【実施例1】
【0013】
図1〜
図8に示す実施例1の可変動弁機構9は、同一気筒に対して設けられた第一バルブ3及び第二バルブ4に対して設けられており、バルブスプリング(図示略)との共働で両バルブ3,4を往復駆動する。この可変動弁機構9は、次に示す駆動シャフト10と、カムシャフト20と、第一カムピース30と、第二カムピース40と、連結機構50と、切換装置60と、可変装置90とを含み構成されている。なお、実施例1,2では、便宜上、図(正面図)に合わせて、カムシャフト20の軸線方向の一方を左方Lといい、他方を右方Rという。また、カムシャフト20が回転する方向を回転方向Mといい、その反対方向を反回転方向Nという。
【0014】
[駆動シャフト10]
駆動シャフト10は、内燃機関の回転に従い回転する左右方向L,Rに延びるシャフトである。この駆動シャフト10の右端部には、右方Rに開口した有底円筒状の連結部12が設けられており、該連結部12の内周面には、左右方向L,Rに真っ直ぐ延びる複数本の溝状の内周側ストレートスプライン13が設けられている。
【0015】
[カムシャフト20]
カムシャフト20は、駆動シャフト10の右方延長線上に延びるパイプ状のシャフトであって、駆動シャフト10によって第一カムピース30を介して回転駆動される。このカムシャフト20には、円筒状のスライダギア22が外嵌されており、該スライダギア22は、その内周面に凹設された左右方向L,Rに延びる係合溝25が、カムシャフト20の外周面に突設されて左右方向L,Rに延びる突条状のキー21に係合することによって、カムシャフト20に対して左右方向L,Rには相対変位可能かつ周方向(回転方向M及び反回転方向N)には相対回動不能に係合している。そのスライダギア22の左部の外周面には、左方Lに進むに従い回転方向Mにずれる一方向側の捩れの外周側第一ヘリカルスプライン23が設けられている。また、そのスライダギア22の右部の外周面には、左方Lに進むに従い反回転方向Nにずれる他方向側の捩れの外周側第二ヘリカルスプライン24が設けられている。また、カムシャフト20には、可変装置90の連結ピン95を挿通させるための左右方向L,Rに延びる長孔29,29が貫設されている。
【0016】
[第一カムピース30]
第一カムピース30は、左部の外周面に駆動シャフト10の内周側ストレートスプライン13と噛み合う外周側ストレートスプライン31を備え、内周面にスライダギア22の外周側第一ヘリカルスプライン23と噛み合う内周側第一ヘリカルスプライン32を備えた円筒状の部材である。よって、この第一カムピース30は、駆動シャフト10に対しては、ストレートスプライン13,31どうしの噛み合いで左右方向L,Rに相対変位可能かつ周方向(回転方向M及び反回転方向N)に相対回動不能に係合している。また、カムシャフト20に対しては、ヘリカルスプライン23,32どうしの噛み合いで係合している。この第一カムピース30は、左右中間部の外周面に、第一ロッカアーム3rを介して第一バルブ3を駆動する第一駆動カム35を備え、その左方Lに、第一バルブ3を駆動しない側面視でみて真円形の第一休止カム36を備えている。
【0017】
[第二カムピース40]
第二カムピース40は、内周面にスライダギア22の外周側第二ヘリカルスプライン24と噛み合う内周側第二ヘリカルスプライン42を備えた円筒状の部材である。よって、カムシャフト20に対しては、ヘリカルスプライン24,42どうしの噛み合いで係合している。この第二カムピース40は、左右中間部の外周面に、第二ロッカアーム4rを介して第二バルブ4を駆動する第二駆動カム45を備え、その左方Lに、第二バルブ4を駆動しない側面視でみて真円形の第二休止カム46を備えている。また、この第二カムピース40は、左部に第一カムピース30の右部に外周側から当接することにより該第二カムピース40に対して第一カムピース30が径方向にずれるのを防止する係合部43(インロー・アウトハイ部)を備えている。また、この第二カムピース40の右部の外周面には、切換装置60の被係入部61が設けられている。
【0018】
[連結機構50]
連結機構50は、第一カムピース30と第二カムピース40とを左右方向L,Rには相対変位不能かつ周方向(回転方向M及び反回転方向N)には相対回動可能に連結した機構である。この連結機構50は、第二カムピース40の係合部43に貫設されて周方向に延びる連結孔54と、第一カムピース30の左端部の外周面に突設されて該連結孔54に係合した連結突起53とを含み構成されている。
【0019】
[切換装置60]
切換装置60は、連結機構50を介して連結された両カムピース30,40を左右方向L,Rに変位させることによって、両方の駆動カム35,45で両方のバルブ3,4を駆動する駆動状態と、両方の駆動カム35,45でいずれのバルブも駆動しない休止状態との間で切換を行うための機構である。この切換装置60は、次に示す被係入部61と、係入部材71と、回動装置81とを含み構成されている。
【0020】
被係入部61は、次に示す拘束溝65と、第一切換溝63と、第二切換溝68とを含み構成されている。拘束溝65は、第二カムピース40の外周面に凹設されてその周方向に環状に延びている。また、第一切換溝63は、第二カムピース40の外周面における拘束溝65の左方Lに凹設されて反回転方向Nに真っ直ぐ円弧状に延びる第一直進部63aと、該第一直進部63aの反回転方向N側の端部から反回転方向Nに進むに従い右方Rにずれる方向に延びて拘束溝65に合流する第一螺旋部63bとから構成されている。また、第二切換溝68は、第二カムピース40の外周面における拘束溝65の右方Rに凹設されて反回転方向Nに真っ直ぐ円弧状に延びる第二直進部68aと、該第二直進部68aの反回転方向N側の端部から反回転方向Nに進むに従い左方Lにずれる方向に延びて拘束溝65に合流する第二螺旋部68bとから構成されている。そして、第一切換溝63は、第一直進部63aと第一螺旋部63bとの配置により、駆動カム35,45のカムノーズ当接時にはカムピース30,40を第一直進部63aで左右方向L,Rに変位させない一方、ベース円当接時にカムピース30,40を第一螺旋部63bで左方Lに変位させるように構成されている。また、第二切換溝68は、第二直進部68aと第二螺旋部68bとの配置により、駆動カム35,45のカムノーズ当接時にはカムピース30,40を第二直進部68aで左右方向L,Rに変位させない一方、ベース円当接時にカムピース30,40を第二螺旋部68bで右方Rに変位させるように構成されている。
【0021】
係入部材71は、円筒状の部材であって、左右方向L,Rに延びる支持シャフト79に回動可能かつ左右方向L,Rには変位不能に外嵌されている。この係入部材71は、第二カムピース40の外周面にある被係入部61を間隙をおいて挟む第一アーム72と第二アーム77とをV字状に備えている。そして、第一アーム72の先端部内側に、一方向Pへの回動により第一切換溝63に係入し、他方向Qへの回動により拘束溝65から退出する第一係入部73を備えている。また、第二アーム77の先端部内側に、一方向Pへの回動により拘束溝65から退出し、他方向Qへの回動により第二切換溝68に係入する第二係入部78を備えている。よって、駆動状態と休止状態との間で切換を行う切換時には、一方向P又は他方向Qへの回動により、第一係入部73及び第二係入部78の一方が択一的に第一切換溝63又は第二切換溝68に係入するとともに、他方が拘束溝65から退出する。それによって、両カムピース30,40がカムシャフト20の回転力で左右方向L,Rの一方に変位する。また、切換を行わない駆動状態の時又は休止状態の時には、第一係入部73及び第二係入部78のいずれか一方が必ず拘束溝65に係入する。それによって、両カムピース30,40が左右方向L,Rに変位不能に拘束される。
【0022】
回動装置81は、油圧変化で係入部材71を一方向P及び他方向Qに回動させるための装置であって、次に示す、スプリング88と、油圧ピン83と、油圧室85と、油路86とを含み構成されている。スプリング88は、支持シャフト79に外嵌された捻りコイルバネであって、基端部は変位不能に固定されており、先端部で係入部材71を他方向Qに押圧する。油圧ピン83は、係入部材71の上方に設けられたカバー82の下面に凹設された取付穴84に突出可能に取り付けられており、下端部(先端部)で係入部材71を一方向Pに押圧する。油圧室85は、取付穴84の内底面(天井面)と油圧ピン83の外底面(上端面)との間に形成されており、油圧変化で油圧ピン83を下方に突出及び上方に退入させる。油路86は油圧室85に油圧を供給するための経路であって、カバー82の内部に設けられている。
【0023】
[可変装置90]
可変装置90は、スライダギア22を左右方向L,Rに変位させることによって、第一バルブ3の駆動タイミングに対する第二バルブ4の駆動タイミングを変更するための装置であって、次に示すコントロールシャフト92と、連結ピン95と、変位装置(図示略)とを含み構成されている。コントロールシャフト92は、パイプ状のカムシャフト20の内部に左右方向L,Rに変位可能に挿入された左右方向L,Rに延びるシャフトである。連結ピン95は、コントロールシャフト92に取り付けられて該コントロールシャフト92の径方向に突出したピンであって、カムシャフト20の長孔29,29を挿通してスライダギア22に係合することによって、コントロールシャフト92にスライダギア22を左右方向L,Rにも周方向(回転方向M及び反回転方向N)にも相対変位不能に連結している。変位装置(図示略)は、コントロールシャフト92を左右方向L,Rに変位させるための装置である。
【0024】
次に、第一バルブ3及び第二バルブ4の両方を駆動する駆動状態とその両方の駆動を休止する休止状態との間で切換を行う様子を、駆動状態から休止状態に切り換える休止切換時と、休止状態から駆動状態に切り換える駆動切換時とに分けて説明する。
【0025】
[1]休止切換時
駆動状態から休止状態に切り換える休止切換時には、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、油圧室85の油圧を下げることにより、係入部材71をスプリング88の復元力で他方向Qに回動させるとともに油圧ピン83を上方に退入させる。それによって、第一係入部73を拘束溝65から退出されるとともに、第二係入部78を第二切換溝68に係入させる。その状態で、カムシャフト20が回転すると、第一カムピース30及び第二カムピース40が第二切換溝68に沿って右方Rに変位して、第一駆動カム35が第一ロッカアーム3rに当接し、第二駆動カム45が第二ロッカアーム4rに当接する駆動状態から、第一休止カム36が第一ロッカアーム3rに当接し、第二休止カム46が第二ロッカアーム4rに当接する休止状態に切り換わる。
【0026】
[2]駆動切換時
休止状態から駆動状態に切り換える駆動切換時には、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、油圧室85の油圧を上げることにより、油圧ピン83を下方に突出させて係入部材71をスプリング88の復元力に抗して一方向Pに回動させる。それによって、第一係入部73を第一切換溝63に係入させるとともに、第二係入部78を拘束溝65から退出させる。その状態で、カムシャフト20が回転すると、第一カムピース30及び第二カムピース40が第一切換溝63に沿って左方Lに変位して、上記とは反対に休止状態から駆動状態に切り換わる。
【0027】
次に、駆動状態の時に、第二バルブ4の駆動タイミングを変更する様子を、第二バルブ4の駆動タイミングを遅くする駆動繰下時と、早くする駆動繰上時とに分けて説明する。
【0028】
[3]駆動繰下時
第二バルブ4の駆動タイミングを遅くする駆動繰下時は、
図8(a)に示すように、コントロールシャフト92でスライダギア22を右方Rに変位させる。このとき、駆動シャフト10及び第一カムピース30に対して、スライダギア22及びカムシャフト20が、一方向側に捩れる内周側第一ヘリカルスプライン32及び外周側第一ヘリカルスプライン23の噛み合いで反回転方向Nに回動する。また、このとき、スライダギア22及びカムシャフト20に対して、第二カムピース40が、他方向側に捩れる内周側第二ヘリカルスプライン42及び外周側第二ヘリカルスプライン24の噛み合いで反回転方向Nに回動する。それらの2種類の反回転方向Nへの回動の和により、第二カムピース40の回転位相が反回転方向Nに変化する。これにより、第一バルブ3の駆動タイミングは変化することなく、第二バルブ4の駆動タイミングのみが遅くなり、第一カムピース30に対する第二カムピース40の回転位相差gが増大する。なお、
図8に示す二重の矢印(→→)は、駆動シャフト10等に対するカムシャフト20等の回動と、そのカムシャフト20等に対する第二カムピース40の回動との和を示している。
【0029】
[4]駆動繰上時
第二バルブ4の駆動タイミングを早くする駆動繰上時は、
図8(b)に示すように、コントロールシャフト92でスライダギア22を左方Lに変位させる。このとき、駆動シャフト10及び第一カムピース30に対して、スライダギア22及びカムシャフト20が、一方向側に捩れる内周側第一ヘリカルスプライン32及び外周側第一ヘリカルスプライン23の噛み合いで回転方向Mに回動する。また、このとき、スライダギア22及びカムシャフト20に対して、第二カムピース40が、他方向側に捩れる内周側第二ヘリカルスプライン42及び外周側第二ヘリカルスプライン24の噛み合いで回転方向Mに回動する。それらの2種類の回転方向Mへの回動の和により、第二カムピース40の回転位相が回転方向Mに変化する。これにより、第一バルブ3の駆動タイミングは変化することなく、第二バルブ4の駆動タイミングのみが早くなり、第一カムピース30に対する第二カムピース40の回転位相差gが減少する。
【0030】
本実施例によれば、次の[A]〜[F]の効果を得ることができる。
[A]切換装置60と可変装置90とがあるため、切換装置60で両バルブ3,4の駆動/休止の切換を行うとともに、駆動状態の時には可変装置90で第二バルブ4の駆動タイミングを変更することができる。
【0031】
[B]切換装置60の第一切換溝63は、ベース円当接時に第一カムピース30及び第二カムピース40を左方Lに変位させるように構成され、第二切換溝68は、ベース円当接時に第一カムピース30及び第二カムピース40を右方Rに変位させるように構成されているので、両カムピース30,40を左方Lに変位させる際も右方Rに変位させる際も確実にベース円当接時内に変位を完了させることができる。
【0032】
[C]切換装置60の係入部材71は、一方向Pへの回動により、第一係入部73が第一切換溝63に係入するとともに第二係入部78が拘束溝65から退出し、他方向Qへの回動により、第一係入部73が拘束溝65から退出するとともに第二係入部78が第二切換溝68に係入するため、両方の係入部73,78が両方の切換溝63,68に同時に入る心配がない。また、係入部材71を一方向P及び他方向Qに回動させる1制御のみで切換を行うことができる。
【0033】
[D]切換装置60の回動装置81は、油圧変化で係入部材71を回動させるため、電磁アクチュエータで回動させる場合に比べて安価である。
【0034】
[E]可変装置90は、スライダギア22を軸線方向L,Rに駆動するコントロールシャフト92を、スライダギア22を回転方向Mに駆動するカムシャフト20とは別に備えているため、該コントロールシャフト92に加わる負荷及び摩擦を軽減して、該コントロールシャフト92を軸線方向L,Rに駆動する駆動力を小さく抑えることができる。
【0035】
[F]可変装置90は、駆動シャフト10及び第一カムピース30に対するスライダギア22及びカムシャフト20の回動と、そのスライダギア22及びカムシャフト20に対する第二カムピース40の回動との和により、第二カムピース40の回転位相を変更するため、第一カムピース30の回転位相を変更することなく、第二カムピース40の回転位相のみを大きく変更することができる。