特許第5873322号(P5873322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873322
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ヘッダ制御システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/03 20060101AFI20160216BHJP
   F17D 3/00 20060101ALI20160216BHJP
   E03C 1/02 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   F16L41/03
   F17D3/00
   !E03C1/02
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-276071(P2011-276071)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-127269(P2013-127269A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−368522(JP,A)
【文献】 米国特許第7178543(US,B2)
【文献】 米国特許第06164307(US,A)
【文献】 特開2007−291741(JP,A)
【文献】 特開2001−146772(JP,A)
【文献】 特開平08−060712(JP,A)
【文献】 特開平06−042686(JP,A)
【文献】 特開2006−242566(JP,A)
【文献】 特開2002−206260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/03
F24H 1/10
F24H 9/20
F24D 17/00
F17D 3/00
E03C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダ本体と該ヘッダ本体から複数分岐して、それぞれ個別の水栓に接続されるヘッダ分岐部とを備えるヘッダ管が配管系統に設置されて該配管系統を流れる湯水の流量を調整するヘッダ制御システムであって、
前記水栓として、シングルレバー式の水栓が設けられているヘッダ管におけるヘッダ分岐部に取り付けられて該ヘッダ分岐部の流面積を変化させる流量制御バルブと、
前記流量制御バルブにおける前記流路面積である開度を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記流量制御バルブの開度を絞る減量制御を行う場合、所定の時間に達するまで、前記流量制御バルブを全開状態としておき、所定の時間に達した後、前記減量制御を実行することを特徴とするヘッダ制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記流量制御バルブを全開状態とする指示を受け付けた場合、又は、給湯用の配管系統に設置された前記ヘッダ管のヘッダ分岐部の内部に残留する湯水が流れ始めた場合に、前記流量制御バルブを全開状態とするように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッダ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダ本体とこのヘッダ本体から複数分岐するヘッダ分岐管とを備えるヘッダ管を配管系統に設置し、この配管系統を流れる湯水の流量を調整するヘッダ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅や集合住宅の専有部における給湯給水配管の工法として、ヘッダ管を用いた「ヘッダ方式」が広く採用されている。ヘッダ方式に用いられる配管は、架橋ポリエチレン管、ポリブデン管及びポリエチレン−アルミニウム複合管などの、可撓性を有する樹脂により形成されているため、配管の接続箇所の数を抑えて接続箇所からの漏水の危険性を少なくし、複数の使用箇所(水栓)で同時使用された場合であっても、各水栓の流量変動を抑えることができる、というメリットを有する。また、腐食などによる劣化が少ないため、水質や衛生性を維持することができる、というメリットを有する。
【0003】
また、近年、循環型社会及び低酸素社会が着目され、このような社会を目指すにあたり、水道施設において、配管に水を供給するポンプ装置に要するエネルギを削減することが望まれ、また、住宅内において、給湯器に要するエネルギを削減することが望まれている。併せて、住宅内における、湯水の使用量自体を削減することにより、エネルギの削減に寄与することが望まれており、これを実現するための技術開発や検討が進められている。
【0004】
このようなエネルギ及び資源の削減を推進すべく、「エネルギの使用の合理化に関する法律」(以下「省エネ法」という。)が制定され、エネルギ及び資源の使用量を監視及び表示することにより節減及び節約に対する心理的作用を生じさせること(見える化)と、エネルギ及び資源の使用量を最適なものに制御すること(最適制御)とが推進されている。
【0005】
そこで、従来、上述する「見える化」と「最適制御」とを実現するために、複数の水栓に供給する湯水をヘッダ管を用いて分水するとともに、分水する湯水の使用量をヘッダ管を介して集中管理する、ヘッダ制御システムが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−206260号公報
【特許文献2】特開2003−302101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、複数の水栓から湯水を同時吐水させた場合に、特定の水栓からの吐水を安定させることを目的とするものであり、減量制御を直接的な目的とするものでない。また、特許文献2に記載された発明は、水栓からの吐水の温度を安定させるものであり、減量制御を目的とするものでない。
【0008】
近年、戸建て住宅や集合住宅において、「シングルレバー式」の水栓が、1つの操作レバーにより水と湯とを容易に切り換えることができるため、広く採用されており、台所や洗面所などの湯水混合水栓として設置されている。
【0009】
シングルレバー式の水栓は、バルブを備えた蛇口式の水栓に比べて、開閉操作が容易である、というメリットを有する一方、吐水流量を微調整することが困難であり、必要以上に湯水を吐水させてしまう、という問題を有している。そのため、市場において、特許文献1及び特許文献2で提案されているシステムとは別に、住宅内における湯水の使用量を確実に減量制御することができる工夫が望まれている。
【0010】
そこで、本願発明者は、管内に取り付けたバルブの開度を制御して、この管内を流れる湯水を減量制御することにより、必要以上の流量で水栓から湯水を吐水させることなく、水資源及びエネルギの節約に寄与する、ヘッダ制御システムを提案している。
【0011】
本願発明者が提案しているシステムは、見える化及び最適制御を確実に実行するものであり、例えば、水栓からの吐水が定量である、百貨店の手洗いや、多数の企業が入居しているテナント型ビルディングの流しなどで利用される場合、水資源及びエネルギの節約に大いに寄与するものである。
【0012】
しかしながら、一般家庭にあっては、水栓からの吐水を減量制御する場合であっても、水栓からの吐水を一時的に増やす方が使用感が向上する場合があり、水栓からの吐水を常に減量制御することで、却って、使用感が損なわれる場合がある。
【0013】
このような場合として、例えば、鍋、バケツ及び洗面桶などに湯水を溜める場合や、給湯を開始する際に配管内に残留する冷めた湯水を吐き出させる場合などが挙げられる。かかる場合に水栓からの吐水を常に減量することは、それぞれの使用場面において従来より長時間を要することとなるため、却って、不便をきたすこととなる。
【0014】
例えば、鍋、バケツ及び洗面桶などに湯水を溜めることがない場合として、食器、食物、手及び顔を洗う場合が挙げられ、このような場合には、個人に応じて嗜好に差があるものの、概ね毎分6リットル程度の吐水流量が必要となる。これに対して、通常、台所及び洗面所の水栓の吐水流量は、シングルレバー全開時に毎分10乃至12リットルである。即ち、シングルレバー式の水栓を用いて食器、食物、手及び顔を洗うことは、吐水の半分が無駄となっている。仍って、先に提案されているシステムを用いて水栓からの吐水を常に減量制御することは、無駄となる吐水を抑えることができ、水資源及びエネルギの節約に寄与する可能となる。
【0015】
しかし、例えば、調理鍋や洗い桶に湯水を溜める場合には、水栓からの吐水を常に減量制御することにより、貯留に長時間を要することとなるため、水資源及びエネルギの節約に寄与する一方、利用者に不快感を与えることとなる。
【0016】
また、給湯用の配管系統にあっては、配管内に残留する冷めた湯水を吐き出させる際に、以下のような問題を有する。給湯用の配管系統は、配管の末端に取り付けられた水栓を開くことにより、配管の一次側に取り付けられた給湯器から湯水が供給され、この湯水が配管内を通って水栓から吐水される一方、水栓が閉じられることにより、給湯器からの供給が停止して湯水が配管内に残留する。
【0017】
配管内に残留する湯水は、時間の経過とともに熱が配管外に放出されて冷めていく。そのため、給湯器を冬期に使用する場合、水栓を開いた直後に配管内に残留する冷めた湯水が吐水され、給湯器で加熱された湯水が水栓から吐水されるまでに数十秒の時間を要する。
【0018】
この時間は、「湯待ち時間」と呼ばれ、この時間が長時間になるに応じて利用者の不快感が増大する。従って、このような湯待ち状態に水栓からの吐水を常に減量制御することは、湯待ち時間がより長くなるため、水資源及びエネルギの節約に寄与する一方で、利用者の不快感が増大する。
【0019】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、ヘッダ本体とこのヘッダ本体から複数分岐するヘッダ分岐部とを備えるヘッダ管を配管系統に設置し、この配管系統を流れる湯水の流量を調整するヘッダ制御システムにおいて、ヘッダ分岐部に取り付けた流量制御バルブの開度を絞る減量制御を行う場合、計時を開始し、計時時間が所定の時間に達するまで流量制御バルブを全開状態とし、所定の時間に達した後、減量制御を実行することにより、吐水の使用感を損なうことなく、水資源及びエネルギの節約に寄与することができるヘッダ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るヘッダ制御システムは、ヘッダ本体と該ヘッダ本体から複数分岐して、それぞれ個別の水栓に接続されるヘッダ分岐部とを備えるヘッダ管が配管系統に設置されて該配管系統を流れる湯水の流量を調整するヘッダ制御システムであって、前記水栓として、シングルレバー式の水栓が設けられているヘッダ管におけるヘッダ分岐部に取り付けられて該ヘッダ分岐部の流面積を変化させる流量制御バルブと、前記流量制御バルブにおける前記流路面積である開度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記流量制御バルブの開度を絞る減量制御を行う場合、所定の時間に達するまで、前記流量制御バルブを全開状態としておき、所定の時間に達した後、前記減量制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にあっては、流量制御バルブの開度を絞る減量制御を行う場合、所定の時間に達するまで、流量制御バルブを全開状態としておき、所定の時間に達した後、減量制御を実行することにより、吐水の使用感を損なうことなく、水資源及びエネルギの節約に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るヘッダ制御システムの全体構成の一例を示す模式図である。
図2】ヘッダ制御システムが備える流量制御バルブの構成を示す模式図であり、(a)はポテンショメータ式DCモータを備えるバルブの構成を示す模式図、(b)はステッピングモータを備えるバルブの構成を示す模式図である。
図3】ヘッダ制御システムが備える制御装置が実行する流量値表示処理の手順を示すフローチャートである。
図4】制御装置がポテンショメータ式DCモータを備える流量制御バルブを制御する処理の手順を示すフローチャートである。
図5】制御装置がステッピングモータを備える流量制御バルブを制御する処理の手順を示すフローチャートである。
図6】制御装置が流量制御バルブを全開制御する処理の手順を示すフローチャートである。
図7図6とは異なる、制御装置が流量制御バルブを全開制御する処理の手順を示すフローチャートである。
図8図1とは異なる、ヘッダ制御システムの全体構成の一例を示す模式図である。
図9図4とは異なる、制御装置がポテンショメータ式DCモータを備える流量制御バルブを制御する処理の手順を示すフローチャートである。
図10図5とは異なる、制御装置がステッピングモータを備える流量制御バルブを制御する処理の手順を示すフローチャートである。
図11図9及び図10の処理過程で実行される流量値表示処理の手順を示すフローチャートである。
図12図9及び図10の処理過程で実行される駆動決定処理の手順を示すフローチャートである。
図13図1及び図8とは異なる、ヘッダ制御システムの全体構成の一例を示す模式図である。
図14図1図8及び図13とは異なる、ヘッダ制御システムの全体構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態1.
本発明に係るヘッダ制御システムについて本実施の形態を示す図面に基づいて以下説明する。ヘッダ制御システムは、図1に示すように、ヘッダ管1と、ヘッダ管1内の湯水の流れを制御する流量制御バルブ2と、ヘッダ管1内の湯水の流れを検知する流量センサ3と、これら制御装置4とを備える。
【0024】
(ヘッダ管1について)
ヘッダ管1は、架橋ポリエチレン樹脂などの可撓性を有する合成樹脂により形成されており、一次側の流路となる引込配管(図示せず。以下同じ。)と、二次側の流路となる屋内配管(図示せず。以下同じ。)とを接続する管寄せである。
【0025】
ヘッダ制御システムにあっては、給湯器で熱せられた湯が流れる給湯用の配管系統と、水道から直接引き込んだ水が流れる給水用の配管系統とが別個独立に存在する。ヘッダ管1は、給湯用の配管系統に設置されるものと、給水用の配管系統に設置されるものとが存在する。なお、本明細書では、特に限定しない場合、給湯用の配管系統に設置されたヘッダ管1と、給水用の配管系統に設置されたヘッダ管1とを示すものとする。
【0026】
ヘッダ管1は、ヘッダ本体10と、このヘッダ本体1から分岐する複数のヘッダ分岐部11とを備え、ヘッダ本体10の一次側の流入口には、引込配管が接続し、各ヘッダ分岐部11の二次側の流出口には、屋内配管が接続する。
【0027】
ヘッダ管1は、湯水が引込配管からヘッダ本体10に流れ込み、ヘッダ本体10に流れ込んだ湯水を各ヘッダ分岐部11により分水し、分水した湯水を屋内配管を介して各水栓へと供給する。
【0028】
(流量センサ3について)
流量センサ3は、ヘッダ管1のヘッダ本体10の一次側の流入口に取り付けられている。流量センサ3は、ヘッダ本体10に流れ込む湯水の流量を計測するものであり、例えば、ロータ式流量センサなどが挙げられる。ロータ式流量センサは、湯水が本体を通過する際に、本体内の磁気ロータが流量に応じて回転し、回転する磁気ロータの羽根がホール素子を励磁させて流量に応じた流量パルスを出力する。
【0029】
(流量制御バルブ2について)
流量制御バルブ2は、少なくとも一つの任意のヘッダ分岐部11に取り付けられている。流量制御バルブ2は、弁と、この弁を動かすモータとを備え、弁の開度に応じてヘッダ管1内の流路面積を変化させ、ヘッダ管1内を流れる湯水の流量を調整する。ヘッダ管1内を流れる湯水の流量とヘッダ管1内の流路面積とは、以下の式(1)のような比例関係が成立する。
【0030】
Q=α×S×ΔP1/2 …(1)
但し、Qは管内を流れる湯水の流量を示す。また、αは定数を示す。また、Sは管内の流路面積を示す。また、ΔPは、流路前後の差圧を示す。
【0031】
実施の形態1に係るヘッダ制御システムは、流量センサ3がヘッダ管1内を流れる湯水の流量を検出し、ヘッダ管1内を流れる湯水の流量に基づいて流量制御バルブ2が制御されるものではない。
【0032】
しかし、流量制御バルブ2は、式(1)の比例関係が成立することから、バルブの開度を開くことにより、ヘッダ管1内の流路面積を広げて、ヘッダ管1内を流れる湯水の流量を増やす一方、開度を絞ることにより、ヘッダ管1内の流路面積を狭めて、ヘッダ管1内を流れる湯水の流量を減らす。このように、流量制御バルブ2は、バルブの開度を制御することにより、管内の流路面積を変化させ、ヘッダ管1内を流れる湯水の流量を調整する。
【0033】
そこで、流量制御バルブ2は、所定の開度となるための設定値(以下「開度設定値」という。)が予め設定され、予め設定された開度設定値に基づいて減量制御すべきヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を指定することができる。ここで、開度設定値とは、バルブを全開とした状態を「100」とした場合における、バルブの開き状態の割合、言い換えれば、全開状態に対する流路内のバルブの開度の割合である。また、指定された開度設定値は、流量制御バルブ2の開度の目標値となる。
【0034】
流量制御バルブ2は、予め設定された開度設定値に基づきバルブの開度が制御(以下「指定開度制御」という。)されることにより、配管系統の全圧力損失の大きさを調整し、減量制御すべきヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を調整する。例えば、開度設定値が「60」と指定された場合、開度設定値が「100」の場合に比べて、対応する配管系統の圧力損失の大きさが増大して、減量すべきヘッダ分岐部11と繋がる水栓からの吐水流量が絞り込まれる。
【0035】
流量制御バルブ2は、ポテンショメータ式DCモータを備えたバルブや、ステッピングモータを備えたバルブが該当する。
【0036】
減量制御すべきヘッダ分岐部11は、住宅内における水使用量の節約に寄与する水栓へと繋がる配管が被制御対象となる。具体的には、台所及び洗面化粧台の水栓へと繋がるヘッダ分岐部11が被制御対象となる。近年、台所や洗面化粧台には、シングルレバー式の湯水混合水栓が設置されており、簡単な操作で全開となり、また、吐水流量の微調整が困難であるため、吐水流量を減量制御することにより、水消費量を効果的に削減することができる。
【0037】
これに対して、水洗式トイレや全自動洗濯機などは、必要な使用量が機器側で設定されているため、水使用量の節約に寄与することはない。仍って、水洗式トイレや全自動洗濯機へと繋がるヘッダ分岐部11は、被制御対象とならない。また、近年、浴槽は、全自動又は半自動の給水機能を備える給湯器から給湯され、給湯される湯水の流量が予め設定されているものが主流となっているので、浴槽へと繋がるヘッダ分岐部11は、被制御対象とならない。
【0038】
(制御装置4について)
制御装置4は、信号線20を介して流量制御バルブ2と接続し、信号線30を介して流量センサ3と接続し、これらを集中管理している。制御装置4は、制御基盤40と、操作部41と、表示部42と、電源43と、タイマ44とを備え、これらがバス45を介して接続している。制御装置4は、利用者が操作し易い場所、例えば、リビングルーム、洗面化粧台及び台所などに設置されている。
【0039】
制御基盤40は、演算部(図示せず)と記憶部(図示せず)とを備える。制御基盤40は、流量センサ3から出力された流量パルスを信号線30を介して入力し、入力した流量パルスを積算してヘッダ管1内を流れる湯水の積算流量に換算し、換算した流量値を記憶部に記憶する。
【0040】
また、制御基盤40は、操作部41の操作に応じて、演算部が、記憶している流量値に基づいて各種データを生成する。ここで、各種データとは、住宅全体における、瞬間の水使用量データ、所定期間の水使用量データ、複数の所定期間の水使用量の比較データ、及び、毎年同月同日の水使用量の比較データなど、様々な水使用量に関するデータである。
【0041】
また、制御基盤40は、記憶部が、データ生成のための計算式及び計算処理の手順に関する情報を予め記憶している。これらの情報は、各種データを生成する際、記憶部から適宜読み出され、演算部により用いられる。
【0042】
また、制御基盤40は、流量制御バルブ2に対して全開制御処理を実行する。全開制御処理とは、制御基盤40が、減量制御を実行する場合、操作部41を介して入力された全開制御の指示を受け付けたこと、又は、流量センサ3から出力された流量パルスを入力したことをトリガーとして、一定の時間、流量制御バルブ2を全開状態にする処理である。なお、全開制御処理の手順については、後述にて詳しく説明する。
【0043】
操作部41は、各種ボタンを備えており、ボタンが押下されることにより、対応する処理の実行指示を制御基盤40に出力する。出力する指示とは、例えば、水使用量に関するデータの生成処理の実行指示、水使用量に関するデータの表示指示、指定開度制御処理の実行指示、及び、全開制御処理の実行指示などである。
【0044】
また、操作部41は、ボタンが押下されることにより、対応する数値を制御基盤40に出力する。出力する数値は、例えば、開度設定値、所定のキャンセル時間、所定の停止時間、及び、所定の解放時間などである。ここで、キャンセル時間及び解放時間とは、全開制御処理を実行させる時間である。また、停止時間とは、流量センサ3からの流量パルスの出力が中断したときからこれが再開されるまでの時間、即ち、ヘッダ管1内に湯水が残留している時間であって、時間を経過した場合に湯水が冷めた状態にあると判断するための基準である。
【0045】
表示部42は、操作部41の操作に応じて、開度設定値、所定のキャンセル時間、所定の停止時間、所定の解放時間、及び、制御基盤40で生成した水使用量に関するデータなどを出力する。ヘッダ制御システムは、「見える化」を実現することができる。
【0046】
また、制御基盤40は、操作部41の操作に応じて、流量制御バルブ2の開度を以下のように制御する。
【0047】
制御基盤40は、流量制御バルブ2がポテンショメータ式DCモータ20を備える場合、図2(a)に示すように、電源43からDCモータ20に電流を流してモータ軸を回転駆動させ、モータ軸の回転位置に応じてバルブの開度を変化させる。ポテンショメータ21は、モータ軸の回転位置を測定することにより、現在の開度を検出し、検出した開度の情報を制御基盤40に出力する。
【0048】
制御基盤40は、ポテンショメータ21から出力された開度情報を受け付け、受け付けた開度情報に応じて、更に、DCモータ20に電流を流してモータ軸を回転駆動させてバルブの開度を調整する。なお、制御基盤40は、記憶部が、バルブの開度に対応するモータ軸の回転位置を示す対照情報を記憶しており、演算部が、この対照情報を用い、現在の開度に応じた電流を流してモータ軸の回転位置を調整する。
【0049】
また、制御基盤40は、流量制御バルブ2がステッピングモータ22を備える場合、図2(b)に示すように、駆動パルスを出力し、駆動パルスと同期する電流を電源43からステッピングモータ22に流すことにより、モータ軸を回転させてバルブの開度を調整する。なお、制御基盤40は、記憶部が、バルブの開度に対応する駆動パルスを示す対照情報を記憶しており、演算部が、この対照情報を用い、所定の開度となるように駆動パルスを出力してモータ軸の回転位置を調整する。
【0050】
(タイマ44について)
制御基盤40は、流量制御バルブ2の開度を絞る減量制御を実行する場合、全開制御の指示を受け付けたこと、又は、流量センサ3から出力された流量パルスを入力したことをトリガーとして、タイマ44を用いて、流量制御バルブ2の開度を全開とする全開時間の計時を開始し、タイマ44の計時がキャンセル時間又は解放時間に到達したか否かを判定する。
【0051】
また、制御基盤40は、流量センサ3からの流量パルスの出力が中断したとき、タイマ44を用いて計時を開始し、これが再開されるまでの時間(以下「流量パルス中断時間」という。)を計時する。即ち、湯水の流れが止まり配管内に湯水が残留している時間であり、この時間が長くなるほど、残留湯水が冷めていく。
【0052】
このように、ヘッダ制御システムは、複数の装置から構成されており、これらの装置が動作することにより、住宅内での水使用量を節約する。以下、これらの装置の動作について説明する。
【0053】
(見える化について)
ヘッダ制御システムは、制御基盤40の記憶部に記憶してある流量値に基づいて各種データを生成し、生成したデータを表示部42を介して画面出力することにより、「見える化」を実現する。
【0054】
制御基盤40は、図3に示すように、流量センサ3から出力された流量パルスを信号線30を介して入力し(S101)、システムがONの状態にあるか否かを判定する(S102)。その結果、制御基盤40は、システムがONの状態でないと判定した場合(S102でNO)、処理を終了する。
【0055】
一方、制御基盤40は、システムがONの状態にあると判定した場合(S102でYES)、入力した流量パルスを積算し(S103)、積算した流量パルスをヘッダ管1内を流れる湯水の流量に換算し(S104)、換算した流量値を記憶部に記憶する(S105)。
【0056】
制御基盤40は、操作部41を介して表示指示を受け付けたか否かを判定し(S106)、表示指示を受け付けていないと判定した場合(S106でNO)、ステップS101に戻り、流量センサ3から出力された流量パルスを引き続き入力する。
【0057】
一方、制御基盤40は、表示指示を受け付けたと判定した場合(S106でYES)、記憶部から流量値を読み出し、読み出した流量値に基づく各種データから、表示部42に表示するための表示値を演算する(S107)。制御装置4は、例えば、「所定期間の水使用量データ」の表示指示を受け付けた場合、記憶部に記憶してある流量値に基づいて「所定期間の水使用量データ」を生成し、生成したデータから、表示部42に表示するための表示値を演算する。制御基盤40は、演算した表示値を表示部42を介して出力する(S108)。
【0058】
制御基盤40は、ステップS101に戻り、流量センサ3から出力された流量パルスを引き続き入力する。
【0059】
(最適制御について)
ヘッダ制御システムは、制御基盤40が、予め設定してある開度設定値に基づき流量制御バルブ2の開度を制御(指定開度制御)する。指定開度制御は、流量制御バルブ2の開度を絞る減量制御と、流量制御バルブ2の開度を開く増量制御とを含むものである。なお、指定開度制御処理については、流量制御バルブ2がポテンショメータ式DCモータ20を備える場合と流量制御バルブ2がステッピングモータ22を備える場合とで工程が異なるため、場合分けをして以下説明する。
【0060】
流量制御バルブ2がポテンショメータ式DCモータ20を備える場合、制御基盤40は、図4に示すように、指定開度制御処理を実行する。制御基盤40は、操作部41を介して開度設定値の入力を受け付け(S201)、受け付けた開度設定値に応じた目標開度を演算する(S202)。
【0061】
制御基盤40は、ポテンショメータ21を介して流量制御バルブ2の現在の開度を検出し(S203)、検出した現在の開度を変数jに代入するとともに、ステップS202で演算した目標開度を変数iに代入する(S204)。制御基盤40は、変数iと変数jとの差が零であるか否かを判定し(S205)、差が零であると判定した場合(S205でYES)、現在の開度が目標開度に到達したと判断し、処理を終了する。
【0062】
一方、制御基盤40は、差が零でないと判定した場合(S205でNO)、ポテンショメータ21から受け付けた開度情報に応じてDCモータ20を駆動させ(S206)、流量制御バルブ2の開度を調整する。制御基盤40は、ステップS203に戻り、差が零となるまで、現在の開度の検出を含む処理を繰り返す。
【0063】
これに対して、流量制御バルブ2がステッピングモータ22を備える場合、図5に示すように、制御基盤40は、指定開度制御処理を実行する。制御基盤40は、開度設定値の入力を受け付け(S301)、受け付けた開度設定値に応じた目標開度を演算する(S302)。
【0064】
制御基盤40は、駆動パルスを出力し(S303)、出力した駆動パルスに応じてステッピングモータ22を駆動させ、流量制御バルブ2の開度を調整する。制御基盤40は、調整した流量制御バルブ2の開度が目標開度に達したか否かを判定し(S304)、調整した開度が目標開度に達したと判定した場合(S304でYES)、処理を終了する。
【0065】
一方、制御基盤40は、調整した開度が目標開度に達していないと判定した場合(S304でNO)、ステップS303に戻り、駆動パルスの出力を含む処理を繰り返す。
【0066】
(全開制御処理について)
制御基盤40は、上述する指定開度制御処理において減量制御を実行する場合、全開制御の指示を受け付けたこと、又は、流量センサ3から出力された流量パルスを入力することをトリガーとして、全開制御処理を実行する。例えば、制御基盤40は、全開制御の指示を受け付けたことをトリガーとして全開制御処理を実行する場合、図6に示す処理を実行する。制御基盤40は、減量制御を実行する間に全開制御の指示を受け付けたか否かを判定し(S401)、指示を受け付けてないと判定した場合(S401でNO)、全開制御を実行することなく処理を一旦停止し、所定時間経過後にステップS401から再開する。
【0067】
一方、制御基盤40は、指示を受け付けたと判定した場合(S401でYES)、並行する指定開度制御処理を一旦停止し、タイマ44に全開時間を計時させ(S402)、減量制御の対象となる流量制御バルブ2の開度を全開状態にする全開制御を実行し(S403)、大量の湯水を水栓から吐水させる。
【0068】
制御基盤40は、全開時間が所定のキャンセル時間に到達したか否かを判定し(S404)、所定のキャンセル時間に到達していないと判定した場合(S404でNO)、ステップS402に戻り、全開制御を含む処理を継続する。
【0069】
一方、制御基盤40は、全開時間が所定のキャンセル時間に到達したと判定した場合(S404でYES)、流量制御バルブ2の全開制御処理を停止し、通常の指定開度制御処理を復帰させる。
【0070】
その結果、ヘッダ制御システムは、利用者の使用感を損ねることなく、水資源及びエネルギの節約に寄与することができる。
【0071】
また、制御基盤40は、流量センサ3から出力された流量パルスを入力したことをトリガーとして全開制御処理を実行する場合、制御基盤40は、図7に示す処理を実行する。制御基盤40は、減量制御を実行する間に、流量センサ3から出力された流量パルスを入力しているか否かを判定し(S501)、流量パルスを入力していないと判定した場合(S501でNO)、全開制御を実行することなく処理を一旦停止し、所定時間経過後にステップ501から再開する。
【0072】
一方、制御基盤40は、流量パルスを入力していると判定した場合(S501でYES)、ヘッダ分岐部11内に残留する湯水が流れ始めたと判断し、更に、入力している流量パルスが前回中断されたときから再開されるまでの時間、即ち、流量パルス中断時間が予め設定してある所定の停止時間より短いか否かを判定する(S502)。制御基盤40は、所定の停止時間より短いと判定した場合(S502でYES)、配管内に残留する湯水が冷めていないと判断し、全開制御を行うことなく処理を停止し、所定時間経過後にステップS501から再開する。
【0073】
一方、制御基盤40は、所定の停止時間以上であると判定した場合(S502でNO)、配管内に残留する湯水が冷めていると判断し、並行する指定開度制御処理を一旦停止し、タイマ44に全開時間を計時させ(S503)、減量制御の対象となる流量制御バルブ2の開度を全開状態にする全開制御を実行し(S504)、大量の湯水を水栓から吐水させる。
【0074】
制御基盤40は、全開時間が所定の解放時間に到達したか否かを判定し(S505)、所定の解放時間に到達していないと判定した場合(S505でNO)、ステップS502に戻り、全開制御を含む処理を継続する。
【0075】
一方、制御基盤40は、全開時間が所定の解放時間に到達したと判定した場合(S505でYES)、流量制御バルブ2の全開制御処理を停止し、通常の指定開度制御処理を復帰させる。
【0076】
その結果、上述したヘッダ制御システムの構成を、例えば、給湯用の配管系統に採用することにより、湯待ち時間が無駄に長くなることを回避し、利用者の不快感を和らげることができる。
【0077】
(作用について)
このように、ヘッダ流量制御システムは、表示部42を介して住宅内の水使用量に関するデータを画面出力(見える化)することにより、利用者に水使用量を意識付け、節水に対して積極的に取り組む意識を高める。また、シングルレバー式の水栓など、吐出調整し難くて全開か全閉かで操作される水栓に対して、使用時の吐出流量を最適化させて水の出過ぎを防ぎ、無駄に消費される水資源の削減に寄与する。
【0078】
実施の形態2.
また、本発明に係るヘッダ制御システムは、上述した実施の形態1の指定開度制御処理と異なり、任意のヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を検出し、検出した流量に応じて流量制御バルブ2の開度を実時間で調整する「フィードバック制御」を行ってもよい。以下、実施の形態2として、実施の形態1の構成とは異なる部分のみ説明し、対応する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
ヘッダ制御システムは、図8に示すように、給湯用と給水用とに分けられたヘッダ管1と、ヘッダ管1内の湯水の流れを制御する流量制御バルブ2と、ヘッダ管1内の湯水の流れを検出する流量センサ3と、これらを制御する制御装置4とを備える。
【0080】
(流量制御バルブ2及び流量センサ3について)
流量制御バルブ2は、少なくとも一つの任意のヘッダ分岐部11に取り付けられている。流量センサ3は、ヘッダ管1のヘッダ分岐部11の中程に取り付けられている。流量センサ3は、ヘッダ本体10から分水してヘッダ分岐部11に流れ込んだ湯水の流量を計測するものである。
【0081】
また、流量センサ3は、流量制御バルブ2が取り付けられたヘッダ分岐部11において、流量制御バルブ2よりヘッダ分岐部11の二次側に取り付けられている。その結果、流量センサ3は、流量制御バルブ2により減量制御された湯水の流量を正確に計測することができ、制御装置4は、正確に計測した湯水の流量をフィードバックすることにより、流量制御バルブ2の開度を実時間に且つ正確に制御することができる。
【0082】
また、任意のヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量の目標値(以下「流量設定値」という。)を指定することにより、任意の水栓から吐水する湯水の流量を減量制御することができる。例えば、洗面所の水栓に繋がるヘッダ分岐部11に対して、流量設定値を毎分6リットルと指定することにより、このヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量をフィードバック処理により動的に制御し、洗面所の水栓から吐水される湯水の流量を毎分6リットルにすることができる。
【0083】
(制御装置4について)
制御装置4は、流量センサ3から出力された流量パルスを信号線30を介して入力し、入力した流量パルスを積算して、ヘッダ分岐部11内を流れる湯水の積算流量を換算し、換算した流量値を記憶部に記憶する。
【0084】
また、制御基盤40は、操作部41の操作に応じて、演算部が、記憶してある流量値に基づいて演算するともに個々のヘッダ分岐部11を識別してヘッダ分岐部11毎に水使用量に関するデータを生成する。制御基盤40は、記憶部が、ヘッダ分岐部11に付された識別情報を予め記憶している。ヘッダ分岐部11の識別情報は、演算部が個々のヘッダ分岐部11を識別する際に記憶部から適宜読み取られて用いられる。
【0085】
また、制御基盤40は、操作部41の操作に応じて、演算部が全てのヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を合計することにより、住宅全体についての水使用量に関するデータを生成することができる。
【0086】
操作部41は、ボタンが押下されることにより、所定の情報及び数値を制御基盤40に出力する。出力する情報及び数値は、例えば、減量制御すべきヘッダ分岐部11の指定、データを生成すべきヘッダ分岐部11の指定、流量設定値、及び、一単位当たりの開度などである。ここで、一単位当たりの開度とは、後述する駆動決定処理が一回ループする場合に変化するバルブの開度を示す。
【0087】
表示部42は、操作部41の操作に応じて、流量設定値、指定されたヘッダ分岐部11についての水使用量に関するデータ、及び、住宅全体についての水使用量に関するデータなどを出力する。
【0088】
(見える化及び最適処理について)
ヘッダ制御システムは、制御基盤40の記憶部に記憶してある流量値に基づいて各種データを生成し、生成したデータを表示部42を介して画面出力するとともに、予め設定してある流量設定値に基づいて流量制御バルブ2の開度をフィードバック制御する。
【0089】
流量制御バルブ2がポテンショメータ式DCモータ20を備える場合、制御基盤40は、図9に示す処理を実行する。制御基盤40は、流量センサ3から出力された流量パルスを信号線30を介して入力し(S601)、システムがONの状態にあるか否かを判定する(S602)。その結果、制御基盤40は、システムがONの状態でないと判定した場合(S602でNO)、処理を終了する。
【0090】
一方、制御基盤40は、システムがONの状態にあると判定した場合(S602でYES)、入力した流量パルスを積算し(S603)、積算した流量パルスをヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量に換算する(S604)。
【0091】
制御基盤40は、換算した流量に基づき流量値表示処理を実行する(S605)。流量値表示処理の手順については、後述にて詳しく説明する。
【0092】
また、制御基盤40は、流量値表示処理を実行した後、流量制御バルブ2の駆動決定処理を実行する(S606)。駆動決定処理の手順については、後述にて詳細に説明する。
【0093】
また、制御基盤40は、駆動決定処理において、流量制御バルブ2の駆動を決定したか否かを判定し(S607)、駆動を決定していないと判定した場合(S607でNO)、ステップS601に戻り、ステップS601以降の処理を繰り返す。
【0094】
一方、制御基盤40は、駆動を決定したと判定した場合(S607でYES)、ポテンショメータ21を介して流量制御バルブ2の現在の開度を検出し(S608)、検出した現在の開度を変数jに代入するとともに、予め設定してある一単位当たりの開度に変数iを代入する(S609)。
【0095】
制御基盤40は、変数iと変数jとの差が零であるか否かを判定し(S610)、差が零であると判定した場合(S610でYES)、現在の開度が一単位当たりの開度に到達したと判断して、ステップS601に戻り、ステップS601以降の処理を繰り返す。
【0096】
一方、制御基盤40は、差が零ではないと判定した場合(S610でNO)、ステップS606の駆動決定処理にて決定された開閉方向に一単位当たりの開度分だけDCモータ20を駆動させ(S611)、ステップS608に戻り、差が零となるまで、現在の開度の検出を含む処理を繰り返す。
【0097】
これに対して、流量制御バルブ2がステッピングモータ22を備える場合、制御基盤40は、図10に示す処理を実行する。制御基盤40は、流量センサ3から出力された流量パルスを信号線30を介して入力し(S701)、システムがONの状態にあるか否かを判定する(S702)。その結果、制御基盤40は、システムがONの状態でないと判定した場合(S702でNO)、処理を終了する。
【0098】
一方、制御基盤40は、システムがONの状態にあると判定した場合(S702でYES)、入力した流量パルスを積算し、積算した流量をヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量に換算する(S704)。
【0099】
制御基盤40は、換算した流量に基づき流量値表示処理を実行する(S705)。流量値表示処理の手順については、後述にて詳しく説明する。
【0100】
また、制御基盤40は、流量値表示処理を実行した後、流量制御バルブ2の駆動決定処理を実行する(S706)。駆動決定処理の手順については、後述にて詳しく説明する。
【0101】
また、制御基盤40は、駆動決定処理において、流量制御バルブ2の駆動を決定したか否かを判定し(S707)、駆動を決定していないと判定した場合(S707でNO)、ステップS701に戻り、ステップS701以降の処理を繰り返す。
【0102】
一方、制御基盤40は、駆動を決定したと判定した場合(S707でYES)、駆動決定処理において決定された開閉方向であって一単位当たりの開度に応じた駆動パルスを出力し(S708)、駆動パルスに応じてステッピングモータ22がバルブの開度を調整する。このとき、ステッピングモータ22は、バルブを一単位当たりの開度分だけ開閉させる。
【0103】
制御基盤40は、ステップS701に戻り、流量パルスを引き続き入力し、ステップS702以降の処理を繰り返す。
【0104】
(流量値表示処理について)
次に、ステップS605(及びステップS705)で実行する流量値表示処理の手順について説明する。制御基盤40は、図11に示すように、ステップS604(及びステップS704)で換算した流量値を記憶部に記憶する(S801)。制御基盤40は、操作部41を介して表示指示を受け付けたか否かを判定し(S802)、表示指示を受け付けていないと判定した場合(S802でNO)、流量値表示処理を停止し、ステップS606(及びステップS706)に移行する。
【0105】
一方、制御基盤40は、表示指示を受け付けたと判定した場合(S802でYES)、記憶部から流量値を読み出し、読み出した流量値に基づく各種データから、表示部42に表示するための表示値を演算する(S803)。制御基盤40は、演算した表示値を表示部42を介して出力する(S804)。その後、制御基盤40は、流量値表示処理を停止し、ステップS606(及びステップS706)に移行する
【0106】
(駆動決定処理について)
次に、ステップS606(及びステップS706)で実行する駆動決定処理の手順について説明する。制御基盤40は、図12に示すように、流量センサ3から出力された流量パルスに応じて流量制御バルブ2の開閉を決定するフィードバック制御を実行する。制御基盤40は、ステップS604(及びステップS704)で換算した流量値を現在の流量値とみなして変数Q2に代入するとともに、流量設定値を変数Q1に代入する(S901)。
【0107】
制御基盤40は、変数Q1と変数Q2との差が零であるか否かと判定し(S902)、差が零であると判定した場合(S902でYES)、現在の流量値が流量設定値と一致していると判断し、モータの駆動を決定することなく、駆動決定処理を停止し、ステップS607(及びステップS707)に移行する。
【0108】
一方、制御基盤40は、差が零ではないと判定した場合(S902でNO)、現在の流量値が流量設定値と一致していないと判断し、更に、差が零未満であるか否かを判定する(S903)。その結果、制御基盤40は、差が零未満であると判定した場合(S903でYES)、現在の流量値が流量設定値を超えていると判断し、バルブを閉じる方向にモータを駆動させることを決定する(S904)。制御基盤40は、駆動決定処理を停止し、ステップS607(及びステップS707)に移行する。
【0109】
一方、制御基盤40は、差が零を超えていると判定した場合(S903でNO)、現在の流量値が流量設定値に達していないと判断し、バルブを開く方向にモータを駆動させることを決定する(S905)。制御基盤40は、駆動決定処理を停止し、ステップS607(及びステップS707)に移行する。
【0110】
(全開制御処理について)
制御基盤40は、上述する通常の開度制御処理において減量制御を実行する場合、全開制御の指示を受け付けたこと、又は、流量センサ3から出力された流量パルスを入力したことをトリガーとして、全開制御処理を実行する。なお、全開制御処理は、実施の形態1の全開制御処理の手順(図6及び図7参照)と同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
(作用について)
このように、ヘッダ制御システムは、流量センサ3が検出したヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量に基づき、流量制御バルブ2の開度を調整し、ヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量が常に所定の流量となるようにフィードバック制御するので、給水元圧の変動や他水栓での同時使用に拘わらず、各水栓から最適な流量の湯水を吐水させることができる。また、ヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を実時間で減量制御することができる。また、指定されたヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を細かく制御することができる。また、台所や洗面所の水栓は、吐出流量が使用感や快適感に影響するが、フィードバック制御により最適な流量を安定して吐水することができるので、利用者の使用感や快適感が損なわれない。
【0112】
実施の形態3.
また、本発明に係るヘッダ制御システムは、上述した実施の形態の構成と異なり、少なくとも一つの任意のヘッダ分岐部11に流量制御バルブ2が取り付けられ、流量制御バルブ2が取り付けられているヘッダ分岐部11に流量センサ3を取り付けることにより、ヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を検出し、検出した流量に応じて実時間でヘッダ分岐部11内を流れる湯水の流量を調整する「フィードバック制御」を行ってもよい(図13参照)。また、流量センサ3は、実施の形態2と同様、ヘッダ分岐部11において、流量制御バルブ2よりヘッダ分岐部11の二次側に取り付けられている。
【0113】
また、ヘッダ制御システムは、ヘッダ本体1の一次側の流入口に流量センサ3を取り付けることにより、全てのヘッダ分岐部11に流量センサ3を取り付けることなく、ヘッダ管1内を流れる湯水の総流量を検出することができる(図13参照)。
【0114】
実施の形態4.
また、本発明に係るヘッダ制御システムは、上述した実施の形態の構成と異なり、緊急用止水バルブ5を加えた構成であってもよい。以下、上述した実施の形態の構成と異なる部分のみ説明し、対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0115】
ヘッダ制御システムは、図14に示すように、給湯用と給水用とに分けられたヘッダ管1と、ヘッダ管1内の湯水の流れを制御する流量制御バルブ2と、ヘッダ管1内の湯水の流れを検出する流量センサ3と、これらを制御装置4と、緊急用止水バルブ5とを備える。
【0116】
(緊急用止水バルブ5について)
緊急用止水バルブ5は、内部に開閉弁を備え、この開閉弁が閉じることにより、ヘッダ管1内に湯水が流れ込むことがないように遮断する。
【0117】
(制御装置4について)
制御装置4は、信号線50を介して緊急用止水バルブ5と接続してこれを制御する。制御装置4は、遮断指示の入力を受け付けた場合、遮断指示に応じて緊急用止水バルブ5を閉じる。その結果、作業員は、ヘッダ管1内へ流れ込む湯水を遮断し、水栓のパッキンを交換するなどのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0118】
また、制御基盤40は、流量センサ3が湯水の流量の急激な増大(又は減少)を検出した場合、管路に異常が発生したと判断して緊急用止水バルブ5を自動的に作動させて開閉弁を閉じるようにしてもよい。
【0119】
なお、上述した実施の形態のうち、実施の形態1にあっては、特に、システムを構成する部品の点数が抑えられているので、比較的安価に構築することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 ヘッダ管
10 ヘッダ本体
11 ヘッダ分岐部
2 流量制御バルブ
20 DCモータ
21 ポテンショメータ
22 ステッピングモータ
3 流量センサ
4 制御装置
40 制御基盤
41 操作部
42 表示部
43 電源
44 タイマ(計時手段)
45 バス
5 緊急用止水バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14