特許第5873097号(P5873097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873097
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】セルラーホイールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 33/42 20060101AFI20160216BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20160216BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20160216BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20160216BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20160216BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F02B33/42
   B23K26/21 N
   B23K15/00 505
   B23K1/00 330P
   B23K3/00 310L
   F02B39/00 U
   F02B39/00 T
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-537064(P2013-537064)
(86)(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公表番号】特表2014-502325(P2014-502325A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】EP2011068713
(87)【国際公開番号】WO2012059372
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年9月1日
(31)【優先権主張番号】10189873.2
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511123393
【氏名又は名称】エムエーツェー レーザーテック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100109128
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 功
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(74)【代理人】
【識別番号】100100608
【弁理士】
【氏名又は名称】森島 なるみ
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100152803
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100123548
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 晃二
(72)【発明者】
【氏名】カール メルツ
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/057319(WO,A1)
【文献】 特開2008−138968(JP,A)
【文献】 独国特許発明第00937407(DE,C2)
【文献】 特開昭61−042478(JP,A)
【文献】 特公昭49−037486(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00 − 3/08
15/00 − 15/10
26/00 − 26/70
31/02
33/00
F02B 33/00 − 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(y)に対して同心円状に配置されたスリーブ(12,18,20,14)と、互いに続くスリーブ間に配置され、回転軸(y)に対して半径方向に向けられ、末端縁でスリーブ(12,18,20,14)に結合され、自由末端縁が次のスリーブ(18,20,14)に結合される前に角度位置が固定されるフィン(16)とを備えた、金属からセルラーホイール(10)を製造する方法であって、
(a)フィン(16)の角度位置を固定するために、工具(40,50,60)が、その直径が次のスリーブ(18,20,14)の内径に対応する円筒状の内部円周面(41,51,61)で、フィン(16)の自由末端縁上に配置され、
(b)耐火性の基礎成形材料と、硬化でき、加熱処理によって基礎成形材料から分離できる結合剤とを含む成形材料混合物(F)が、工具(40,50,60)の内部円周面(41,51,61)とフィン(16)とによって区切られたセル(22,24,26)に導入されて、硬化され、
(c)工具(40,50,60)を除去した後、次のスリーブ(18,20,14)が、硬化された成形材料混合物(F)によって角度位置が固定されたフィン(16)の自由末端縁上に配置され、
(d)フィン(16)の自由末端縁が、セル(22,24,26)への溶接又はろう付によって、次のスリーブ(18,20,14)に結合され、
(e)硬化された成形材料混合物(F)が加熱処理されて、基礎成形材料がセル(22,24,26)から除去される
ことを特徴とするセルラーホイールを製造する方法。
【請求項2】
工具(40,50,60)が、長手方向の溝(42,52,62)を備え、この長手方向の溝(42,52,62)は、内部円周面(41,51,61)から半径方向に広がり、成形材料混合物Fの導入前に、延長部を備えるフィン(16)の自由末端縁が、この長手方向の溝(42,52,62)に挿入され、
工具(40,50,60)を除去した後、硬化された成形材料混合物(F)から突出するフィン(16)の延長部が、次のスリーブ(18,20,14)がフィン(16)の自由末端縁上に配置される前に、除去される
ことを特徴とする請求項1記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項3】
工具(40,50,60)の内部円周面(41,51,61)が、長手方向の溝(42,52,62)の両側において、ビーズ様の隆起部(43,53,63)を有することを特徴とする請求項2記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項4】
加熱処理が、完成したセルラーホイール(10)に対して行われ、それと同時に、基礎成形材料が、全てのセル(22,24,26)から除去されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項5】
完成したセルラーホイール(10)が、応力除去焼なましにさらされることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項6】
硬化した成形材料混合物(F)が、応力除去焼なましの後に、セルラーホイール(10)のセル(22,24,26)から除去されることを特徴とする請求項5記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項7】
中子砂が、耐火性の基礎成形材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項8】
前記中子砂として、ケイ砂が用いられることを特徴とする請求項7記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項9】
結合剤が、有機結合剤であり、該有機結合剤において、硬化反応が、ガス状触媒によって加速され、又は、該有機結合剤が、ガス状硬化剤との反応によって硬化されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項10】
ポリオール溶液との二成分系、特に第一の成分としてのフェノール樹脂と、第二の成分としてのポリイソシアネート溶液とが、結合剤として用いられ、ガス状第3級アミン、特にトリエチルアミンが、硬化のために、成形材料混合物(F)に導入されることを特徴とする請求項記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項11】
フィン(16)が、レーザー又は電子ビームによる溶接又はろう付けによって、スリーブ(18,20,14)に結合されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項12】
スリーブ(12,18,20,14)及びフィン(16)金属板から作られた、高い耐熱性を有する金属材料からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のセルラーホイールを製造する方法。
【請求項13】
前記金属板が、厚みが0.5mm未満であることを特徴とする請求項12記載のセルラーホイールを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からセルラーホイールを製造する方法に関し、該セルラーホイールは、回転軸に対して同心円状に配置されたスリーブと、フィンを備えている。フィンは、互いに続くスリーブの間に配置され、回転軸に対して半径方向に向き、末端縁でスリーブに結合し、自由末端縁が次のスリーブに結合する前に、角度位置が固定される。
【背景技術】
【0002】
小型化の方法は、この数年間、新型の過給式エンジンの構造における主要テーマであった。自動車の燃料消費と、それ故に生じる排ガス放出物は、小型化によって低減することができる。これらの目的は、今日ではより一層重要となりつつある。なぜなら、化石燃料による高エネルギー消費は、深刻な大気汚染をもたらしており、次第に厳しい法規制が、自動者製造業者に対して課されつつあるためである。小型化とは、大容量のエンジンを、排気量を低減したエンジンによって代替することであると考えられている。ここで、エンジンの出力は、エンジンの過給により一定に保たれる。その目的は、小容量のエンジンで、同じ出力の自然吸気エンジンと同じ出力値を得ることである。小型化分野における新しい知見によれば、特に排気量が1リットル以下の非常に小さなガソリンエンジンの場合、圧力波過給(スーパーチャージング)によって、最高の結果が得られることが示された。
【0003】
圧力波過給機(スーパーチャージャー)の場合、ローターは、セルラーホイールとして構成され、空気及び排ガスの筐体により、共通の外郭構造(common shell)で包み込まれる。小型エンジンを過給するための、現代の圧力波過給機の発展によって、セルラーホイールの直径は、100mm以下の大きさとなった。最大のセル容量を得るため、及び重量の減少を目的として、0.5mm以下のセル壁の厚みが、目標とされる。約1000℃という高い排ガスのエントリー温度においては、実際のところ、高い耐熱性を有するスチール、及び合金のみが、セルラーホイールの材料として適している。薄いセル壁厚を備えた、寸法安定性があり、かつ高精密なセルラーホイール製造は、今日ではほとんど不可能か、又は相当な追加費用を伴うものとなっている。
【0004】
セルラーホイールの室を、互いに隣に列を成し、部分的に重なり合うZ型プロファイルから形成することは、既に提案されている。しかしながら、このタイプのセルラーホイールの製造は、高い時間経費を伴うものとなっている。さらに、互いに隣接して列を成してZプロファイルを配置し、それらを正確な位置に固定することを、必要な許容誤差を維持するのに十分な精密さで実現することは、ほとんど不可能である。
【0005】
個別のセルを浸食することによって、固形物からセルラーホイールを製造することも、既に提案されている。しかしながら、この方法では、0.5mm未満のセル壁厚を得ることはできない。浸食法のさらなる実質的な不利益は、高い材料費と加工費を伴うことである。
【0006】
最初に述べたタイプの方法は、WO2010/057319A1に開示されている。スリーブから所定の角度位置で外側に突出するフィンの固定が、フィンガーの付いた工具によって行われる。フィンガーは、フィン間で軸方向に端部側で押されて、隣接するフィン間の中間領域に詰め込まれ、その過程でフィンを所定の角度位置に移動させて、フィンをその角度位置に固定する。次のスリーブが押された後、ビードオンプレート溶接によって、スリーブは、その下方に位置するフィンの自由端縁に、レーザービームによって溶接される。続いて、スリーブは、さらなるフィンに適合される。このフィンは、次から次へと配置され、レーザービームによってスリーブに、くぼんだ継ぎ目により結合される。そして、上述したように、スリーブは、所定の角度で固定されて、さらなるフィンに適合される。この工程は、セルラーホイールを製造するための組み立てに従って、最も外側のスリーブが最後に配置されて結合されるまで繰り返される。
【0007】
スリーブから外側に突出したフィンの固定は、工具により所定の角度位置において行われるが、WO2010/057319A1によれば、その工具により、成形部品がフィン間に挿入されるところ、それは、前記成形部品を、結合部品の損傷なしに、フィンの中間領域から除去することはほとんどできないという不利益をもたらす。その理由は、溶接中に発生する局所的な高温が、機械的ストレスをもたらし、成形部分とフィンが詰まってしまうという事実にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/057319A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、先行技術の不利益を回避して、最初に述べたタイプの簡単で安価な方法を提供する目的に基づくものであり、その方法によって、必要な精密さでセルラーホイールを製造することが可能になる。本発明のさらなる目的は、内燃エンジン、特にエンジン排気量が1リットル以下の大きさの小型ガソリンエンジンに過給する圧力波過給機での使用に適したセルラーホイールの製造方法の提供である。特にセル壁の厚みが0.5mm以下の寸法安定性のある高精密なセルラーホイールを、高価ではない製造物にする方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それは、以下に示す本発明によって、実現される。
(a)フィンの角度位置を固定するために、工具が、その直径が次のスリーブの内径に対応する円筒状の内部円周面で、フィンの自由末端縁上に配置され、
(c)耐火性の基礎成形材料と、温度処理によって、硬化でき、基礎成形材料から分離できる結合剤とを含む成形材料混合物が、工具の内部円周面とフィンとによって区切られたセルに導入されて、硬化され、
(d)工具を除去した後、次のスリーブが、硬化された成形材料混合物によって角度位置が固定されたフィンの自由末端縁上に配置され、
(e)フィンの自由末端縁が、セルへの溶接又はろう付けによって、次のスリーブに結合され、
(f)硬化された成形材料混合物が加熱処理されて、基礎成形材料がセルから除去される。
【0011】
セルラーホイールのスリーブ及びフィンは、好ましくは0.5mm未満の厚みを備えた金属板から作られた高い耐熱性を有する金属から成ることが好ましい。
【0012】
本発明の方法によって製造されたセルラーホイールは、内燃エンジン、特に排気量が1リットル以下のガソリンエンジンに過給するために、圧力波過給機に用いられることが好ましい。
【0013】
フィンは、スリーブから半径方向に突出し、末端縁でスリーブに結合するが、このフィンを備えたスリーブの製造は、様々な方法で行うことができる。本発明に関連する望ましい方法は、WO2010/057319A1に記載されている。
【0014】
工具は、長手方向の溝を有することが好ましく、この溝は、内部円周面から半径方向に広がり、この溝に、延長部(oversize)を有するフィンの自由末端面が、成形材料混合物が導入される前に、挿入され、工具の除去後、硬化された成形材料混合物から突出するフィンの延長部が、次のスリーブがフィンの自由末端縁上に配置される前に、除去される。特に好ましい一実施形態において、工具の内部円周面は、長手方向の溝の両側にビーズ様の隆起部(elevations)を備えることができる。
【0015】
フィンは、レーザー又は電子ビームによって溶接又はろう付けすることにより、スリーブに結合させることが好ましい。
【0016】
加熱処理は、完成したセルラーホイールのみに対して行うことが好ましく、同時に基礎成形材料が全てのセルから除去される。
【0017】
完成したセルラーホイールは、適切に応力除去焼なましにさらされる。硬化された成形材料混合物は、応力除去焼なましの後にのみ、セルラーホイールのセルから除去することが好ましい。
【0018】
例えば、中子砂、特にケイ砂を、耐火性の基礎成形材料として用いることができる。
【0019】
結合剤は、有機結合剤であることが好ましく、有機結合剤の中で硬化反応がガス触媒によって加速され、又は有機結合剤がガス硬化剤との反応によって硬化する。本発明の特に好ましい実施形態において、ポリオール溶液、特にフェノール樹脂を第一の成分とし、ポリイソシアネート溶液を第二の成分とする二成分系が、結合剤として用いられ、ガス状第3級アミン、特にトリエチルアミンが、硬化のために成形材料混合物に導入される。
【0020】
本発明の方法の本質的な中心概念は、中子砂混合物の使用であり、この中子砂混合物は、液体金属用の鋳型壁を提供するために、金属の鋳造中に用いられ、それによって、隣接するフィンが、成形部品の形成による結合の前に、所定の角度位置に固定される。この成形部品は、フィン間に簡単な方法で導入でき、また除去することができる。
【0021】
本発明の方法での使用に適する成形材料混合物は、本質的に全て中子砂混合物である。
【0022】
耐火性の基礎成形材料、例えばケイ砂は、注げる形態(pourable form)にしておくことが好ましく、それによってフィン間を満たし、そこに押し込めることができる。基礎成形材料における粒子間の強固な結合は、結合剤によって生み出され、その結果、形成された成形部品には、必要な機械的安定性が付与される。
【0023】
有機及び無機の結合剤の両方を使用することができる。ここで、結合剤は、その硬化が実質的に室温で実行できるものであることが好ましい。ここで、硬化は、通常トリガーとなる化学反応、例えばガスが触媒として、成形材料混合物に導入されるという事実の効果によって起こる。この成形材料混合物は硬化され、フィン間を満たして圧縮される。
【0024】
特に好ましい成形材料混合物は、有機結合剤を含有する。この有機結合剤の中で、硬化反応は、ガス性触媒によって加速され、又はこの有機結合剤は、ガス性硬化剤との反応によって硬化される。鋳造の分野において、これらの方法は、「コールドボックス法」と呼ばれる。
【0025】
本発明で使用する結合剤として、特にポリウレタン結合剤が適している。これは、第一の成分が例えばフェノール樹脂などのポリオール溶液からなり、第二の成分がポリイソシアネート溶液からなる、いわゆる二成分系のものである。このタイプの系は、公知であり、例えばUS3,409,579Aに記載されている。ポリウレタン結合剤の二成分は、ガス性第3級アミンによって反応に供される。このガス性第3級アミンは、成形材料混合物が満たされて圧縮された後、基礎成形材料と結合剤の混合物に導入される。ポリウレタン結合剤の硬化反応は、重付加であり、例えば水などの副産物を離脱しない反応である。
【0026】
硬化された成形材料混合物を加熱する間に、結合剤における有機成分部分が分解される。基礎成形材料は、再び注げる状態となり、完成したセルラーホイールを単に傾けることによって、セルから除去することができる。
【0027】
完成したセルラーホイールに対し、応力除去焼なましを行うことが好ましい。ここで、応力除去焼なましの後でのみ、硬化された成形材料混合物をセルラーホイールのセルから除去することが、特に有効であることが証明されている。
【0028】
鋳造の分野における、中子(コア)を製作するための慣習的な材料は、実質的に耐火性の基礎成形材料として用いることができる。例えば、ケイ砂又はジルコンサンドが適切である。さらに、適切な砂は、例えばかんらん石、クロム鉱石砂、及びバーミキュライトである。
【0029】
さらに、合成の基礎成形材料もまた用いることができ、例えば中空アルミノケイ酸塩球(スフェア)又は球状セラミックの基礎成形材料を用いることができる。上記球状セラミックの基礎成形材料は、ミネラルとして、例えばムライト、コランダム、クリストバライトを異なる割合で含有する。それらは、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素を本質的にごく少量含有する。典型的な組成には、例えばAl2O3とSiO2がほぼ同一割合で含まれる。加えて、TiO2, Fe2O3などのさらなる構成成分を含有させることができる。球状の基礎成形材料の直径は、1000μm未満とすることが好ましく、特に600μm未満とすることが好ましい。例えばムライトなどの、合成により製造された耐火性の基礎成形材料もまた適切である。前記合成基礎成形材料は、天然起源を有しておらず、中空アルミノケイ酸塩微粒子(マイクロスフェア)又は球状セラミックの基礎成形材料などの製造におけるような特別な成形処理にさらすことができる。
【0030】
ガラス材料は、耐火性の合成基礎成形材料として使用することもできる。それらは、特にガラス球、又はガラスグラニュレートの双方に使用される。慣習的なガラスは、ガラスとして使用することができ、高融点を有するものが好まれる。カレットから製造されるガラスビーズ、及び/又は、ガラスグラニュレートは、適している。また、ホウ酸ガラスも適している。
【0031】
フィンの中間領域を成形材料混合物で満たす処理は、中子(コア)の製作物を鋳造する分野において用いられる方法によって、好適に行われる。例えば、成形材料混合物を、コアシューターによって、圧縮空気の助けでフィンの中間領域に打ち込むことができ、ジョギング装置により圧縮することができる。打ち込まれて圧縮された成形材料混合物は、次いで例えばガス処理により硬化される。前記ガス処理は、室温により実行されることが好ましい。ここで、ガス処理の継続時間は、ほぼ数秒程度である。
【0032】
本発明のさらなる有利な点、特徴、及び詳細は、後述する好ましい典型の実施形態において説明される。図面は、単に説明のためのものであり、限定解釈のために用いられるべきものではない。図面は、概略形式で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、圧力波過給機のためのセルラーホイールの回転軸における縦断面を示している。
図2図2は、図1のセルラーホイールの回転軸に対して垂直のI−I線に対応する断面を示している。
図3図3は、図1のセルラーホイールを製造するためのフランジスリーブを有する駆動シャフトの縦断面を示している。
図4図4は、駆動シャフトの縦断面を示しており、駆動シャフトは、受け皿に挿入され、図3に示されるフランジスリーブを備えている。
図5図5は、内部スリーブを備えた図4の縦断面を示しており、内部スリーブは、フランジスリーブ上に配置され、図1のセルラーホイールのフィンと、フィン上に配置された第一の工具に適合している。
図6図6は、図5の配置のII−II線に対応する断面を示している。
図7図7は、中子砂で満たされた図5の配置の図6の拡大詳細図を示す。
図8図8は、図1のセルラーホイールの第一の中間スリーブと、第二の工具とを備えた、図5の配置の図6の断面を示しており、第一の中間スリーブは、内部スリーブのフィン上に配置されてフィンに適合し、第二の工具は、第一の中間スリーブのフィン上に配置されている。
図9図9は、さらに中子砂で満たされた配置の、図7に対応する、図8の拡大詳細図を示している。
図10図10は、図1のセルラーホイールの第二の中間スリーブと、第二の工具とを備えた、図5の配置の図8の断面を示しており、第二の中間スリーブは、第一の中間スリーブのフィン上に配置されてフィンに適合し、第二の工具は、第二の中間スリーブのフィン上に配置されている。
図11図11は、さらに中子砂で満たされた配置の、図9に対応する、図10の拡大詳細図を示している。
図12図12は、工具の改良型を備えた図11のさらなる拡大詳細図を示している。
図13図13は、図12の工具の改良型を使用する場合における溶接ポイントの周辺の拡大詳細図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
圧力波過給機(図示していない)におけるセルラーホイール10(図1及び図2に示す)は、セルラーホイール10の回転軸yに対して同心円状に配置された円筒形状の内部スリーブ12と、内部スリーブ12に対して同心円状に配置された円筒形状の外部スリーブ14と、内部スリーブ12と外部スリーブ14の間に、それらに対して同心円状に配置された2つの中間スリーブ18,20とを有している。内部スリーブ12と第一の中間スリーブ18の間の内部環状空間と、第一の中間スリーブ18と第二の中間スリーブ20の間の中間環状空間と、第二の中間スリーブ20と外部スリーブ14の間の外部環状空間とは、回転軸yに対して半径方向に配置された細長い片状のフィン16によって、多数のセル、すなわち内部セル22と、内部セル22に対して半径方向に分かれて配置された中間セル24と、内部セル22に対して再度半径方向に分かれて配置された外部セル26とに分割されている。セルラーホイール10は、直径D及び長さLなどにより示されるが、例えば100mmのものは、内部セル22を36個、中間セル24を54個、及び外部セル26を54個有している。内部スリーブ12、中間スリーブ18,20、外部スリーブ14、及びフィン16は、例えば0.4mmの均一の壁厚を有し、例えばインコネル2.4856などの高い耐熱性を備えた金属材料により構成される。回転軸yの方向において、前記部分は,セルラーホイール10の長さに合致する同一の長さLを有し、回転軸yに対して垂直に配置されたセルラーホイール10の2つの末端側の間に延びている。
【0035】
駆動シャフト30に対して同心円状に配置されたフランジスリーブ32は、図1及び2に示されているセルラーホイール10のための駆動シャフト30(図3に示される)上に位置している。駆動シャフト30の回転軸は、駆動シャフト30上に配置されているセルラーホイール10の回転軸yに対応している。続く説明では、図4−13を用いて、駆動シャフト30に配置されたフランジスリーブ32上のセルラーホイール10(図1及び2に示される)における段階的な構成を、より具体的に説明する。
【0036】
図4に示されるように、フランジスリーブ32を備えた駆動シャフト30は、円形の受け皿34の中央孔38に挿入されて固定される。このとき、フランジスリーブ32は、末端側の全周上において、基底面36のその駆動シャフト側末端に置かれ、セルラーホイール10の回転軸yに対応する駆動シャフト30の回転軸yが、基底面36上に垂直に配置される。
【0037】
図5及び図6によれば、内部スリーブ12は、その内部直径及び長さが、フランジスリーブ32の外部直径と長さに適合しており、フランジスリーブ32上に同心円状に配置され、フィン16を備えている。フィン16は、軸方向yにおいて受け皿34の基底面36と接するまで、事前に位置的に精密な様式で末端縁で内部スリーブ12に結合され、かつ自由末端縁が半径方向に外側に向かって突出している。また、内部スリーブ12は、NC−制御レーザービームによって前記フランジスリーブ32に溶接されている。
【0038】
円筒上の内部円周面41を備えた中空シリンダー形態の第一の工具40は、その直径が、第一の中間スリーブ18の内径に対応しており、長手方向の溝42を有している。長手方向の溝42は、位置的に精密な様式で配置され、内部円周面41から第一の工具40の内部に半径方向に設けられ、軸方向yに平行している。第一の工具40は、センタリング円環板39により基底面36上に位置的に精密な様式で配置されて固定され、センタリング円環板39の外部円周面は、受け皿34の基底面36から軸方向y又は孔38に対して同軸上に突出する環状縁37に当接している。センタリング円環板39の内径は、第一の工具40の外径に対応している。次に、半径方向外側に突出したフィン16に適合し、フランジスリーブ32に既に溶接された内部スリーブ12は、フィンのための導入補助器具により、受け皿34の基底面36に接するまで、軸方向yに駆動シャフト30を備えた第一の工具40に同心円状に導入される。ここで、延長部eを有する内部スリーブ12のフィン16は、第一の工具40の長手方向の溝42に案内される。
【0039】
図7に示されるように、内部セル22は、後の工程において配置される第一の中間スリーブ18の代わりに、第一の工具40の内部円周面41により予備的な様式で区切られており、成形材料混合物Fで満たされる。圧縮後、内部セル22を満たす成形材料混合物Fは、完全に硬化する。
【0040】
適切な成形材料混合物が、硬化工程のための触媒として第3級アミンを備えたポリウレタンベースの結合剤と共に、例えば平均粒子サイズが0.2〜0.36mmで、AFS数値が52〜45である、例えばケイ砂H32などの天然の又は合成の基礎成形材料から構成される。成形材料混合物は、市販のコアシューターによってセルに満たすことができ、ジョギング装置によって圧縮できる。
【0041】
成形材料混合物Fの硬化後、フランジスリーブ32上に構成された部分的に製造されたセルラーホイールは、第一の工具40から軸方向yに駆動シャフト30と共に放出される。内部スリーブ12のフィン16は、硬化された成形材料混合物Fから延長部eが突出している。内部スリーブ12のフィン16は、第一の中間スリーブ18の内径に対応する直径になるまで例えば研磨されることにより、延長部eが除去される。フィンは硬化された成形材料混合物内でしっかりと支えられるため、延長部eの除去は、研磨によって問題なく行うことができる。
【0042】
一方の側で第一の中間スリーブ18に結合し、半径方向外側に突出したフィン16を備えた第一の中間スリーブ18は、硬化された成形材料混合物Fによって包み込まれたフィン16の自由末端縁に位置的に精密な様式で軸方向yに配置される。次に、第一の中間スリーブ18は、レーザービームによって、内部スリーブ12のフィン16の自由末端縁に溶接される。内部スリーブ12は、ビードオンプレート溶接により内側に配置され、内部セル22の構成を備えている。
【0043】
円筒上の内部円周面51を備えた中空シリンダー形態の第二の工具50は、その直径が、第二の中間スリーブ20の内径に対応しており、長手方向の溝52を有している。長手方向の溝52は、位置的に精密な様式で配置され、内部円周面51から第二の工具50の内部に半径方向に設けられ、軸方向yに平行している。第二の工具50は、センタリング円環板により基底面36上に位置的に精密な様式で配置されて固定され、センタリング円環板の外部円周面は、受け皿34の基底面36から軸方向yに対して同軸上に突出する環状縁37に当接している。センタリング円環板の内径は、第二の工具50の外径に対応している。次に、半径方向外側に突出したフィン16に適合し、内部スリーブ12のフィン16に既に溶接された第一の中間スリーブ18は、フィンのための導入補助器具により、受け皿34の基底面36に接するまで、軸方向yに駆動シャフト30を備えた第二の工具50に同心円状に導入される。ここで、延長部eを有する第一の中間スリーブ18のフィン16は、第二の工具50の長手方向の溝52に案内される(図8)。
【0044】
図9に示されるように、中間セル24は、後の工程において配置される第二の中間スリーブ20の代わりに、第二の工具50の内部円周面51により予備的な様式で区切られており、成形材料混合物Fで満たされる。圧縮後、中間セル24を満たす成形材料混合物Fは、完全に硬化する。
【0045】
成形材料混合物Fの硬化後、フランジスリーブ32上に構成された部分的に製造されたセルラーホイールは、第二の工具50から軸方向yに駆動シャフト30と共に放出される。第一の中間スリーブ18のフィン16は、硬化された成形材料混合物Fから延長部eが突出している。第一の中間スリーブ18のフィン16は、第二の中間スリーブ20の内径に対応する直径になるまで例えば研磨されることにより、延長部eが除去される。
【0046】
一方の側で第二の中間スリーブ20に結合し、半径方向外側に突出したフィン16を備えた第二の中間スリーブ20は、第一の中間スリーブ18の中間セル24における硬化された成形材料混合物Fによって包み込まれたフィン16の自由末端縁に位置的に精密な様式で軸方向yに配置される。次に、第二の中間スリーブ20は、レーザービームによって、第一の中間スリーブ18のフィン16の自由末端縁に溶接される。第一の中間スリーブ18は、ビードオンプレート溶接により内側に配置され、中間セル24の構成を備えている。
【0047】
円筒上の内部円周面61を備えた中空シリンダー形態の第三の工具60は、その直径が、外部スリーブ14の内径に対応しており、長手方向の溝62を有している。長手方向の溝62は、位置的に精密な様式で配置され、内部円周面61から第三の工具60の内部に半径方向に設けられ、軸方向yに平行している。第三の工具60は、基底面36上に位置的に精密な様式で配置されて固定されている。ここで、第三の工具60は、受け皿34の基底面36から軸方向yに対して同軸上に突出する環状縁37に当接している。次に、半径方向外側に突出したフィン16に適合し、第一の中間スリーブ18のフィン16に既に溶接された第二の中間スリーブ20は、フィンのための導入補助器具により、受け皿34の基底面36に接するまで、軸方向yに駆動シャフト30を備えた第三の工具60に同心円状に導入される。ここで、延長部eを有する第二の中間スリーブ20のフィン16は、第三の工具60の長手方向の溝62に案内される(図10)。受け皿34の基底面36に接する第三の工具60は、周囲の環状縁37により、位置的に精密な様式で中央に置かれる。環状縁37は、孔38に対して同軸上に配置され、受け皿34の基底面36から突出している。
【0048】
図11に示されるように、外部セル26は、後の工程において配置される外部スリーブ14の代わりに、第三の工具60の内部円周面61により予備的な様式で区切られており、成形材料混合物Fで満たされる。圧縮後、中間セル26を満たす成形材料混合物Fは、完全に硬化する。
【0049】
成形材料混合物Fの硬化後、フランジスリーブ32上に構成された部分的に製造されたセルラーホイールは、第三の工具60から軸方向yに駆動シャフト30と共に放出される。第二の中間スリーブ20のフィン16は、成形材料混合物から延長部eが突出している。第二の中間スリーブ20のフィン16は、外部スリーブ14の内径に対応する直径になるまで例えば研磨されることにより、延長部eが除去される。
【0050】
外部スリーブ14は、硬化された成形材料混合物Fによって包み込まれた第二の中間スリーブ20のフィン16の自由末端縁に位置的に精密な様式で軸方向yに配置される。次に、外部スリーブ14は、レーザービームによって、第二の中間スリーブ20のフィン16の自由末端縁に溶接される。第二の中間スリーブ20は、ビードオンプレート溶接により内側に配置され、外部セル26の構成を備えている。
【0051】
その後に完成したセルラーホイール10を備えた駆動シャフト30は、まだセルラーホイール10のセル22,24,26に硬化された成形材料混合物Fが満たされているが、次に例えば550℃の温度で3時間、応力除去焼なましにさらされる。この加熱処理の間、基礎成形材料の熱再生が、同時に起こる。ここで、結合剤が分解され、結合剤から自由になった基礎成形材料は、容易にセル22,24,26から流れ出る。
【0052】
応力除去焼なましの間、フィンの末端縁が次のスリーブに結合する間に生じる不均一な応力場が、まとまって均一な応力場の平衡状態となる。その結果、続いてセルから基礎成形材料を除去した後、セルラーホイールは、ゆがみがなく、したがってバランスの取れたものとなる。
【0053】
第一の工具40の変形例(図12参照)において、ビーズ様の隆起部43が、長手方向の溝42の両側に配置される。このビーズ様の隆起部43は、内部円周面41から突出し、フィン16間に満たされて硬化される成形材料混合物Fにおける成形されたくぼみに対応する。図13に示す通り、前記くぼみ43は、第一の工具40が除去されて、第一の中間スリーブ18がフィン16の自由末端縁に押しつけられた後、溝47となる。フィン16は、延長部eの部分が短くなり、内部スリーブ12から半径方向に突出する。溝47は、フィン16の両側に配置され、その上に置かれる中間スリーブ18に対して開口している。第一の中間スリーブ18が、その後レーザービーム45によって、下方にある内部スリーブ12のフィン16の自由末端縁に、ビードオンプレート溶接46により溶接されると、溝47は、押し下げ具44による中間スリーブ18のフィン16の自由末端縁への十分な圧迫を可能にし、最適な溶接が行える。溝47の更なる有利な点は、酸化防止に用いられる不活性ガスを、中間スリーブ18の接触面に直接導けるという事実に見られる。中間スリーブ18は、フィン16の自由末端縁で酸化の影響を受けやすい。
【0054】
第一の工具40の変形例(図12及び13参照)が、第二の工具50及び第三の工具60にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10 セルラーホイール
12 内部スリーブ
14 外部スリーブ
16 フィン
18 第一の中間スリーブ
20 第二の中間スリーブ
22 内部セル
24 中間セル
26 外部セル
30 駆動シャフト
34 受け皿
36 受け皿34の基底面
37 受け皿34の環状縁
39 センタリング円環板
40 第一の工具
41 第一の工具40の内部円周面
42 第一の工具40の長手方向の溝
43 ビーズ様の隆起部
44 押し下げ具
45 レーザービーム
46 ビードオンプレート溶接
47 溝
50 第一の工具
51 第一の工具50の内部円周面
52 第一の工具40の長手方向の溝
60 第一の工具
61 第一の工具60の内部円周面
62 第一の工具40の長手方向の溝
e フィン16の延長部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13