(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873220
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】スラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射ランス
(51)【国際特許分類】
C21C 5/46 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
C21C5/46 103Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-531023(P2015-531023)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公表番号】特表2015-528067(P2015-528067A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】KR2013008424
(87)【国際公開番号】WO2015020261
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0093818
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514283250
【氏名又は名称】ウジン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジン チョル
(72)【発明者】
【氏名】カン,デ ウン
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−176212(JP,A)
【文献】
米国特許第05203909(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉鎖されている内壁と外壁の2重の円筒体で形成されて前記内壁で限定された空間が高圧ガス経路を形成し、前記内壁と前記外壁との間の空間には先端が前記内壁と前記外壁の閉鎖先端と離隔されている円筒状の隔壁が形成されて冷却水の循環路を形成するパイプ構造体と、
下方に高圧ガスを噴射するノズル束と、
高圧ガスの噴出方向が変換されるように前記噴射パイプ構造体と前記ノズル束を連結するアダプタと、を含んで形成され、
少なくとも前記内壁の外周面又は前記隔壁の外周面にはらせん状の案内突起が形成されることを特徴とするスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランス。
【請求項2】
前記ノズル束は中空のノズル本体と前記ノズル本体の内部に挿入されて前記ノズル本体の先端を介して高圧ガスを高速に噴射するニードルバルブを含んで構成されるが、
前記ノズル本体は前記ニードルバルブと共に拡散ノズルを形成することを特徴とする請求項1に記載のスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランス。
【請求項3】
前記ノズル本体に対して前記ニードルバルブを昇降する昇降手段を具備し、
前記ニードルバルブは中央部分が狭い断面を有する鼓状で閉鎖された先端部を有するが、壁体を貫通する貫通孔が形成された中空の円筒体で形成されて前記昇降手段によって前記ニードルバルブを前記ノズル本体から上昇させることで高圧ガスの噴射角度を調整するようになっていることを特徴とする請求項2に記載のスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランス。
【請求項4】
前記アダプタは、
一側が前記パイプ構造体と連通される中空のフィッティング部材と、
下面にノズル本体に形成された雄ねじとねじ結合される雌ねじが形成されており、一側面には前記フィッティング部材の他側と連通される連結部が形成されており、上部は開閉可能な蓋で密封されている箱構造体を含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載のスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の噴射ランスと、
前記噴射ランスを介して高圧ガスを噴射する高圧ガス噴射部と、
前記噴射ランスの傾斜角を調整するランス傾斜角調整部と、
前記噴射ランスを前後進駆動するランス前後進駆動部と、
前記噴射ランスの内部に冷却水を循環させる冷却水循環部と、
前記高圧ガス噴射部、前記ランス傾斜角調整部、前記ランス前後進駆動部及び前記冷却水循環部を総括的に制御する制御部と、を含んで形成されるスラグ流出防止装置。
【請求項6】
有無線通信網を介して転炉制御設備から出鋼に関する転炉情報を伝達される通信部を更に具備し、
前記制御部は前記通信部を介して伝達された前記転炉情報によって前記高圧ガス噴射部、前記ランス傾斜角調整部、前記ランス前後進駆動部及び前記冷却水循環部を制御することを特徴とする請求項5に記載のスラグ流出防止装置。
【請求項7】
先端が閉鎖されている内壁と外壁の2重の円筒体で形成されて前記内壁で限定された空間が高圧経路を形成し、前記内壁と前記外壁との間の空間には先端が前記内壁と前記外壁の閉鎖先端と離隔されている円筒状の隔壁が形成されて冷却水の循環路を形成するパイプ構造体と、
下方に高圧ガスを噴射するノズル束と、
高圧ガスの噴出方向が変換されるように前記噴射パイプ構造体と前記ノズル束を連結するアダプタと、を含んで形成され、
前記アダプタは、一側が前記パイプ構造体と連通される中空のフィッティング部材及び下面にノズル本体に形成された雄ねじとねじ結合される雌ねじが形成されており、一側面には前記フィッティング部材の他側と連通される連結部が形成されており、上部は開閉可能な蓋で密封されている箱構造体を含んで形成されるスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランス。
【請求項8】
前記ノズル束は中空のノズル本体と前記ノズル本体の内部に挿入されて前記ノズル本体の先端を介して高圧ガスを高速に噴射するニードルバルブを含んで構成され、
前記ノズル本体は前記ニードルバルブと共に拡散ノズルを形成することを特徴とする請求項7に記載のスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射レンズに関するものであり、特に高圧の不活性ガスを出鋼口上部の渦巻き地点に噴射してスラグを出鋼口から押し出すことで、より簡便でありながらも効率的にスラグ流出を防止するようにしたスラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射ランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、溶鉱炉で製造された溶鉄を転炉に移して酸素吹錬などの精錬作業とその他の合金化処理を行った後、受鋼台車の上に安着された受鋼ラドル(ladle)により溶鋼を出鋼する一貫製鉄所でだけでなく、古鉄などの鉄源を電気の転炉によりアーク熱で溶融させて精錬及び合金化処理を行った後、受鋼ラドルに溶鋼を出鋼する電気炉会社では、
図1に示したように転炉100から受鋼ラドル110に溶鋼Mを出鋼する作業の際、精錬工程で発生して溶鋼Mの上部面に比重差のため存在するスラグ(slag)Sを、溶鋼Mから分離する作業が必須的である。
【0003】
即ち、転炉100を下方に傾動した状態で、出鋼口102を介して溶鋼Mを受鋼ラドル110に出鋼させる場合、精錬工程を経た溶鋼Mの成分がスラグSによって変化しないように、溶鋼Mの精錬作業の際に発生する溶鋼Mより比重が小さいスラグSが受鋼ラドル110に混入されないようにすべきである。結果的に効率的な出鋼作業の成敗は受鋼ラドルに混入されるスラグSの量をどれだけ最小化するのかにかかっている。
【0004】
そのため、従来は、中が詰まっている漏斗状のヘッドと、このようなヘッドの下部に延長されて出鋼口102に挿入されるスリーブとを有するスラグダート120を、ダート投入器(図示せず)を使用して出鋼口102に投入することでスラグSが流出されることを防止していた。
【0005】
一方、従来のスラグダート120は、比重が大よそ2.3であるスラグと、比重が大よそ7.8である溶鋼との中間範囲である3〜6の比重を有することが要求される。しかし、スラグダート120の比重が適切でなければ、それによってスラグダート120が速すぎ又は遅すぎる時に出鋼口102を塞ぐことで溶鋼Mが完全に出鋼されないか又は溶鋼にスラグが混入して流出する問題点があった。
【0006】
他にも、転炉の出鋼口102では、溶鋼Mが渦巻き(vortex)ながら流出されるため、そのような渦巻き地点にスラグダート120を正確に投入しなければスラグの流出を効果的に防止することができない。しかし、従来は、スラグダートをこのような渦巻き地点に正確に投入するために他の機械装置を使用しなければならないなどの不便さがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録特許第862819号(2008.10.13.公告)名称:スラグダート
【特許文献2】登録特許第1058394号(2011.08.24.公告)名称:回収再生されたマグネシアクローム系耐火物を利用したスラグダート及びその製造方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するために案出されたものであって、高圧の不活性ガスを出鋼口上部の渦巻き地点に噴射してスラグを出鋼口から押し出すことでより、簡便でありながらも効率的にスラグ流出を防止するようにしたスラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射ランスを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するための本発明の第1特徴によるスラグ流出防止用高圧ガス噴射ランスは、先端が閉鎖されている内壁と外壁の2重の円筒体で形成されて前記内壁で限定された空間が高圧ガス経路を形成し、前記内壁と前記外壁との間の空間には、先端が前記内壁と前記外壁の閉鎖先端と離隔されている円筒状の隔壁が形成されて冷却水の循環路を形成するパイプ構造体と、下方に高圧ガスを噴射するノズル束及び高圧ガスの噴出方向が変換されるように前記噴射パイプ構造体と前記ノズル束を連結するアダプタと、を含んで形成される。
【0010】
上述した第1特徴において、少なくとも前記内壁の外周面又は前記隔壁の外周面には、らせん状の案内突起が形成されることを特徴とする。
【0011】
前記ノズル束は、中空のノズル本体と、前記ノズル本体の内部に挿入されて前記ノズル本体の先端を介して高圧ガスを高速に噴射するニードルバルブとを含んで構成され、前記ノズル本体は前記ニードルバルブと共に拡散ノズルを形成することを特徴とする。
【0012】
前記ノズル本体に対して前記ニードルバルブを昇降する昇降手段を具備し、前記ニードルバルブは中央部分が狭い断面を有する鼓状で閉鎖された先端部を有し、壁体を貫通する貫通孔が形成された中空の円筒体で形成されて前記昇降手段によって前記ニードルバルブを前記ノズル本体から上昇させることで高圧ガスの噴射角度を調整するようになっていることを特徴とする。
【0013】
前記アダプタは、一側が前記パイプ構造体と連通される中空のフィッティング部材及び下面に前記ノズル本体に形成された雄ねじとねじ結合される雌ねじが形成されており、一側面には前記フィッティング部材の他側と連通される連結部が形成されており、上部は開閉可能な蓋で密封されている箱構造体を含んで形成されることを特徴とする。
【0014】
一方、本発明の第2特徴によるスラグ流出防止装置は、上述した特徴のうち一つの噴射ランスと、前記噴射ランスを介して高圧ガスを噴射する高圧ガス噴射部と、前記噴射ランスの傾斜角を調整するランス傾斜角調整部と、前記噴射ランスを前後進駆動するランス前後進駆動部と、前記噴射ランスの内部に冷却水を循環させる冷却水循環部と、前記高圧ガス噴射部、前記ランス傾斜角調整部、前記ランス前後進駆動部及び前記冷却水循環部を総括的に制御する制御部と、を含んで形成される。
【0015】
上述した第2特徴において、有無線通信網を介して転炉制御設備から出鋼に関する転炉情報を伝達される通信部を更に具備し、前記制御部は前記通信部を介して伝達された前記転炉情報によって前記高圧ガス噴射部、前記ランス傾斜角調整部、前記ランス前後進駆動部及び前記冷却水循環部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射ランスによると、高圧の不活性ガスを出鋼口上部の渦巻き地点に噴射してスラグを出鋼口から押し出すことで、より簡便でありながらも効率的にスラグ流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来のスラグ流出防止装置の問題点を説明するための図である。
【
図2】本発明のスラグ流出防止装置の概念を説明するための全体システム構成図である。
【
図3】本発明のスラグ流出防止装置の電気的なブロック構成図である。
【
図4a】
図2の高圧ガス噴射ランスの縦断面図である。
【
図5】本発明のスラグ流出防止装置における高圧ガス噴射ランスの先端部の構造を示す分離断面図である。
【
図6】本発明のスラグ流出防止装置における高圧ガス噴射ランスの先端部の構造を示す結合断面図である。
【
図7a】
図6のノズル束のニードルバルブを上昇させた状態の断面図である。
【
図7b】
図6のノズル束のニードルバルブを下降させた状態の断面図である。
【
図8】本発明のスラグ流出防止装置の動作過程を説明するためのフローチャートである。
【
図9a】本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
【
図9b】本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
【
図9c】本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
【
図9d】本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
【
図9e】本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
【
図9f】本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して本発明のスラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射ランスの好ましい実施例について詳細に説明する。
【0019】
図2は、本発明のスラグ流出防止装置の概念を説明するための全体システム構成図であり、
図3は、本発明のスラグ流出防止装置の電気的なブロック構成図である。
図2及び
図3に示したように、本発明のスラグ流出防止装置は転炉の傾動の際に、入口を介して高圧ガス噴射ランス(以下、簡単に「噴射ランス」と称する)150を転炉100に投入した状態で転炉出鋼口102の渦巻き発生地点に高圧ガスを噴射し、スラグSを転炉出鋼口102の外郭に押し出すことでスラグSが出鋼口102を介して流出されることを防止する。
【0020】
そのために、本発明のスラグ流出防止装置は、噴射ランス150と噴射ランス150の傾斜角度を調整するランス傾斜角調整部210と、転炉投入口に対して噴射ランス150を前進又は後退させるランス前後進駆動部220と、噴射ランス150を介して高圧ガスを噴射する高圧ガス噴射部230と、噴射ランス150を冷却させるための冷却水を噴射ランス150の内部で循環させる冷却水循環部240と、有無線通信網によって転炉制御設備(図示せず)と通信して転炉制御設備から出鋼による各種情報(以下、「転炉情報」と称する)、例えば転炉の傾動角度や出鋼程度などの情報をリアルタイムに伝達される通信部250と、転炉情報によってランス傾斜角調整部210、ランス前後進駆動部220、高圧ガス噴射部230及び冷却水循環部240を適切に制御する制御部220とを含んで形成される。
【0021】
上述した構成において、噴射ランス150は、転炉100が設置された作業場の転炉100周辺に設置されるが、参照番号130は作業場の天井に設置された固定支持台を示し、134は噴射ランス150を移動可能に支持する噴射ランス支持台を示す。例えば、噴射ランス支持台134の後端(以下、転炉方向を前方と定義する)は、固定支持台130から下方に垂直延長されたH−ビーム136に上下に回動可能にヒンジ結合される。噴射ランス支持台134の先端は固定支持台130に設置されたホイストモータ133によって巻かれるか又は解かれるホイストワイヤ132によって昇降される。
【0022】
結果的に、ホイストワイヤ132を巻けば噴射ランス150の先端が上方を向く。一方、ホイストワイヤ132が解かれれば噴射ランス150の先端が下方を向くようになる。参照番号138は、噴射ランス150を支持したまま噴射ランス支持台132で前後進する噴射ランスキャリアを示し、参照番号139は噴射ランスキャリア138を前後進する動力発生手段、例えばモータを示す。
【0023】
一方、ランス傾斜角調整部210は、上述したようなホイストモータ133とホイストワイヤ132又は油圧或いは空圧シリンダのピストンを往復運動させる電気モータとその付属器具などで具現されるが、必要に応じては傾斜角を感知するセンサが追加的に具備されてもよい。
【0024】
ランス前後進駆動部220は、噴射ランスキャリア138を前後進させるための電気モータ139や油圧や空圧を圧縮する圧縮ポンプ(モータ)とソレノイドバルブ又はリニアモータなどで具現されてもよいが、前進又は後進位置や距離を感知するセンサが追加的に具備されてもよい。
【0025】
高圧ガス噴射部230は、例えばアルゴン(Ar)や窒素などの不活性ガスを圧縮する圧縮ポンプ(モータ)とソレノイドバルブなどで具現される。
【0026】
冷却水循環部240は循環ポンプ(モータ)で具現される。通信部250はRS−232やRS−485のような直列通信インタフェース又はイーサネット(登録商標)のような近距離通信網で具現される。最後に、制御部200はハードウェア又はソフトウェア方式で具現される。
【0027】
図4aと
図4bは、それぞれ
図2の高圧ガス噴射ランスの縦断面図と
図4aのA−A線の断面図である。
図4に示したように、本発明のスラグ流出防止装置に適用される噴射ランス150は、中央に高圧ガス経路155aが形成されて、先端が閉鎖されている内外2重、即ち、内壁154と外壁151を有するパイプ構造体と、下方に高圧ガスを噴射するノズル束158と、高圧ガスの噴出方向が変換されるように前記噴射パイプ構造体とノズル束158を連結するアダプタ156,157を含んで形成される。
【0028】
上述した構成において、パイプ構造体の内部にはパイプ構造体の内部を半分にするようにその内壁154と外壁151との間の空間に、内壁154及び外壁151と並行するように延長された円筒状の隔壁153が更に具備されているが、このような隔壁153の先端はパイプ構造体の先端から離隔されている。よって、このような離隔の隙間にパイプ構造体の内部を冷却させるための冷却水が循環、即ち、例えば内壁154と隔壁153との間の空間で形成された冷却水流入路155bに流入された冷却水が、離隔の隙間を介して隔壁153と外壁151との間の空間で形成された冷却水流出路155cに流出されることで冷却水の循環が行われる。もちろん、隔壁153の外側空間が冷却水流入路になり、内側空間が冷却水流出路になってもよい。
【0029】
一方、冷却水流入路155bを介して十分な冷却水が供給されないか噴射ランスを傾ける場合などでは冷却水が自重によって下部に偏るため、噴射ランスの内部を均一に冷却させることができない。それを防止するために、冷却水流入路155bと冷却水流出路155cにそれぞれらせん状の案内突起154a、153a、例えば断面が三角形であるらせん状の案内突起が追加的に具備されてもよい。即ち、パイプ構造体の内壁154の外周面には、内壁154と隔壁153との間の最短距離の大よそ1/2以上の高さを有するらせん状の案内突起154aが形成されており、隔壁153の外周面にも同じく隔壁153と外壁151との間の最短距離の大よそ1/2以上の高さを有するらせん状の案内突起153aが形成されている。このようならせん状の案内突起154a、153aによって、流入される冷却水が不足であるか、又は噴射ランスが偏っても冷却水が下部に偏る現象を改善することができる。
【0030】
図5は、本発明のスラグ流出防止装置における高圧ガス噴射ランスの先端部の構造を示す分離断面図であり、
図6は、本発明のスラグ流出防止装置における高圧ガス噴射ランスの先端部の構造を示す結合断面図である。
図7a及び
図7bは、それぞれ
図6のノズル束のニードルバルブを上昇又は下降させた状態の断面図である。
【0031】
図5乃至
図7に示したように、本発明のスラグ流出防止装置では、噴射ランスの高圧ガス経路155aが水平に形成されているため高圧ガスの噴射方向を下方に転換させるための方向転換手段が要求される。図面における参照番号156はアダプタの一部であって、箱構造体157とパイプ構造体を連結するフィッティング部材を示す。このようなフィッティング部材156には横に高圧ガス移動路156aが形成されている。
【0032】
フィッティング部材156の後側にはパイプ構造体の高圧ガス経路155aに挿入される水平延長部156bが形成されており、このような水平延長部156bの先端の外周面には、パイプ構造体の高圧ガス経路155aの内周面に形成された雌ねじ(図示せず)とねじ結合される雄ねじ156cが形成されており、前側には箱構造体157の一側面に形成された結合用貫通孔157aを介して箱構造体157に挿入された状態でナット157fとねじ結合される雄ねじ156eが具備されている。図面における参照番号156dはフィッティング部材156の結合の際にパイプ構造体の先端と接触するフランジを示すが、このようなフランジ156dの前面には高圧ガスの漏洩を防止するO−リング用途に作用する一つ以上の環状突起156fが形成されている。
【0033】
次に、箱構造体157は、一側面に上述した結合用貫通孔157aが形成されて、下側面にはノズル束158と連通される連通孔157bが形成されている中空の箱状に形成されるが、連通孔157bの周辺には雌ねじ157cが形成されている。箱構造体157の上部には開放の際に箱構造体157の内部への接近を許容する蓋157dが形成されているが、このような蓋157dは普段はボルトによって箱構造体の上部を密閉する。参照番号157eは密封用パッキング部材を示し、参照番号157gは箱構造体157の後側の壁面に形成されてフィッティング部材156の環状突起156fと凹凸結合される環状凹溝を示す。
【0034】
次に、ノズル束158は中空のノズル本体158aとノズル本体158aの内部に挿入され、ノズル本体158aの先端を介して高圧ガスを高速に噴射するニードルバルブ158bを含んで形成される。ノズル本体158aはニードルバルブ158bと対を成して作用する拡散ノズル形態、即ち、ノズルの中間部位が狭くなってから更に広くなる形態に具現される。そのため、ノズル本体158aの自由端(先端)部位はその内部が扇形に広くなる断面を有するが、158a1はノズル本体158aのボトルネック部を示す。図面において、参照番号158a2はノズル本体158aの上端の外周面に形成されて箱構造体157の下面に形成された雌ねじ157cにねじ結合する雄ねじを示す。
【0035】
一方、ニードルバルブ158bは先端が閉鎖された中空の円筒体で形成されるが、閉鎖先端部158b3に隣接した部分には円筒体の壁を内外に貫通する一つ以上の貫通孔158b2が形成されている。ニードルバルブ158bの閉鎖先端部158b3はその中央部位が最も狭い断面を有する鼓状に形成されて、ニードルバルブ158bがノズル本体158aから昇降することで高圧ガスの噴射角度が広くなるか又は狭くなる。
【0036】
ノズル本体158aの内周面の適所には雌ねじ158a3が形成されており、ニードルバルブ158bの外周面に対応する部位にはこのような雌ねじ158a3とねじ結合される雄ねじ158b5が形成されている。なお、ニードルバルブ158bの後端には、例えば手やレンチなどの工具によって締められるか、又は解かれる操作ヘッド部158b4が形成されているため、操作ヘッド部158b4を左右に回すことによってニードルバルブ158bをノズル本体158aの内部で昇降させることができ、結果的に高圧ガスの噴射角度を適切に調整することができる。この場合、操作ヘッド部158b4への接近のためには箱構造体157の蓋157dを開放すべきである。また、このような構造によって噴射ランスからノズル束158を容易に交換することができる。
【0037】
即ち、
図7aに示したようにニードルバルブ158bをノズル本体158aの内部に後退させる場合には、ノズル本体158aの出口とニードルバルブ158bとの間の隙間が広くなって高圧ガスの噴射角度が広くなる。一方、
図7bに示したようにニードルバルブ158bをノズル本体158aの外部に向かって前進させる場合には、ノズル本体158aの出口とニードルバルブ158bとの間の隙間が狭くなって高圧ガスの噴射角度が狭くなる。
【0038】
図8は本発明のスラグ流出防止装置の動作過程を説明するためのフローチャートであって、制御部200によって行われる。
図9a乃至
図9fは、それぞれ本発明のスラグ流出防止装置の段階別動作過程による高圧噴射ランスと転炉の状態を示す図である。
図9aに示したように、出鋼が始まる前には、転炉100が立てられた状態を維持し、噴射ランス150の水平及び後退状態を維持する。
【0039】
この状態で出鋼準備が完了すると、転炉制御設備では
図9bに示したように転炉100を傾動させて出鋼を始める。このような傾動と同時にステップS10では通信部250を介して転炉制御設備から転炉情報の一種である出鋼開始信号を伝達され、ステップS20では
図9b及び
図9cに示したように噴射ランス150を転炉100の入口に向かって傾けながら前進させることで噴射ランス150の先端、即ち、ノズル束158を出鋼口102上部の渦巻き部位に位置させる。
【0040】
次に、ステップS40では
図9cに示したように渦巻き部位に高圧ガスを噴射して溶鋼Mの上部に浮遊しているスラグSを渦巻き部位から押し出すことでスラグSが出鋼口を介して流出されないようにする。
【0041】
ステップS40では転炉制御設備から傾動角度や出鋼程度を含む転炉情報を通信部250を介してリアルタイムに伝達され、
図9d及び
図9eに示したように噴射ランス150の傾斜角を適切に調節しながら高圧ガスを噴射する。次に、転炉制御設備では出鋼が完了されると直ちに転炉を元の位置に復帰、即ち、その入口が上を向くように復帰させるが、ステップS50では転炉制御設備から伝達された転炉情報によって出鋼が完了されたのかを判断する。ステップS50での判断の結果、出鋼が完了されていない場合にはステップS30に復帰する一方、完了された場合にはS60に進行して
図9fに示したように噴射ランス150を後退させると共に噴射ランス150の傾斜角を調整して水平状態を維持させる。
【0042】
最後にステップS70では高圧ガスの噴射を中止させるが、このステップS70は上述したステップS60の前に行われてもよい。
【0043】
これまで添付した図面を参照して本発明のスラグ流出防止装置及びその高圧ガス噴射ランスの好ましい実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎないものであり、本発明の技術的思想の範疇内で多様な変形と変更が可能である。よって、本発明の権利範囲は以下の特許請求の範囲の記載によって決められるべきである。例えば、
図2のシステム構成図は単に本発明を分かりやすく説明した概略図であって、その具体的な構成はいくらでも変更可能である。例えば、噴射ランスの場合には左右の傾斜角度を調整するランス左右傾斜角調整部を追加に具備してもよく、これも同じく電気モータなどを使用して具現されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
100:転炉 102:出鋼口
110:受鋼ラドル 120:スラグダート
130:固定支持台 132:ホイストワイヤ
133:ホイストモータ 134:噴射ランス支持台
136:H−ビーム 138:噴射ランスキャリア
139:噴射ランス前後進モータ 150:噴射ランス
151:外壁 153:隔壁
153a:らせん状の案内突起 154:内壁
154a:らせん状の案内突起 155a:高圧ガス経路
155b:冷却水流入路 155c:冷却水流出路
156:フィッティング部材 157:箱構造体
158:ノズル束 158a:ノズル本体
158b:ニードルバルブ 200:制御部
210:ランス傾斜角調整部 220:ランス前後進駆動部
230:高圧ガス噴射部 240:冷却水循環部
250:通信部
M:溶鋼 S:スラグ