特許第5873228号(P5873228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873228メタンに富むガス流の精製のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873228
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】メタンに富むガス流の精製のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C10L 3/10 20060101AFI20160216BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20160216BHJP
   C07C 7/09 20060101ALI20160216BHJP
   C07C 7/12 20060101ALI20160216BHJP
   C07C 7/148 20060101ALI20160216BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C10L3/10
   C07C9/04
   C07C7/09
   C07C7/12
   C07C7/148
   F25J3/08
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-526899(P2008-526899)
(86)(22)【出願日】2006年8月17日
(65)【公表番号】特表2009-504875(P2009-504875A)
(43)【公表日】2009年2月5日
(86)【国際出願番号】NL2006000427
(87)【国際公開番号】WO2007021183
(87)【国際公開日】20070222
【審査請求日】2009年8月14日
(31)【優先権主張番号】05076906.6
(32)【優先日】2005年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508048562
【氏名又は名称】ガストリートメント サービシーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】デ バス,マティウ アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】クイペル,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】デ ペトル,イェロエン
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04681612(US,A)
【文献】 米国特許第05642630(US,A)
【文献】 特表2005−515298(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/065869(WO,A1)
【文献】 特開平06−257937(JP,A)
【文献】 特開平06−257938(JP,A)
【文献】 特開昭58−156324(JP,A)
【文献】 特開2002−138851(JP,A)
【文献】 特表2005−519153(JP,A)
【文献】 米国特許第03376709(US,A)
【文献】 米国特許第02900797(US,A)
【文献】 米国特許第03236057(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 3/10
C07C 7/09
C07C 7/12
C07C 7/148
C07C 9/04
F25J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の過程を含む、メタンを含むガス流(A)から、精製されたメタンを含むガス流(P)を生成する方法、
(a)上述のメタンを含むガス流(A)を加圧し、続いて-25℃以下に冷却し、それによって凝縮された汚染物質を含む流れ(C)およびメタンを含む流(B)を得る、そして
(c) メタンを含む流(B)を、二酸化炭素を上記の流(B)から凝縮するために十分な温度に冷却し、それによって上述の精製されたメタンを含むガス流(P) および二酸化炭素を含む流(E)を得る。
【請求項2】
過程(a)と過程(c)との間に下記の過程を含む、請求項1に記載の方法、
(b)上述のメタンを含む流(B)を吸着機器および/または接触転化機器に供給し、それによって流(B)中の汚染物質の濃度をさらに削減する。
【請求項3】
過程(a)における上記の冷却が、メタンを含むガス流(A)を第一の熱交換機に供給し、それと同時に第二の熱交換機は解凍されることにより実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
過程(a)における上記の冷却が、メタンを含むガス流(A)を第一の熱交換機に供給し、それと同時に第二の熱交換機は解凍され、続いて第一の熱交換機と第二の熱交換機を切り換える、ことにより実行される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
上記の第一の熱交換機と第二の熱交換機がそれらの間で熱を交換することのできる、請求項またはに記載の方法。
【請求項6】
上記の凝縮された汚染物質を含む流れ(C)が、解凍される上記の第二の熱交換機から得られる、請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
上記の凝縮された汚染物質を含む流れ(C)がシロキサンを含む、請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
上記の凝縮された汚染物質を含む流れ(C)が、水、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲン化合物、C5以上の高級炭化水素、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される汚染物質を含む、請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項9】
過程(c)において、上記のメタンを含む流(B)が-60℃以下に冷却される、請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
上記のメタンを含む流(B)が、二酸化炭素の気液平衡温度である-80℃またはそれ以下に冷却される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
過程(b)において、上記のメタンを含む流(B)が吸着装置および/または接触転化装置に供給される、請求項1〜10のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
上記の吸着装置および/または上記の接触転化装置が固体粒子の床を含む単一の装置を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記のメタンを含むガス流(A)がバイオガスである、請求項1〜12のいずれか1に記載された方法。
【請求項14】
上記のメタンを含むガス流(A)が、埋立地、消化、排水処理設備、またはそれらの組み合わせから得られたバイオガスである、請求項13に記載された方法。
【請求項15】
以下の装置を有する、メタンを含むガス流(A)から精製されたメタンを含むガス流(P)を生成する装置、
(a)上記のメタンを含むガス流(A)を加圧するための圧縮機、および上記の圧縮機より下流に位置する冷却機、および
(c)凝縮された二酸化炭素の出口および上記の精製されたガス流(P)の出口を有する冷却装置、ただし該冷却装置は第一の熱交換機および第二の熱交換機を有し、第一の熱交換機および第二の熱交換機は並行して運転されることができる。
【請求項16】
以下の装置をさらに有する、請求項15に記載の装置、
(b)上記の圧縮機および冷却器より下流に位置する吸着装置および/または接触転化装置。
【請求項17】
(a)における上記の冷却は第一の熱交換機および第二の熱交換機を有し、第一の熱交換機および第二の熱交換機は並行して運転されることができる、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
過程(b)より下流の配管が外部加熱装置を有さない、請求項1617のいずれか1に記載の装置。
【請求項19】
過程(b)より下流の配管が断熱材を有さない、請求項1618のいずれか1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理、特に、廃棄物またはその他の有機物の転化により得られるガス(バイオガス)のような、メタンに富むガス流の精製のための方法および装置に向けられている。さらに特には、本発明は、高効率なエネルギー源として用いられることがわかっている、精製されたバイオガス(埋立地ガス、消化ガスなど)の生成に向けられている。このように、本発明は、天然ガスと同等の質を持つガスを得るための、そのようなメタンに富むガスを精製する方法および装置に向けられている。
【背景技術】
【0002】
例えば有機廃棄物(肥料、排水のスラッジ、都市における固形廃棄物を含む)の嫌気的消化などによる、有機物からバイオガスを生成するための様々な手法が知られている。メタンに加えて、これらの発酵過程は大抵、大量の二酸化炭素(典型的には生成されたガスのおよそ30〜50体積%が二酸化炭素であろう)および少量の硫化物、および塩化ビニルのような化合物がその他の不純物と共に、同時に生成する。このようなガスはエネルギー源として用いられうる前に機械的操作により取り除かれ、処理されなければならない。精製されたガスはシリンダー内に輸送され、低温のタンク中で液化され、現地での動力源として使用されることができ、または近隣のエネルギー需要へと配管輸送されることができる。最後の二つの選択肢は最も広く成長する可能性を持つと考えられる。
【0003】
メタンガスは、例えば埋め立て地および或る下水処理などで大量に生成される。それは少数の箇所では回収されているものの、この潜在的に価値のあるエネルギー源の大部分は失われている。埋立地ガス、消化ガス、およびその他の種類のバイオガスの開発は特に、ガスの精製を含む、ガスを輸送可能な形態に経済的に処理するための機器が得られていないため、限定されている。多くの場合(埋め立て地など)において、ガス源は限定された時間において現実的な量のガスを生成するのみであって、常設の設備を設けることは正当化されないであろう故に、望ましくは機器そのものが輸送可能であるべきである。
【0004】
水分、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲン、シロキサンおよび/またはその他の汚染物質を除去することは、埋立地ガス、消化ガスおよびバイオガスを精製し高効率なエネルギー源として利用するにあたり非常に重要である。いくつかのよく確立された技術が用いられているものの、埋立地ガス、消化ガスおよびバイオガスを洗浄するための実行可能な方法を提供することは未だに問題である。この目的のために、ガス処理のプロセスに関する様々な方法が既に知られている。これらの方法は、水分の含有量の削減、二酸化炭素の抽出、硫化水素の除去、または混合ガス内に存在する一種またはそれ以上の汚染物質の除去の中のいずれかに焦点が向けられている。既知の手法の欠点は、上記の種類のガス中の望ましからぬ物質の多くを十分に取り除くことが出来ないことである。さらに、現在の方法は、エンジンの腐食、摩耗、修繕コスト、過程で生成される廃棄物、廃棄処理のコスト、および最終生成物としての混合ガスの組成に関して完全には欠点がないとは言えないものである。最後に、以前の技術は取り除かれた物質が再利用されうる方法を示していない。
【0005】
イギリス国特許出願公開A-1 565 615には、メタンから二酸化炭素を分離する方法であって、二つの化合物の混合物を冷却して気体/液体混合物を生じ、続いてそれを分割する方法が記載されている。
【0006】
米国特許出願公開A-4 681 612には、埋立地ガスを分離して、二酸化炭素生成物流および燃料級のメタン生成物流を生成する方法が記載されている。この方法は燃料級のメタン流を生成するために低温条件下での蒸留および膜分離の過程を含んでいる。
【0007】
従来技術ではまた、ほとんどの汚染物質を取り除くことができる活性炭フィルターに基づくプロセスなどの、汚染物質の吸収プロセスが知られている。しかし、活性炭再生のためのコストおよび廃棄コストが高い。加えて活性炭フィルターは水分に対して非常に高い親和性があり、従って吸着効率が下がってしまう。さらに、分子メンブランフィルター、活性ポリマー性メンブランフィルター、およびシリカゲルなどのその他の吸収方法が適用されている。しかし、用いられている手法は効率的なエネルギー源としての使用に必要な水準の質を達成しない。
【0008】
その他の吸収方法は、有機的な分解による汚染物質の除去を含んでいる。実際にはこの方法は、対象とする汚染物質が高い揮発性を有しているため大分複雑である。水または二酸化炭素に対するその親和性の故に、濃縮法を用いることでシロキサンを取り除くことは可能である。しかし一般的にこの方法で達成される除去水準は低い。
【0009】
埋立地ガス、消化ガス、バイオガスを構成する化合物は場所ごとに異なっている。ある場所では硫黄の含有率が高く、一方で別な場所ではシロキサンのトレース量が多く、さらに別の場所では、ガスをガスエンジンに適用する際にエンジンのノッキングの危険性を高める、重質炭化水素のトレースを含む。そのような状態であるため、ガス処理の方式は、汚染物質の水準とエンジンの要請に応じて場所ごとに個別に適応される必要がある。ガスエンジンに使用されるバイオガスに対する典型的な要件は表1に記載されている。
【0010】
【表1】
【0011】
これらの混入物質の中で、シロキサンは最も悪性であり、大抵最も大きな問題を引き起こす。シロキサンは化学変化を起こして白色の研磨性の粉体となり、下流に設置された装置(ボイラー、燃焼エンジン、タービン、触媒など)を損傷する。また、痕跡量のシロキサン、硫化水素、ハロゲンおよびその他のミネラルは性能を減少し、発電機の補修回数を増やす。発明者の知る限りでは、現在までに、大部分の水分、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲン、シロキサン、およびその他の含有される汚染物質を取り除く完全な一括した手法は提案されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、バイオガス中に存在する汚染物質のいくつかを取り除くことのできる方法を提供することである。さらなる目的は、本方法が複雑な技術の導入によらないように、単純な方法でこれらの物質の除去が行われうることである。さらに、本発明の方法は、例えばガスエンジンに問題なく適用できるほど十分に低い汚染物質の水準を有するクリーンなガスを提供するべきである。言い換えれば、本発明に従い、最終生成物は天然ガスの質に近い生成物を提供する組成を持つべきである。さらなる目的は、本発明のプロセスは可能な限り少ない廃棄物を生成し、エネルギー効率がよいものであるべきである、ということである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、バイオガス流が少なくとも二種類の冷却過程を用いて精製されるところの方法により満たされることが見出された。すなわち、最初の局面において、本発明は以下の過程を含む、メタンを含むガス流(A)から、精製されたメタンを含むガス流(P)を生成する方法に向けられている。
【0014】
(a)上述のメタンを含むガス流(A)を加圧し、続いて-25℃以下に冷却し、それによって凝縮された汚染物質を含む流れ(C)およびメタンを含む流(B)を得る、
【0015】
(b)任意的に、上述のメタンを含む流(B)を吸着機器および/または接触転化機器に供給し、それによって流(B)中の汚染物質の濃度をさらに削減する、そして
【0016】
(c)メタンを含む流(B)を、二酸化炭素を上記の流(B)から凝縮するために十分な温度に冷却し、それによって上述の精製されたメタンを含むガス流(P)および二酸化炭素を含む流(E)を得る。任意的な過程(b)を実行することが好ましい。
【0017】
一つの実施態様において、本発明のガス処理方法は三つの過程から成りうる。最初の過程においてバイオガス(または精製を必要とするメタンを含むその他のガス)は加圧され、交互に使用される凝縮機に供給され、その中で水分(水)、硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲン、シロキサン、およびその他の汚染物質は混合ガスから取り除かれる。次に、ガス混合物は、残留している少量の汚染物質を取り除くための適当な触媒/吸着剤を収容している、所謂ポリッシャー装置に供給される。
【0018】
適当な触媒/吸収剤とは、酸化鉄Fe2O3のような脱硫剤を含む物質である。脱硫剤が硫黄化合物と反応した後、それは例えば酸素(例えば空気由来の酸素)と反応させることにより再活性化されうる。触媒/吸収剤は好ましくは、例えばその細孔などにより与えられた、吸着作用を有し、それは細孔中にシロキサンのようなその他の汚染物質を吸着することを可能にする。
【0019】
本発明者により開発され、またSOXSIA(商標)の商標で販売されるであろう一つの適当な触媒/吸着剤は、硫化水素を元素硫黄に転化し、シロキサンのようなその他の汚染物質をSOXSIA(商標)吸収剤の細孔中に吸収するように設計されている。
【0020】
触媒/吸収剤の中の脱硫剤が例えば酸化鉄Fe2O3であるとき、硫化水素は次の化学反応により取り除かれる。Fe2O3+3H2S→Fe2S3+3H2O
【0021】
触媒/吸収剤は空気中の酸素により次の反応を用いることで再び活性化される。2Fe2S3+3O2→2Fe2S3+6S
【0022】
再活性化の間、元素硫黄は吸収剤の細孔中に保持されうる。再活性化のために少量の空気流を触媒の床に循環させる。再活性化反応は発熱的であるため、熱が生成される。この熱は続いて、吸着されたシロキサンおよびその他の汚染物質を蒸発させ、触媒/吸収剤は再生された形態を取り戻す。
【0023】
それぞれの再活性化の後、脱硫における触媒性能は、保持された硫黄により低下する。触媒を再生し100%の性能を取り戻すために、硫黄は好ましくは、窒素などの不活性ガスを用いて例えば300℃のような温度で加熱し、元素硫黄を融解することにより取り除かれる。
【0024】
再生は好ましくは別個の機器で行う。従って、一般的には使用された触媒/吸収剤は新品で置き換えられ、その後で消耗された触媒/吸収剤は再生されうる、等々である。
【0025】
次に、このプロセスは、二酸化炭素の部分凝縮とガスからのそれの除去により、二酸化炭素の除去を達成するための極低温冷却過程により終了する。
【0026】
ガス中の望ましくない化合物(汚染物質)は抽出され、再利用されうる。本発明に従って生成された精製最終ガス生成物は、天然ガス(販売可能なガス)の質と同等であり、典型的には上記の表1に示された要件を満たす組成を持ち、天然ガスの配管に注入することが可能であることが判明した。このガスは圧縮されうるため、自動車用のガス(CNG:圧縮天然ガス)として、またはLNG(液化天然ガス)として使用されうる。
【0027】
好ましい実施態様において、最初の段階は、熱交換機を用いてメタンを含むガス流(A)を冷却することを含む。三重管を持つガス/ガス熱交換機が非常に適切であり、その中で三重管は熱交換機中で或る時間中、障害なく氷状の形成物を収集するために使用される。この様にして、より長時間の間一定のガス流が生成される。好ましくは、過程(a)における冷却はおおよそ-25℃まで行われる。ガスを冷却することにより、水分およびほとんどのその他の汚染物質は凝縮する。水分が凝縮する際に汚染物質は捕集されうる故に、流出する処理されたガス中に汚染物質を持ち越す可能性が減少することが見出され、これは大幅にプロセス効率を向上させる。水分の残留物は分離され、様々な冷却点および分離点で流出される。コの様にして、ガス流中の水のほぼ全て(例えば99重量%まで)が凝縮または凍結除去される。この様にして、重質炭水化物(つまり炭素数5以上)のほとんどはまた、凝縮でき、そしてほとんどすべてのシロキサンもまた取り除かれうると言うことが達成されうる。従って残留水分のかなりの部分を取り除くことで、過程(b)における吸着剤および/または接触転化設備の吸着効率は大幅に改善される。そしてGPPの下流での凝縮の可能性は事実上除外される。
【0028】
任意的に、過程(b)においては、例えば、上記のSOXSIA(商標)のような固体粒子の床を構成する、単一の装置のような吸着装置および/または接触転化装置を用いて、粒子状物質(典型的には0.3〜0.6μmの粒径を持つ)は取り除かれうる。
【0029】
本発明に従えば、メタンを最大90モル%まで含む、クリーンな高エネルギーのメタンガスが生成される。比較すると、フローニンゲンの天然ガスは81.3モル%のメタンを含み、一方で高熱量天然ガスは90%超のメタンを含んでいる。
【0030】
汚染物質の典型的な除去率(取り除かれた重量として表される)は表2に記載されている。
【0031】
【表2】
【0032】
過程(a)で処理されたガスは次に過程(b)中のリポリッシャーを通される。リポリッシャーは好ましくは、活性炭吸着剤または、例えば上記のSOXSIA(商標)を用いる、接触転化装置のいずれかである。活性炭の適切な特徴は表3に記載されている。過程(a)において大パーセントの汚染物質を除去することにより、処理されたガス中の痕跡量の汚染物質が、以前必要とされていた活性炭の一部により取り除かれる。
【0033】
【表3】
【0034】
あるいは、SOXSIA(商標)のような吸着材/触媒またはその類似物が適用されうる。典型的には粒径3mmかつ長さ8mmの触媒が用いられる。好都合な吸着性能は、ガス流中に穏和な濃度で存在する汚染物質の為の高い吸着容量および除去効率を結果する。押出成形された粒形は、フィルターでの低い圧力低下を可能にする。該触媒/吸着材は、硫黄化合物特に硫化水素から元素硫黄への転化、およびSOXSIA(商標)吸着剤の細孔中のシロキサンのような他の汚染物質の吸着を可能にする。
【0035】
脱硫剤は好ましくは酸化鉄Fe2O3であり、これは次の化学反応により硫化水素の除去を可能にする。Fe2O3+3H2S→Fe2S3+3H2O。これは続いて、例えば空気中の、酸素を用いて次の反応により再活性化されることができる。2Fe2S3+3O2→2Fe2O3+6S。
【0036】
再活性化の間、元素硫黄は吸着剤の細孔中に保持されうる。再活性化のためには、空気のような酸素を含む少量のガス流を触媒/吸収剤に、例えば触媒/吸着剤の床に循環させるなどすることにより、接触させる。一般的に再活性化反応は発熱的であるため、熱を生成する。この熱は従って、吸収されたシロキサンや他の汚染物質を蒸発させるであろう。
【0037】
再活性化の後、触媒/吸収剤の性能は、幾分の硫黄が保持される故に、減少されうる。硫黄を完全に、またはほぼ完全に除去するために、触媒/吸収剤は、好ましくは窒素のような不活性ガス中で、元素硫黄を融解するのに十分な温度に熱されうる。好ましい温度は300℃超である。
【0038】
次に過程(c)において、メタンを含む流(B)は、上記の流(B)から二酸化炭素を凝縮するのに十分な温度にまで冷却される。
【0039】
ガス混合物の深冷処理は典型的に3段階で達成される。ガス混合物の温度をおおよそ-60℃まで低下させることにより、二酸化炭素の露点に達し、二酸化炭素の凝結が見られる。このような状態において、存在する二酸化炭素のおおよそ50%が液化されうる。
【0040】
出口ガス(P)の組成のWobbe指数を用いることにより、ガスの最終温度は操作されうる。この最終温度において、気液平衡は、要求されるWobbe指数に対応するように選択される。この最終温度は、好ましくは-65℃から-80℃の間を取り、要求されるガス組成に依存する。図3「メタン/二酸化炭素二元系の等温線」から、最終温度は、メタンの最終的なモル濃度が増加するに従い減少する、ということが判る。
【0041】
図4「メタン/二酸化炭素二元系の挿図」から、-65℃より下に温度を下げることにより固体の二酸化炭素の形成を結果することが判る。
【0042】
従って、好ましい実施態様において、最終の冷却は、二つの並行な三重管熱交換機を用い、最初の熱交換機は冷却し、もう一方で解凍する(逆も同様)、という手法により達成される。これらの交互熱交換機を用いることで、凝固による中断なしに連続的なガス流が生成されうる。固体/液体/気体のメタン/二酸化炭素混合物を処理することによる目詰まりの問題(この問題は以前の技術(上記にて示したイギリス国-A-1565615および米国-A-4 681 612などを参照)にて言及されている)は本発明に従い回避されうるため、二つの熱交換機を並行して使うことが非常に望ましいことが判明している。従って、二つの熱交換機を持つ装置を用いることで、本発明は固体/液体/気体の領域で運転されることができる。なぜならば、一方の熱交換機は解凍しているときに、系の目詰まりなどを引き起こす凝固が他方の熱交換機で起きてもよいからである。従って、本発明の一つの実施態様にて証明された装置は、厳格なプロセス制御を必要とせず、そのことは勿論非常に望ましい。
【0043】
最終の冷却過程における液化二酸化炭素の温度が、最初の冷却過程の液化に酸化炭素の温度を下回るため、分圧が異なる。最終の冷却過程における液化二酸化炭素は入ってくるバイオガスのための余熱機により、最初の冷却過程の温度にまで熱される。最後にそれは操作され、最初の冷却過程および最後の冷却過程における液化二酸化炭素流は同一の温度および圧力であり、液化二酸化炭素貯蔵タンクに貯蔵されるようになる。GPPの3段階目の概略図は図2に掲載されている。
【0044】
本発明の系の効率は顕著に高い。圧力スイング吸着法および膜技術によるメタンの(CH4)の損失が約15〜20%であるのに対し、本発明の技術におけるメタンの損失は2%未満である。
【0045】
試験性能に従い示した、本発明の目的とするところであるバイオガス処理プロセスの利点は、次のように要約される。
【0046】
・ガス混合物を-25℃に冷却することは、ガスの露点をもまた-25℃に下げる。
・ガス混合物が冷却の後に熱されると(それが普通の手順である)、系の下流に凝結が決して起きない。
・活性炭の量が減ることにより、材料コストおよび人的労働力/修繕コストが共に削減され、さらに活性炭の廃棄に関するコストもまた削減される。
・下流の配管は外部加熱や断熱材を必要とせず、さらなる費用便益を与える。
・さらなる利益として、低沸点の汚染物質(アンモニア、硫化水素)およびハロゲン化物の一部が、水分の凝結に伴いガス流から洗い出されることが挙げられる。さらに、それらの汚染物質の溶解性は低温で十分に増加する。
・2〜4モル%の水を含むすべての汚染物質を除去することで、ガスのカロリー値はおよそ3%上昇し、1Nm3当りのガスの電力生成の増加を結果する。
・凝結が起きない故に、下流(過程(a)以降)ではSS304や炭素鋼などの低品質な材料を用いることができる。これはまた十分な費用便益を生み出す。
【0047】
一例として、本発明は、添付の図1および図2に概略図として示された、限定しない実施様態を参照して、さらに詳細に記載される。
【0048】
図1は本発明のダイアグラムである。図1に関して、埋立地の廃棄物、もしくは有機廃棄物のほかのマスのバクテリア分解によりバイオガスが得られる。典型的には生成されるガスのうち30%〜50%が二酸化炭素であり、少量(数%以下)がその他の不純物ガス特に硫化水素、二酸化硫黄、ハロゲンおよびシロキサンであり、残りがメタンである。該その他の不純物ガスの濃度は比較低いにもかかわらず、機械に与える影響は大きい。硫化水素(H2S)およびハロゲン(F, Cl, Br, I)、並びにハロゲン化物は処理装置内の主構成物を腐食する酸を形成する傾向にある。また、トレース量のシロキサン、硫化水素、ハロゲンおよびその他のミネラルは、バイオガス生成設備の下流に設置されうるガスエンジンの性能を低下させ、修繕の回数を増加させる。
【0049】
バイオガスは源から取り出され、二酸化炭素の凝縮のため、必要な動作圧力に圧縮される。図3に従い、-80℃という最低温で90モル%のメタンを達成するために必要な動作圧力は、1000kPaである。
【0050】
次に圧縮されたバイオガスは気体/気体熱交換機に供給され、そこで流入したガスは生成物ガス(P)により予め冷却され、後者はその露点より上に再加熱されるであろう。気体/気体熱交換機から、ガスは冷コアレッサーを通過し、後者は出現した水分を取り除く。残留する水分は分離され、分離点で排液される。
【0051】
次にガスは熱交換機(例えば三重管ガス/ガス熱交換機)へ流れ、後者はガス混合物をおよそ-25℃に冷却する。冷却ガスは水分、シロキサン、およびほとんどのその他の汚染物質を凝縮する。最大99%の水分が第一段階で捕捉される。水分が凝固するときに、それは汚染物質を捕集し、それにより、出て行く処理されたガスに持ち越される可能性を減少する。連続した操作を実現するために、二つの熱交換機が設置されうる。それらは交互に連続して運転される。すなわち、一の熱交換機が運転中であるとき、第二の熱交換機は捕捉した汚染物質を含む凝固した混合ガスを解凍するために、電源が切られる。この交互の連続は逆も同様に繰り返されて、連続した、中断されないガス流を提供する。冷却モードにある熱交換機で生成された熱は、解凍モードにある熱交換機を熱するために用いられうる。
【0052】
処理されたガスは-25℃のガス温度でリポリッシャーに供給される。リポリッシャーは好ましくはSOXSIA(商標)触媒を充填された吸収剤である。次に、精製されたガスはさらに図2に描かれた過程(c)により深冷される。
【0053】
ガス混合物の深冷は、典型的には三段階により達成される。おおよそ-60℃にまでガス混合物の温度を下げることにより、二酸化炭素の露点に達し、二酸化炭素の凝縮が見られる。これらの状態において、存在する二酸化炭素のうちおおよそ50%が液化されうる。
【0054】
出口ガス(P)組成のWobbe指数を用いることにより、ガスの最終温度が操作される。この最終温度において、気液平衡は、要求されるWobbe指数に対応するようなものである。この最終温度は-65℃〜-80℃の間であり、要求されるガス組成に依存する。図3から、最終温度はメタンの最終的なモル濃度が増えるに従い減少することが判る。
【0055】
図4から、温度を-65℃未満にすることにより、固体の二酸化炭素が得られることが判る。
【0056】
従って最終の冷却は、三重管熱交換機を二台並行して用い、第一の熱交換機が冷却し、第二の熱交換機が解凍し、逆もまた同様にすることによって達成される。交互の熱交換を用いることにより、連続したガス流が凝固による中止なしに生成される。
【0057】
最終の冷却過程における液化二酸化炭素の温度が最初の冷却過程からの液化二酸化炭素の温度より低いため、分圧もまた違う。従って最終の冷却過程からの液化ニ酸化炭素は、流入するバイオガスのための予冷却機を用いて最初の冷却過程と同じ温度にまで加熱されるであろう。最後に最初および最終の冷却過程からの液化二酸化炭素流は共に、同じ温度、圧力であり、液化二酸化炭素貯蔵タンクに貯蔵されるであろう。
【0058】
二酸化炭素、メタン、硫化水素および/またはその他の水和物形成種の水和を避けるため、温度制限が操作され、冷却過程(a)および(c)における圧力損失は好ましくは監視される。圧力損失が増加し予め設定された最大値に達した場合、各ステップの熱交換機は立場を交換し、水和/固形の水(過程(a))または二酸化炭素(過程(c))が解凍モードで除去されうる。
【0059】
要求される出口組成を達成するための駆動力は、過程(c)における(三重管)熱交換機であり、そこでバイオガス由来の液化二酸化炭素は、要求される二酸化炭素の気液平衡温度(図3を参照)を達成するために気化される。平衡温度および供給物の状態は、売ることができるガスの純度を決定する。平衡温度の操作は売れるガスの一定で安定したWobbe指数を保証する。この区域で冷媒として用いられる二酸化炭素は容易に再生され、続いて二酸化炭素利用者に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明を示すダイアグラム
図2】第3段階のダイアグラム
図3】メタン-二酸化炭素系での等温における露点および凝固点を示すグラフ
図4】メタン/二酸化炭素二元系における相図
図1
図2
図3
図4