(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873079
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】平面部を備える複合製品を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 53/70 20060101AFI20160216BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20160216BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20160216BHJP
B29C 53/82 20060101ALI20160216BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
B29C53/70
B29C67/14 T
B29C67/14 B
B29C53/82
B29K101:12
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-514132(P2013-514132)
(86)(22)【出願日】2011年6月8日
(65)【公表番号】特表2013-533134(P2013-533134A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】NL2011050413
(87)【国際公開番号】WO2011155835
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】2004854
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】512316770
【氏名又は名称】エアーボーン・インターナショナル・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・アントニウス・イヴォネ・クレマース
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02731067(US,A)
【文献】
特開平05−031810(JP,A)
【文献】
特開昭61−002540(JP,A)
【文献】
特開平11−111893(JP,A)
【文献】
特開昭57−069023(JP,A)
【文献】
実開昭56−066423(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/70
B29C 53/82
B29C 70/06
B29C 70/16
B29C 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非円形断面を有する複合プロファイルを製造する方法であって、
非円形断面を有する一連のマンドレルセクションを、1つ以上のパスで、一方向の動きにより、マンドレルの長手方向軸周りに回転可能に配置される1つ以上の軌道巻回ステーションを通過して軸方向に移動するように作動させるステップと、
1つ以上の前記巻回ステーションにおいて、熱可塑性マトリックス材料中に長手方向に平行に延びる繊維の束を備える熱可塑性一方向テープ(UDテープ)を前記マンドレルセクション上にあるいは既に巻回された層上に連続して螺旋状に巻回して、少なくとも1つの平面を含む閉じられた断面を有する薄壁プロファイルの壁の層を形成するステップと、
前記薄壁プロファイルを1つ以上の前記マンドレルセクション上に支持されるプロファイルセクションへと切断するステップと、
を備え、
前記層は、切断前に、既に形成された層と圧密固定されるように、前記熱可塑性一方向テープ(UDテープ)が重ね合されるにつれて前記熱可塑性一方向テープ(UDテープ)は加熱されて前記マンドレルセクション上にあるいは既に形成された層上に押しつけられる、方法。
【請求項2】
前記プロファイルセクションが長手方向で切断される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マンドレルセクションの断面が直線部を含み、それにより、前記プロファイルセクションが平面を含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非円形断面を有する複合プロファイルを製造するための装置において、
非円形断面を有する一連のマンドレルセクションであって、1つ以上のパスで一方向の動きにより前記一連のマンドレルセクションの長手方向軸周りに回転可能に配置される1つ以上の軌道巻回ステーションを通過して軸方向に移動するように構成されており、前記巻回ステーションが、熱可塑性マトリックス材料中に長手方向に平行に延びる繊維の束を備える熱可塑性一方向テープ(UDテープ)を前記マンドレルセクション上にあるいは既に巻回された層上に連続して螺旋状に巻回して、閉じられた非円形断面を有する薄壁プロファイルの壁の層を形成するとともに、前記層を既に巻回された層上に圧密固定するために前記1つ以上の軌道巻回ステーションが配置されるように、前記熱可塑性一方向テープ(UDテープ)が重ね合されるにつれて前記熱可塑性一方向テープ(UDテープ)を加熱し前記一連のマンドレルセクションあるいは既に形成された層上に押しつける、一連のマンドレルセクションと、
前記巻回ステーションよりも下流側にあって、前記プロファイルを1つ以上の前記マンドレルセクション上に支持されるプロファイルセクションへと切断するためのカッタと、
を備える装置。
【請求項5】
前記マンドレルセクションの非円形断面は、前記プロファイルセクションが少なくとも1つの平面を含むように直線部を含む請求項4に記載の装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合製品、特に平面部を備えるプロファイルを連続プロセスで製造するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス材料中に埋め込まれる強化繊維を含む複合製品は、それらの重量に対する強度の比率が高いため、普及してきた。平面部を備える製品、特に平坦な複合パネルにおいては、従来、ガラス繊維マットまたは炭素繊維マットなどの繊維織物材料のいくつかの重ね合わされた層が熱硬化性樹脂中または熱可塑性マトリックス材料中に埋め込まれたものが使用されてきた。しかしながら、繊維の織り合わせ構造は、そのような製品の平面部の平坦性および圧密度を制限する。そこで、熱可塑性マトリックス材料中に埋め込まれる一方向繊維の束を含むテープ(UD-テープ)の平行な隣接する伸延部からそれら自体が形成される重ね合わされた層から平面部を備える製品を作り出すことが提案されてきた。この場合、隣接する層のテープが異なる方向に延びている。織り合わされた繊維を伴う層から形成される製品と比べると、各層が織り合わされない一方向に平行に延びる繊維から形成されるため、層を更に密に積層できるとともに、積層体を圧密で平らになるように更に平坦化することができる。更に、製品の強度および/または剛性が増大し得る。また、繊維構造を織り合わせるステップが排除され、それにより、製造コストが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/107196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方向繊維を伴うそのような熱可塑性テープは、それらが例えばロボットアームに装着される繊維配置ヘッドを使用していわゆる先進繊維配置プロセスによりモールド内に重ね合わされるときに、熱および圧力を加えることにより配置されて圧密固定される場合がある。あるいは、テープは、例えば繊維鍛造プロセスを適用することにより、または、通常のテープピックアンドプレースユニットを使用することにより、重ね合わされてスポット溶接され、それにより、環境に優しい非固結製品を形成する場合があり、この製品は、高い温度および圧力の下で、モールド内、例えば加熱されたプレス内、加熱されたモールド内、炉内、または、オートクレーブ内において圧密固定され得る。これらの既知のプロセスの欠点は、それらがかなり高価であるという点である。特に、不連続プロセスである製品の縁部での停止プロセスおよび開始プロセスに起因して、製造速度が比較的遅い。また、テープによって製品の縁部が擦り切れる場合があり、それにより、廃材が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの欠点を軽減することを目的とする。そこで、本発明は、非円形断面を有する複合プロファイルを連続プロセスで製造するための方法および装置であって、非円形断面を有する一連のマンドレルセクションが、1つ以上のパスで、一方向の動きにより、マンドレルの長手方向軸周りに回転可能に配置される1つ以上の軌道巻回ステーションを通過して軸方向に移動するように作動され、また、1つ以上の巻回ステーションにおいて、熱可塑性マトリックス材料中に長手方向に平行に延びる繊維の束を備えるテープが、マンドレルセクション上にあるいはマンドレルセクション上に既に巻回された層上に螺旋状に巻回され、それにより、閉じられた非円形の断面を有する薄壁プロファイルの壁の層が形成される方法および装置を提案する。
【0006】
このようにして、テープを連続的に重ね合わせることができ、また、テープを重ね合わせ始めて終えるための時間を節約できる。また、プロファイルが連続プロファイルとして巻回されるため、エッジ損失を減らすことができる。
【0007】
通過が終了されると、プロファイルは、複合製品を形成するために横断方向でおよび/または長手方向で切断されてもよい。マンドレルの非円形断面により、切断されたプロファイルの長手方向断面を非円形関連の形状へと組み合わせることができる。マンドレルセクションの断面は、層を支持するように閉じられることが好ましい。マンドレルの断面は、例えば、楕円、三角形、正方形、長方形、あるいは、多角形であってもよい。マンドレルセクションの断面は直線部を含むことが好ましく、それにより、マンドレルセクション上に形成されるプロファイルセクションは、プロファイルセクションの長手方向切断後に平坦なブランクを形成できる平面部を含む。例えば、正方形断面を有する一連のマンドレルセクションは、例えば0.5cmの壁厚と30×30cmの断面とを有する薄壁繊維強化ビームを形成するために使用されてもよく、該薄壁繊維強化ビームは0.5×30×200cmの平面製品へと切断されてもよい。あるいは、正方形の矩形断面を有するプロファイルは、L形状断面またはC形状断面を有する製品へと切断されてもよい。これらの製品は、例えば補強プレートまたはIビームを形成するように一緒に鍛造されてもよく、あるいは、テーラードブランクとして使用されてもよい。なお、製品を形成するプロセスでは、長手方向に沿って切断されたプロファイルの使用に代えて、非切断プロファイル、すなわち、閉じられたプロファイルを使用できることに留意されたい。
【0008】
別段明示されなければ、この出願において使用される断面とは、長手方向軸に対して垂直な断面を意味しており、長手方向軸に沿う形状およびサイズが一定であることが意図されている。
【0009】
テープは、重ね合わされるにつれて加熱されてマンドレルセクション上にあるいは既に形成された(previous)層上に押し付けられてもよい。適した巻回装置は、例えば国際公開第2006/107196号に開示されている。
【0010】
テープの層を圧密固定するために加えられる熱および圧力に耐えるように、マンドレルセクションは、スチールまたは同様の耐熱および耐圧材料から形成されるのが好ましい。セクションは、その最後のパスの後に、例えばセクションが所定の長さに切断された後に、巻回されたプロファイルセクションから分離されてもよい。
【0011】
一連のマンドレルセクションは、一連の軸方向に位置合わせされて当接するマンドレルセクションを備えてもよい。1つのパスで巻回される層は、当接するセクション間の途切れの位置で、カッタを使用して切断され、また、マンドレルセクションは、再び巻回ステーションに通されるように一巡して元に戻されてもよい。一連のマンドレルセクションは、巻回ステーションを通過して押し進められるのが好ましい。一続きの状態を成すマンドレルセクションは、連結されてもよく、また、カッタを受け入れるための凹部が途切れの位置に設けられてもよい。カッタは、巻回ステーションの下流側に配置されてもよい。カッタは、切断する間、動いているセクションと共に移動するように構成されていることが好ましい。
【0012】
したがって、テープは、プロファイルが分割される前に、既に形成された層に圧密固定されてもよい。圧密固定は、例えば加熱ローラを使用して熱および圧力を加えることによって達成されてもよい。このようにして、テープと既に形成された層とが互いに固定され、それにより、中実断面が形成される。層を分割前に圧密固定することにより、分割されたプロファイルを一体性を損なうことなく扱うことができる。また、二次的な硬化ステップまたは圧密固定ステップを回避できる。更に、空気封入(ボイド)の危険を減らすことができる。
【0013】
例えば、新たに重ね合わされた層を伴うプロファイルは、新たに加えられる層の張力を損なうことなくセクションへと切断されて処理され得る。また、セクションは、テープの滑りあるいは圧縮荷重に起因する繊維の座屈の危険を伴わずに、数層だけが配置されるときに処理され得る。これは、連続プロファイルが巻回ステーションのラインに通された後の連続プロファイルからのプロファイルセクションの分離を容易にする。マンドレルセクションは、該マンドレルセクションを一連のマンドレルセクションに接続でき且つマンドレルセクションが半製品を次のパスのために製造ラインへと送り込むことができる巻回ステーションのラインの初めへと容易に搬送され得る。
【0014】
その後の巻回ステーションは、プラスおよびマイナスの方向の螺旋状に巻回される層を与えることが好ましい。
【0015】
また、テープを重ね合わせる間の圧密固定により、更なるテープをプロファイルの全周にわたってではなく局所的にのみ配置して固定することもできる。例えば、連続して巻回される層に加えて、テープを外周の一部のみに長手方向で配置することができる。あるいは、巻回ステーションが自動切断・再始動システムを備える場合には、更なる螺旋状の層を長手方向の長さの一部だけに配置することができる。プロファイルの軸に対して平行にあるいは垂直に延びるテープの層が与えられる更なるステーションが設けられてもよい。
【0016】
プロファイルの壁における層の数および/または繊維の方向は、プロファイルの長さに沿って変化するように、例えば局所的な補強を行なうように選択されてもよい。
【0017】
マンドレルセクションは、変化する断面を有してもよく、例えばテーパ状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】平面部を備える複合プロファイルを製造する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1の概略図に示される非限定的な例を使用して本発明を更に説明する。
【0020】
図1は、平面部を備える複合プロファイルを製造する方法を示している。4つの直線状の縁を伴う閉じられた長方形断面を有する一連のスチールマンドレルセクション1が、1つ以上のパスで一方向の動きにより多数の巻回ステーション3を通過して移動するように矢印2で軸方向に押し進められる。巻回ステーション3は、軌道巻回ステーション、すなわち、マンドレルの長手方向軸周りに回転可能に配置される巻回ステーションである。巻回ステーションは、熱可塑性マトリックス材料中に長手方向に平行に延びる繊維の束を備えるテープをマンドレルセクションの外周上にあるいは既に巻回された層上に連続して螺旋状に巻回して、4つの平面を与える長方形断面を有する薄壁プロファイルの壁の層4を形成するように構成されている。螺旋巻回は、反転する必要がなく、したがって反転するために止まる必要がないという点において連続的である。層4は、ステーション内に置かれている間、例えば加熱された加圧ローラを使用することによって圧密固定される。巻回層4は、マンドレルセクションの当接位置で、一連のマンドレルセクションと共に移動する並進カッタ5を使用して分割される。このようにして、マンドレルセクション上に支持されるプロファイルセクションが形成される。巻回層を伴うマンドレルセクションは、プロファイルが所望の壁厚に達するまで、フィードバックされてステーションに通される。その後、マンドレルセクション1がプロファイルセクションから除去されて、プロファイルが4つの平坦な長手方向ブランク(図示せず)へと長手方向で切断される。マンドレルセクションは、フィードバックされて再び巻回ステーションに通されてもよい。
【0021】
本発明は、本明細書中に記載される例示的な実施形態に限定されない。例えば、熱可塑性UDテープは、熱可塑性結合材を含む、いわゆる乾燥予備成形体であってもよい。螺旋状に巻回される層に加えて、テープの更なる層が局所的に設けられてもよい。例えば、プロファイルの軸に対して長手方向に延びる局部層、例えば正方形断面を有するプロファイルの上面および下面における更なる層が設けられてもよい。そのような層は、連続的に延びてもよく、あるいは、連続的に延びなくてもよい。更に、ピッチを伴わずに更なる外周層が巻回されてもよく、また、プロファイルの長さの一部のみに沿って延びる更なる螺旋状の巻回部が設けられてもよい。また、分割されたプロファイルが1つ以上のマンドレルセクションを含んでもよく、横断方向の切断の位置は、必ずしもマンドレルセクションの当接部である必要はない場合もある。更に、その後のマンドレルセクションは、同一である必要はなく、例えば、必要に応じて異なる断面を有してもよい。多くの変形および代替案は、当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内に入ると見なされるべきである。
【符号の説明】
【0022】
1 マンドレルセクション
2 矢印
3 巻回ステーション
4 層
5 並進カッタ