特許第5873224号(P5873224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873224重合性官能基とフッ素原子団とを有するカルボン酸エステル・カルバメート化合物とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5873224
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】重合性官能基とフッ素原子団とを有するカルボン酸エステル・カルバメート化合物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/16 20060101AFI20160216BHJP
   C07C 269/06 20060101ALI20160216BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20160216BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C07C271/16
   C07C269/06
   C08F20/34
   C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-543168(P2015-543168)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2015058619
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-78190(P2014-78190)
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 拓大
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
(72)【発明者】
【氏名】池田 直
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−194839(JP,A)
【文献】 国際公開第95/18194(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0104850(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第102002129(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 271/16
C07B 61/00
C07C 269/06
C08F 20/34
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I]で表される、重合性官能基とフッ素原子団とを有するカルボン酸エステル・カルバメート化合物。
2a+1O-(C2bO)-CCOO-Z-(CONHR) [I]
ここで、aは、1〜3の整数であり、bは、1〜4の整数であり、cは、0〜50の整数であり、dは、1〜3の整数である。Zは2〜4価の有機結合基であって、-(C2eO)-、または-CH(cyclo-C2g−2)CHO-、または-C2h+1−i-で表される過酸化物を含まないアルコール誘導体である。eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。Rは、以下の一般式[II]で表される重合性官能基である。
C=C(R)COOCHCR- [II]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
【請求項2】
一般式[III-1]で表されるポリアルキレングリコール、または一般式[III-2]で表されるシクロアルカンジメタノール、または一般式[III-3]で表される直鎖型または分岐型の多価アルコールに対して、一般式[IV]で表される重合性官能基を有するイソシアネート化合物を反応させて、一般式[V-1]または一般式[V-2]または一般式[V-3]で表されるヒドロキシカルバメートとした後に、一般式[VI]で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドを反応させることを特徴とするカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法。
HO(C2eO)H [III-1]
HOCH(cyclo-C2g−2)CHOH [III-2]
HOC2h+1−i(OH) [III-3]
ここで、eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。
C=C(R)COOCHCR-NCO [IV]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
HO(C2eO)CONHR [V-1]
HOCH(cyclo-C2g−2)CHOCONHR [V-2]
HOC2h+1−i(OCONHR) [V-3]
ここで、eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。Rは、以下の一般式[II]で表される重合性官能基である。
C=C(R)COOCHCR- [II]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
2a+1O-(C2bO)-CCO-X [VI]
ここで、Xは、ハロゲン原子であり、aは、1〜3の整数であり、bは、1〜4の整数であり、cは、0〜50の整数である。
【請求項3】
前記一般式[III-1]で表されるポリアルキレングリコール、または前記一般式[III-2]で表されるシクロアルカンジメタノール、または前記一般式[III-3]で表わされる多価アルコールと、前記一般式[IV]で表される重合性官能基を有するイソシアネート化合物とを反応させる際に、有機金属触媒または塩基性触媒を使用することを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法。
【請求項4】
前記有機金属触媒または前記塩基性触媒として、有機金属スズ誘導体または含窒素複素環式化合物誘導体を使用することを特徴とする請求項3に記載のカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法。
【請求項5】
前記一般式[V-1]または前記一般式[V-2]または前記一般式[V-3]で表されるヒドロキシカルバメートと、前記一般式[VI]で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドとを反応させる際に、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で反応を行うことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化水素捕捉剤として、アルカリ金属フッ化物を使用することを特徴とする請求項5に記載のカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性官能基とフッ素原子団とを有するカルボン酸エステル・カルバメート化合物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中にフッ素原子を有する化合物は、一般に、熱安定性や化学的安定性に優れ、また良好な光学特性や界面活性特性を合わせて持っている。このようなことから、分子中にフッ素原子を有する化合物は、モニター画面などの反射防止膜、光ファイバーなどのクラッド剤、コーティング剤などの用途に多く使用されている。
【0003】
分子中にフッ素原子を有する化合物の例としては、含フッ素エステル化合物や含フッ素エーテル化合物等のモノマーがある。これらのモノマーから得られる単独重合体や共重合体は、上記用途向けに種々の化学構造を有したものが開発され、使用されている。
【0004】
特許文献1には、含フッ素エステル化合物のモノマーの代表的な例として、下記一般式で表される含フッ素アクリル酸エステルが開示されている。
【0005】
【化1】
【0006】
ここで、Rは2価の有機結合基であり、R’は水素原子またはメチル基であり、nは0または整数であり、mは整数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−194839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような含フッ素モノマーは、炭化水素系の安価な溶媒には溶解しにくく、フッ素系溶媒にしか溶解しないため、価格や法規制の面で使用が制限されるという問題があった。
【0009】
実際のところ、特許文献1に開示された含フッ素モノマーは、撥水撥油性を発揮する一方で、汎用溶媒に溶けづらく、他の樹脂と混ぜた際に相分離してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、炭化水素系溶媒に溶解させることが可能であり、撥水撥油性にも優れた含フッ素モノマーとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、含フッ素モノマーの炭化水素系溶媒に対する溶解性を高めるために、フッ素原子団(フッ素原子を多数有する官能基)と重合性官能基を有するモノマーに、種々の炭化水素基を導入することを検討した。また、フッ素原子団の化学構造や各官能基の結合の仕方等についても検討を加えた。その結果、炭化水素基としてポリエーテル基または環状脂肪族基を用い、炭化水素基をフッ素原子団と重合性官能基との中間に配した特定の化学構造を有するモノマーとすることによって、炭化水素系溶媒への溶解性や硬化樹脂との相溶性に優れた含フッ素モノマーを形成できることを見出した。
【0012】
本発明は、このような検討を重ねた結果、達成することができたものである。すなわち、本発明は以下のような構成を有するものである。
【0013】
本発明のカルボン酸エステル・カルバメート化合物は、一般式[I]で表される、重合性官能基とフッ素原子団とを有するカルボン酸エステル・カルバメート化合物である。
2a+1O-(C2bO)-CCOO-Z-(CONHR) [I]
ここで、aは、1〜3の整数であり、bは、1〜4の整数であり、cは、0〜50の整数であり、dは、1〜3の整数である。Zは2〜4価の有機結合基であって、-(C2eO)-、または-CH(cyclo-C2g−2)CHO-、または-C2h+1−i-で表される過酸化物を含まないアルコール誘導体である。eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。Rは、以下の一般式[II]で表される重合性官能基である。
C=C(R)COOCHCR- [II]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
【0014】
また、本発明のカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法は、一般式[III-1]で表されるポリアルキレングリコール、または一般式[III-2]で表されるシクロアルカンジメタノール、または一般式[III-3]で表される直鎖型または分岐型の多価アルコールに対して、一般式[IV]で表される重合性官能基を有するイソシアネート化合物を反応させて、一般式[V-1]または一般式[V-2]または一般式[V-3]で表されるヒドロキシカルバメートとした後に、一般式[VI]で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドを反応させることを特徴としている。
【0015】
HO(C2eO)H [III-1]
HOCH(cyclo-C2g−2)CHOH [III-2]
HOC2h+1−i(OH)i [III-3]
ここで、eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。
C=C(R)COOCHCR-NCO [IV]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
HO(C2eO)CONHR [V-1]
HOCH(cyclo-C2g−2)CHOCONHR [V-2]
HOC2h+1−i(OCONHR)i [V-3]
ここで、eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。Rは、以下の一般式[II]で表される重合性官能基である。
C=C(R)COOCHCR- [II]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
2a+1O-(C2bO)-CCO-X [VI]
ここで、Xは、ハロゲン原子であり、aは、1〜3の整数であり、bは、1〜4の整数であり、cは、0〜50の整数である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の含フッ素モノマーは、炭化水素系溶媒に溶解させることが可能であり、撥水撥油性にも優れている。また、本発明の含フッ素モノマーの製造方法は、前記含フッ素モノマーを簡便な工程で高い収率で得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体例に限定されるものではない。
【0018】
本発明のカルボン酸エステル・カルバメートの製造方法は、ポリアルキレングリコール、シクロアルカンジメタノールまたは多価アルコールに、重合性官能基を有するイソシアネートを反応させた後、パーフルオロポリエーテル基を有する酸ハライドと反応させることを特徴としている。
【0019】
さらに詳しく例示すると、ポリアルキレングリコール、シクロアルカンジメタノールまたは多価アルコールに、イソシアナトアルキルアクリレート、イソシアナトアルキルメタクリレートまたは(ビスアクリロイルオキシメチル)アルキルイソシアネート等を、触媒存在下で反応させた後に、パーフルオロエーテル基を含有する酸ハライドと、ハロゲン化水素捕捉剤存在下で反応させて、含フッ素重合性モノマーを製造する方法である。
【0020】
まず、前段の反応について説明する。
前段の反応は、一般式[III-1]で表されるポリアルキレングリコール、または一般式[III-2]で表されるシクロアルカンジメタノール、または一般式[III-3]で表される多価アルコールに対して、一般式[IV]で表される重合性官能基を有するイソシアネート化合物を反応させて、一般式[V-1]または一般式[V-2]または一般式[V-3]で表されるヒドロキシカルバメートを得る反応である。
【0021】
ポリアルキレングリコールは、下記一般式[III-1]で表される。
HO(C2eO)H [III-1]
ここで、eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数である
また、シクロアルカンジメタノールは、下記一般式[III-2]で表される。
HOCH(cyclo-C2g−2)CHOH [III-2]
ここで、gは、3〜6の整数である。
また、多価アルコールは、下記一般式[III-3]で表される。
HOC2h+1−i(OH) [III-3]
ここで、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。当該多価アルコールの炭素鎖は直鎖型でも分岐型でも良く、水酸基の結合位置は限定されない。また、当該多価アルコールは過酸化物を含むものではない。
【0022】
ポリアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が用いられる。
【0023】
シクロアルカンジメタノールとしては、シクロプロパンジメタノール、シクロブタンジメタノール、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等が用いられる。
【0024】
直鎖型または分岐型の多価アルコールとしては、水酸基の結合位置に制限はなく、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、プロパントリオール、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、オクタントリオール、ノナントリオール、デカントリオール、ウンデカントリオール、ドデカントリオール、ブタンテトラオール、ペンタンテトラオール、ヘキサンテトラオール、ヘプタンテトラオール、オクタンテトラオール、ノナンテトラオール、デカンテトラオール、ウンデカンテトラオール、ドデカンテトラオール、ペンタエリトリトール等が用いられる。
【0025】
重合性官能基を有するイソシアネート化合物は、下記一般式[IV]で表される。
C=C(R)COOCHCR-NCO [IV]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
【0026】
重合性官能基を有するイソシアネート化合物としては、イソシアナトアルキルアクリレート、イソシアナトアルキルメタクリレート、(ビスアクリロイルオキシメチル)アルキルイソシアネート等がある。具体的には、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトプロピルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、イソシアナトエチルメタクリレート、イソシアナトプロピルメタクリレート、(ビスアクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、(ビスアクリロイルオキシメチル)プロピルイソシアネート等が用いられる。入手性の問題から特に好ましくは、イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工社製、カレンズAOI)、またはイソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズBEI)が使用される。
カレンズAOI:HC=CHCOOCHCHNCO
カレンズMOI:HC=C(CH)COOCHCHNCO
カレンズBEI:(HC=CHCOOCHC(CH)NCO
【0027】
これらイソシアナトアルキル(ジ)(メタ)アクリレート等のイソシアネート化合物は、一般式[III-1]または一般式[III-2]または一般式[III-3]で表されるアルコールの(水酸基数−1)に対して、通常1〜1.5倍モル使用される。溶媒はあってもなくても良く、溶媒を使用する場合は、芳香族類、ケトン類、エーテル類を用いる。好ましくは、トルエン、メチルイソブチルケトン、ジブチルエーテル等が用いられる。反応温度は、特に制限されないが、制御のしやすさ、反応系中の望まない重合を抑制する目的から、室温〜60℃程度が好ましい。
【0028】
また、ポリアルキレングリコールまたはシクロアルカンジメタノールまたは多価アルコールと、イソシアネート化合物とを反応させる際には、反応を円滑に進めるために、有機金属触媒または塩基性触媒を使用することが好ましい。有機金属触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ナフテン酸鉛、等を用いることができる。塩基性系触媒としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ビス[(2-ジメチルアミノ)エチル]エーテル、1,1,6,6,-テトラメチルヘキサンジアミン、等を用いることができる。好ましくは、ジラウリン酸ジブチルスズのような有機金属スズ誘導体や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンのような含窒素複素環式化合物誘導体が用いられる。
【0029】
ポリアルキレングリコールまたはシクロアルカンジメタノールまたは多価アルコールと、イソシアネート化合物との反応によって、出発物質に対応するヒドロキシカルバメートが生成する。
【0030】
ヒドロキシカルバメートは、下記一般式[V-1]または一般式[V-2]または一般式[V-3]で表される。
HO(C2eO)CONHR [V-1]
HOCH(cyclo-C2g−2)CHOCONHR [V-2]
HOC2h+1−i(OCONHR) [V-3]
ここで、eは、1〜6の整数であり、fは、1〜12の整数であり、gは、3〜6の整数であり、hは2〜12の整数であり、iは1〜3の整数である。Rは、以下の一般式[II]で表される重合性官能基である。
C=C(R)COOCHCR- [II]
ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはCH=CHCOOCH-であり、Rは、水素原子またはメチル基である。
【0031】
次に、後段の反応について説明する。
後段の反応は、上記のヒドロキシカルバメートと、一般式[VI]で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドとを反応させて、カルボン酸エステル・カルバメートを得る反応である。
【0032】
パーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドは、下記一般式[VI]で表される。
2a+1O-(C2bO)-CCO-X [VI]
ここで、Xは、ハロゲン原子であり、aは、1〜3の整数であり、bは、1〜4の整数であり、cは、0〜50の整数である。
【0033】
パーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドの具体例としては、下記のものを用いることができる。
(a)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,17,18,18,18-エイコサフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-2,5,8,11,14-ペンタキス
(トリフルオロメチル)オクタデカノイルフルオリド、
(b)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,17,17-オクタデカフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-2,5,8,11,14-ペンタキス
(トリフルオロメチル)ヘプタデカノイルフルオリド、
(c)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,16-ヘキサデカフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-2,5,8,11,14-ペンタキス(トリフルオロメチル)
ヘキサデカノイルフルオリド、
(d)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20,22,22,23,25,25,26,28,28,29,29,30,30,30-ドトリアコンタフルオロ-3,6,9,12,15,18,
21,24,27-ノナオキサ-2,5,8,11,14,17,20,23,26-ノナキス(トリフルオロメチル)トリアコンタノイルフルオリド、
(e)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20,22,22,23,25,25,26,28,28,29,29,29-トリアコンタフルオロ-3,6,9,12,15,18,21,24,27
-ノナオキサ-2,5,8,11,14,17,20,23,26-ノナキス(トリフルオロメチル)
ノナコサノイルフルオリド、
(f)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20,22,22,23,25,25,26,28,28,28-オクタコサフルオロ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ
-2,5,8,11,14,17,20,23,26-ノナキス(トリフルオロメチル)
オクタコサノイルフルオリド、
(g)2,2,3,3,5,5,6,6,7,7,9,9,10,10,11,11,13,13,14,14,15,15,15-トリコサフルオロ-4,8,12-トリオキサペンタデカノイルフルオリド、
(h)2,2,3,3,5,5,6,6,7,7,9,9,10,10,11,11,13,13,14,14,15,15,17,17,18,18,19,19,21,21,22,22,23,23,25,25,26,26,27,27,29,29,30,30,31,31,31
-ヘプタテトラコンタフルオロ-4,8,12,16,20,24,28-ヘプタオキサヘントリアコンタノイルフルオリド。
これらの中で、好ましくは、
(a)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,17,18,18,18-エイコサフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-2,5,8,11,14-ペンタキス
(トリフルオロメチル)オクタデカノイルフルオリド、
(d)2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20,22,22,23,25,25,26,28,28,29,29,30,30,30-ドトリアコンタフルオロ-3,6,9,12,15,18,
21,24,27-ノナオキサ-2,5,8,11,14,17,20,23,26-ノナキス(トリフルオロメチル)トリアコンタノイルフルオリド、等が用いられる。
上記のパーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドの化学式を図示すると、以下のとおりである。
【0034】
【化2】
【0035】
ヒドロキシカルバメートとパーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドとの反応は、パーフルオロエーテル基を含有する酸ハライドに対して、ヒドロキシカルバメート[水酸基含有(ジ)(メタ)アクリレート]を、通常1.1倍〜2倍モル用いる脱ハロゲン化水素縮合反応によって行われる。
反応溶媒としては、この反応に不活性なものであれば任意なものが使用し得る。一般的には、フッ素系溶媒が使用される。具体的には、アサヒクリンAK225(旭硝子社製)、アサヒクリンAE3000(旭硝子社製)、ノベックHFE(住友スリーエム社製)、バートレルXF(デュポン社製)、フロリナートFC−72(住友スリーエム社製)などが用いられる。好ましくは、アサヒクリンAK225(旭硝子社製)である。
【0036】
この反応は、脱ハロゲン化水素反応であるので、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で行うことが好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤としては、アルカリ金属フッ化物であるフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムや、有機アミン化合物であるトリエチルアミン、トリブチルアミンが一般に用いられる。これらの中では、生じたフッ化水素の保持能力や価格の点から、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属フッ化物やトリエチルアミンが好んで用いられる。ハロゲン化水素捕捉剤の使用割合は、パーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドに対して2〜8倍モル、好ましくは2.1〜3.0倍モルの範囲内である。
【0037】
得られたカルボン酸エステル・カルバメートは、重合性官能基を有するため、反応系内に重合禁止剤としてのメトキノン(p-メトキシフェノール)もしくはハイドロキノンを加えて反応を行うことが好ましい。
【0038】
上記のようにして合成される本発明のカルボン酸エステル・カルバメートとしては、例えば以下のような化合物が例示される。
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
本発明のカルボン酸エステル・カルバメートである含フッ素ポリエーテル(ジ)(メタ)アクリレートは、分子中に重合性官能基、フッ素原子団、炭化水素基を持つため、撥水性、撥油性、耐指紋性、防汚性を損なうことなく、汎用溶媒への溶解性、硬化性樹脂との相溶性を発揮することができる。また1分子中に多数のフッ素原子を有するため、熱安定性、化学的安定性に優れており、良好な光学特性や界面活性特性を持っている。
【0047】
さらに、本発明のカルボン酸エステル・カルバメートは、可視光、紫外線、電子線などのエネルギー線による硬化が可能であるので、感光性硬化型のインキ、塗料、電子線硬化型の接着剤などへの応用が可能である。また、多官能性モノマーとして合成することも可能であるため、3次元構造での架橋が可能となり、各種樹脂の架橋剤、改質剤等として用いることができる。その結果、硬度、強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性などの物性の向上や改良を図ることが可能である。
【0048】
本発明のカルボン酸エステル・カルバメートは、分子中のフッ素含量が多いため、低屈折率を示している。このため、ディスプレイ等の反射防止膜、光ファイバー等のクラッド材として利用することもできる。さらに、界面活性特性を利用して、各種離型用コーティング剤、表面改質剤、撥水撥油剤等にも用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0050】
(実施例1)
トルエン200gに、トリプロピレングリコール307.6g(1.60mol)と、ジブチルスズラウリレート(DBTDL)1.01gを加え、撹拌下、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート430.8g(1.80mol)を滴下し、5時間撹拌した。GC(ガスクロマトグラフ)によって、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートの消失を確認し、反応終了とした。収量637.2g、収率92.3%であった。
【0051】
その後、単離した生成物164.4g(0.381mol)をHCFC−225ca/HCFC−225cb混合溶媒(旭硝子社製、アサヒクリンAK225)300gに溶解させ、NaF44.1g(1.05mol)を加えた。そこに撹拌下、含フッ素ポリエーテルの酸フロライド350g(0.351mol)を滴下し、2時間撹拌した。NMRによって、酸フロライドのピークの消失を確認し、反応終了とした。収量440.2g、収率89.1%、純度95.6%であった。
【0052】
実施例1の反応は、以下の2つの化学式のとおりである。
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
実施例1の生成物のNMRの同定結果は、以下のとおりであった。上記の実施例1の反応が進行し、下記の化学構造を有するカルボン酸エステル・カルバメートが得られたことが確認された。
【0056】
【化12】
【0057】
19F−NMR[(CDCO、C
σ(ppm):-143.8:d, -130.2:f, -128.7:b, -81.4:c, -80.6:e, -79.1:a,g,h
H−NMR[(CDCO]
σ(ppm):1.0〜1.4:k, 1.4:m, 3.5〜4.1:i,j, 4.4:n, 5.9:q, 6.2:p, 6.4:o
【0058】
(実施例2)
トルエン200gに、シクロヘキサンジメタノール225.9g(1.60mol)と、ジブチルスズラウリレート(DBTDL)1.01gを加え、撹拌下、イソシアナトエチルメタクリレート279.3g(1.80mol)を滴下し、5時間撹拌した。GCによって、イソシアナトエチルアクリレートの消失を確認し、反応終了とした。収量431.8g、収率90.1%であった。
【0059】
その後、単離した生成物113.8g(0.380mol)をHCFC−225ca/HCFC−225cb混合溶媒(旭硝子社製、アサヒクリンAK225)300gに溶解させ、NaF44.1g(1.05mol)を加えた。そこに撹拌下、含フッ素ポリエーテルの酸フロライド350g(0.351mol)を滴下し、2時間撹拌した。NMRによって、酸フロライドのピークの消失を確認し、反応終了とした。収量399.5g、収率88.4%、純度96.7%であった。
【0060】
実施例2の反応は、以下の2つの化学式のとおりである。
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】
実施例2の生成物のNMRの同定結果は、以下のとおりであった。上記の実施例2の反応が進行し、下記の化学構造を有するカルボン酸エステル・カルバメートが得られたことが確認された。
【0064】
【化15】
【0065】
19F−NMR[(CDCO、C
σ(ppm):-143.5:d, -130.0:f, -128.9:b, -82.5〜-76.4:a,c,e,g,h H−NMR[(CDCO]
σ(ppm):0.95〜2.7:j,k,l,m, 1.92:r 3.4:p, 4.0〜5.7:i,n,q, 5.6:s, 6.1:t, 6.5:o
【0066】
(実施例3)
トルエン102.6gに、1,2,3-プロパントリオール39.0g(0.423mol)と、ジブチルスズラウリレート(DBTDL)0.36gを加え、撹拌下、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート300.1g(1.25mol)を滴下し、3時間撹拌した。GCによって、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートの消失を確認し、反応終了とした。収量265.3g、収率93.2%であった。
【0067】
その後、単離した生成物249.7g(0.438mol)をHCFC−225ca/HCFC−225cb混合溶媒(旭硝子社製、アサヒクリンAK225)300gに溶解させ、NaF37.90g(0.902mol)を加えた。そこに撹拌下、含フッ素ポリエーテルの酸フロライド313.0g(0.314mol)を滴下し、5時間撹拌した。NMRによって、酸フロライドのピークの消失を確認し、反応終了とした。収量442.9g、収率91.2%、純度97.2%であった。
【0068】
実施例3の反応は、以下の2つの化学式のとおりである。
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
実施例3の生成物のNMRの同定結果は、以下のとおりであった。上記の実施例3の反応が進行し、下記の化学構造を有するカルボン酸エステル・カルバメートが得られたことが確認された。
【0072】
【化18】
【0073】
19F−NMR[(CDCO、C
σ(ppm):-143.9:d, -130.2:f, -128.6:b, -84.3〜-76.3:a,c,e,g,h
H−NMR[(CDCO]
σ(ppm):1.5:m,s 3.8〜4.3:i,j,k 4.4:n,t 5.9:q,w 6.2:p,v 6.4:o,u 6.5:l,r
【0074】
(実施例4)
トルエン101.8gに、1,2,6−ヘキサントリオール69.4g(0.518mol)と、ジブチルスズラウリレート(DBTDL)0.44gを加え、撹拌下、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート300.0g(1.25mol)を滴下し、3時間撹拌した。GCによって、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートの消失を確認し、反応終了とした。収量318.6g、収率92.3%であった。
【0075】
その後、単離した生成物273.8g(0.447mol)をHCFC−225ca/HCFC−225cb混合溶媒(旭硝子社製、アサヒクリンAK225)300gに溶解させ、NaF37.88g(0.902mol)を加えた。そこに撹拌下、含フッ素ポリエーテルの酸フロライド306.0g(0.307mol)を滴下し、5時間撹拌した。NMRによって、酸フロライドのピークの消失を確認し、反応終了とした。収量443.4g、収率90.9%、純度96.2%であった。
【0076】
実施例4の反応は、以下の2つの化学式のとおりである。
【0077】
【化19】
【0078】
【化20】
【0079】
実施例4の生成物のNMRの同定結果は、以下のとおりであった。上記の実施例4の反応が進行し、下記の化学構造を有するカルボン酸エステル・カルバメートが得られたことが確認された。
【0080】
【化21】
【0081】
19F−NMR[(CDCO、C
σ(ppm):-143.9:d, -130.3:f, -128.5:b, -82.3〜-76.4:a,c,e,g,h
H−NMR[(CDCO]
σ(ppm):1.4:p,v 1.5〜1.8:k,l,m 3.7〜4.3:i,j,n 4.8:q,w 5.9:t,z 6.2:s,y 6.3〜6.5:o,r,u,x
【要約】
炭化水素系溶媒に溶解させることが可能であり、撥水撥油性にも優れた含フッ素モノマーとその製造方法を提供する。下記一般式で表される、重合性官能基とフッ素原子団とを有するカルボン酸エステル・カルバメート化合物である。
2a+1O-(C2bO)-CCOO-Z-(CONHR)
ポリアルキレングリコール、シクロアルカンジメタノールまたは多価アルコールに対して、重合性官能基を有するイソシアネート化合物を反応させて、ヒドロキシカルバメートとした後に、パーフルオロポリエーテルカルボン酸ハライドを反応させることを特徴とするカルボン酸エステル・カルバメート化合物の製造方法である。