(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873355
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】シームレスベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
B65G15/34
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-43183(P2012-43183)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-177237(P2013-177237A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 邦王
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 信彦
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−130222(JP,A)
【文献】
特開2010−269918(JP,A)
【文献】
特開2006−144847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/30−15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継目のない無端帯状の芯体に、ベルト周長方向に織り込まれる経糸とベルト幅方向に織り込まれる緯糸とで織製された平織の織布が用いられ、前記芯体の外周面と内周面とを覆う接着層が形成され、幅端面がカットエッジとされたシームレスベルトにおいて、前記織布の経糸に短繊維を用いた紡績糸を使用し、前記接着層を形成する接着剤の目付量は200〜300g/m2とされたことを特徴とするシームレスベルト。
【請求項2】
前記紡績糸が、前記短繊維を20〜30番手のものとして、この短繊維の2〜3本を10cm長さ当たり30〜50回撚り合わせたものである請求項1に記載のシームレスベルト。
【請求項3】
前記紡績糸に用いる短繊維の長さが30〜60mmである請求項1または2に記載のシームレスベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアに使用されるシームレスベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアの搬送ベルトには、帯状のベルトを継目で無端状に継いだ継ぎベルトと、継目のない無端帯状のシームレスベルトが用いられている。継目のないシームレスベルトは、継目の段差に起因する振動や引掛かり等が発生せず、搬送物が食品等の軽量物であっても安定して搬送することができる。
【0003】
このシームレスベルトの芯体には、通常、袋織等により無端状に織製された引裂強度の高い織布が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。この織布は経糸と緯糸を交互に浮き沈みさせて織る平織で形成されており、経糸と緯糸には連続した長繊維糸であるマルチフィラメント糸やモノフィラメント糸が使用され、経糸はベルト周長方向に、緯糸はベルト幅方向に織り込まれている。
【0004】
また、ベルトコンベア用のシームレスベルトの芯体は、通常、複数のベルトを同時に採取できるように広幅に織製され、コーティング処理等による接着層やラミネート加工等によるカバー層を形成した広幅のベルト成形体とされたのち、所定のベルト製品幅となるように幅切り裁断されている。このため、製造されたシームレスベルトの幅端面は、幅切り裁断されたカットエッジとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−207358号公報
【特許文献2】特開2004−149267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した幅端面がカットエッジとされたシームレスベルトは、ベルト走行時の蛇行や片寄り等によって、幅端面がベルトコンベアのフレームやカバー等と接触すると、裁断面とされた幅端面に露出する経糸や緯糸の切断端部がほつれるほつれ現象が発生することがある。
【0007】
特許文献1、2に記載されたように、経糸と緯糸に長繊維糸を使用した織布を芯体に用いた従来のシームレスベルトは、ほつれ現象によってほつれた長繊維糸が、ベルトコンベアのフレームやプーリ等に絡まると、ベルト周長方向に織り込まれた経糸の長繊維糸が続けてほつれ出し、ほつれ現象が止まらずに進展する問題がある。このように、ほつれ現象が進展すると、長くほつれ出して切れた長繊維糸が搬送物に付着したり混入したりし、特に、搬送物が食品である場合は、食品衛生や品質管理の面で重大な問題となる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、シームレスベルトの幅端面がカットエッジとされても、織布とされた芯体のほつれ現象が進展しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、継目のない無端帯状の芯体に、ベルト周長方向に織り込まれる経糸とベルト幅方向に織り込まれる緯糸とで織製された平織の織布が用いられ、
前記芯体の外周面と内周面とを覆う接着層が形成され、幅端面がカットエッジとされたシームレスベルトにおいて、前記織布の経糸に短繊維を用いた紡績糸を使用し
、前記接着層を形成する接着剤の目付量は200〜300g/m2とされた構成を採用した。
【0010】
すなわち、芯体に用いられる織布の経糸に短繊維を用いた紡績糸を使用することにより、カットエッジの幅端面でほつれ現象が発生しても、ベルト周長方向に織り込まれた経糸が続けてほつれ出すのを防止して、ほつれ現象が進展しないようにした。また、芯体を接着層で覆った場合に、短繊維の紡績糸は、長繊維のフィラメント糸に較べて、アンカー効果による接着剤との接着力が大きくなるので、ほつれ現象の発生も抑制できることが期待される。
【0011】
前記紡績糸は、前記短繊維を20〜30番手のものとして、この短繊維の2〜3本を10cm長さ当たり30〜50回撚り合わせたものとするとよい。この短繊維には、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、ナイロン繊維等の伸びが少ない繊維を用いるのが好ましい。
【0012】
前記紡績糸に用いる短繊維の長さは30〜60mmであることが好ましい。短繊維の長さが30mmでは、紡績糸の引張強度が低下したり、均斉度が整わなくなる不具合が生じる恐れがあり、短繊維の長さが60mmを超えると、ほつれ出し長さが長くなるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシームレスベルトは、芯体に用いられる織布の経糸に短繊維を用いた紡績糸を使用したので、カットエッジの幅端面でほつれ現象が発生しても、ベルト周長方向に織り込まれた経糸が続けてほつれ出すのを防止して、ほつれ現象が進展しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るシームレスベルトを使用したベルトコンベアを示す外観斜視図
【
図3】(a)はシームレスベルトの走行試験に用いたベルトコンベアを示す正面図、(b)は(a)のIII−III線に沿った断面図
【
図4】
図2のシームレスベルトの変形例を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係るシームレスベルト1を使用したベルトコンベア10を示す。このベルトコンベア10は食品を搬送するものであり、無端帯状のシームレスベルト1は、1つの駆動プーリ11と複数の従動プーリ12に巻回され、搬送面13を形成する部位のシームレスベルト1の下面側には複数の支持ローラ14が搬送方向に配列されている。
【0016】
図2は、前記シームレスベルト1の横断面を示す。この横断面の上面側が無端帯状の外周側、下面側が内周側となり、紙面に垂直な方向がベルト周長方向となる。ベルト幅方向となる左右方向両側の幅端面1aは、幅切り裁断されたカットエッジとされている。シームレスベルト1の芯体2は、ベルト周長方向に織り込まれた経糸3とベルト幅方向に織り込まれた緯糸4とで織製された織布で形成されている。この芯体2の外周面と内周面は、接着剤の糊引き処理によって形成された接着層5で覆われており、接着層5で覆われた芯体2の外周面はカバー層6で被覆されている。
【0017】
前記織布の経糸3は、繊維長が50mmの短繊維で20番手のポリエステル繊維2本を、10cm長さ当たり48回撚り合わせた紡績糸とされ、緯糸4は太さ660デシテックスのポリエステル繊維のモノフィラメント糸とされている。この織布は経糸3が50本/25mm、緯糸4が30本/25mmの密度の平織によって織製されている。
【0018】
前記接着層3を形成する接着剤は、エーテル系ウレタン、エステル系ウレタン、ポリカーボネイト系ウレタン等のウレタン系接着剤とされ、2本の回転ロール間に巻回した芯体2の外周面側から糊引き処理で塗布されることにより、芯体2の外周面を覆うとともに、織布の織目から裏側にはみ出して内周面も覆う接着層5を形成する。接着剤の目付量は200〜300g/m
2とされている。この接着層3は、芯体への水や油等の液体の浸潤を防止する役割をする。
【0019】
前記カバー層6は、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等の熱可塑性エラストマで形成され、熱プレス盤等によって熱融着されることにより、芯体2の外周面を被覆する。カバー層6の厚みは0.3mmとされている。このカバー層6は、シームレスベルト1の搬送面を平滑にするとともに、搬送物との間の適度な摩擦係数を確保する役割をする。
【実施例】
【0020】
実施例として、上述した芯体の織布の経糸に紡績糸を使用し、緯糸にモノフィラメント糸を使用したシームレスベルトを用意した。また比較例として、芯体の織布の経糸にポリエステル繊維のマルチフィラメント糸(太さ1100デシテックス、撚り合わせ本数1、撚り回数5回/10cm)を使用し、緯糸に実施例と同じモノフィラメント糸を使用して、同様の接着層とカバー層を形成したシームレスベルトも用意した。実施例と比較例の各シームレスベルトの寸法は、いずれも幅100mm、周長1500mmとした。
【0021】
上述した実施例と比較例の各シームレスベルトについて、試験用ベルトコンベアを用いた走行試験を行った。試験用ベルトコンベア20は、
図3(a)、(b)に示すように、1つの駆動プーリ21と4つの従動プーリ22を備えたものであり、搬送ラインにシームレスベルト1の一方の幅端面1aに接触させる当て板23を設置した。駆動プーリ21と各従動プーリ22の直径は30mm、当て板23の搬送方向長さは250mmとした。
【0022】
前記走行試験では、実施例と比較例の各シームレスベルトの走行速度を50m/min、ベルト張力を3N/mmとし、当て板23を幅端面1aに0.1N/mmの力で押し当てて、1000時間まで走行させ、幅端面1aでのほつれ現象を観察した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に、上記走行試験の結果を示す。経糸に長繊維のマルチフィラメント糸を使用した比較例のものは、68時間の走行でほつれ現象が観察され、経糸のほつれ長さが50mmとなったので、試験を途中で中止した。これに対して、経糸に短繊維の紡績糸を使用した実施例のものは1000時間走行させてもほつれ現象が発生しなかった。この試験結果より、経糸に短繊維の紡績糸を使用することにより、ほつれ現象の発生と進展を効果的に抑制できることが確認された。
【0025】
図4は、上記シームレスベルト1の変形例の横断面を示す。この変形例のシームレスベルト1は、上述した実施形態のものを内外2層に重ね合わせたものであり、左右方向両側の幅端面1aはカットエッジとされている。内周側のもののカバー層6は、内外2層を熱融着する中間層7とされている。
【0026】
上述した実施形態では、芯体の織布の緯糸にモノフィラメント糸を使用したが、緯糸にも紡績糸を使用するようにしてもよい。
【0027】
上述した実施形態では、シームレスベルトを食品の搬送に使用されるものとしたが、本発明に係るシームレスベルトは食品の搬送用に限定されることはなく、電気部品や機械部品等の搬送に使用することもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 シームレスベルト
1a 幅端面
2 芯体
3 経糸
4 緯糸
5 接着層
6 カバー層
7 中間層
10 ベルトコンベア
11 駆動プーリ
12 従動プーリ
13 搬送面
14 支持ローラ
20 ベルトコンベア
21 駆動プーリ
22 従動プーリ
23 当て板