特許第5873263号(P5873263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873263
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】LPI燃料システム用ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   F02M21/02 301A
   F02M21/02
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-150717(P2011-150717)
(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公開番号】特開2012-122470(P2012-122470A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年6月10日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0123860
(32)【優先日】2010年12月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 柱 泰
(72)【発明者】
【氏名】成 演 官
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05709370(US,A)
【文献】 特開2006−258283(JP,A)
【文献】 特開平04−025685(JP,A)
【文献】 特開2004−204737(JP,A)
【文献】 特開2004−360633(JP,A)
【文献】 特開2005−042700(JP,A)
【文献】 特開2007−009902(JP,A)
【文献】 特表2007−528962(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/090861(WO,A1)
【文献】 特表2009−539022(JP,A)
【文献】 特開2010−053812(JP,A)
【文献】 実開平07−002742(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F02B 43/00−45/10
F02M 21/00−21/12
F02M 37/00−37/22
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボンベ結合部と圧力バルブとの間に存在する隙間が外部に連結されることを遮断できるように前記圧力バルブの外周面のうちの前記ガスボンベ結合部との連結部位に結合されて設置される気密維持部材と、
前記気密維持部材と対面する前記ガスボンベ結合部の先端に前記気密維持部材と接触するように一体に形成され、前記ガスボンベ結合部と前記気密維持部材との間の気密を強化させる気密強化部材とを含み、
前記気密強化部材は、三角形の断面模様で形成されることを特徴とするLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記気密維持部材は、垂直部と水平部が一体に繋がった「L」字形の断面模様で形成されることを特徴とする請求項1に記載のLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記気密維持部材において、前記垂直部の上端隅部は、前記ガスボンベ結合部の先端に備えられた内側傾斜面と接触するように設置されること
を特徴とする請求項2に記載のLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記気密維持部材において、前記水平部は、前記気密強化部材の頂点と接するように設置されること
を特徴とする請求項2に記載のLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記気密維持部材はゴムからなること
を特徴とする請求項1に記載のLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記気密維持部材はゴム材質からなるO−リングであること
を特徴とする請求項1に記載のLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【請求項7】
前記気密強化部材は前記ガスボンベ結合部と同一の材質からなること
を特徴とする請求項1に記載のLPI燃料システム用ソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPI燃料システム用ソレノイドバルブに係り、より詳しくは、低速走行中の瞬間的な急加速作動によって燃料ポンプに気泡が流入することを防止するLPI燃料システム用ソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、LPI(LPI:Liquid Propane Injection)燃料システムとは、図1に示したとおり、ガスボンベ1に貯蔵されている液相の燃料を燃料ポンプ2でポンピングし、ポンピングされた燃料は圧力レギュレータなどを経てインジェクタ3から各気筒の燃焼室に噴射され、インジェクタ3から燃焼室に噴射されずに余った燃料はリターンバルブを経てガスボンベ1に再び戻るシステムであり、出力向上および排出ガスの減少などの効果を奏する(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
通常、LPI燃料システムを構成する燃料ポンプはガスボンベ内に設置されるが、その場合には燃料ポンプの保守および修理が容易ではないため、図1に示したとおり、ガスボンベ1の外部に燃料ポンプ2を設置する構成もある。
上記のようなガスボンベ1の外部に燃料ポンプ2が設置されたLPIシステムでは、ガスボンベ1に貯蔵された燃料は、ソレノイドバルブ10を通過した後に燃料ポンプ2に供給される。
【0004】
ソレノイドバルブ10は、図2および図3に示したとおり、工具取り付け部11を中心に、一側にはプランジャーハウジング12が形成され、他側にはガスボンベ結合部13が形成される。プランジャーハウジング12の中にはプランジャー14が挿入設置され、ガスボンベ結合部13の中には圧力バルブ15が設置される。圧力バルブ15の一端はプランジャー14と連結され、他端はガスボンベ結合部13を貫通して外部に突出した構成となる。
ここで、ガスボンベ結合部13の外周面にはねじ山が加工されており、これにより、ガスボンベ結合部13はガスボンベハウジング1aとねじ結合方式で螺合される。
【0005】
ガスボンベ結合部13がガスボンベハウジング1aに結合されると、ガスボンベ結合部13を貫通して突出した圧力バルブ15は、燃料吸入ポート21および燃料排出ポート22の間に位置される。
また、ソレノイドバルブ10は、プランジャーハウジング12内部にアーマチュア16を結合する。プランジャー14とアーマチュア16との間には、プランジャー14を弾力的に支持するスプリング17が設置される。アーマチュア16はプランジャーハウジング12の外側に巻かれたソレノイドコイル18を固定する役割も果たす。
【0006】
また、工具取り付け部11とガスボンベ結合部13が連結する部位にはガスボンベハウジング1aとの気密を維持するためのO−リング23が設置され、圧力バルブ15の先端部の外周面には燃料排出ポート22との気密を維持するためのO−リング24が設置される。
上記のとおり構成されたソレノイドバルブ10は、エンジン作動時にバッテリから電源の供給を受け、燃料吸入ポート21と燃料排出ポート22が連通されるように常に開放された状態を維持する。
【0007】
しかし、バッテリから電源の供給を受けて作動するソレノイドバルブ10は、ソレノイドコイル18の発熱温度が燃料の気化する温度より高いため、燃料が気化し、気泡25が発生する。このように発生した気泡25は図3に示したとおりプランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に存在する。
車両の低速走行時には、燃料の流速が遅いため、気泡25は、プランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に留まり続け、燃料ポンプ2に流入することはないが、一定時間の低速走行中に瞬間的な急加速操作を行なった場合には、燃料の流速が急激に速くなり、気泡25は、図4に示したとおり燃料排出ポート22を通過して燃料ポンプ2に流入する。
【0008】
燃料ポンプ2に気泡25が流入すると、燃料ポンプ2は瞬間的に燃料を送出する能力を失い、これにより、インジェクタ3に燃料を円滑に供給できなくなり、走行が不安定になるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−42700号公報
【特許文献2】特表2009−539022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ソレノイドコイルの発熱によって発生した気泡が車両の低速走行中の瞬間的な急加速によって燃料ポンプ側に流入する現象を無くし、これにより、燃料ポンプの燃料送出能力の低下を予防し、車両の走行状態を常に安定に維持できるLPI燃料システム用ソレノイドバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するためになされた本発明のLPI燃料システム用ソレノイドバルブは、ガスボンベ結合部と圧力バルブとの間に存在する隙間が外部に連結されることを遮断できるように前記圧力バルブの外周面のうちの前記ガスボンベ結合部との連結部位に結合されて設置される気密維持部材と、前記気密維持部材と対面する前記ガスボンベ結合部の先端に前記気密維持部材と接触するように一体に形成され、前記ガスボンベ結合部と前記気密維持部材との間の気密を強化させる気密強化部材とを含み、前記気密強化部材は、三角形の断面模様で形成されることを特徴とする。
【0012】
ここで、気密維持部材は垂直部と水平部が一体に繋がった「L」字形の断面模様で形成された構造であることが好ましい。
気密維持部材において、垂直部の上端隅部はガスボンベ結合部の先端に備えられた内側傾斜面と接触するように設置され、水平部は気密強化部材の頂点と接するように設置されることが好ましい。
気密維持部材はゴムからなることが好ましく、特にゴム材質からなるO−リングであることが好ましく、気密強化部材はガスボンベ結合部と同一の材質からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るLPI燃料システム用ソレノイドバルブは、ソレノイドコイルの発熱によって発生した気泡が、車両の低速走行中の瞬間的な急加速によって燃料ポンプ側に流入する現象を、気密維持部材および気密強化部材を設置することによって遮断することができるため、気泡の燃料ポンプ側への流入を防止し、燃料ポンプの燃料送出能力の低下を予防することができ、インジェクタに燃料を円滑に供給することができるので車両を常に安定した状態で走行させることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】LPI燃料システムの概略的な構成図である。
図2】LPI燃料システムに用いられる従来のソレノイドバルブの斜視図である。
図3】従来のソレノイドバルブがガスボンベハウジングに設置された状態の断面図である。
図4】ソレノイドコイルの発熱によって発生した気泡が低速走行中の瞬間的な急加速によって燃料排出通路を通して燃料ポンプに流入される状態を示すための図である。
図5】本発明により気密維持部材が備えられたソレノイドバルブの斜視図である。
図6】本発明によるソレノイドバルブがガスボンベハウジングに設置された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付した図面を参照にして詳細に説明する。
LPI燃料システム用ソレノイドバルブ10は、図5および図6に示したとおり、工具取り付け部11を中心に、一側にはプランジャーハウジング12が形成され、他側にはガスボンベ結合部13が形成される。プランジャーハウジング12の中にはプランジャー14が挿入設置され、ガスボンベ結合部13の中には圧力バルブ15が設置されており、圧力バルブ15の一端はプランジャー14と連結され、他端はガスボンベ結合部13を貫通して外部に突出するように設置される。
【0016】
ここで、ガスボンベ結合部13の外周面にはねじ山が加工されており、これにより、ガスボンベ結合部13はガスボンベハウジング1aとねじ方式で結合される。
ガスボンベ結合部13がガスボンベハウジング1aに結合されると、ガスボンベ結合部13を貫通して突出した圧力バルブ15は、燃料吸入ポート21および燃料排出ポート22の間に位置する構造となる。
【0017】
また、ソレノイドバルブ10は、プランジャーハウジング12内にアーマチュア16を結合し、プランジャー14とアーマチュア16との間にプランジャー14を弾力的に支持するスプリング17を備える。アーマチュア16は、プランジャーハウジング12の外側に巻かれたソレノイドコイル18を固定させる役割もする。
また、工具取り付け部11とガスボンベ結合部13が連結される部位にはガスボンベハウジング1aとの気密を維持するためのO−リング23が設置され、さらに、圧力バルブ15の先端部の外周面には燃料排出ポート22との気密を維持するためのO−リング24が設置される。
【0018】
一方、本発明によるソレノイドバルブ10は、ガスボンベ結合部13と圧力バルブ15との間に存在する隙間と外部とが連通されることを遮断するために、圧力バルブ15の外周面のうちのガスボンベ結合部13との連結部位に環装装着された気密維持部材30を含み、さらに、ガスボンベ結合部13の先端に、ガスボンベ結合部13と一体に形成され、気密維持部材30と対向し、気密維持部材30と接触して、ガスボンベ結合部13と気密維持部材30との間の気密を強化させる気密強化部材40とを含んで構成される。
ここで、気密維持部材30は、垂直部31と水平部32が一体に繋がった「L」字形の断面模様で形成された構造であり、気密強化部材40は、気密維持部材30に向って一つの頂点が突出した三角形の断面模様で形成された構造である。
【0019】
気密維持部材30において、垂直部31の上端隅部の一方は、圧力バルブの外周面に接し、他方は、ガスボンベ結合部13の先端に備えられた内側傾斜面13aと接触し、水平部32は気密強化部材40の頂点と接して設置される。
上記のとおり気密維持部材30が設置されると、ガスボンベ結合部13の内側傾斜面13aと圧力バルブ15の外周面および垂直部31の上面によって気密が維持された上部チャンバー51が形成され、上部チャンバー51の下方にはガスボンベ結合部13の内側傾斜面13aと垂直部31の外周面および水平部32の上面によって気密が維持された下部チャンバー52が形成された構造となる。
【0020】
上部チャンバー51と下部チャンバー52とによって二重気密構造を形成することにより、ガスボンベ結合部13と圧力バルブ15との間に存在する隙間は外部との連通が確実に遮断された構造となる。
本発明により、気密維持部材30はゴムからなることが好ましく、特にゴム材質からなるO−リング(O−ring)であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、気密強化部材40はガスボンベ結合部13と同一の材質からなることが好ましい。一例として、強度を備えたスチール(steel)またはプラスチック(plastic)からなることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
上記のように構成されたソレノイドバルブ10は、エンジン作動時にバッテリから電源の供給を受け、燃料吸入ポート21と燃料排出ポート22が連通するように常に開放された状態を維持する。
すなわち、ソレノイドバルブ10のソレノイドコイル18に、バッテリから電源が供給されると、アーマチュア16に磁力が発生し、スプリング17の弾性力に抗してプランジャー14を引き寄せるため、プランジャー14に固定された圧力バルブ15もこれに随行し、燃料吸入ポート21と燃料排出ポート22が連通するようになる。
【0022】
バッテリから電源の供給を受けて作動するソレノイドバルブ10は、ソレノイドコイル18の発熱温度が燃料の蒸発温度より高いため、燃料が気化して気泡25が発生する。発生した気泡25は、図6に示したとおりプランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に存在することになる。
車両の低速走行時には、燃料の流速が遅いため、気泡25は、プランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に存在し続けることができ、燃料ポンプ2に流入することはないが、一定時間の低速走行中の瞬間的な急加速を行なった場合には、燃料の流速が急激に速くなるため、気泡25は、プランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に存在し続けることができなくなり、隙間を出て、燃料排出ポート22側に移動する。
【0023】
しかし、本発明の実施形態は、気密維持部材30および気密強化部材40によってプランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間が外部と連結されることを完全に遮断する構造であるため、プランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に存在する気泡25は、燃料排出ポート22側に移動できず、引続きプランジャーハウジング12とプランジャー14との間の隙間に存在することになる。
【0024】
その結果、本発明の実施形態は、車両の低速走行中の瞬間的な急加速作動においても、燃料ポンプ2に気泡25が流入することを根本的に防止するため、燃料ポンプ2の燃料送出能力の低下を予防することができ、これにより、インジェクタ3に燃料を円滑に供給することができるので車両を常に安定した状態で走行できるようになる。
【符号の説明】
【0025】
1 ガスボンベ
1a ガスボンベハウジング
2 燃料ポンプ
3 インジェクタ
10 ソレノイドバルブ
11 工具取り付け部
12 プランジャーハウジング
13 ガスボンベ結合部
13a 内側傾斜面
14 プランジャー
15 圧力バルブ
16 アーマチュア
17 スプリング
18 ソレノイドコイル
21 燃料吸入ポート
22 燃料排出ポート
23、24 O−リング
25 気泡
30 気密維持部材
31 垂直部
32 水平部
40 気密強化部材
51 上部チャンバー
52 下部チャンバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6