【実施例】
【0014】
図1に示すように、実施例の車両10は、乗員室12の前部に運転席および助手席の第1列座席(座席)18が設けられ、この第1列座席18の後方に、第2列座席(座席)22および第3列座席(座席)24が前から順に並んでいる。車両10には、第1列座席18の前方に設けられたインストルメントパネル26内にエアコンユニットACが配設されている。そして、エアコンユニットACで調温された空気を、インストルメントパネル26の上部に設けられた第1空気送出口28aと、インストルメントパネル26の下部に設けられた第2空気送出口28bとの夫々から乗員室12へ供給し得るように構成されている。第1空気送出口28aには、図示しない風向制御板が設けられ、例えば乗員の指先操作により風向制御板の角度を変えることで、第1空気送出口28aから送出される空気の向きを調節し得るようになっている。すなわち、風向制御板を上向きにすることで、第1空気送出口28aから天井32に沿って後方へ流れるように空気を送出し(
図1または
図5(a)参照)、風向制御板を略水平にすることで、略水平に後方に流れるように空気を送出し得る(
図5(b)参照)。また、第2空気送出口28bからは、第1列座席18の足元に床72に沿って後方へ流れるように空気が送出される(
図5(c)または(d)参照)。ここで、第1列座席18(前後に隣接する座席の中で前側に位置する座席)の下方には、前後に連通する通路部36が設けられ、この通路部36を介して前後に空気が流通し得るようになっている。なお、第2空気送出口28bの下方には、エアコンユニットACの内気循環モードにおいて、乗員室の空気を吸い込む内気吸込口30が設けられている。
【0015】
図1に示すように、乗員室12の天井32には、前後に隣接する第1列座席18および第2列座席22の間に位置して、案内板40が配設されている。案内板40は、第1空気送出口28aから後方へ向けて送出されて天井32に沿って流れる空気の流れに交差するように天井32から下方へ延出する延出姿勢(延出した姿勢)で保持可能になっている。そして、案内板40は、延出姿勢で前方に臨む案内面44で受けた空気を下方へ向けて案内するよう形成されている。また、第1列座席18には、前記通路部36の後方に位置し得るようにガイド板60が配設され、このガイド板60によっても空気を案内し得るようになっている。
【0016】
図2に示すように、案内板40は、平板状に形成されており、天井32に固定された取付ステイ50に対して左右の軸線回りに回動可能に配設されている。案内板40は、天井32から下方に延出させた延出姿勢(
図3の実線参照)と、天井32と略平行に延在する退避姿勢(
図3の二点鎖線参照)との間において回動変位され、延出姿勢と退避姿勢との間で無段階に角度調節可能になっている。ここで、案内板40は、軸とこの軸を保持する軸受との嵌め合いの強さによって、取付ステイ50(天井32)に対する角度を保持し得るよう構成される。退避姿勢の案内板40は、天井32に凹設された凹部34に収容され、天井32と面が揃うようになっており、案内板40は退避姿勢において天井32に沿って流れる空気の流通路から退避するよう構成される。案内板40は、天井32における車幅方向全体に延在する大きさで、延出姿勢であっても下端が第1列座席18のヘッドレストより上方に位置するように設定されている。なお、案内板40の本体部分は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂素材からインジェクション成形等により形成される。案内板40は、延出姿勢において前方に臨む案内面44が、天井32に沿って後方へ流れる空気の流れに交差するように延在し、該案内面44で空気を受けて下方へ流れるように案内している。
図2に示すように、案内板40は、車幅方向中央部位の下部に、ルームミラー76に対応させた略矩形状の切欠40aが形成されており、この切欠40aにより案内板40が延出姿勢にあっても、運転者の後方視界が確保されるようになっている。
【0017】
図2に示すように、第1列座席18は、下部に取付けられた取付部材74を介して床72に取り付けられ、該第1列座席18の下方に前後に連通する通路部36が形成されている。なお、第2列座席22および第3列座席も、第1列座席18と同様に通路部36を設けてもよい。
図1および
図4に示すように、第1列座席18の下方に設けられた通路部36の後方には、ガイド板60が設けられている。ガイド板60は、上方から下方に向かって滑らかに前方に湾曲すると共に前方を臨むガイド面64を有し、支持部66を介して第1列座席18に配設されている。棒状の支持部66は、第1列座席18の側面に設けられた保持部70に前後にスライド可能に挿通保持されている。ガイド板60は、支持部66を保持部に対してスライドさせて、ガイド面64と第1列座席18の後面および下面との間に所要の間隔を有する延出姿勢(
図4(a)参照)と、ガイド面64を第1列座席18の後面に当接させた退避姿勢(
図4(b))との間で変位可能に構成されている。ここで、ガイド板60は、支持部66と保持部70との嵌め合いの強さによって、第1列座席18に対する位置を保持し得るよう構成される。ガイド面64は、上端が第1列座席18の下端より上方に延在し、下端が第1列座席18の下端より下方に延在すると共に第1列座席18の後端より前方に延在するよう形成されている。ガイド板60は、延出姿勢において、ガイド面64が上方に位置する案内板40によって下方に案内された空気の流れに交差すると共に、前方に位置する通路部36から後方へ流れる空気の流れに交差するよう構成されている。
【0018】
次に、前述のように構成された実施例に係る車両の空調構造の作用につき説明する。
図1に示すように、案内板40およびガイド板60を延出姿勢としたもとで、風向制御板を操作して第1空気送出口28aから送出される空気が天井32に沿って後方に流れるように調節する。これにより、延出姿勢の案内板40の案内面44が、第1空気送出口28aから送出された空気を受けるようになる。この案内面44で受けた空気は、案内面44に沿って下方へ案内されて、第1列座席18および第2列座席22の間を第1列座席18の後面に沿うように下方に流れる。この際、案内面44に沿って下方に案内された空気の流れによって、乗員室12が前後に区分される。案内板40によって下方に案内された空気は、延出姿勢のガイド板60のガイド面64に沿って前方に位置する通路部36に案内されて、第2列座席22の前側で空気が循環する流れが形成される。
【0019】
乗員室12全体を空調する場合には、
図5(a)に示すように、第1空気送出口28aから送出される空気が天井32に沿って後方に流れる状態としたまま、案内板40を退避姿勢とすることで、案内板40が天井32の凹部34に収納されて空気の流通路から退避する。このため、第1空気送出口28aから送出される空気は、第2列座席22以降の後方まで供給される。また、
図5(b)に示すように、案内板40を延出姿勢としたままであっても、風向制御板を操作して、第1空気送出口28aから送出される空気を案内面44で受けないようにすることで、第1空気送出口28aから送出される空気を運転席および助手席の間から第2列座席22以降の後方へ供給することも可能である。
【0020】
図5(d)に示すように、案内板40およびガイド板60を延出姿勢としたもとで、第2空気送出口28bから空気を送出する。これにより、延出姿勢のガイド板60のガイド面64が、第2空気送出口28bから送出されて通路部36を後方に流れる空気を受けるようになる。このガイド面64で受けた空気は、ガイド面64に沿って上方へ案内されて、第1列座席18の後面に沿うように上方に移動する。この際、ガイド面64に沿って上方に案内された空気の流れによって、乗員室12が前後に区分される。ガイド板60によって上方に案内された空気は、上方に位置する延出姿勢の案内板40の案内面44に案内されて、天井32に沿って前方に流れる。
【0021】
図5(c)に示すように、ガイド板60を退避姿勢とすることで、第2空気送出口28bから送出されて通路部36を後方へ流れる空気の流通路からガイド板60が退避する。そして、第2空気送出口28bから送出される空気は、通路部36を介して乗員室12における第2列座席22以降の後方に供給される。
【0022】
このように、実施例の空調構造によれば、案内板40で案内した空気の流れによって乗員室12を第1列座席18側と第2列座席22側とに区分し得るので、第1空気送出口28aから送出された空気が第2列座席22以降に供給され難く、乗員室12の第1列座席18側を効率よく空調できる。また、第1空気送出口28aから送出される空気を案内板40の案内面44に沿って下方に案内するので、乗員室12を区分するのに電力等の余計なエネルギーを要しない。更に、案内板40の下端を越えて下方へ空気を案内し得るので、天井32からの案内板40の延出寸法を小さくすることができ、案内板40が乗員の邪魔になり難い。そして、実施例のように、案内板40の下端を第1列座席18より上方に位置させれば、案内板40が乗員の邪魔になり難い。
図5(a)に示すように、案内板40を退避姿勢とすることで、第1空気送出口28aから送出されて天井32に沿って後方に流れる空気を乗員室12の後部へ簡単に供給できる。また、案内板40は、回動させるだけで延出姿勢と退避姿勢との間を簡単に変位させることができる。案内板40は、任意の姿勢で保持し得るよう構成されているので、天井32に対する案内面44の角度を調節することができ、送出される空気の向き、ガイド板60の位置、第1列座席18の位置および角度等の車両環境に柔軟に対応させて乗員室12を効率よく空調できる。案内板40は、延出した姿勢で保持されるので、車両の走行時の振動等によってカーテンの如く揺れることはなく、乗員の邪魔にならない。そして、ガイド板60によって、第1空気送出口28aから送出された空気を乗員室12の前部で循環させることができるので、より効率よく第1列座席18側を空調することができる。実施例の車両の空調構造によれば、ガイド板60によって前方に案内された空気が内気吸込口30からエアコンユニットACに導入されて第1空気送出口28aから再び送出される。すなわち、第1空気送出口28aから送出された空気を乗員室前部16でよりスムーズに循環させることができる。
【0023】
このように、実施例の空調構造によれば、ガイド板60で案内した空気の流れによって乗員室12を第1列座席18側と第2列座席22側とに区分し得るので、第2空気送出口28bから送出された空気が第2列座席22以降に供給され難く、乗員室12の第1列座席18側を効率よく空調できる。また、第2空気送出口28bから送出される空気をガイド板60のガイド面64に沿って上方に案内するので、乗員室12を区分するのに電力等の余計なエネルギーを要しない。
図5(c)に示すように、ガイド板60を退避姿勢とすることで、第2空気送出口28bから送出されて床72に沿って後方に流れる空気を乗員室12の後部へ簡単に供給できる。また、ガイド板60は、スライドさせるだけで延出姿勢と退避姿勢との間を簡単に変位させることができる。ガイド板60は、任意の位置で保持し得るよう構成されているので、通路部36や上方に位置する案内板40に対するガイド面64の位置を調節することができ、送出される空気の向き等の車両環境に柔軟に対応させて乗員室12を効率よく空調できる。そして、ガイド部60によって、第2空気送出口28bから送出された空気を乗員室12の前部で循環させることができるので、より効率よく第1列座席18側を空調することができる。
【0024】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することもできる。
(1) 実施例では、乗員室に3列の座席が設けられた車両を例に挙げて説明したが、乗員室に前後に隣接する座席を備える車両であればよく、前後に2列以上の座席を備える車両であれば車両の空調構造を適用できる。
(2) 実施例では、案内板が取付ステイによって回動可能に天井に取付けられる構成であるが、案内板は天井に設けられていればよく、天井自体を下方に延在させて案内板としたり、
図6に例示するように、別部材として形成した案内板80を天井32に直接固定してもよい。
図6の案内板80は、インサート成形により一体化されたクリップ86を備え、このクリップ86を天井32に係合させて取り付けられる。
(3) 実施例では、案内板を第1列座席および第2列座席の間に配設したが、案内板は前後に隣接する座席間の天井に設けられていればよく、第2列座席および第3列座席の間の天井に設けてもよい。
(4) 実施例では、第1列座席の前方に第1空気送出口および第2空気送出口を備える車両を例に挙げて説明したが、案内板が前方から後方に向かって天井に沿って流れる空気を受けることができる構造であればよく、空気送出口の位置および個数は限定されない。
(5) 実施例では、延出姿勢および退避姿勢に変位可能な案内板を備える構造を例に挙げて説明したが、案内板は延出姿勢で固定された構成であってもよい。
(6) 実施例では、ガイド板を備える構造を例に挙げて説明したが、ガイド板がない構造であってもよい。
(7) 実施例では、座席を支持する取付部材によって座席の下面と床との間に通路部が形成される構成を採用するが、通路部は座席の下方に設けられていればよく、座席の下方にダクト等を配設する構成であってもよい。
(8) 実施例では、ガイド板が座席にスライド可能に取付けられる構成を作用するが、通路部の後方にガイド板が設けられる構成であればよく、ガイド板が床に設けられていてもよい。
(9) 実施例では、案内板に切欠を設けたが、案内板に切欠を設けなくてもよい。また、切欠部分を透明な部材で形成してもよく、案内板を透明な部材で形成してもよい。
(10)案内板は、延出姿勢において下端が前側に位置する座席のヘッドレストよりも下側まで延在していてもよい。
(11)ガイド板は、角度調節可能としてもよい。
(12)案内板およびガイド板は、部材の嵌め合い強度により姿勢や位置を保持する構成に限られず、部材の凹凸による噛み合い構造やその他の保持構造を採用し得る。