特許第5873145号(P5873145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873145
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】貫通配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/768 20060101AFI20160216BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20160216BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H01L21/90 B
   H01L21/88 J
   H01L21/88 T
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-140772(P2014-140772)
(22)【出願日】2014年7月8日
(62)【分割の表示】特願2010-243873(P2010-243873)の分割
【原出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-187404(P2014-187404A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小内 聡
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/070826(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/134386(WO,A1)
【文献】 特開平09−199593(JP,A)
【文献】 特開2009−295719(JP,A)
【文献】 特表2011−519487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/768
H01L 21/3205
H01L 23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一方の面に、第一絶縁層を介して、Al、Cu、Al−Si合金及びAl−Si−Cu合金からなる群から選択される少なくとも1種の第一金属からなる導電部を形成する第一工程と、
前記半導体基板の他方の面側から、前記第一絶縁層が露呈するように貫通孔を形成する第二工程と、
少なくとも前記貫通孔の内壁面および底面に第二絶縁層を形成する第三工程と、
前記第二絶縁層及び前記第一絶縁層のうち、四フッ化炭素、六フッ化硫黄及びアルゴンを含む混合ガスからなるエッチングガスを用いたドライエッチング法により、前記貫通孔の底面に位置する部分を除去し、前記導電部を露呈する第四工程と、
前記第二絶縁層上に導電層を形成し、該導電層を前記導電部と電気的に接続する第五工程と、を有する貫通配線基板の製造方法であって、
前記第一工程において、前記第一絶縁層と前記導電部との間に、TiN、TiW及びCrからなる群から選択される少なくとも1種の第二金属からなるバリア金属膜を形成し、
前記第四工程において、前記第二絶縁層に引き続いて前記第一絶縁層をエッチングし、前記エッチングガスを用いて、前記第一絶縁層に引き続いて、前記バリア金属膜をエッチングし、前記バリア金属膜に引き続いて、前記導電部の一部をエッチングして前記第二絶縁層、前記第一絶縁層及び前記バリア金属膜のうち、前記貫通孔の底面に位置する部分を除去し、前記導電部を露呈する際に、エッチングにより除去された前記第二金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第二副生成物、エッチングにより除去された前記第一金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第一副生成物を、前記貫通孔の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘って堆積させ、前記貫通孔の下部側が厚く、前記貫通孔の上部に向かうに従って次第に薄くなるような曲線状にテーパー部を形成し、
前記第五工程において、前記貫通孔の前記底面部に対して、前記第二絶縁層上に形成された前記テーパー部上に前記導電層を形成することを特徴とする貫通配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層はSiO、前記バリア金属膜はTiN、前記導電部はAl−Si−Cuからなり、
前記第四工程における、前記エッチングガスを用いたドライエッチングにおいて、前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層/前記バリア金属膜/前記導電部の選択比を1.5〜3.0とすることを特徴とする請求項1に記載の貫通配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第四工程と前記第五工程の間に、少なくとも前記副生成物を被覆するように金属膜を形成する第六工程をさらに備えること、を特徴とする請求項1または2に記載の貫通配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の電子機器の高機能化が進み、これらの機器に用いられるICやLSI等の電子デバイス、及びOEICや光ピックアップ等の光デバイスにおいて、デバイス自体の小型化や高機能化を図るための開発が各所で進められている。例えば、このようなデバイスを積層して設ける技術が提案されている。具体的には、何らかの機能ユニットが一方の面に設けられている基板に対し、この基板の他方の面から一方の面に貫通し、この一方の面側に形成された電極に接続する貫通配線を備えた貫通配線基板がある。
【0003】
このような貫通配線基板において、配線形成の際、貫通孔におけるバリア層/シ−ド層のステップカバレッジを向上させることが、配線の品質面で重要である。
特に、貫通孔が垂直に形成され、その孔形状に対し絶縁材料も同様に垂直に形成されている場合、シード層上に導電層を形成する際、その底面部付近において導電材料が薄くなり、導通不良や断線などの不良を起こしやすくなるという問題がある。
【0004】
バリア/シ−ド層のステップカバレッジ改善には、次に述べる2つの方向性がある。
(1)ロングスロー・スパッタ法やコリメ−ト・スパッタ法の採用、あるいは有機金属CVD法の使用などによるバリア/シ−ド層形成方法の改善。
(2)貫通孔形成条件の改善。
【0005】
しかしながら、特にTSV(Through Silicon via)に代表される裏面と表面の電気的接続を取る貫通配線基板では、貫通孔の深さが100〜200μm程度と絶対値が大きく、アスペクト比の大きな貫通孔にバリア/シ−ド層を形成することが求められるため、スパッタ条件などの変更、すなわち上記(1)のみでは改善が難しい。
【0006】
一方、上記(2)の改善方法として、例えば複数回の犠牲層エッチングを繰り返してテーパー化を実施する技術(例えば、特許文献1参照)や、副材料を使用して平坦化し、材料間のエッチングレ−ト差を利用して貫通孔形状をテーパー化させる技術(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、犠牲層エッチングを複数回適用する場合は、膜の堆積回数、エッチング回数が増加するため、コストが上昇する問題がある。また副材料を使用した形状改善法もある。工数は材料塗布の一工程が増えるのみで、合理化されたプロセスであるが、大きな段差を緩和することは難しく、TSVへの適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2616380号公報
【特許文献2】特開平11−274299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、貫通孔の底面部付近において、導電層をカバレッジ良く形成することができ、接触不良などがなく、電気的な安定性を向上させた貫通配線を、工程やコストを増加することなく形成できる貫通配線基板の製造方法を提供することを第一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の貫通配線基板の製造方法は、半導体基板の一方の面に、第一絶縁層を介して、Al、Cu、Al−Si合金及びAl−Si−Cu合金からなる群から選択される少なくとも1種の第一金属からなる導電部を形成する第一工程と、前記半導体基板の他方の面側から、前記第一絶縁層が露呈するように貫通孔を形成する第二工程と、少なくとも前記貫通孔の内壁面および底面に第二絶縁層を形成する第三工程と、前記第二絶縁層及び前記第一絶縁層のうち、四フッ化炭素、六フッ化硫黄及びアルゴンを含む混合ガスからなるエッチングガスを用いたドライエッチング法により、前記貫通孔の底面に位置する部分を除去し、前記導電部を露呈する第四工程と、前記第二絶縁層上に導電層を形成し、該導電層を前記導電部と電気的に接続する第五工程と、を有する貫通配線基板の製造方法であって、前記第一工程において、前記第一絶縁層と前記導電部との間に、TiN、TiW及びCrからなる群から選択される少なくとも1種の第二金属からなるバリア金属膜を形成し、前記第四工程において、前記第二絶縁層に引き続いて前記第一絶縁層をエッチングし、前記エッチングガスを用いて、前記第一絶縁層に引き続いて、前記バリア金属膜をエッチングし、前記バリア金属膜に引き続いて、前記導電部の一部をエッチングして前記第二絶縁層、前記第一絶縁層及び前記バリア金属膜のうち、前記貫通孔の底面に位置する部分を除去し、前記導電部を露呈する際に、エッチングにより除去された前記第二金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第二副生成物、エッチングにより除去された前記第一金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第一副生成物を、前記貫通孔の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘って堆積させ、前記貫通孔の下部側が厚く、前記貫通孔の上部に向かうに従って次第に薄くなるような曲線状にテーパー部を形成し、前記第五工程において、前記貫通孔の前記底面部に対して、前記第二絶縁層上に形成された前記テーパー部上に前記導電層を形成することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1において、前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層はSiO、前記バリア金属膜はTiN、前記導電部はAl−Si−Cuからなり、前記第四工程における、前記エッチングガスを用いたドライエッチングにおいて、前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層/前記バリア金属膜/前記導電部の選択比を1.5〜3.0とすることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の貫通配線基板の製造方法は、請求項1または2において、前記第四工程と前記第五工程の間に、少なくとも前記副生成物を被覆するように金属膜を形成する第六工程をさらに備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る貫通配線基板の製造方法では、前記第二絶縁層及び前記第一絶縁層のうち、前記貫通孔の底面に位置する部分を除去し、前記導電部を露呈する際に(第四工程)、前記第二絶縁層に続いて前記導電部の一部をエッチングするとともに、エッチングにより除去された前記第一金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第一副生成物を、前記貫通孔の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘って堆積させ、テーパー部を形成している。このため、次に、前記第二絶縁層上に導電層を形成し、該導電層を前記導電部と電気的に接続する(第五工程)際に、貫通孔の底面部がテーパー化されているので、所定の厚さを有する導電層をカバレッジ良く安定して形成することができる。
また、本発明の方法によれば、貫通孔底部に堆積した副生成物を剥離する工程をなくすと共に、孔底部のテーパー形成を追加工程なく実施することも可能であり、コスト増加を抑えられる。
これにより本発明では、貫通孔の底面部付近において、接触不良などがなく、電気的な安定性を向上させた貫通配線を、工程やコストを増加することなく形成可能な貫通配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の貫通配線基板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2】本発明の貫通配線基板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3】本発明の貫通配線基板の製造方法を模式的に示す断面図。
図4】本発明の貫通配線基板の製造方法を模式的に示す断面図。
図5】本発明の方法により製造された貫通配線基板の断面SEM写真。
図6】本発明の貫通配線基板の一構成例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る貫通配線基板の製造方法及び貫通配線基板の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図4は、本発明の貫通配線基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
本発明の貫通配線基板の製造方法は、半導体基板10の一方の面10aに、第一絶縁層11を介して、第一金属からなる導電部(たとえば、電極、配線など)13を形成する第一工程と、前記半導体基板10の他方の面10b側から、前記第一絶縁層11が露呈するように貫通孔20を形成する第二工程と、少なくとも前記貫通孔20の内壁面および底面に第二絶縁層21を形成する第三工程と、前記第二絶縁層21及び前記第一絶縁層11のうち、フッ素ガスを含有するエッチングガスを用いたドライエッチング法により、前記貫通孔20の底面に位置する部分を除去し、前記導電部13を露呈する第四工程と、前記第二絶縁層21上に導電層25を形成し、該導電層25を前記導電部13と電気的に接続する第五工程と、を有する貫通配線基板1の製造方法であって、前記第四工程において、前記第二絶縁層21に続いて前記導電部13の一部をエッチングするとともに、エッチングにより除去された前記第一金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第一副生成物を、前記貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面(内側面)部に亘って堆積させ、テーパー部22を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明では、前記第二絶縁層21及び前記第一絶縁層11のうち、前記貫通孔20の底面に位置する部分を除去し、前記導電部13を露呈する際に(第四工程)、前記第二絶縁層21に続いて前記導電部13の一部をエッチングするとともに、エッチングにより除去された前記第一金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第一副生成物を、前記貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘って堆積させ、テーパー部22を形成している。これにより、前記第二絶縁層21上に導電層25を形成し、該導電層25を前記導電部13と電気的に接続する(第五工程)際に、貫通孔20の底面部がテーパー化されているので、所定の厚みを有する導電層25をカバレッジ良く安定して形成することができる。これにより本発明の貫通配線基板1の製造方法では、貫通孔20の底面部付近において、接触不良などがなく、電気的な安定性を向上させた貫通配線を有する貫通配線基板1を製造可能である。
また、本発明の方法によれば、貫通孔20底部に堆積した副生成物を剥離する工程をなくすと共に、孔底部のテーパー形成を追加工程なく実施することが可能であり、コスト増加を抑えられる。
以下、工程順に説明する。
【0016】
(1)半導体基板10の一方の面10aに、第一絶縁層11を介して、第一金属からなる導電部13を形成する(第一工程)。
まず、図1(a)に示すように、半導体基板10を用意し、その一方の面10a(図では下面)に第一絶縁層11を介して導電部13(I/Oパッド)を形成する。
【0017】
本発明を適用することが可能な貫通配線基板(デバイス)としては、イメージセンサやMEMSデバイスといった、基板表面に三次元構造を持つアクティブエリア(例えばイメージセンサにおけるマイクロレンズ等、MEMSデバイスにおける可動導電部等)を有するデバイスが挙げられる。本発明は、ウェハレベルパッケージ技術を用いた製造にも好適に用いることができる。
【0018】
半導体基板10は、Siの他に、SiGe,GaAs等の化合物半導体からなる半導体ウェハでもよく、半導体ウェハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップであってもよい。半導体基板10が半導体チップである場合は、まず、半導体ウェハの上に、各種半導体素子やIC等を複数組、形成した後、チップ寸法に切断することで複数の半導体チップを得ることができる。
第一絶縁層11としては、例えば、酸化珪素(SiO)等を用いることができる。
【0019】
導電部13の材質としては、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)合金、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金等の導電性に優れる材質が好適に用いられる。
なお、本実施形態では、導電部13として、Al−Si−Cuを、2.0μmの厚みに形成している。
【0020】
また、本実施形態では、前記第一絶縁層11と前記導電部13との間に、第二金属からなるバリア金属膜12を形成している。このようなバリア金属膜12は、例えばTiN、TiW、Cr等がからなる。ここでは、バリア金属膜12をTiNから構成している。
さらに、導電部13の前記バリア金属膜12が配された側と反対側に反射防止膜14が配されている。反射防止膜14は、バリア金属膜12と同様の材料からなる。また、半導体基板10の一面10a側に、前記導電部13を覆うように、例えば酸化珪素(SiO)等からなる第三絶縁層15が配されている。
【0021】
(2)前記半導体基板10の他方の面側から、前記第一絶縁層11が露呈するように貫通孔20を形成する(第二工程)。
次に、図1(b)に示すように、例えばDRIE(Deep Reactive Ion Etching) 法によって、半導体基板10に、他面10b側から該半導体基板10を貫通し、前記第一絶縁層11を露呈する貫通孔20を形成する。さらに、第一絶縁層11を100〜400nmエッチングする。ここで、DRIE法とは、反応性イオンエッチング(RIE:ReactiveIon Etching)法の一つの手法である。例えば、エッチングガスとして六フッ化硫黄(SF)などを用い、高密度プラズマによるエッチングと、貫通孔20の側壁へのパッシベーション成膜を交互に行う手法(Boschプロセス)や、半導体基板を−50℃以下の温度に冷却した状態で、SFガス等のエッチングガスを用いてエッチングする手法(クライオ(Cryo)プロセス)を用いて、半導体基板10に深堀りエッチングする方法である。
【0022】
なお、貫通孔20の深さ方向と垂直な断面の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、矩形などいかなる形状であってもよく、その大きさも、所望の貫通配線基板1の大きさ、導電性(抵抗値)などに応じて適宜設定される。
また、貫通孔20を形成する方法も、DRIE法に限定されず、レーザー加工法、水酸化カリウム(KOH)水溶液などによるウェットエッチング法を用いても構わない。
【0023】
(3)少なくとも前記貫通孔20の内壁面および底面に第二絶縁層21を形成する(第三工程)。
次いで、図2(c)及び図2(d)に示すように、少なくとも前記貫通孔20の内壁面および底面に第二絶縁層21を形成する(第三工程)。なお、図2(d)は、図2(c)の要部拡大図である。
第二絶縁層21としては、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(Si)、リンシリケートガラス(PSG)、ボロンリンシリケートガラス(BPSG)等が利用でき、半導体パッケージの使用環境に応じて適宜選択すればよい。SiOやSiは、例えばCVD法を利用すれば任意の厚さに成膜できる。SiOからなる絶縁層を成膜するには、例えば、シランやテトラエトキシシラン(TEOS)を原料とするプラズマCVD法により形成することができる。第二絶縁層21の厚みとしては、例えば孔内において2.5μmとする。
また、その際、前記貫通孔20の孔底面よりも、開口部周辺に形成される第二絶縁層21の厚さを厚く形成することが好ましい。開口部周辺の第二絶縁層21の厚さを厚くすることにより、後述する第四工程におけるプロセスが容易になる。
【0024】
(4)前記第二絶縁層21及び前記第一絶縁層11のうち、フッ素ガスを含有するエッチングガスを用いたドライエッチング法により、前記貫通孔20の底面に位置する部分を除去し、前記導電部13を露呈する(第四工程)。
次に、図2(e)及び図3(f)に示すように、RIE法により、前記第二絶縁層21及び前記第一絶縁層11のうち、貫通孔20の底面を覆う部分を除去し、貫通孔20内に第一基板10側の導電部13を露出させる。なお、図3(f)は、図2(e)の要部拡大図である。
【0025】
本実施形態では、フッ素を含有するプロセスガス(エッチングガス)を用いる。具体的には、例えば四フッ化炭素(CF)、SF、アルゴン(Ar)の混合ガスを用いRIE法を用いるドライエッチング法により、絶縁層のエッチングを行う。それぞれのガスの流量は、例えばCF:25cm/min、SF:10cm/min、Ar:80cm/minとする。また、エッチング時のパワーは1000W、プロセスガス圧力は例えば1Paとする。
【0026】
このとき半導体基板10の表面と孔底の絶縁層とのエッチングレート差を考慮して、孔底に形成された第二絶縁層21及び第一絶縁層11のみ完全に除去し、半導体基板10の表面に形成された第二絶縁層21は残るようエッチングレートや成膜厚さを調整することが好ましい。
具体的には、例えば第二絶縁層21及び第一絶縁層11(SiO)/導電部13(Al−Si−Cu)のエッチング選択比が1.5〜3.0となるように、エッチングレートや成膜厚さを調整する。
エッチバックしデバイス側の導電部13を露出させるとともに、引き続き導電部13をエッチングする。バリア金属膜12(TiN)をフルエッチングし、さらに導電部13をハ−フエッチングする。このとき、導電部13は300〜500nmエッチングすることが好ましい。
【0027】
このとき、エッチングにより除去されたバリア金属膜12の構成成分であるTiと、導電部13の構成成分であるAl、が、エッチングガス中に含まれるフッ素(F)と反応して、それぞれTi−F−C(第二副生成物)、Al−F−C(第一副生成物)が副生成物として生成する。これらの副生成物は、貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面(内側面)部に亘って堆積する。
【0028】
従来の一般的な半導体の貫通孔形成工程の酸化膜ドライエッチングでは、SiO/Al選択比が10〜20程度であることから、孔側壁に堆積するAl−F−C膜は薄く、物理的に不安定である。そのためAl−F−C膜は後工程で剥離しパ−ティクル源となってしまう。また、これらの副生成物(Ti−F−C、Al−F−C)は、水分と反応するとフッ酸を発生するFを含んでいるため、従来は、フッ酸の発生を抑制するためにも、これらの副生成物をエッチング終了後に除去していた。
【0029】
これに対し、本発明では、前記第二絶縁層21、前記第一絶縁層11及び前記バリア金属膜12(TiN)のうち、前記貫通孔20の底面に位置する部分を除去し、前記導電部13を露呈する際に、前記バリア金属膜12に続いて前記導電部13(Al−Si−Cu)の一部をエッチングするとともに、エッチングにより除去された前記第二金属成分と前記エッチングガス成分(C,F)とからなる第二副生成物(Ti−F−C)、エッチングにより除去された前記第一金属成分と前記エッチングガス成分とからなる第一副生成物(Al−F−C)を、前記貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘って堆積させ、テーパー部22を形成している。
【0030】
エッチングの際に生じる第二副生成物及び第一副生成物を、前記貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘って堆積させ、テーパー部22を形成することで、後述する第五工程において、前記第二絶縁層21上に導電層25を形成し、該導電層25を前記導電部13と電気的に接続する際に、貫通孔20の底面部がテーパー化されているので、所定の厚みを有する導電層25をカバレッジ良く安定して形成することができる。
【0031】
貫通孔20を形成する際の、エッチングガスとしてCF、SF、Arを用いた酸化膜ドライエッチングにおいて、第一絶縁層11及び第二絶縁層21(SiO)/バリア金属膜12(TiN)/導電部13(Al−Si−Cu)の選択比を1.5〜3まで低くすることで、バリア金属膜12、導電部13をハ−フエッチングする。
このバリア金属膜12(TiN)、導電部13(Al−Si−Cu)をエッチングする際に、副生成物としてTi−F−C(第二副生成物)、Al−F−C(第一副生成物)が生成し、貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に堆積する。
【0032】
この副生成物を貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に重点的に堆積させる。これらの膜は孔底部ほど厚く堆積するため、垂直であった貫通孔20底部の形状が順テーパー形状になる。これにより後工程でのバリア層/シード層24のステップカバレッジに最も影響する孔底の形状をテーパー化することができる。このときTi−F−C膜とAl−F−C膜の合計膜厚は200〜600nmであることが好ましい。なお、堆積物の形状は直線的に堆積しても曲線状に堆積してもよい。貫通孔20の底面部をテーパー化することで、その後の貫通配線形成が容易となり、配線の信頼性も向上する。
なお、図3(f)中、θで表されるテーパー部22の角度[単位:°]は、特に限定されるものではないが、例えば90以上100以下の範囲が好ましい。これにより金属膜23(バリア層)/シード層24のステップカバレッジをさらに向上させることができ、貫通配線形成が容易となり、配線の信頼性も向上する。
テーパー部22をなす副生成物は、一般的な半導体材料であるシリコンよりも、柔軟な機械的性質を有するため、半導体基板と貫通配線との間において応力緩和材として機能する。したがって、応力によって半導体基板や貫通配線にクラックが発生する不具合を防止することができる。特に、貫通孔20の底面と内壁面で構成される角部は、応力が集中するため、効果的にクラックを防止することができる。
【0033】
このようにして形成されるテーパー部22は、前記第一金属成分及び前記第二金属成分を含んだものとなる。特に、エッチングの際に、バリア金属膜12が先にエッチングされるため、第二金属成分を含む第二副生成物が先に生成し、貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に先に堆積する。その後、導電部13がエッチングされ、第一金属成分を含む第一副生成物が第二副生成物上に堆積する。これにより、前記テーパー部22において、前記貫通孔20の側壁に近い部分では前記第二金属成分が多く、前記貫通孔20の側壁から離れた部分では前記第一金属成分が多く含まれている。このように、第一副生成物と第二副生成物が順に積層していると、貫通孔に応力が加わった場合、第一副生成物からなる層と第二副生成物からなる層との界面で剥がれが生じ、その剥離によって貫通配線と半導体基板との間の応力を緩和する効果が期待できる。
【0034】
なお、これらの副生成物(Ti−F−C、Al−F−C)は、水分と反応するとフッ酸を発生するFを含んでいるが、本実施形態では、後述するように、引き続き金属膜23(バリア層)及びシード層24を形成することにより、これらの副生成物はシード層24で被覆される。したがって、副生成物と水分とが反応してフッ酸が発生するのを抑制できる。
また、本発明の方法によれば、貫通孔20底部に堆積した副生成物を除去する工程をなくすと共に、孔底部のテーパー形成を追加工程なく実施することが可能であり、工程やコストの増加を抑えられる。
【0035】
(5)前記貫通孔20の内壁面および底面に、少なくとも前記副生成物を被覆するように金属膜23を形成する(第六工程)。
そして、図3(g)及び図3(h)に示すように、スパッタ法を用いて貫通孔20内に金属膜23(バリア層)を形成する。副生成物からなるテーパー部22を、直ちに金属膜23で被覆することで、水分と副生成物が反応して生ずるフッ酸の発生を抑えることができる。なお、図3(h)は、図3(g)の要部拡大図である。
【0036】
金属膜23の材料として、例えばTi、TiN、TiW、Cr、Ta、TaNが挙げられる。スパッタの方法としては、一般的なスパッタ法よりもスパッタ粒子の指向性が高いロングスロー法やコリーメート法を用いるのが好ましい。
【0037】
引き続き、スパッタ法を用いて貫通孔20内にシード層24(図示略)を形成する。シード層24として、例えば銅(Cu)が用いられる。この場合も、金属膜23と同様に指向性の高いスパッタ法を用いることで、貫通孔20内部へ被覆良くシード層24を形成することが可能となる。仮に金属膜23の形成前に逆スパッタを実施しても、テーパー部22の形状は変化しないため、逆スパッタを実施してもしなくてもよい。
【0038】
このとき、貫通孔20の底面部が副生成物によりテーパー化されているので、スパッタ膜がステップ力バレッジよく堆積される。スパッタ法は原理上バリア/シード層24の金属原子が、垂直的に孔底部に入射されるため、貫通孔20底部に角度があること、貫通孔20側壁に付着されやすくなることでステップカバレッジが改善される。
【0039】
(6)前記第二絶縁層21上に導電層25を形成し、該導電層25を前記導電部13と電気的に接続する(第五工程)。
次に、図4(i)に示すように、電解めっき法を用いて貫通孔20内に導電体からなる導電層25を形成する。導電体としては、電気の良導体であれば特に制限は無く、例えば電気抵抗が低い銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、銀、錫等の他に、Au−Sn、Sn−Pb等の合金、あるいはSn基、Pb基、Au基、In基、Al基などのはんだ合金等の金属が利用できる。
【0040】
このとき、本発明では貫通孔20の底面部がテーパー化されているので、導電層25を力バレッジ良く形成することができる。これにより本発明では、貫通孔20の底面部付近において、接触不良などがなく、電気的な安定性を向上させた貫通配線を有する貫通配線基板1を製造可能である。
【0041】
(7)次に、図4(j)に示すように、半導体基板10及び導電層25上に絶縁性の封止層28を形成する。
封止層28は、例えば感光性ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂(シリコーン)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)等の感光性樹脂を、スピンコート法やラミネート法を用い、フォトリソグラフィ技術によりパターニングすることによって形成することができる。
その際、導電層25を少なくとも露出するような開口部28aを封止層28に設ける。
なお、開口部28aの直径は、露光時に用いるフォトマスクの開口径によって調整することができる。封止層28の厚みは5〜50μm程度である。
【0042】
なお、封止層28の形成には、電着法、スプレーコート法、印刷法を用いることも可能である。また、樹脂のパターニングには、レーザー加工法、プラズマエッチング法も可能である。
また、ラミネート法の場合、あらかじめパターニングされたシート状の樹脂をラミネートにて圧着させることも可能である。また、樹脂をスクリーン印別法にて直接、成膜及びパターニングする方法も可能である。なお、これらの場合、樹脂が感光性である必要はない。
【0043】
次に、封止層28の開口部28aから露出された導電層25上に、はんだボール搭載法、電解はんだめっき法、はんだペースト印刷法、はんだペーストディスペンス法、はんだ蒸着法等によりはんだを転写し、その後、リフロー炉を用いてはんだボールを溶融させ、配線部23上に、はんだバンプ29を形成する。
以上のようにして、貫通配線基板1が得られる。
ここで、図5は、上述したような方法により製造された貫通配線基板の断面SEM写真を示す図である。貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面に亘って副生成物が堆積することによりテーパー部22が形成されていることが確認される。
【0044】
図6は、上述したような方法により製造された、本発明の貫通配線基板1の一構成例を模式的に示す断面図である。
本発明の貫通配線基板1は、半導体基板10の一方の面10aに第一絶縁層11を介して配された、第一金属からなる導電部13と、前記半導体基板10の他方の面側から、前記導電部13を露呈するように配された貫通孔20と、少なくとも前記貫通孔20の内壁面に配された第二絶縁層21と、前記第二絶縁層21上に配され、前記導電部13と電気的に接続された導電層25と、を備える。
そして本発明の貫通配線基板1は、前記貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面(内側面)部に亘ってテーパー部22が形成されており、該テーパー部22は、前記第一金属成分を含んでいることを特徴とする。
【0045】
本発明の貫通配線基板1では、上述したような方法により製造されることで、前記貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に亘ってテーパー部22が形成されており、該テーパー部22は、前記第一金属成分を含んでいる。本発明では、貫通孔20の底面部がテーパー化されているので、その上に配される導電層25が所定の厚さを有するものとなる。これにより本発明の貫通配線基板1は、貫通配線の底面部付近における接触不良などがなく、貫通配線の電気的な安定性が向上されたものとなる。
特に、図6に示す貫通配線基板1では、前記第一絶縁層11と前記導電部13との間に、第二金属からなるバリア金属膜12が配され、前記貫通孔20の底面部周辺に形成された前記テーパー部22は、前記第一金属成分及び前記第二金属成分を含んでいる。
特に、上述したような製造工程において、エッチングの際に、バリア金属膜12が先にエッチングされるため、第二金属成分を含む第二副生成物が先に生成し、貫通孔20の底面部及びその近傍に位置する内壁面部に先に堆積する。その後導電部13がエッチングされ、第一金属成分を含む第一副生成物が第二副生成物上に堆積する。これにより、前記テーパー部22において、前記貫通孔20の側壁に近い部分では前記第二金属成分が多く、前記貫通孔20の側壁から離れた部分では前記第一金属成分が多く含まれている。
【0046】
上述した実施形態では、半導体基板10がSiからなる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、Si基板以外の化合物半導体基板10、絶縁基板にも適用可能である。
また、上述した実施形態では、バリア金属膜12がTiNからなる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、TiW、Crから構成されていてもよい。この場合、エッチング時にエッチングガス中のFと反応して生成される副生成物は、それぞれTi−W−F−C、Cr−F−Cとなる。
【0047】
また、上述した実施形態では、第一絶縁層11と導電部13との間に、第二金属からなるバリア金属膜12が配されている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一絶縁層11と導電部13との間にバリア金属膜12が配されていなくてもよい。この場合、形成されるテーパー部22は、第二金属成分を含有しない。
【0048】
以上、本発明の貫通配線基板の製造方法及び貫通配線基板について説明してきたが、本発明は上述した例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、貫通配線基板の製造方法及び貫通配線基板に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・貫通配線基板、10・・・半導体基板、11・・・第一絶縁層、12・・・バリア金属膜、13・・・導電部、14・・・反射防止膜、15・・・第三絶縁層、20・・・貫通孔、21・・・第二絶縁層、22・・・テーパー部、23・・・金属膜、24・・・シード層、25・・・導電層。
図1
図2
図3
図4
図6
図5