504の中心領域における酸素濃度は、グラフ線508によって示すように高いままである。このグラフ線508は、酸素レベル(縦軸)を小滴504の中心からの距離(横軸)の関数として表わしている。
【0094】
同様に、図10Bは、窒素の泡524が液体燃料522の体積中にある場合の酸素の移動を示す。再度、移動領域526がこの窒素の泡524の外側表面上に形成されるが、泡の中心の酸素濃度は低いままであり、一方、泡524から少しの距離では酸素濃度は高いままである。
【0095】
対照的に、図10C中で概念的に示すように、接触器220の多孔質体の微小な気孔率は、燃料と窒素ガスの緻密な混合物を生成することができ、その結果、酸素移動がより大きくなる。分かり易くするために、多孔質材料は図10Cに示さない。代わりに、多孔質材料中の流体および液体の移動を示す。図10Cは、矢によって示した方向への接触器を介した液体と流体の移動を示す。液体は暗い円で示され、流体は白い円で示されている。液体および流体が多孔質体を通って移動するにつれて、液体−流体界面が連続的に壊され、かつ/または再形成され、それによって、成分移動用の表面積をより露出させることがある。上に述べたように、図10Cは概念的な方法でのみ混合を示している。当業者ならば、実際の動きは大きく異なることがあることを理解するであろう。たとえば、流体の大きさは、孔径と孔形状と共に変わることもある。
【0096】
図11は、燃料から窒素までへの酸素の移動の後に窒素ガスと液体燃料を分離するための分離器300の実施形態を示す。示された実施形態では、この分離器は遠心分離器である。この点に関して、分離器300は螺旋状のトラック304を有する中心シャフト302を備える。作動中、このシャフトは中心軸の周りを回転して、接触器からの小さな窒素泡を結合させて、より大きな泡を形成するかあるいは液体燃料から一緒に分離することができる。ある実施形態では、遠心分離器300は、液体燃料と混じり合った大きな泡を形成する。次いで、この混合物は、完全に分離するための別の遠心分離器か液体から大きな泡を分離するためのメッシュ分離器のどちらかへ送られる。
【0097】
図に示し上記で説明した例示的な実施形態は、現在好ましいものであるが、これらの実施形態は例としてのみ提供されたものであることを理解すべきである。他の実施形態では、たとえば、同じ動作を実施するための異なる技法を含んでよい。本発明は具体的な実施形態に限定されず、なお添付の特許請求の範囲の範疇と精神に入る様々な修正形態、結合形態、および置換形態にまで拡張適用される。
以下を特許請求する。
[請求項1]
液体と流体とを混合させるように構成された多孔質媒質を備えた液体と流体との間の接触を促進させるための装置であって、前記液体と前記流体の少なくとも1つはその中に成分を有し、前記多孔質媒質が前記液体と前記流体との間の接触を促進させるように構成された、前記装置。
[請求項2]
前記接触によって、前記成分の少なくともいくらかが前記液体と前記流体との間で移動する、請求項1に記載の装置。
[請求項3]
前記混合の後で前記液体と前記流体とを分離するための分離器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
[請求項4]
前記移動が前記液体から前記流体までの成分移動を伴うとき、前記流体から前記成分を除去するように構成された流体浄化モジュールをさらに備える、請求項2に記載の装置。
[請求項5]
前記流体浄化モジューが圧力スイング吸着モジュールを備える、請求項4に記載の装置。
[請求項6]
前記流体浄化モジュールが前記流体中の前記成分の少なくとも一部分を触媒消費するように構成された、請求項4に記載の装置。
[請求項7]
前記流体浄化モジュールから前記多孔質媒質まで前記流体を移動させるように構成された再循環ラインをさらに備える、請求項4に記載の装置。
[請求項8]
前記分離器から前記多孔質媒質まで前記流体を移動させるように構成された再循環ラインをさらに備える、請求項3に記載の装置。
[請求項9]
前記流体と混合した気化液体を前記分離器から分離するように構成された蒸気トラップをさらに備える、請求項3に記載の装置。
[請求項10]
前記多孔質媒質は500ミクロン未満の孔径を有する孔を備える、請求項1に記載の装置。
[請求項11]
前記孔径が約400ミクロンである、請求項10に記載の装置。
[請求項12]
前記流体と前記液体との混合物を前記多孔質媒質に提供するように構成された予備混合器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
[請求項13]
前記予備混合器が、
前記多孔質媒質の方に向いた進路内に前記液体を通過させるための複数の実質的に軸方向の流路;及び
前記流体を前記進路内に拡散させるための多孔質体:
とを備える、請求項12に記載の装置。
[請求項14]
前記予備混合器が、前記予備混合器の円周周辺に沿った、前記流体を受け取って前記多孔質体に向けるための環状の通路をさらに備える、請求項13に記載の装置。
[請求項15]
前記多孔質媒質が不活性材料からなる、請求項1に記載の装置。
[請求項16]
前記分離器が少なくとも1つの遠心分離器を備える、請求項3に記載の装置。
[請求項17]
前記液体が燃料であり、前記成分が成分ガスである、請求項1に記載の装置。
[請求項18]
前記燃料がディーゼル燃料、ケロシン燃料およびジェット燃料のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載の装置。
[請求項19]
前記成分ガスが酸素である、請求項17に記載の装置。
[請求項20]
前記成分が前記混合前の前記液体中に溶解された成分ガスである、請求項1に記載の装置。
[請求項21]
前記流体が気体である、請求項1に記載の装置。
[請求項22]
前記流体が非反応性気体である、請求項21に記載の装置。
[請求項23]
前記非反応性気体が、窒素、アルゴン、ヘリウム、および二酸化炭素のうちの少なくとも1つである、請求項22に記載の装置。
[請求項24]
a)液体と流体とを多孔質媒質中を通過させる工程であって、前記液体と前記流体の少なくとも1つはその中に成分を有し、前記通過によって前記液体と前記流体とを混合させ前記液体と前記流体との間の接触を促進させる工程:を含む、液体と流体との接触を促進させる方法。
[請求項25]
前記液体が燃料であり前記成分が成分ガスである、請求項24に記載の方法。
[請求項26]
前記流体が気体である、請求項24に記載の方法。
[請求項27]
前記接触は、前記成分の前記液体と前記流体との間の移動を促進させるように構成された、請求項24に記載の方法。
[請求項28]
前記流体と前記液体が、前記成分の移動が所望のレベルになるように選択された流体−液体比で前記多孔質媒質中を通過させる、請求項27に記載の方法。
[請求項29]
多孔質体;及び
孔であってそこを流れる流体とそこを流れる成分を有する液体とを高シェアで混合させるのに十分小さな孔径を有する孔:
を備える、液体と流体との混合を促進させる多孔質媒質。
[請求項30]
a)液体と流体とを多孔質媒質中を通過させる工程であって、前記液体はその中に成分ガスを含有し、前記通過によって前記液体と前記流体を混合させ前記成分ガスの少なくともいくらかを前記液体から前記流体に移動させる、工程;
b)前記液体と前記流体とを分離する工程であって、前記分離された流体は前記成分ガスの少なくともいくらかを含む、工程;
c)前記成分ガスを前記流体から除去する工程;及び
d)工程a)のどんな継続にも使用するために工程c)において除去された成分ガスを有する前記流体を再循環させる工程:
を含む、液体浄化方法。
[請求項31]
複数の軸方向の流路であって、前記軸方向の流路に実質的に整列している進路に液体を通過させるための流路と;
前記進路中に流体を拡散させるための多孔質体と:
を備える、液体と流体とを混合させるように構成された混合用本体。
[請求項32]
前記多孔質体の円周周辺に沿った、前記流体を受け取って前記多孔質体内に向けるための環状の通路をさらに備える、請求項31に記載の混合用本体。
[請求項33]
前記複数の反応物質を触媒活性な多孔質媒質中を通過させる工程であって、前記通過によって前記複数の反応物質を混合し前記1つまたは複数の反応物質を化学転化させて、それらから1つまたは複数の生成物を生成する工程:
を含む、複数の反応物質を触媒転化してそれらから1つまたは複数の生成物を生成する方法。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
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図5
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図7A
図7B
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図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11