特許第5873114号(P5873114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873114選択的に変性されたアミンから得られるポリアミド及びアミドアミン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873114
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】選択的に変性されたアミンから得られるポリアミド及びアミドアミン
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/54 20060101AFI20160216BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20160216BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C08G59/54
   C09D163/00
   C09D7/12
【請求項の数】19
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-558015(P2013-558015)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公表番号】特表2014-512425(P2014-512425A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】US2012024465
(87)【国際公開番号】WO2012125240
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2014年1月22日
(31)【優先権主張番号】13/047,854
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ルネ エドゥアール レイモン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アラン ドゥボウィク
(72)【発明者】
【氏名】ガミニ アナンダ ベダージ
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225869(JP,A)
【文献】 米国特許第03519582(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記構造
【化1】
(上式中、R1はC1〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R2及びR4は水素であり、R3はR1であるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC2〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分であって、ポリアミンと(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンの反応生成物である選択的に変性されたアミン成分、及び、
(2)脂肪酸成分、
の反応生成物を含み、前記変性されたアミン成分は下記式
【化2】
及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる式を有する少なくとも1種の化合物を含む、エポキシ樹脂用ポリアミド硬化剤組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸成分はモノマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、ポリマー脂肪酸、モノマー、ダイマー、トリマー及びポリマー脂肪酸のエステル、ならびに、それらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸成分は単官能脂肪酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸成分は0〜4つの不飽和の単位を含む、C8〜C22モノカルボン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸成分は0〜4つの不飽和の単位を含む、C16〜C22モノカルボン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(1)下記構造
【化3】
(上式中、R1はC1〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R2及びR4は水素であり、R3はR1であるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC2〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分であって、ポリアミンと(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンの反応生成物である選択的に変性されたアミン成分、及び、
(2)脂肪酸成分、
の反応生成物を含み、前記選択的に変性されたアミン成分はベンジル化アミンであり、該アミンは下記構造
【化4】
を有する少なくとも1種の成分を含む、エポキシ樹脂用ポリアミド硬化剤組成物。
【請求項7】
(1)下記構造
【化5】
(上式中、R1はC1〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R2及びR4は水素であり、R3はR1であるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC2〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分であって、ポリアミンと(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンの反応生成物である選択的に変性されたアミン成分、及び、
(2)脂肪酸成分、
の反応生成物を含み、前記変性されたアミン成分はベンジル化ジエチレントリアミン、ベンジル化トリエチレンテトラミン、ベンジル化テトラエチレンペンタミン、ベンジル化ペンタエチレンヘキサミン、ベンジル化ヘキサエチレンヘプタミン、ベンジル化アミノプロピルエチレンジアミン及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、エポキシ樹脂用ポリアミド硬化剤組成物。
【請求項8】
構造1
【化6】
(上式中、R1はC1〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R2及びR4は水素であり、R3はR1であるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC2〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分であって、ポリアミンと(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンを反応させることによる選択的に変性されたアミン成分を提供すること、及び、脂肪酸成分を提供すること、及び、
前記変性されたアミン成分及びダイマー脂肪酸もしくはエステル成分を反応させて、ポリアミド硬化剤を生成させること、
を含み、前記変性されたアミン成分は下記式
【化7】
及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる式を有する少なくとも1種の化合物を含む、エポキシ樹脂用ポリアミド硬化剤組成物の形成方法。
【請求項9】
前記脂肪酸成分はモノマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、ポリマー脂肪酸、モノマー、ダイマー、トリマー及びポリマー脂肪酸のエステル、ならびに、それらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪酸成分は単官能脂肪酸を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記脂肪酸成分は0〜4つの不飽和の単位を含む、C8〜C22モノカルボン酸を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記脂肪酸成分は0〜4つの不飽和の単位を含む、C16〜C22モノカルボン酸を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
構造1
【化8】
(上式中、R1はC1〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R2及びR4は水素であり、R3はR1であるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC2〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分であって、ポリアミンと(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンを反応させることによる選択的に変性されたアミン成分を提供すること、及び、脂肪酸成分を提供すること、及び、
前記変性されたアミン成分及びダイマー脂肪酸もしくはエステル成分を反応させて、ポリアミド硬化剤を生成させること、
を含み、前記選択的に変性されたアミン成分はベンジル化アミンであり、該アミンは下記構造
【化9】
を有する少なくとも1種の成分を含む、エポキシ樹脂用ポリアミド硬化剤組成物の形成方法。
【請求項14】
構造1
【化10】
(上式中、R1はC1〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R2及びR4は水素であり、R3はR1であるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC2〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分であって、ポリアミンと(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンを反応させることによる選択的に変性されたアミン成分を提供すること、及び、脂肪酸成分を提供すること、及び、
前記変性されたアミン成分及びダイマー脂肪酸もしくはエステル成分を反応させて、ポリアミド硬化剤を生成させること、
を含み、前記選択的に変性されたアミン成分はベンジル化ジエチレントリアミン、ベンジル化トリエチレンテトラミン、ベンジル化テトラエチレンペンタミン、ベンジル化ペンタエチレンヘキサミン、ベンジル化ヘキサエチレンヘプタミン、ベンジル化アミノプロピルエチレンジアミン及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、エポキシ樹脂用ポリアミド硬化剤組成物の形成方法。
【請求項15】
(1)請求項1に記載の硬化剤組成物、及び、
(2)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物、
の反応生成物を含む、アミン−エポキシ組成物。
【請求項16】
前記エポキシ組成物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアドバンス化ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物を含む、製造品。
【請求項18】
接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建造製品、フロアリング製品、エレクトロニクス部品又は複合材製品である、請求項17に記載の製造品。
【請求項19】
コーティング、プライマー、シーラント又は硬化性コンパウンドであり、金属、セラミック又はセメント系基材に適用される、請求項17に記載の製造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、選択的に変性されたアミンからポリアミド及びアミドアミンを形成するための組成物及びその形成方法に関する。より詳細には、本開示は選択的に変性されたアミンから形成されるポリアミド硬化剤及びエポキシ−アミン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド硬化剤はコーティング、接着剤、複合材及びフロアリング用途を含むエポキシの硬化剤のための多くの市場で広く利用されている。ポリアミド硬化剤は、二量体化脂肪酸(ダイマー酸)及びポリエチレンアミン、及び、通常、分子量及び粘度を制御するのを助ける特定の量のモノマー脂肪酸の反応生成物を含む。「二量体化」もしくは「ダイマー」又は「重合化」脂肪酸は、一般に、不飽和脂肪酸から得られる重合化酸を指す。それらは、T.E. Breuer, 'Dimer Acids', J.I. Kroschwitz (編), Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第4版, Wiley, New York, 1993, Vol. 8, pp.223-237により完全に説明されている。
【0003】
ダイマー酸は、通常、加圧下に、特定のモノマー不飽和脂肪酸、通常、トール油脂肪酸(TOFA)の酸触媒オリゴマー化により調製されるが、時々、ダイズ酸(soya acid)及び綿酸(cotton acid)などの他の植物酸が代用される。市販製品は、一般に、主として(>70%)ダイマー種からなり、残部は少量(一般に、5%未満)のモノマー脂肪酸とともに主としてトリマー及びより高級のオリゴマーからなる。また、ポリアミドを製造するために使用されている一般的な単官能不飽和C16〜C22脂肪酸としては、トール油脂肪酸(TOFA)又はダイズ脂肪酸などが挙げられる。
【0004】
米国特許第3,519,582号明細書(その全体を参照により本開示中に取り込む)は実施例「硬化剤E」におけるベンジル化TEPA系ポリアミドを開示している。米国特許第3,519,582号明細書はベンジル化を塩化ベンジルを用いて行い、それにより、非選択性ベンジル化アミンをもたらすことを開示している。さらに、米国特許第3,519,582号明細書のベンジル化生成物は続いて使用する前に除去されなければならない塩素を含有する所望されない副生成物を含む。
【0005】
米国特許第7,473,806号明細書(その全体を参照により本開示中に取り込む)はスチレンと反応されるポリアルキレンポリアミンを開示している。得られるアミンはベンジル化されており、エポキシの硬化剤としての使用に適する特性を有する幾つかの(ポリ)アミドアミンを調製するために使用されうる。しかしながら、第7,473,806号特許の生成物はスチレン化生成物が熱安定でなくかつポリアミドの製造の間に逆行反応が起こるという欠点に悩まされる。
【0006】
(ポリ)アミドポリアミンの調製のための幾つかの方法及びそのエポキシ樹脂用硬化剤としての使用は知られている。例えば、米国特許第2,705,223号明細書(その全体を参照により本開示中に取り込む)はポリマー脂肪酸及びポリエチレンアミンをベースとするポリアミドにより硬化されるエポキシ樹脂を記載している。欧州特許(EP)第134,970号明細書(その全体を参照により本開示中に取り込む)は同様のポリアミノアミドを記載している。英国特許(GB)第2,031,431号明細書(その全体を参照により本開示中に取り込む)は高分子量ポリオキシアルキレンポリアミン及びN,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンの混合物により硬化されるエポキシ樹脂を開示している。
【0007】
環境規制の結果として、また、コーティング中の溶媒レベルを低減する必要性がコーティング製造者及びその顧客により認識されてきているので、コーティング中に使用されるバインダーの粘度を低減する必要性が存在し、そしてエポキシ系コーティングも例外でない。しかしながら、現在知られている製品では、粘度が低減するときに、アミン水素当量(AHEW)も低下することが一般に判っている。
【0008】
エポキシ樹脂は、また、多くの粘度で入手可能である。一般的に使用されているエポキシ樹脂はビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、及び、DGEBAの追加のビスフェノールAによるアドバンスメントにより調製される高分子量オリゴマーをベースとするものである。このような樹脂は、通常、二官能であるか、又は、二官能よりも若干低く、そしてエポキシ当量(EEW)によって特徴付けられる。このように、当量が180であるビスフェノールA誘導化エポキシ樹脂は粘度が約8500mPa.s(8500cP)である。EEWを190へと若干高めると、粘度が約12,000mPa.s(12,000cP)へと増加する。300程度の当量では、エポキシ樹脂はかなり急速な速度で半固形分へと部分的に結晶化し、そして約400の当量を超えると、固形分であり、このため、その粘度は室温で測定することができない。
【0009】
コーティングの配合において、より高分子量のエポキシ樹脂、例えば、当量が450〜550であるような樹脂(タイプI樹脂として当該技術分野で知られている)を使用することがしばしば有利である。高分子量樹脂はコーティングの指触乾燥時間を劇的に低下させる。さらに、より高分子量のエポキシ樹脂はより低分子量のエポキシ樹脂よりも可とう性かつ耐衝撃性のコーティングを生じさせる。残念ながら、より高い分子量のエポキシ樹脂の高い粘度は適切な塗布粘度を達成するために、より高レベルの溶媒の使用を要求する。
【0010】
新たな規制はコーティングの配合物中の溶媒の量を低減することを要求し、また、そのコーティングの寿命の間の低い排出量値を要求する。米国、欧州、アジア及びその他の特定域内の規制は低粘度が非常に重要であるという望みを示し、ここで、<100g/lのVOCのペイント及びコーティングを開発することが望まれている。また、より低い粘度では、製造者が系のフィラー含有分を増加させることができ、そのため、コーティング配合物のコストを低減することができることを意味する。
【0011】
ポリミド硬化剤の技術分野で望まれる改良としては、低排出量、より低い粘度、誘導時間がほとんどなく又は全くないこと、従来技術の欠点に悩まされない経済的なプロセスで形成されうるエポキシ樹脂との透明ミックスが挙げられる。さらに、エポキシ生成物のさらなる望ましい特徴としては、悪条件で塗布されたときに改良された表面外観、良好な光沢及び硬度発生が挙げられる。
【発明の概要】
【0012】
本開示はポリアミド及びアミドアミン硬化剤を含む。ポリアミド及びアミドアミン硬化剤は(1)下記構造
【化1】
(上式中、RはC〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R及びRは水素であり、RはRであるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分、及び、(2)脂肪酸成分の反応生成物を含む。例示の脂肪酸成分は少なくとも1種のモノマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、ポリマー脂肪酸、モノマー、ダイマー、トリマー及びポリマー脂肪酸のエステル、ならびに、それらの組み合わせを含む。
【0013】
本開示の別の態様はポリアミド硬化剤組成物の形成方法を含む。その方法は、下記構造
【化2】
(上式中、RはC〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R及びRは水素であり、RはRであるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分を提供すること、脂肪酸成分を提供すること、及び、前記選択的に変性されたアミン成分及び脂肪酸成分を反応させて、ポリアミド硬化剤を生成させることを含む。例示の脂肪酸成分は少なくとも1種のモノマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、ポリマー脂肪酸、モノマー、ダイマー、トリマー及びポリマー脂肪酸のエステル、ならびに、それらの組み合わせを含む。
【0014】
本発明の別の開示は、1)硬化剤組成物及び2)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物の反応生成物を含む、アミン−エポキシ組成物を含む。硬化剤組成物は(1)下記構造
【化3】
(上式中、RはC〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R及びRは水素であり、RはRであるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分、及び、(2)脂肪酸成分の反応生成物を含む。例示の脂肪酸成分は少なくとも1種のモノマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、ポリマー脂肪酸、モノマー、ダイマー、トリマー及びポリマー脂肪酸のエステル、ならびに、それらの組み合わせを含む。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は本発明の原理の例として示す下記の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示はアルキル化ポリアミンのポリアミド及びアミドアミン組成物、硬化剤としての使用のためのポリアミド、アミドアミン組成物の製造方法を含む。本開示は、また、ポリアミド及びアミドアミンにより硬化されるエポキシ組成物をも含む。変性されたアミンはカルボン酸とともに使用されて、ポリアミドを製造することができ、ポリアミドは既存のアミドアミン及びポリアミドと比較して改良された特性を有する。さらに、これらの製品のエポキシ樹脂との使用は同様の(ポリ)カルボン酸と反応した非変性ポリアミンと反応した同様の樹脂と比較して、硬化樹脂の特性を改良している。選択的に変性されたアミンは、限定するわけではないが、アルキル化、ベンジル化及びスチレン化などの置換反応から形成されうる。
【0017】
アルキル化ポリアミンから形成される本開示の硬化剤は低い粘度、誘導時間がほとんどなく又は全くないこと、エポキシ樹脂との透明ミックス、より良好な表面外観及びより長いポット寿命を含む。例示のポット寿命は3日までのポット寿命を含む。アルキル化アミンの利点は、また、低減された誘導時間を含む。例示の誘導時間は誘導時間なし〜60分以下又は30分以下を含む。さらに、本開示の実施形態に係るポリアミド硬化剤は従来のポリアミドよりも低い粘度を有し、エンジニアリング用途、フィラメントワインディング、ラミネート及び低い粘度で長ポット寿命が要求される同様の用途に使用されうる。本開示に係る硬化剤の粘度範囲は約50Cp〜約100,000Cp又は約50Cp〜約3000Cpを含む。1つの特定の適切な粘度範囲は約50Cp〜約300Cpである。アルキル化アミンポリアミドはゆっくりとした硬化性を示し、反応が起こるときに混和性を改良する大きなキャスティングのための硬化剤を形成するのに特に適切である。
【0018】
ベンジル化ポリアミンから形成される本開示の硬化剤は低い粘度、熟成時間がほとんどなく又は全くないこと、エポキシ樹脂との透明ミックス、より良好な外観及び望ましい光沢及びペルソー(persoz)を含む。例示の組成物は光沢仕上げのクリア(すなわち、透明)光沢を有するエポキシとなる。ベンジル化アミンの利益は、また、低減された又は無くなった誘導時間を含む。例示の誘導時間は誘導時間なし〜60分以下又は30分以下を含む。さらに、本開示の実施形態に係るポリアミド硬化剤は従来のポリアミドよりも低い粘度を有する。本開示に係る硬化剤の粘度範囲は約50Cp〜約100,000Cp又は約50Cp〜約3000Cpを含む。1つの特定の適切な粘度範囲は約50Cp〜約300Cpである。さらに、エポキシ組成物中の本開示に係るポリアミド硬化剤の使用ではカルバメーション(carbamation)/ブラッシングがほとんど無く又は全くないフィルムを生じることができる。他の利点は、また、高い光沢及び高いペルソー(persoz)硬度を含む。光沢の例示の範囲は20°投射で約100〜約180光沢単位、又は、20°投射で約120〜約180光沢単位を含む。形成されるエポキシ材料の例示のペルソー硬度は250〜350秒又は約300〜350秒の硬度を含む。例示のアミドアミンの特定の実施形態は長いポット寿命、例えば、8時間までのポット寿命を有することができる。硬化剤のなおも他の実施形態は、その低い粘度のために、約300g/L未満の溶媒、約100g/L未満の溶媒又は約25g/L未満の溶媒でもって約0%揮発性有機炭素(VOC)で使用されうる。低減された又は無くされた溶媒含有分により、米国、欧州、アジア及びその他の場所での現在の及び期待される地域規制を遵守することが可能になる。さらに、低粘度は増加した装填物を可能とし、それにより、系のコストが低減できる。ベンジル化アミンポリアミドは得られる硬化剤と樹脂との混和性が高いために、硬化剤の形成に望ましい。ベンジル化アミンポリアミドの使用により生じる高い混和性は、プライマー、ペイントなどのコーティング用途及び同様のより低い粘度用途に特に適する。
【0019】
さらに、本開示により形成されるポリアミドは、一般に、より長いポット寿命を有するアミドアミンよりも短いポット寿命を有する。より長いポット寿命は、より低い発熱が期待される、特に、製造の間に高熱に耐えることができない電子部品のキャスティングにおいて特に有利である。
【0020】
以下の定義及び略語は本発明の詳細な説明を理解するのに当業者の助けになるように提供される。
ADA−アルキレンジアミン、限定するわけではないが、EDA及びPDAを含む。
AHEW−アミン水素当量
APADA−アミノプロピル化アルキレンジアミン、限定するわけではないが、APEDA及びAPPDAを含む。
APEDA−アミノプロピル化エチレンジアミン、
APPDA−アミノプロピル化プロピレンジアミン、
D230−Huntsman Corpからのポリ(アルキレンオキシド)、
DETA−ジエチレントリアミン、AHEW=21、
DGEBA−ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、EEW182〜192、
DER(商標)331-液体DGEBA、
EDA−エチレンジアミン、
EEW−エポキシ当量
エピコート(EPIKOTE)(登録商標)828(EPON(登録商標)828)−EEWが約184〜192である液状エポキシ樹脂、
IPDA−イソホロンジアミン、AHEW=43、
N3− N−3−アミノプロピルエチレンジアミン、
N4− N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、
N5− N,N,N’−トリス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、
N3−N5− N3、N4及びN5の混合物、
PDA−プロピレンジアミン、
PEHA−ペンタエチレンヘキサミン、
PHR− 樹脂100質量部当たりの部
TEPA−テトラエチレンペンタミン、
TETA−トリエチレンテトラミン、AHEW=25。
【0021】
「二量体化」もしくは「ダイマー」又は「重合化」脂肪酸は本開示中で使用されるときに、一般に、不飽和脂肪酸から得られる重合化酸を指す。ダイマー酸組成物の製造に使用される一般的な単官能不飽和脂肪酸としてはトール脂肪酸(TOFA)、ダイズ脂肪酸及び綿実脂肪酸が挙げられる。
【0022】
例示のポリアミド硬化剤組成物は、(1)構造1
【化4】
(上式中、RはC〜C16直鎖、環式及び枝分かれアルキル、アルケニル及びアルカリール基から選ばれ、R及びRは水素であり、RはRであるか又は水素であり、X、Y及びZは独立にC〜C10アルキレン、ヘキシレン及びシクロアルキレン基から選ばれ、そしてn=0、1、2、3、4、5、6又は7である)の少なくとも1種の多官能アミンを含む、選択的に変性されたアミン成分、及び、(2)脂肪酸成分の反応生成物として形成される。
【0023】
脂肪酸成分は、場合により、単官能脂肪酸を含む。別の実施形態において、上記式中のnは1、2、3又は4である。これらの両方の態様において、Rは好ましくはアルキルであり、例えば、エチル、イソプロピル、シクロベンジル又はベンジルであることができる。選択的に変性されたアミン成分の変性度は好ましくは1を超える。例えば、アルキル化度又はベンジル化度は好ましくは1を超える。X、Y及びZが10個以下の炭素又は好ましくは6個以下の炭素のアルキレン基、ヘキシレン基又はシクロアルキレン基である場合に、X、Y及びZは同一であっても又は異なっていてもよい。「選択的に変性」とは、変性又は置換が第一級アミン上で起こることを意味する。別の態様において、構造1は式RC−(式中、Rはアルキル基、フェニル基及びスチレン基からなる群より選ばれる部分である)を有するRを含む。
【0024】
ポリアミンは脂肪酸成分と反応する前にアルキル化される。例えば、限定するわけではないが、ポリアミンは約0.5:1〜約2:1の比でベンジル化されうるが、好ましくは約1.2:1〜約1.3:1の比でベンジル化されうる。
【0025】
より高級のポリエチレンポリアミンはポリアミド硬化剤の調製に使用されてよく、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)が使用されてよい。1つの実施形態において、使用されるポリエチレンポリアミンはTETAである。
【0026】
例示の変性されたアミン成分は以下から選ばれる式を有する少なくとも1種の化合物を含む。
【化5】
【0027】
1つの実施形態において、選択的に変性されたアミンを形成するためのポリアミンは(ポリ)アルデヒド又は(ポリ)ケトンとポリアミンを反応させることにより調製され、この反応に次いで、水素化工程を行い、生成されたポリイミンを還元し、そしていかなる逆行反応を停止する。本開示での使用のためのポリアミンは少なくとも2個のアミノ基を含み、1つのアミノ基は第一級アミノ基であり、もう一方のアミノ基は第二級アミノ基である。
【0028】
選択的に変性されたアミンを生成するためのポリアミンを生成するのに適する(ポリ)アルデヒド及び(ポリ)ケトンは以下の一般式2を有する。
【化6】
上式中、R及びRは独立に、水素、不飽和を含む又は含まない、芳香族、環式又は複素環式基を含む又は含まない、16個以下の炭素の直鎖もしくは枝分かれ鎖のアルキル基、−[CH(OH)]3−4又は−[CH(OH)]1−4−CHOHであり、そしてn=1〜2である。本開示の特定の実施形態において、使用されるケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトンなどのケトンが挙げられる。使用されるアルデヒドとしては、メタナール、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、2−エチルヘキサナール、ベンズアルデヒド、3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(バニラール又はバニリン)、p−トリルアルデヒド、アニスアルデヒドなどのアルデヒドが挙げられる。
【0029】
例示的な実施形態では、アルキル化ポリアミンを生成するための反応体は、限定するわけではないが、ベンズアルデヒド又は他の芳香族系アルデヒド又はケトンである。本開示の特定の実施形態において、使用されるポリアミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N−アミン)、N,N'−1,2−エタンジイルビス−1,3−プロパンジアミン(N−アミン)又はジプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、m−キシリレンジアミン(mXDA)又はp−キシリレンジアミンなどのアリール脂肪族ポリアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)又は4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミンなどの脂環式ポリアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)又はジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)又は3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの複素環式ポリアミン、アルコキシ基がオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ−1,2−ブチレン、オキシ−1,4−ブチレン又はそれらのコポリマーであることができるポリアルコキシポリアミン、例えば、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、1−プロパナミン、3,3’−(オキシビス(2,1−エチレンジイルオキシ))ビス(ジアミノプロピル化ジエチレングリコール)ANCAMINE(登録商標)1922A)、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、α−(2−アミノメチルエチル)ω−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D230、D−400)、トリエチレングリコールジアミン及びオリゴマー(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−504、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−512)、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、α,α'−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス(ω−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−511)、ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350、ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、a−ヒドロ−w−(2−アミノメチルエトキシ)エーテルと2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(3:1)(JEFFAMINE(登録商標)T−403)及びジアミノプロピルジプロピレングリコールからなるポリアミンが挙げられる。JEFFAMINE(登録商標)はHuntsman Petrochemical LLCの登録商標である。
【0030】
特に適切なポリアミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、1−プロパナミン、3,3’−(オキシビス(2,1−エチレンジイルオキシ))ビス−(ANCAMINE(登録商標)1922A)、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エチレンジイル))、α−(2−アミノメチルエチル)ω−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D230、D−400)、トリエチレングリコールジアミン(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−504)及びポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))α,α'−(オキシ(ジ−2,1−エタンジイル))ビス(ω−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−511)又はそれらの混合物からなるポリアミンが挙げられる。ANCAMINE(登録商標)はAir Products And Chemicals, Inc.の登録商標である。
【0031】
選択的に変性されたアミンを生成するのに適した追加のアミンは構造3
【化7】
(上式中、RはCHCHCHNHであり、R、R及びRは独立にH又はCHCHCHNHであり、そしてXはCHCH又はCHCHCHである)の1種以上の多官能アミンを少なくとも含むポリアミンである。1つの実施形態において、R及びRは同時にはHでない。選択的に変性されたアミンを生成するための例示の製品としては、下記の構造(I)〜(IV)の1つ以上が挙げられる。
【化8】
【0032】
上記のアミンは、変性を行う前に、他のポリアミン、特にあるポリエチレンポリアミンと混合することができる。
【0033】
例示の実施形態では、ポリアルキレンポリアミンは一般的な用途に特に適しているポリアミンである。ベンズアルデヒド及び同様の芳香族アルデヒドは、ポリアミド/アミドアミン硬化剤の調製のための望ましいアルキル化剤である。
【0034】
1つの実施形態では、例示的な実施形態に係るポリアミド硬化剤組成物を形成するために、選択的に変性されたアミン成分と反応するための脂肪酸成分は、圧力下に脂肪酸を重合し、その後、未反応のモノ脂肪酸の大部分を蒸留により除去することにより調製される。生成された脂肪酸成分は主に二量体酸を含むが、三量体及び幾つかのより高い酸を含む。二量体酸/三量体及びより高級の酸の比は、処理条件及び不飽和酸原料に応じて、変更しうる。ダイマー酸は、また、水素化などによりさらに処理されてよく、水素化は製品の不飽和度及び色を低減する。
【0035】
例示の脂肪酸成分はダイマー酸を含み、ダイマー酸含有分はGCにより測定して約50wt%〜約95wt%の範囲にあり、そしてトリマー及びそれより高級の酸の含有分は約3wt%〜約40wt%であり、残部はモノマー脂肪酸である。しかしながら、トリマー酸の量が増加するにつれて、最終生成物の所望の粘度を維持するために、ポリアミンの量及び/又はモノ脂肪酸の量を増加させる必要があることがある。というのは、三量体及びより高級脂肪酸のより高い官能価は、当業者に理解されうるとおり、より分岐をもたらしそして製品の分子量を増加させ、生成物をゲル化させることがあるからである。ダイマー酸のエステル、特にC〜Cアルキルエステルも本開示の実施形態に用いることができる。
【0036】
適切な脂肪酸成分は75wt%〜90wt%のダイマー酸の範囲のものであり、例えば、EMPOL(登録商標) 1018、EMPOL(登録商標) 1019、EMPOL(登録商標) 1029及びEMPOL(登録商標) 1022 (Cognis Corp.)、HARIDIMER(商標) 250S (Harima M.I.D., Inc.)、YONGLIN(商標) YLD-70 (Jiangsu Yonglin Chemical Oil Co.)及びUNIDYME(登録商標) 18 (Arizona Chemical Co.)を含む。EMPOL(登録商標)はCognis Corporationの登録商標である。UNIDYME(登録商標)はUnion Camp Corporationの登録商標である。
【0037】
ポリアミド硬化剤を形成するためにダイマー酸と組み合わせて使用するのに適した例示の脂肪酸成分としては、0〜約4個の不飽和単位を含むC〜C22、好ましくはC16〜C22モノカルボン酸が挙げられる。例示の脂肪酸成分は天然製品のトリグリセリドの由来の混合物が挙げられ、天然製品は、例えば、ババス、ヒマシ、ココナッツ、トウモロコシ、綿実、グレープシード、ヘンプシード、カポック、アマニ、野生マスタード、オイチシカ、オリーブ、オウリクリ(ouri-curi)、パーム、パーム核、ピーナツ、シソ、ケシ、ナタネ、ベニバナ、ゴマ、ダイズ、サトウキビ、ヒマワリ、トール、 ティーシード(teaseed)、キリ、ユチューバ(uchuba)又はクルミ油である。ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの純粋な脂肪酸又は純粋な脂肪酸の混合物も使用でき、これらの脂肪酸のいずれかの種々のエステル、特にC〜Cエステルも同様である。イソステアリン酸も有用であり、モノマー酸としても知られている。モノマー酸は、ダイマー酸の調製に由来する、主にC18モノ脂肪酸ストリームである。
【0038】
1つの実施形態において、ダイマー酸とブレンドされる脂肪酸はトール油脂肪酸及びダイズ脂肪酸である。所望であれば、他の単官能及び多官能カルボン酸は反応組成物のダイマー酸部分に導入されてよい。
【0039】
さらに、低分子量の他の単官能もしくは二官能カルボン酸又は他の多官能アミンは特殊な特性を向上させるために、変性アミン成分と反応させることができる。低分子量(ポリ)カルボン酸を用いることによる例示の特性はHEWの低下であり、それはエポキシを硬化するために使用されるポリアミド又はアミドアミンの量を減少させ、非変性アミンの使用もHEWを調整するのを助け、また、系のコストを低減し、さらに、ある場合には、耐薬品性を改良し、そしてスチールなどの基材の保護を助ける。
【0040】
付加に適する非変性アミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N−アミン)、N,N'−1,2−エタンジイルビス−1,3−プロパンジアミン(N−アミン)又はジプロピレントリアミン、m−キシリレンジアミン(mXDA)又はp−キシリレンジアミンなどのアリール脂肪族ポリアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)又は4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミンなどの脂環式ポリアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)又はジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)又は3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの複素環式ポリアミン、アルコキシ基がオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ−1,2−ブチレン、オキシ−1,4−ブチレン又はそれらのコポリマーであることができるポリアルコキシポリアミン、例えば、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、1−プロパナミン、3,3’−(オキシビス(2,1−エチレンジイルオキシ))ビス(ジアミノプロピル化ジエチレングリコール、ANCAMINE(登録商標)1922A)、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エチレンジイル))、α−(2−アミノメチルエチル)ω−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D230、D−400)、トリエチレングリコールジアミン及びオリゴマー(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−504、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−512)、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、α,α'−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス(ω−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−511)、ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350、ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、a−ヒドロ−w−(2−アミノメチルエトキシ)エーテルと2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(3:1)(JEFFAMINE(登録商標)T−403)及びジアミノプロピルジプロピレングリコールが挙げられる。
【0041】
非変性ポリアミンとしての使用のための特に適切なポリアミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、1−プロパナミン、3,3’−(オキシビス(2,1−エチレンジイルオキシ))ビス−(ANCAMINE(登録商標)1922A)、ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))、α−(2−アミノメチルエチル)ω−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D230、D−400)、トリエチレングリコールジアミン(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−504)及びポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル))α,α'−(オキシ(ジ−2,1−エタンジイル))ビス(ω−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−511)又はそれらの混合物からなるポリアミンが挙げられる。
【0042】
他の実施形態はポリアミド硬化剤組成物に加えて、上記のアミンのベンジル化又はアルキル化形態などの変性されたアミン成分の添加を含む。
【0043】
本開示の実施形態に係るポリアミド硬化剤組成物は加熱下での反応により形成される。1つの実施形態において、選択的に変性されたポリアミン成分及び脂肪酸成分は室温から約100℃の範囲の温度で混合される。反応のための適切な反応体の比は分子基準で約1:1の比の脂肪酸/選択的に変性されたポリアミンである。脂肪酸/選択的に変性されたポリアミンの比の他の適切な範囲としてはモノマー脂肪酸については分子基準で1:1〜2:1、ダイマー脂肪酸については分子基準で1:2〜2:3又は1:2〜3:4が挙げられる。その後、反応混合物から水が凝縮されるときに、熱を加えて、温度を上げる。特定の量の水を除去するまで加熱を続け、所望のアミド及びイミダゾリンもしくはテトラヒドロピリミジン含有分を有する生成物を生じる。場合により、真空を特にプロセスの後段で適用して、混合物からの水の除去を助けることができる。真空条件下に特に問題となることがある気泡発生を低減するために、少量の脱泡剤をポリアミド組成物に添加しうる。適切な脱泡剤としては、コポリマー組成の一部として2−エチルヘキシルアクリレートを含む種々のアクリル系コポリマー、種々のポリシロキサンコポリマーなどが挙げられる。
【0044】
縮合反応の間に、下記にテトラヒドロピリミジンについて示すとおり、一部のアミン官能性アミドは環化して、さらに水を損失しながらイミダゾリンもしくはテトラヒドロピリミジンを生成することができる。
【化9】
【0045】
反応を実質的にすべてのカルボン酸基が反応するまで続ける。その段階で、ある量のイミダゾリンもしくはテトラヒドロピリミジンは5モル%以下の量で生成した。選択的に変性されたポリアミンのアルキル化変性により、ポリアミド又はアミドアミンの粘度がより低くなる。さらに、一般に、本開示の方法により生成されるアミドアミンは生成されるポリアミドよりも低い粘度を有する。さらに、ベンジル化アミドアミン及びポリアミドから形成される硬化剤はアルキル化アミンよりも低い粘度を有する。
【0046】
エポキシ製品又は製造品を形成するために、変性されたアミン成分及び脂肪酸成分の反応により形成される、ポリアミド硬化剤又はハードナーは約2個以上の1,2−エポキシ基を1分子当たりに含むポリエポキシ化合物であるエポキシ樹脂と組み合わされる。このようなエポキシドはY. Tanaka, "Synthesis and Characteristics of Epoxides", in C. A. May, ed., Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)に記載されており、それを参照により取り込む。ポリアミド硬化剤及びエポキシ樹脂のこのような組み合わせは硬化可能なエポキシ系を構成する。
【0047】
特に適切なポリエポキシ化合物はビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアドバンス化ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル及びエポキシ−ノボラック樹脂である。
【0048】
本開示の実施形態に係る、選択的に変性されたアミン成分及び脂肪酸成分の反応の反応生成物はベンジル化されていないアミンを用いて製造されるポリアミドよりも低い粘度を有する。しかしながら、ある高粘度のポリアミドはこのようにして形成されうる。ジもしくは多官能エポキシ樹脂を含む本開示のポリアミドのこのような配合物の粘度を低下させるために、エポキシ樹脂は一部を単官能エポキシドにより変性されうる。このようにして、粘度はさらに低減され、そのことは、容易な塗布をなおも可能とし、又は、より高い分子量のエポキシ樹脂の使用を可能にしながら、配合物中の顔料の量を増加させるなど、特定の場合に有利であることがある。有用な単官能エポキシドの例としては、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、フェノール、クレゾール、tert−ブチルフェノール及び他のアルキルフェノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール及びC〜C14アルコールのグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
本開示の例示のポリアミドはエポキシ基/アミン水素の理論比が約1.5:1〜約1:1.5の範囲としてエポキシ樹脂と配合される。より好ましいのは1.2:1〜1:1.2の範囲である。
【0050】
なお、上述したような二官能及び単官能エポキシ樹脂と適度の割合のアミン水素を反応させることにより、本開示のポリアミドを変性することも可能である。これは当業者に周知の一般的な方法であり、一般的に「アダクション(adduction)」と称される。二官能及び単官能エポキシ樹脂を用いてアダクションすることにより、エポキシ樹脂とポリアミドとの相溶性を向上させ、それによって、上記のようなブラッシュ(blush)、カーボネーション及び滲出のような問題を軽減し、ポット寿命を増大させることができる。一方、そのような変性は、特に二官能エポキシ樹脂の場合には、粘度を増加させる傾向があり、特定の場合には、硬化速度を低下させることができる。アダクションのための特に有用なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアドバンス化ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、及び、フェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール及び他のアルキルフェノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール及びC〜C14アルコールのグリシジルエーテルなどが挙げられる。このことは、アミンとエポキシ成分を混合し、塗布前に、通常は15〜60分間、当業者に誘導時間として知られている一定期間放置することにより、適度なレベルのアダクションを達成することも可能である。
【0051】
ある状況では、本開示のポリアミドをベースとした配合物におけるエポキシ−アミン硬化反応のためのいわゆる促進剤を含ませることが有利なことがある。このような促進剤はH. Lee及びK. Neville, Handbook of Epoxy Resins. McGraw-Hill, New York, 1967に記載されている。好適な促進剤としては、様々な有機酸、アルコール、フェノール、第三級アミン、ヒドロキシルアミンなどが挙げられる。特に有用な促進剤としてはベンジルアルコール、フェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、t−ブチルフェノール、クレゾールなどのアルキル置換フェノール、ビスフェノールA、サリチル酸、ジメチルアミノメチルフェノール、ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。通常、このような促進剤はバインダーの合計質量を基準として、10%以下の量、より通常には、5%未満の量で使用される。
【0052】
ある状況では、本開示のポリアミドをベースとした配合物中にエポキシ−アミンネットワークのための可塑剤を含ませることが有利なことがある。これは、可塑剤の非存在下で、組成物のガラス転移温度、Tgが、耐溶媒性及び耐薬品性ならびに引張強度などの特定の要件を満たすために必要な反応度に達する前に有意に周囲温度を超える場合に特に有用である。このような可塑剤は当業者に周知であり、D.F. Cadogan及びCJ. Howick, 'Plasticizers', J.I. Kroschwitz,編, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第4版, Wiley, New York, 1996, Vol. 19, pp. 258-290により詳細に記載されている。特に有用な可塑剤としては、ベンジルアルコール、ノニルフェノール及びフタル酸の様々なエステルが挙げられる。アミン硬化剤との反応を最小限にするためにエステル系可塑剤は、通常、エポキシ樹脂と同じパッケージに含まれるであろう。他の特に有用なクラスの可塑剤は炭化水素樹脂であり、このような炭化水素樹脂としては、EPODIL (登録商標)Lなどのトルエン−ホルムアルデヒド縮合物、NIKANOL(登録商標)Y50などのキシレン−ホルムアルデヒド縮合物、クマロン−インデン樹脂、及び、当業者によく知られた多くの他の炭化水素樹脂改質剤が挙げられる。EPODIL(登録商標)はAir Products And Chemicals, Inc.の登録商標である。NIKANOL(登録商標)はMitsubishi Gas Chemical Company, Inc.の登録商標である。
【0053】
本開示のポリアミド及びエポキシ樹脂から調製されるコーティングは、溶媒、フィラー、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロピー剤、流動及びレベリング助剤、脱泡剤などを含むコーティング配合物の当業者によく知られている種々の成分と配合されうる。溶媒の混合物は、しばしば、バインダー成分の溶解性を維持しつつ、系の最良の蒸発速度プロファイルを与えるように選択されるであろう。好適な溶媒としては、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル、ケトン、エーテル、アルコール、グリコール、グリコールエーテルなどが挙げられる。ある量のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルプロピルケトン、メチルアミルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトンは配合物中において特に有用であり、乾燥速度をほとんど又は全く犠牲にすることなく、ポット寿命を向上させるために使用されうる。エステル系溶媒が配合物に含まれている場合には、アミン硬化剤との反応を最小限にするために、エポキシ樹脂を含むパッケージ中で溶媒を配合することが通常必要である。時には、本開示の実施に用いられるエポキシ樹脂は溶媒留分形態中で提供され、同様に、本開示のポリアミド、又は、これらのポリアミドと組み合わせて使用される他の硬化剤を溶媒留分形態として使用することも価値があるであろう。
【0054】
本開示のコーティングは、スプレイ、ブラシ、ローラー、ペイントミットなどを含む任意の数の技術によって塗布されうる。当技術分野でよく理解されているように、多くの基材は、適切な表面調製とともに本開示のコーティングを塗布するのに適している。このような基材としては、限定するわけではないが、多くのタイプの金属、特にスチール及びアルミニウム、並びに、コンクリート及びセラミックスが挙げられる。
【0055】
本開示のコーティングは約0℃〜約50℃の範囲の周囲温度で塗布し、そして硬化することができ、10℃〜40℃の温度が好ましい。所望であれば、これらのコーティングは150℃以上の温度で強制的に硬化させることもできる。
【0056】
[多官能エポキシ樹脂]
本開示のアミン−エポキシ組成物は、硬化剤組成物と、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物との反応生成物を含む。多官能エポキシ樹脂は、本開示中で使用されるときに、2個以上の1,2−エポキシ基を一分子当たりに含む化合物を記載する。このタイプのエポキシド化合物は当業者によく知られており、Y. Tanaka, "Synthesis and Characteristics of Epoxides", C. A. May,編, Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)に記載されており、それを参照により本開示中に取り込む。
【0057】
本開示中での使用に適する1つのクラスのエポキシ樹脂は二価フェノールのグリシジルエーテルを含む多価フェノールのグリシジルエーテルを含む。例示的な例としては、限定するわけではないが、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジフルオロフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(商業的にビスフェノールAとして知られる)、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン(商業的にビスフェノールFとして知られており、2−ヒドロキシフェニル異性体を種々の量で含むことができる)のグリシジルエーテルなど、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらに、下記の構造のアドバンス化二価フェノールも本開示において有用である:
【化10】
(上式中、mは整数であり、そしてRは、上記に記載された二価フェノールのような、二価フェノールの二価炭化水素基である)。この式による材料は、二価フェノールとエピクロロヒドリンの混合物を重合すること、又は、二価フェノールのジグリシジルエーテルと二価フェノールとの混合物をアドバンス化させることによって調製することができる。任意の所与の分子中において、mの値は整数であるが、材料は常に混合物であり、それは、必ずしも整数ではないmの平均値によって特徴付けられる。mの平均値が0〜約7であるポリマー材料は本開示の1つの態様で使用することができる。
【0058】
別の態様では、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルであるエポキシノボラック樹脂は、本開示による多官能エポキシ樹脂として用いることができる。さらに別の態様では、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂はビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAのアドバンス化又は高分子量形態、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又は、それらの任意の組み合わせである。DGEBAのより高分子量形態又は誘導体は、過剰のDGEBAをビスフェノールAと反応させて、エポキシ末端生成物を得る、アドバンスメント法によって調製される。このような製品のエポキシ当量(EEW)は約450〜3000又はそれ以上の範囲である。これらの製品は室温で固体であるから、それらはしばしば固体エポキシ樹脂と呼ばれる。
【0059】
DGEBA又はアドバンス化DGEBA樹脂は、しばしば、その低コストと一般的に高い性能特性の組み合わせの理由から、コーティング配合物中で使用される。EEWが約174〜約250の範囲にあり、より一般的には約185〜約195の範囲にある商業グレードのDGEBAは容易に入手可能である。これらの低分子量では、エポキシ樹脂は液体であり、しばしば、液体エポキシ樹脂と呼ばれる。純粋なDGEBAはEEWが174であるから、液体エポキシ樹脂のほとんどのグレードは若干ポリマーであることが当業者によって理解される。一般にアドバンスメント法によって調製される、EEWが250〜450である樹脂は、室温で固体と液体の混合物であるため、半固体エポキシ樹脂と呼ばれる。一般的には、固形分を基準としてEEWが160〜750である多官能樹脂は本開示に有用である。別の態様において、多官能エポキシ樹脂はEEWが約170〜約250の範囲にある。
【0060】
最終使用用途に応じて、エポキシ成分を変性することによって、本開示の組成物の粘度を低減させることが有益なことがある。例えば、依然として容易な塗布を可能にする又はより高い分子量のエポキシ樹脂の使用を可能にするようにしながら、配合物又は組成物中の顔料の量の増加を可能にするように粘度を減少させることができる。このため、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ成分に、単官能エポキシドをさらに含ませることは本開示の範囲内である。モノエポキシドの例としては、限定するわけではないが、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、及び、フェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、C〜C14アルコールのグリシジルエーテルなど、又はそれらの組み合わせが挙げられる。多官能エポキシ樹脂は、また、希釈剤が水、有機溶媒又はそれらの混合物である、溶液又はエマルジョン中に存在することができる。
【0061】
[種々の添加剤]
本開示の組成物は種々の製造品を製造するために使用することができる。製造品の製造中の要件又は製造品の最終使用用途の要件に応じて、種々の添加剤は特定の性質にあつらえるために配合物及び組成物中に使用することができる。これらの添加剤としては、限定するわけではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、フィラー、ガラス又は炭素繊維などの繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロピー剤、流動又はレベリング助剤、界面活性剤、脱泡剤、殺生物剤又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。当該技術分野で知られている他の混合物又は材料は組成物又は配合物中に含まれてよく、そして本開示の範囲内であることが理解される。
【0062】
[製造品]
本開示は、本開示中に記載される組成物を含む製造品に関する。例えば、製造品は、硬化剤組成物及びエポキシ組成物の反応生成物を含む、アミドアミン−エポキシ組成物を含むことができる。硬化剤組成物は、2個以上の活性アミン水素を有するアミドアミンの少なくとも1つの接触生成物を含むことができる。その生成物は、多官能アミン触媒、触媒、促進剤、反応性又は非反応性希釈剤とさらに配合されうる。エポキシ組成物は少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むことができる。場合により、各種添加剤は、製造品を製造するために使用される組成物又は配合物中に、所望の特性に応じて、存在することができる。これらの添加剤としては、限定するわけではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、フィラー、ガラス又は炭素繊維などの繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロピー剤、流動又はレベリング助剤、界面活性剤、脱泡剤、殺生物剤又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0063】
本開示に係る製造品としては、限定するわけではないが、コーティング、接着剤、建造製品、フロアリング製品又は複合材製品が挙げられる。これらのアミン−エポキシ組成物をベースとするコーティングは無溶媒型であるか、又は、特定の用途に対する必要性に応じて、水又は有機溶媒などの希釈剤を含むことができる。コーティングは、ペイント及びプライマーの用途に使用するための様々なタイプ及び量の顔料を含むことができる。アミン−エポキシコーティング組成物は、金属基材上に適用される保護コーティングで使用するために、40〜400μ、好ましくは80〜300μ、より好ましくは100〜250μの範囲の厚さを有する層を含む。さらに、フロアリング製品又は建造製品での使用のために、コーティング組成物は、製品のタイプ及び要求される最終特性に応じて、50〜10,000μの範囲の厚さを有する層を含む。限定された機械的及び化学的耐性を提供するコーティング製品は、50〜500μ、好ましくは100〜300μの範囲の厚さを有する層を含み、一方、高い機械的及び化学的耐性を提供する自己レベリングフロアなどのコーティング製品は1,000〜10,000μ、好ましくは、1,500〜5,000μの範囲の厚さを有する層を含む。
【0064】
多くの基材は当業者によく知られているとおりの適切な表面調製とともに本開示のコーティングの適用に適している。このような基材としては、限定するわけではないが、コンクリート、及び、スチール及びアルミニウムなどの種々のタイプの金属及び合金が挙げられる。本開示のコーティングは、船舶、橋梁、工業プラント及び装置ならびに床を含む、大きな金属物体又はセメント質基材の塗装又はコーティングに適している。
【0065】
本開示のコーティングは、スプレー、ブラシ、ローラー、ペイントミットなどを含む任意の数の技術によって適用することができる。本開示の非常に高い固形分含量又は100%固形分のコーティングを適用するためには、複数成分スプレイ塗布装置を用いることができ、この塗布装置では、アミン及びエポキシ成分はスプレイガンにつながるライン内でスプレイガン自体の中で混合され、又は、それら2つの成分がスプレイガンを出てくるときに混合される。この技法を使用すると、配合物のポット寿命に関する制約を緩和することができる。ポット寿命は、通常、アミン反応性及び固形分が増加するにつれて減少する。加熱された複数成分装置を用いて成分の粘度を低減することができ、それによって塗布の容易さを向上させることができる。
【0066】
建築及びフロアリング用途は、建築産業で一般的に使用されているコンクリート又は他の材料と組み合わせて、本開示のアミン−エポキシ組成物を含む組成物を含む。本開示の組成物の用途としては、限定するわけではないが、ASTM C309−97(参照により本開示中に取り込む)で参照されるような新規又は古いコンクリートのためのプライマー、深浸透性プライマー、コーティング、硬化性コンパウンド及び/又はシーラントとしての使用が挙げられる。プライマー又はシーラントとして、本開示のアミン−エポキシ組成物はコーティングの塗布前に接着結合性を改善するために表面に塗布されうる。それはコンクリート又はセメント用途に関係するときに、コーティングは保護もしくは装飾層又はコートを形成するための表面上の適用のために使用される薬剤である。亀裂注入及び亀裂充填製品も、本開示中に記載される組成物から調製することができる。本開示のアミン−エポキシ組成物は、ポリマー又は変性セメント、タイルグラウトなどを形成するためのコンクリートミックスなどのセメント系材料と混合することができる。本開示中に記載されるアミン−エポキシ組成物を含む複合材製品又は物品の非限定的な例は、ガラス繊維強化複合材及び他の成形物が挙げられる。
【0067】
本開示での特定の用途において、これらの硬化剤組成物は、エポキシフィラメント巻きタンク、インフュージョン複合材、例えば、風車ブレード、航空宇宙用接着剤、工業用接着剤、電子部品を製造する際に用途を有し、また、他の関連用途にて用途を有する。複合材は異種物質から作られる材料であり、樹脂技術の場合には、複合材は、得られる製品の一般的特性を改良するようにフィラー及び繊維などの強化材料を添加することにより樹脂を強化する、樹脂含浸系を指す。これらの材料はともに作用するが、互いに不溶性である。この場合、バインダー成分はエポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を含む。プリプレグ、ラミネート、フィラメント巻、編組、引抜、ウエットレイ及びインフュージョン複合材などの多くのタイプの複合材用途が存在する。樹脂注入又は樹脂トランスファーは複合材モールドに樹脂を導入する方法であって、樹脂導入前に強化材料は既にモールド内に配置されておりかつモールドは閉止されている。真空支援などのこの方法に対する変更が存在する。
【0068】
複合材料を製造するために、アミン−エポキシ組成物中において、選択的に変性されたポリアミンのアミドアミンを使用することの利点は、TEPAなどのポリアミンから得られるアミドアミンと比較して、長いポット寿命及び改良された相溶性である。これらの製品は長いポット寿命を有するが、エポキシとの良好な混和性を欠いており、系が透明になる前に、そのための誘導時間を必要とする。これらの製品はフィラメント巻及びインフージョン用途に使用可能である。フィラメント巻(パイプ)のために(ポリ)アミドアミンを使用すると、有意なEH&S懸念のある非常にマニュアル的方法である(TETA及びエポキシ樹脂を混合すると、その後、労働者はディスペンサーから混合物のカップを取り、マニュアル的に巻ガラス繊維の上にそれを注ぎ、巻パイプ上で液体を流動させるために、パイプに沿って手袋をはめた手を走らせる)。より長いポット寿命では、プロセスは浴を用いて自動化され、また、より低い硬化剤の蒸気圧により、その取扱がより安全になる。
【0069】
接着剤における利点は、この場合にも、より長いポット寿命である。このため、部品全体にわたって接着剤ビードを配置するのに長い時間を要するときに、部品が結合される前に表皮形成(skin-over)がない。表皮形成は大型航空機及び風車ブレードの主要な懸念である。より低い表皮形成性に加えて、ベンジル基のために白化(blush)が低減される。低い粘度により、高いフィラー量が可能となる。もし部品上に配置された接着剤が、最終的に接着剤が部品上に分配される前に硬化し始め又は白化し始めるならば、2つのピースを一緒に加圧するときに、最初のビードでより弱い結合となるであろう。
【実施例】
【0070】
本開示は以下の実施例によりさらに例示され、実施例は本発明の範囲に限定を課すものと解釈されるべきではない。本開示の説明を読んだ後に、本発明の精神又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な他の態様、実施形態、変更及び均等を当業者に示唆するであろう。
【0071】
以下の実施例では、ポリアミンは1.2及び1.3:1の比でベンジル化される。これは限定ではなく、他の比も良好な結果をもって使用することができる。
【0072】
[例1]
[N−3−アミノプロピルエチレンジアミン、N,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン及びN,N,N'−トリス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンの混合物の合成]
[中間体の合成]
1リットルバッチ反応器に、236g(3.93モル)のエチレンジアミンを添加し、それに、5gの水を添加し、そして内容物を60℃に加熱した。この混合物に、417g(7.86モル)のアクリロニトリルを5時間かけて添加した。アクリロニトリルの添加が完了したら、反応器の温度をさらに1.5時間維持した。
【0073】
[中間体の水素化]
1リットルバッチ反応器に、100gのイソプロパノール、6.6gの水及び7.5gのラニーのCo触媒を装填した。反応器を、混入空気の痕跡を除去するために、最初に窒素で、そしてその後に水素で圧力サイクルさせた。圧力サイクルの後、反応器を5.5MPaの水素で充填し、その後、120℃に加熱した。前の工程からの500gの生成物を4時間かけて反応器に加えた。この間に、反応器の圧力を1リットルバラストタンクから水素を供給することにより、5.5Mpaに維持した。添加が完了したら、温度を120℃にさらに1時間維持し、水素化の完了を確実にした。反応器を室温まで冷却し、そして生成物をろ過した。生成物を面積%GCで分析し、それは6%のN−3−アミノプロピルエチレンジアミン、80%のN,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、及び11%のN,N,N'−トリス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン及び2%のN,N,N',N'−テトラキス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンを含んでいた。例1の上記方法により製造された生成物を以下において例1として指定した。
【0074】
[例2]
[アミン1モル当たり1.3モルのベンズアルデヒドの量(平均)での例1のベンジル化物の合成]
325gの例1からのポリアルキレン生成物例1(1.857モル)及び6gのPd/Cを1リットルオートクレーブ反応器に入れた。反応器をシールし、続いて、窒素及び次に水素でパージして反応器から空気を除去した。15〜20分の時間にわたって、256gのベンズアルデヒド(2.414モル)を反応器に添加した。ベンズアルデヒドの添加が完了した後、反応器の内容物をさらに15分間撹拌し又は反応が完了するまで攪拌し、その時点で反応の発熱が収まり始めた。この時点で、反応器を水素で120psiまで加圧し、反応器を80℃に加熱した。水素の吸収速度が遅くなったとき、圧力を800psiまで上昇させ、温度を120℃まで上昇させた。水素の吸収速度が0.034MPa/分(0.5psi/分)未満に下がるまで水素化プロセスを続けた。総水素化時間は約5時間であった。反応器を60℃まで冷却しそして減圧し、反応生成物をろ過して触媒を除去した。20mmHgの真空及び120℃以下の温度で操作しているロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。得られた反応生成物は例1のベンジル化アミンであった。AHEW、粘度、アミン価の特性を表1に示す。
【0075】
[例3]
[アミン1モル当たり1.2モルのベンズアルデヒドの量でのDETA(ジエチレントリアミン)のベンジル化物の合成]
例3は例2で記載したのと同一の方法を用いたが、ポリアルキレン成分としてDETAを用いた。ベンズアルデヒド/DETAのモル比は1.2/1.0モル/モルであった。これらの反応体比は表1のベンジル化度によって示される。さらに、表1はベンジル化DETAのAHEW、粘度及びアミン価の特性を示す。
【0076】
[例4]
[アミン1モル当たり1.3モルのベンズアルデヒドの量(平均)でのTETA(トリエチレンテトラミン)のベンジル化物の合成]
例4は例2で記載したのと同一の方法を用いたが、ポリアルキレン成分としてTETAを用いた。ベンズアルデヒド/アミンのモル比は1.3:1.0モル/モルであった。さらに、表1はベンジル化DETAのAHEW、粘度及びアミン価の特性を示す。
【0077】
[例5]
[アミン1モル当たり1.3モルのベンズアルデヒドの量(平均)でのDETA/TETA(70%ジエチレントリアミン及び30%トリエチレンテトラミン)のベンジル化物の合成]
例5は例2で記載したのと同一の方法を用いたが、ポリアルキレン成分としてDETA及びTETAの混合物を用いた。ベンズアルデヒド/アミンのモル比は1.3:1.0モル/モルであった。さらに、表1はベンジル化DETAのAHEW、粘度及びアミン価の特性を示す。
【表1】
【0078】
例6〜9において、例2〜5のベンジル化アミンを用いてアミドアミンを調製した。
【0079】
[例6]
[ベンジル化DETAのトール油脂肪酸との反応によるアミドアミンの合成]
141.75g(0.5モル)gのTOFA(トール油脂肪酸)を、スターラー、熱電対及び蒸留アウトレットを装備した700ml反応器で装填する。TOFAを60℃にまで加熱する。例3からの362.5gのベンジル化DETA(1.718モル)を30分で添加する。添加の間に、発熱を観測し、87℃の温度となる。スターラーの速度を250rpmに調節し、ゆっくりとした窒素流により、より効率的に水を除去するのを助けることができる。最初の水は240℃までで常圧で除去した。回収された最初の水は181.7℃のポット温度で出てきて、スチルヘッドの温度は98.4 ℃であった。温度は、その後、240℃に上げた。その温度に達したとき、このようにして120分間保持した。その時点で、5.5gの水を回収した。生成物を200℃まで冷却した。次いで、圧力を80mmHgに下げ、温度を再び240℃に上昇させた。生成物を240℃で120分間維持した。その時までに、総計で7.5gの水を回収した。生成物を冷却し、取り出した。表2に、AHEW、粘度、アミン価及びガードナー色数を示す。
【0080】
[例7]
[ベンジル化TETAのトール油脂肪酸との反応によるアミドアミンの合成]
例7は例4からのベンジル化TETAを用いた。4.255gのTOFA(0.892モル)を、410g(1.559モル)の例4からのベンジル化TETAとともに装填した。同一のプロセスを例6のとおりに行った。総計で13.5gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンの通常のAHEW値(約115)と一致するものとした。さらに、表2はアミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0081】
[例8]
[例1のベンジル化物のトール油脂肪酸との反応によるアミドアミンの合成]
例8は例2からの例1のベンジル化物を用いた。56.7gのTOFA(0.198モル)を、150g(0.5226モル)の例2からの例1のベンジル化物とともに装填した。同一のプロセスを例6のとおりに行った。総計で5.5gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンのAHEW値(約95)と一致するものとした。さらに、表2はアミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0082】
[例9]
[ベンジル化DETA/TETA(比率70/30)のトール油脂肪酸(670,666)との反応によるアミドアミンの合成]
例9は例5からのベンジル化DETA/TETA混合物を70:30の比で用いた。567gのTOFA(1.98モル)を、1450g(6.502モル)の例5からのベンジル化DETA/TETAとともに装填した。同一のプロセスを例6のとおりに行った。総計で71.6gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンのAHEW値(約90)と一致するものとした。さらに、表2はアミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。ポリアミドも同一のベンジル化アミンを用いて製造した。
【0083】
例10〜13において、ポリアミノアミドを例2〜5のベンジル化アミンを用いて調製した。
【0084】
[例10]
[ベンジル化DETAのダイマー脂肪酸とトール油脂肪酸との混合物との反応によるポリアミノアミドの合成]
18.0g(0.063モル)TOFA(トール油脂肪酸)及び162g(0.283モル)のダイマー脂肪酸を、スターラー、熱電対及び蒸留アウトレットを装備した700ミリリットル反応器に装填した。TOFA及びダイマー脂肪酸を60℃まで加熱した。例3からの265.9gのベンジル化DETA(1.26モル)を30分間かけて添加する。添加の間に、発熱を観測し、温度が88℃に達する。スターラーの速度を250rpmに調整し、ゆっくりとした窒素流により、より効率的に水を除去するのを助けることができる。最初の水を240℃まで常圧で除去した。回収された最初の水は、189℃のポット温度で出てきて、スチルヘッド温度は88℃であった。その後、温度を240℃に上げた。その温度に達したとき、このような温度に120分間維持した。その時点で、21.3gの水を回収した。生成物を冷却し、そして取り出した。表2に、AHEW、粘度、アミン価及びガードナー色数を示す。
【0085】
[例11]
[ベンジル化TETAのダイマー脂肪酸とトール油脂肪酸との混合物との反応によるポリアミノアミドの合成]
例11は例4からのベンジルTETAを用いた。9.0gのTOFA(0.0315モル)を81g(0.142モル)のダイマー脂肪酸とともに装填した。例4からの202gのベンジル化TETAを添加した。同一のプロセスを例10のとおりに行った。総量で6.0gの水を除去した。表2は、アミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0086】
[例12]
[例1のベンジル化物のダイマー脂肪酸とトール油脂肪酸との混合物との反応によるポリアミノアミドの合成]
例12は例2からのベンジル化アミンを用いた。10.0gのTOFA(0.035モル)を90g(0.157モル)のダイマー脂肪酸とともに装填した。例2からの224gのベンジル化アミンを混合物に添加した。同一のプロセスを例10のとおりに行った。総量で5.6gの水を除去した。表2は、アミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0087】
[例13]
[ベンジル化DETA/TETAのダイマー脂肪酸とトール油脂肪酸との混合物との反応によるポリアミノアミドの合成]
例13は例5からのDETA/TETAの70/30の比のベンジル化混合物を用いた。130.75gのTOFA(0.4572モル)を130.75gのダイマー脂肪酸(0.2286モル)とともに装填した。例5からの250.3g(1.223モル)のベンジル化DETA/TETAを添加した。同一のプロセスを例10のとおりに行った。総量で29gの水を除去した。表2は、アミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【表2】
【表3】
【0088】
[アルキル化ポリアミン]
例22〜25において、アルキルアミンを調製した(表5を参照)。これらのアルキル化ポリアミンを例26〜31のアミドアミン及びポリアミドの製造に使用した(表6を参照されたい)。
【0089】
[例22]
[アミン1モル当たりに1.2モルのアセトンの量(平均)での例1のアルキル化物の合成]
例1で形成された396.4gのポリアルキレン生成物(2.25モル)、2gのPd/C及び2gのPt/Cを1リットルオートクレーブ反応器に入れた。反応器をシールし、圧力を各々窒素で3回サイクルし、空気を除去し、そして各々水素で3回サイクルし、窒素を除去した。15〜20分の時間にわたって、156gのアセトン(2.700モル)を反応器に添加した。アセトンの添加が完了した後、反応器の内容物をさらに15分間撹拌し、又は、反応が完了するまで攪拌し、その時点で、反応の発熱が収まり始めた。その後、容器を60℃に加熱し、750〜1000rpmで攪拌しながら水素で300psig(21.4atm)まで加圧した。温度を60℃で90分間維持し、次いで、温度及び圧力をさらに100分間、120℃及び800psigに上げて、反応を完了させた。反応器を40℃に冷却し、その後、生成物を取り出した。反応生成物をろ過して触媒を除去した。20mgHgの真空下及び120℃までの温度で操作しているロータリーエバポレータを用いて水を除去した。得られた反応生成物は、例22のベンジルアミンであった。AHEW、粘度、アミン価の特性は表5に示すとおりである。
【0090】
[例23]
[アミン1モル当たりに1.3モルのメチルエチルケトン(MEK)の量での例1のアルキル化物の合成]
例23は例22に記載されるのと同一のプロセスを用いたが、この例では、ポリアルキレン成分をMEKと反応させた。MEK:例1のモル比は1.3/1.0モル/モルであった。これらの反応体比は表5中に1−メチルプロピル化度により示している。表5は、得られる生成物のAHEW、粘度及びアミン価の特性を示す。
【0091】
[例24]
[アミン1モル当たりに1.2モルのシクロヘキサノンの量(平均)での例1のアルキル化物の合成]
例24は例22に記載されるのと同一のプロセスを用いたが、この例では、ポリアルキレン成分をシクロヘキサノンと反応させた。シクロヘキサン:例1のモル比は1.2/1.0モル/モルであった。表5は、ベンジル化DETAのAHEW、粘度及びアミン価の特性を示す。
【0092】
[例25]
[アミン1モル当たりに1.2モルのアセトンの量(平均)でのDETAのアルキル化物の合成]
例25は例22に記載されるのと同一のプロセスを用いたが、この例では、ポリアルキレン成分をDETA(ジエチレントリアミン)とした。アセトン:DETAのモル比は1.2/1.0モル/モルであった。表5は、ベンジル化DETAのAHEW、粘度及びアミン価の特性を示す。
【表4】
【0093】
[例26]
[例1のジ−イソプロピル化物のトール油脂肪酸及びダイマー脂肪酸との反応によるポリアミドの合成]
226.8g(0.79モル)のTOFA(トール油脂肪酸)を、スターラー、熱電対及び蒸留アウトレットを装備した700ミリリットル反応器中に装填する。TOFAを60℃まで加熱する。例22からの例1のイソプロピル化物227.2g(1.0モル)を、その後、30分間かけて添加する。添加の間に、発熱を観測し、それにより、温度が85℃となる。スターラーの速度を250rpmに調整し、ゆっくりとした窒素流により、より効率的に水を除去するのを助けることができる。最初の水は、常圧で240℃までで除去した。その温度に達したとき、そのような温度に120分間維持した。その時点で28.5gの水を回収した。生成物を冷却し、そして取り出した。AHEW、粘度、アミン価及びガードナー色数を表6に示す。少量のイミダゾリン及びテトラヒドロピリミジンを形成したときに真空を用いなかった。粘度がすでに低かったので少量の生成物は十分であった。
【0094】
[例27]
[例1のメチルエチルブチル化物のトール油脂肪酸との反応によるアミドアミンの合成]
例27は例23からのMEK/例1を用いた。186gのTOFA(0.650モル)を、例23からの例1のメチルエチルブチル化物233.5g(0.935モル)とともに装填した。同一のプロセスを例26のとおりに行った。総量で23.9gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンの通常のAHEW値(約115)と一致するようにした。表6は、アミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0095】
[例28]
[例1のメチルエチルブチル化物のトール油脂肪酸及びダイマー脂肪酸との反応によるポリアミドの合成]
例28は例23からのMEK/例1を用いた。10gのTOFA(0.035モル)を90.0g(0.157モル)のダイマー脂肪酸、174.3gの例23からの例1のメチルエチルブチル化物とともに装填した。同一のプロセスを例26のとおりに行った。総量で5.4gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンの通常のAHEW値(約115)と一致するようにした。表6は、ポリアミドのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0096】
[例29]
[例1のシクロヘキシル化物のトール油脂肪酸及びダイマー脂肪酸との反応によるポリアミドの合成]
例29は例24からのシクロヘキサノン/例1を用いた。10gのTOFA(0.035モル)を90.0g(0.157モル)のダイマー脂肪酸、192.5gの例24からの例1のシクロヘキシル化物とともに装填した。同一のプロセスを例26のとおりに行った。総量で7.5gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンの通常のAHEW値(約115)と一致するようにした。表6は、ポリアミドのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0097】
[例30]
[イソプロピル化DETAのトール油脂肪酸との反応によるアミドアミンの合成]
例30は例25からのアセトン/ジエチレントリアミン(DETA)を用いた。255.15gのTOFA(0.892モル)を175.5g(1.125モル)の例25からのイソプロピル化ジエチレントリアミンとともに装填した。同一のプロセスを例26のとおりに行った。総量で73.2gの水及びアミンを除去し、蒸留物はアミン価が500mgKOH/gであった。使用量は既存のアミドアミンの通常のAHEW値(約115)と一致するようにした。表6は、アミドアミンのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【0098】
[例31]
[例1のイソプロピル化物のトール油脂肪酸及びダイマー脂肪酸との反応によるポリアミドの合成]
例31は例22からのアセトン/例1を用いた。10gのTOFA(0.035モル)を90.0g(0.157モル)のダイマー脂肪酸、136.2gの例22からの例1イソプロピル化物とともに装填した。同一のプロセスを例26のとおりに行った。総量で5.0gの水を除去した。使用量は既存のアミドアミンの通常のAHEW値(約115)と一致するようにした。表6は、ポリアミドのAHEW、粘度、アミン価の特性及びガードナー色数を示す。
【表5】
【表6】
【0099】
[ベンジル化APEDA−エポキシ組成物を用いて製造されるアミドアミン及びポリアミドアミンから調製されるコーティング]
例14〜21において、例6〜13から得られる硬化性組成物を用いてコーティングを形成する。
【0100】
例32〜37において、例26〜31から得られる硬化性組成物を用いてコーティングを形成する。
【0101】
表3は例14〜21において使用されるアミン−エポキシ組成物を要約している。例えば、例14の組成物は33.1gのEPON(登録商標)828エポキシ樹脂(ビスフェノールA型液体エポキシ樹脂、Hexion Specialty Chemicalsより入手可能)及び16.9gの例6の硬化剤組成物であった。EPON(登録商標)はHexion Specialty Chemicals, Inc.の登録商標である。表1に示すとおり、例1はEDAとアクリロニトリルの反応生成物を含み、その後、還元性水素化を行った硬化剤組成物であった。例1はポリアミンの生成を伴い、そして結果的に表1に含まれないことが注目される。例14〜1において示された硬化剤及びそのそれぞれの量を表3のとおりに用いた。
【0102】
表7は例32〜37において使用されるアミン−エポキシ組成物を要約している。例えば、例32の組成物は29.1gのEPON(登録商標)828エポキシ樹脂(ビスフェノールA型液体エポキシ樹脂、Hexion Specialty Chemicalsより入手可能)及び20.9gの例26の硬化剤組成物であった。例36は極端に長いポット寿命のために実施できなかった。例32〜37中に示す硬化剤及びそのそれぞれの量を表7のとおりに使用した。
【0103】
表2及び6からの新規のアミドアミン又はポリアミドアミン硬化剤の粘度を、既存の製品から得られたものに対して比較して、ほとんどの場合に、粘度がより低いことが判る。ベンジル化又はアルキル化アミンの使用により、より低い粘度のアミンを調製することができ、それにより、使用者がより多量のフィラーを使用しそして安価な製品を製造することができる。幾つかの他の用途において、それは基材のより良好な浸入を可能にし、それにより、より良好な物理的接着力を可能にする。ポット寿命に関して、ベンジル化又はアルキル化アミンの使用はゲル化時間を増加させる。その増加はポリアミドの製造におけるアミンのベンジル化又はアルキル化及びその使用量による。
【0104】
他の魅力的な部分はポリアミドが誘導時間を必要とせず、混合物は2つの成分の混合後に透明になる。これにより、より低い量の滲出が起こるであろうから、より良好な仕上げが提供される。
【0105】
アミド−エポキシ組成物の乾燥時間を表3及び7中に要約する。ベック−コーラ(Beck-Koller)レコーダを用いて、ASTM D5895に従って、乾燥時間を23℃及び65%相対湿度(RH)で決定した。その手順は、約6ミルの湿潤膜厚でアミド−エポキシ組成物でガラスパネルをコーティングすることを含んだ。長時間又は短時間の乾燥時間を有するコーティング組成物の選択は最終使用用途の要求により決まる。一般に、表3中の結果は、本発明の例14〜21のコーティングが使用されるベンジル化度によって種々の乾燥時間を有することを示した。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0106】
ペルソー振り子硬度による硬度の発生。表3は23℃及び65%相対湿度(RH)で1日後、3日後及び7日後のペルソー振り子硬度試験結果を示す。コーティングを約8ミルの湿潤膜厚でガラスパネルに塗布し、そしてISO1522により試験した。表3中で示すとおり、ベンジル化アミンを用いて製造した本発明の例14〜21の配合物は7日後に高ペルソーを発生した。
【0107】
さらに、本発明の14〜21のコーティングは表4に示す既存の製品よりもずっと速く硬度が発生した。
【0108】
表3は23℃及び50%相対湿度(RH)での1日、3日及び7日後の20°光沢試験結果を示す。示した結果は10の測定値の平均である。コーティングを約8ミルの湿潤膜厚でガラスパネルに塗布し、そしてASTM D523により試験した。光沢をガードナー光沢計を用いて、20°角で光沢値を測定した。黒色カードボード背景上に配置されたガラスで測定を行った。表3中で示すとおり、本発明の例の各配合物の各々は高い光沢値を有し、このことは原則的に、硬化剤と樹脂との良好な混和性による。
【0109】
表7中の結果は、アルキル化アミンをベースとする製品がベンジル化アミンをベースとする製品と同一の特性を有しないことを示す。理論に拘束されるつもりはないが、この相違は樹脂との混和性の特定の欠如から生じるものと考えられる。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0110】
形成される製品は長いポット寿命を示し、それは大きなコーティング及び成型品に有用である。エポキシ反応は発熱反応である。大きな量の熱は急速な硬化を生じさせる。これらの製品で経験される長い硬化時間では、反応熱がより長い時間にわたって生じそして分散する時間を有するので、大きなキャスティングの製造を援助するであろう。
【0111】
幾つかの我々の既存の商品を下記に添付される表4に示す。これらの製品に対して、すべてが誘導時間を要求することを判っている。膜の特性は塗布時間(10分間又は60分間)で広く変化する。適用60分後に室温で7日間の硬化後に良好なレベルに硬度が発生するが、塗布10分後の系は悪い結果を示す。
【表15】
【表16】
【0112】
表4に示す光沢結果に関して、結果は開示の製品で得られるよりもずっと望ましくない。
【0113】
本発明は好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、そしてその要素を均等物で置換することができることを当業者は理解するであろう。さらに、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、本発明の教示に対して多くの変更を特定の状況又は材料を適用するようになされてよい。それゆえ、本発明は本発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることなく、本発明は添付の特許請求の範囲に当たるすべての実施形態を包含するであろうことが意図される。