(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873214
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】プリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/42 20060101AFI20160216BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H05K3/42 610C
H05K1/02 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-512263(P2015-512263)
(86)(22)【出願日】2013年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2013061581
(87)【国際公開番号】WO2014171004
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年5月8日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】種子 典明
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 秀吉
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−263003(JP,A)
【文献】
特開2010−003981(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/010394(WO,A1)
【文献】
特開2010−080572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/42
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面上に形成された金属層と、
前記絶縁基板を貫通するスルーホールと、
前記スルーホールを充填する伝熱体と、を有し、
前記伝熱体は、柱状の金属からなる芯材を備え、前記芯材に対して表面に接着剤が塗布されたグラファイトシートがロール状に巻かれた形状を備えるとともに、前記スルーホールの延在方向に直交する方向において伸縮性を備えることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記伝熱体は、前記スルーホールの延在方向における熱伝導率が前記延在方向に直交する方向に比して高いことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記伝熱体は、前記スルーホールの延在方向における熱伝導率が800W/mK〜1200W/mKであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
絶縁基板にスルーホールを形成する工程と、
前記絶縁基板の表面上に金属層を形成する工程と、
表面に接着剤が塗布されたグラファイトシートをロール状に巻き、巻きつけの軸方向に直交する方向において伸縮性を備える伝熱体を形成する工程と、
前記スルーホールの延在方向と前記巻きつけ軸方向とを平行にして前記伝熱体を充填する工程と、を有し、
前記伝熱体を形成する工程において、柱状の金属からなる芯材に前記グラファイトシートを巻きつけることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記伝熱体を充填する工程において、前記スルーホールの延在方向における熱伝導率が前記延在方向に直交する方向に比して高くなるように前記伝熱体を充填することを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記伝熱体と前記金属層とが面一となるように、前記伝熱体を研磨する工程を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記伝熱体の充填後に、前記伝熱体の露出面上に金属を被覆する工程を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱経路を有するプリント配線板及びその製造方法、並びに当該プリント配線板に用いられる伝熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に搭載された半導体素子から発生する熱により、当該半導体素子及びプリント配線板の温度が上昇し、当該半導体素子の誤作動及び破損が生じることが従来から知られている。このため、搭載される半導体素子から発生した熱をプリント配線板から放熱し、当該半導体素子の温度を低下させるような放熱対策が必要とされている。このような放熱対策としては、プリント配線板の素子搭載から当該素子搭載面とは反対側の裏面に向けて熱を伝え、当該裏面にヒートシンクのような放熱部品を搭載して素子搭載面から伝えられた熱を放熱する方法がある。また、高熱伝導層をプリント配線板内に設け、当該高熱伝導層を介して半導体素子から発生する熱を拡散し、当該半導体素子及びプリント配線板の温度を低下させる方法もある。
【0003】
プリント配線板の素子搭載面からその反対側の裏面に向けて熱を効率よく伝える方法としては、スルーホール内に熱伝導性が比較的高い樹脂を充填する方法や、銅又はアルミニウム等の熱伝導性が比較的高い金属を圧入する方法が知られている。このような方法を用いて製造されたプリント配線板は、例えば、特許文献1乃至3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−263003号公報
【特許文献2】特開2010−205992号公報
【特許文献3】特許第3758175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、金属からなる伝熱体を圧入する場合、金属が有する固有の熱伝導率、伝熱体の断面積、プリント配線板の厚さによって当該伝熱体の熱抵抗が決まり、半導体素子における発熱量に応じて、伝熱体の寸法を決定することになる。そして、近年における半導体素子の複雑化及び高性能化に伴って発熱量が増大する傾向にあるため、当該伝熱体を圧入するためのスルーホールを大きくし、且つプリント配線板の厚さをより薄くすることによって、半導体素子において発生する熱を良好に放熱させている。
【0006】
しかしながら、当該伝熱体を圧入するためのスルーホールを大きくし、且つプリント配線板の厚さをより薄くしてしまうと、プリント配線板上で半導体素子が占有する面積に対してスルーホールが大きくなり、実装密度が低下するという問題が生じてしまう。
【0007】
また、金属からなる伝熱体を圧入する際、伝熱体によってスルーホールが変形し、プリント配線板の絶縁層にクラックが生じ、プリント配線板の絶縁性を著しく低下させるという問題が生じてしまう。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、実装密度の低下を引き起こすことがなく、クラック等の発生が抑制されて信頼性に優れたプリント配線板及びその製造方
法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のプリント配線板は、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面上に形成された金属層と、前記絶縁基板を貫通するスルーホールと、前記スルーホールを充填する伝熱体と、を有し、前記伝熱体は、表面に接着剤が塗布されたグラファイトシートがロール状に巻かれた形状を備えることを特徴とする。
【0010】
上述したプリント配線板において、前記伝熱体は、前記スルーホールの延在方向における熱伝導率が前記延在方向に直交する方向に比して高くなっている。また、前記伝熱体は、前記スルーホールの延在方向における熱伝導率が800W/mK〜1200W/mKであることが好ましい。
【0011】
上述したいずれかのプリント配線板において、前記伝熱体は、前記スルーホールの延在方向に直交する方向において伸縮性を備えることが好ましい。
【0012】
上述したいずれかのプリント配線板において、前記伝熱体は、柱状の芯材を備え、前記芯材に前記グラファイトシートが巻きつけられた構造を備えていてもよい。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁基板にスルーホールを形成する工程と、前記絶縁基板の表面上に金属層を形成する工程と、表面に接着剤が塗布されたグラファイトシートをロール状に巻いて伝熱体を形成する工程と、前記スルーホールに前記伝熱体を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
上述したプリント配線板の製造方法おいては、前記伝熱体を充填する工程において、前記スルーホールの延在方向における熱伝導率が前記延在方向に直交する方向に比して高くなるように前記伝熱体を充填する。
【0015】
上述したいずれかのプリント配線板の製造方法おいては、前記伝熱体を形成する工程において、柱状の芯材に前記グラファイトシートを巻きつけてもよい。
【0016】
上述したいずれかのプリント配線板の製造方法は、前記伝熱体と前記金属層とが面一となるように、前記伝熱体を研磨する工程を更に有していてもよい。また、上述したいずれかのプリント配線板の製造方法は、前記伝熱体の充填後に、前記伝熱体の露出面上に金属を被覆する工程を更に有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るプリント配線板及びその製造方法においては、グラファイトシートを巻きつけた状態の伝熱体をスルーホールに充填するため、プリント配線板を貫通する方向に優れた熱伝導性を有する放熱経路が形成されることになる。これにより、プリント配線板に搭載される半導体素子及びヒートシンクにおける発熱量が増加しても、伝熱体の寸法を大きくすることなく十分に放熱することができるため、プリント配線板における実装密度の低下を防止することができる。
【0022】
また、本発明に係るプリント配線板及びその製造方法において、伝熱体は接着剤を含むことで伸縮性を備えるため、伝熱体の充填時においてスルーホールの周囲に位置する絶縁基板に破損及び損傷が生じることがない。これにより、プリント配線板の使用においても優れた絶縁耐性を維持し、プリント配線板自体の信頼性の向上を図ることができる。
【0023】
更に、本発明に係る伝熱体は、接着剤を用いてグラファイトシートを巻きつけた構造を有するため、巻きつけの軸線方向に優れた熱伝導性を有することになる。すなわち、本発明に係る伝熱体は、グラファイトシートの平面方向における優れた熱伝導性を伝熱体の延在方向に利用し、当該延在方向において優れた熱伝導性を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るプリント配線板の製造方法の各製造工程における断面図である。
【
図2】本発明に係るプリント配線板の製造方法の各製造工程における断面図である。
【
図3】本発明に係るプリント配線板に用いられる伝熱体の製造方法の各製造工程における断面図である。
【
図4】本発明に係るプリント配線板に用いられる伝熱体の製造方法の各製造工程における断面図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】本発明に係るプリント配線板の製造方法の各製造工程における断面図である。
【
図8】本発明に係るプリント配線板の製造方法の各製造工程における断面図である。
【
図9】本発明に係るプリント配線板の製造方法の各製造工程における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明によるプリント配線板及び伝熱体を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、プリント配線板及び伝熱体の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0026】
<実施例>
以下において、本発明の実施例に係るプリント配線板10の製造方法について、
図1乃至
図9を参照して詳細に説明する。ここで、
図1、
図2、及び
図7乃至
図9は、本実施例に係るプリント配線板10の製造方法の各製造工程における断面図である。また、
図3及び
図4は、本実施例に係るプリント配線板10に用いられる伝熱体20の製造方法の各製造工程における断面図である。更に、
図5は本実施例に係る伝熱体20の斜視図であり、
図6は
図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【0027】
先ず、
図1に示すように、準備した絶縁基板1にスルーホール2を形成するスルーホール形成工程が行われる。具体的には、絶縁基板1として板厚が1.6mmのガラスエポキシ基板を準備し、ドリル等を使用して絶縁基板1に直径1mmのスルーホール2を形成する。ここで、
図1には、1つのスルーホール2が示されているが、実際には絶縁基板1に複数のスルーホール2が形成されることになる。スルーホール2の数量及び開口径は、完成したプリント配線板に実装される半導体素子の発熱量等に応じて適宜変更することができる。例えば、スルーホール2の開口径は、1mm〜15mmの範囲内で適宜選択してもよい。
【0028】
なお、本実施例においては、絶縁基板1としてガラスエポキシ基板を使用したが、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、テフロン(登録商標)基板、アルミナ基板、又はLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板等の他の絶縁基体を使用してもよい。そして、使用される絶縁基板の種類に応じて、スルーホール2の形成方法を適宜変更してもよい。例えば、レーザを照射してスルーホール2を形成してもよく、或いはエッチング等の化学的な方法によってスルーホール2を形成してもよい。
【0029】
次に、
図2に示すように、絶縁基板1の表面上(より具体的には、第1の面1a、第2の面1b、及びスルーホール2の側部)に金属層3を形成する金属層形成工程が行われる。具体的には、電界めっき法により、絶縁基板1の表面上に銅めっき膜からなる金属層3を形成する。なお、金属層3としての薄膜を形成する方法としては、電解めっき法に限定されるものではなく、無電解めっき法、化学気相成長法(CVD法)、又は物理気相成長法(PVD法)等の一般的な成膜方法を採用することもできる。
【0030】
次に、絶縁基板1に形成されたスルーホール2を充填するための伝熱体を形成する伝熱体形成工程が行われる。具体的には、
図3に示すように、グラファイトシート4の表面上に接着剤5を塗布し、接着剤5の薄膜をグラファイトシート4の表面上に形成する。すなわち、グラファイトシート4と接着剤5とからなる伝熱シート6を先ず準備する。
【0031】
ここで、グラファイトシート4は、天然グラファイトと比較して柔軟性に優れた人工グラファイトを用いる。また、グラファイトシート4は、その厚み方向における熱伝導率は約10W/mKであるものの、厚み方向に直交する平面における熱伝導率は約1000W/mK〜2000W/mKである。更に、グラファイトシート4は、一般的な耐折性試験(R=2mm、270°、1万回)に耐えうるものが好ましい。これは、後の工程において、グラファイトシート4を接着剤5共に湾曲させるからである。本実施例では、グラファイトシート4として、株式会社カネカ製のグラフィニティ(登録商標)を使用した。
【0032】
接着剤5としては、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤を用いることができる。接着剤5は、エポキシ樹脂系に限定されることなく、柔軟性及び伸縮性を備える一般的な接着剤を用いてもよい。また、グラファイトシート4の表面上への接着剤5の薄膜形成は、接着剤5の塗布に限定されず、シート状に形成された接着剤5をグラファイトシート4の表面上に貼り付けてもよい。
【0033】
伝熱体20の形成の次なる工程としては、
図4に示すように、準備した柱状の芯材7を巻きつけの中心軸とし、芯材7に伝熱シート6を巻きつけて伝熱体20を形成する工程を行う。ここで、芯材7としては、銅又はアルミニウム等の比較的高い熱伝導率を有する金属を使用する。これは、伝熱体20の合成熱伝導率の低下を防止するためである。
【0034】
図5及び
図6から分かるように、伝熱シート6を芯材7に巻きつけると、芯材7を中心軸として、グラファイトシート4と接着剤5の薄膜とが交互に配置され、芯材7の周囲に伝熱シート6が筒状に形成されることになる。また、
図6に示すように、グラファイトシート4は、内側の層と、当該内側の層に対して1層外側に位置する層とが貼り合わされることで渦巻状に形成され、このようは貼り合わせによって伝熱シート6の形状を筒状に維持することができる。
【0035】
また、グラファイトシート4は、その厚み方向における熱伝導率は約10W/mKであるため、伝熱体20においては、芯材7を中心として放射線方向には熱が伝わりにくくなる。一方、グラファイトシート4は、厚み方向に直交する平面における熱伝導率は約1000W/mK〜2000W/mKであるため、伝熱体20においては、芯材7の延在方向に沿って熱が伝わりやすくなる。すなわち、伝熱体20は、巻きつけの軸方向における熱伝導率が当該軸方向に直交する方向に比して高くなっている。本実施例に係る伝熱体20は、接着剤5を含むため、グラファイトシート4単体の熱伝導率よりは低下するものの、当該軸線方向における熱伝導率が約900W/mKとなる。
【0036】
ここで、伝熱体20の熱伝導率は、グラファイトシート4、接着剤5、及び芯材7の各熱伝導率の合成によって決定される。従って、
図6における各部材の断面積の比率を変更することによって、伝熱体20の熱伝導率を容易に変更することができる。例えば、伝熱体20の熱伝導率は、400W/mK〜1200W/mKの範囲内で適宜調整することができる。なお、芯材7の単体の熱伝導率が約400W/mKであるため、伝熱体20の熱伝導率を800W/mK〜1200W/mKの範囲内で調整することが好ましく、これによりグラファイトシート4の特性を十分に活用することができる。
【0037】
更に、本実施例に係る伝熱体20においては、芯材7の周囲に、比較的柔軟な接着剤5が巻かれているため、芯材7を中心として放射線方向に伝熱体20を伸縮することができる。換言すれば、伝熱体20は、芯材7の延在方向に直交する方向において伸縮性を備えている。
【0038】
次に、上記工程を経て形成した伝熱体20を絶縁基板1のスルーホール2の寸法に合わせて切断し、
図7に示すように、当該切断した伝熱体20を絶縁基板1のスルーホール2内に充填する伝熱体充填工程が行われる。ここで、伝熱体20の切断には一般的な金属用切断機を使用し、伝熱体20はスルーホール2の深さよりも少し長くする。これは、後の研磨工程によって、伝熱体20と金属層3とを面一にするためである。
【0039】
また、伝熱体20を充填する際には、伝熱体20の芯材7の延在方向とスルーホール2の延在方向(深さ方向)とが平行となるように、伝熱体20の向きを調整する。換言すれば、スルーホール2の延在方向における熱伝導率が、当該延在方向に直交する方向に比して高くなるように、伝熱体20をスルーホール2に充填することになる。これにより、伝熱体20を介して絶縁基板1の第1の面1a及び第2の面1bの一方から他方へ熱を良好に伝達することができる。すなわち、絶縁基板1を貫通する放熱経路が形成されることになる。
【0040】
ここで、伝熱体20の直径はスルーホール2の直径よりも若干大きく設定されているが、上述したように伝熱体20は芯材7の延在方向に直交する方向において伸縮性を備えているため、スルーホール2の周辺を破壊することなく、伝熱体20をスルーホール2内に容易に充填することができる。そして、伝熱体20のスルーホール2内への充填後においては、伝熱体20の直径はスルーホール2の直径よりも若干大きいため、伝熱体20がスルーホール2から脱落することがない。なお、伝熱体20の直径がスルーホール2の直径よりも小さい場合には、伝熱体20の表面に他の接着剤を塗布し、当該接着剤を介して伝熱体20をスルーホール2内に固定してもよい。
【0041】
次に、
図8に示すように、金属層3と伝熱体20とが面一となるように、伝熱体20を研磨する研磨工程が行われる。研磨には一般的な研磨装置が使用され、伝熱体20の突出した部分を削り、伝熱体20の露出面が金属層3の表面と同一面に位置するようにする。このような研磨工程を施す理由は、プリント配線板10に対して半導体素子又はヒートシンクを搭載する際、放熱の効率を向上させる観点から伝熱体20の直上又は直下に当該半導体素子又はヒートシンクを配置するからである。すなわち、半導体素子又はヒートシンク等の実装部品の実装面を平坦にするために、研磨工程を施すことになる。
【0042】
次に、
図9に示すように、伝熱体20の露出面上に金属を被覆する工程が行われる。具体的には、金属層3の形成と同様に、電界めっき法によって伝熱体20の露出面及び金属層3の表面上に銅めっき膜からなる金属層8を形成する。このように、金属層8を形成することにより、伝熱体20の直上又は直下において発生した熱のみならず、その周囲において発生した熱も金属層8及び伝熱体20を介して放熱することができ、プリント配線板10として、より優れた放熱性を備えることができる。また、金属層8を形成することにより、伝熱体20がスルーホール2内から脱落することを確実に防止することができる。
【0043】
なお、金属層8としての薄膜を形成する方法としては、無電解めっき法、化学気相成長法(CVD法)、又は物理気相成長法(PVD法)等の一般的な成膜方法を採用することもできる。
【0044】
上述した製造工程を経て、
図9に示すようにプリント配線板10が完成する。本実施例に係るプリント配線板10は、絶縁基板1、絶縁基板1の表面上(第1の面1a、第2の面1b、スルーホール2の側方)に形成された金属層3、絶縁基板1を貫通するスルーホール2、及びスルーホール2を充填する伝熱体20から構成されている。ここで、伝熱体20は、上述した通り、その表面に接着剤5が塗布されたグラファイトシート4が、芯材7を巻きつけの中心軸としてロール状に巻かれた形状を備えている。
【0045】
また、プリント配線板10において、スルーホール2内に充填された伝熱体20の熱伝導率は、スルーホールの延在方向において約900W/mKであり、スルーホールの延在方向に直交する方向において約10W/mKである。すなわち、本実施例のプリント配線板10においては、伝熱体20の延在方向に沿って優れた放熱を有しており、プリント配線板10の一方の面で生じた熱を他方の面に良好に伝達し、更には当該他方の面において放熱することができる。
【0046】
本実施例に係るプリント配線板10においては、金属(例えば、銅)のみからなる伝熱体よりも高い熱伝導率を備えるグラファイトシート4を芯材7に対して渦巻状に巻きつけることで、グラファイトシート4の平面状における熱伝導率を伝熱体20の延在方向の熱伝導率として利用し、金属単体から構成される放熱経路よりも高い熱伝導率を備える放熱経路(すなわち、伝熱体20)をプリント配線板10の厚み方向に沿って形成している。このようなプリント配線板10の構造により、搭載される半導体素子及びヒートシンクの発熱量が増加しても、金属単体の場合と比較して伝熱体20を大きくする必要性がなく、実装密度の低下が生じることがない。そして、伝熱体20を構成するグラファイトシート4、接着剤5、及び芯材7の構成比率を変更することで、伝熱体20の熱伝導率を400W/mK〜1200W/mKの範囲内で自在に設定することができるため、伝熱体20の寸法を変更することなく(すなわち、比較的小さい寸法のままで)、半導体素子及びヒートシンクの特性に最適な放熱経路を形成することができる。
【0047】
また、本実施例に係るプリント配線板10において、伝熱体20には柔軟性を備える接着剤5が含まれるため、伝熱体20の充填時においてスルーホール2の周囲に位置する絶縁基板1に破損及び損傷が生じることがない。従って、プリント配線板10の使用時においても優れた絶縁耐性を維持し、プリント配線板10自体の信頼性の向上を図ることができる。
【0048】
なお、上述した実施例においては、芯材7を用いて伝熱体20を形成していたが、芯材7を用いることなく、グラファイトシート4及び接着剤5から伝熱体20を形成してもよい。このような構造を採用することにより、伝熱体20としての熱伝導率が高くなり、プリント配線板10の放熱性が向上することになる。
【符号の説明】
【0049】
1 絶縁基板
1a 第1の面
1b 第2の面
2 スルーホール
3 金属層
4 グラファイトシート
5 接続剤
6 伝熱シート
7 芯材
8 金属層
10 プリント配線板
20 伝熱体