特許第5873215号(P5873215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873215向上した精度を備えた電気化学的バイオセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873215
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】向上した精度を備えた電気化学的バイオセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20160216BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20160216BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G01N27/30 353Z
   G01N27/26 371A
   G01N27/46 338
   G01N27/30 353R
   G01N27/30 353Q
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-514916(P2015-514916)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-518161(P2015-518161A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】KR2013004838
(87)【国際公開番号】WO2013180528
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0059327
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504206469
【氏名又は名称】アイ−センス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】I−SENS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ムン ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウン キ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハン べ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソン−クォン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ハクヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チャ,グン シグ
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−118794(JP,A)
【文献】 特開2005−003679(JP,A)
【文献】 特開2010−230369(JP,A)
【文献】 特表2003−501627(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/057768(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0139634(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0131548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的バイオセンサであって、
下部基板、
前記下部基板上に形成される第1作用電極および第1補助電極を含む、第1電極部、
前記下部基板上に形成される第2作用電極および第2補助電極を含む、第2電極部、
前記第2作用電極上または前記第2補助電極上に形成される試薬層であって、電子移動メディエータを含む、前記試薬層、
各々が空洞を有するように区分され、それぞれ第1、第2および第3反応ユニットに対応した領域を有する絶縁カバーであって、前記第1反応ユニットは前記第1作用電極の位置に設けられ、前記第2反応ユニットは前記第1補助電極の位置に設けられ、前記第3反応ユニットは前記第2作用電極の位置に設けられる、前記絶縁カバー、
血液サンプルを前記第1電極部および前記第2電極部の中へ連続して導くためのマイクロチャネルサンプルセル部を具備する、中間基板、および、
上部基板を含み、
前記第1反応ユニットおよび前記第2反応ユニットに対して露出している第1作用電極および第1補助電極の間の距離は、絶縁カバーを利用することによって一定であり、
第1電極部は、血液サンプルの伝導率を測定することによってヘマトクリットを計算し、
第1電極部は、試薬層を欠いており、
第1反応ユニットおよび第2反応ユニットに露出している第1作用電極および第1補助電極の面積は同じである、
前記電気化学的バイオセンサ。
【請求項2】
絶縁カバーが、第1反応ユニットに対して露出している第1作用電極の少なくとも1つの傾斜端部、および、第2反応ユニットに対して露出している第1補助電極の少なくとも1つの傾斜端部を覆う、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項3】
絶縁カバーの厚さが、電極の厚さより小さい、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項4】
第1作用電極に位置付けられる第1反応ユニットおよび第1補助電極に位置付けられる第2反応ユニットが、第1および第2反応ユニットが少なくとも部分的に重なるように、血液がマイクロチャネルサンプルセル部の中へそれに沿って流れる方向である縦方向に対して垂直な線上の位置に設けられる、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項5】
第1作用電極の位置に設けられる第1反応ユニットおよび第1補助電極の位置に設けられる第2反応ユニットが同じ形を有する、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項6】
第1作用電極の位置に設けられる第1反応ユニットおよび第1補助電極の位置に設けられる第2反応ユニットが、血液がマイクロチャネルサンプルセル部の中へそれに沿って流れる方向である縦方向に対して垂直な線上で、縦方向の中心線に対してデカルコマニー形状で位置付けられる、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項7】
試薬層が酸化還元酵素をさらに含む、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項8】
第2電極部が、血液サンプルにおけるグルコースの酸化還元反応によって生じた電流を測定する、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項9】
第1電極部が、交流(AC)電圧を適用することによって電気伝導率を測定する、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項10】
第2電極部が、直流(DC)電圧を適用することによってグルコースの酸化還元反応によって生じた電流を測定する、請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項11】
請求項1に記載のバイオセンサを使用してヘマトクリット値を適用することにより血液グルコース濃度を正確に測定するための方法であって、
マイクロチャネルサンプルセル部の中へ血液サンプルを導入すること(ステップ1)、
第1電極部において血液サンプルの電気伝導率を測定することによって、ヘマトクリット値を計算すること(ステップ2)、
第2電極部において信号を測定することによって、グルコース濃度を計算すること(ステップ3)、および、
第1電極部において計算されたヘマトクリット値を適用することによって、第2電極部において計算されたグルコース濃度を補正すること(ステップ4)、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液サンプルの特性、特にヘマトクリットの影響を補正する機能を、電気化学的バイオセンサに与えることにより、測定精度が向上したバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病の診断および防止のために、血液中のグルコースレベル(血液グルコース)を定期的に測定する必要性が高まっている。血液グルコースは、手持ち式で携帯型の測定デバイスを使用することによって、簡単に測定することができる。特に、個人の患者は、ストリップ(strip)形状のバイオセンサを使用して血液グルコースを簡単に測定することができる。このような血液グルコースを測定するためのバイオセンサは、比色法または電気化学的方法の動作原理に基づいている。
【0003】
これらの間で、電気化学的方法は、以下の反応式Iで説明され、そもそも電子移動メディエータを使用することで特徴付けられる。電子移動メディエータは、例えばフェロセンおよびフェロセン誘導体、キノンおよびキノン誘導体、遷移金属(例えば、ヘキサアミンルテニウム、オスミウム含有のポリマー、フェリシアン化カリウムなど)を含有する有機および無機材料、ならびに、伝導有機塩およびビオロゲンなどの電子移動有機材料を含んでもよい。
【0004】
[反応式1]
(1)グルコース+GOx−FAD→グルコン酸+GOx−FADH
(2)GOx−FADH+電子移動メディエータ(酸化状態)→GOx−FAD+電子移動メディエータ(還元状態)
(反応式1において、GOxは、グルコースオキシダーゼを示し、GOx−FADおよびGOx−FADHはそれぞれ、グルコースオキシダーゼの活性部位であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の酸化状態および還元状態を示す。)
【0005】
反応式1に示されるように、血液中のグルコースはまず、グルコースオキシダーゼの触媒作用によってグルコン酸へと酸化される(1)。このステップにおいて、グルコースオキシダーゼの活性部位であるFADは、FADHに還元される。そして、還元されたFADHは、電子移動メディエータによる酸化還元反応を介してFADへと酸化され、電子移動メディエータを還元する(2)。得られた還元状態の電子移動メディエータは、電極の表面へ広がることができる。そして、血液グルコース濃度は、還元状態の電子移動メディエータの酸化電位が作用電極の表面に適用された場合に生成される電流を測定することによって決定される。
【0006】
血液サンプル中の酸素の影響を低減する必要がある場合もあり、GDH−FADなどのグルコースデヒドロゲナーゼが、グルコースオキシダーゼGOx−FADの代わりに使用される。酵素のタイプは様々であるが、反応全体は、反応式1における工程に従う。
【0007】
動作原理として上記電気化学的方法を採用するバイオセンサは、電気化学的バイオセンサと呼ばれる。従来の比色法を使用するバイオセンサとは対照的に、電気化学的バイオセンサは、酸素の影響を低減することができ、サンプルが混濁した場合であっても、別の前処理なしでサンプルを使用することができる。
【0008】
一般的に、電気化学的バイオセンサは、血液グルコースレベルを観察および制御するために使用されるが、センサの精度は、尿酸、アセトアミノフェンおよび酸化されやすいアスコルビン酸などの様々な干渉種によって大きく影響を受ける。
【0009】
さらに、電気化学的バイオセンサの測定精度における深刻な誤差を引き起こす要因として、赤血球量体積率(すなわち、血液全体における赤血球の体積の比率;ヘマトクリット)が重要な役割を果たす。使い捨てのバイオセンサストリップを使用して自身のグルコースレベルを定期的に測定する人々にとって、ヘマトクリットレベルによって大きく影響を受けるバイオセンサは、測定結果において誤った判断をもたらすことがあるため、利用者の生命の危険さえも引きおこす。
【0010】
したがって、ヘマトクリット検出における電気化学的バイオセンサの精度は、結果的に血液グルコース濃度の測定精度に直接的に影響を与えるため、ヘマトクリットの測定精度は非常に重要である。
【0011】
特許文献1および2は、赤血球を分離するための方法、または、赤血球を除去して試薬層に適用する方法を開示している。
【0012】
特許文献3は、シリカフィルタを含み、試薬/血球分離の統合機能を有する、スクリーン印刷可能な高感度層を使用するための方法を開示している。
【0013】
特許文献4は、加電圧を二度適用すること(すなわち、二重励起電位)で取得された結果を、ケモメトリックス法(chemometric method)を介して数学的に処理する補正法を開示している。
【0014】
測定精度は、電気伝導率を介してヘマトクリットを直接的に測定するための電極を提供、または、ヘマトクリットを別に測定するために酵素反応を測定するための電極とは別の抵抗を提供し、これらの結果を使用して酵素反応測定電極から取得したグルコース濃度を補正することによって向上する。従来技術として、毛細管タイプにおけるサンプルセル上に取り付けられた補助電極および作用電極を具備する使い捨てセンサの伝導率を介してヘマトクリットを測定することが可能な方法(特許文献5参照)、および、この方法を血液グルコース測定のためのバイオセンサに適用する例(特許文献6参照)が提案されている。
【0015】
本発明は、伝導率を精度よく測定するためのセンサの製造を、大量生産することを意図したものである。血液電気伝導率(G)は、以下の式(1)に基づく。
G=σA/L (1)
【0016】
式(1)において、Gは、Ω−1単位で表される電気伝導率を示し、σは、Ω−1cm−1単位で表される血液の伝導率係数を示し、Aは、cm単位で表される電極の面積を示し、Lは、cm単位で表される電極の間の距離を示す。結果的に、精度よく伝導率を測定するためには、電極間の一定の距離および電極の一定の面積が重要になる。
【0017】
しかしながら、従来技術の手法は、大量生産タイプのバイオセンサにおいてヘマトクリットの測定のための電極の、電極間の距離および伝導率測定電極の面積を一定にするために、どのようにして調節するかについては開示していない。
【0018】
電気化学的バイオセンサにおいて、電極は殆どの場合において印刷方式によって形成される。しかしながら、印刷は構成材料に応じて求められるように正確に実行されるわけではなく、電極の傾斜端部は少し流れ下がる傾向にあるので、電極の印刷中に、電極間の距離および電極の領域の偏差が発生しやすい。また、印刷された電極が厚くなるほど、傾斜端部で起こる反応が全体的に測定により大きな影響を与える。
【0019】
電極の印刷中に生じる誤差がたとえ小さいものであっても、作用電極および補助電極の面積は大いに変化するというもう一つの問題がある。このような電極の面積の不均一性は、酵素反応のための電極よりも、交流電流を直接的に使用して伝導率を測定する電極において、より厳密になる傾向にあるため、ヘマトクリットを補正係数として使用する血液グルコース測定の精度および正確性の低減を招く。
【0020】
したがって、本発明者らは、ヘマトクリット測定の精度がより向上された電気化学的バイオセンサを研究し、測定されたヘマトクリット値を補正するための第1電極部および血液グルコース濃度を測定するための第2電極部を含む電気化学的バイオセンサにおいて、絶縁カバーを作用電極および補助電極よりも薄く作成することで、印刷中に位置決め誤差が生じた場合であっても、絶縁カバーによって、血液サンプルに対して露出している第1電極部の第1作用電極および第1補助電極の面積が同じになり、電極の面積が一定に保持されることを見出し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2000−338076号公報
【特許文献2】米国特許第5658444号明細書
【特許文献3】米国特許第6241862号明細書
【特許文献4】国際公開第01/57510号明細書
【特許文献5】米国特許第4301412号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開2011/0139634号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の1つの目的は、ヘマトクリット測定おける向上した精度を備えた、血液グルコースを測定するための電気化学的バイオセンサを提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、バイオセンサを使用してヘマトクリット値を分析することによって、血液グルコース濃度を正確に測定するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、電気化学的バイオセンサを提供し、該電気化学的バイオセンサは、
下部基板、
前記下部基板上に形成される第1作用電極および第1補助電極を含む、第1電極部、
前記下部基板上に形成される第2作用電極および第2補助電極を含む、第2電極部、
前記第2作用電極上または前記第2補助電極上に形成される試薬層であって、電子移動メディエータを含む、前記試薬層、
【0024】
第1、第2および第3反応ユニットに対応する領域であって、その各々が空洞を有するように区分された領域を有する絶縁カバーであって、前記第1反応ユニットは前記第1作用電極の位置にあり、前記第2反応ユニットは前記第1補助電極の位置にあり、前記第3反応ユニットは前記第2作用電極の位置にある、前記絶縁カバー、
血液サンプルを前記第1電極部および前記第2電極部の中へ連続して導くためのマイクロチャネルサンプルセル部を具備する、中間基板、および、
上部基板を含み、
前記第1反応ユニットおよび前記第2反応ユニットにおいて露出している第1作用電極および第1補助電極の面積およびその間の距離は、絶縁カバーを利用することによって一定である。
【0025】
さらにまた、本発明は、ヘマトクリット値を利用することによって、血液グルコース濃度をこのバイオセンサを使用して正確に測定するための方法を提供し、該方法は、
マイクロチャネルサンプルセル部の中へ血液サンプルを導入すること(ステップ1)、
第1電極部において血液サンプルの電気伝導率を測定することによって、ヘマトクリット値を計算すること(ステップ2)、
第2電極部において信号を測定することによって、グルコース濃度を計算すること(ステップ3)、および、
第1電極部において計算されたヘマトクリット値を適用することによって、第2電極部において計算されたグルコース濃度を補正すること(ステップ4)、
を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、測定されたヘマトクリット値を補正するための第1電極部、および、グルコース濃度を測定するための第2電極部を含む、電気化学的バイオセンサは、絶縁カバーが作用電極および補助電極よりも薄く作成され、印刷中に位置決め誤差が生じた場合であっても、絶縁カバーによって、血液サンプルに対して露出している第1電極部の第1作用電極および第1補助電極の面積が同じになり、第1作用電極および第1補助電極の間の距離が一定になり、電極の面積が一定に保持されるため、測定されるヘマトクリット値の精度をより向上させる効果があり、さらに、補正のために測定されたヘマトクリット値を使用して測定される血液グルコース濃度の精度をより向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、電気化学的プレーナーバイオセンサの分解斜視図であり、本発明の例1に係る電気化学的バイオセンサは、第1作用電極および第1補助電極を有し、これらは血液サンプルに対して露出し、血液流入方向に対して垂直に位置付けられ、電極の面積および電極間の距離は、絶縁カバー6を利用することによって一定に保持される。
図2図2は、図1における電極部の拡大図である。
【0028】
図3図3は、本発明の比較例1に係る電気化学的バイオセンサの拡大図であり、血液サンプルに対して露出する第1作用電極および第1補助電極の面積は、絶縁カバーによって規定されていない。
図4図4は、本発明の比較例2に係る電気化学的バイオセンサを示すプレーナーセンサの拡大図であり、血液サンプルに対して露出している第1作用電極および第1補助電極は、血液流入方向に対して連続的に位置付けられる。
【0029】
図5図5は、図1における第1作用電極および第1補助電極の傾斜端部を図示した典型的な図である。
図6図6は、図2のように絶縁カバーで規定された電極の一部を示す顕微鏡画像である。
図7図7は、図3のように絶縁カバーで規定されていない電極の一部を示す顕微鏡画像である。
【0030】
図8図8は、例1で製造されたセンサを使用した、電気伝導率対ヘマトクリットの測定結果を示すグラフである(ここで、%Hctは、%ヘマトクリットを意味する)。
図9図9は、比較例1で製造されたセンサを使用した、電気伝導率対ヘマトクリットの測定結果を示すグラフである(ここで、%Hctは、%ヘマトクリットを意味する)。
図10図10は、比較例2で製造されたセンサを使用した、電気伝導率対ヘマトクリットの測定結果を示すグラフである(ここで、%Hctは、%ヘマトクリットを意味する)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、電気化学的バイオセンサを提供し、該電気化学的バイオセンサは、
下部基板、
前記下部基板上に形成される第1作用電極および第1補助電極を含む、第1電極部、
前記下部基板上に形成される第2作用電極および第2補助電極を含む、第2電極部、
前記第2作用電極上または前記第2補助電極上に形成される試薬層であって、電子移動メディエータを含む、前記試薬層、
【0032】
各々が空洞を有するように区分され、それぞれ第1、第2および第3反応ユニットに対応した領域を有する絶縁カバーであって、前記第1反応ユニットは前記第1作用電極の位置に設けられ、前記第2反応ユニットは前記第1補助電極の位置に設けられ、前記第3反応ユニットは前記第2作用電極の位置に設けられる、前記絶縁カバー、
血液サンプルを前記第1電極部および前記第2電極部の中へ連続して導くためのマイクロチャネルサンプルセル部を具備する、中間基板、および、
上部基板を含み、
前記第1反応ユニットおよび前記第2反応ユニットに対して露出している第1作用電極および第1補助電極の面積およびその間の距離は、絶縁カバーを利用することによって一定である(図1および2参照)。
【0033】
本発明に係るバイオセンサにおいて、下部基板は、バイオセンサのボード(board)の役割を果たす。下部基板のための材料として、セラミック、ガラス板または高分子材料を使用してもよい。好ましくは、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートなどの有機高分子材料を使用してもよい。
本発明に係るバイオセンサにおいて、第1電極部は、血液サンプルの電気伝導率を測定することによって、ヘマトクリット値を分析する役割を果たす。
【0034】
一般的に、血液グルコース濃度の精度の高い測定は、糖尿病患者への処方のために必要である。誤差は、患者の血液ヘマトクリット値に応じてグルコース濃度値を測定する場合に発生するため、誤差を補正する工程が必要である。
【0035】
特に、第1作用電極および第1補助電極を含む第1電極部は、1kHz以上の交流(AC)電圧を適用することによって測定される電気伝導率を介して、血液サンプル中のヘマトクリット値を分析することができ、また、測定されたヘマトクリット値を使用して、血液サンプル中のグルコース濃度を補正することで、血液グルコース濃度をより精度良く測定することができる。
【0036】
本発明に係るバイオセンサにおいて、第2電極部は、血液サンプル中のグルコース濃度を測定する役割を果たす。
特に、第2電極部は、第2作用電極および第2補助電極を含み、直流(DC)電圧を適用することによって、血液サンプル中のグルコース濃度を測定する。
【0037】
本発明に係るバイオセンサに使用される電極の材料は、任意の伝導性材料であってもよく、特に限定されるものではない。伝導性材料は、例えば、銀エポキシ、パラジウム、銅、金、プラチナ、イリジウム、銀/塩化銀、炭素、および、特定の酸化還元対または他の添加剤が補充された修飾炭素を含んでもよい。作用電極および補助電極は、スクリーン印刷、物理的気相成長法、または、エッチング工程をボード上またはボード上の伝導性材料に施すこと、または、伝導性テープを取り付けることで形成してもよい。
【0038】
本発明に係るバイオセンサにおいて、電子移動メディエータを含む試薬層は、酸化還元酵素をさらに含む。
酸化還元酵素は、測定されるグルコースとの反応を介して還元される。そして、還元された酵素は電子移動メディエータと反応し、それによりグルコースを定量化する。酸化還元酵素は、例えばフラビンアデニンジヌクレオチド−グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD−GDH)、ニコチンアミドジヌクレオチド−グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH)、ピロロキノリンキノン−グルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ−GDH)、グルコースオキシダーゼ(GOx)などを含んでもよい。
【0039】
さらにまた、電子移動メディエータは、グルコースとの反応を介して還元された酵素と共に酸化還元反応を実行する。得られた還元状態の電子移動メディエータは、酸化電位が適用される電極の表面上に電流を生成する役割を果たす。
【0040】
電子移動メディエータとして、金属含有錯体およびチオニンまたはこれらの誘導体が共に混合され使用されてもよい。しかしながらまた、例えば、ヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、ジメチルフェロセン(DMF)、フェリシニウム、フェロセンモノカルボン酸(FCOOH)、7,7,8,8−テトラシアノキノ-ジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)、ニッケロセン(Nc)、N−メチルアシジニウム(NMA+)、テトラシアテトラセン(III)、N−メチルフェナジニウム(NMP+)、ヒドロキノン、3−ジメチルアミノ安息香酸(MBTHDMAB)、3−メチル−2−ベンゾチオゾリノンヒドラゾン、2−メトキシ−4−アリルフェノール、4−アミノアンチピリン(AAP)、ジメチルアニリン、4−アミノアンチピレン、4−メトキシナフトール、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2−アジノ−ジ−[3−エチル−ベンズチアゾリンスルホナート]、o−ジアニシジン、o−トルイジン、2,4−ジクロロフェノール、4−アミノフェナゾン、ベンジジン、プルシアンブルー、ビピリジン−オスミウム錯体などの従来使用されている化合物を使用してもよい。
【0041】
一般的に、ヘマトクリット値を分析する場合、精度良く測定するために、作用電極および補助電極が同じ面積を有するように作成することは重要な事である。しかしながら、電極がバイオセンサ上に印刷され大量生産される場合、印刷は構成材料(例えば、炭素電極)に応じて求められるように正確に実行されるわけではなく、電極の傾斜端部は少し流れる傾向にある。また、印刷された電極が厚くなるほど、電極の傾斜端部の面積が大きくなり、不特定に起こる反応が増加するため、結果的にエッジ効果が増加する。このことは、測定されたヘマトクリット値の正確さおよび信頼度が低減するという点において問題がある。
【0042】
上記の問題を解決するために、本発明は、図1および2に示されるように、血液サンプル対して露出している第1作用電極および第1補助電極を実質的に一定の面積を有するように作成し、絶縁カバーを使用してこれらの間の距離を一定に保持することによって測定誤差を低減する。
【0043】
さらに具体的には、印刷中の流れ(flow-down)現象によって生じる伝導率値における誤差は、絶縁カバーを、下部基板の上面から第1作用電極および第1補助電極の上面までを測定した厚さより小さな厚さを有するように形成することで抑えても良い(図5参照)。
【0044】
絶縁カバーを電極より薄く形成する好ましい例は、疎水性の絶縁インクが使用され得る印刷方法である。疎水性の絶縁インクとして、ポリアクリル、エポキシおよびセラミックベースの疎水性インクを使用してもよい。
【0045】
また、第1反応部および第2反応部は、それらが少なくとも部分的に重なるように、血液がそれに沿ってマイクロチャネルサンプルセル部の中へ流れる方向である縦方向に対して垂直な線上の位置に設けられ、第1反応部は、絶縁カバーによって規定される第1作用電極の位置に設けられ、第2反応部は、第1補助電極の位置に設けられる。
【0046】
好ましくは、第1作用電極に位置付けられる第1反応部および第1補助電極に位置付けられる第2反応部は、同じ形状(例えば、長方形、正方形、円および楕円形状)である。好ましくは、長方形形状または正方形形状が、製造には便利である。
【0047】
より好ましくは、第1作用電極の位置に設けられる第1反応部および第1補助電極の位置に設けられる第2反応部は、血液がそれに沿ってマイクロチャネルサンプルセル部の中へ流れる方向である縦方向に対して垂直な線上において、縦方向の中心線に対してデカルコマニー形状で位置付けられる。
【0048】
図3に示されるように、第1作用電極および第1補助電極の間に絶縁カバーが形成されない場合、作用電極および補助電極の面積が大きく変化するという問題が生じる。
【0049】
本発明に係るバイオセンサにおいて、マイクロチャネルサンプルセル部を具備する中間基板は、血液サンプルを第1電極部および第2電極部の中へ連続的に導く役目を果たし、中間基板の両面に塗布された接着剤を介して、上部基板および下部基板を取り付ける役目も果たす。
【0050】
血液サンプルのより簡単な導入を考慮すると、幅0.5〜2mm、高さ50〜250μmのマイクロチャネルがマイクロチャネルサンプルセル部に形成されることが好ましい。
【0051】
本発明に係る電気化学的バイオセンサにおいて、上部基板は、キャピラリーを利用して上記マイクロチャネルサンプルセル部を介して血液サンプルを導入することを促進するための排気口を有し、バイオセンサの仕上げ材の役目を果たす。
【0052】
さらにまた、本発明は、バイオセンサを使用してヘマトクリット値を適用することで血液グルコース濃度を正確に測定するための方法を提供し、該方法は、以下を含む。
【0053】
マイクロチャネルサンプルセル部の中へ血液サンプルを導入すること(ステップ1)、
第1電極部において血液サンプルの電気伝導率を測定することによって、ヘマトクリット値を計算すること(ステップ2)、
第2電極部において信号を測定することによって、グルコース濃度を計算すること(ステップ3)、および、
第1電極部において計算されたヘマトクリット値を適用することによって、第2電極部において計算されたグルコース濃度を補正すること(ステップ4)。
【0054】
本発明に係る方法は、ステップバイステップでより詳細に説明される。
本発明に係る方法において、ステップ1は、サンプルセル部の中へ血液サンプルを導入するステップである。
【0055】
血液の採取において、最小限の痛みで患者から血液サンプルを採取するために好ましい量の血液サンプルは、0.1〜0.7μlの範囲である。サンプルは、前処理工程なしで導入される。本発明の測定方法において使用されるバイオセンサを使用することで、血液グルコースは、小さな量の血液サンプルから精度よく迅速に測定することができる。これは、幅0.5〜2mm、高さ50〜250μmのマイクロチャネルがバイオセンサのマイクロチャネルサンプルセル部に形成され、血液サンプルの導入を促進するためである。
【0056】
本発明に係る方法において、ステップ2は、第1電極部において血液サンプルの電気伝導率を測定することによって、ヘマトクリット値を計算するステップであり、ステップ3は、第2電極部において信号を測定することによって、グルコース濃度を計算するステップである。
【0057】
特に、全ての測定手順は、第1および第2電極部それぞれの作用電極および補助電極の間で、DC、低周波数または高周波数AC、高インピーダンスまたは様々なタイプのパルス、好ましくは、矩形波、三角波、半正弦波、または、ガウス波を使用することによって制御してもよい。
【0058】
1つの例として、本発明に係るバイオセンサがその測定デバイスの中へ挿入される場合、所定の事前設定されたAC電圧が、第1および/または第2電極部の作用電極および補助電極の間に適用される。作用電極および補助電極に適用される電圧は独立しており、回路全体は開回路を形成する。サンプルの導入による電位変化は、開回路状態における電位差として表れる。電位差信号は、バイオセンサの測定工程のためのスタート信号として使用される。
【0059】
好ましくは、電子移動メディエータを含む試薬層が、第2作用電極または第2補助電極上のどちらかに形成され、電極は、これらがお互いに20μm〜2mmの、より好ましくは、80μm〜0.5mmの間隙を介すように配置される。加えて、試薬層は酸化還元酵素をさらに含んでもよく、また、追加的に脂肪酸および第4級アンモニウムを含む。
【0060】
ここで、酸化還元酵素として、フラビンアデニンジヌクレオチド−グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD−GDH)、ニコチンアミドジヌクレオチド−グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH)、ピロロキノリンキノン−グルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ−GDH)、グルコースオキシダーゼ(GOx)などを使用することも可能である。
【0061】
電子移動メディエータとして、金属含有錯体およびチオニンまたはこれらの誘導体が共に混合され使用されてもよい。しかしながらまた、例えば、ヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、ジメチルフェロセン(DMF)、フェリシニウム、フェロセンモノカルボン酸(FCOOH)、7,7,8,8−テトラシアノキノ-ジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)、ニッケロセン(Nc)、N−メチルアシジニウム(NMA+)、テトラシアテトラセン(III)、N−メチルフェナジニウム(NMP+)、ヒドロキノン、3−ジメチルアミノ安息香酸(MBTHDMAB)、3−メチル−2−ベンゾチオゾリノンヒドラゾン、2−メトキシ−4−アリルフェノール、4−アミノアンチピリン(AAP)、ジメチルアニリン、4−アミノアンチピレン、4−メトキシナフトール、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2−アジノ−ジ−[3−エチル−ベンズチアゾリンスルホナート]、o−ジアニシジン、o−トルイジン、2,4−ジクロロフェノール、4−アミノフェナゾン、ベンジジン、プルシアンブルー、ビピリジン−オスミウム錯体などの従来使用されている化合物を使用してもよい。
【0062】
本発明に係る方法において、ステップ4は、第1電極部において計算されたヘマトクリット値を適用することによって、第2電極部において計算されたグルコース濃度を補正するステップである。第1および第2電極部の測定順序は、限定されない。
【0063】
特に、ヘマトクリットは、第1電極部において測定された伝導率値を使用して、測定デバイスに事前に入力されたヘマトクリットの補正方程式を介して測定される。そして、測定値の高い精度は、ヘマトクリットの影響が事前に入力された各ヘマトクリットの補正方程式を使用して反映される補正値の中へ、第2電極部において測定された血液グルコース値を計算することで得られる。
【0064】
上記のように、本発明に係る、測定されたヘマトクリット値を補正するための第1電極部、および、グルコース濃度を測定するための第2電極部を含む、電気化学的バイオセンサは、絶縁カバーが作用電極および補助電極よりも薄く作成され、印刷中に位置付け誤差が生じた場合であっても、絶縁カバーによって、血液サンプルに対して露出している第1電極部の第1作用電極および第1補助電極の面積が同じになり、第1作用電極および第1補助電極の間の距離が一定になり、電極の面積が一定に保持されるため、測定されたヘマトクリット値の精度をより向上させる効果があり、さらに、補正のために測定されたヘマトクリット値を使用して測定された血液グルコース濃度の精度をより向上させる。
【0065】
本発明を実施するための形態
以下、本発明は、下記の例を参照してより詳細に説明される。しかしながら、下記の例は、例示を目的としたものであり、本発明の内容を限定することを意図していない。
【0066】
<例1>ヘマトクリット値を測定するための作用電極および補助電極の面積が絶縁カバーによって一定に規定されたプレーナーバイオセンサの製造1。
図1に示されるように、平均値0.5μlの導入量のセル導入部を有するプレーナーバイオセンサが、プレーナーバイオセンサの例として製造された。プレーナーバイオセンサは、韓国特許出願10−2003−0036804号明細書、韓国特許出願10−2005−0010720号明細書、韓国特許出願10−2007−0020447号明細書、韓国特許出願10−2007−0021086号明細書、韓国特許出願10−2007−0025106号明細書、韓国特許出願10−2007−0030346号明細書、および、E. K. Bauman et al., Analytical Chemistry, vol 37, p 1378, 1965; K. B. Oldham in "Microelectrodes: Theory and Applications," Kluwer Academic Publishers, 1991., などに公開された方法を参照して製造された。
【0067】
図1において、
1は、ポリエステルで作られた下部基板であり、その上には作用電極および補助電極が形成されている。
2〜5は、スクリーン印刷炭素/グラファイトで製造された電極である(2は、第1作用電極、3は、第1補助電極、4は、第2作用電極、5は、第2補助電極)。
6は、第1電極部および第2電極部を規定し、同様に第1作用電極および第1補助電極の面積を規定する、絶縁カバーである。
7は、酸化還元酵素および電子移動メディエータを含む、試薬層である。
【0068】
8は、0.10mmの厚さを有し、血液サンプルを第1電極部および第2電極部に連続的に導くためのマイクロチャネルサンプルセル部を具備する、中間基板であって、中間基板は、その両面に塗布された接着剤を介して、下部基板および上部基板を取り付ける役目を果たす。
9は、ポリエステルで作成され、マイクロチャネルサンプルセル部の中へ血液を浸透させるための排気口を具備する、上部基板である。
10は、排気口である。
【0069】
<比較例1>ヘマトクリットを測定するための作用電極および補助電極の面積が規定されていないプレーナーバイオセンサの製造1。
図3に示されるように、バイオセンサは、例1と同じ方法で製造され、絶縁カバー6は、第1作用電極および第2作用電極の間には配置されていない。
【0070】
<比較例2>ヘマトクリットを測定するための作用電極および補助電極の面積が規定されていないプレーナーバイオセンサの製造2
図4に示されるように、バイオセンサは、例1と同じ方法で製造され、絶縁カバー6は、第1および第2電極が血液流入方向の方向に対して連続的に位置付けられ、絶縁カバーによって規定されないように提供される。
【0071】
<実験例1>ヘマトクリットのための伝導率測定
例1、比較例1および2において製造されたバイオセンサのヘマトクリット測定の精度を調査するために、以下のような実験が行われた。
特に、最大振幅81mv、2.5kHzの交流周波数が、第1電極に適用され、0、10、20、30、40、50、60および70%のヘマトクリットを有する準備がある血液の伝導率が5回測定された。結果は、下の表1および図8〜10に示される。
【表1】
【0072】
図8は、例1で製造されたセンサを使用した、電気伝導率対ヘマトクリットの測定結果を示すグラフである(ここで、%Hctは、%ヘマトクリットを意味する)。
図9は、比較例1で製造されたセンサを使用した、電気伝導率対ヘマトクリットの測定結果を示すグラフである(ここで、%Hctは、%ヘマトクリットを意味する)。
図10は、比較例2で製造されたセンサを使用した、電気伝導率対ヘマトクリットの測定結果を示すグラフである(ここで、%Hctは、%ヘマトクリットを意味する)。
【0073】
図8〜10に示されるように、%ヘマトクリット毎の伝導率の傾きは、第1作用電極および第2作用電極の間の距離(d1)が、比較例1における距離(d2)よりも長いため(背景技術節、式(1)参照)、例1において−0.0008として測定され、比較例1において−0.0011として測定される。
【0074】
表1に示されるように、平均標準偏差を傾き
【数1】
で除して得られる値は、例1において、−0.703、比較例1において、−2.648である。したがって、例1のバイオセンサは、約3.8倍(=(−2.648)/(−0.703))のより正確な性能を示すといえる。さらに、平均標準偏差を傾き
【数2】
で除して得られる値は、比較例2において、−2.094である。したがって、例1におけるバイオセンサは、約4.1倍(=(−2.904)/(−0.703))のより正確な性能を示すといえる。さらに、比較例2の構造は、測定に必要な血液の量が増加するため、利用者の利便性の観点から望ましくない。
【0075】
図5に示されるように、これらの結果は、本発明に係る絶縁カバーが、炭素/グラファイトの厚さの2倍以上薄い厚さであり、それゆえにより精度よく面積を規定するのに効果的であることを示している。また、図7に示されるように、印刷された炭素/グラファイト電極の傾斜端部は、丸くなり面積を微妙に規定することを困難にする一方で、図6に示されたような絶縁カバーがその上に印刷された炭素/グラファイト電極の傾斜端部は、略直角を有するように規定することができることが見出された。
【0076】
したがって、本発明に係る電気化学的バイオセンサは、絶縁カバーによって、第1および第2反応ユニットに露出している第1作用電極および第1補助電極の面積およびその間の距離を可能な限り一定に保持することによって、測定精度を大きく向上する効果を有するため、本発明は、電気化学的バイオセンサとして有益である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上記のように、本発明によれば、測定されたヘマトクリット値を補正するための第1電極部、および、グルコース濃度を測定するための第2電極部を含む、電気化学的バイオセンサは、絶縁カバーが作用電極および補助電極よりも薄く作成されるため、印刷中に位置決め誤差が生じた場合であっても、絶縁カバーによって、血液サンプルに対して露出している第1電極部の第1作用電極および第1補助電極の面積が同じになり、第1作用電極および第1補助電極の間の距離が一定になり、電極の面積が一定に保持されるため、測定されたヘマトクリット値の精度をより向上させる効果があり、さらに、補正のために測定されたヘマトクリット値を使用して測定された血液グルコース濃度の精度をより向上させる。
【符号の説明】
【0078】
1:下部基板
2:第1作用電極
3:第1補助電極
4:第2作用電極
5:第2補助電極
6:絶縁カバー
7:試薬層
8:中間基板
9:上部基板
10:排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10