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停止状態の前記油圧シリンダが動作を開始するときの前記操作指令値に対する前記シリンダ速度の動作開始点である動作開始操作指令値を導出するためのデータの取得と、前記微速度動作特性を導出するためのデータの取得と、前記通常速度動作特性を導出するためのデータの取得とを連続して実行するシーケンス制御部を備える請求項3に記載の建設機械の制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0017】
[油圧ショベルの全体構成]
図1は、本実施形態に係る建設機械100の一例を示す斜視図である。本実施形態においては、建設機械100が、油圧により作動する作業機2を備える油圧ショベル100である例について説明する。
【0018】
図1に示すように、油圧ショベル100は、車両本体1と、作業機2と、作業機2を駆動する油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)とを備える。後述するように、油圧ショベル100には掘削制御を実行する制御システム200が搭載されている。
【0019】
車両本体1は、旋回体3と、運転室4と、走行装置5とを有する。旋回体3は、走行装置5の上に配置される。走行装置5は、旋回体3を支持する。旋回体3を、上部旋回体3、と称してもよい。走行装置5を、下部走行体5、と称してもよい。旋回体3は、旋回軸AXを中心に旋回可能である。運転室4に、オペレータが着座する運転席4Sが設けられる。オペレータは、運転室4において油圧ショベル100を操作する。走行装置5は、一対の履帯5Crを有する。履帯5Crの回転により、油圧ショベル100が走行する。なお、走行装置5が車輪(タイヤ)を含んでもよい。
【0020】
本実施形態においては、運転席4Sを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席4Sを基準とした前後方向をいう。左右方向とは、運転席4Sを基準とした左右方向をいう。運転席4Sが正面に正対する方向を前方向とし、前方向の反対の方向を後方向とする。運転席4Sが正面に正対したときの側方向の一方向(右側)及び他方向(左側)をそれぞれ右方向及び左方向とする。
【0021】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有する。旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられる。エンジンルーム9に、エンジン及び油圧ポンプなどが配置される。
【0022】
作業機2は、旋回体3に支持される。作業機2は、旋回体3に接続されるブーム6と、ブーム6に接続されるアーム7と、アーム7に接続されるバケット8とを含む。作業機2は、油圧シリンダによって駆動される。作業機2を駆動するための油圧シリンダは、ブーム6を駆動するブームシリンダ10と、アーム7を駆動するアームシリンダ11と、バケット8を駆動するバケットシリンダ12とを含む。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される。
【0023】
ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して旋回体3に接続される。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に接続される。バケット8は、バケットピン15を介してアーム7の先端部に接続される。ブーム6は、ブームピン13を中心に回転可能である。アーム7は、アームピン14を中心に回転可能である。バケット8は、バケットピン15を中心に回転可能である。アーム7及びバケット8のそれぞれは、ブーム6の先端側で移動可能な可動部材である。
【0024】
図2は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す側面図である。
図3は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す背面図である。
図2に示すように、ブーム6の長さL1は、ブームピン13とアームピン14との距離である。アーム7の長さL2は、アームピン14とバケットピン15との距離である。バケット8の長さL3は、バケットピン15とバケット8の先端部8aとの距離である。本実施形態において、バケット8は、複数の刃を有する。以下の説明において、バケット8の先端部8aを適宜、刃先8a、と称する。
【0025】
なお、バケット8は、刃を有していなくてもよい。バケット8の先端部は、ストレート形状の鋼板で形成されてもよい。
【0026】
図2に示すように、油圧ショベル100は、ブームシリンダ10に配置されたブームシリンダストロークセンサ16と、アームシリンダ11に配置されたアームシリンダストロークセンサ17と、バケットシリンダ12に配置されたバケットシリンダストロークセンサ18とを有する。ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ10のストローク長が求められる。アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ11のストローク長が求められる。バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ12のストローク長が求められる。
【0027】
以下の説明においては、ブームシリンダ10のストローク長を適宜、ブームシリンダ長、と称し、アームシリンダ11のストローク長を適宜、アームシリンダ長、と称し、バケットシリンダ12のストローク長を適宜、バケットシリンダ長、と称する。また、以下の説明において、ブームシリンダ長、アームシリンダ長、及びバケットシリンダ長を適宜、シリンダ長データL、と総称する。
【0028】
油圧ショベル100は、油圧ショベル100の位置を検出可能な位置検出装置20を備えている。位置検出装置20は、アンテナ21と、グローバル座標演算部23と、IMU(Inertial Measurement Unit)24とを有する。
【0029】
アンテナ21は、GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)用のアンテナである。アンテナ21は、RTK−GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite Systems)用アンテナである。アンテナ21は、旋回体3に設けられる。本実施形態において、アンテナ21は、旋回体3の手すり19に設けられる。なお、アンテナ21は、エンジンルーム9の後方向に設けられてよい。例えば、旋回体3のカウンタウェイトにアンテナ21が設けられてもよい。アンテナ21は、受信した電波(GNSS電波)に応じた信号をグローバル座標演算部23に出力する。
【0030】
グローバル座標演算部23は、グローバル座標系におけるアンテナ21の設置位置P1を検出する。グローバル座標系は、作業エリアに設置した基準位置Prを元にした3次元座標系(Xg,Yg,Zg)である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態において、基準位置Prは、作業エリアに設定された基準杭の先端の位置である。またローカル座標系とは、油圧ショベル100を基準とした、(X、Y、Z)で示される3次元座標系である。ローカル座標系の基準位置は、旋回体3の旋回軸(旋回中心)AXに位置する基準位置P2を示すデータである。
【0031】
本実施形態において、アンテナ21は、車幅方向に離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21A及び第2アンテナ21Bを含む。グローバル座標演算部23は、第1アンテナ21Aの設置位置P1a及び第2アンテナ21Bの設置位置P1bを検出する。
【0032】
グローバル座標演算部23は、グローバル座標で表される基準位置データPを取得する。本実施形態において、基準位置データPは、旋回体3の旋回軸(旋回中心)AXに位置する基準位置P2を示すデータである。なお、基準位置データPは、設置位置P1を示すデータでもよい。本実施形態において、グローバル座標演算部23は、2つの設置位置P1a及び設置位置P1bに基づいて旋回体方位データQを生成する。旋回体方位データQは、設置位置P1aと設置位置P1bとで決定される直線がグローバル座標の基準方位(例えば北)に対してなす角度に基づいて決定される。旋回体方位データQは、旋回体3(作業機2)が向いている方位を示す。グローバル座標演算部23は、後述する表示コントローラ28に基準位置データP及び旋回体方位データQを出力する。
【0033】
IMU24は、旋回体3に設けられる。本実施形態において、IMU24は、運転室4の下部に配置される。旋回体3において、運転室4の下部に高剛性のフレームが配置される。IMU24は、そのフレーム上に配置される。なお、IMU24は、旋回体3の旋回軸AX(基準位置P2)の側方(右側又は左側)に配置されてもよい。IMU24は、車両本体1の左右方向に対する傾斜角θ4と、車両本体1の前後方向に対する傾斜角θ5とを検出する。
【0034】
[制御システムの構成]
次に、本実施形態に係る制御システム200の概要について説明する。
図4は、本実施形態に係る制御システム200の機能構成を示すブロック図である。
【0035】
制御システム200は、作業機2を用いる掘削処理を制御する。掘削処理の制御は、制限掘削制御を含む。
図4に示すように、制御システム200は、ブームシリンダストロークセンサ16と、アームシリンダストロークセンサ17と、バケットシリンダストロークセンサ18と、アンテナ21と、グローバル座標演算部23と、IMU24と、操作装置25と、作業機コントローラ26と、圧力センサ66と、圧力センサ67と、圧力センサ68と、制御弁27と、方向制御弁64と、表示コントローラ28と、表示部29と、センサコントローラ30と、マンマシンインターフェース部32とを備えている。
【0036】
操作装置25は、運転室4に配置される。オペレータにより操作装置25が操作される。操作装置25は、作業機2を駆動するためのオペレータの操作指令の入力を受け付ける。本実施形態において、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。
【0037】
以下の説明においては、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)を作動するためにその油圧シリンダに供給される油を適宜、作動油、と称する。本実施形態においては、方向制御弁64により、油圧シリンダに対する作動油の供給量が調整される。方向制御弁64は、供給される油によって作動する。以下の説明においては、方向制御弁64を作動するためにその方向制御弁64に供給される油を適宜、パイロット油、と称する。また、パイロット油の圧力を適宜、パイロット油圧、と称する。
【0038】
作動油及びパイロット油は、同一の油圧ポンプから送出されてもよい。例えば、メイン油圧ポンプから送出された作動油の一部が減圧弁で減圧され、その減圧された作動油がパイロット油として使用されてもよい。また、作動油を送出する油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ)と、パイロット油を送出する油圧ポンプ(パイロット油圧ポンプ)とが別の油圧ポンプでもよい。
【0039】
操作装置25は、パイロット油が流れるパイロット油路50およびパイロット油路450と接続され、操作量に応じてパイロット油圧を調整可能な圧力調整弁250を有する。操作装置25は、第1操作レバー25Rと、第2操作レバー25Lとを有する。本実施形態において、操作装置25の操作量は、操作レバー(25R、25L)を傾ける角度を含む。オペレータが操作レバー(25R、25L)を操作することによって、その操作量(角度)に応じてパイロット油圧が調整されパイロット油路50のパイロット油がパイロット油路450へ供給される。
【0040】
第1操作レバー25Rは、例えば運転席4Sの右側に配置される。第2操作レバー25Lは、例えば運転席4Sの左側に配置される。第1操作レバー25R及び第2操作レバー25Lでは、前後左右の動作が2軸の動作に対応している。
【0041】
第1操作レバー25Rにより、ブーム6及びバケット8が操作される。第1操作レバー25Rの前後方向の操作は、ブーム6の上下方向の動作に対応する。第1操作レバー25Rが前後方向に操作されることにより、ブーム6の下げ動作及び上げ動作が実行される。ブーム6を操作するために第1操作レバー25Rが操作され、パイロット油路450にパイロット油が供給されたときの圧力センサ66に発生する検出圧力を検出圧力MBとする。第1操作レバー25Rの左右方向の操作は、バケット8の上下方向の動作に対応する。第1操作レバー25Rが左右方向に操作されることにより、バケット8の下げ動作及び上げ動作が実行される。バケット8を操作するために第1操作レバー25Rが操作され、パイロット油路450にパイロット油が供給されたときの圧力センサ66に発生する検出圧力を検出圧力MTとする。
【0042】
第2操作レバー25Lにより、アーム7及び旋回体3が操作される。第2操作レバー25Lの前後方向の操作は、アーム7の上下方向の動作に対応する。第2操作レバー25Lが前後方向に操作されることにより、アーム7の下げ動作及び上げ動作が実行される。アーム7を操作するために第2操作レバー25Lが操作され、パイロット油路450にパイロット油が供給されたときの圧力センサ66に発生する検出圧力を検出圧力MAとする。第2操作レバー25Lの左右方向の操作は、旋回体3の旋回動作に対応する。第2操作レバー25Lが左右方向に操作されることにより、旋回体3の右旋回動作及び左旋回動作が実行される。
【0043】
本実施形態において、ブーム6の上げ動作は、ダンプ動作に相当する。ブーム6の下げ動作は、掘削動作に相当する。アーム7の上げ動作は、ダンプ動作に相当する。アーム7の下げ動作は、掘削動作に相当する。バケット8の上げ動作は、ダンプ動作に相当する。バケット8の下げ動作は、掘削動作に相当する。なお、アーム7の下げ動作を曲げ動作と称してもよい。アーム7の上げ動作を伸長動作と称してもよい。
【0044】
メイン油圧ポンプから送出され、減圧弁によってパイロット油圧に減圧されたパイロット油が操作装置25に供給される。操作装置25の操作量に基づいてパイロット油圧が調整され、そのパイロット油圧に応じて、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0045】
第1操作レバー25Rは、ブーム6の駆動のために前後方向に操作される。前後方向に関する第1操作レバー25Rの操作量(ブーム操作量)に応じて、ブーム6を駆動するためのブームシリンダ10に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0046】
第1操作レバー25Rは、バケット8の駆動のために左右方向に操作される。左右方向に関する第1操作レバー25Rの操作量(バケット操作量)に応じて、バケット8を駆動するためのバケットシリンダ12に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0047】
第2操作レバー25Lは、アーム7の駆動のために前後方向に操作される。前後方向に関する第2操作レバー25Lの操作量(アーム操作量)に応じて、アーム7を駆動するためのアームシリンダ11に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0048】
第2操作レバー25Lは、旋回体3の駆動のために左右方向に操作される。左右方向に関する第2操作レバー25Lの操作量に応じて、旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータに供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0049】
第1操作レバー25Rは、中立状態(ニュートラル状態)、中立状態から前方向に傾くように操作される前方操作状態、中立状態から後方向に傾くように操作される後方操作状態、中立状態から右方向に傾くように操作される右方操作状態、及び中立状態から左方向に傾くように操作される左方操作状態の少なくとも一つの状態になるように、オペレータに操作される。第1操作レバー25Rが前方操作状態及び後方操作状態の少なくとも一方に操作されることによって、ブームシリンダ10の方向制御弁64が駆動される。第1操作レバー25Rが右方操作状態及び左方操作状態に操作されることによって、バケットシリンダ12の方向制御弁64が駆動される。第1操作レバー25Rが中立状態に維持されることによって、ブームシリンダ10の方向制御弁64及びバケットシリンダ12の方向制御弁64は、駆動されない。
【0050】
第2操作レバー25Lは、中立状態(ニュートラル状態)、中立状態から前方向に傾くように操作される前方操作状態、中立状態から後方向に傾くように操作される後方操作状態、中立状態から右方向に傾くように操作される右方操作状態、及び中立状態から左方向に傾くように操作される左方操作状態の少なくとも一つの状態になるように、オペレータに操作される。第2操作レバー25Lが前方操作状態及び後方操作状態の少なくとも一方に操作されることによって、アームシリンダ11の方向制御弁64が駆動される。第2操作レバー25Lが右方操作状態及び左方操作状態に操作されることによって、旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータが駆動される。第2操作レバー25Lが中立状態に維持されることによって、アームシリンダ11の方向制御弁64及び旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータは、駆動されない。
【0051】
第1操作レバー25Rが前後方向の可動範囲において最も前方向の端部又は最も後方向の端部に操作されることによって、ブームシリンダ10のシリンダ速度は、最大値を示す。第1操作レバー25Rが左右方向の可動範囲において最も右方向の端部又は最も左方向の端部に操作されることによって、バケットシリンダ12のシリンダ速度は、最大値を示す。第1操作レバー25Rが中立状態に維持されることによって、ブームシリンダ10のシリンダ速度及びバケットシリンダ12のシリンダ速度は、最小値(零)を示す。
【0052】
第2操作レバー25Lが前後方向の可動範囲において最も前方向の端部又は最も後方向の端部に操作されることによって、アームシリンダ11のシリンダ速度は、最大値を示す。第2操作レバー25Lが左右方向の可動範囲において最も右方向の端部又は最も左方向の端部に操作されることによって、旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータの駆動速度は、最大値を示す。第2操作レバー25Lが中立状態に維持されることによって、アームシリンダ11のシリンダ速度及び旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータの駆動速度は、最小値(零)を示す。
【0053】
以下の説明において、第1操作レバー25R及び第2操作レバー25Lが可動範囲の端部に配置される状態を適宜、フルレバー状態、と称する。フルレバー状態において、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)のシリンダ速度は、最大値を示す。
【0054】
なお、第1操作レバー25Rの左右方向の操作がブーム6の操作に対応し、前後方向の操作がバケット8の操作に対応してもよい。なお、第2操作レバー25Lの左右方向がアーム7の操作に対応し、前後方向の操作が旋回体3の操作に対応してもよい。
【0055】
圧力センサ66及び圧力センサ67は、パイロット油路450に配置される。圧力センサ66及び圧力センサ67は、パイロット油圧を検出する。圧力センサ66及び圧力センサ67の検出結果は、作業機コントローラ26に出力される。
【0056】
制御弁27は、パイロット油路450に配置される。制御弁27は、パイロット油圧を調整可能である。制御弁27は、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて作動する。制御弁27が作動することにより、その制御弁27によって調整されたパイロット油圧が方向制御弁64に作用する。方向制御弁64は、パイロット油圧に基づいて作動して、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)に対する作動油の供給量を調整する。
【0057】
すなわち、本実施形態において、パイロット油圧は、操作装置25のみならず、制御弁27によっても調整される。パイロット油圧が調整されることによって、方向制御弁64を介して油圧シリンダに対する作動油の供給量が調整される。
【0058】
マンマシンインターフェース部32は、入力部31及び表示部(モニタ)322を有する。本実施形態において、入力部321は、表示部322の周囲に配置される操作ボタンを含む。なお、入力部321がタッチパネルを含んでもよい。マンマシンインターフェース部32を、マルチモニタ32、と称してもよい。入力部321は、オペレータによって操作される。入力部321の操作により生成された指令信号は、作業機コントローラ26に出力される。作業機コントローラ26は、表示部322を制御して、その表示部322に所定の情報を表示させる。
【0059】
ロックレバー(不図示)は、パイロット油路50の遮断を機械的に行うためにオペレータに操作される。ロックレバーは、運転室4に配置される。ロックレバーの操作により、パイロット油路50が閉じる。ロックレバーが操作され、パイロット油路50が遮断されると、パイロット油路50に設置される圧力センサ68の検出圧力が低下し、低下した圧力センサ68の検出値が作業機コントローラ26に出力され、遮断状態と判断される。例えば、オペレータが運転室4から離れるとき、パイロット油路50が閉じるように、ロックレバーが操作される。これにより、オペレータが運転室4に居ないにもかかわらず、パイロット油圧が方向制御弁64に作用したり、作業機2が動いたりすることが抑制される。作業機2(油圧ショベル100)を作動させるとき、ロックレバーによるパイロット油路50の遮断が解除され、パイロット油路50が開く。これにより、作業機2は駆動可能な状態となる。また、ロックレバーの操作を検出するスイッチ等の電気信号により遮断状態を判断してもよい。
【0060】
図5は、作業機コントローラ26、表示コントローラ28、及びセンサコントローラ30を示すブロック図である。センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ長を算出する。ブームシリンダストロークセンサ16は、周回動作に伴う位相変位のパルスをセンサコントローラ30に出力する。センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16から出力された位相変位のパルスに基づいて、ブームシリンダ長を算出する。同様に、センサコントローラ30は、アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ長を算出する。センサコントローラ30は、バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ長を算出する。
【0061】
センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて取得されたブームシリンダ長から、旋回体3の垂直方向に対するブーム6の傾斜角θ1(
図2参照)を算出する。センサコントローラ30は、アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて取得されたアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2(
図2参照)を算出する。センサコントローラ30は、バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて取得されたバケットシリンダ長を取得から、アーム7に対するバケット8の刃先8aの傾斜角θ3(
図2参照)を算出する。
【0062】
なお、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、及びバケット8の傾斜角θ3は、シリンダストロークセンサで検出されなくてもよい。ロータリーエンコーダのような角度検出器でブーム6の傾斜角θ1が検出されてもよい。角度検出器は、旋回体3に対するブーム6の屈曲角度を検出して、傾斜角θ1を検出する。同様に、アーム7の傾斜角θ2がアーム7に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。バケット8の傾斜角θ3がバケット8に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。
【0063】
センサコントローラ30は、各シリンダストロークセンサ16、17、18の検出結果からシリンダ長データLを取得する。センサコントローラ30は、IMU24から出力される傾斜角θ4のデータ及び傾斜角θ5のデータを出力する。センサコントローラ30は、シリンダ長データL、傾斜角θ4のデータ、及び傾斜角θ5のデータを、表示コントローラ28及び作業機コントローラ26のそれぞれに出力する。
【0064】
上述のように、本実施形態においては、シリンダストロークセンサ(16、17、18)の検出結果、及びIMU24の検出結果がセンサコントローラ30に出力され、センサコントローラ30が所定の演算処理を行う。本実施形態において、センサコントローラ30の機能が、作業機コントローラ26で代用されてもよい。例えば、シリンダストロークセンサ(16、17、18)の検出結果が作業機コントローラ26に出力され、作業機コントローラ26が、シリンダストロークセンサ(16、17、18)の検出結果に基づいて、シリンダ長(ブームシリンダ長、アームシリンダ長、及びバケットシリンダ長)を算出してもよい。IMU24の検出結果が、作業機コントローラ26に出力されてもよい。
【0065】
表示コントローラ28は、目標施工情報格納部28Aと、バケット位置データ生成部28Bと、目標掘削地形データ生成部28Cとを有する。表示コントローラ28は、グローバル座標演算部23から、基準位置データP及び旋回体方位データQを取得する。表示コントローラ28は、センサコントローラ30から傾斜角θ1、θ2、θ3を示すシリンダ傾斜データを取得する。
【0066】
作業機コントローラ26は、表示コントローラ28から、基準位置データP、旋回体方位データQ、及びシリンダ長データLを取得する。作業機コントローラ26は、基準位置データP、旋回体方位データQ、及び傾斜角θ1、θ2、θ3に基づいて、バケット8の3次元の位置P3を示すバケット位置データを生成する。本実施形態において、バケット位置データは、刃先8aの3次元位置を示す刃先位置データSである。
【0067】
バケット位置データ生成部28Bは、基準位置データP、旋回体方位データQ、及び傾斜角θ1〜θ3に基づいて、バケット8の3次元位置を示すバケット位置データ(刃先位置データS)を生成する。すなわち、本実施形態において、作業機コントローラ26及び表示コントローラ28のそれぞれが、刃先位置データSを生成する。なお、表示コントローラ28は、作業機コントローラ26から刃先位置データSを取得してもよい。
【0068】
バケット位置データ生成部28Bは、刃先位置データSと目標施工情報格納部28Aに格納する後述する目標施工情報Tを用いて、掘削対象の目標形状を示す目標掘削地形Uを生成する。また、表示コントローラ28は、表示部29に目標掘削地形U及び刃先位置データSを表示させる。表示部29は、例えばモニタであり、油圧ショベル100の各種の情報を表示する。本実施形態において、表示部29は、情報化施工用のガイダンスモニタとしてのHMI(Human Machine Interface)モニタを含む。
【0069】
目標施工情報格納部28Aは、作業エリアの目標形状である立体設計地形を示す目標施工情報(立体設計地形データ)Tを格納している。目標施工情報Tは、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形(設計地形データ)Uを生成するために必要とされる座標データ及び角度データを含む。目標施工情報Tは、例えば無線通信装置を介して表示コントローラ28に供給されてもよい。なお、刃先8aの位置情報は、メモリ等の接続式記録装置から転送されてもよい。
【0070】
目標掘削地形データ生成部28Cは、目標施工情報Tと刃先位置データSとに基づいて、
図6に示すように、旋回体3の前後方向で規定する作業機2の作業機動作平面MPと立体設計地形との交線Eを目標掘削地形Uの候補線として取得する。目標掘削地形データ生成部28Cは、目標掘削地形Uの候補線において刃先8aの直下点を目標掘削地形Uの基準点APとする。表示コントローラ28は、目標掘削地形Uの基準点APの前後の単数又は複数の変曲点とその前後の線を掘削対象となる目標掘削地形Uとして決定する。目標掘削地形データ生成部28Cは、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形Uを生成する。目標掘削地形データ生成部28Cは、目標掘削地形Uに基づいて、表示部29に目標掘削地形Uを表示させる。目標掘削地形Uは、掘削作業に使用される作業用データである。表示部29の表示に使用される表示用の設計地形データに基づいて、表示部29に目標掘削地形Uが表示される。
【0071】
表示コントローラ28は、位置検出装置20による検出結果に基づいて、グローバル座標系で見たときのローカル座標の位置を算出可能である。ローカル座標系とは、油圧ショベル100を基準とする3次元座標系である。ローカル座標系の基準位置は、例えば、旋回体3の旋回中心AXに位置する基準位置P2である。
【0072】
作業機コントローラ26は、目標速度決定部52と、距離取得部53と、制限速度決定部54と、作業機制御部57を有する。作業機コントローラ26は検出圧力MB、MA、MTを取得し、センサコントローラ30より傾斜角θ1、θ2、θ3、θ5を取得し、表示コントローラ28から目標掘削地形Uを取得し、制御弁27への制御信号CBIを出力する。
【0073】
目標速度決定部52は、車両本体1の前後方向に対する傾斜角θ5と、圧力センサ66より取得される検出圧力MB、MA、MTをブーム6、アーム7、バケット8の各作業機の駆動の為のレバー操作に対応した目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bkとして算出する。
【0074】
距離取得部53は、表示コントローラ28よりも短い周期(例えば10msec.毎)でバケット8の刃先8aの距離のピッチ補正を行うとき、傾斜角θ1、θ2、θ3に加えて、IMU24から出力される角度θ5も使用する。ローカル座標系の基準位置P2とアンテナ21の設置位置P1との位置関係は既知である。作業機コントローラ26は、位置検出装置20による検出結果とアンテナ21の位置情報とから、ローカル座標系における刃先8aの位置P3を示す刃先位置データSを算出する。
【0075】
距離算出部53は、表示コントローラ28より目標掘削地形Uを取得する。作業機コントローラ26は、取得したローカル座標系における刃先8aの位置P3を示す刃先位置データS及び目標掘削地形Uに基づいて、目標掘削地形Uに垂直な方向におけるバケット8の刃先8aと目標掘削地形Uとの距離dを算出する。
【0076】
制限速度決定部54は、距離dに応じた目標掘削地形Uに対する垂直方向の制限速度を取得する。制限速度は、作業機コントローラ26の記憶部26G(
図24参照)に予め記憶(格納)されたテーブル情報又はグラフ情報を含む。また、制限速度決定部54は、目標速度決定部52から取得した刃先8aの目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bkに基づいて、刃先8aの目標掘削地形Uに対する垂直方向の相対速度を算出する。作業機コントローラ26は、距離dに基づいて刃先8aの制限速度Vc_lmtを算出する。制限速度決定部54は、距離dと目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bkと制限速度Vc_lmtとに基づいて、ブーム6の移動を制限するブーム制限速度Vc_bm_lmtを算出する。
【0077】
作業機制御部57は、ブーム制限速度Vc_bm_lmtを取得し、刃先8aの相対速度が制限速度以下になるように、ブーム制限速度Vc_bm_lmtに基づいて、ブームシリンダ10へ上げ指令を行うための制御弁27Cへの制御信号CBIを生成する。作業機コントローラ26は、ブーム6の速度を行うための制御信号をブームシリンダ10に接続された制御弁27Cに出力する。
【0078】
以下、
図7のフローチャート、及び
図8から
図15の模式図を参照して、本実施形態に係る制限掘削制御の一例について説明する。
図7は、本実施形態に係る制限掘削制御の一例を示すフローチャートである。
【0079】
上述のように、目標掘削地形Uが設定される(ステップSA1)。目標掘削地形Uが設定された後、作業機コントローラ26は、作業機2の目標速度Vcを決定する(ステップSA2)。作業機2の目標速度Vcは、ブーム目標速度Vc_bm、アーム目標速度Vc_am、及びバケット目標速度Vc_bktを含む。ブーム目標速度Vc_bmは、ブームシリンダ10のみが駆動されるときの刃先8aの速度である。アーム目標速度Vc_amは、アームシリンダ11のみが駆動されるときの刃先8aの速度である。バケット目標速度Vc_bktは、バケットシリンダ12のみが駆動されるときの刃先8aの速度である。ブーム目標速度Vc_bmは、ブーム操作量に基づいて算出される。アーム目標速度Vc_amは、アーム操作量に基づいて算出される。バケット目標速度Vc_bktは、バケット操作量に基づいて算出される。
【0080】
作業機コントローラ26の記憶部26Gに、ブーム操作量とブーム目標速度Vc_bmとの関係を規定する目標速度情報が記憶されている。作業機コントローラ26は、目標速度情報に基づいて、ブーム操作量に対応するブーム目標速度Vc_bmを決定する。目標速度情報は、例えば、ブーム操作量に対するブーム目標速度Vc_bmの大きさが記述されたマップである。目標速度情報は、テーブル又は数式等の形態でもよい。目標速度情報は、アーム操作量とアーム目標速度Vc_amとの関係を規定する情報を含む。目標速度情報は、バケット操作量とバケット目標速度Vc_bktとの関係を規定する情報を含む。作業機コントローラ26は、目標速度情報に基づいて、アーム操作量に対応するアーム目標速度Vc_amを決定する。作業機コントローラ26は、目標速度情報に基づいて、バケット操作量に対応するバケット目標速度Vc_bktを決定する。
【0081】
図8に示すように、作業機コントローラ26は、ブーム目標速度Vc_bmを、目標掘削地形Uの表面に垂直な方向の速度成分(垂直速度成分)Vcy_bmと、目標掘削地形Uの表面に平行な方向の速度成分(水平速度成分と)Vcx_bmとに変換する(ステップSA3)。
【0082】
作業機コントローラ26は、基準位置データP及び目標掘削地形Uなどから、グローバル座標系の垂直軸に対するローカル座標系の垂直軸(旋回体3の旋回軸AX)の傾きと、グローバル座標系の垂直軸に対する目標掘削地形Uの表面の垂直方向における傾きとを求める。作業機コントローラ26は、これらの傾きからローカル座標系の垂直軸と目標掘削地形Uの表面の垂直方向との傾きを表す角度β1を求める。
【0083】
図9に示すように、作業機コントローラ26は、ローカル座標系の垂直軸とブーム目標速度Vc_bmの方向とのなす角度β2とから、三角関数により、ブーム目標速度Vc_bmを、ローカル座標系の垂直軸方向の速度成分VL1_bmと、水平軸方向の速度成分VL2_bmとに変換する。
【0084】
図10に示すように、作業機コントローラ26は、ローカル座標系の垂直軸と目標掘削地形Uの表面の垂直方向との傾きβ1から、三角関数により、ローカル座標系の垂直軸方向における速度成分VL1_bmと、水平軸方向における速度成分VL2_bmとを、目標掘削地形Uに対する垂直速度成分Vcy_bm及び水平速度成分Vcx_bmに変換する。同様に、作業機コントローラ26は、アーム目標速度Vc_amを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amに変換する。作業機コントローラ26は、バケット目標速度Vc_bktを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに変換する。
【0085】
図11に示すように、作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aと目標掘削地形Uとの間の距離dを取得する(ステップSA4)。作業機コントローラ26は、刃先8aの位置情報及び目標掘削地形Uなどから、バケット8の刃先8aと目標掘削地形Uの表面との間の最短となる距離dを算出する。本実施形態においては、バケット8の刃先8aと目標掘削地形Uの表面との間の最短となる距離dに基づいて、制限掘削制御が実行される。
【0086】
作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aと目標掘削地形Uの表面との間の距離dに基づいて、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを算出する(ステップSA5)。作業機2全体の制限速度Vcy_lmtは、バケット8の刃先8aが目標掘削地形Uに接近する方向において許容できる刃先8aの移動速度である。作業機コントローラ26の記憶部261には、距離dと制限速度Vcy_lmtとの関係を規定する制限速度情報が記憶されている。
【0087】
図12は、本実施形態に係る制限速度情報の一例を示す。本実施形態において、刃先8aが目標掘削地形Uの表面の外方、すなわち油圧ショベル100の作業機2側に位置しているときの距離dは正の値であり、刃先8aが目標掘削地形Uの表面の内方、すなわち目標掘削地形Uよりも掘削対象の内部側に位置しているときの距離dは負の値である。
図11に示したように、刃先8aが目標掘削地形Uの表面の上方に位置しているときの距離dは正の値である。刃先8aが目標掘削地形Uの表面の下方に位置しているときの距離dは負の値である。また、刃先8aが目標掘削地形Uに対して侵食しない位置にあるときの距離dは正の値である。刃先8aが目標掘削地形Uに対して侵食する位置にあるときの距離dは負の値である。刃先8aが目標掘削地形U上に位置しているとき、すなわち刃先8aが目標掘削地形Uと接しているときの距離dは0である。
【0088】
本実施形態において、刃先8aが目標掘削地形Uの内方から外方に向かうときの速度を正の値とし、刃先8aが目標掘削地形Uの外方から内方に向かうときの速度を負の値とする。すなわち、刃先8aが目標掘削地形Uの上方に向かうときの速度を正の値とし、刃先8aが目標掘削地形Uの下方に向かうときの速度を負の値とする。
【0089】
制限速度情報において、距離dがd1とd2との間であるときの制限速度Vcy_lmtの傾きは、距離dがd1以上又はd2以下のときの傾きより小さい。d1は0より大きい。d2は0より小さい。目標掘削地形Uの表面付近の操作においては制限速度をより詳細に設定するために、距離dがd1とd2との間であるときの傾きを、距離dがd1以上又はd2以下であるときの傾きよりも小さくする。距離dがd1以上のとき、制限速度Vcy_lmtは負の値であり、距離dが大きくなるほど制限速度Vcy_lmtは小さくなる。つまり、距離dがd1以上のとき、目標掘削地形Uより上方において刃先8aが目標掘削地形Uの表面から遠いほど、目標掘削地形Uの下方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。距離dが0以下のとき、制限速度Vcy_lmtは正の値であり、距離dが小さくなるほど制限速度Vcy_lmtは大きくなる。つまり、バケット8の刃先8aが目標掘削地形Uより遠ざかる距離dが0以下のとき、目標掘削地形Uより下方において刃先8aが目標掘削地形Uから遠いほど、目標掘削地形Uの上方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
【0090】
距離dが所定値dth1以上では、制限速度Vcy_lmtは、Vminとなる。所定値dth1は正の値であり、d1より大きい。Vminは、目標速度の最小値よりも小さい。つまり、距離dが所定値dth1以上では、作業機2の動作の制限が行われない。したがって、刃先8aが目標掘削地形Uの上方において目標掘削地形Uから大きく離れているときには、作業機2の動作の制限、すなわち制限掘削制御が行われない。距離dが所定値dth1より小さいときに、作業機2の動作の制限が行われる。距離dが所定値dth1より小さいときに、ブーム6の動作の制限が行われる。
【0091】
作業機コントローラ26は、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtとアーム目標速度Vc_amとバケット目標速度Vc_bktとからブーム6の制限速度の垂直速度成分(制限垂直速度成分)Vcy_bm_lmtを算出する(ステップSA6)。
【0092】
図13に示すように、作業機コントローラ26は、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtから、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amと、バケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを算出する。
【0093】
図14に示すように、作業機コントローラ26は、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム6の制限速度(ブーム制限速度)Vc_bm_lmtに変換する(ステップSA7)。作業機コントローラ26は、ブーム6の回転角度θ1、アーム7の回転角度θ2、バケット8の回転角度θ3、車両本体位置データP、及び目標掘削地形Uなどから、目標掘削地形Uの表面に垂直な方向とブーム制限速度Vc_bm_lmtの方向との間の関係を求め、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム制限速度Vc_bm_lmtに変換する。この場合の演算は、前述したブーム目標速度Vc_bmから目標掘削地形Uの表面に垂直な方向の垂直速度成分Vcy_bmを求めた演算と逆の手順により行われる。その後、ブーム介入量に対応するシリンダ速度が決定され、シリンダ速度に対応した開放指令が制御弁27Cに出力される。
【0094】
レバー操作に基づくパイロット圧が油路451Bに充填され、ブーム介入に基づくパイロット圧が油路502に充填される。その圧力の大きい方をシャトル弁51が選択する(ステップSA8)。
【0095】
例えば、ブーム6を下降させる場合、ブーム6の下方へのブーム制限速度Vc_bm_lmtの大きさが、下方へのブーム目標速度Vc_bmの大きさよりも小さいときには、制限条件が満たされている。また、ブーム6を上昇させる場合、ブーム6の上方へのブーム制限速度Vc_bm_lmtの大きさが、上方へのブーム目標速度Vc_bmの大きさよりも大きいときには、制限条件が満たされている。
【0096】
作業機コントローラ26は、作業機2を制御する。ブーム6を制御する場合、作業機コントローラ26は、ブーム指令信号を制御弁27Cに送信することによって、ブームシリンダ10を制御する。ブーム指令信号は、ブーム指令速度に応じた電流値を有する。必要に応じて、作業機コントローラ26は、アーム7及びバケット8を制御する。作業機コントローラ26は、アーム指令信号を制御弁27に送信することによって、アームシリンダ11を制御する。アーム指令信号は、アーム指令速度に応じた電流値を有する。作業機コントローラ26は、バケット指令信号を制御弁27に送信することによって、バケットシリンダ12を制御する。バケット指令信号は、バケット指令速度に応じた電流値を有する。
【0097】
制限条件が満たされていない場合、シャトル弁51では油路451Bからの作動油の供給が選択され、通常運転が行われる(ステップSA9)。作業機コントローラ26は、ブーム操作量とアーム操作量とバケット操作量とに応じて、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを作動させる。ブームシリンダ10は、ブーム目標速度Vc_bmで作動する。アームシリンダ11は、アーム目標速度Vc_amで作動する。バケットシリンダ12はバケット目標速度Vc_bktで作動する。
【0098】
制限条件が満たされている場合、シャトル弁51では油路502からの作動油の供給が選択され、制限掘削制御が実行される(ステップSA10)。
【0099】
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtから、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtが算出される。したがって、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも小さいときには、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、ブームが上昇する負の値となる。
【0100】
したがって、ブーム制限速度Vc_bm_lmtは、負の値となる。この場合、作業機コントローラ27は、ブーム6を下降させるが、ブーム目標速度Vc_bmよりも減速させる。このため、オペレータの違和感を小さく抑えながらバケット8が目標掘削地形Uを侵食すること防止することができる。
【0101】
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも大きいときには、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、正の値となる。したがって、ブーム制限速度Vc_bm_lmtは、正の値となる。この場合、操作装置25がブーム6を下降させる方向に操作されていても、作業機コントローラ26は、ブーム6を上昇させる。このため、目標掘削地形Uの侵食の拡大を迅速に抑えることができる。
【0102】
刃先8aが目標掘削地形Uより上方に位置しているときには、刃先8aが目標掘削地形Uに近づくほど、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtの絶対値が小さくなるとともに、目標掘削地形Uの表面に平行な方向へのブーム6の制限速度の速度成分(制限水平速度成分)Vcx_bm_lmtの絶対値も小さくなる。したがって、刃先8aが目標掘削地形Uより上方に位置しているときには、刃先8aが目標掘削地形Uに近づくほど、ブーム6の目標掘削地形Uの表面に垂直な方向への速度と、ブーム6の目標掘削地形Uの表面に平行な方向への速度とがともに減速される。油圧ショベル100のオペレータによって左操作レバー25L及び右操作レバー25Rが同時に操作されることにより、ブーム6とアーム7とバケット8とが同時に動作する。このとき、ブーム6とアーム7とバケット8との各目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bktが入力されたとして、前述した制御を説明すると次の通りである。
【0103】
図15は、目標掘削地形Uとバケット8の刃先8aとの間の距離dが所定値dth1より小さく、バケット8の刃先8aが位置Pn1から位置Pn2に移動する場合のブーム6の制限速度の変化の一例を示している。位置Pn2での刃先8aと目標掘削地形Uとの間の距離は、位置Pn1での刃先8aと目標掘削地形Uとの間の距離よりも小さい。このため、位置Pn2でのブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmt1よりも小さい。したがって、位置Pn2でのブーム制限速度Vc_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム制限速度Vc_bm_lmt1よりも小さくなる。また、位置Pn2でのブーム6の制限水平速度成分Vcx_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム6の制限水平速度成分Vcx_bm_lmt1よりも小さくなる。ただし、このとき、アーム目標速度Vc_am及びバケット目標速度Vc_bktに対しては、制限は行われない。このため、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amと、バケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに対しては、制限は行われない。
【0104】
前述したように、アーム7に対して制限を行わないことにより、オペレータの掘削意思に対応するアーム操作量の変化は、バケット8の刃先8aの速度変化として反映される。このため、本実施形態は、目標掘削地形Uの侵食の拡大を抑制しながらオペレータの掘削時の操作における違和感を抑えることができる。
【0105】
このように、本実施形態においては、作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示す刃先位置データSとに基づいて、目標掘削地形Uとバケット8の刃先8aとの距離dに応じてバケット8が目標掘削地形Uに近づく相対速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制限する。作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示す刃先位置データSとに基づいて、目標掘削地形Uとバケット8の刃先8aとの距離dに応じて制限速度を決定し、作業機2が目標掘削地形Uに接近する方向の速度が制限速度以下になるように、作業機2を制御する。これにより、刃先8aに対する掘削制限制御が実行され、目標掘削地形Uに対する刃先8aの位置が制御される。
【0106】
以下の説明において、目標掘削地形Uに対する刃先8aの侵入が抑制されるように、ブームシリンダ10に接続された制御弁27に制御信号を出力して、ブーム6の位置を制御することを適宜、介入制御、と称する。
【0107】
介入制御は、目標掘削地形Uに対する垂直方向の刃先8aの相対速度が制限速度よりも大きいときに実行される。介入制御は、刃先8aの相対速度が制限速度よりも小さいときに実行されない。刃先8aの相対速度が制限速度よりも小さいことは、バケット8と目標掘削地形Uとが離れるように目標掘削地形Uに対してバケット8が移動することを含む。
【0108】
[シリンダストロークセンサ]
次に、
図16及び
図17を参照して、ブームシリンダストロークセンサ16について説明する。以下の説明においては、ブームシリンダ10に取り付けられたブームシリンダストロークセンサ16について説明する。アームシリンダ11に取付けられたアームシリンダストロークセンサ17なども同様である。
【0109】
ブームシリンダ10には、ブームシリンダストロークセンサ16が取り付けられている。ブームシリンダストロークセンサ16は、ピストンのストロークを計測する。
図16に示すように、ブームシリンダ10は、シリンダチューブ10Xと、シリンダチューブ10X内においてシリンダチューブ10Xに対して相対的に移動可能なシリンダロッド10Yとを有する。シリンダチューブ10Xには、ピストン10Vが摺動自在に設けられている。ピストン10Vには、シリンダロッド10Yが取り付けられている。シリンダロッド10Yは、シリンダヘッド10Wに摺動自在に設けられている。シリンダヘッド10Wとピストン10Vとシリンダ内壁とによって画成された室は、ロッド側油室40Bである。ピストン10Vを介してロッド側油室40Bとは反対側の油室がキャップ側油室40Aである。なお、シリンダヘッド10Wには、シリンダロッド10Yとの隙間を密封し、塵埃等がロッド側油室40Bに入り込まないようにするシール部材が設けられている。
【0110】
シリンダロッド10Yは、ロッド側油室40Bに作動油が供給され、キャップ側油室40Aから作動油が排出されることによって縮退する。また、シリンダロッド10Yは、ロッド側油室40Bから作動油が排出され、キャップ側油室40Aに作動油が供給されることによって伸張する。すなわち、シリンダロッド10Yは、図中左右方向に直動する。
【0111】
ロッド側油室40Bの外部にあって、シリンダヘッド10Wに密接した場所には、ブームシリンダストロークセンサ16を覆い、ブームシリンダストロークセンサ16を内部に収容するケース164が設けられている。ケース164は、シリンダヘッド10Wにボルト等によって締結等されて、シリンダヘッド10Wに固定されている。
【0112】
ブームシリンダストロークセンサ16は、回転ローラ161と、回転中心軸162と、回転センサ部163とを有している。回転ローラ161は、その表面がシリンダロッド10Yの表面に接触し、シリンダロッド10Yの直動に応じて回転自在に設けられている。すなわち、回転ローラ161によってシリンダロッド10Yの直線運動が回転運動に変換される。回転中心軸162は、シリンダロッド10Yの直動方向に対して、直交するように配置されている。
【0113】
回転センサ部163は、回転ローラ161の回転量(回転角度)を電気信号として検出可能に構成されている。回転センサ部163で検出された回転ローラ161の回転量(回転角度)を示す電気信号は、電気信号線を介して、センサコントローラ30に出力される。センサコントローラ30は、その電気信号を、ブームシリンダ10のシリンダロッド10Yの位置(ストローク位置)に変換する。
【0114】
図17に示すように、回転センサ部163は、磁石163aと、ホールIC163bとを有している。検出媒体である磁石163aは、回転ローラ161と一体に回転するように回転ローラ161に取り付けられている。磁石163aは回転中心軸162を中心とした回転ローラ161の回転に応じて回転する。磁石163aは、回転ローラ161の回転角度に応じて、N極、S極が交互に入れ替わるように構成されている。磁石163aは、回転ローラ161の一回転を一周期として、ホールIC163bで検出される磁力(磁束密度)が周期的に変動するように構成されている。
【0115】
ホールIC163bは、磁石163aによって生成される磁力(磁束密度)を電気信号として検出する磁力センサである。ホールIC163bは、回転中心軸162の軸方向に沿って、磁石163aから所定距離、離間された位置に設けられている。
【0116】
ホールIC163bで検出された電気信号(位相変位のパルス)は、センサコントローラ30に出力される。センサコントローラ30は、ホールIC163bからの電気信号を、回転ローラ161の回転量、つまりブームシリンダ10のシリンダロッド10Yの変位量(ブームシリンダ長)に変換する。
【0117】
ここで、
図17を参照して、回転ローラ161の回転角度と、ホールIC163bで検出される電気信号(電圧)との関係を説明する。回転ローラ161が回転し、その回転に応じて磁石163aが回転すると、回転角度に応じて、ホールIC163bを透過する磁力(磁束密度)が周期的に変化し、センサ出力である電気信号(電圧)が周期的に変化する。このホールIC163bから出力される電圧の大きさから回転ローラ161の回転角度を計測することができる。
【0118】
また、ホールIC163bから出力される電気信号(電圧)の1周期が繰り返される数をカウントすることで、回転ローラ161の回転数を計測することができる。そして、回転ローラ161の回転角度と、回転ローラ161の回転数とに基づいて、ブームシリンダ10のシリンダロッド10Yの変位量(ブームシリンダ長)が算出される。
【0119】
また、センサコントローラ30は、回転ローラ161の回転角度と、回転ローラ161の回転数とに基づいて、シリンダロッド10Yの移動速度(シリンダ速度)を算出することができる。
【0120】
このように、本実施形態において、各シリンダストロークセンサ(16、17、18)は、油圧シリンダのシリンダ速度を検出するシリンダ速度センサとして機能する。ブームシリンダ10に取付けられたブームシリンダストロークセンサ16は、ブームシリンダ10のシリンダ速度を検出するブームシリンダ速度センサとして機能する。アームシリンダ11に取付けられたアームシリンダストロークセンサ17は、アームシリンダ11のシリンダ速度を検出するアームシリンダ速度センサとして機能する。バケットシリンダ12に取付けられたバケットシリンダストロークセンサ18は、バケットシリンダ12のシリンダ速度を検出するバケットシリンダ速度センサとして機能する。
【0121】
[油圧シリンダ]
次に、本実施形態に係る油圧シリンダについて説明する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12のそれぞれは、油圧シリンダである。以下の説明においては、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12を適宜、油圧シリンダ60、と総称する。
【0122】
図18は、本実施形態に係る制御システム200の一例を示す模式図である。
図19は、
図18の一部を拡大した図である。
【0123】
図18及び
図19に示すように、油圧システム300は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12を含む油圧シリンダ60と、旋回体3を旋回させる旋回モータ63とを備える。油圧シリンダ60は、メイン油圧ポンプから供給された作動油によって作動する。旋回モータ63は、油圧モータであり、メイン油圧ポンプから供給された作動油によって作動する。
【0124】
制御弁27は、油圧シリンダ60の両側に配置される制御弁27A及び制御弁27Bを含む。以下の説明において、制御弁27Aを適宜、減圧弁27A、と称し、制御弁27Bを適宜、減圧弁27B、と称する。
【0125】
本実施形態においては、作動油が流れる方向を制御する方向制御弁64が設けられる。方向制御弁64は、複数の油圧シリンダ60(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)のそれぞれに配置される。方向制御弁64は、ロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り替えるスプール方式である。方向制御弁64は、移動可能なロッド状のスプールを有する。スプールは、供給されたパイロット油により移動する。方向制御弁64は、スプールの移動により油圧シリンダ60に作動油を供給して油圧シリンダ60を動作させる。メイン油圧ポンプから供給された作動油は、方向制御弁64を介して、油圧シリンダ60に供給される。スプールが軸方向に移動することにより、キャップ側油室40A(油路48)に対する作動油の供給と、ロッド側油室40B(油路47)に対する作動油の供給とが切り替わる。また、スプールが軸方向に移動することにより、油圧シリンダ60に対する作動油の供給量(単位時間当たりの供給量)が調整される。油圧シリンダ60に対する作動油の供給量が調整されることにより、油圧シリンダ60のシリンダ速度が調整される。
【0126】
図20は、方向制御弁64の一例を模式的に示す図である。方向制御弁64は、作動油が流れる方向を制御する。方向制御弁64は、ロッド状のスプール80を動かして作動油が流れる方向を切り替えるスプール方式である。
図21及び
図22に示すように、スプール80が軸方向に移動することにより、キャップ側油室40A(油路48)に対する作動油の供給と、ロッド側油室40B(油路47)に対する作動油の供給とが切り替わる。
図21は、作動油が油路48を介してキャップ側油室40Aに供給されるようにスプール80が移動した状態を示す。
図22は、作動油が油路47を介してロッド側油室40Bに供給されるようにスプール80が移動した状態を示す。
【0127】
また、スプール80が軸方向に移動することにより、油圧シリンダ60に対する作動油の供給量(単位時間当たりの供給量)が調整される。
図20に示すように、スプール80が初期位置(原点)に存在するとき、油圧シリンダ60に作動油が供給されない。原点から軸方向に関してスプール80が移動することによって、その移動量に応じた供給量で作動油が油圧シリンダ60に供給される。油圧シリンダ60に対する作動油の供給量が調整されることにより、シリンダ速度が調整される。
【0128】
操作装置25又は減圧弁27Aにより圧力(パイロット油圧)が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、スプール80は軸方向に関して一側に移動する。操作装置25又は減圧弁27Bにより圧力(パイロット油圧)が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、スプール80は軸方向に関して他側に移動する。これにより、軸方向に関するスプールの位置が調整される。
【0129】
方向制御弁64の駆動は、操作装置25によって調整される。本実施形態において、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。メイン油圧ポンプから送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置25に供給される。なお、メイン油圧ポンプとは別のパイロット油圧ポンプから送出されたパイロット油が操作装置25に供給されてもよい。操作装置25は、パイロット油圧を調整可能な圧力調整弁250を含む。操作装置25の操作量に基づいて、パイロット油圧が調整される。そのパイロット油圧によって、方向制御弁64が駆動される。操作装置25によりパイロット油圧が調整されることによって、軸方向に関するスプールの移動量及び移動速度が調整される。
【0130】
方向制御弁64は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータ63のそれぞれに設けられる。以下の説明において、ブームシリンダ10に接続される方向制御弁64を適宜、方向制御弁640、と称する。アームシリンダ11に接続される方向制御弁64を適宜、方向制御弁641、と称する。バケットシリンダ12に接続される方向制御弁64を適宜、方向制御弁642、と称する。
【0131】
ブーム用の方向制御弁640とアーム用の方向制御弁641には、スプールの移動量(移動距離)を検出するスプールストロークセンサ65が設けられている。スプールストロークセンサ65の検出信号は、作業機コントローラ26に出力される。
【0132】
操作装置25と方向制御弁64とは、パイロット油路450を介して接続される。方向制御弁64のスプールを移動するためのパイロット油は、パイロット油路450を流れる。本実施形態において、パイロット油路450に、制御弁27、圧力センサ66、及び圧力センサ67が配置されている。
【0133】
以下の説明において、パイロット油路450のうち、操作装置25と制御弁27との間のパイロット油路450を適宜、パイロット油路451、と称し、制御弁27と方向制御弁64との間のパイロット油路450を適宜、パイロット油路452、と称する。
【0134】
方向制御弁64に、パイロット油路452が接続される。パイロット油路452を介して、パイロット油が方向制御弁64に供給される。方向制御弁64は、第1受圧室及び第2受圧室を有する。パイロット油路452は、第1受圧室に接続されるパイロット油路452Aと、第2受圧室に接続されるパイロット油路452Bとを含む。
【0135】
パイロット油路452Aを介して方向制御弁64の第1受圧室にパイロット油が供給されると、そのパイロット油圧に応じてスプールが移動し、方向制御弁64を介してロッド側油室40Bに作動油が供給される。ロッド側油室40Bに対する作動油の供給量は、操作装置25の操作量(スプールの移動量)により調整される。
【0136】
パイロット油路452Bを介して方向制御弁64の第2受圧室にパイロット油が供給されると、そのパイロット油圧に応じてスプールが移動し、方向制御弁64を介してキャップ側油室40Aに作動油が供給される。キャップ側油室40Aに対する作動油の供給量は、操作装置25の操作量(スプールの移動量)により調整される。
【0137】
すなわち、操作装置25によりパイロット油圧が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、スプールは軸方向に関して一側に移動する。操作装置25によりパイロット油圧が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、スプールは軸方向に関して他側に移動する。これにより、軸方向に関するスプールの位置が調整される。
【0138】
パイロット油路451は、パイロット油路452Aと操作装置25とを接続するパイロット油路451Aと、パイロット油路452Bと操作装置25とを接続するパイロット油路451Bとを含む。
【0139】
以下の説明において、ブームシリンダ10に対する作動油の供給を行う方向制御弁640に接続されるパイロット油路452Aを適宜、ブーム調整用油路4520A、と称し、方向制御弁640に接続されるパイロット油路452Bを適宜、ブーム調整用油路4520B、と称する。
【0140】
以下の説明において、アームシリンダ11に対する作動油の供給を行う方向制御弁641に接続されるパイロット油路452Aを適宜、アーム調整用油路4521A、と称し、方向制御弁641に接続されるパイロット油路452Bを適宜、アーム調整用油路4521B、と称する。
【0141】
以下の説明において、バケットシリンダ12に対する作動油の供給を行う方向制御弁642に接続されるパイロット油路452Aを適宜、バケット調整用油路4522A、と称し、方向制御弁642に接続されるパイロット油路452Bを適宜、バケット調整用油路4522B、と称する。
【0142】
以下の説明において、ブーム調整用油路4520Aに接続されるパイロット油路451Aを適宜、ブーム操作用油路4510A、と称し、ブーム調整用油路4520Bに接続されるパイロット油路451Bを適宜、ブーム操作用油路4510B、と称する。
【0143】
以下の説明において、アーム調整用油路4521Aに接続されるパイロット油路451Aを適宜、アーム操作用油路4511A、と称し、アーム調整用油路4521Bに接続されるパイロット油路451Bを適宜、アーム操作用油路4511B、と称する。
【0144】
以下の説明において、バケット調整用油路4522Aに接続されるパイロット油路451Aを適宜、バケット操作用油路4512A、と称し、バケット調整用油路4522Bに接続されるパイロット油路451Bを適宜、バケット操作用油路4512B、と称する。
【0145】
ブーム操作用油路(4510A、4510B)及びブーム調整用油路(4520A、4520B)は、パイロット油圧方式の操作装置25と接続される。ブーム操作用油路(4510A、4510B)に、操作装置25の操作量に応じて圧力が調整されたパイロット油が流れる。
【0146】
アーム操作用油路(4511A、4511B)及びアーム調整用油路(4521A、4521B)は、パイロット油圧方式の操作装置25と接続される。アーム操作用油路(4511A、4511B)に、操作装置25の操作量に応じて圧力が調整されたパイロット油が流れる。
【0147】
バケット操作用油路(4512A、4512B)及びバケット調整用油路(4522A、4522B)は、パイロット油圧方式の操作装置25と接続される。バケット操作用油路(4512A、4512B)に、操作装置25の操作量に応じて圧力が調整されたパイロット油が流れる。
【0148】
ブーム操作用油路4510A、ブーム操作用油路4510B、ブーム調整用油路4520A、及びブーム調整用油路4520Bは、ブーム6を動作させるためのパイロット油が流れるブーム用油路である。
【0149】
アーム操作用油路4511A、アーム操作用油路4511B、アーム調整用油路4521A、及びアーム調整用油路4521Bは、アーム7を動作させるためのパイロット油が流れるアーム用油路である。
【0150】
バケット操作用油路4512A、バケット操作用油路4512B、バケット調整用油路4522A、及びバケット調整用油路4522Bは、バケット8を動作させるためのパイロット油が流れるバケット用油路である。
【0151】
上述のように、操作装置25の操作により、ブーム6は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。ブーム6の下げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁640に、ブーム操作用油路4510A及びブーム調整用油路4520Aを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁640はパイロット油圧に基づいて作動する。これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がブームシリンダ10に供給され、ブーム6の下げ動作が実行される。
【0152】
ブーム6の上げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁640に、ブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520Bを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁640はパイロット油圧に基づいて作動する。これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がブームシリンダ10に供給され、ブーム6の上げ動作が実行される。
【0153】
すなわち、本実施形態において、ブーム操作用油路4510A及びブーム調整用油路4520Aは、方向制御弁640の第1受圧室と接続され、ブーム6を下げ動作させるためのパイロット油が流れるブーム下げ用油路である。ブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520Bは、方向制御弁640の第2受圧室と接続され、ブーム6を上げ動作させるためのパイロット油が流れるブーム上げ用油路である。
【0154】
また、操作装置25の操作により、アーム7は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。アーム7の上げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、アームシリンダ11に接続された方向制御弁641に、アーム操作用油路4511A及びアーム調整用油路4521Aを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁641はパイロット油圧に基づいて作動する。これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がアームシリンダ11に供給され、アーム7の上げ動作が実行される。
【0155】
アーム7の下げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、アームシリンダ11に接続された方向制御弁641に、アーム操作用油路4511B及びアーム調整用油路4521Bを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁641はパイロット油圧に基づいて作動する。これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がアームシリンダ11に供給され、アーム7の下げ動作が実行される。
【0156】
すなわち、本実施形態において、アーム操作用油路4511A及びアーム調整用油路4521Aは、方向制御弁641の第1受圧室と接続され、アーム7を上げ動作させるためのパイロット油が流れるアーム上げ用油路である。アーム操作用油路4511B及びアーム調整用油路4521Bは、方向制御弁641の第2受圧室と接続され、アーム7を上げ動作させるためのパイロット油が流れるアーム上げ用油路である。
【0157】
また、操作装置25の操作により、バケット8は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。バケット8の上げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、バケットシリンダ12に接続された方向制御弁642に、バケット操作用油路4512A及びバケット調整用油路4522Aを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁642はパイロット油圧に基づいて作動する。これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がバケットシリンダ12に供給され、バケット8の上げ動作が実行される。
【0158】
バケット8の下げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、バケットシリンダ12に接続された方向制御弁642に、バケット操作用油路4512B及びバケット調整用油路4522Bを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁642はパイロット油圧に基づいて作動する。これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がバケットシリンダ12に供給され、バケット8の下げ動作が実行される。
【0159】
すなわち、本実施形態において、バケット操作用油路4512A及びバケット調整用油路4522Aは、方向制御弁642の第1受圧室と接続され、バケット8を下げ動作させるためのパイロット油が流れるバケット下げ用油路である。バケット操作用油路4512B及びバケット調整用油路4522Bは、方向制御弁642の第2受圧室と接続され、バケット8を上げ動作させるためのパイロット油が流れるバケット上げ用油路である。
【0160】
また、操作装置25の操作により、旋回体3は、右旋回動作及び左旋回動作の2種類の動作を実行する。旋回体3の右旋回動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、作動油が旋回モータ63に供給される。旋回体3の左旋回動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、作動油が旋回モータ63に供給される。
【0161】
[較正概要]
本実施形態においては、ブームシリンダ10が伸長することにより、ブーム6が上げ動作し、ブームシリンダ10が縮退することにより、ブーム6が下げ動作する。したがって、ブームシリンダ10のキャップ側油室40Aに作動油が供給されることにより、ブームシリンダ10が伸長し、ブーム6が上げ動作する。ブームシリンダ10のロッド側油室40Bに作動油が供給されることにより、ブームシリンダ10が縮退し、ブーム6が下げ動作する。
【0162】
本実施形態においては、アームシリンダ11が伸長することにより、アーム7が下げ動作(掘削動作)し、アームシリンダ11が縮退することにより、アーム7が上げ動作(ダンプ動作)する。したがって、ブームシリンダ11のキャップ側油室40Aに作動油が供給されることにより、アームシリンダ11が伸長し、アーム7が下げ動作する。アームシリンダ11のロッド側油室40Bに作動油が供給されることにより、アームシリンダ11が縮退し、アーム7が上げ動作する。
【0163】
本実施形態においては、バケットシリンダ12が伸長することにより、バケット8が下げ動作(掘削動作)し、バケットシリンダ12が縮退することにより、バケット8が上げ動作(ダンプ動作)する。したがって、バケットシリンダ12のキャップ側油室40Aに作動油が供給されることにより、バケットシリンダ12が伸長し、バケット8が下げ動作する。バケットシリンダ12のロッド側油室40Bに作動油が供給されることにより、バケットシリンダ12が縮退し、バケット8が上げ動作する。
【0164】
制御弁27は、作業機コントローラ26からの制御信号(電流)に基づいて、パイロット油圧を調整する。制御弁27は、電磁比例制御弁であり、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて制御される。制御弁27は、方向制御弁64の第1受圧室に供給されるパイロット油のパイロット油圧を調整して、方向制御弁64を介してキャップ側油室40Aに供給される作動油の供給量を調整可能な制御弁27Bと、方向制御弁64の第2受圧室に供給されるパイロット油のパイロット油圧を調整して、方向制御弁64を介してロッド側油室40Bに供給される作動油の供給量を調整可能な制御弁27Aとを含む。
【0165】
制御弁27の両側に、パイロット油圧を検出する圧力センサ66及び圧力センサ67が設けられる。本実施形態において、圧力センサ66は、パイロット油路451において操作装置25と制御弁27との間に配置される。圧力センサ67は、パイロット油路452において制御弁27と方向制御弁64との間に配置される。圧力センサ66は、制御弁27によって調整される前のパイロット油圧を検出可能である。圧力センサ67は、制御弁27によって調整されたパイロット油圧を検出可能である。圧力センサ66は、操作装置25の操作によって調整されるパイロット油圧を検出可能である。圧力センサ66及び圧力センサ67の検出結果は、図示しないが作業機コントローラ26に出力される。
【0166】
以下の説明において、ブームシリンダ10に対する作動油の供給を行う方向制御弁640に対するパイロット油圧を調整可能な制御弁27を適宜、ブーム用減圧弁270、と称する。また、ブーム用減圧弁270のうち、一方のブーム用減圧弁(減圧弁27Aに相当)を適宜、ブーム用減圧弁270A、と称し、他方のブーム用減圧弁(減圧弁27Bに相当)を適宜、ブーム用減圧弁270B、と称する。ブーム用減圧弁270(270A、270B)は、ブーム操作用油路に配置される。
【0167】
以下の説明において、アームシリンダ11に対する作動油の供給を行う方向制御弁641に対するパイロット油圧を調整可能な制御弁27を適宜、アーム用減圧弁271、と称する。また、アーム用減圧弁271のうち、一方のアーム用減圧弁(減圧弁27Aに相当)を適宜、アーム用減圧弁271A、と称し、他方のアーム用減圧弁(減圧弁27Bに相当)を適宜、アーム用減圧弁271B、と称する。アーム用減圧弁271(271A,271B)は、アーム操作用油路に配置される。
【0168】
以下の説明において、バケットシリンダ12に対する作動油の供給を行う方向制御弁642に対するパイロット油圧を調整可能な制御弁27を適宜、バケット用減圧弁272、と称する。また、バケット用減圧弁272のうち、一方のバケット用減圧弁(減圧弁27Aに相当)を適宜、バケット用減圧弁272A、と称し、他方のバケット用減圧弁(減圧弁27Bに相当)を適宜、バケット用減圧弁272B、と称する。バケット用減圧弁272(272A,272B)は、バケット操作用油路に配置される。
【0169】
[圧力センサ]
以下の説明において、ブームシリンダ10に対する作動油の供給を行う方向制御弁640に接続されるパイロット油路451のパイロット油圧を検出する圧力センサ66を適宜、ブーム用圧力センサ660、と称し、方向制御弁640に接続されるパイロット油路452のパイロット油圧を検出する圧力センサ67を適宜、ブーム用圧力センサ670、と称する。
【0170】
また、以下の説明において、ブーム操作用油路4510Aに配置されるブーム用圧力センサ660を適宜、ブーム用圧力センサ660A、と称し、ブーム操作用油路4510Bに配置されるブーム用圧力センサ660を適宜、ブーム用圧力センサ660B、と称する。また、ブーム調整用油路4520Aに配置されるブーム用圧力センサ670を適宜、ブーム用圧力センサ670A、と称し、ブーム調整用油路4520Bに配置されるブーム用圧力センサ670を適宜、ブーム用圧力センサ670B、と称する。
【0171】
以下の説明において、アームシリンダ11に対する作動油の供給を行う方向制御弁641に接続されるパイロット油路451のパイロット油圧を検出する圧力センサ66を適宜、アーム用圧力センサ661、と称し、方向制御弁641に接続されるパイロット油路452のパイロット油圧を検出する圧力センサ67を適宜、アーム用圧力センサ671、と称する。
【0172】
また、以下の説明において、アーム操作用油路4511Aに配置されるアーム用圧力センサ661を適宜、アーム用圧力センサ661A、と称し、アーム操作用油路4511Bに配置されるアーム用圧力センサ661を適宜、アーム用圧力センサ661B、と称する。また、アーム調整用油路4521Aに配置されるアーム用圧力センサ671を適宜、アーム用圧力センサ671A、と称し、アーム調整用油路4521Bに配置されるアーム用圧力センサ671を適宜、アーム用圧力センサ671B、と称する。
【0173】
以下の説明において、バケットシリンダ12に対する作動油の供給を行う方向制御弁642に接続されるパイロット油路451のパイロット油圧を検出する圧力センサ66を適宜、バケット用圧力センサ662、と称し、方向制御弁642に接続されるパイロット油路452のパイロット油圧を検出する圧力センサ67を適宜、バケット用圧力センサ672、と称する。
【0174】
また、以下の説明において、バケット操作用油路4512Aに配置されるバケット用圧力センサ662を適宜、バケット用圧力センサ662A、と称し、バケット操作用油路4512Bに配置されるバケット用圧力センサ662を適宜、バケット用圧力センサ662B、と称する。また、バケット調整用油路4522Aに配置されるバケット用圧力センサ672を適宜、バケット用圧力センサ672A、と称し、バケット調整用油路4522Bに配置されるバケット用圧力センサ672を適宜、バケット用圧力センサ672B、と称する。
【0175】
[制御弁]
制限掘削制御を実行しない場合、作業機コントローラ26は、制御弁27を制御して、パイロット油路450を開ける(全開にする)。パイロット油路450が開くことにより、パイロット油路451のパイロット油圧とパイロット油路452のパイロット油圧とは等しくなる。制御弁27によりパイロット油路450が開いた状態で、パイロット油圧は、操作装置25の操作量に基づいて調整される。
【0176】
制御弁27によりパイロット油路450が全開のとき、圧力センサ66に作用するパイロット油圧と圧力センサ67に作用するパイロット油圧とは等しい。制御弁27の開度が小さくなることによって、圧力センサ66に作用するパイロット油圧と圧力センサ67に作用するパイロット油圧とは異なる。
【0177】
制限掘削制御など、作業機2が作業機コントローラ26によって制御される場合、作業機コントローラ26は、制御弁27に制御信号を出力する。パイロット油路451は、例えばパイロットリリーフ弁の作用により所定の圧力(パイロット油圧)を有する。作業機コントローラ26から制御弁27に制御信号が出力されると、制御弁27は、その制御信号に基づいて作動する。パイロット油路451のパイロット油は、制御弁27を介して、パイロット油路452に供給される。パイロット油路452のパイロット油圧は、制御弁27により調整(減圧)される。パイロット油路452のパイロット油圧が、方向制御弁64に作用する。これにより、方向制御弁64は、制御弁27で制御されたパイロット油圧に基づいて作動する。本実施形態において、圧力センサ66は、制御弁27によって調整される前のパイロット油圧を検出する。圧力センサ67は、制御弁27によって調整された後のパイロット油圧を検出する。
【0178】
減圧弁27Aにより圧力が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、スプールは軸方向に関して一側に移動する。減圧弁27Bにより圧力が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、スプールは軸方向に関して他側に移動する。これにより、軸方向に関するスプールの位置が調整される。
【0179】
例えば、作業機コントローラ26は、ブーム用減圧弁270A及びブーム用減圧弁270Bの少なくとも一方に制御信号を出力して、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁640に対するパイロット油圧を調整することができる。
【0180】
また、作業機コントローラ26は、アーム用減圧弁271A及びアーム用減圧弁271Bの少なくとも一方に制御信号を出力して、アームシリンダ11に接続された方向制御弁641に対するパイロット油圧を調整することができる。
【0181】
また、作業機コントローラ26は、バケット用減圧弁272A及びバケット用減圧弁272Bの少なくとも一方に制御信号を出力して、バケットシリンダ12に接続された方向制御弁642に対するパイロット油圧を調整することができる。
【0182】
作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形Uとバケット8の位置を示すバケット位置データ(刃先位置データS)とに基づいて、目標掘削地形Uとバケット8との距離dに応じてバケット8が目標掘削地形Uに近づく速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制限する。作業機コントローラ26は、ブーム6の速度を制限するための制御信号を出力するブーム制限部を有する。本実施形態においては、操作装置25の操作に基づいて作業機2が駆動する場合において、バケット8の刃先8aが目標掘削地形Uに侵入しないように、作業機コントローラ26のブーム制限部から出力される制御信号に基づいて、ブーム6の動きが制御(介入制御)される。バケット8による掘削において、刃先8aが目標掘削地形Uに侵入しないように、ブーム6は、作業機コントローラ26により、上げ動作を実行される。
【0183】
[介入制御時の介入弁]
本実施形態においては、介入制御のために、作業機コントローラ26から出力された、介入制御に関する制御信号に基づいて作動する制御弁27Cにパイロット油路502が接続される。介入制御において、パイロット油路502に、圧力(パイロット油圧)が調整されたパイロット油が流れる。制御弁27Cは、パイロット油路501に接続され、パイロット油路501からのパイロット油圧を調整可能である。
【0184】
以下の説明において、介入制御において圧力が調整されたパイロット油が流れるパイロット油路50を適宜、介入用油路501、502と称し、介入用油路501に接続される制御弁27Cを適宜、介入弁27C、と称する。
【0185】
介入用油路501に、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁640に供給されるパイロット油が流れる。介入用油路502は、方向制御弁640と接続されたブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520Bにシャトル弁51を介して接続されている。
【0186】
シャトル弁51は、2つの入口と、1つの出口とを有する。一方の入口は、介入用油路502と接続される。他方の入口は、ブーム操作用油路4510Bと接続される。出口は、ブーム調整用油路4520Bと接続される。シャトル弁51は、介入用油路502及びブーム操作用油路4510Bのうち、パイロット油圧が高い方の油路と、ブーム調整用油路4520Bとを接続する。例えば、介入用油路502のパイロット油圧がブーム操作用油路4510Bのパイロット油圧よりも高い場合、シャトル弁51は、介入用油路501とブーム調整用油路4520Bとを接続し、ブーム操作用油路4510Bとブーム調整用油路4520Bとを接続しないように作動する。これにより、介入用油路502のパイロット油がシャトル弁51を介してブーム調整用油路4520Bに供給される。ブーム操作用油路4510Bのパイロット油圧が介入用油路502のパイロット油圧よりも高い場合、シャトル弁51は、ブーム操作用油路4510Bとブーム調整用油路4520Bとを接続し、介入用油路502とブーム調整用油路4520Bとを接続しないように作動する。これにより、ブーム操作用油路4510Bのパイロット油がシャトル弁51を介してブーム調整用油路4520Bに供給される。
【0187】
介入用油路501には介入用油路501のパイロット油のパイロット油圧を検出する圧力センサ68が設けられている。介入用油路501は、制御弁27Cを通過する前のパイロット油が流れる介入用油路501と、介入弁27Cを通過した後のパイロット油が流れる介入用油路502とを含む。介入弁27Cは、介入制御を実行するために作業機コントローラ26から出力された制御信号に基づいて制御される。
【0188】
介入制御を実行しないとき、操作装置25の操作によって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、作業機コントローラ26は、制御弁27に対して制御信号を出力しない。例えば、作業機コントローラ26は、操作装置25の操作によって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁640が駆動されるように、ブーム用減圧弁270Bによりブーム操作用油路4510Bを開ける(全開にする)とともに、介入弁27Cにより介入用油路501を閉じる。
【0189】
介入制御を実行するとき、作業機コントローラ26は、介入弁27Cによって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、各制御弁27を制御する。例えば、ブーム6の移動を制限する介入制御を実行する場合、作業機コントローラ26は、介入弁27Cによって調整された介入用油路501のパイロット油圧が、操作装置25によって調整されるブーム操作用油路4510Bのパイロット油圧よりも高くなるように、介入弁27Cを制御する。これにより、介入弁27Cからのパイロット油が介入用油路502を経由しシャトル弁51を介して方向制御弁640に供給される。
【0190】
バケット8が目標掘削地形Uに侵入しないように操作装置25によりブーム6が高速で上げ動作される場合、介入制御は実行されない。ブーム6が高速で上げ動作されるように操作装置25が操作され、その操作量に基づいてパイロット油圧が調整されることにより、操作装置25の操作によって調整されるブーム操作用油路4510Bのパイロット油圧は、介入弁27Cによって調整される介入用油路502のパイロット油圧よりも高くなる。これにより、操作装置25の操作によってパイロット油圧が調整されたブーム操作用油路4510Bのパイロット油がシャトル弁51を介して方向制御弁640に供給される。
【0191】
以下の説明においては、便宜上、制御弁27の作動によりパイロット油路450を開けることを単に、制御弁27を開ける(開放状態にする)、といい、制御弁27の作動によりパイロット油路450を閉じることを単に、制御弁27を閉じる(閉塞状態にする)、という。なお、制御弁27の開けた状態とは、全開状態のみならず、僅かに開いた状態も含む。すなわち、制御弁27を開けた状態とは、制御弁27を閉じた状態以外の状態を含む。制御弁27が開くことにより、パイロット油路450が減圧状態となる。
【0192】
例えば、介入弁27Cの作動により介入用流路501を開けることを単に、介入弁27Cを開ける、といい、介入弁27Cの作動により介入用流路501を閉じることを単に、介入弁27Cを閉じる、という。
【0193】
同様に、ブーム用減圧弁270Aの作動によりブーム操作用油路4510Aを開けること(ブーム操作用油路4510Aとブーム調整用油路4520Aとを接続状態にすること)を単に、ブーム用減圧弁270Aを開ける、といい、ブーム用減圧弁270Aの作動によりブーム操作用油路4510Aを閉じること(ブーム操作用油路4510Aとブーム調整用油路4520Aとを非接続状態にすること)を単に、ブーム用減圧弁270Aを閉じる、という。また、ブーム用減圧弁270Bの作動によりブーム操作用油路4510Bを開けること(ブーム操作用油路4510Bとブーム調整用油路4520Bとを接続状態にすること)を単に、ブーム用減圧弁270Bを開ける、といい、ブーム用減圧弁270Bの作動によりブーム操作用油路4510Bを閉じること(ブーム操作用油路4510Bとブーム調整用油路4520Bとを非接続状態にすること)を単に、ブーム用減圧弁270Bを閉じる、という。
【0194】
同様に、アーム用減圧弁271Aの作動によりアーム操作用油路4511Aを開けること(アーム操作用油路4511Aとアーム調整用油路4521Aとを接続状態にすること)を単に、アーム用減圧弁271Aを開ける、といい、アーム用減圧弁271Aの作動によりアーム操作用油路4511Aを閉じること(アーム操作用油路4511Aとアーム調整用油路4521Aとを非接続状態にすること)を単に、アーム用減圧弁271Aを閉じる、という。また、アーム用減圧弁271Bの作動によりアーム操作用油路4511Bを開けること(アーム操作用油路4511Bとアーム調整用油路4521Bとを接続状態にすること)を単に、アーム用減圧弁271Bを開ける、といい、アーム用減圧弁271Bの作動によりアーム操作用油路4511Bを閉じること(アーム操作用油路4511Bとアーム調整用油路4521Bとを非接続状態にすること)を単に、アーム用減圧弁271Bを閉じる、という。
【0195】
同様に、バケット用減圧弁272Aの作動によりバケット操作用油路4512Aを開けること(バケット操作用油路4512Aとバケット調整用油路4522Aとを接続状態にすること)を単に、バケット用減圧弁272Aを開ける、といい、バケット用減圧弁272Aの作動によりバケット操作用油路4512Aを閉じること(バケット操作用油路4512Aとバケット調整用油路4522Aとを非接続状態にすること)を単に、バケット用減圧弁272Aを閉じる、という。また、バケット用減圧弁272Bの作動によりバケット操作用油路4512Bを開けること(バケット操作用油路4512Bとバケット調整用油路4522Bとを接続状態にすること)を単に、バケット用減圧弁272Bを開ける、といい、バケット用減圧弁272Bの作動によりバケット操作用油路4512Bを閉じること(バケット操作用油路4512Bとバケット調整用油路4522Bとを非接続状態にすること)を単に、バケット用減圧弁272Bを閉じる、という。
【0196】
減圧弁27A及び減圧弁28Bは、例えば、作業機2を停止させる停止制御のときに使用される。例えば、ブーム6の下げ動作を停止するとき、ブーム用減圧弁270Aが閉じられる。これにより、操作装置25が操作されても、ブーム6は下げ動作しない。同様に、アーム7の下げ動作を停止するとき、アーム用減圧弁271Bが閉じられる。バケット8の下げ動作を停止するとき、バケット用減圧弁272Bが閉じられる。ブーム6の上げ動作を停止するとき、ブーム用減圧弁270Bが閉じられる。アーム7の上げ動作を停止するとき、アーム用減圧弁271Aが閉じられる。バケット8の上げ動作を停止するとき、バケット用減圧弁272Aが閉じられる。
【0197】
本実施形態において、ブームシリンダ10は、第1動作方向(例えば縮退方向)への動作により、ブーム6について下げ動作を実行させ、第1動作方向とは反対の第2動作方向(例えば伸長方向)への動作により、ブーム6について上げ動作を実行させる。
【0198】
本実施形態において、アームシリンダ11は、第1動作方向(例えば縮退方向)への動作により、アーム7について上げ動作を実行させ、第1動作方向とは反対の第2動作方向(例えば伸長方向)への動作により、アーム7について下げ動作を実行させる。
【0199】
本実施形態において、バケットシリンダ12は、第1動作方向(例えば縮退方向)への動作により、バケットについてダンプ動作を実行させ、第1動作方向とは反対の第2動作方向(例えば伸長方向)への動作により、バケットについて掘削動作を実行させる。
【0200】
ブーム操作用油路4510A、ブーム操作用油路4510B、ブーム調整用油路4520A、及びブーム調整用油路4520Bは、方向制御弁640に接続するように配置される。ブームシリンダ10の第1動作方向への動作のために方向制御弁640のスプール80を移動させるためのパイロット油は、ブーム操作用油路4510A及びブーム調整用油路4520Aを流れる。ブームシリンダ10の第2動作方向への動作のために方向制御弁640のスプール80を移動させるためのパイロット油は、ブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520Bを流れる。
【0201】
アーム操作用油路4511A、アーム操作用油路4511B、アーム調整用油路4521A、及びアーム調整用油路4521Bは、方向制御弁641に接続するように配置される。アームシリンダ11の第1動作方向への動作のために方向制御弁641のスプール80を移動させるためのパイロット油は、アーム操作用油路4511A及びアーム調整用油路4521Aを流れる。アームシリンダ11の第2動作方向への動作のために方向制御弁641のスプール80を移動させるためのパイロット油は、アーム操作用油路4511B及びアーム調整用油路4521Bを流れる。
【0202】
バケット操作用油路4512A、バケット操作用油路4512B、バケット調整用油路4522A、及びバケット調整用油路4522Bは、方向制御弁642に接続するように配置される。バケットシリンダ12の第1動作方向への動作のために方向制御弁642のスプール80を移動させるためのパイロット油は、バケット操作用油路4512A及びバケット調整用油路4522Aを流れる。バケットシリンダ12の第2動作方向への動作のために方向制御弁642のスプール80を移動させるためのパイロット油は、バケット操作用油路4512B及びバケット調整用油路4522Bを流れる。
【0203】
ブーム減圧弁270Aは、ブームシリンダ10を第1動作方向に動作させるため(ブーム6を下げ動作させるため)のパイロット油が流れるパイロット油路(4510A、4520A)に配置されている。ブーム減圧弁270Aは、減圧弁を調整することで減圧し、動作を制限する。
【0204】
ブーム減圧弁270Bは、ブームシリンダ10を第2動作方向に動作させるため(ブーム6を上げ動作させるため)のパイロット油が流れるパイロット油路(4510B、4520B)に配置されている。ブーム減圧弁270Bは、パイロット油路を遮断する機能を有する。
【0205】
アーム減圧弁271Aは、アームシリンダ11を第1動作方向に動作させるため(アーム7を上げ動作させるため)のパイロット油が流れるパイロット油路(4511A、4521A)に配置されている。アーム減圧弁271Aは、アーム7を動作制限させるためのパイロット油圧を調整可能である。
【0206】
アーム減圧弁271Bは、アームシリンダ11を第2動作方向に動作させるため(アーム7を下げ動作させるため)のパイロット油が流れるパイロット油路(4511B、4521B)に配置されている。アーム減圧弁271Bは、アーム7を下げ動作(掘削動作)させるためのパイロット油圧を調整可能である。
【0207】
バケット減圧弁272Aは、バケットシリンダ12を第1動作方向に動作させるため(バケット8を上げ動作させるため)のパイロット油が流れるパイロット油路(4512A、4522A)に配置されている。バケット減圧弁272Aは、バケット8を上げ動作(ダンプ動作)させるためのパイロット油圧を調整可能である。
【0208】
バケット減圧弁272Bは、バケットシリンダ12を第2動作方向に動作させるため(バケット8を下げ動作させるため)のパイロット油が流れるパイロット油路(4512B、4522B)に配置されている。バケット減圧弁272Bは、バケット8を下げ動作(掘削動作)させるためのパイロット油圧を調整可能である。
【0209】
[制御システム]
図23は、制限掘削制御が行われているときの作業機2の動作の一例を模式的に示す図である。上述のように、油圧システム300は、ブーム6を駆動するためのブームシリンダ10と、アーム7を駆動するためのアームシリンダ11と、バケット8を駆動するためのバケットシリンダ12とを有する。
【0210】
図23に示すように、アーム7の操作による掘削において、ブーム6が上がり、アーム7が下がるように、油圧システム300が作動する。制限掘削制御において、バケット8が目標掘削地形Uに侵入しないように、ブーム6の上げ動作を含む介入制御が実行される。
【0211】
例えば、掘削対象物(地面、山など)の掘削作業のために、アーム7及びバケット8の少なくとも一方が下げ動作されるように、オペレータにより操作装置25が操作される。そのオペレータの操作により、バケット8の刃先8aが目標掘削地形Uに侵入しようとする場合、作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aが目標掘削地形Uに侵入しないように、介入弁27Cを制御して、介入用油路502のパイロット油圧を増大させることによって、ブーム6の上げ動作を実行する。
【0212】
図24及び
図25は、本実施形態に係る制御システム200の一例を示す機能ブロック図である。
図24及び
図25に示すように、制御システム200は、作業機コントローラ26と、センサコントローラ30と、スプールストロークセンサ65と、圧力センサ66と、圧力センサ67と、圧力センサ68と、入力部321及び表示部322を含むマンマシンインターフェース部32と、減圧弁27Aと、減圧弁27Bと、介入弁27Cとを有する。
【0213】
作業機コントローラ26は、データ取得部26Aと、導出部26Bと、制御弁制御部26Cと、作業機制御部57と、補正部26Eと、更新部26Fと、記憶部26Gと、シーケンス制御部26Hとを有する。導出部26Bは、判定部26Baと、演算部26Bbとを含む。
【0214】
[較正方法]
図26は、本実施形態に係る作業機コントローラ26の処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態において、作業機コントローラ26は、制御システム200の少なくとも一部を較正(キャリブレーション)する。
【0215】
図26に示すように、本実施形態において、作業機コントローラ26は、較正モードの選択(ステップSB0)と、油圧シリンダ60の較正(ステップSB1)と、圧力センサ66及び圧力センサ67の較正(ステップSB2)と、作業機2の制御(ステップSB3)と、を実行する。マンマシンインターフェース部からの操作指令に基づいて、較正モードが油圧シリンダの較正か圧力センサの較正から判断される(ステップSB0)。ステップSB0において、較正モードが油圧シリンダの較正であると判断された場合(ステップSB0でYesの場合)、ステップSB1に進む。ステップSB0において、較正モードが油圧シリンダの較正でないと判断された場合(ステップSB0でNoの場合)、ステップSB2に進む。
【0216】
図25を基に説明を行う。油圧シリンダ60の較正は、油圧シリンダ60を動作させる操作指令を出力し、その操作指令に基づく駆動力を油圧シリンダ60に与えたときの油圧シリンダ60の動作特性を取得することを含む。本実施形態において、作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、油圧シリンダ60を動作させる操作指令が出力された状態で、その操作指令値及び油圧シリンダ60のシリンダ速度に関するデータを取得する。作業機コントローラ26の導出部26Bは、データ取得部26Aで取得したデータに基づいて、出力された操作指令値に対する油圧シリンダ60の動作特性を導出する。
【0217】
操作装置25の操作に基づいて、パイロット油路450へパイロット油が供給される。パイロット油の供給により圧力センサ66では圧力が検出される。圧力センサ66の検出された圧力は作業機コントローラ26に送信され、作業機コントローラ26でパイロット油圧が求められる。スプールストロークSstは、スプールストロークセンサ65によりストロークの変化が検出され作業機コントローラ26へ送信される。シリンダストロークセンサ16〜18の検出値はセンサコントローラ30にて求められるシリンダストロークL1〜L3として作業機コントローラ26へ出力され、作業機コントローラ26にてシリンダ速度が求められる。これにより、操作装置25の操作に対するシリンダ速度が算出される。
【0218】
油圧シリンダ60の動作特性の導出は、油圧シリンダ60のシリンダ速度と方向制御弁64のスプール80の移動量との関係を示す第1相関データ、スプール80の移動量と制御弁27によって制御されるパイロット油圧との関係を示す第2相関データ、及びパイロット油圧と制御弁27に出力される制御信号との関係を示す第3相関データを導出することを含む。
【0219】
また、油圧シリンダ60の動作特性の導出は、複数の油圧シリンダ60(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)のうち、ブームシリンダ10のシリンダ速度と介入弁27Cに出力される制御信号との関係を導出することを含む。本実施形態において、介入弁27Cを含む制御弁27は、作業機コントローラ26からの指令値となる指令電流によって作動する。制御弁27に電流が供給されることによって、制御弁27が作動する。本実施形態において、ブームシリンダ10の動作特性の導出は、ブームシリンダ10のシリンダ速度と、介入弁27Cに供給される電流値との関係を導出することを含む。
【0220】
圧力センサ66及び圧力センサ67の較正は、圧力センサ66の検出値が圧力センサ67の検出値に一致するように、圧力センサ66の検出値を補正することを含む。本実施形態において、作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、制御弁27によりパイロット油路450が開いた状態で、圧力センサ66の検出値及び圧力センサ67の検出値に関するデータを取得する。作業機コントローラ26の補正部26Eは、データ取得部26Aで取得したデータに基づいて、圧力センサ66の検出値が圧力センサ67の検出値に一致するように、圧力センサ66の検出値を補正する。
【0221】
オペレータの操作に基づきマンマシンインターフェース部32の入力部321では作業機コントローラ26への各較正指令を出力する。作業機コントローラの制御弁制御部26Cは較正指令に基づき制御弁27(27C)に各作業機を駆動する指令を出力する。制御弁制御部26Cの指令に基づき各作業機が駆動され、その時のストロークセンサ65からの検出値とセンサコントローラ30からのシリンダストロークL1〜L3の出力をデータ取得部26Aは取得する。データ取得部26Aで取得したデータに基づき導出部26Bでは検出値の判定を26Baで行い、シリンダストロークからシリンダ速度への演算を演算部26Bbで行う。又、データ取得部26Aで取得した圧力センサ66より取得したパイロット圧Pppcと、スプールストロークセンサ65より取得したスプールストロークSstと、演算部26Bbで算出したシリンダストロークシリンダ速度より導出部26Bは第1〜第3相関図を作成する。
【0222】
導出部26Bで作成された第1〜第3の相関データは更新部26Fにより記憶部26Gに記憶・更新する。
【0223】
[油圧シリンダの較正方法]
油圧シリンダ60の較正方法について説明する。まず、ブームシリンダ10の較正方法(動作特性の導出)について説明する。
【0224】
図27は、本実施形態に係るブームシリンダ10の較正方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態において、ブームシリンダ10の較正は、ブームシリンダ10の上げ動作についての動作特性を導出することを含む。ブームシリンダ10の上げ動作についての動作特性の導出は、介入弁27Cに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係を導出することを含む。以下の説明においては、較正対象が介入弁27Cである例について説明する。
【0225】
図27に示すように、本実施形態に係るブームシリンダ10の較正方法は、作業機2の姿勢を含む油圧ショベル100の較正条件を判定すること(ステップSC1)と、複数の制御弁27を閉じること(ステップSC2)と、判定後、ブームシリンダ10を上げ動作させる操作指令を出力すること(ステップSC3)と、ブームシリンダ10を上げ動作させる操作指令が出力された状態で、操作指令値及び上げ動作におけるブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得すること(ステップSC4)と、ステップSC4で取得したデータ(操作指令値及びブームシリンダ10のシリンダ速度)に基づいて、停止状態のブームシリンダ10が上げ動作を開始するときの動作開始操作指令値を導出すること(ステップSC5)と、動作開始操作指令値の導出後、ステップSC3よりも高い操作指令値の操作指令を出力すること(ステップSC6)と、ブームシリンダ10を上げ動作させる操作指令が出力された状態で、操作指令値及び上げ動作におけるブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得すること(ステップSC7)と、ステップSC7で取得したデータ(操作指令値及びブームシリンダ10のシリンダ速度)に基づいて、操作指令値と微速度領域におけるシリンダ速度との関係を示す微速度動作特性を導出すること(ステップSC8)と、微速度動作特性の導出後、再び、作業機2の姿勢を判定すること(ステップS9)と、複数の制御弁27を閉じること(ステップSC10)と、作業機2の姿勢の判定後、ステップSC6よりも高い操作指令値の操作指令を出力すること(ステップSC11)と、ブームシリンダ10を上げ動作させる操作指令が出力された状態で、操作指令値及び上げ動作におけるブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得すること(ステップSC12)と、ステップSC12で取得したデータ(操作指令値及びブームシリンダ10のシリンダ速度)に基づいて、操作指令値と微速度領域よりも高い通常速度領域におけるシリンダ速度との関係を示す通常速度動作特性を導出すること(ステップSC13)と、導出された動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性を記憶部26Gに記憶すること(ステップSC14)と、を含む。
【0226】
本実施形態において、動作開始操作指令値を導出するためのデータの取得(ステップSC4)、動作開始操作指令値の導出(ステップSC5)、微速度動作特性を導出するためのデータの取得(ステップSC7)、微速度動作特性の導出(ステップSC8)、通常速度動作特性を導出するためのデータの取得(ステップSC12)、及び通常速度動作特性の導出(ステップSC13)を含むステップSC1からステップSC14の処理は、シーケンス制御部26Hの制御に基づいて、シーケンス的に連続して実行される。
【0227】
本実施形態において、較正処理は、動作開始操作指令値及び微速度動作特性の導出を行う第1導出シーケンスと、通常速度動作特性の導出を行う第2導出シーケンスとを含む。第1導出シーケンスは、ステップSC1からステップSC8の処理を含む。第2導出シーケンスは、ステップSC9からステップSC13の処理を含む。第2導出シーケンスは、異なる条件(操作指令値)のそれぞれにおいて、複数回実行される。すなわち、ステップSC9からステップSC13の処理が複数回実行される。本実施形態においては、第2導出シーケンスは、異なる条件で3回実行されることとする。以下の説明においては、第1導出シーケンスを適宜、第1シーケンス、と称する。3回実行される第2導出シーケンスのうち、第1回目の第2導出シーケンスを適宜、第2シーケンス、と称し、第2回目の第2導出シーケンスを適宜、第3シーケンス、と称し、第3回目の第2導出シーケンスを適宜、第4シーケンス、と称する。
【0228】
較正に際し、マンマシンインターフェース部32の表示部322にメニューが表示される。
図28及び
図29は、表示部322の画面の一例を示す図である。
図28に示すように、較正のメニューとして、「PPC圧力センサ較正」と「制御マップ較正」とが用意されている。
図26を参照して説明したように、本実施形態において、作業機コントローラ26は、マンマシンインターフェース部32から較正シートのデータより油圧シリンダ60の較正(ステップSB1)又は圧力センサ66及び圧力センサ67の較正(ステップSB2)を実行する。圧力センサ66及び圧力センサ67の較正を行う場合、「PPC圧力センサ較正」を選択する。油圧シリンダ60の較正を行う場合、「制御マップ較正」が選択される。ここでは、油圧シリンダ60のうち、ブームシリンダの較正(動作特性の導出)を実行するため、「制御マップ較正」を選択する。
【0229】
「制御マップ較正」が選択されると、
図29に示す画面が表示部322に表示される。ここでは、「介入弁27Cに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係」を導出するとオペレータは、「ブーム上げ介入制御マップ」を選択する。
【0230】
本実施形態においては、「介入弁27Cに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係」のみならず、「ブーム用減圧弁270Aに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係」、「ブーム用減圧弁270Bに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係」、「アーム用減圧弁271Aに供給される電流値とアームシリンダ11のシリンダ速度との関係」、「アーム用減圧弁271Bに供給される電流値とアームシリンダ11のシリンダ速度との関係」、「バケット用減圧弁272Aに供給される電流値とバケットシリンダ12のシリンダ速度との関係」、及び「バケット用減圧弁272Bに供給される電流値とバケットシリンダ12のシリンダ速度との関係」も導出可能である。
【0231】
「ブーム用減圧弁270Aに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係」を導出する場合、「ブーム下げ減圧制御マップ」が選択される。「ブーム用減圧弁270Bに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係」を導出する場合、「ブーム上げ減圧制御マップ」が選択される。「アーム用減圧弁271Aに供給される電流値とアームシリンダ11のシリンダ速度との関係」を導出する場合、「アームダンプ減圧制御マップ」が選択される。「アーム用減圧弁271Bに供給される電流値とアームシリンダ11のシリンダ速度との関係」を導出する場合、「アーム掘削減圧制御マップ」が選択される。「バケット用減圧弁272Aに供給される電流値とバケットシリンダ12のシリンダ速度との関係」を導出する場合、「バケットダンプ減圧制御マップ」が選択される。「バケット用減圧弁272Bに供給される電流値とバケットシリンダ12のシリンダ速度との関係」を導出する場合、「バケット掘削減圧制御マップ」が選択される。
【0232】
介入弁27Cに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係の導出のために、マンマシンインターフェース部32が操作された後、シーケンス制御部26Hは較正条件を判定する(ステップSC1)。較正条件は、例えば、メイン油圧ポンプの出力圧、作動油の温度条件、制御弁27の故障条件、及び作業機2の姿勢条件を含む。本実施形態においては、較正に際し、パイロット油路502に作動油を供給するように、ロックレバーが操作される。また、メイン油圧ポンプの出力が所定値(一定値)になるように調整される。本実施形態においては、メイン油圧ポンプの出力が最大(フルスロットル、油圧ポンプのポンプ斜板は最大傾倒角度の状態)になるように調整される。介入用油路501におけるパイロット油圧の許容範囲においてそのパイロット油圧が最大値を示すように、メイン油圧ポンプの出力が調整される。また、作動油の温度が所定値(一定値)になるように調整される。
【0233】
較正条件の判定は、作業機2の姿勢の調整を含む。本実施形態においては、マンマシンインターフェース部32の表示部322に、作業機2の姿勢の調整を要求する姿勢調整要求情報が表示される。この情報が表示されている場合、制御弁制御部26Cは全制御弁270A、270B、271A、271B、272A、272Bに指令電流を出力し、操作装置25による作業機操作が可能な状態とする。オペレータは、その表示部322の表示に従って操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を姿勢調整要求情報が表示された姿勢(初期姿勢)に調整する。作業機2を初期姿勢にした後、較正処理を行うことにより、常に同一条件で較正処理を行うことができる。例えば、作業機2の姿勢によって、ブーム6に作用するモーメントが変化する。ブーム6に作用するモーメントが変化すると、較正結果が変動する可能性がある。本実施形態においては、作業機2を初期姿勢にした後、較正処理を行うため、例えばブーム6に作用するモーメントの変化をもたらすことなく、常に同一条件で較正処理を行うことができる。
【0234】
図30は、本実施形態に係る表示部322に表示される姿勢調整要求情報の一例を示す図である。
図30に示すように、作業機2を初期姿勢に調整するためのガイダンス(ライン)2Gが表示部322に表示される。オペレータは、表示部322を見ながら、作業機2(アーム7)がガイダンス2Gに沿って配置されるように、操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を調整する。判定部26Baは、例えば、シリンダストロークセンサ16、17、18からの入力に基づいて、作業機2の姿勢を把握(検出)することができる。これにより、オペレータは、表示部322を見ながら、アーム7がガイダンス2Gに沿って配置されるように、操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を調整する。判定部26Baは実姿勢が姿勢要求情報通りになっているかを判定することができる。
【0235】
ここで、較正作業を行うのはメンテナンスを行うサービスマンとオペレータが可能である。ただしオペレータはブーム上げ介入の立ち上り較正(第1シーケンス)の較正作業を行う事が可能である。これにより、バケットが交換された時に正確な指令特性に較正することが可能となる。
【0236】
また、作業機2の姿勢の調整において、制御弁制御部26Cの指令に基づき複数の制御弁27のそれぞれが開放状態となる。そのため、オペレータは、操作装置25を操作することによって、作業機2を駆動することができる。操作装置25の操作により、作業機2が初期姿勢になるように駆動される。
【0237】
図30に示すように、本実施形態において、ガイダンス2Gは、油圧ショベル100が配置される地面に対して垂直である。作業機2の初期姿勢は、油圧ショベル100が配置される地面に対してアーム7が垂直に配置される姿勢である。
【0238】
掘削作業において、作業機2を水平にして所定姿勢を作ることは作業機2の標準的な姿勢(各シリンダの中心位置)を較正の初期姿勢として設定する。その掘削作業において、バケット8の刃先8aが目標掘削地形Uに侵入しないように介入制御が実行される場合、作業機2が
図30に示すような姿勢の状態で、介入弁27Cが作動する。そのため、作業機2を
図30に示すような姿勢(初期姿勢)にした後、介入弁27Cに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係の導出のための較正処理が行われることにより、頻度が最も高い作業機2の姿勢において、介入弁27Cに供給される電流値とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係を導出することができる。
【0239】
作業機2の姿勢が初期姿勢に調整された後、較正処理の開始のために、マンマシンインターフェース部32の入力部321がオペレータによって操作される。本実施形態において、入力部321は、操作ボタン又はタッチパネルを含み、
図30に示す「NEXT」スイッチに対応する入力スイッチを含む。「NEXT」スイッチは、入力部321として機能する。
【0240】
図30に示す「NEXT」スイッチが操作されることによって、表示部322に、
図31に示すような画面が表示される。
図31において、表示部322には、入力部321として機能する「START」スイッチが表示される。その「START」スイッチが操作されることによって、較正処理が開始される。入力部321の操作により生成された指令信号は、作業機コントローラ26に出力される。
【0241】
本実施形態においては、較正処理の進捗率に応じて、表示部322の表示内容が変化する。
図31は、較正処理の進捗率が0%であるときの表示部322の画面の一例を示す。
【0242】
図32は、較正処理の進捗率が1%以上99%以下であるときの表示部322の画面の一例を示す。較正処理が開始され、その較正処理の進捗率が1%以上99%以下のとき、表示部322に、
図32に示すような表示内容が表示される。
図32において、表示部322には、入力部321として機能する「CLEAR」スイッチが表示される。オペレータが較正を中断する必要がある場合、その「CLEAR」スイッチが操作されることによって、較正処理が中断され、データ取得部26Aによって取得されたデータが前回較正した値に戻るとともに、進捗率が0%に戻る(リセットされる)。
【0243】
図33は、較正処理の進捗率が100%のときの表示部322の画面の一例を示す。
図33において、表示部322には、入力部321として機能する「CLEAR」スイッチが表示される。その「CLEAR」スイッチが操作されることによって、較正処理が中断され、データ取得部26Aによって取得されたデータが前回較正した値に戻されるとともに、進捗率が0%に戻る(リセットされる)。また、
図33に示す表示部322においては、「NEXT」スイッチが表示される。
【0244】
作業機コントローラ26の制御弁制御部26Cは、複数の制御弁27のそれぞれを制御する。制御弁制御部26Cは、較正処理の開始のための指令信号を入力部321から取得した後、複数の制御弁27の全部を閉じる(ステップSC2)。
【0245】
上述した、較正処理の開始のための入力部321の操作は、ブームシリンダ10を動作させる操作指令を作業機コントローラ26から出力させるための指令信号の生成を含む。制御弁制御部26Cは、較正処理の開始のための指令信号を入力部321から取得し、操作指令を介入弁27Cに出力する(ステップSC3)。
【0246】
すなわち、本実施形態においては、オペレータによる入力部321の操作により、複数の油圧シリンダ60(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)のうち、ブームシリンダ10を伸長方向に動作させる(ブーム6を上げ動作させる)操作指令を制御弁制御部26から出力させるための指令信号が生成される。制御弁制御部26Cは、入力部321の操作により生成された指令信号を取得して、複数の油圧シリンダ60(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)のうち、ブームシリンダ10を伸長方向に動作させる(ブーム6を上げ動作させる)操作指令を介入弁27Cに出力する。
【0247】
制御弁制御部26Cは、較正対象の介入弁27Cが開くように、その介入弁27Cに操作指令を出力する。すなわち、制御弁制御部26Cは、ブームシリンダ10を伸長方向に動作させる(ブーム6を上げ動作させる)ためのパイロット油が流れる介入用油路501が開くように、介入弁27Cを制御する。また、制御弁制御部26Cは、ブーム操作用油路4510Bが閉じるように、ブーム用減圧弁270Bを制御する。また、制御弁制御部26Cは、ブームシリンダ10を伸長方向に動作させる(ブーム6を下げ動作させる)ためのパイロット油が流れるブーム操作用油路4510Aが閉じるように、ブーム用減圧弁270Aを制御する。また、制御弁制御部26Cは、アームシリンダ11についてのパイロット油路(4511A、4511B、4521A、4521B)が閉じるように、アーム用制御弁271(271A、271B)を制御する。また、制御弁制御部26Cは、バケットシリンダ12についてのパイロット油路(4512A、4512B、4522A、4522B)が閉じるように、バケット用制御弁272(272A、272B)を制御する。
【0248】
すなわち、制御弁制御部26Cは、較正対象の介入弁27Cが開き、非較正対象の制御弁27の全部(ブーム用減圧弁270A、ブーム用減圧弁270B、アーム用減圧弁271A、アーム用減圧弁271B、バケット用減圧弁272A、及びバケット用減圧弁272B)が閉じるように、操作指令(EPC電流)の指令電流を出力する。
【0249】
本実施形態において、介入弁27Cに対する操作指令は、電流を含む。制御弁制御部26Cは、介入弁27Cに供給される電流値(操作指令値)を決定し、その決定された電流値を介入弁27Cに供給(出力)する。
【0250】
介入弁27Cに操作指令(EPC電流)が出力された状態で、データ取得部26Aは、その操作指令値(電流値)及び上げ動作を行うブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得する(ステップSC4)。
【0251】
作業機コントローラ26の導出部26Bは、データ取得部26Aで取得したデータに基づいて、操作指令値に対するブームシリンダ10の伸長方向についての動作特性を導出する。本実施形態において、導出部26Bは、ブームシリンダ10の動作特性として、データ取得部26Aで取得したデータに基づいて、停止状態のブームシリンダ10が動作を開始するときの動作開始操作指令値(動作開始操作電流値)、及び操作指令値と微速度領域におけるブームシリンダ10のシリンダ速度との関係を示す微速度動作特性を導出する。
【0252】
図34は、本実施形態に係る較正処理の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図34において、下のグラフの横軸は、時間であり、縦軸は、マンマシンインターフェース部の入力部321の操作により、マンマシンインターフェース部の入力部321から制御弁制御部26Cに出力された指令信号を示す。
図34において、上のグラフの横軸は、時間であり、縦軸は、作業機コントローラ26からの介入弁27Cに出力(供給)される操作指令値(電流値)を示す。
【0253】
図34に示すように、時点t0aにおいて、較正処理の開始のために入力部321が操作され、入力部321から制御弁制御部26Cに指令信号が出力される。制御弁制御部26Cは、時点t0aにおいて、複数の制御弁27の全てを閉じた後、介入弁27Cに操作指令(EPC電流)を出力(供給)する。介入弁27C以外の制御弁27に対して操作指令(EPC電流)は出力されない。また、時点t0aにおいて、ブームシリンダ10は動作を開始していない。アームシリンダ11及びバケットシリンダ12も動いていない。
【0254】
まず、制御弁制御部26Cは、介入弁27Cに、操作指令値I0の操作指令を出力する。操作指令値I0は、動き出しより低い点を予め設定しておく。制御弁制御部26Cは、時点t0aから時点t2aまでの所定時間の間、その操作指令値I0を介入弁27Cに出力し続ける。
【0255】
操作指令値I0が出力されている状態で、ブームシリンダ10のシリンダ速度がブームシリンダストロークセンサ16によって検出される。より詳細には、シリンダストロークセンサは、シリンダの変位を検出し、センサコントローラへ出力する。センサコントローラでシリンダストロークを導出し、作業機コントローラへ出力する。作業機コントローラは、シリンダストロークと経過時間からシリンダ速度を導出する。ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果は、作業機コントローラ26に出力される。作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、操作指令値I0及び操作指令値I0が出力されているときのブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得する。
【0256】
導出部26Bは、介入弁27Cに操作指令値I0が出力されている状態で、停止状態のブームシリンダ10が動作を開始したか否か(動き出したか否か)を判定する。導出部26Bは、ブームシリンダ10のシリンダストロークに関するデータに基づいて、停止状態のブームシリンダ10が動作を開始したか否かを判断する判定部26Baを有する。
【0257】
本実施形態において、判定部26Baは、時点t1aにおけるブームシリンダ10のシリンダストロークと、時点t2aにおけるブームシリンダ10のシリンダストロークとを比較する。時点t1aは、例えば時点t0aから第1の所定時間経過した時点である。時点t2aは、例えば時点t0aから第3の所定時間経過した時点(時点t1aから第2の所定時間経過した時点)である。但し、第2の所定時間は、第1の所定時間よりも長い時間とする。第3の所定時間は、第1の所定時間と第2の所定時間とを足し合わせた時間とする。
【0258】
判定部26Baは、時点t1aにおけるシリンダストロークの検出値と、時点t2aにおけるシリンダストロークの検出値との差を導出する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値よりも小さいと判断したとき、ブームシリンダ10は動作を開始していないと判断する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値以上であると判断したとき、ブームシリンダ10は動作を開始したと判断する。
【0259】
操作指令値I0が出力されているときに、判定部26Baによりブームシリンダ10が動作を開始したと判断された場合、操作指令値I0が、停止状態のブームシリンダ10が動作を開始するときの動作開始操作指令値(動作開始操作電流値)となる。
【0260】
操作指令値I0においてブームシリンダ10が動作を開始していない判断された場合、制御弁制御部26Cは、介入弁27Cに出力する操作指令値を増大する。制御弁制御部26Cは、操作指令値I0を低減することなく、時点t2aにおいて、操作指令値I0から操作指令値I1に増大し、その操作指令値I1を介入弁27Cに出力する。制御弁制御部26Cは、時点t2aから時点t2bまで、その操作指令値I1を介入弁27Cに出力し続ける。時点t2aから時点t2bまでの時間は、例えば第3の所定時間である。
【0261】
操作指令値I1が出力されている状態で、ブームシリンダ10のシリンダストロークがシリンダストロークセンサ16によって検出される。シリンダストロークセンサ16の検出結果は、作業機コントローラ26に入力される。作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、操作指令値I1及び操作指令値I1が出力されているときのブームシリンダ10のシリンダストロークに関するデータを取得する。
【0262】
導出部26Bの判定部26Baは、介入弁27Cに操作指令値I1が出力されている状態で、停止状態のブームシリンダ10が動作を開始したか否か(動き出したか否か)を判定する。
【0263】
判定部26Baは、時点t1bにおけるブームシリンダ10のシリンダストロークと、時点t2bにおけるブームシリンダ10のシリンダストロークとを比較する。時点t1bは、例えば時点t2aから第1の所定時間経過した時点である。時点t2bは、例えば時点t2aから第3の所定時間経過した時点(時点t1bから第2の所定時間経過した時点)である。
【0264】
判定部26Baは、時点t1bにおけるシリンダストロークの検出値と、時点t2bにおけるシリンダストロークの検出値との差を導出する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値よりも小さいと判断したとき、ブームシリンダ10は動作を開始していないと判断する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値以上であると判断したとき、ブームシリンダ10は動作を開始したと判断する。
【0265】
操作指令値I1が出力されているときに、判定部26Baによりブームシリンダ10が動作を開始したと判断された場合、操作指令値I1が、停止状態のブームシリンダ10が動作を開始するときの動作開始操作指令値(動作開始操作電流値)となる。
【0266】
以下、同様の処理が行われ、動作開始操作指令値が導出される。すなわち、操作指令値I1から操作指令値I2に増大された後、判定部26Baは、時点t1cにおけるブームシリンダ10のシリンダストロークと、時点t2cにおけるブームシリンダ10のシリンダストロークとを比較する。時点t1cは、例えば時点t2bから第1の所定時間経過した時点である。時点t2cは、例えば時点t2bから第3の所定時間経過した時点(時点t1cから第2の所定時間経過した時点)である。本実施形態では操作指令値I0から操作指令値I1までの電流の増加分と、操作指令値I1から操作指令値I2までの電流の増加分は同じとする。
【0267】
判定部26Baは、時点t1cにおけるシリンダストロークの検出値と、時点t2cにおけるシリンダストロークの検出値との差を導出する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値よりも小さいと判断したとき、ブームシリンダ10は動作を開始していないと判断する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値以上であると判断したとき、ブームシリンダ10は動作を開始したと判断する。
【0268】
本実施形態においては、動作開始操作指令値は、操作指令値I2であることとする。以上により、動作開始操作指令値が導出される(ステップSC5)。
【0269】
動作開始操作指令値が導出された後、制御弁制御部26Cは、介入弁27Cに出力する操作指令値を更に増大する。制御弁制御部26Cは、操作指令値I2を低減することなく、時点t2cにおいて、操作指令値I2から操作指令値I3に増大し、その操作指令値I3を介入弁27Cに出力する(ステップSC6)。操作指令値I3は、動作開始操作指令値I2よりも大きい。制御弁制御部26Cは、時点t2cから時点t0dまで、その操作指令値I3を介入弁27Cに出力し続ける。時点t2cから時点t0dまでの時間は、例えば第3の所定時間である。
【0270】
操作指令値I3が出力されている状態で、ブームシリンダ10のシリンダストロークがシリンダストロークセンサ16によって検出される。シリンダストロークの検出結果は、センサコントローラ30を介して作業機コントローラ26に入力される。作業機コントローラ26のデータ取得部26AはシリンダストロークL1を取得する。演算部26Bbは操作指令値I3及び操作指令値I3が出力されているときのブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得する(ステップSC7)。
【0271】
操作指令値I3は、動作開始操作指令値I2よりも大きい。操作指令値I3が出力されている状態において、ブームシリンダ10は、動作し続ける(伸長し続ける)。
【0272】
導出部26Bは、介入弁27Cに操作指令値I3が出力されている状態で、操作指令値I3とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係を示す動作特性を導出する演算部26Bbを有する。演算部26Bbは、介入弁27Cに操作指令値I3が出力されている状態で、操作指令値I3とブームシリンダ10のシリンダストロークとの関係を導出する。
【0273】
演算部26Bbは、時点t1dから時点t0dまでのシリンダストロークの平均値を算出する。時点t1dは、時点t2cから第1の所定時間経過した時点である。時点t1dから時点t0dまでの時間は、第2の所定時間である。本実施形態においては、操作指令値I3が出力されているときのシリンダストロークを、時点t1dから時点t0dまでのシリンダストロークの平均値とする。
【0274】
操作指令値I3から入力したときのシリンダストロークが導出された後、制御弁制御部26Cは、介入弁27Cに出力する操作指令値を更に増大する。制御弁制御部26Cは、操作指令値I3を低減することなく、時点t0dにおいて、操作指令値I3から操作指令値I4に増大し、その操作指令値I4を介入弁27Cに出力する(ステップSC6)。操作指令値I4は、操作指令値I3よりも大きい。制御弁制御部26Cは、時点t0dから時点t2dまで、その操作指令値I4を介入弁27Cに出力し続ける。時点t0dから時点t2dまでの時間は、例えば第3の所定時間である。
【0275】
操作指令値I4が出力されている状態で、ブームシリンダ10のシリンダストロークがシリンダストロークセンサ16によって検出される。シリンダストロークセンサ16の検出結果は、センサコントローラ30を介して作業機コントローラ26に出力される。作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、操作指令値I4及び操作指令値I4が出力されているときのブームシリンダ10のシリンダストロークに関するデータを取得する(ステップSC7)。
【0276】
操作指令値I4が出力されている状態において、ブームシリンダ10は、動作し続ける(伸長し続ける)。
【0277】
演算部26Bbは、介入弁27Cに操作指令値I4が出力されている状態で、操作指令値I4とブームシリンダ10のシリンダストロークとの関係を導出する。本実施形態においては、操作指令値I4が出力されているときのシリンダストロークを、時点t1eから時点t2dまでのシリンダストロークの平均値とする。時点t1eは、時点t0dから第1の所定時間経過した時点である。時点t1eから時点t2dまでの時間は、第2の所定時間である。
【0278】
以下、操作指令値I4よりも大きい操作指令値I5、操作指令値I5よりも大きい操作指令値I6、及び操作指令値I6よりも大きい操作指令値I7について、同様の処理が行われる。
【0279】
操作指令値I5は、時点t2dから時点t2eまで出力される。操作指令値I5が出力されているときのシリンダストロークは、時点t1fから時点t2eまでのシリンダストロークの平均値である。時点t1fは、時点t2dから第1の所定時間経過した時点である。時点t2eは、時点t2dから第3の所定時間経過した時点(時点t1fから第2の所定時間経過した時点)である。演算部26Bbは、操作指令値I5とブームシリンダ10のシリンダストロークとの関係を導出する。
【0280】
操作指令値I6は、時点t2eから時点t2fまで出力される。操作指令値I6が出力されているときのシリンダ速度は、時点t1gから時点t2fまでのシリンダストロークの平均値である。時点t1gは、時点t2eから第1の所定時間経過した時点である。時点t2fは、時点t2eから第3の所定時間経過した時点(時点t1gから第2の所定時間経過した時点)である。演算部26Bbは、操作指令値I6とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係を導出する。
【0281】
操作指令値I7は、時点t2fから時点t2gまで出力される。操作指令値I7が出力されているときのシリンダストロークは、時点t1hから時点t2gまでにシリンダストロークセンサ16から出力された検出値の平均値である。時点t1hは、時点t2fから第1の所定時間経過した時点である。時点t2gは、時点t2fから第3の所定時間経過した時点(時点t1hから第2の所定時間経過した時点)である。演算部26Bbは、操作指令値I7とブームシリンダ10のシリンダ速度との関係を導出する。
【0282】
操作指令値(I3、I4、I5、I6、I7)が出力されている状態において、ブームシリンダ10は、微速度で動作する。すなわち、操作指令値(I3、I4、I5、I6、I7)が出力されている状態において、ブームシリンダ10のシリンダ速度は、微速度(低速度)である。
【0283】
導出部26Bは、ステップSC7において取得した、複数の操作指令値(I3、I4、I5、I6、I7)と、それら操作指令値(I3、I4、I5、I6、I7)が出力されたときのブームシリンダ10の複数のシリンダストロークとに基づいて、操作指令値(I3、I4、I5、I6、I7)と微速度領域におけるシリンダ速度との関係を示す微速度動作特性を導出する(ステップSC8)。
【0284】
上述のように、本実施形態においては、ステップSC1からステップSC8が、較正処理の第1シーケンスとなる。第1シーケンスにおいて、動作開始操作指令値及び微速度動作特性が導出される。
【0285】
第1シーケンスにおいて、進捗率が0%のときは、
図31に示した表示内容が表示部322に表示される。第1シーケンスにおいて、進捗率が1%以上99%以下のときは、
図32に示した表示内容が表示部322に表示される。第1シーケンスにおいて、進捗率が100%のときは、
図33に示した表示内容が表示部322に表示される。
【0286】
第1シーケンスの進捗率が100%に到達し、微速度動作特性が導出された後、オペレータは、通常速度動作特性を導出するための処理を開始するために、
図33に示した「NEXT」スイッチを操作する。上述のように、本実施形態においては、通常速度動作特性を導出するための処理は、較正処理の第2シーケンス、第3シーケンス、及び第4シーケンスを含む。第1シーケンスが終了した後、第2シーケンスが開始される。
【0287】
第2シーケンスから第4シーケンスの開始において、作業機2の姿勢の含む油圧ショベル100の較正条件が判定される(ステップSC9)。制御弁制御部26Cは、操作装置25の操作により作業機2が駆動可能な状態となるように、複数の制御弁27を開ける。
【0288】
このように、本実施形態においては、制御弁制御部26Cは、複数の制御弁27を制御して、微速度動作特性(第1動作特性)を導出するためのデータの取得(ステップSC7)及び微速度動作特性の導出(ステップSC8)が終了してから、通常速度動作特性(第2動作特性)を導出するためのデータの取得(ステップSC11)が開始されるまでの間の較正条件の判定時(ステップSC9)に、複数のパイロット油路450を開ける。
【0289】
図30を参照して説明したように、マンマシンインターフェース部32の表示部322に、作業機2の姿勢の調整を要求する姿勢調整要求情報が表示される。本実施形態においては、
図33の「NEXT」スイッチの操作により、
図30に示した表示内容が表示される。オペレータは、その表示部322の表示に従って操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を姿勢調整要求情報が表示された姿勢(初期姿勢)に調整する。オペレータは、表示部322を見ながら、アーム7がガイダンス2Gに沿って配置されるように、操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を調整する。
【0290】
作業機2の姿勢の調整において、複数の制御弁27の全ての減圧弁が開放状態となる。そのため、オペレータは、操作装置25を操作することによって、作業機2を駆動することができる。操作装置25の操作により、作業機2が初期姿勢になるように駆動される。
【0291】
作業機2の姿勢が初期姿勢に調整された後、通常速度動作特性を導出するための処理が開始される。オペレータにより、
図30の「NEXT」スイッチが操作されることにより、表示部322に、
図31に示した表示内容が表示される。オペレータは、
図31に示した「START」スイッチを操作する。これにより、通常速度動作特性を導出するための処理を開始するための指令信号から生成される。制御弁制御部26Cは、その指令信号を入力部321から取得した後、複数の制御弁27の全部を閉じる(ステップSC10)。ここで、
図31に表示されている「レバーフル」は、操作装置25を最大傾倒角に倒した状態を意味する。また「エンジン回転Hi」は、エンジンのスロットル設定を最大回転数に設定した状態を意味する。
【0292】
制御弁制御部26Cは、非較正対象の制御弁27(介入弁27C以外の制御弁27)を閉じた状態で、介入弁27Cに操作指令を出力する(ステップSC11)。
【0293】
制御弁制御部26Cは、操作指令値I7よりも十分に大きい操作指令値Iaを出力する。これにより、介入弁27Cが十分に開き、初期姿勢のブーム6が大きく上げ動作する。
【0294】
データ取得部26Aは、シリンダストロークL1を取得する。演算部26Bbは操作指令値Ia、及びその操作指令値Iaが出力されたときのブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得する(ステップSC12)。
【0295】
本実施形態においては、作業機2が初期姿勢に調整された後、操作指令値Iaを出力して、操作指令値Ia及びその操作指令値Iaが出力されたときのシリンダストロークに関するデータを取得するまでの処理が、較正処理の第2シーケンスとなる。
【0296】
第2シーケンスおいて、進捗率が0%のときは、
図31にブーム6の上げる旨の内容の表示を加えた画像が表示部322に表示される。第2シーケンスにおいて、進捗率が1%以上99%以下のときは、
図32に示した表示内容が表示部322に表示される。第2シーケンスにおいて、進捗率が100%のときは、
図33に示した表示内容が表示部322に表示される。
【0297】
第2シーケンスの進捗率が100%に到達し、操作指令値Ia及びシリンダストロークに関するデータが取得された後、通常速度動作特性を導出するための処理のうち、較正処理の第3シーケンスが開始される。オペレータは、第3シーケンスを開始するために、
図33に示した「NEXT」スイッチを操作する。
【0298】
図33の「NEXT」スイッチの操作により、
図30を参照して説明したように、マンマシンインターフェース部32の表示部322に、作業機2の姿勢の調整を要求する姿勢調整要求情報が表示される。制御弁制御部26Cは、操作装置25の操作により作業機2が駆動可能な状態となるように、複数の制御弁27のうち全ての減圧弁を開ける。オペレータは、その表示部322の表示に従って操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を初期姿勢に調整する。これにより、作業機2の姿勢が初期姿勢に調整される(ステップS9)。
【0299】
作業機2の姿勢が初期姿勢に調整された後、通常速度動作特性を導出するための処理が開始される。オペレータにより、
図30に示した「NEXT」スイッチが操作されることにより、表示部322に、
図31に示した表示内容が表示される。オペレータは、
図31に示した「START」スイッチを操作する。これにより、通常速度動作特性を導出するための処理を開始するための指令信号から生成される。制御弁制御部26Cは、その指令信号をマンマシンインターフェース部32の入力部321から取得した後、複数の制御弁27の全部を閉じる(ステップSC10)。
【0300】
制御弁制御部26Cは、非較正対象の制御弁27(介入弁27C以外の制御弁27)を閉じた状態で、介入弁27Cに操作指令を出力する(ステップSC11)。
【0301】
制御弁制御部26Cは、操作指令値Iaよりも大きい操作指令値Ibを出力する。これにより、介入弁27Cが十分に開き、初期姿勢のブーム6が大きく上げ動作する。
【0302】
データ取得部26Aは、シリンダストロークL1を取得する。演算部26Bbは操作指令値Ib、及びその操作指令値Ibが出力されたときのブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得する(ステップSC12)。
【0303】
本実施形態においては、作業機2が初期姿勢に調整された後、操作指令値Ibを出力して、操作指令値Ib及びその操作指令値Ibが出力されたときのシリンダストロークに関するデータを取得するまでの処理が、較正処理の第3シーケンスとなる。
【0304】
第3シーケンスにおいて、進捗率が0%のときは、
図31にブーム6の上げる旨の内容の表示を加えた画像が表示部322に表示される。第3シーケンスにおいて、進捗率が1%以上99%以下のときは、
図32に示した表示内容が表示部322に表示される。第3シーケンスにおいて、進捗率が100%のときは、
図33に示した表示内容が表示部322に表示される。
【0305】
第3シーケンスの進捗率が100%に到達し、操作指令値Ib及びシリンダストロークに関するデータが取得された後、通常速度動作特性を導出するための処理のうち、較正処理の第4シーケンスが開始される。オペレータは、第4シーケンスを開始するために、
図33に示した「NEXT」スイッチを操作する。
【0306】
図33の「NEXT」スイッチの操作により、
図30を参照して説明したように、マンマシンインターフェース部32の表示部322に、作業機2の姿勢の調整を要求する姿勢調整要求情報が表示される。制御弁制御部26Cは、操作装置25の操作により作業機2が駆動可能な状態となるように、全ての制御弁27を開ける。オペレータは、その表示部322の表示に従って操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を初期状態(初期姿勢)に調整する。これにより、作業機2の姿勢が初期姿勢に調整される(ステップSC9)。
【0307】
作業機2の姿勢が初期姿勢に調整された後、通常速度動作特性を導出するための処理が開始される。オペレータにより、
図30に示した「NEXT」スイッチが操作されることにより、表示部322に、
図31に示した表示内容が表示される。オペレータは、通常速度動作特性を導出するための処理を開始するために、
図31に示した「START」スイッチを操作する。これにより、通常速度動作特性を導出するための処理を開始するための指令信号から生成される。制御弁制御部26Cは、その指令信号を入力部321から取得した後、全ての制御弁27を閉じる(ステップSC10)。
【0308】
制御弁制御部26Cは、非較正対象の制御弁27(介入弁27C以外の制御弁27)を閉じた状態で、介入弁27Cに操作指令を出力する(ステップSC11)。
【0309】
制御弁制御部26Cは、操作指令値Ibよりも大きい操作指令値Icを出力する。これにより、介入弁27Cが十分に開き、初期姿勢のブーム6が大きく上げ動作する。
【0310】
データ取得部26Aは、シリンダストロークL1を取得する。演算部26Bbは操作指令値Ic、及びその操作指令値Icが出力されたときのブームシリンダ10のシリンダ速度に関するデータを取得する(ステップSC12)。
【0311】
本実施形態においては、作業機2が初期姿勢に調整された後、操作指令値Icを出力して、操作指令値Ic及びその操作指令値Icが出力されたときのシリンダ速度に関するデータを取得するまでの処理が、較正処理の第4シーケンスとなる。
【0312】
第4シーケンスにおいて、進捗率が0%のときは、
図31にブーム6の上げる旨の内容の表示を加えた画像が表示部322に表示される。第4シーケンスにおいて、進捗率が1%以上99%以下のときは、
図32に示した表示内容が表示部322に表示される。第4シーケンスにおいて、進捗率が100%のときは、
図33に示した表示内容が表示部322に表示される。
図33では図示されていないが、実際はシーケンス1〜4の計測結果に基づきPPC圧力、スプールストロークの各指令値Icでの数値が記載される。
【0313】
導出部26Bは、較正処理の第2シーケンスで取得した、操作指令値Iaとシリンダ速度との関係、較正処理の第3シーケンスで取得した、操作指令値Ibとシリンダ速度との関係、及び較正処理の第4シーケンスで取得した、操作指令値Icとシリンダ速度との関係に基づいて、操作指令値(Ia、Ib、Ic)と通常速度領域におけるシリンダストロークとの関係を示す通常速度動作特性を導出する(ステップSC13)。
【0314】
通常速度領域は、微速度領域よりも高い速度領域である。微速度領域を、低速度領域、と称してもよいし、通常速度領域を、高速度領域、と称してもよい。微速度領域は、シリンダ速度が例えば所定速度よりも低い速度領域である。通常速度領域は、シリンダ速度が例えば前記所定速度以上の速度領域である。
【0315】
図35は、導出部26Bにおいて動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が導出された後の表示部322の一例を示す。動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が導出された後、
図35に示すスイッチ321Pが表示される。スイッチ321Pの操作により、導出部26Bにおいて導出された動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が確定される。以下の説明において、スイッチ321Pを適宜、最終確定スイッチ321P、と称する。
【0316】
導出部26Bで導出された動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が、記憶部26Gに記憶される(ステップSC14)。本実施形態においては、
図35に示したスイッチ321Pが操作されることにより、動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が記憶部26Gに記憶される。
【0317】
特性が既に記憶されている場合、更新部26Fにより新たに導出された動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が、記憶部26Gより読み出され導出部26Bの各相関データが更新される。
【0318】
本実施形態においては、操作指令値及びシリンダ速度に関するデータの取得(ステップSC4、SC7、SC12)において、データ取得部26Aは、制御弁制御部26Cから出力される操作指令値(電流値)に関するデータ、及びシリンダ速度センサから入力したされるシリンダ速度に関するデータのみならず、方向制御弁640のスプールストロークセンサ65から入力したスプールストロークに関するデータ、及びブーム用圧力センサ670Bから入力したパイロット油圧に関するデータも取得する。
【0319】
シリンダ速度と、スプールストロークと、パイロット油圧と、操作指令値とは相関する。操作指令値が変化することによって、パイロット油圧、スプールストローク、及びシリンダ速度のそれぞれが変化する。
【0320】
導出部26Bは、それらデータ取得部26Aが取得したデータに基づいて、ブームシリンダ10のシリンダ速度と方向制御弁640のスプールストロークとの関係を示す第1相関データ、方向制御弁640のスプールストロークと介入弁27Cによって調整されるパイロット油圧との関係を示す第2相関データ、及び介入弁27Cによって調整されるパイロット油圧と介入弁27Cに出力される操作指令値(電流値)との関係を示す第3相関データを導出して、記憶部26Gに記憶させる。
【0321】
なお、本実施形態においては、操作指令値が、制御弁27に出力される電流値であることとするが、操作指令値は、制御弁27によって調整されるパイロット油圧値(パイロット油の圧力値)、及びスプールストローク値(スプール80の移動量値)を含む概念である。例えば、パイロット油圧値及びシリンダ速度に関するデータがデータ取得部26Aに取得され、その取得されたデータに基づいて、導出部26Bが、停止状態の油圧シリンダ60が動作を開始するときの動作開始パイロット油圧値、及びパイロット油圧値とシリンダ速度との関係を示す動作特性(微速度動作特性及び通常速度動作特性を含む)を導出してもよい。例えば、スプールストローク値及びシリンダ速度に関するデータがデータ取得部26Aに取得され、その取得されたデータに基づいて、導出部26Bが、停止状態の油圧シリンダ60が動作を開始するときの動作開始スプールストローク値、及びスプールストローク値とシリンダ速度との関係を示す動作特性(微速度動作特性及び通常速度動作特性を含む)を導出してもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0322】
図36は、動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性を導出するための作業機コントローラ26の処理をより具体的に示したフローチャートである。本実施形態において、マンマシンインターフェース部32は、作業機コントローラ26に対して、表示部322の表示内容(画面)に応じた識別信号(ID)を出力する。第1シーケンスを実行するための表示内容が表示部322に表示される場合、作業機コントローラ26はマンマシンインターフェース32からIDとして「1」が出力される。第2シーケンスを実行するための表示内容が表示部322に表示される場合、IDとして「2」が入力される。第3シーケンスを実行するための表示内容が表示部322に表示される場合、IDとして「3」が入力される。第4シーケンスを実行するための表示内容が表示部322に表示される場合、IDとして「4」が出力される。
【0323】
作業機コントローラ26は、マンマシンインターフェース部32から入力したIDを取得し、そのIDの種類を判別する(ステップSD01)。
【0324】
ステップSD01において、取得したIDが「0」であると判断した場合(ステップSD01においてYesの場合)、作業機コントローラ26は、較正モードでないと判断し、シリンダ速度センサ等から取得したデータをクリア(初期化)し、進捗率を0%にリセットする(ステップSD02)。また、作業機コントローラ26は、進歩率をマンマシンインターフェース部32に出力する(ステップSD03)。
【0325】
ステップSD01において、取得したIDが「0」でないいずれかの較正モードであると判断した場合(ステップSD01においてNoの場合)、作業機コントローラ26は、取得したIDが「1」であるか否かを判断する(ステップSD11)。
【0326】
ステップSD11において、取得したIDが「1」であると判断した場合(ステップSD11においてYesの場合)、作業機コントローラ26は、
図31に示した「START」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD12)。すなわち、作業機コントローラ26は、第1シーケンスを開始するための入力部321(「START」スイッチ)が操作され、その「START」スイッチにより第1シーケンスを開始するための指令信号が入力したか否かを判断する。
【0327】
ステップSD12において、「START」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD12においてNoの場合)、ステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0328】
ステップSD12において、「START」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD12においてYesの場合)、作業機コントローラ26(制御弁制御部26C)は、介入弁27C以外の制御弁27を閉じた後、介入弁26Cに操作指令を出力する(ステップSD13)。ステップSD13の処理は、
図27のステップSC3の処理に相当する。
【0329】
作業機コントローラ26(データ取得部26A)は、シリンダストロークセンサ16の検出値、方向制御弁640のスプールストロークセンサ65の検出値、ブーム用圧力センサ670Bの検出値、及び介入弁26Cに出力される電流値を含むデータを取得する(ステップSD14)。ステップSD14の処理は、
図27のステップSC4に相当する。
【0330】
また、作業機コントローラ26は、第1シーケンスの進捗率を算出する(ステップSD15)。進捗率は、「取得したデータ数/目標取得データ数」により算出される。
【0331】
また、作業機コントローラ26は、
図32に示した「CLEAR」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD16)。すなわち、作業機コントローラ26は、第1シーケンスを中断(終了)するための入力部321(「CLEAR」スイッチ)が操作され、その「CLEAR」スイッチにより第1シーケンスを中断するための指令信号が出力されたか否かを判断する。
【0332】
ステップSD16において、「CLEAR」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD16においてNoの場合)、ステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0333】
ステップSD16において、「CLEAR」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD16においてYesの場合)、作業機コントローラ26は、シリンダ速度センサ等から取得したデータをクリア(初期化)し、進捗率を0%にリセットする(ステップSD17)。また、作業機コントローラ26は、進歩率をマンマシンインターフェース部32に出力する(ステップSD03)。
【0334】
ステップSD11において、取得したIDが「1」でないと判断した場合(ステップSD11においてNoの場合)、作業機コントローラ26は、取得したIDが「2」であるか否かを判断する(ステップSD21)。
【0335】
ステップSD21において、取得したIDが「2」であると判断した場合(ステップSD21においてYesの場合)、作業機コントローラ26は、
図31に示した「START」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD22)。すなわち、作業機コントローラ26は、第2シーケンスを開始するための入力部321(「START」スイッチ)が操作され、その「START」スイッチにより第2シーケンスを開始するための指令信号が出力されたか否かを判断する。
【0336】
ステップSD22において、「START」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD22においてNoの場合)、ステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0337】
ステップSD22において、「START」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD22においてYesの場合)、作業機コントローラ26(制御弁制御部26C)は、介入弁27C以外の制御弁27を閉じた後、介入弁26Cに操作指令を出力する(ステップSD23)。ステップSD23の処理は、
図27のステップSC11の処理に相当する。
【0338】
作業機コントローラ26(データ取得部26A)は、シリンダストロークセンサ16の検出値、方向制御弁640のスプールストロークセンサ65の検出値、ブーム用圧力センサ670Bの検出値、及び介入弁26Cに出力される電流値を含むデータを取得する(ステップSD24)。ステップSD24の処理は、
図27のステップSC12に相当する。
【0339】
また、演算部26Bbは、第2シーケンスの進捗率を算出する(ステップSD25)。進捗率は、「取得したデータ数/目標取得データ数」により算出される。
【0340】
また、シーケンス制御部26Hは、
図32に示した「CLEAR」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD26)。すなわち、シーケンス制御部26Hは、第2シーケンスを中断(終了)するための入力部321(「CLEAR」スイッチ)が操作され、その「CLEAR」スイッチにより第2シーケンスを中断するための指令信号が出力されたか否かを判断する。
【0341】
ステップSD26において、シーケンス制御部26H「CLEAR」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD26においてNoの場合)、ステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0342】
ステップSD26において、「CLEAR」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD26においてYesの場合)、シーケンス制御部26Hは、シリンダ速度センサ等から取得したデータをクリア(初期化)し、進捗率を0%にリセットする(ステップSD27)。また、シーケンス制御部26Hは、進捗率をマンマシンインターフェース部32に出力する(ステップSD03)。
【0343】
ステップSD21において、取得したIDが「2」でないと判断した場合(ステップSD21においてNoの場合)、シーケンス制御部26Hは、取得したIDが「3」であるか否かを判断する(ステップSD31)。
【0344】
ステップSD31において、取得したIDが「3」であると判断した場合(ステップSD31においてYesの場合)、シーケンス制御部26Hは、
図31に示した「START」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD32)。すなわち、シーケンス制御部26Hは、第3シーケンスを開始するための入力部321(「START」スイッチ)が操作され、その「START」スイッチにより第3シーケンスを開始するための指令信号が入力されたか否かを判断する。
【0345】
ステップSD32において、「START」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD32においてNoの場合)、シーケンス制御部26HはステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0346】
ステップSD32において、シーケンス制御部26Hは「START」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD32においてYesの場合)、作業機コントローラ26(制御弁制御部26C)は、介入弁27C以外の制御弁27を閉じた後、介入弁26Cに操作指令を出力する(ステップSD33)。ステップSD33の処理は、
図27のステップSC11の処理に相当する。
【0347】
作業機コントローラ26(データ取得部26A)は、シリンダ速度センサ16の検出値、方向制御弁640のスプールストロークセンサ65の検出値、ブーム用圧力センサ670Bの検出値、及び介入弁26Cに出力される電流値を含むデータを取得する(ステップSD34)。ステップSD34の処理は、
図27のステップSC12に相当する。
【0348】
また、シーケンス制御部26Hは、第3シーケンスの進捗率を算出する(ステップSD35)。進捗率は、「取得したデータ数/目標取得データ数」により算出される。
【0349】
また、シーケンス制御部26Hは、
図32に示した「CLEAR」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD36)。すなわち、作業機コントローラ26は、第3シーケンスを中断(終了)するための入力部321(「CLEAR」スイッチ)が操作され、その「CLEAR」スイッチにより第3シーケンスを中断するための指令信号が入力されたか否かを判断する。
【0350】
ステップSD36において、「CLEAR」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD36においてNoの場合)、シーケンス制御部26HステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0351】
ステップSD36において、「CLEAR」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD36においてYesの場合)、シーケンス制御部26Hは、シリンダ速度センサ等から取得したデータをクリア(初期化)し、進捗率を0%にリセットする(ステップSD37)。また、シーケンス制御部26Hは、進捗率をマンマシンインターフェース部32に出力する(ステップSD03)。
【0352】
ステップSD31において、取得したIDが「3」でないと判断した場合(ステップSD31においてNoの場合)、シーケンス制御部26Hは、取得したIDが「4」であるか否かを判断する(ステップSD41)。
【0353】
ステップSD41において、取得したIDが「4」であると判断した場合(ステップSD41においてYesの場合)、シーケンス制御部26Hは、
図31に示した「START」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD42)。すなわち、作業機コントローラ26は、第4シーケンスを開始するための入力部321(「START」スイッチ)が操作され、その「START」スイッチにより第4シーケンスを開始するための指令信号が入力されたか否かを判断する。
【0354】
ステップSD42において、「START」スイッチが操作されていないとシーケンス制御部26Hが判断した場合(ステップSD42においてNoの場合)、ステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0355】
ステップSD42において、「START」スイッチが操作されたとシーケンス制御部26Hは判断した場合(ステップSD42においてYesの場合)、作業機コントローラ26(制御弁制御部26C)は、介入弁27C以外の制御弁27を閉じた後、介入弁26Cに操作指令を出力する(ステップSD43)。ステップSD43の処理は、
図27のステップSC11の処理に相当する。
【0356】
作業機コントローラ26(データ取得部26A)は、シリンダ速度センサ16の検出値、方向制御弁640のスプールストロークセンサ65の検出値、ブーム用圧力センサ670Bの検出値、及び介入弁26Cに出力される電流値を含むデータを取得する(ステップSD44)。ステップSD44の処理は、
図27のステップSC12に相当する。
【0357】
また、シーケンス制御部26Hは、第4シーケンスの進捗率を算出する(ステップSD45)。進捗率は、「取得したデータ数/目標取得データ数」により算出される。
【0358】
また、シーケンス制御部26Hは、
図32に示した「CLEAR」スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップSD46)。すなわち、シーケンス制御部26Hは、第4シーケンスを中断(終了)するための入力部321(「CLEAR」スイッチ)が操作され、その「CLEAR」スイッチにより第4シーケンスを中断するための指令信号が入力されたか否かを判断する。
【0359】
ステップSD46において、「CLEAR」スイッチが操作されていないと判断した場合(ステップSD46においてNoの場合)、シーケンス制御部26HはステップSD02及びステップSD03の処理が行われる。
【0360】
ステップSD46において、「CLEAR」スイッチが操作されたと判断した場合(ステップSD46においてYesの場合)、シーケンス制御部26Hは、シリンダ速度センサ等から取得したデータをクリア(初期化)し、進捗率を0%にリセットする(ステップSD47)。また、作業機コントローラ26は、進捗率をマンマシンインターフェース部32に出力する(ステップSD03)。
【0361】
ステップSD41において、取得したIDが「4」でないと判断した場合(ステップSD41においてNoの場合)、シーケンス制御部26Hは、他の処理を実行する。
【0362】
第1シーケンス、第2シーケンス、第3シーケンス、及び第4シーケンスが終了し、動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常動作特性が導出された後、シーケンス制御部26Hは、
図35に示した最終確定スイッチ321Pが操作されたか否かを判断する(ステップSD04)。
【0363】
ステップSD04において、最終確定スイッチ321Pが所定時間操作されていないとシーケンス制御部26Hが判断した場合(ステップSD04においてNoの場合)、ステップSD03の処理が行われる。
【0364】
ステップSD04において、最終確定スイッチ321Pが操作されたとシーケンス制御部26Hが判断した場合(ステップSD04においてYesの場合)、作業機コントローラ26(更新部26F)は、導出された動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常動作特性を記憶部26Gに記憶する。
【0365】
図37は、ブーム介入により決定されたスプールの移動量(スプールストローク)とシリンダ速度との関係を示す第1相関データの一例を示す図である。
図38は、
図37のA部分を拡大した図である。
図37及び
図38において、横軸は、操作指令値としてのスプールストローク値であり、縦軸は、シリンダ速度である。スプールストローク値が零(原点)である状態は、スプールが初期位置に存在する状態である。
【0366】
図37において、A部分は、ブームシリンダ10のシリンダ速度が微速度である微速度領域を示す。B部分は、ブームシリンダ10のシリンダ速度が微速度よりも高い通常速度である通常速度領域を示す。B部分で示す通常速度領域は、A部分で示す微速度領域よりも高い速度領域である。
【0367】
図37に示すように、A部分におけるグラフの傾きは、B部分におけるグラフの傾きよりも小さい。すなわち、スプールストローク値(操作指令値)に対するシリンダ速度の変化量は、通常速度領域のほうが、微速度領域よりも大きい。
【0368】
図38において、スプールストローク値T2は、介入弁27Cに動作開始指令値である操作指令I2(
図34等参照)が出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値T3は、介入弁27Cに操作指令I3が出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値T4は、介入弁27Cに操作指令I4が出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値T5は、介入弁27Cに操作指令I5が出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値T6は、介入弁27Cに操作指令I6が出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値T7は、介入弁27Cに操作指令I7が出力されたときのスプールストローク値である。
【0369】
図37において、スプールストローク値Taは、介入弁27Cに操作指令Iaが出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値Tbは、介入弁27Cに電流値Ibが出力されたときのスプールストローク値である。スプールストローク値Tcは、介入弁27Cに操作指令Icが出力されたときのスプールストローク値である。
【0370】
このように、作業機コントローラ26は、上述のステップSC1からステップSC14を参照して説明した較正処理によって、A部分のラインL2で示す、微速度動作特性と、B部分のラインL2で示す、通常速度特性とを導出することができる。
【0371】
シリンダ速度は、バケット8の重量に応じて変化する。例えば、油圧シリンダ60に対する作動油の供給量が同じでも、バケット8の重量が変化すると、シリンダ速度は変化する。
【0372】
図39は、ブーム6におけるスプールの移動量(スプールストローク)とシリンダ速度との関係を示す第1相関データの一例を示す図である。
図40は、
図39のA部分を拡大した図である。
図39及び
図40において、横軸は、スプールストロークであり、縦軸は、シリンダ速度である。スプールストロークが零(原点)である状態は、スプールが初期位置に存在する状態である。ラインL1は、バケット8が大重量である場合の第1相関データを示す。ラインL2は、バケット8が中重量である場合の第1相関データを示す。ラインL3は、バケット8が小重量である場合の第1相関データを示す。
【0373】
図39及び
図40に示すように、バケット8の重量が異なると、第1相関データは、バケット8の重量に応じて変化する。
【0374】
油圧シリンダ60は、作業機2の上げ動作及び下げ動作が実行されるように作動する。
図39において、スプールストロークがプラスになるようにスプールが移動することにより、作業機2は上げ動作する。スプールストロークがマイナスになるようにスプールが移動することにより、作業機2は下げ動作する。
図39及び
図40に示すように、第1相関データは、上げ動作及び下げ動作のそれぞれにおけるシリンダ速度とスプールストロークとの関係を含む。
【0375】
図39に示すように、作業機2の上げ動作と下げ動作とで、シリンダ速度の変化量が異なる。すなわち、上げ動作が実行されるようにスプールストロークが原点から所定量Strだけ変化したときのシリンダ速度の変化量Vuと、下げ動作が実行されるようにスプールストロークが原点から所定量Strだけ変化したときのシリンダ速度の変化量Vdとは、異なる。
図39に示す例では、所定値Strとした場合、変化量Vuは、バケット8が大、中、小のそれぞれにおいて、同一の値となるのに対し、変化量Vd(絶対値)は、バケット8が大、中、小のそれぞれにおいて、異なる値となる。
【0376】
油圧シリンダ60は、作業機2の下げ動作において、作業機2の重力作用(自重)により、その作業機2を高速で移動可能である。一方、油圧シリンダ60は、作業機2の上げ動作において、作業機2の自重に打ち勝って作動する必要がある。そのため、上げ動作と下げ動作とにおいて、スプールストロークが同じである場合、下げ動作におけるシリンダ速度のほうが、上げ動作におけるシリンダ速度よりも速い。
【0377】
図39に示すように、作業機2の下げ動作において、バケット8の重力が大きくなるほど、シリンダ速度は高くなる。また、下げ動作においてスプールが原点から所定量Stgを移動したときの中重量のバケット8に関するシリンダ速度と小重量のバケット8に関するシリンダ速度との差ΔVdは、上げ動作においてスプールが原点から所定量Stgを移動したときの中重量のバケット8に関するシリンダ速度と小重量のバケット8に関するシリンダ速度との差ΔVuよりも大きい。
図39に示す例においては、ΔVuは、ほぼ零である。同様に、下げ動作においてスプールが原点から所定量Stgを移動したときの大重量のバケット8に関するシリンダ速度と中重量のバケット8に関するシリンダ速度との差は、上げ動作においてスプールが原点から所定量Stgを移動したときの大重量のバケット8に関するシリンダ速度と中重量のバケット8に関するシリンダ速度とのよりも大きい。
【0378】
油圧シリンダ60に作用する負荷は、作業機2の上げ動作と下げ動作とで異なる。作業機2の下げ動作におけるシリンダ速度は、特にブーム6においてバケット8の重量に応じて大きく変化する。バケット8の重量が大きくなるほど、下げ動作におけるシリンダ速度は高くなる。したがって、ブーム6(作業機2)での下げ動作において、シリンダ速度の速度プロファイルは、バケット8の重量に応じて大きく変化する。
【0379】
図40に示すように、油圧シリンダ60のシリンダ速度が零の初期状態から作業機2の上げ動作が実行されるように作動する場合において、大重量のバケット8に関する初期状態からのシリンダ速度の変化量V1と、中重量のバケット8に関する初期状態からのシリンダ速度の変化量V2とは、異なる。すなわち、シリンダ速度が零の初期状態から、作業機2の上げ動作が実行されるように油圧シリンダ60が作動される場合において、スプールストロークが原点から所定量Stpだけ変化したときの大重量のバケット8に関するシリンダ速度の変化量(速度零からの変化量)V1と、スプールストロークが原点から所定量Stpだけ変化したときの中重量のバケット8に関するシリンダ速度の変化量(速度零からの変化量)V2とは、異なる。同様に、油圧シリンダ60のシリンダ速度が零の初期状態から作業機2の上げ動作が実行されるように作動する場合において、中重量のバケット8に関する初期状態からのシリンダ速度の変化量V2と、小重量のバケット8に関する初期状態からのシリンダ速度の変化量V3とは、異なる。
【0380】
介入制御が実行される場合、上述のように、ブームシリンダ10は、ブーム6の上げ動作を実行する。したがって、
図40に示すような第1相関データに基づいてブームシリンダ10が制御されることにより、バケット8の重量が変化しても、そのバケット8を設計地形Uaに基づいて精度良く移動させることができる。すなわち、油圧シリンダ60の動き出し時に、バケット8の重量が変更された場合でも油圧シリンダ60がきめ細やかに制御されることによって、高精度な制限掘削制御が実行される。
【0381】
上述したように、本実施形態においては、介入弁27Cについて、動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が導出される。一方、減圧弁27A(270A、271A、272A)、及び減圧弁27B(270B、271AB、272B)については、動作開始操作指令値は導出されるものの、微速度動作特性は導出されない。なお、減圧弁27A及び減圧弁27Bについて、通常速度動作特性は導出される。
【0382】
[減圧弁較正]
図41は、減圧弁27A及び減圧弁27Bについての動作開始操作指令値を導出する手順を説明するためのタイミングチャートである。
図41において、下のグラフの横軸は、時間であり、縦軸は、入力部321の操作により、入力部321から制御弁制御部26Cに出力された指令信号を示す。
図41において、上のグラフの横軸は、時間であり、縦軸は、減圧弁27A及び減圧弁27Bに出力(供給)される操作指令値(電流値)を示す。
【0383】
以下、一例として、減圧弁27A及び減圧弁27Bのうち、アームシリンダ11を縮退方向に動作させる(アーム7を上げ動作させる)ようにパイロット油が流れるアーム操作用油路4511Aに配置されるアーム用減圧弁271Aに操作指令(電流)を出力(供給)する。アーム用減圧弁271A以外の制御弁27に対して操作指令(電流)は出力されない。また、時点t0aにおいて、アームシリンダ11は動作を開始していない。ブームシリンダ10及びバケットシリンダ12も動いていない。
【0384】
図41に示すように、時点t0aにおいて、入力部321が操作され、入力部321から制御弁制御部26Cに指令信号が出力される。制御弁制御部26Cは、時点t0aにおいて、複数の制御弁27の全てを閉じた後、アーム用減圧弁271Aに操作指令(電流)を出力(供給)する。アーム用減圧弁271A以外の制御弁27に対して操作指令(電流)は出力されない。また、時点t0aにおいて、アームシリンダ11は動作を開始していない。ブームシリンダ10及びバケットシリンダ12も動いていない。
【0385】
本実施形態においては、電流が供給されたアーム用減圧弁271Aが開くことによってアーム操作用油路4511Aのパイロット油圧が増大するように、パイロット油圧方式の操作装置25の第2操作レバー25Lは、フルレバー状態に操作されている。例えば、第2操作レバー25Lが後方向に傾くように操作されることによってアーム7が上げ動作する場合(アーム操作用油路4511Aのパイロット油圧が増大する場合)、第2操作レバー25Lは、後方向に関してフルレバー状態になるように操作されている。
【0386】
まず、制御弁制御部26Cは、アーム用減圧弁271Aに、操作指令値I0の操作指令を出力する。制御弁制御部26Cは、時点t0aから時点t2aまで、その操作指令値I0をアーム用減圧弁271Aに出力し続ける。時点t0aから時点t2aまでの時間は、例えば第3の所定時間である。
【0387】
操作指令値I0が出力されている状態で、アームシリンダ11のシリンダストロークがシリンダストロークセンサ17の検出値に基づきセンサコントローラ30より作業機コントローラ26に出力される。作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、操作指令値I0及び操作指令値I0が出力されているときのアームシリンダ11のシリンダに関するシリンダストロークL2を取得する。
【0388】
導出部26Bは、アーム用減圧弁271Aに操作指令値I0が出力されている状態で、停止状態のアームシリンダ11が動作を開始したか否か(動き出したか否か)を判定する。導出部26Bの判定部26Baは、アームシリンダ11のシリンダ速度に関するデータに基づいて、停止状態のアームシリンダ11が動作を開始したか否かを判断する。
【0389】
判定部26Baは、時点t1aにおけるアームシリンダ11のシリンダ速度と、時点t2aにおけるアームシリンダ11のシリンダ速度とを比較する。時点t1aは、例えば時点t0aから第1の所定時間経過した時点である。時点t2aは、例えば時点t0aから第3の所定時間経過した時点(時点t1aから第2の所定時間経過した時点)である。
【0390】
判定部26Baは、時点t1aにおけるシリンダストロークセンサ17の検出値と、時点t2aにおけるシリンダストロークセンサ17の検出値とに基づくシリンダストロークの差を導出する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値よりも小さいと判断したとき、アームシリンダ11は動作を開始していないと判断する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値以上であると判断したとき、アームシリンダ11は動作を開始したと判断する。
【0391】
操作指令値I0が出力されているときに、判定部26Baによりアームシリンダ11が動作を開始したと判断された場合、操作指令値I0が、停止状態のアームシリンダ11が下げ動作を開始するときの動作開始操作指令値(動作開始操作電流値)となる。
【0392】
操作指令値I0においてアームシリンダ11が動作を開始していない判断された場合、制御弁制御部26Cは、アーム用減圧弁271Aに出力する操作指令値を増大する。制御弁制御部26Cは、操作指令値I0を低減することなく、時点t2aにおいて、操作指令値I0から操作指令値I1に増大し、その操作指令値I1をアーム用減圧弁271Aに出力する。制御弁制御部26Cは、時点t2aから時点t2bまで、その操作指令値I1をアーム用減圧弁271Aに出力し続ける。時点t2aから時点t2bまでの時間は、例えば第3の所定時間である。
【0393】
操作指令値I1が出力されている状態で、アームシリンダ11のシリンダストロークがシリンダストロークセンサ17の検出値に基づきセンサコントローラ30より作業機コントローラ26に出力される。作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、操作指令値I1及び操作指令値I1が出力されているときのアームシリンダ11のシリンダ速度に関するシリンダストロークL2を取得する。
【0394】
導出部26Bの判定部26Baは、アーム用減圧弁271Aに操作指令値I1が出力されている状態で、停止状態のアームシリンダ11が動作を開始したか否か(動き出したか否か)を判定する。
【0395】
判定部26Baは、時点t1bにおけるアームシリンダ11のシリンダ速度と、時点t2bにおけるアームシリンダ11のシリンダ速度とを比較する。時点t1bは、例えば時点t2aから第1の所定時間経過した時点である。時点t2bは、例えば時点t2aから第3の所定時間経過した時点(時点t1bから第2の所定時間経過した時点)である。
【0396】
判定部26Baは、時点t1bにおけるシリンダストロークセンサ17の検出値と、時点t2aにおけるシリンダストロークセンサ17の検出値とに基づくシリンダストロークの差を導出する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値よりも小さいと判断したとき、アームシリンダ11は動作を開始していないと判断する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値以上であると判断したとき、アームシリンダ11は動作を開始したと判断する。
【0397】
操作指令値I1が出力されているときに、判定部26Baによりアームシリンダ11が動作を開始したと判断された場合、操作指令値I1が、停止状態のアームシリンダ11が動作を開始するときの動作開始操作指令値(動作開始操作電流値)となる。
【0398】
以下、同様の処理が行われ、動作開始操作指令値が導出される。すなわち、操作指令値I1から操作指令値I2に増大された後、判定部26Baは、時点t1cにおけるアームシリンダ11のシリンダ速度と、時点t2cにおけるアームシリンダ11のシリンダ速度とを比較する。時点t1cは、例えば時点t2bから第1の所定時間経過した時点である。時点t2cは、例えば時点t2bから第3の所定時間経過した時点(時点t1cから第2の所定時間経過した時点)である。
【0399】
判定部26Baは、時点t1cにおけるシリンダストロークセンサ17の検出値と、時点t2cにおけるシリンダ速度センサ17の検出値との差を導出する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値よりも小さいと判断したとき、アームシリンダ11は動作を開始していないと判断する。判定部26Baは、導出した差の値が、予め定められた閾値以上であると判断したとき、アームシリンダ11は動作を開始したと判断する。
【0400】
本実施形態においては、動作開始操作指令値は、操作指令値I2であることとする。操作指令値I2は、例えば320[mA]である。以上により、動作開始操作指令値が導出される。ここで、本実施形態における較正条件は、他の較正条件と同じ様に例えば、メイン油圧ポンプの出力圧、作動油の温度条件、制御弁27の故障条件が無いこと、及び作業機2の姿勢条件を含む。本実施形態においては、較正に際し、パイロット油路50に作動油を供給するように、ロックレバーが操作される。また較正作業開始時の作業機の姿勢は
図31に示す作業姿勢と同様の姿勢とすればよい。
【0401】
以上、減圧弁27A及び減圧弁28Bのうち、アーム用減圧弁271Aについての動作開始操作指令値を導出する手順について説明した。他の減圧弁についての動作開始操作指令値を導出する手順は同様であるため、説明を省略する。
【0402】
[圧力センサの較正方法]
次に、圧力センサ66及び圧力センサ67の較正方法について、
図42を参照して説明する。
図42は、本実施形態に係る較正方法の一例を示すフローチャートである。
【0403】
図25において、圧力センサ66は、操作装置25によって調整されたパイロット油圧を検出する。すなわち、圧力センサ66は、操作装置25の操作量に応じたパイロット油圧を検出する。制御弁27が閉じられたとき、圧力センサ67は、制御弁27によって調整されたパイロット油圧を検出する。制御弁27が開けられたとき(全開のとき)、圧力センサ66に作用するパイロット油圧と圧力センサ67に作用するパイロット油圧とは等しい。そのため、制御弁27が全開のとき、圧力センサ66の検出値と圧力センサ67との検出値は同じ値になるはずである。しかし、圧力センサ毎の検出値にはバラつきがあるので、制御弁27が全開のときでも、圧力センサ66の検出値と圧力センサ67との検出値とが異なる値になる可能性がある。
【0404】
制御弁27が全開のときにおいて、圧力センサ66の検出値と圧力センサ67との検出値とが異なる値を放置しておくと、掘削制御の精度が低下する可能性がある。具体的には、圧力センサ67は、制御弁27に操作指令値が出力されたときの方向制御弁64に作用するパイロット油圧を検出する。作業機コントローラ26は、圧力センサ67の検出値に基づいて、制御弁27に対して出力される操作指令値と、方向制御弁64に作用するパイロット油圧との関係を導出することができる。作業機コントローラ26は、制御弁27を使って方向制御弁64に作用するパイロット油圧を調整する場合、導出した関係(相関データ)に基づいて、目標のパイロット油圧が方向制御弁64に作用するように、操作指令値を決定して、制御弁27に出力する。圧力センサ66は、操作装置25の操作量に応じたパイロット油圧を検出する。例えば、アーム7を駆動するために操作装置25が操作された場合、その操作量に応じたパイロット油圧は、圧力センサ66(661A)に検出される。その圧力センサ66の検出結果に基づいて、掘削制御(介入制御、停止制御など)のために作業機コントローラ26が操作指令を出力する場合、圧力センサ66の検出値と圧力センサ67の検出値とが異なると、操作装置25の操作量と上述の相関データに含まれるパラメータ(パイロット油圧)との間に差異が生じることとなる。その結果、作業機コントローラ26は、適切な操作指令値を出力することができず、掘削精度が低下する可能性がある。
【0405】
本実施形態においては、制御弁27の減圧弁が全開の時、圧力センサ66の検出値が圧力センサ67の検出値に一致するように、圧力センサ66の検出値を補正する。すなわち、圧力センサ67の検出値に基づいて導出された相関データに含まれるパラメータ(パイロット油圧)に、圧力センサ66の検出値(パイロット油圧)が一致するように、圧力センサ66の検出値を補正する。
【0406】
本実施形態においては、一例として、ブーム6を上げ動作するためのパイロット油が流れるブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520Bにされるブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bを較正する例について説明する。
【0407】
図28に示したように、較正のメニューとして、「PPC圧力センサ較正」と「制御マップ較正」とが用意されている。ブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bの較正を行う場合、「PPC圧力センサ較正」を選択する。
【0408】
「PPC圧力センサ較正」を選択すると、
図43に示す画面が表示部322に表示される。ここでは、ブーム6を上げ動作するためのパイロット油のパイロット油圧を検出するブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bが較正対象であるため、「ブーム上げPPC圧力センサ」を選択する。
【0409】
本実施形態においては、ブーム6を上げ動作するためのパイロット油圧を検出する「ブーム用圧力センサ660Bとブーム用圧力センサ670Bとの較正」のみならず、ブーム6を下げ動作するためのパイロット油圧を検出する「ブーム用圧力センサ660Aとブーム用圧力センサ670Aとの較正」、アーム7を上げ動作(掘削動作)するためのパイロット油圧を検出する「アーム用圧力センサ661Aとアーム用圧力センサ671Aとの較正」、アーム7を下げ動作(ダンプ動作)するためのパイロット油圧を検出する「アーム用圧力センサ661Bとアーム用圧力センサ671Bとの較正」、バケット8を上げ動作(ダンプ動作)するためのパイロット油圧を検出する「バケット用圧力センサ662Aとバケット用圧力センサ672Aとの較正」、及びバケット8を下げ動作(掘削動作)するためのパイロット油圧を検出する「バケット用圧力センサ662Bとバケット用圧力センサ672Bとの較正」も実行可能である。
【0410】
「ブーム用圧力センサ660Aとブーム用圧力センサ670Aとの較正」を実行する場合、「ブーム下げPPC圧力センサ」を選択する。「アーム用圧力センサ661Bとアーム用圧力センサ671Bとの較正」を実行する場合、「アーム掘削PPC圧力センサ」が選択される。「アーム用圧力センサ661Aとアーム用圧力センサ671Aとの較正」を実行する場合、「アームダンプPPC圧力センサ」を選択する。「バケット用圧力センサ662Bとアーム用圧力センサ672Bとの較正」を実行する場合、「バケット掘削PPC圧力センサ」を選択する。「バケット用圧力センサ662Aとバケット用圧力センサ672Aとの較正」を実行する場合、「バケットダンプPPC圧力センサ」を選択する。
【0411】
ブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bとの較正のために、マンマシンインターフェース部32が操作された後、シーケンス制御部26Hで較正条件が判定される(ステップSE1)。較正条件は、例えば、メイン油圧ポンプの圧力、作動油の温度条件、制御弁27の故障条件、及び作業機2の姿勢条件等を含む。本実施形態においては、較正に際し、パイロット油路450が開くように、ロックレバーが操作される。また、メイン油圧ポンプの出力が所定値(一定値)になるように調整される。本実施形態においては、メイン油圧ポンプの出力が最大(フルスロットル、ポンプ斜板最大傾倒角状態)になるように調整される。また、ブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520Bにおけるパイロット油圧の許容範囲においてブームシリンダ10への作動油の吐出量が最大値を示すように、図示しないエンジンを駆動するエンジンコントローラと油圧ポンプを駆動するポンプコントローラに指令を出力し、エンジンコントローラとポンプコントローラの指令に基づきメイン油圧ポンプの出力が調整される。
【0412】
較正条件の調整は、作業機2の姿勢の調整を含む。本実施形態においては、マンマシンインターフェース部32の表示部322に、作業機2の姿勢の調整を要求する姿勢調整要求情報が表示される。オペレータは、その表示部322の表示に従って操作装置25を操作して、作業機2の姿勢を所定状態(所定姿勢)に調整する。
【0413】
図44は、本実施形態に係る表示部322に表示される姿勢調整要求情報の一例を示す図である。
図44に示すように、作業機2を所定姿勢に調整するためのガイダンスが表示部322に表示される。
【0414】
本実施形態においては、ブーム6を上げ動作するためのパイロット油圧を検出するブーム用圧力センサ660Bブーム用圧力センサ670Bを較正する場合、上げ方向に関してブーム6の可動範囲の端部(上端部)にブーム6が配置されるように、オペレータの操作により作業機2の姿勢が調整される。ここで
図44中に記載する「ストエン」とは、シリンダのストロークエンドを意味する。
【0415】
ブームシリンダ10の動作により、ブーム6は、作業機動作平面MPにおいて上下方向に移動する。上述のように、ブームシリンダ10の第1動作方向(例えば伸長方向)への動作により、ブーム6は上げ動作され、第1動作方向とは反対の第2動作方向(例えば縮退方向)への動作により、ブーム6は下げ動作される。本実施形態においては、ブーム6を上げ動作するため(ブームシリンダ10を第1動作方向に動作させるため)のパイロット油圧を検出するブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bを較正する場合、上方向に関してブーム6の可動範囲の端部(上端部)にブーム6が配置された状態で、ブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bの較正が行われる。
【0416】
オペレータは、表示部322を見て、ブーム6の可動範囲の上端部にブーム6が配置されるように、操作装置25を操作する。作業機2の姿勢の調整において、制御弁制御部26Cからの操作指令に基づき複数の制御弁27の全ての減圧弁それぞれが開放状態となる。そのため、オペレータは、操作装置25を操作することによって、作業機2を駆動することができる。操作装置25の操作により、作業機2(ブーム6)が所定姿勢になるように駆動される。
【0417】
作業機2の姿勢が所定姿勢に調整された後、較正処理の開始のために、マンマシンインターフェース部32の入力部321がオペレータによって操作される。例えば、
図44に示す「NEXT」スイッチが操作されることによって、較正処理が開始される。「NEXT」スイッチは、入力部321として機能する。
【0418】
入力部321が操作されることによって、較正処理が開始される。入力部321の操作により生成された指令信号は、作業機コントローラ26に入力される。
【0419】
作業機コントローラ26の制御弁制御部26Cは、複数の制御弁27のそれぞれを制御する。制御弁制御部26Cは、較正処理の開始のための指令信号を入力部321から取得した後、較正対象のブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bが配置されているパイロット油路(ブーム操作用油路4510B及びブーム調整用油路4520B)のブーム用減圧弁270Bを制御してそのパイロット油路を開き、他のパイロット油路(ブーム操作用油路4510A、ブーム調整用油路4520A、アーム操作用油路4511A、アーム操作用油路4511B、アーム調整用油路4521A、アーム調整用油路4521B、バケット操作用油路4512A、バケット操作用油路4512B、バケット調整用油路4522A、バケット調整用油路4522B、及び介入用油路501)の制御弁27を制御して、それら他のパイロット油路を閉じる。すなわち、制御弁制御部26Cは、較正対象のブーム用圧力センサ660Bとブーム用圧力センサ670Bとの間のブーム用減圧弁270Bのみ開き、他の制御弁27を閉じる(ステップSE2)。
【0420】
次に、ブーム用減圧弁270Bによりブーム操作用油路4510B及びブーム調整量油路4520Bが開いた状態(全開状態)で、そのブーム操作用油路4510B及びブーム調整量油路4520Bのパイロット油圧が最大値を示すように、オペレータにより操作装置25の第1操作レバー25Rを最大に傾倒した状態であるフルレバー状態(第1状態)に操作される(ステップSE3)。
【0421】
例えば、第1操作レバー25Rが後方向に傾くように操作されることによってブーム6が上げ動作する場合(ブーム操作用油路4510Bのパイロット油圧が増大する場合)、第1操作レバー25Rは、後方向に関してフルレバー状態になるように操作される。
【0422】
作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、ブーム用減圧弁270Bによりブーム操作用油路4510B及びブーム調整量油路4520Bが開いた状態(全開状態)で、ブーム用圧力センサ660Bの検出値及びブーム用圧力センサ670Bの検出値に関するデータを取得する(ステップSE4)。
【0423】
ステップSE4において、データ取得部26Aは、第1操作レバー25Rがフルレバー状態であり、上下方向に関してブーム6の可動範囲の上端部にブーム6が配置された状態で、データを取得する。ブーム6は可動範囲の上端部に配置されているため、第1操作レバー25Rがフルレバー状態でブーム用減圧弁270Bが開いても、ブーム6が上方向に移動することが抑制される。
【0424】
次に、ブーム用減圧弁270Bによりブーム操作用油路4510B及びブーム調整量油路4520Bが開いた状態(全開状態)で、そのブーム操作用油路4510B及びブーム調整量油路4520Bのパイロット油圧が最小値を示すように、操作装置25の第1操作レバー25Rがニュートラル状態(第2状態)に維持される(ステップSE5)。
【0425】
作業機コントローラ26のデータ取得部26Aは、ブーム用減圧弁270Bによりブーム操作用油路4510B及びブーム調整量油路4520Bが開いた状態(全開状態)で、ブーム用圧力センサ660Bの検出値及びブーム用圧力センサ670Bの検出値に関するデータを取得する(ステップSE6)。ステップSE6において、データ取得部26Aは、第1操作レバー25Rがニュートラル状態であり、上下方向に関してブーム6の可動範囲の上端部にブーム6が配置された状態で、データを取得する。
【0426】
なお、本実施形態において、データ取得部26Aは、所定時間(例えば第2の所定時間)、圧力センサ66の検出値を取得し、その所定時間の検出値の平均値を、圧力センサ66の検出値とする。同様に、データ取得部26Aは、所定時間(例えば第2の所定時間)、圧力センサ67の検出値を取得し、その所定時間の検出値の平均値を、圧力センサ67の検出値とする。
【0427】
次に、作業機コントローラ26の補正部26Eは、データ取得部26Aで取得したデータに基づいて、ブーム用圧力センサ660Bの検出値がブーム用圧力センサ670Bの検出値に一致するように、ブーム用圧力センサ660Bの検出値を補正(較正、調整)する(ステップSE7)。すなわち、補正部26Eは、ブーム用圧力センサ670Bの検出値を調整せず、そのブーム用圧力センサ670Bの検出値に一致するように、ブーム用圧力センサ660Bの検出値を調整する。
【0428】
本実施形態においては、第1操作レバー25Rがフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、ブーム用圧力センサ660Bの検出値がブーム用圧力センサ670Bの検出値に一致するように、ブーム用圧力センサ660Bの検出値が補正される。
【0429】
本実施形態においては、補正部26Eは、ブーム用圧力センサ660Bの検出値とブーム用圧力センサ670Bの検出値との差を求める。補正部26Eは、その差を補正値として導出する。補正部26Eは、ブーム用圧力センサ60Bの検出値を補正値で補正することによって、ブーム用圧力センサ660Bの検出値(補正後の検出値)と、ブーム用圧力センサ670Bの検出値とを一致させる。取得された補正後のデータは更新部26Fにより記憶部26Gに記憶・更新される(ステップSE8)。
【0430】
以上により、ブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bが終了する。
【0431】
本実施形態においては、較正対象の圧力センサ66と圧力センサ67との間のパイロット油路(減圧弁)が開いた状態で、それら圧力センサ66及び圧力センサ67の較正が行われる。上述の例では、ブーム6を上げ動作するためのパイロット油圧を検出するブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bの較正が行われる。そのため、ブーム用圧力センサ660Bとブーム用圧力センサ670Bとの間のブーム用減圧弁270Bが開けられる。
【0432】
ブーム用減圧弁270Bが開いているため、較正処理において、予期せずにブーム6が動いてしまう可能性がある。例えば、オペレータが意図せずに操作装置25を触ってしまい、その結果、予期せずにブーム6が上方向に動いてしまう可能性がある。本実施形態においては、例えば、ブーム6を上げ動作するためのパイロット油圧を検出するブーム用圧力センサ660B及びブーム用圧力センサ670Bを較正する場合、上げ方向に関してブーム6の可動範囲の端部(上端部)にブーム6が配置されるため、ブーム6が予期せずに上方向に動いてしまうことが抑制される。
【0433】
「ブーム用圧力センサ660Aとブーム用圧力センサ670Aとの較正」、「アーム用圧力センサ661Aとアーム用圧力センサ671Aとの較正」、「アーム用圧力センサ661Bとアーム用圧力センサ671Bとの較正」、「バケット用圧力センサ662Aとアーム用圧力センサ672Aとの較正」、及び「バケット用圧力センサ662Bとバケット用圧力センサ672Bとの較正」は、上述の「ブーム用圧力センサ660Bとブーム用圧力センサ670Bとの較正」と同様の手順で実行可能である。
【0434】
例えば、アーム7を下げ動作(掘削動作)するためのパイロット油圧を検出する「アーム用圧力センサ661Bとアーム用圧力センサ671Bとの較正」を実行する場合、
図43に示した表示部322の表示内容において、「アーム掘削PPC圧力センサ」が選択される。その選択により、
図45に示すような、姿勢調整要求情報が表示部322に表示される。
【0435】
アーム7を下げ動作するためのパイロット油圧を検出するアーム用圧力センサ661B及びアーム用圧力センサ671Bを較正する場合、下げ方向に関してアーム7の可動範囲の端部(下端部)にアーム7が配置されるように、作業機2の姿勢が調整される。これにより、アーム7が予期せずに下方向に動いてしまうことが抑制される。
【0436】
作業機2の姿勢が所定姿勢に調整された後、制御弁制御部26Cは、較正対象のアーム用圧力センサ661Bとアーム用圧力センサ671Bとの間のアーム用減圧弁271Bのみを開き、他の制御弁27を閉じる。アーム7は可動範囲の下端部に配置されているため、第2操作レバー25Lがフルレバー状態でアーム用減圧弁271Bが開いても、アーム7が下方向に移動することが抑制される。
【0437】
アーム用減圧弁271Bが開いた状態で、アーム7を操作可能な第2操作レバー25Lが、パイロット油路の圧力が最大値を示すフルレバー状態及び最小値を示すニュートラル状態のそれぞれに変化するように操作される。データ取得部26Aは、第2操作レバー25Lがフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、アーム用圧力センサ661Bの検出値とアーム用圧力センサ671Bの検出値に関するデータを取得する。補正部26Eは、フルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、アーム用圧力センサ661Bの検出値がアーム用圧力センサ671B検出値に一致するように、アーム用圧力センサ661Bの検出値を補正する。
【0438】
アーム7を上げ動作(ダンプ動作)するためのパイロット油圧を検出する「アーム用圧力センサ661Aとアーム用圧力センサ671Aとの較正」を実行する場合、
図43に示した表示部322の表示内容において、「アームダンプPPC圧力センサ」が選択される。その選択により、
図46に示すような、姿勢調整要求情報が表示部322に表示される。
【0439】
アーム7を上げ動作するためのパイロット油圧を検出するアーム用圧力センサ661A及びアーム用圧力センサ671Aを較正する場合、上げ方向に関してアーム7の可動範囲の端部(上端部)にアーム7が配置されるように、作業機2の姿勢が調整される。これにより、アーム7が予期せずに上方向に動いてしまうことが抑制される。
【0440】
作業機2の姿勢が所定姿勢に調整された後、制御弁制御部26Cは、較正対象のアーム用圧力センサ661Aとアーム用圧力センサ671Aとの間のアーム用減圧弁271Aのみを開き、他の制御弁27を閉じる。アーム7は可動範囲の上端部に配置されているため、第2操作レバー25Lがフルレバー状態でアーム用減圧弁271Aが開いても、アーム7が上方向に移動することが抑制される。
【0441】
アーム用減圧弁271Aが開いた状態で、アーム7を操作可能な第2操作レバー25Lが、パイロット油路の圧力が最大値を示すフルレバー状態及び最小値を示すニュートラル状態のそれぞれに変化するように操作される。データ取得部26Aは、第2操作レバー25Lがフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、アーム用圧力センサ661Aの検出値とアーム用圧力センサ671Aの検出値に関するデータを取得する。補正部26Eは、フルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、アーム用圧力センサ661Aの検出値がアーム用圧力センサ671A検出値に一致するように、アーム用圧力センサ661Aの検出値を補正する。
【0442】
バケット8を下げ動作(掘削動作)するためのパイロット油圧を検出する「バケット用圧力センサ662Bとバケット用圧力センサ672Bとの較正」を実行する場合、
図43に示した表示部322の表示内容において、「バケット掘削PPC圧力センサ」が選択される。その選択により、
図47に示すような、姿勢調整要求情報が表示部322に表示される。
【0443】
バケット8を下げ動作するためのパイロット油圧を検出するバケット用圧力センサ662B及びバケット用圧力センサ672Bを較正する場合、下げ方向に関してバケット8の可動範囲の端部(下端部)にバケット8が配置されるように、作業機2の姿勢が調整される。これにより、バケット8が予期せずに下方向に動いてしまうことが抑制される。
【0444】
作業機2の姿勢が所定姿勢に調整された後、制御弁制御部26Cは、較正対象のバケット用圧力センサ662Bとバケット用圧力センサ672Bとの間のバケット用減圧弁272Bのみを開き、他の制御弁27を閉じる。バケット8は可動範囲の下端部に配置されているため、第1操作レバー25Rがフルレバー状態でバケット用減圧弁272Bが開いても、バケット8が下方向に移動することが抑制される。
【0445】
バケット用減圧弁272Bが開いた状態で、バケット8を操作可能な第1操作レバー25Rが、パイロット油路の圧力が最大値を示すフルレバー状態及び最小値を示すニュートラル状態のそれぞれに変化するように操作される。データ取得部26Aは、第1操作レバー25Rがフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、バケット用圧力センサ662Bの検出値とバケット用圧力センサ672Bの検出値に関するデータを取得する。補正部26Eは、フルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、バケット用圧力センサ662Bの検出値がバケット用圧力センサ672B検出値に一致するように、バケット用圧力センサ662Bの検出値を補正する。
【0446】
バケット8を上げ動作(ダンプ動作)するためのパイロット油圧を検出する「バケット用圧力センサ662Aとバケット用圧力センサ672Aとの較正」を実行する場合、
図43に示した表示部322の表示内容において、「バケットダンプPPC圧力センサ」が選択される。その選択により、
図48に示すような、姿勢調整要求情報が表示部322に表示される。
【0447】
バケット8を上げ動作するためのパイロット油圧を検出するバケット用圧力センサ662A及びバケット用圧力センサ672Aを較正する場合、上げ方向に関してバケット8の可動範囲の端部(上端部)にバケット8が配置されるように、作業機2の姿勢が調整される。これにより、バケット8が予期せずに上方向に動いてしまうことが抑制される。
【0448】
作業機2の姿勢が所定姿勢に調整された後、制御弁制御部26Cは、較正対象のバケット用圧力センサ662Aとバケット用圧力センサ672Aとの間のバケット用減圧弁272Aのみを開き、他の制御弁27を閉じる。バケット8は可動範囲の上端部に配置されているため、第1操作レバー25Rがフルレバー状態でバケット用減圧弁272Aが開いても、バケット8が上方向に移動することが抑制される。
【0449】
バケット用減圧弁272Aが開いた状態で、バケット8を操作可能な第1操作レバー25Rが、パイロット油路の圧力が最大値を示すフルレバー状態及び最小値を示すニュートラル状態のそれぞれに変化するように操作される。データ取得部26Aは、第1操作レバー25Rがフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、バケット用圧力センサ662Aの検出値とバケット用圧力センサ672Aの検出値に関するデータを取得する。補正部26Eは、フルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、バケット用圧力センサ662Aの検出値がバケット用圧力センサ672Aの検出値に一致するように、バケット用圧力センサ662Aの検出値を補正する。
【0450】
ブーム6を下げ動作(掘削動作)するためのパイロット油圧を検出する「ブーム用圧力センサ660Aとブーム用圧力センサ670Aとの較正」を実行する場合、
図43に示した表示部322の表示内容において、「ブーム下げPPC圧力センサ」が選択される。
【0451】
ブーム6を下げ動作するためのパイロット油圧を検出するブーム用圧力センサ660A及びブーム用圧力センサ670Aを較正する場合、ブーム6は、ブーム6の可動範囲の下端部よりも上方に配置される。すなわち、作業機2が地面に接触しないように、較正処理を開始するときの上下方向に関するブーム6の位置が定められる。ブーム用圧力センサ660A及びブーム用圧力センサ670Aの較正処理の開始において、ブーム6は、ブーム6の可動範囲の上端部に配置されてもよいし、上端部と下端部との間の中間部に配置されてもよい。
【0452】
作業機2と地面との接触により、ブーム6を可動範囲の下端部に配置することが困難である可能性がある。そのため、本実施形態においては、ブーム用圧力センサ660A及びブーム用圧力センサ670Aの較正処理の開始において、ブーム6は可動範囲の下端部に配置されず、上端部又は中間部に配置される。
【0453】
作業機2の姿勢が調整された後、制御弁制御部26Cは、較正対象のブーム用圧力センサ660Aとブーム用圧力センサ670Aとの間のブーム用減圧弁270Aのみを開き、他の制御弁27を閉じる。ブーム6は可動範囲の上端部又は中間部に配置されているため、第1操作レバー25Rがフルレバー状態でブーム用減圧弁270Aが開くと、ブーム6は下方向に移動する(下げ動作する)。
【0454】
ブーム用減圧弁270Aが開いた状態で、ブーム6を操作可能な第1操作レバー25Rが、パイロット油路の圧力が最大値を示すフルレバー状態及び最小値を示すニュートラル状態のそれぞれに変化するように操作される。データ取得部26Aは、第1操作レバー25Rがフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、ブーム用圧力センサ660Aの検出値とブーム用圧力センサ670Aの検出値に関するデータを取得する。補正部26Eは、フルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、ブーム用圧力センサ660Aの検出値がブーム用圧力センサ670A検出値に一致するように、ブーム用圧力センサ660Aの検出値を補正する。
【0455】
すなわち、本実施形態において、データ取得部26Aは、ブーム6の可動範囲の上端部にブーム6が配置された状態で、ブーム上げ用油路のブーム用圧力センサ660Bの検出値及びブーム用圧力センサ670Bの検出値に関するデータを取得し、ブーム6の下げ動作が行われている状態で、ブーム下げ用油路のブーム用圧力センサ660Aの検出値及びブーム用圧力センサ670Aの検出値に関するデータを取得する。
【0456】
[制御方法]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の動作の一例について説明する。上述のように、動作開始操作指令値、微速度動作特性、及び通常速度動作特性が記憶部26Gに記憶される。また、第1相関データ、第2相関データ、及び第3相関データが、記憶部26Gに記憶される。作業機コントローラ26の作業機制御部57は、記憶部26Gの記憶情報に基づいて、作業機2を制御する。
【0457】
掘削作業のため、オペレータにより操作装置25が操作される。作業機制御部57は、例えば介入制御において、油圧シリンダ60が目標シリンダ速度で移動するように、記憶部26Gに記憶されている記憶情報(動作開始操作指令値、微速度動作特性、通常速度動作特性、第1相関データ、第2相関データ、及び第3相関データ)に基づいて、操作指令(制御信号)を生成し、制御弁27に出力する。これにより、スプールの移動量を含む作業機2の制御が行われる。
【0458】
例えば
図25を基に説明を行うと、作業機制御部57は、第3相関データに基づいて、制御弁27に出力される操作指令に基づいてパイロット油圧を決定する。作業機制御部57は、第2相関データに基づいて、決定されたパイロット油圧によって駆動されるスプール80のスプールストローク量を決定する。制御装置は、第1相関データに基づいて、決定されたスプール80のスプールストローク量となる時のシリンダ速度を決定する。これにより、操作指令値に対応したシリンダ速度で油圧シリンダ60が作動する特性を把握できるようになる。本実施形態では操作指令からシリンダ速度を求める説明を行ったが、シリンダ速度から操作指令を導出する場合は逆の手順により行われればよい。
【0459】
油圧シリンダ60の駆動において、シリンダストロークセンサ(16など)の検出値が作業機コントローラ26に出力される。シリンダストロークセンサ(16など)は、シリンダ速度を検出する。また、スプールストロークセンサ65の検出値が作業機コントローラ26に入力される。スプールストロークセンサ65は、スプールストロークを検出する。
【0460】
作業機制御部57は、シリンダストロークセンサの検出値(シリンダ速度)と、第1相関データとに基づいて、目標シリンダ速度が得られるようにスプールストロークを決定する。制御弁制御部26Cは、スプールストロークセンサ65の検出値(スプールストローク)と、第2相関データとに基づいて、目標スプールストロークが得られるようにパイロット油圧を決定する。制御弁制御部26Cは、第3相関データに基づいて、目標パイロット油圧が得られるように、操作指令値(電流値)を決定し、制御弁27に出力する。
【0461】
なお、バケット8がアーム7に対して交換される可能性がある。例えば、掘削作業内容に応じて、適切なバケット8が選択され、その選択されたバケット8がアーム7に接続される。重量が異なるバケット8がアーム7に接続されると、作業機2を駆動する油圧シリンダ60に作用する負荷が変わる可能性がある。油圧シリンダ60に作用する負荷が変わると、油圧シリンダ60が想定された動作を実行できず、介入制御が精度良く行われない可能性がある。その結果、バケット8が設計地形データUに基づいて移動できず、掘削精度が低下する可能性がある。
【0462】
本実施形態においては、バケット8の重量に応じた、油圧シリンダ60のシリンダ速度と方向制御弁64のスプール80の移動量との関係を示す複数の第1相関データが予め求められる。作業機コントローラ26は、その第1相関データに基づいて、方向制御弁64のスプール80の移動量を制御する。
【0463】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、油圧シリンダ60の動作特性を導出する較正処理において、較正対象の制御弁27のみを開けて、非較正対象である他の制御弁27を閉じるようにしたので、予期しない作業機2の動作を抑制でき、較正処理を円滑に行うことができる。
【0464】
また、本実施形態においては、圧力センサ66及び圧力センサ67の較正処理において、較正対象の圧力センサ66及び圧力センサ67が配置されているパイロット油路450の制御弁27を開き、他のパイロット油路450の制御弁27を閉じるようにしたので、予期しない作業機2の動作を抑制でき、較正処理を円滑に行うことができる。
【0465】
また、本実施形態においては、介入弁27Cについて、動作開始操作指令値及び前記微速度動作特性が導出される。減圧弁27A及び減圧弁27Bについては、動作開始操作指令値及び通常速度動作特性が導出され、微速度動作特性は導出されない。上述のように、介入制御においては、動き出しの特性及び微速度領域における動作特性が重要であるため、介入弁27Cについて、動作開始操作指令値及び前記微速度動作特性を導出することによって、介入制御を精度良く行うことができる。一方、上述したように、減圧弁27A及び減圧弁27Bは、専ら、停止制御で使用される場面が多い。そのため、減圧弁27A及び減圧弁27Bについては、動作開始操作指令値及び通常速度動作特性を導出し、微速度動作特性は導出しないようにすることで、較正処理に要する時間を短縮することができる。
【0466】
また、本実施形態において、介入制御は、ブーム6の上げ動作を制御することを含む。本実施形態において、アーム7及びバケット8は、介入制御されず、オペレータ(操作装置25)の操作に委ねられる。そのため、ブーム用油路に配置される介入弁27Cについては、動作開始操作指令値及び前記微速度動作特性を導出し、アーム用油路及びバケット用油路のそれぞれに配置される減圧弁27A及び減圧弁27Bについては、動作開始操作指令値を導出し、微速度動作特性を導出しないようにすることで、較正処理に要する時間を短縮することができる。
【0467】
また、本実施形態によれば、動作開始操作指令値及び微速度動作特性を導出し、その導出した結果に基づいて作業機2を制御するようにしたので、掘削精度の低下が抑制される。例えば、機種に応じて、油圧シリンダ60(作業機2)の動作特性が異なる可能性がある。特に、油圧シリンダ60の動作開始(動き出し)及び微速度領域における動作特性は、機種間での差異が大きい可能性がある。また、バケット8の種類(重量)が変更されたときにおいても、油圧シリンダ60の動作開始(動き出し)及び微速度領域における動作特性が大きく変化する可能性がある。動作開始操作指令値及び微速度動作特性を導出し、その導出した結果を記憶部26Gに記憶し、その記憶部26Gの記憶情報を使って油圧シリンダ60を制御するため、異なる機種においても、あるいはバケット8の重量が変更されても、掘削精度の低下が抑制される。
【0468】
特に、介入制御を精度良く行うためには、油圧シリンダ60の動き出しの特性及び微速度領域における動作特性が重要である。すなわち、介入制御は、例えば、目標掘削地形Uに沿って作業機2を低速で移動する場面において実行される可能性が高い。また、介入制御は、作業機2の停止と駆動とを繰り返しながら、目標掘削地形Uに沿って作業機2を移動する場面において実行される可能性が高い。そのため、油圧シリンダ60の動き出しの特性及び微速度領域における動作特性を予め把握しておくことによって、介入制御を精度良く行うことができる。
【0469】
また、本実施形態においては、圧力センサ66の検出値が圧力センサ67の検出値に一致するように、圧力センサ66の検出値を補正するようにしたので、操作装置25の操作量に応じた圧力センサ66の検出値と、圧力センサ67の検出値に基づいて導出される相関データのパイロット油圧との間に差異が生じることを抑制できる。したがって、その相関データに基づいて、掘削制御を精度良く行うことができる。
【0470】
また、本実施形態によれば、操作指令値として、制御弁27に供給される電流値についての動作特性が求められる。操作指令値は、パイロット油圧の圧力値でもよいし、スプールストローク値(スプール80の移動量値)でもよい。これにより、電流値、パイロット油圧値、スプールストローク値、及びシリンダ速度値の少なくとも2つの値の相関データを取得して、掘削制御を精度良く行うことができる。
【0471】
また、本実施形態においては、動作開始操作指令値及び微速度動作特性のみならず、通常速度動作特性も導出される。したがって、油圧シリンダ60の動き出し、微速度領域での油圧シリンダ60の特性、及び通常速度領域での油圧シリンダ60の特性のそれぞれを把握して、掘削制御を精度良く行うことができる。
【0472】
また、本実施形態においては、マンマシンインターフェース部32を介して、較正処理の実施が油圧ショベル100のユーザ(オペレータ)に開放されている。そのため、ユーザは、必要なタイミングで較正処理を実施することができる。例えば、バケット(アタッチメント)8を交換したタイミングで、較正処理を実施することができる。また、較正処理においては、表示部322に作業機2の姿勢調整要求情報が表示されるため、オペレータは、較正作業を円滑に行うことができる。
【0473】
また、本実施形態によれば、フルレバー状態及びニュートラル状態それぞれにおいて、圧力センサ66の検出値が圧力センサ67の検出値に一致するように、圧力センサ66の検出値が補正される。これにより、操作装置25のフルレバー状態及びニュートラル状態のそれぞれにおいて、圧力センサ66の検出値と圧力センサ67の検出値とを一致させることができる。
【0474】
また、本実施形態においては、作業機2の可動範囲の端部に作業機2が配置された様態で、圧力センサ66及び圧力センサ67の較正処理が行われる。したがって、例えば、フルレバー状態で圧力センサ66及び圧力センサ67の較正処理を行うときにおいても、作業機2が動いてしまうことが抑制される。
【0475】
また、本実施形態においては、ブーム6の可動範囲の上端部にブーム6が配置された状態で、ブーム上げ用油路の圧力センサ66の検出値及び圧力センサ67の検出値に関するデータを取得し、ブーム7の下げ動作が行われている状態で、ブーム下げ用油路の圧力センサ66の検出値及び圧力センサ67の検出値に関するデータを取得する。これにより、ブーム7が地面に接触することを抑制しつつ、較正処理を円滑に行うことができる。
【0476】
また、本実施形態においては、制御弁制御部27Cは、例えば、第1シーケンスが終了してから第2シーケンスが開始されるまでの間、第2シーケンスが終了してから第3シーケンスが開始されるまでの間、及び第3シーケンスが終了してから第4シーケンスが開始されるまでの間のそれぞれにおいて、複数の制御弁27を開ける。これにより、オペレータは、操作装置25を使って、作業機2を初期姿勢(所定姿勢)に調整することができる。
【0477】
また、本実施形態によれば、ブーム6の介入制御(掘削制限制御)において、バケット8の複数の重量のそれぞれに対応した第1相関データを複数求め、バケット8が交換されたとき、使用する第1相関データを選択し、その選択された第1相関データに基づいて、スプール80の移動量を制御するようにしたので、掘削精度の低下が抑制される。すなわち、バケット8の交換などによる作業機2の重量の変化が考慮されないと、当初想定していた操作装置25の操作量に基づいて出力された電流値に対応するように油圧シリンダ60が作動せず、油圧シリンダ60が想定された動作を実行できない可能性がある。特に、油圧シリンダ60の動き出しの微操作局面では、油圧シリンダ60の動き出しが遅くなり、ひどい場合にはハンチングを起こす可能性がある。
【0478】
本実施形態によれば、作業機2の重量の変化を考慮して、目標シリンダ速度で油圧シリンダ60が作動するように、第1相関データが活用される。また、その第1相関データは、上げ動作を実行するための油圧シリンダ60の動き出しの速度プロファイルを、バケット8の重量に応じて設定している。これにより、掘削精度が低下を抑制することができる。
【0479】
また、本実施形態によれば、油圧シリンダ60は、作業機2の上げ動作及び下げ動作が実行されるように作動する。作業機2の上げ動作と下げ動作とで、油圧シリンダ60に作用する負荷が変わり、シリンダ速度の変化量が異なる。本実施形態によれば、第1相関データは、上げ動作及び下げ動作のそれぞれにおけるシリンダ速度とスプールストロークとの関係を含むため、上げ動作及び下げ動作のそれぞれにおいて、スプール80の移動量が適切に制御され、掘削精度の低下が抑制される。
【0480】
また、本実施形態によれば、作業機2の下げ動作においてスプール80が原点から所定量を移動したときの第1重量のバケット8に関するシリンダ速度と第2重量のバケット8に関するシリンダ速度との差は、作業機2の上げ動作においてスプール80が原点から所定量を移動したときの第1重量のバケット8に関するシリンダ速度と第2重量のバケット8に関するシリンダ速度との差よりも大きい。下げ動作における差、及び上げ動作における差を考慮して、スプール80の移動量を適切に制御することにより、掘削精度の低下が抑制される。
【0481】
また、本実施形態によれば、油圧シリンダ60は、シリンダ速度が零の初期状態から作業機2の上げ動作が実行されるように作動し、第1重量のバケット8に関する初期状態からのシリンダ速度の変化量と、第2重量のバケット8に関する前記初期状態からのシリンダ速度の変化量とは、異なる。バケット8の重量の違いによる初期状態から上げ動作が実行されるときのシリンダ速度の変化量を考慮して、スプール80の移動量を適切に制御することにより、掘削精度の低下が抑制される。
【0482】
また、本実施形態によれば、作業機制御部57は、制御弁27に制御信号を出力する。すなわち、制限掘削制御において、制御信号は、電磁比例制御弁である制御弁27に出力される。これにより、パイロット油圧を調整して、油圧シリンダ60に対する作動油の供給量の調整を高速で精確に行うことができる。
【0483】
また、本実施形態においては、シリンダ速度とスプール80の移動量との関係を示す第1相関データのみならず、スプール80の移動量とパイロット油圧との関係を示す第2相関データと、パイロット油圧と制御部262から制御弁27に出力される制御信号との関係を示す第3相関データとが予め求められ、記憶部261に記憶される。したがって、制御部262は、第1相関データ、第2相関データ、及び第3相関データに基づいて、制御弁27に制御信号を出力することによって、油圧シリンダ60を目標シリンダ速度でより正確に移動することができる。
【0484】
なお、本実施形態においては、シリンダ速度とスプールストロークとの関係を示す第1相関データ、スプールストロークとパイロット油圧との関係を示す第2相関データ、及びパイロット油圧と電流値との関係を示す第3相関データを使う例について説明した。記憶部26Gに、シリンダ速度とパイロット油圧との関係を示す相関データが記憶され、その相関データを使って作業機2が制御されてもよい。すなわち、第1相関データと第2相関データとを合わせた相関データが実験又はシミュレーションによって予め求められ、その相関データに基づいて、パイロット油圧が制御されてもよい。
【0485】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0486】
例えば、上述の実施形態においては、操作装置25は、パイロット油圧方式であることとした。操作装置25は、電気レバー方式でもよい。例えば、操作装置25の操作レバーの操作量をポテンショメータ等で検出し、その操作量に応じた電圧値を作業機コントローラ26に出力する操作レバー検出部が設けられてもよい。作業機コントローラ26は、その操作レバー検出部の検出結果に基づいて、制御弁27に制御信号を出力して、パイロット油圧を調整してもよい。
【0487】
上記の実施形態では、建設機械の一例として油圧ショベルを挙げているが油圧ショベルに限らず、他の種類の建設機械に本発明が適用されてもよい。
【0488】
グローバル座標系における油圧ショベルCMの位置の取得は、GNSSに限らず、他の測位手段によって行われてもよい。従って、刃先8aと設計地形との距離dの取得は、GNSSに限らず、他の測位手段によって行われてもよい。
制御システムは、制御弁を制御する制御弁制御部と、油圧シリンダを動作させる操作指令が出力された状態で、操作指令値及びシリンダ速度に関するデータを取得するデータ取得部と、データ取得部で取得したデータに基づいて、操作指令値に対する複数の油圧シリンダのそれぞれの動作方向についての動作特性を導出する導出部と、を備える。制御弁制御部は、データ取得部によるデータの取得において、複数のパイロット油路のうち、データが取得される取得対象の1つのパイロット油路の制御弁を制御して1つのパイロット油路を開き、他のパイロット油路の制御弁を制御して他のパイロット油路を閉じる。