(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨーク板と、該ヨーク板の板面上に配置された外周磁石と、前記ヨーク板の板面上の前記外周磁石の内部に配置され、前記外周磁石と極性が異なる内部磁石と、を備え、
前記外周磁石および前記内部磁石によって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成する磁石ユニットであって、
前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第1の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第2の磁極を有する第1の磁石と、
前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記ヨーク板の板面と対向する面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第3の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第2の磁極と逆の極性を有する第4の磁極を有する第2の磁石と、
前記第1の磁石と前記第2の磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石の第2の磁極と対向する部分に、前記第2の磁極と同じ極性を有する第5の磁極を有し、前記第2の磁石の第3の磁極と対向する部分に第5の磁極と逆の極性を有する第6の磁極を有し、前記第5の磁極と前記第6の磁極と結ぶ線の向きが前記ヨーク板の板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第3の磁石と、
を備えた第1の磁石エレメントと、
前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第7の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第7の磁極と逆の極性を有する第8の磁極を有する第4の磁石と、
前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第7の磁極と逆の極性を有する第9の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第8の磁極と逆の極性を有する第10の磁極を有する第5の磁石と、
前記第4の磁石と前記第5の磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第4の磁石の第7の磁極と対向する部分に、前記第7の磁極と逆の極性を有する第11の磁極を有し、前記第5の磁石の第10の磁極と対向する部分に前記第11の磁極と逆の極性を有する第12の磁極を有し、前記第11の磁極と前記第12の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第6の磁石と、
を備えた第2の磁石エレメントとから構成され、前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとを、無終端状の形状に沿って交互に配置したことを特徴とする磁石ユニット。
前記第3の磁石の第5の磁極と第6の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面水平面から斜め方向に10度以上70度以下傾いた線であり、前記斜め方向はヨーク板からターゲットに向かう方向であることを特徴とする請求項1記載の磁石ユニット。
前記第6の磁石の第11の磁極と第12の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面水平面から斜め方向に10度以上70度以下傾いた線であり、前記斜め方向はターゲットからヨーク板に向かう方向であることを特徴とする請求項1記載の磁石ユニット。
前記第3の磁石の第5の磁極と第6の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第1の磁石の第2の磁極と前記第2の磁石の第4の磁極とを結ぶ線から時計回り方向に60度以内の角度を有するものであることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
前記第6磁石の第11の磁極と第12の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第4の磁石の第8の磁極と前記第5の磁石の第10の磁極とを結ぶ線から反時計回り方向に60度以内の角度を有するものであることを特徴とする請求項3記載の磁石ユニット。
前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとは、所定の間隔を隔てて、交互に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁石ユニット。
前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとは、環状線に沿って交互に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の磁石ユニット。
矩形のターゲットを支持する矩形のカソード電極の背面側に、強磁性板材からなる矩形のヨーク板と、該ヨーク板上に配置された外周磁石と、前記ヨーク板上の前記外周磁石の内部に配置され、前記外周磁石と極性が異なる内部磁石と、を備え、
前記外周磁石および前記内部磁石によって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成する磁石ユニットであって、
前記矩形のヨーク板の周に沿って設けられた複数の第1の磁石群磁石からなる第1の磁石群と、前記矩形のヨーク板の中心部分に設けられた複数の第2の磁石群磁石からなる第2の磁石群と、前記第1の磁石群と前記第2の磁石群と間であって、前記第2の磁石群を取り囲むように設けられた複数の第3の磁石群磁石からなる第3の磁石群と、から構成され、
第1の磁石群磁石は、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第13の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第13の磁極と逆の極性を有する第14の磁極を有するものであり、
前記第2の磁石群磁石は、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記ヨーク板の板面と対向する面に前記第13の磁極と逆の極性を有する第15の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第14の磁極と逆の極性を有する第16の磁極を有するものであり、
前記第3の磁石群磁石は、
前記第1の磁石群磁石と前記第2の磁石群磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石群磁石の第14の磁極と対向する部分に、前記第14の磁石と同じ極性を有する第17の磁極を有し、前記第2の磁石群磁石の第15の磁極と対向する部分に前記第17の磁極と逆の極性を有する第18の磁極を有し、前記第17の磁極と前記第18の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第7の磁石と、
前記第1の磁石群磁石と前記第2の磁石群磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石群磁石の第13の磁極と対向する部分に、前記第13の磁石と逆の極性を有する第19の磁極を有し、前記第2の磁石郡磁石の第16の磁極と対向する部分に前記第19の磁極と逆の極性を有する第20の磁極を有し、前記第19の磁極と前記第20の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第8の磁石と、を有するものであることを特徴とする磁石ユニット。
矩形のヨーク板の角部に位置する前記第7の磁石の第17の磁極と第18の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第1の磁石群磁石の第14の磁極と前記第2の磁石郡磁石の第16の磁極とを結ぶ線から時計回り方向又は反時計周り方向に60度以内の角度を有するものであり、
矩形のヨーク板の角部に位置する前記第8の磁石の第19の磁極と第20の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第1の磁石群磁石の第14の磁極と前記第2の磁石郡磁石の第16の磁極とを結ぶ線から時計回り方向又は反時計周り方向に60度以内の角度を有するものであることを特徴とする請求項8又は請求項9記載の磁石ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び特許文献2に提案されている方法は、ターゲット後方に配置されているカソードマグネットの磁気回路形状を波状にし、ターゲット上へのスパッタ粒子の再付着を防止、浸食の集中を防ぐとともに、ターゲット利用効率を高めるものである。
【0012】
しかし、特許文献1(
図25)のように第一磁気装置131内に第二磁気装置133を配置した場合、S極とN極が近接してしまう。すなわち、カソードマグネット直上で磁力線が閉じてしまい、ターゲット表面に磁力線が現われなくなってしまう。その結果、ターゲット上に磁場が現れなくなってしまう。第二磁気装置133のS極・N極と第一磁気装置131のS極・N極の距離を離せば、カソードマグネット直上で磁力線が閉じてしまうことはなく、ターゲット上に磁場が現われる。しかし、この方法では、第一磁気装置131が大きくなってしまい、カソード大型化の問題が発生する。
一方、特許文献2のように(
図26)、蛇行する内側磁石220の周りを外側磁石221が距離をもって囲むような構造では、内側磁石220の湾曲部にインターロック(連動)させる外側磁石221の幅に制限が生まれる。即ち、内側磁石220の湾曲部の幅が大きくなると、その分、外側磁石221の幅が狭くなることになる。この結果、湾曲部分の磁場が弱まり、磁気トラックの蛇行幅が狭くなってしまう。また、蛇行幅を確保するために領域Aを磁石で埋めると蛇行幅は大きくできるものの磁場強度が局所的に高くなり、エロージョンも局所的に早く進んでしまうことで、蛇行させる意味がなくなってしまうという問題点がある。
一方、特許文献3では(
図27)、水平磁石311が、外側磁石395と内側磁石394に挟まれるようにターゲット392面に水平に配置されているため、外側磁石395と内側磁石394の磁束密度は同じ大きさとなる。そのため、磁気回路形状を波状にできないという問題点がある。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決することを目的とし、波状の磁気トラックを十分な磁場強度でターゲット上に出すことができる磁石ユニット及びマグネトロンスパッタリング装置
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨーク板と、該ヨーク板の板面上に配置された外周磁石と、前記ヨーク板の板面上の前記外周磁石の内部に配置され、前記外周磁石と極性が異なる内部磁石と、を備え、前記外周磁石および前記内部磁石によって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成する磁石ユニットであって、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第1の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第2の磁極を有する第1の磁石と、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記ヨーク板の板面と対向する面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第3の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第2の磁極と逆の極性を有する第4の磁極を有する第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石の第2の磁極と対向する部分に、前記第2の磁極と
同じ極性を有する第5の磁極を有し、前記第2の磁石の第3の磁極と対向する部分に第5の磁極と逆の極性を有する第6の磁極を有し、前記第5の磁極と前記第6の磁極と結ぶ線の向きが前記ヨーク板の板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第3の磁石と、を備えた第1の磁石エレメントと、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第7の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第7の磁極と逆の極性を有する第8の磁極を有する第4の磁石と、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第7の磁極と逆の極性を有する第9の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第8の磁極と逆の極性を有する第10の磁極を有する第5の磁石と、前記第4の磁石と前記第5の磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第4の磁石の第7の磁極と対向する部分に、前記第7の磁極と
逆の極性を有する第11の磁極を有し、前記第5の磁石の第10の磁極と対向する部分に前記第11の磁極と逆の極性を有する第12の磁極を有し、前記第10の磁極と前記第11の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第6の磁石と、を備えた第2の磁石エレメントとから構成され、前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとを、無終端状の形状に沿って交互に配置したことを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第3の磁石の第5の磁極と第6の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面水平面から斜め方向に10度以上70度以下傾いた線であり、前記斜め方向はヨーク板からターゲットに向かう方向であることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第6の磁石の第11の磁極と第12の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面水平面から斜め方向に10度以上70度以下傾いた線であり、前記斜め方向はターゲットからヨーク板に向かう方向であることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第3の磁石の第5の磁極と第6の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第1の磁石の第2の磁極と前記第2の磁石の第4の磁極とを結ぶ線から時計回り方向に60度以内の角度を有するものであることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記第6磁石の第11の磁極と第12の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第4の磁石の第8の磁極と前記第5の磁石の第10の磁極とを結ぶ線から反時計回り方向に60度以内の角度を有するものであることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとは、所定の間隔を隔てて、交互に配置されていることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとは、環状線に沿って交互に配置されていることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
上記目的を達成するために、請求項8記載の発明は、矩形のターゲットを支持する矩形のカソード電極の背面側に、強磁性板材からなる矩形のヨーク板と、該ヨーク板上に配置された外周磁石と、前記ヨーク板上の前記外周磁石の内部に配置され、前記外周磁石と極性が異なる内部磁石と、を備え、前記外周磁石および前記内部磁石によって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成する磁石ユニットであって、前記矩形のヨーク板の周に沿って設けられた複数の第1の磁石群磁石からなる第1の磁石群と、前記矩形のヨーク板の中心部分に設けられた複数の第2の磁石群磁石からなる第2の磁石群と、前記第1の磁石群と前記第2の磁石群と間であって、前記第2の磁石群を取り囲むように設けられた複数の第3の磁石群磁石からなる第3の磁石群と、から構成され、第1の磁石群磁石は、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第13の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第13の磁極と逆の極性を有する第14の磁極を有するものであり、前記第2の磁石群磁石は、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記ヨーク板の板面と対向する面に前記第13の磁極と逆の極性を有する第15の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第14の磁極と逆の極性を有する第16の磁極を有するものであり、前記第3の磁石群磁石は、前記第1の磁石群磁石と前記第2の磁石群磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石群磁石の第14の磁極と対向する部分に、前記第14の磁石と同じ極性を有する第17の磁極を有し、前記第2の磁石群磁石の第15の磁極と対向する部分に前記第17の磁極と逆の極性を有する第18の磁極を有し、前記第17の磁極と前記第18の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第7の磁石と、前記第1の磁石群磁石と前記第2の磁石群磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石群磁石の第13の磁極と対向する部分に、前記第13の磁石と逆の極性を有する第19の磁極を有し、前記第2の磁石郡磁石の第16の磁極と対向する部分に前記第19の磁極と逆の極性を有する第20の磁極を有し、前記第19の磁極と前記第20の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第8の磁石と、を有するものであることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記第3の磁石群磁石は、前記1の磁石群磁石又は第2の磁石群磁石のいずれかに向かう磁力線を有するものであることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
さらに、請求項10記載の発明は、請求項8又は請求項9記載の発明において、矩形のヨーク板の角部に位置する前記第7の磁石の第17の磁極と第18の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第1の磁石群磁石の第14の磁極と前記第2の磁石郡磁石の第16の磁極とを結ぶ線から時計回り方向又は反時計周り方向に60度以内の角度を有するものであり、矩形のヨーク板の角部に位置する前記第8の磁石の第19の磁極と第20の磁極とを結ぶ線は、前記ヨーク板の板面平行面に沿って、前記第1の磁石群磁石の第14の磁極と前記第2の磁石郡磁石の第16の磁極とを結ぶ線から時計回り方向又は反時計周り方向に60度以内の角度を有するものであることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
上記目的を達成するために、請求項11記載の発明は、処理室に、処理対象としての基板と、前記基板に対向するように配され、ターゲットを支持し放電用電力が供給されるカソード電極と、前記ターゲットの前方に前記基板を搬送させる搬送機構と、を備え、前記カソード電極の背面側に、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の磁石ユニットが配されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置としたものである。
上記目的を達成するために、請求項12記載の発明は、ターゲットを支持するカソード電極の背面側に配置された磁石ユニットであって、 前記カソード電極の背面側に配置され、強磁性板材からなる第1のヨーク板と、前記第1のヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記第1のヨーク板の板面と対向する面に第1の磁極を有し、前記第1のヨーク板の板面と対向しない面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第2の磁極を有する第1の磁石と、前記第1のヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記第1のヨーク板の板面と対向する面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第3の磁極を有し、前記第1のヨーク板の板面と対向しない面に前記第2の磁極と逆の極性を有する第4の磁極を有する第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第1の磁石の第2の磁極と対向する部分に、前記第2の磁極と同じ極性を有する第5の磁極を有し、前記第2の磁石の第3の磁極と対向する部分に第5の磁極と逆の極性を有する第6の磁極を有し、前記第5の磁極と前記第6の磁極と結ぶ線の向きが前記第1のヨーク板の板面と平行な面から斜め方向に向くように着磁された第3の磁石と、
を備えた第1の磁石エレメントと、前記カソード電極の背面側に配置され、強磁性板材からなる第2のヨーク板と、前記第2のヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記第2のヨーク板の板面と対向する面に第7の磁極を有し、前記第2のヨーク板の板面と対向しない面に前記第7の磁極と逆の極性を有する第8の磁極を有する第4の磁石と、前記第2のヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、前記第2のヨーク板の板面と対向する面に第7の磁極と逆の極性を有する第9の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第8の磁極と逆の極性を有する第10の磁極を有する第5の磁石と、前記第4の磁石と前記第5の磁石に挟まれるように直立して配置され、前記第4の磁石の第7の磁極と対向する部分に、前記第7の磁極と逆の極性を有する第11の磁極を有し、前記第5の磁石の第10の磁極と対向する部分に前記第11の磁極と逆の極性を有する第12の磁極を有し、前記第11の磁極と前記第12の磁極とを結ぶ線の向きが前記第2のヨークの板面と平行な面から斜め方向に向くように着磁された第6の磁石と、 を備えた第2の磁石エレメントとから構成され、前記第1の磁石エレメントと前記第2の磁石エレメントとは、第1の磁石と前記第4の磁石と、前記第2の磁石と前記第5の磁石と、前記第3の磁石と前記第6の磁石と、がそれぞれ隣になるように配置されており、前記第1のヨーク板と前記第2のヨーク板とは、前記第1のヨーク板および前記第2のヨーク板の一端が、前記ターゲットの端部に向かい、前記第1のヨーク板および前記第2のヨーク板の他端が、前記ターゲットの中央部に向かうように、放射状に交互に配置されることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
上記目的を達成するために、請求項13記載の発明は、矩形のターゲットを支持する矩形のカソード電極の背面側に配置された磁石ユニットであって、前記カソード電極の背面側に配置され、強磁性板材からなる矩形のヨーク板と、前記矩形のヨーク板の周に沿って設けられた第1の磁石群と、前記矩形のヨーク板の中心部分に設けられた第2の磁石群と、前記第1の磁石群 と前記第2の磁石群との間であって、前記第2の磁石群を取り囲むように設けられた第3の磁石群と、から構成され、前記第1の磁石群は、前記ヨーク板の板面の両端でかつ前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に第1の磁極を有し、前記第1のヨーク板の板面と対向しない面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第2の磁極を有する第1の磁石で構成され、前記第2の磁石群は、前記ヨーク板の板面の中央でかつ前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記ヨーク板の板面と対向する面に前記第1の磁極と逆の極性を有する第3の磁極を有し、前記ヨーク板の板面と対向しない面に前記第2の磁極と逆の極性を有する第4の磁極を有する第2の磁石で構成され、前記第3の磁石群は、前記第1の磁石と前記第2の磁石に挟まれるように、前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記第1の磁石の第2の磁極と対向する部分に、前記第2の磁極と同じ極性を有する第5の磁極を有し、前記第2の磁石の第3の磁極と対向する部分に前記第5の磁極の極性と逆の極性を有する第6の磁極を有し、前記第5の磁極と前記第6の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面と平行な面から斜め方向に向くように着磁された第3の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石に挟まれるように前記ヨーク板の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、前記第1の磁石の第1の磁極と対向する部分に、前記第1の磁極と逆の極性を有する第7の磁極を有し、前記第2の磁石の第4の磁極と対向する部分に前記第7の磁極の極性と逆の極性を有する第8の磁極を有し、前記第7の磁極と前記第8の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面と水平な面から斜め方向に向くように着磁された第4の磁石と、で構成され、前記第3の磁石と前記第4の磁石とは、前記第2の磁石群を取り囲む線に沿って、交互に設けられていることを特徴とする磁石ユニットとしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1の発明によれば、第1の磁石エレメントと第2の磁石エレメントとを無終端状の形状に沿って交互に配置したことにより、蛇行した無終端状の磁気トラックをターゲット表面に供給できる。
本願の請求項8記載の発明によれば、前記矩形のヨーク板の周に沿って設けられた第1の磁石群と、矩形のヨーク板の中心部分に設けられた第2の磁石群と、第1の磁石群と前記第2の磁石群と間に、第2の磁石群を取り囲むように設けられた第3の磁石群とにより、蛇行した磁気トラックを矩形上のターゲット表面に供給できる。
本願の請求項11記載の発明によれば、蛇行した無終端状の磁気トラックをターゲット表面に形成しながら、基板を処理することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
まず、
図1を参照して、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置について説明する。この本実施形態のマグネトロンスパッタリング装置1(以下、「スパッタリング装置」という。)は、後述する磁石ユニット62を搭載する装置として共通する。
図1は、本発明に係るスパッタリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2は、基板を回転させながら円形カソードにより成膜を行う機構を備えたスパッタ装置の一例を示す概略図である。
図3は、基板を通過させる機構を備えたスパッタ装置の一例を示す概略図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のスパッタリング装置1は、真空排気可能な処理室を区画する真空容器2を備えている。真空容器2の排気口3には、不図示のコンダクタンスバルブ等を介して排気ポンプ等の排気装置が接続されている。また、真空容器2には、処理ガス(プロセスガス)の導入手段として流量制御器などを備えたガス導入系4が接続され、このガス導入系4から処理ガスが所定の流量で供給する。処理ガスとしては、アルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N
2)等を含む単体または混合ガスを用いることができる。真空容器2内には、基板を支持するステージ5と、基板に対向するように配され、ターゲット6を前面側に支持する不図示のカソード電極と、を備えている。
【0020】
図2に示すカソード電極61の前面側に支持されるターゲット6の材料としては、例えば、タンタル(Ta)、銅(Cu)、チタン(Ti)などの単一組成のものや、GeSbTeやNiFe、CoPt、FeCoのような2種類以上の組成からなる複合組成のものを用いることができる。そして、ターゲット6は、TaやCuは非磁性材料であっても、NiFe、CoPt、FeCo等の磁性材料であっても構わない。本実施形態のターゲット6は、例えば、円板形状の材料、または、矩形(長方形)の板材であって、カソード電極の本体前面(下面)に接合されている。
【0021】
カソード電極61には、電力制御が可能な直流電源、又は、整合器を通して電力制御が可能な高周波電源に接続されている(いずれも図示せず)。カソード電極61の背面側には、磁石ユニット62が配置され、この磁石ユニット62によって、プラズマを高密度で形成することができる。即ち、本実施形態のスパッタリング装置1は、真空容器2内の処理室に処理ガスを導入し、電力源によりターゲット6表面に電界を発生させ、磁石ユニット62によってターゲット6表面に磁場を形成する。これにより、スパッタリング装置1は、ターゲット6前面にプラズマを発生させ、基板7上にターゲット6物質の薄膜を成膜する。もちろん、パルス放電等でプラズマを発生させてもよい。なお、磁石ユニット62の詳細構造については、後述する。
【0022】
図2では、複数のカソード電極61が、ステージ5と対面関係に設置されている例である。本例では、カソード電極61は複数配置されている。かつ、カソード電極61は、ステージ5表面(または、基板7表面)に対して斜め方向に配置されている。もちろんカソード電極61の数は単数であってもよい。また、カソード電極61の設置方向もステージ5表面(または、基板7表面)に対して平行であってもよい。さらには、ステージ5の中心軸とカソード電極の中心軸が一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0023】
このスパッタリング装置1は、スパッタリングと基板回転を同時に行うことが可能である。そして、ステージ5には、ヒータ等の不図示の加熱機構を内蔵していてもよいし、不図示の冷凍機等の冷却機構を内蔵してもよい。
【0024】
基板7には、例えば、半導体ウエハが挙げられ、基板のみの状態もしくはトレイに搭載された状態で、ステージ5に固定される。
【0025】
また、
図3に示すように、基板7を支持する円形のステージ5をその載置面を接線とする円上に沿って回転させるステージ回転機構によって構成される基板搬送機構9を配置してもよい。この構成例では、ステージ5は矩形ターゲット6の長手平行方向に沿って延出された回転軸9aをもっており、この回転軸9aの軸回りステージ5を回転させることで、ターゲット6の前方を基板7が通過する。カソード電極の背面側には、磁石ユニット62が配置され、この磁石ユニット62によって、プラズマを高密度で形成することができる。なお、磁石ユニット62の詳細構造については、後述する。
【0026】
本実施形態の磁石ユニットの第1の特徴点は、ヨーク板(磁性体板)の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向する面に第1の磁極(N極又はS極)を有し、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向しない面(ターゲット側)に第1の磁極と反発する第2の磁極(N極又はS極)を有する第1の磁石と、ヨーク板(磁性体板)の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向する面に第1の磁極(N極又はS極)と反発する第3の磁極(N極又はS極)を有し、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向しない面(ターゲット側)に第2の磁極(N極又はS極)と反発する第4の磁極(N極又はS極)を有する第2の磁石と、第1の磁石と第2の磁石に挟まれるように直立して配置され、第1の磁石の第2の磁極(N極又はS極)と対向する部分に第5の磁極(N極又はS極)を有し、第2の磁石の第3の磁極(N極又はS極)と対向する部分に第5の磁極(N極又はS極)と反発する第6の磁極(N極又はS極)を有し、第5の磁極(N極又はS極)と第6の磁極(N極又はS極)と結ぶ線の向きがヨーク板(磁性体板)の板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第3の磁石と、で第1の磁石エレメント40を構成した点にある。第1の磁石エレメント40の詳細については、後述する。
【0027】
本実施形態の磁石ユニットの第2の特徴点は、ヨーク板(磁性体板)の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向する面に第7の磁極(N極又はS極)を有し、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向しない面(ターゲット側)に第7の磁極(N極又はS極)と反発する第8の磁極(N極又はS極)を有する第4の磁石と、ヨーク板(磁性体板)の板面から垂直方向に沿って直立して設けられ、かつ、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向する面に第7の磁極(N極又はS極)と反発する第9の磁極(N極又はS極)を有し、ヨーク板(磁性体板)の板面と対向しない面(ターゲット側)に第8の磁極(N極又はS極)と反発する第10の磁極(N極又はS極)を有する第5の磁石と、第4の磁石と第5の磁石に挟まれるように直立して配置され、第4の磁石の第7の磁極(N極又はS極)と対向する部分に第11の磁極(N極又はS極)を有し、第5の磁石の第10の磁極(N極又はS極)と対向する部分に第11の磁極(N極又はS極)と反発する第12の磁極(N極又はS極)を有し、第10の磁極(N極又はS極)と第11の磁極(N極又はS極)とを結ぶ線の向きがヨーク(磁性体板)の板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第6の磁石と、で第2の磁石エレメント40を構成した点にある。第2の磁石エレメント41の詳細については、後述する。
【0028】
本実施形態の磁石ユニットの第3の特徴点は、第1の磁石エレメントと第2の磁石エレメントとを無終端状の形状に沿って交互に配置した点にある。第1の磁石エレメントと第2の磁石エレメントとを交互に配置して構成される第1の磁石ユニット70(
図11)、第2の磁石ユニット80(
図12)、第3の磁石ユニット90(
図13)、第4の磁石ユニット100(
図14)の詳細については、後述する。
【0029】
本発明を適用できる
図4(a)(b)を参照して、第1の磁石エレメント40について説明する。
図4(a)は第1の磁石エレメント40の断面図であり、
図4(b)は第1の磁石エレメント40の平面図である。第1の磁石エレメント40は、
図4(a)に示すように、磁性体板(ヨーク板)410上の両端に第1の磁石411−1と第2の磁石412−1が接着剤によって固定され、第1の磁石411−1と第2の磁石412―1の間に第3の磁石413−1が接着材により固定されている構造である。接着にはエポキシ系接着剤が用いられる。
【0030】
次に、第1の磁石エレメント40の磁極について説明する。
図4(a)に示すように、第1の磁石411−1と第2の磁石412―1は、磁性体板410面法線方向に対して平行に磁極を持っていて、かつ、磁極の向きが反対の関係になっている。更に詳しくは、本実施形態では、第1の磁石411―1は、ヨーク板(磁性体板)410の板面から垂直方向に沿って直立して設けられている。第1の磁石411―1は、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向する面に第1の磁極(S極)を有し、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向しない面(ターゲット側)に第1の磁極(S極)と反発する第2の磁極(N極)を有する。第2の磁石412―1は、ヨーク板(磁性体板)410の板面から垂直方向に沿って直立して設けられている。第2の磁石412―1は、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向する面に第1の磁極(S極)と反発する第3の磁極(N極)を有し、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向しない面(ターゲット側)に第2の磁極(N極)と反発する第4の磁極(S極)を有する。これにより、第1の磁石411−1はターゲット6に対向する面に第2の磁極(N極)が現われ、第2の磁石412−1では第4の磁極(S極)が現われている。第3の磁石413―1は、第1の磁石411―1と第2の磁石412―1に挟まれるように直立して配置されている。第3の磁石413―1は、第1の磁石411―1の第2の磁極(N極)と対向する部分に第5の磁極(N極)を有し、第2の磁石412−1の第3の磁極(N極)と対向する部分に第5の磁極(N極)と反発する第6の磁極(S極)を有する。また、第3の磁石413―1は、第5の磁極(N極)と第6の磁極(S極)と結ぶ線の向きがヨーク板(磁性体板)410の板面水平面から斜め方向に向くように着磁されている。即ち、第3の磁石413-1の第5の磁極(N極)と第6の磁極(S極)と結ぶ線は、第2の磁石412-1の第3の磁極(N極)から第1の磁石411の第2の磁極(N極)に向かう方向、即ち、磁性体板410面に平行な方向からターゲット6に向かう方向にθの角度を有する。また、第3の磁石413-1は、第2の磁石412−1の第4の磁極(S極)と第1の磁石411−1の第2の磁極(N極)とを結ぶ線、即ち、
図4(b)に示す辺414または、辺415の垂線である仮想線416から時計周り方向にγの角度で磁極を持っている。換言すれば、第3の磁石413-1の第5の磁極(N極)と第6の磁極(S極)とを結ぶ線は、ヨーク板(磁性体板)410の板面平行面に沿って、第1の磁石411−1の第2の磁極(N極)と第2の磁石412−1の第4の磁極(S極)とを結ぶ線から時計回り方向に60度以内の角度を有する。これにより、第3の磁石413-1の第5の磁極(N極))の極性は、第1の磁石411−1の第2の磁極(N極)の極性と反発するような極性を持つ。
【0031】
次に、第2の磁石エレメント41の磁極について、
図5(a)(b)を用いて説明する。
図5(a)は第2の磁石エレメント40の断面図であり、
図5(b)は第2の磁石エレメント40の平面図である。第2の磁石エレメント41は、
図5(a)に示すように、磁性体板(ヨーク板)410上の両端に第4の磁石411−2と第5の磁石412-2が接着剤によって固定され、第4の磁石411−2と第5の磁石412―2の間に第6の磁石413−2が接着材により固定されている構造である。接着にはエポキシ系接着剤が用いられる。
【0032】
次に、第2の磁石エレメント41の磁極について説明する。
図5(a)に示すように、第4の磁石411−1と第5の磁石412―2は、磁性体板410面法線方向に対して平行に磁極を持っていて、かつ、磁極の向きが反対の関係になっている。更に詳しくは、本実施形態では、第4の磁石411―2は、ヨーク板(磁性体板)410の板面から垂直方向に沿って直立して設けられている。第4の磁石411―2は、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向する面に第7の磁極(S極)を有し、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向しない面(ターゲット側)に第7の磁極(S極)と反発する第8の磁極(N極)を有する。第5の磁石412―2は、ヨーク板(磁性体板)410の板面から垂直方向に沿って直立して設けられている。第5の磁石412―2は、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向する面に第7の磁極(S極)と反発する第9の磁極(N極)を有し、ヨーク板(磁性体板)410の板面と対向しない面(ターゲット側)に第8の磁極(N極)と反発する第10の磁極(S極)を有する。これにより、第4の磁石411−2はターゲットに対向する面に第8の磁極(N極)が現われ、第5の磁石412−2では第10の磁極(S極)が現われている。一方、第6の磁石413−2は、第4の磁石411―2と第5の磁石412―2に挟まれるように直立して配置されている。第6の磁石413−2は、第4の磁石411―2の第7の磁極(S極)と対向する部分に第11の磁極(N極)を有し、第5の磁石412―2の第10の磁極(S極)と対向する部分に第11の磁極(N極)と反発する第12の磁極(S極)を有する。第6の磁石413−2は、第10の磁極(S極)と第11の磁極(N極)とを結ぶ線の向きがヨーク(磁性体板)410の板面水平面から斜め方向に向くように着磁されている。これにより、第6の磁石413-2の第10の磁極(S極)と第11の磁極(N極)とを結ぶ線は、第5の磁石412−2の第10の磁極(S極)から第4の磁石411−2の第7の磁極(S極)に向かう方向、即ち、磁性体板410面に平行な方向からヨーク板(410)裏面側に向かう方向にθの角度を有する。また、第6の磁石413-2は、第5の磁石412−2の第10の磁極(S極)と第4の磁石411−2の第8の磁極(N極)とを結ぶ線、即ち、
図5(b)に示す辺414または、辺415の垂線である仮想線416から反時計周り方向にγの角度で磁極を持っている。換言すれば、第6磁石413-2の第11の磁極(S極)と第12の磁極(N極)とを結ぶ線は、ヨーク板(磁性体板)410の板面平行面に沿って、第4の磁石411−2の第8の磁極(N極)と第5の磁石412−2の第10の磁極(S極)とを結ぶ線から反時計回り方向に60度以内の角度を有する。これにより、第6の磁石413-2の第12の磁極(S極)の極性は、第5の磁石412−2の第10の磁極(S極)の極性と、反発するような極性を持つ。
【0033】
次に、
図4を用いて、第1の磁石エレメント40による磁力線形状を説明する。上述の通り、第1の磁石エレメント40では、ターゲット6に対向する面に対して、第2の磁石412−1はS極、第1の磁石411−1はN極が現われている。そして第3の磁石413-1が持つ磁極のうち、磁性体板410面法線に平行な第1の成分は、第2の磁石412−1のN極から第1の磁石411−1のN極に向かっている。一方、第3の磁石413-1が持つ極のうち、磁性体板410面法線に垂直な第2の成分は、第2の磁石412−1のS極から第1の磁石411−1のN極に向いている。これにより、本例では第1の磁石エレメント40のうち、ターゲット6面に対向する第1の磁石のN極からの磁力線(磁束密度)が増える。このため、第1の磁石411―1のN極から第2の磁石412―1のS極に向かう磁力線のうちターゲット6表面の法線方向に平行な成分がゼロとなる領域は、第2の磁石412−1側に寄ることになる。
【0034】
次に、
図5を用いて、第2の磁石エレメント41による磁力線形状を説明する。第2の磁石エレメント41ではターゲットに対向する面に対して、第5の磁石412−2はS極、第4の磁石411−2はN極が現われている点は、第1の磁石エレメントの第1の磁石411―1と第2の磁石412―1と同じである。そして第6の磁石413―2が持つ磁極のうち、磁性体板410面法線に平行な第1の成分は、第5の磁石412−2のS極から第4の磁石411−2のS極に向かっている。一方、第6の磁石413―2が持つ極のうち、磁性体板410面法線に垂直な第2の成分は、第5の磁石412−2のS極から第4の磁石411−2のN極に向いている。これにより、本例では第2の磁石エレメント41のうち、ターゲット6面に対向する第5の磁石412−2のS極に入る磁力線が増える。このため、第4の磁石411−2のN極から第5の磁石412−2のS極に向かう磁力線のうちターゲット6表面の法線方向に平行な成分がゼロとなる領域は、第4の磁石411−2側に寄ることになる。
【0035】
なお、
図4、
図5に示されたθとγの向きと大きさは一例であって、「−70°≦θ<10°または、10°<θ≦70°」、かつ、「−60°≦γ≦60°」が望ましい。この点を
図6(a)(b)を用いて説明する。もしもθの絶対値が70°を超えると、第3の磁石413−1の第5の磁極(N極)の極性が磁性体板面410に対して垂直方向に近づくため(
図6(a))、異極(
図6(a)の場合、第2の磁石412−1のS極と第3の磁石431―1のN極)同士が近接し、磁石412、磁石413−1直上で磁力線が閉じてしまう結果、ターゲット上への磁力線が少なくなってしまうからである。同様にγの絶対値が60°を超えてしまうと、第3の磁石413−1の第6の磁極(S極)と第1の磁石411−1の第2の磁極(N極)、第3の磁石413−1の第5の磁極(N極)と第2の磁石412−1第4の磁極(S極)が近接する関係になり(
図6(b))、磁石411−1、磁石412―2、磁石413−1直上で磁力線が閉じてしまう結果、ターゲット上への磁力線が少なくなる。そして、θの大きさ(絶対値)が10°以下となると、磁石エレメント表面における磁力線のうち、ターゲット表面の法線方向に平行な成分がゼロとなる領域のズレ量が少なくなってしまう。
図6(a)(b)は第1の磁石エレメント40について説明したものであるが、θとγの向きと大きさについては第2の磁石エレメント41についても同様である。
【0036】
ここで角度のマイナス記号(−)の定義について説明する。−θは、第3の磁石413−1又は第6の磁石413−2が持つ磁極のうち、磁性体板410面法線に平行な成分が、第2の磁石412−1又は第5の磁石412−2の磁極と同一方向に向いている時を示す。−γは、第3の磁石413−1のN極の方向が仮想線416に対して時計回り方向に回転したときにあらわすものとする。すなわち、
図4に示す第1の磁石エレメント40では、第3の磁石413−1のN極、S極は、第2の磁石412−1のN極、S極と逆方向を向いているため、θはプラスである。これに対し、第3の磁石413−1のN極の方向は仮想線416に対して時計回り方向に回転しているので、γはマイナスとなる。一方、
図5に示す第2の磁石エレメント41では、θはマイナス、γはプラスとなった一例である。
【0037】
上記のような方法によれば、
図7、
図8のような台形形状の第3の磁石エレメント50、第4の磁石エレメント51のような形状にも本発明が容易に適用できることは明らかである。なお、
図7に示す第3の磁石エレメント50は、
図4に示す第1の磁石エレメント40の第2の磁石412−1に相当する第8の磁石512−1の体積が、
図4に示す第1の磁石エレメント40の第1の磁石411−1に相当する第7の磁石511−1の体積よりも小さくなっている。その他は
図4に示す第1の磁石エレメント40と同様である。尚、
図7の第9の磁石513−1は、
図4に示す第1の磁石エレメント40の第3の磁石413―1に相当するものである。また、
図8の第10の磁石511―2、第11の磁石512―2、第12の磁石513―2は、
図5に示す第2の磁石エレメント41の第4の磁石エレメント411―2、第5の磁石エレメント412―2、第6の磁石413―2に相当するものである。
図7(a)は第3の磁石エレメント50の断面図であり、
図7(b)は第3の磁石エレメント50の平面図である。また、
図8に示す第4の磁石エレメント51は、
図5に示す第2の磁石エレメント41の第5の磁石412−2に相当する第11の磁石512−2の体積が、
図5に示す第2の磁石エレメント41の第4の磁石411−2に相当する第10の磁石511−2の体積よりも小さくなっている。その他は
図5に示す第2の磁石エレメント41と同様である。
図8(a)は第4の磁石エレメント51の断面図であり、
図8(b)は第4の磁石エレメント51の平面図である。したがって、
図7、
図8の場合、ターゲット表面に現われる磁力線のうち、ターゲット面法線方向に平行な成分がゼロとなる領域は、
図4に示す第1の磁石エレメント40、
図5に示す第2の磁石エレメント41の場合と異なる。
図7、
図8のような形状は、
図14のような実施例に好適である。本例では、S極側(磁石512-1、磁石512―2)で小さくなっているので、S極側を中心に円弧状に並べることで、隣り合う磁石エレメント同士の隙間を無くしたり、減らしたりすることで、N極側(磁石511-1、磁石511―2)近傍の磁力線の減少を抑えることが可能になる。
【0038】
図9、
図10で示される第5の磁石エレメント60も本発明を適用できる例である。
図9は第5の磁石エレメントを示す平面図である。第5の磁石エレメント60では磁性体板610上に第13の磁石611から第19の磁石617までが固定されている。第13の磁石611は、矩形型の磁性体板610上にコノ字型に設けられている。第13の磁石611は、磁性体板610面法線方向に対して平行に磁極を持っていて、ターゲットに対向する側がN極、磁性体板610と対向する側がS極の磁極を有する。第14の磁石612は、第13の磁石611のコノ字内に設けられており、第13の磁石611同様、磁性体板610面法線方向に対して平行に磁極を持っていて、前記第13の磁石611とは逆向き磁極を有する。そして第14の磁石612と第13の磁石611との間には、第15の磁石613、第16の磁石614、第17の磁石615、第18の磁石616、第19の磁石617がコノ字型に挿入されている。また、磁極の角度γについては、次に述べるとおりである。
【0039】
第14の磁石612と第17の磁石615が接する面から垂直に引いた仮想線625に対して、第17の磁石615の磁極の角度γは0°となっている。また、第17の磁石615は、第14の磁石612のN極から第13の磁石611のN極に向かう方向、即ち、磁性体板610面に平行な方向からターゲット6に向かう方向にθの角度を有する。仮想線625から垂直に引いた仮想線624に対して、第14の磁石614の磁極は、γがマイナス側に角度を持っている。角度のマイナス記号(−)の定義は、第1の磁石エレメントから第4の磁石エレメントと同様である。−γは、第15の磁石613から第19の磁石617のN極の方向が仮想線624に対して時計回り方向に回転したときにあらわすものとする。従って、第16の磁石614のN極は、仮想線624に対して時計回り方向に回転しているので、γはマイナスである。これに対し、仮想線624に対して、第15の磁石613の磁極のN極は、反時計周り方向に回転しているので、γがプラス側に角度となる。第18の磁石616、第19の磁石617は、仮想線625に対して、第15の磁石613の磁極、第16の磁石614の磁極と対称となるような磁極を持つ。
図10は、第5の磁石エレメント60の各磁石の磁極方向が容易に理解できるように鳥瞰図で表した図である。第5の磁石エレメント60のような形状にすることで、後述する矩形カソードマグネットの両端部分においてもエロージョントラックの形状を蛇行させることが可能になり、カソードマグネットの揺動動作によりターゲット上への集中的な侵食部の発生を防ぐことができる。
【0040】
図11に示した第1の磁石ユニット70は
図4と
図5で説明された第1の磁石エレメント40と第2の磁石エレメント41を交互に、かつ、同極同士が隣になるように配置した一部を示した例である。
図11(a)は第1の磁石ユニット70の平面図であり、
図11(b)は第1の磁石エレメント40の平面図であり、
図11(c)は第2の磁石エレメント41の平面図である。この例では、第1の磁石エレメント40と第2の磁石エレメント41は距離を置いて配置されている。距離(間隔)は、30mm以下にすることが好ましい。このような配置にすることで不図示のターゲット上に現われる磁場のうち、ターゲット面法線に平行な成分がゼロとなるポイントの集合、すなわち磁気トラック710の形状は波状になる。もしも30mm以上にすると、磁気トラック710の形状は波状にならない。
【0041】
図12に示した第2の磁石ユニット80は
図4と
図5で説明された第1の磁石エレメント40と第2の磁石エレメント41を同極同士が隣でかつ密着するように配置した一部を示した例である。このような配置にすることでも不図示のターゲット上に現われる磁場のうち、ターゲット面法線に平行な成分がゼロとなるポイントの集合、磁気トラック810の形状は波状になる。
【0042】
図11の構成と
図12の構成の違いは、直線状に配列させた第1の磁石エレメント40と第2の磁石エレメント41の距離である。
図11のように隙間(間隔)を空けることで。不図示のターゲット表面に現われる磁気トラックにおけるターゲット面に平行な磁場成分は小さくなり、逆に
図12のように磁石エレメントを密集させることでターゲット上の磁場成分を大きくすることができる。
【0043】
図13は、第1の磁石エレメント40と第2の磁石エレメント41を弧状の仮想線(環状線)900上に交互に配列したものであり、この結果、仮想線(環状線)900にほぼ沿った波状の磁気トラック910が現われる。また、ヨーク板の板面上に、外周磁石と、外周磁石の内部に配置され外周磁石と極性が異なる内部磁石とから構成される磁石ユニットが形成されることになる。
【0044】
図14は、第3の磁石エレメント50と第4の磁石エレメント51を同極同士で接触させ、配列することで、弧状の仮想線に1000に沿って波状の磁気トラック1001が発生する例である。なお、θの大きさ(絶対値)が10°以下となると、磁石エレメント表面における磁力線のうち、ターゲット表面の法線方向に平行な成分がゼロとなる領域のズレ量が少なくなってしまうため、磁気トラック形状は波状にならなくなってしまう。このことは
図11、
図12、
図13についても同様である。
【実施例1】
【0045】
実施例1では、本発明を適用可能なスパッタ装置200(
図15)に設置された円形カソード電極203を用いて磁気トラック形状を確認した。磁石ユニット201は
図16に示すとおりである。第5の磁石ユニット201で使用されている磁石の材質はNdFeBで381KJ/m3(48MGOe)の最大エネルギー積をもつ。第5の磁石ユニット201の直径は370mmで、磁石部の高さは30mmである。第5の磁石ユニット201は24個の磁石エレメントを逆ハート型形状に沿わせて固定されている。24個の磁石エレメントは、
図4、
図5、
図7、
図8に示されている第1の磁石エレメント40、第2の磁石エレメント41、第3の磁石エレメント50、第4の磁石エレメント51とから構成され、第1から第4の磁石エレメントは、
図16に示す逆ハート型形状に沿って、それぞれ下記表1に示す極性・配置で設けられている。なお、ヨーク板の役割である磁性体板は厚み12mmのSS400を使用した。以下の表1は、第5の磁石ユニット201の各磁石エレメントの磁極方向と配置関係を示す。なお、第5の磁石ユニット201は24個の磁石エレメントを円形形状、楕円形状等に沿わせて固定されることも可能である。即ち、24個の磁石エレメントは、無終端所状の形状であれば、全ての形状に沿って固定することが可能である。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1の番号1から24は、
図16の第5の磁石ユニット201に記載の番号を示す。第1の磁石エレメント40は、上記表1の番号2、4、6、8、10、18に、第2の磁石エレメント41は、上記表1の番号1、3、5、7、9、11、17、19に、第3の磁石エレメント50は、上記表1の番号12、14、16、20、22、24に、第4の磁石エレメント51は、上記表1の番号13、15、21、23に、それぞれ配置されている。
【0048】
図17(a)に示すターゲット202は、不図示の裏板を介して第5の磁石ユニット201前方で固定されている。このときターゲット202の表面と第5の磁石ユニット201の表面との距離は14mmである。ターゲット202の材質はFeCo合金で厚み3mm、直径376mmである。
【0049】
ターゲット202上の磁気トラックを確認するために、円形カソード電極203を不図示の磁場測定器に設置した。磁場測定器に接続されたプローブをターゲット直上1.0mmの高さで位置決めし、この高さを保ったままターゲット202の平面方向でスキャンさせた。この際、スキャン方向は
図16のX方向とY方向として、磁束密度の値採取はX、Y、Z方向について行った。なお、プローブのスキャン動作と磁束密度の値採取は、コンピューター(不指示)による制御で行った。
【0050】
上記で得られた磁束密度において、ターゲット面に平行な成分(X、Y方向の合成成分=(x2+y2)1/2)のうち50mT以上なった領域と、ターゲット面法線に平行な成分がゼロとなるポイントすなわち磁気トラックを抽出した結果、
図17(a)のように、磁気トラック210が波状になることが確認できた。なお、磁気トラック上の磁束密度のうちターゲット面に平行な成分が50mT以上あれば(領域211)、安定して放電できる。この結果から、本発明を用いることで、磁気トラック210を波状にしながらにして安定して放電できる磁場強度を得ることが確認された。
【0051】
図15に示す円形カソード電極203に磁石ユニット201を取り付け、第5の磁石ユニット201をターゲット202面平行に回転させながら放電させ、スパッタリング成膜を行った。60KWh使用後にターゲット202上の浸食分布を確認したところ、
図17(b)のような結果が得られた。浸食部のうち最深部の形状は“緩やかな谷”形状を呈しており、浸食の集中を防いでいる。
【0052】
(比較例1)
本発明が有効であることをより確実にするために、従来の磁石エレメントを使用した場合を比較例1として説明する。比較例1における磁石ユニット(以下、「比較例1磁石ユニット」という。)の配列は第5の磁石ユニット201と同じ配列とした。また、比較例1磁石ユニットで使用されている磁石の材質もNdFeBで381KJ/m3(48MGOe)の最大エネルギー積をもつ。ヨーク板の役割である磁性体板は厚み12mmのSS400を使用した。比較例1磁石ユニットの最外径は370mmで、磁石部の高さは30mmである。比較例1磁石ユニットは24個の磁石エレメントを逆ハート型形状に沿わせて固定されている。24個の磁石エレメントは、
図4、
図5、
図7、
図8に示されている第1の石エレメント40、第2の磁石エレメント41、第3の磁石エレメント50、第4の磁石エレメント51の形状をしている。ここまで述べた条件は、第5の磁石ユニット201と同じである。ただし、下記表2に示されているとおり、θとγがすべて0度になっている点で磁石ユニット201と異なる。以下の表2は、比較例1磁石ユニットの各磁石エレメントの磁極方向と配置関係を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
上記表2の番号1から24は、
図16に第5の磁石ユニット210に記載の番号を示す。第1の磁石エレメント40は、上記表2の番号2、4、6、8、10、18に、第2の磁石エレメント41は、上記表2の番号1、3、5、7、9、11、17、19に、第3の磁石エレメント50は、上記表2の番号12、14、16、20、22、24に、第4の磁石エレメント51は、上記表2の番号13、15、21、23に、それぞれは位置されている。
【0055】
図18(a)に示すターゲット202は不図示の裏板を介して比較例1磁石ユニット前方で固定されている。このときターゲット202の表面と比較例1磁石ユニットの表面との距離は14mmである。ターゲット202の材質はFeCo合金で厚み3mm、直径376mmである。
【0056】
ターゲット202上の磁気トラックを確認するために、
図15に示す円形カソード電極203を不図示の磁場測定器に設置した。磁場測定器に接続されたプローブをターゲット直上1.0mmの高さで位置決めし、この高さを保ったままターゲット202の平面方向でスキャンさせた。この際、スキャン方向は
図16のX方向とY方向として、磁束密度の値採取はX、Y、Z方向について行った。なお、プローブのスキャン動作と磁束密度の値採取は、コンピューター(不図示)による制御で行った。
【0057】
上記で得られた磁束密度において、ターゲット面に平行な成分(X、Y方向の合成成分=(x2+y2)1/2)のうち50mT以上なった領域(251)と、ターゲット面法線に平行な成分がゼロとなるポイントすなわち磁気トラック252を抽出し、
図18(a)のような結果が得られた。当然、比較例1では、磁気トラックが波状になることはない。
【0058】
図15に示す円形カソード電極203に比較例1磁石ユニットを取り付け、比較例1磁石ユニットをターゲット202面平行に回転させながら放電させ、スパッタリング成膜を行った。40kWh使用後にターゲット202上の浸食分布を確認したところ、
図18(b)のような結果が得られた。浸食部のうち最深部の形状は“急峻な谷”形状を呈しており、浸食の集中によるターゲット利用効率の低下が確認された。
図17(b)、
図18(b)を比較すれば本発明の効果は明らかである。
【実施例2】
【0059】
実施例2では、実施例1と同じ寸法で、磁石材料並びに、ターゲット材料を変更して、ターゲット面に現われる磁気トラックの形状を確認した。磁場測定器の使用方法も実施例1と同じである。第5の磁石ユニット201で使用されている磁石の材質はSmCo系で151KJ/m3(19MGOe)の最大エネルギー積もつ。そしてターゲット材はTa(非磁性)とした。この組み合わせでも、磁気トラックは波状になり、磁気トラック上における磁束密度のうち、ターゲット面に平行な成分が50mT以上であることが確認できた。
【0060】
すなわち、本発明を適用すればターゲット材質、マグネット材質に関わらず波状の磁気トラックを得ながら、放電が可能な磁束密度を得ることが可能になる。
【実施例3】
【0061】
実施例3では、
図3のスパッタ装置3に設置された矩形カソード電極を用いて磁気トラック形状を確認した。ターゲット6は不図示の裏板を介して第6の磁石ユニット600前方で固定されている。このときターゲット6の表面と第6の磁石ユニット600の表面との距離は14mmである。ターゲット6の材質はFeCo合金で130mm×470mm×(厚み)3mmである。
【0062】
磁石ユニット600の形状は、
図19に示すとおりである。第6の磁石ユニット600で使用されている磁石の材質はNdFeBで381KJ/m3(48MGOe)の最大エネルギー積をもつ。大きさは、短軸側が90mmで、長軸側が430mm、そして磁石部の高さが35mmである。
【0063】
第6の磁石ユニット600は、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の周に沿って設けられた複数の第1の磁石群磁石からなる第1の磁石群60aと、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の中心部分に設けられた複数の第2の磁石群磁石からなる第2の磁石群60bと、第1の磁石群60aと第2の磁石群60bと間であって、第2の磁石群60bを取り囲むように設けられた複数の第3の磁石群磁石からなる第3の磁石群60cとから構成されている点である。第1の磁石群磁石は、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の板面から垂直方向に沿って直立して設けられていて、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の板面と対向する面に第13の磁極(S極)を有し、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の板面と対向しない面に第13の磁極(S極)と反発する第14の磁極(N極)を有するものである。
図19(a)では、第1の磁石群磁石は、X軸方向にN極の磁極を有する複数の磁石で構成されている。また、第1の磁石群磁石は、後述する第6の磁石エレメント301の第20の磁石311―1と、第17の磁石エレメント302の第23の磁石311―2と、第8の磁石エレメントの磁石303―1・磁石303―2に相当する。
第2の磁石群磁石は、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の板面から垂直方向に沿って直立して設けられていて、ヨーク矩形の磁性体板(ヨーク板)310の板面と対向する面に第13の磁極(S極)と反発する第15の磁極(N極)を有し、ヨーク板の板面と対向しない面に第14の磁極(N極)と反発する第16の磁極(S極)を有するものである。
図19(a)では、第2の磁石群磁石は、X軸方向にS極の磁極を有する複数の磁石で構成されている。また、第2の磁石群磁石は、後述する後述する第6の磁石エレメント301の第21の磁石312―1と、第17の磁石エレメント302の第24の磁石312―2に相当する。
第3の磁石群磁石は、前記第1の磁石群磁石と前記第2の磁石群磁石に挟まれるように直立して配置され、第1の磁石群磁石(311―1)の第14の磁極(N極)と対向する部分に第17の磁極(N極)を有し、第2の磁石群磁石(312―1)の第15の磁極(N極)と対向する部分に第17の磁極(N極)と反発する第18の磁極(S極)を有し、前記第17の磁極と前記第18の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第7の磁石と、前記第1の磁石群磁石と前記第2の磁石群磁石に挟まれるように直立して配置され、第1の磁石群磁石(311―2)の第13の磁極(S極)と対向する部分に第19の磁極(N極)を有し、第2の磁石郡磁石(312―2)の第16の磁極(S極)と対向する部分に第19の磁極(N極)と反発する第20の磁極(N極)を有し、前記第19の磁極と前記第20の磁極とを結ぶ線の向きが前記ヨークの板面水平面から斜め方向に向くように着磁された第8の磁石と、を有するものである。前記第7の磁石は、後述する第6の磁石エレメント301の第22の磁石313-1に相当し、前記第8の磁石は、後述する第7の磁石エレメント302の第25の磁石313−2に相当する。
図19(a)では、第3の磁石群磁石は、第2の磁石群磁石から第1の磁石群磁石に向かう磁力線を有する。また、第3の磁石群磁石は、
図19(a)に示す磁石1から磁石30に相当する。
【0064】
第6の磁石エレメント301、第7の磁石エレメント302は、矩形の磁性体板310の短辺方向の両端に合計2本の第20の磁石311―1、第23の磁石311―2がそれぞれ固定されている。本例では、第16の磁石311−1、第23の磁石311―2は、ターゲット側にN極が向いている。2本の第20の磁石311−1、第23の磁石311−2のそれぞれの間には、第21の磁石312−1、第24の磁石312―2がそれぞれターゲット側にS極を向けて固定されている。更に、第6の磁石エレメント301の第21の磁石312―1の両側には、第22の磁石313-1が左右対称に合計2つ固定されている。第7の磁石エレメント302の第24の磁石312―2の両側には、第25の磁石313-2が左右対称に合計2つ固定されている。一方、第22の磁石313-1は、第21の磁石312―1の磁石のN極から第20の磁石311ー1のN極に向かう方向、即ち、磁性体板310面に平行な方向からターゲット6に向かう方向にθの角度を有する。これにより、第22の磁石313-1は、磁性板310面法線方向に平行な成分が、第21の磁石311―1と逆方向、すなわちθがプラス角度になる。一方、第25の磁石313-2は、第24の磁石312―2のS極から第23の磁石の311―2のS極に向かう方向、即ち、磁性体板310面に平行な方向から磁性体板310の裏面側に向かう方向にθの角度を有する。これにより、第25の磁石313-2は、磁性板310面法線方向に平行な成分が、第24の磁石312―2と同一方向、すなわちθがマイナス角度になる。第6の磁石エレメント301を構成する第22の磁石313―1又は第7の磁石エレメント302を構成する第25の磁石313-2は、
図19(a)に記載の磁石1から磁石7、磁石16から磁石22に相当する。
図19(b)(c)では、第22の磁石313-1又は第25の磁石313-2の磁極方向のうち磁性板310に平行な成分は隣り合う第20の磁石311-1又は第23の磁石311―2の方向に向いている。なお、第22の磁石313-1又は第25の磁石313-2の磁極方向のうち磁性板310に平行な成分が、第21の磁石312-1又は第24の磁石312―2の方向に向くようにしてもよい。
【0065】
図19(a)に記載の磁石1から磁石7、磁石16から磁石22のうち、磁石2,4,6,17,19,21は、第6の磁石エレメント301であり、磁石1,3,5,7,16,18、20、22は、第7の磁石エレメント302である。他方、
図19(a)に示す辺315に対して垂直方向の仮想線からの触れ角をγとすると、第6の磁石エレメント301を構成する第22の磁石313―1、第7の磁石エレメント302を構成する第25の磁石313-2については全てγ=0である。
【0066】
次に、第8の磁石エレメント303について、
図20及び
図21を用いて説明する。
図20(a)(b)は第8の磁石エレメントを示す平面図である。
図21は第8の磁石エレメントを示す斜視図である。
図20(a)(b)、
図21に示すように、第8の磁石エレメント303は、Z軸方向にN極の磁極を有するコノ字型磁石(磁石303-1・磁石303-2、磁石311-1・磁石311ー2)と、Z軸方向にS極の磁極を有する内側磁石(磁石312-1・磁石312―2)と、コノ字型磁石と内側磁石の間に配置された中間磁石(磁石8から磁石15、磁石23から磁石30磁石)とからなる。磁石311―1は第6の磁石エレメント301の第20の磁石311―1に相当し、磁石311―2は第7の磁石エレメント302に第23の磁石311―2に相当するものである。磁石312―1は第6の磁石エレメント301の第21の磁石312―1に相当し、磁石312―2は、第7の磁石エレメント302に第24の磁石312―2に相当するものである。磁石8と磁石15又は磁石23と磁石30は、第6の磁石エレメント301の第22の磁石313-1又は第7の磁石エレメント302の第25の磁石313―2に相当する。上記のとおり、第8の磁石エレメント303には、
図19(a)に示す磁石8から磁石15と、磁石23から磁石30に相当する磁石を含んでいる。これらの磁極方向のうち角度γについて、
図20(b)に示される仮想線322、323を用いて説明する。
図19(a)に示す磁石8、15は仮想線323からの振れ角γで定義され、本実施例では0度である。磁石10、12は、
図20(b)に示す仮想線322からの振れ角γで定義され、本実施例では0度である。
図19(a)に示す磁石9、11は、
図20(b)に示す仮想線322からの振れ角γで定義すると+側の値になり、本実施例では+45度とした。同様に、
図19(a)に示す磁石30、23は仮想線323からの振れ角γで定義され、本実施例では0度である。磁石24、26は、
図20(b)に示す仮想線322からの振れ角γで定義され、本実施例では0度である。
図19(a)に示す磁石28、29は、
図20(b)に示す仮想線322からの振れ角γで定義すると+側の値になり、本実施例では+45度とした。
図19(a)に示す磁石13、14は、
図20(b)に示す仮想線322からの振れ角γで定義すると−側の値になる。本実施例では−45度とした。同様に、
図19(a)に示す磁石25、27は、
図20(b)に示す仮想線322からの振れ角γで定義すると−側の値になる。本実施例では−45度とした。このようにγを決定し、表3のようにした。この結果、矩形の磁性体板(ヨーク板)310の角部に位置する磁石(磁石9、磁石11、磁石13、磁石14、磁石25、磁石27、磁石28、磁石29)の一方の磁極と他方の磁極とを結ぶ線は、磁性体板(ヨーク板)310の板面平行面に沿って、
図20(b)に示す仮想線322から時計回り方向又は反時計周り方向に60度以内の角度を有するものが配置されることになる。以下の表3は、第6の磁石ユニット600の各磁石エレメントの磁極方向と配置関係を示す。なお、下記表3の番号1から30は、
図19(a)の第6の磁石ユニット600に記載の番号を示す。以下の表3に示されたθとγの向きと大きさは一例である。第1の磁石エレメント40を用いて説明した
図6(a)(b)と同様な理由で、「−70°≦θ<10°または、10°<θ≦70°」、かつ、「−60°≦γ≦60°」が望ましい。
【0067】
【表3】
【0068】
なお、
図21では、
図20記載の第8の磁石エレメント303を構成する各磁石の着磁方向が容易に把握できるように鳥瞰図で表したものである。なお、第8の磁石エレメント303のような形状、着磁方向の組み合わせにすることで、第6磁石ユニット600の両端においてもエロージョントラックを蛇行させることが可能である。よって、第6の磁石ユニット600を揺動動作させることで磁石エレメント303に対応するターゲット上において集中的な侵食の進行を防ぐ利点を持つ。なお、第5の磁石エレメント60を用いて、第6磁石ユニット600の両端において、エロージョントラックを蛇行させることも可能である
【0069】
ターゲット6上の磁気トラックを確認するために、矩形カソード電極を不図示の磁場測定器に設置した。磁場測定器に接続されたプローブをターゲット直上1.0mmの高さで位置決めし、この高さを保ったままターゲット6の平面方向でスキャンさせた。この際、スキャン方向は
図19(b)のX方向とY方向として、磁束密度の値採取はX、Y、Z方向について行った。なお、プローブのスキャン動作と磁束密度の値採取は、コンピューター(不指示)による制御で行った。
【0070】
上記で得られた磁束密度において、ターゲット面に平行な成分(X、Y方向の合成成分=(x2+y2)1/2)のうち50mT以上なった領域と、ターゲット面法線に平行な成分がゼロとなるポイントすなわち磁気トラックを抽出した結果、
図22(a)のように、磁気トラック330が波状になることが確認できた。なお、磁気トラック上の磁束密度のうちターゲット面に平行な成分が50mT以上あれば、安定して放電できる(領域331)。この結果から、本発明を用いることで、磁気トラックを波状にしながらにして安定して放電できる磁場強度を得ることが確認された。
【0071】
矩形カソード電極に第6の磁石ユニット600を取り付け、第6の磁石ユニット600をターゲット6の面平行に揺動させながら放電させ、スパッタリング成膜を行った。なお、揺動距離は
図19(a)に示したX1、Y1方向にそれぞれ±20mmずつに矩形に動作させた。60kWh使用後にターゲット6上の浸食分布を断面線332及び333において確認したところ、
図22(b)(c)のような結果が得られた。浸食部の断面は、複数の山と谷が並ぶ形状を呈しており、ターゲット利用効率を高めている。
【0072】
(比較例2)
矩形磁石ユニットにおいても本発明が有効であることをより確実にするために、従来の磁石エレメントを使用した比較例2を説明する。比較例2における磁石ユニット400(以下、「比較例2磁石ユニット」という。)の配列は
図23のとおりである。また、比較例2磁石ユニットで使用されている磁石の材質もNdFeBで381KJ/m3(48MGOe)の最大エネルギー積をもつ。大きさは、短軸側が90mmで、長軸側が430mm、そして磁石部の高さが35mmである。ヨーク板の役割である磁性体板は厚み12mmのSS400を使用した。
【0073】
ターゲット6は不図示の裏板を介して比較例2磁石ユニット前方で固定されている(
図24(a))。このときターゲット6の表面と比較例2磁石ユニットの表面との距離dは14mmである。ターゲット6の材質はFeCo合金で130mm×470mm×(厚み)3mmである。
【0074】
ターゲット6上の磁気トラックを確認するために、矩形カソード電極60を不図示の磁場測定器に設置した。磁場測定器に接続されたプローブ435をターゲット直上1.0mmの高さで位置決めし、この高さを保ったままターゲット6の平面方向(436走査方向)でスキャンさせた(
図24(a))。この際、スキャン方向は
図23のX方向とY方向として、磁束密度の値採取はX、Y、Z方向について行った。なお、プローブのスキャン動作と磁束密度の値採取は、コンピューター(不図示)による制御で行った。
【0075】
上記で得られた磁束密度において、ターゲット面に平行な成分(X、Y方向の合成成分=(x2+y2)1/2)のうち50mT以上なった領域(領域431)と、ターゲット面法線に平行な成分がゼロとなるポイントすなわち磁気トラック430を抽出し、
図24(b)(c)のような結果が得られた。
【0076】
矩形カソード電極に比較例2磁石ユニットを取り付け、比較例2磁石ユニットをターゲット6面平行に揺動させながら放電させ、スパッタリング成膜を行った。なお、揺動距離は
図27(a)に示したX1、Y1方向にそれぞれ±20mmずつに矩形に動作させた。40kWh使用後にターゲット6上の浸食分布を断面線432及び433において確認したところ、
図24(b)(c)のような結果が得られた。
図22(b)(c)と比較すると、浸食領域が減ってしまっている。
【0077】
上記の結果から、カソード形状、ターゲット材質に関係なく、本発明が有効であることが確認できた。