【実施例1】
【0024】
図1〜
図4を用いて、本願発明に係わるリテーナ構造について説明する。リテーナ構造としては、筒状のインフレータ1(
図2、
図3参照)のガス吹出口2側を固定するフロントリテーナ5とインフレータ1の後端部4側を固定するリアリテーナ13とを備えた構成について説明する。
【0025】
リテーナ構造として、フロントリテーナ5及びリアリテーナ13を用いた構成について以下において説明を行う。しかし、本願発明におけるリテーナ構造としては、フロントリテーナ及びリアリテーナを用いた構成に限定されるものではなく、フロントリテーナとリアリテーナとを一体的に構成しておくこともできる。また、フロントリテーナとリアリテーナとの間に中間のリテーナを一つ以上配した構成にしておくこともできる。
【0026】
インフレータ1の先端側に配されたガス吹出口2は、インフレータ1の先端部側の外周面に複数形成されている。
図1、
図2に示すように、フロントリテーナ5は、板状体を湾曲させた形状に構成されており、
図3のIV−IV断面図である
図4に示すように、板状体を湾曲させたときに端縁同士が重なり合うように構成されている。フロントリテーナ5の先端側における重なり合った端縁同士は、
図1において太線の溶接線8で示すように溶接されている。
【0027】
尚、フロントリテーナとリアリテーナとを一体的に構成した場合には、一枚の板状体を折り曲げて一つのリテーナとして形成することができる。一つのリテーナとして構成した場合においても、リテーナの先端部側において、少なくとも後述する突出部7を形成した部位の近傍における折り曲げた板状体の端縁同士が重なり合った領域、あるいは突出部7を形成した部位からリテーナの先端側までにおける折り曲げた板状体の端縁同士が重なり合った領域を溶接しておくことが望ましい構成となる。
【0028】
また、フロントリテーナ5の後端部5b側には、一対の取付部6が立設されており、一対の取付部6における互いに対向する面の間は、離間した状態に構成されている。一対の取付部6の間が離間した状態においては、フロントリテーナ5の後端部5b側における内周径と
図3のIV−IV断面における内周径とは、略等しい内周径として形成されている。
【0029】
そして、端縁を重なり合わせた部位と取付部6との間には、開口9が形成されている。開口9によって、一対の取付部6の対向面間を狭める変形を行わせるときには、一対の取付部6の対向面間が接触する方向への変位を行わせ易くする。
【0030】
各取付部6には、それぞれ取付け孔6aが穿設されており、取付け孔6aに挿入したボルト等を車両に固定することにより、一対の取付部6の対向面間を狭めるとともに、フロントリテーナ5を車両に固定することができる。
【0031】
フロントリテーナ5の先端部5aには、段差が形成されている。エアバッグのガス流入部16を先端部5aに被せて、被せたガス流入部16をクランプバンド18によって固定したときには、先端部5aに形成した段差によってガス流入部16がフロントリテーナ5から抜け出るのを止めておくことができる。
【0032】
また、フロントリテーナ5の先端面には、フロントリテーナ5の一部を内側方向に屈折させたフランジ部7aが形成されている。フランジ部7aは、フロントリテーナ5の内方側に突出した突出部7として構成されている。そして、フロントリテーナ5内に収納した筒状体10の先端面10aを、フランジ部7aに密接させることができる。即ち、先端面10aが、筒状体10に形成した当接部として構成されている。
【0033】
フロントリテーナ5内に筒状体10を挿入した後で、インフレータ1をフロントリテーナ5内に挿入すると、インフレータ1の先端側における端部端面3に押された筒状体10は、その先端面10aをフロントリテーナ5の先端縁に形成したフランジ部7aに密接させることになる。そして、筒状体10の後端面10bは、インフレータ1の先端側における端部端面3に密接することになる。
【0034】
この状態において、
図2に示すように、フロントリテーナ5の後端部側に形成した一対の取付部6の対向面間を狭めることで、インフレータ1をフロントリテーナ5に固定することができる。
【0035】
リアリテーナ13においても、フロントリテーナ5と同様にインフレータ1の後端部4を挟持して固定する一対の取付部14が立設されている。一対の取付部14は、通常状態において対向する端面間が離間した形状に構成されており、一対の取付部14の対向する端面間を狭めることにより、リアリテーナ13内に挿入したインフレータ1の後端部4を挟着固定することができる。
【0036】
即ち、一対の取付部14にそれぞれ形成した取付け孔14aにボルト等の固定具を挿入して、挿入したボルト等を用いてリアリテーナ13を車両に固定するときには、ボルト等の固定具によって、インフレータ1の後端部4を挟着固定するとともに、リアリテーナ13を車両に固定することができる。
【0037】
インフレータ1をフロントリテーナ5とリアリテーナ13とによって車両に固定したときには、インフレータ1とフロントリテーナ5との間には筒状体10が密接状態で保持されることになる。インフレータ1とフロントリテーナ5との間に筒状体10を密接した状態で保持しておくことにより、ガス吹出口2の周囲は筒状体10によって、筒状体10の先端側だけが開放された状態となり、ガス吹出口2から噴出した膨張ガスは、外部に漏れ出ることなくエアバッグのガス流入部16内に供給されることになる。
【0038】
しかも、ガス吹出口2から吹き出された直後の膨張ガスは、高温状態になっているが、筒状体10でガス吹出口2の周囲を囲繞しているので、ガス吹出口2から吹き出された直後の膨張ガスがエアバッグのガス流入部16に直接当たることはなくなる。
【0039】
これに対して、
図6に示すように、インフレータ30の先端側にフロントリテーナ32を固定しただけの構成だと、インフレータ30とフロントリテーナ32との間には隙間が形成され、隙間33を通って、ガス吹出口31から噴出した膨張ガスの一部は外部に漏れ出てしまうことになる。このため、エアバッグのガス流入部34をクランプバンド35によってフロントリテーナ32に密着固定していても、ガス吹出口31から噴出した膨張ガスの全てをエアバッグのガス流入部34内に供給することができなくなる。
【0040】
上述したように、本願発明では、インフレータ1とフロントリテーナ5との間に筒状体10を密接した状態で保持しておくことができるので、ガス吹出口2から噴出した膨張ガスをガス流入部16内に全て供給することができる。そして、エアバッグの膨張展開を迅速に行うことができ、しかも、インフレータ1としては、ガス漏れがない分、小型のインフレータを使用することができる。
【0041】
また、フロントリテーナ5とリアリテーナ13とを、例えば、板状体を折り曲げることにより簡単にしかも軽量化した状態に構成することができるので、特許文献1のようにリテーナを大型化させ、しかも重量化させる必要がない。このため、インフレータ1を取付けるための取付けスペースも広く構成しておくことが必要なく、インフレータ1の取付けに対する自由度を大幅に向上させることができる。
【実施例2】
【0042】
図5を用いて、本願発明に係わるリテーナ構造における実施例2の構成として、フロントリテーナ5における他の構成について説明する。実施例2においても、リテーナをフロントリテーナ5とリアリテーナ13とに分割した構成について説明を行うが、フロントリテーナ5とリアリテーナ13とを一体的に構成しておくこともできる。また、フロントリテーナ5とリアリテーナ13との間に中間のリテーナを一つ以上配した構成にしておくこともできる。
【0043】
実施例2におけるフロントリテーナ5では、突出部7の構成として、フロントリテーナ5の長さ方向における中間部において径方向に形成した段差部7bを形成した構成になっている。また、筒状体10には段差部7bに密接する段差部11が形成されている。即ち、段差部11が、筒状体10に形成した当接部として構成されている。
【0044】
この突出部7の構成及び当接部の構成が、実施例1における構成とは異なっているが、他の構成は実施例1における構成と同様の構成を備えている。そこで、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0045】
また、
図5においては図示を省略しているが、フロントリテーナ5には、取付け孔6aを形成した一対の取付部6が構成されているとともに、一対の取付部6の前方側には、開口9が形成されている。そして、リアリテーナ13には、取付け孔14aを形成した一対の取付部14が構成されている。
【0046】
以下において、フロントリテーナ5の段差部7bに筒状体10の段差部11を密接させる構成について説明を行うが、筒状体10に段差部11を形成せずに、フロントリテーナ5内に筒状体10を挿入したときに、フロントリテーナ5の段差部7bに筒状体10の先端面10aを密接させる構成にしておくこともできる。
【0047】
即ち、筒状体10の先端面10aの内周径をフロントリテーナ5の段差部7bにおける内周径よりも大きな径となるように構成しておくことができる。そして、筒状体10の先端部の位置が、ガス吹出口2よりも前方側の位置となるように構成しておくことができる。この場合には、筒状体10に形成した当接部が、筒状体10の先端面10aになる。
【0048】
図5に示すように、フロントリテーナ5内に筒状体10を挿入してからインフレータ1をフロントリテーナ5内に挿入すると、筒状体10の後端面10bはインフレータ1の先端側における端部端面3に当接して前方側に押圧されることになる。そして、フロントリテーナ5の段差部7bに筒状体10の段差部11を密接させるとともに、筒状体10の後端面10bをインフレータ1の先端側における端部端面3に密接させることができる。
【0049】
この状態で、図示せぬ一対の取付部6を介してフロントリテーナ5を車両に取付けると、フロントリテーナ5の段差部7bとインフレータ1の先端側における端部端面3との間で筒状体10を密着保持することができる。そして、ガス吹出口2の周囲は筒状体10によって、筒状体10の先端側だけが開放された状態となる。これによって、ガス吹出口2から噴出した膨張ガスは、外部に漏れ出ることなくエアバッグのガス流入部16(
図2参照)内に供給されることになる。
【0050】
尚、フロントリテーナ5に形成した段差部7bによって構成される凹部は、フロントリテーナ5を挿入したエアバッグのガス導入部をクランプバンドで固定してときに、ガス導入部を抜け止めする凹部としても機能することができる。
【0051】
上記各実施例の説明において、筒状体10の後端面10bがインフレータ1の先端側における端部端面3に密接する構成について説明を行った。しかし、インフレータ1の先端側における形状が、先端側に向かうのに従って先細形状となる截頭錐体の形状に形成されている場合であっても、截頭錐体の周面に筒状体10の後端面10bが隙間なく密接させることにより、本願発明を好適に適用することができる。そのため、本願発明におけるインフレータのガス吹出口側における端部端面とは、図で示した端部端面3に限定されるものではなく、筒状体10の後端面10bが隙間なく密接することができる截頭錐体の周面も包含しているものである。