【文献】
Rosa C. A. et al. 'Moniliella acetoabutans strain CBS 169.66 small subunit ribosomal RNA gene, partial sequence; internal transcribed spacer 1, 5.8S ribosomal RNA gene, and internal transcribed spacer 2, complete sequence; and large subunit ribosomal RNA gene, partial sequence', GenBank [online], 2009年2月9日, GenBank Accession No.EU252153, [2015年9月10日検索], インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/EU252153.1>
【文献】
Shin K. S. 'Moniliella suaveolens var. suaveolens large subunit ribosomal RNA gene, partial sequence', GenBank [online], 2004年1月1日, GenBank Accession No. AF335520, [2015年9月10日検索], インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/33340638>
【文献】
Thanh V. N. et al, 'Moniliella dehoogii strain KFP 211 26S ribosomal RNA gene, partial sequence', GenBank [online], 2012年5月14日, GenBank Accession No.JQ814874, [2015年9月10日検索], インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/386783631?sat=17&satkey=19115787>
【文献】
Int. J. Syst. Evol. Microbiol.,2009年,vol.59(Pt 2),p.425-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出を行うために、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてモニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ属真菌の種レベルでの検出を行う、請求項1記載の検出方法。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を行い、モニリエラ・アセトアブタンス(Moniliella acetoabutans)の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ・アセトアブタンスの種レベルでの検出を行う、請求項3記載の検出方法。
前記モニリエラ・アセトアブタンスの28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列が下記(a1)又は(b1)の塩基配列である、請求項1〜4のいずれか1項記載の検出方法。
(a1)配列番号7に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(b1)配列番号7に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・アセトアブタンス(Moniliella acetoabutans)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を行い、モニリエラ・スアヴェオレンス(Moniliella suaveolens)の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ・スアヴェオレンスの種レベルでの検出を行う、請求項3記載の検出方法。
前記モニリエラ・スアヴェオレンスの28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列が下記(c1)、(d1)、(c2)及び(d2)のいずれかの塩基配列である、請求項1〜3及び6のいずれか1項記載の検出方法。
(c1)配列番号8に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d1)配列番号8に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス(Moniliella suaveolens)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(c2)配列番号9に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d2)配列番号9に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス(Moniliella suaveolens)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を行い、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の種レベルでの検出を行う、請求項3記載の検出方法。
前記モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列が下記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列である、請求項1〜3及び8のいずれか1項記載の検出方法。
(e1)配列番号10に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f1)配列番号10に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e2)配列番号11に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f2)配列番号11に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e3)配列番号12に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f3)配列番号12に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(a1)及び/又は(b1)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、モニリエラ・アセトアブタンス(Moniliella acetoabutans)を検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項10又は11記載のオリゴヌクレオチド対。
(a1)配列番号7に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(b1)配列番号7に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・アセトアブタンス(Moniliella acetoabutans)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって前記(a1)及び/又は(b1)の塩基配列で表される核酸の一部を増幅でき、モニリエラ・アセトアブタンスを検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、請求項12記載のオリゴヌクレオチド対。
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(c1)、(d1)、(c2)及び(d2)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、モニリエラ・スアヴェオレンス(Moniliella suaveolens)を検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項10又は11記載のオリゴヌクレオチド対。
(c1)配列番号8に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d1)配列番号8に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス(Moniliella suaveolens)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(c2)配列番号9に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d2)配列番号9に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス(Moniliella suaveolens)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって前記(c1)、(d1)、(c1)及び(d1)のいずれかの塩基配列で表される核酸の一部を増幅でき、モニリエラ・スアヴェオレンスを検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、請求項14記載のオリゴヌクレオチド対。
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)を検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項10又は11記載のオリゴヌクレオチド対。
(e1)配列番号10に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f1)配列番号10に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e2)配列番号11に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f2)配列番号11に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e3)配列番号12に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f3)配列番号12に記載の塩基配列に対して90%以上の相同性を有しかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種(Moniliella suaveolens related species)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって前記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸の一部を増幅でき、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種を検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、請求項16記載のオリゴヌクレオチド対。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、モニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の特定の部分塩基配列、すなわち本領域に存在するモニリエラ属真菌にそれぞれ特異的な塩基配列部位(可変部位)にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド対を用いてモニリエラ属真菌の検出を行い、モニリエラ属真菌を種レベルで迅速かつ正確に検出する方法である。ここで、「可変部位」とは、28S rDNAのD1/D2領域中で塩基変異が蓄積しやすい部位であり、この部位の塩基配列は他菌種との間で大きく異なる。
【0014】
本発明における「モニリエラ属真菌」とは、担子菌類の1種で、酸性食品、乳製品、甘味食品からの検出例の報告の多い菌類である。
本明細書において、「rDNA」とは、タンパク質への翻訳の場であるリボゾームの遺伝情報をコードするDNAであり、「28S rDNA」とは、rDNAのうち28Sサブユニットの遺伝情報をコードするDNAである。
【0015】
本明細書における「種」とは、モニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列について分子系統分類学的手法を用いて作成した分子系統樹に基づいて分類した、モニリエラ属真菌の菌種群を意味する。
前記分子系統樹の作成方法としては特に制限はなく、通常の方法により作成することができる。例えば、近隣結合法(neighbor-joining method)、最大節約法(Maximum parsimony)、最尤法(Maximum likelihood estimation)、ベイズ法、非加重結合法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic mean)等を用いて作成することができる。本発明においては、近隣結合法を用いて分子系統樹を作成することが好ましい。
【0016】
本発明におけるモニリエラ属とは出芽型分生子と分節型分生子を有する酵母状の真菌である。
この属のうち、「モニリエラ・アセトアブタンス」とは、茶色、滑面の厚膜胞子を形成する。本菌種は酢酸に耐性があり、マヨネーズやドレッシングなどの酢酸添加食品の腐敗菌となる菌種である。また、「モニリエラ・スアヴェオレンス」とは、厚膜胞子を形成せず、バターやマーガリンなどの油成分の多い食品からの分離例が多い菌種である。また、「モニリエラ・スアヴェオレンス関連種」とは、モニリエラ・スアヴェオレンスのタイプストレインと形態学的に差が認められないが、分子系統的にモニリエラ・スアヴェオレンスとは離れた単一の分岐群を形成する菌種である。
【0017】
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0018】
本発明の検出方法は、モニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域中の可変部位に対応する核酸で表されるオリゴヌクレオチド対を用いることを特徴とする。
発明者等は、モニリエラ属真菌各種の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法によりモニリエラ属真菌各種の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、28S rDNAのD1/D2領域中に同一種内では保存性が高いが異なる種間で塩基配列の保存性が低く、種によって固有の塩基配列を有する可変部位を見い出した。この可変部位においてモニリエラ属真菌は種固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はモニリエラ属真菌を種レベルで迅速かつ正確に検出するための遺伝学的な指標として有用である。
【0019】
本発明の検出方法は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつモニリエラ・アセトアブタンスの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつモニリエラ・アセトアブタンスの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンスの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンスの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
前記オリゴヌクレオチド対を使用してモニリエラ属真菌を種レベルで検出し、同定することにより、モニリエラ属真菌の検出が可能となる。なお、本明細書における「検出」とは、分類学上で使用される「同定」も含むものである。
【0020】
モニリエラ属真菌の1種である、モニリエラ・アセトアブタンスの28S rDNAのD1/D2領域の可変部位を配列番号7に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号7に記載の塩基配列は、モニリエラ・アセトアブタンスIFM59903(CBS169.66)株の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を示す。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Mac_F1ともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Mac_R1ともいう)はそれぞれ、配列番号7に記載の塩基配列のうち127位〜145位までの領域及び355位〜374位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、モニリエラ・アセトアブタンスとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はモニリエラ・アセトアブタンスが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、モニリエラ・アセトアブタンスを種レベルで迅速かつ正確に検出することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればモニリエラ・アセトアブタンスのに特異的なプライマーとして用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR法による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、モニリエラ・アセトアブタンスのの28S rDNAのD1/D2領域と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりモニリエラ・アセトアブタンスを検出することが可能となる。
【0021】
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(a1)又は(b1)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(a1)配列番号7に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(b1)配列番号7に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつモニリエラ・アセトアブタンスの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0022】
モニリエラ属真菌の1種である、モニリエラ・スアヴェオレンスの28S rDNAのD1/D2領域の可変部位を配列番号8及び9に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号8に記載の塩基配列は、モニリエラ・スアヴェオレンスIFM60291(CBS126.42)株の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を、配列番号9に記載の塩基配列は、モニリエラ・スアヴェオレンスIFM60293(CBS542.781)株の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列をそれぞれ示す。
前記(c)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Msu_F1ともいう)及び前記(d)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Msu_R1ともいう)はそれぞれ、配列番号8及び9に記載の塩基配列のうち127位〜144位までの領域及び451位〜471位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、モニリエラ・スアヴェオレンスとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はモニリエラ・スアヴェオレンスが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、モニリエラ・スアヴェオレンスを種レベルで迅速かつ正確に検出することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればモニリエラ・スアヴェオレンスに特異的なプライマーとして用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR法による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、モニリエラ・スアヴェオレンスの28S rDNAのD1/D2領域と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりモニリエラ・スアヴェオレンスを検出することが可能となる。
【0023】
本発明において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(c1)、(d1)、(c2)及び(d2)のいずれかの塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(c1)配列番号8に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d1)配列番号8に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンスの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(c2)配列番号9に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d2)配列番号9に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンスの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0024】
モニリエラ属真菌の1種である、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の28S rDNAのD1/D2領域の可変部位を配列番号10〜12に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号10に記載の塩基配列は、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種IFM60348(CBS157.58)株のrDNAのITS領域の部分塩基配列を、配列番号11に記載の塩基配列は、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種IFM60349(CBS221.32)株の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を、配列番号12に記載の塩基配列は、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種IFM60350(CBS223.32)株の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列をそれぞれ示す。
前記(e)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Msu_sp._1Fともいう)及び前記(f)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Msu_sp._1Rともいう)はそれぞれ、配列番号10に記載の塩基配列のうち17位〜39位までの領域及び415位〜434位までの領域、配列番号11に記載の塩基配列のうち17位〜39位までの領域及び403位〜422位までの領域、配列番号12に記載の塩基配列のうち17位〜39位までの領域及び403位〜422位までの領域、にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種とその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はモニリエラ・スアヴェオレンス関連種が固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種を種レベルで迅速かつ正確に検出することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればモニリエラ・スアヴェオレンス関連種に特異的なプライマーとして用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR法による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の28S rDNAのD1/D2領域と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりモニリエラ・スアヴェオレンス関連種を検出することが可能となる。
【0025】
本発明において、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(e1)配列番号10に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f1)配列番号10に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e2)配列番号11に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f2)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e3)配列番号12に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列又はその相補配列
(f3)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0026】
本発明の検出方法に用いる前記(a)〜(f)のオリゴヌクレオチドは、配列番号1〜6のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドが好ましい。また、本発明の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドは、モニリエラ・アセトアブタンス、モニリエラ・スアヴェオレンス又はモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の種レベルでの検出に使用できれば、配列番号1〜6のいずれかに記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列で表されるオリゴヌクレオチドであってもよく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。また、本発明で用いることができるオリゴヌクレオチドには、配列番号1〜6のいずれかに記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、さらに好ましくは1から3個、よりさらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、置換又は挿入されており、かつモニリエラ属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1〜6のいずれかに記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0027】
前記オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0028】
前記オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、モニリエラ属真菌の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0029】
前記オリゴヌクレオチド対を用いてモニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列で表される核酸の存在を確認し、モニリエラ属真菌を種レベルで検出する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法、リアルタイムPCR法、LAMP法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0030】
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、核酸プローブ及び/又は核酸プライマーとして用いることができる。
【0031】
核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。このようにして標識化されたオリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することでモニリエラ属真菌を種レベルで検出することができる。核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標識を目示として標的核酸を捕捉することもできる。
【0032】
本発明の検出方法において、モニリエラ属真菌を種レベルで検出するために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに/又は前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いたハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。モニリエラ・アセトアブタンスを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。モニリエラ・スアヴェオレンスを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。モニリエラ・スアヴェオレンス関連種を検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。
【0033】
被検体中のモニリエラ属真菌を種レベルで検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出方法により検出すればよい。上記核酸プローブはモニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の可変部位と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のモニリエラ属真菌を迅速かつ正確に種レベルで検出することができる。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0034】
本発明の検出方法において、モニリエラ属真菌の検出を行うため、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてモニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。DNA断片を増幅する方法として特に制限はなく、PCR法、リアルタイムPCR法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法、RCA(Rolling-circle amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法など通常の方法を用いることができる。本発明においては、PCR法を用いるのが好ましい。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いモニリエラ属真菌の検出を行う場合について詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
【0035】
本発明において、モニリエラ・アセトアブタンスを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)からなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行い、モニリエラ・アセトアブタンスの28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列(好ましくは、前記(a1)及び(b1)のいずれかの塩基配列)で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ・アセトアブタンスの種レベルでの検出を行うのが好ましい。ここで、(b1)の塩基配列は、配列番号7に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列が好ましく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることがさらに好ましく、相同性が97%以上であることが特に好ましい。ここで、本発明における「モニリエラ・アセトアブタンス」は、配列番号7に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を有するものの他、配列番号7に記載の塩基配列との相同性が80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の塩基配列を28S rDNAのD1/D2領域に含むものも包含する。なお、塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、PCRによって前記(a1)及び/又は(b1)の塩基配列で表される核酸又はその一部を増幅でき、モニリエラ・アセトアブタンスを種レベルで迅速かつ正確に検出するための核酸プライマーとして機能し得る。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をモニリエラ・アセトアブタンス検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0036】
本発明において、モニリエラ・スアヴェオレンスを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)からなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行い、モニリエラ・スアヴェオレンスの28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列(好ましくは、前記(c1)、(d1)、(c2)及び(d2)のいずれかの塩基配列)で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ・スアヴェオレンスの種レベルでの検出を行うのが好ましい。ここで、(d1)の塩基配列は、配列番号8に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列が好ましく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることがさらに好ましく、相同性が97%以上であることが特に好ましい。また、(d2)の塩基配列は、配列番号9に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列が好ましく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることがさらに好ましく、相同性が97%以上であることが特に好ましい。ここで、本発明における「モニリエラ・スアヴェオレンス」は、配列番号8又は9に記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を有するものの他、配列番号8及び9の少なくとも一方に記載の塩基配列との相同性が80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の塩基配列を28S rDNAのD1/D2領域に含むものも包含する。なお、塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドは、PCRによって前記(c1)、(d1)、(c2)及び(d2)のいずれかの塩基配列で表される核酸又はその一部を増幅でき、モニリエラ・スアヴェオレンスを種レベルで迅速かつ正確に検出するための核酸プライマーとして機能し得る。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をモニリエラ・スアヴェオレンス検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0037】
本発明において、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種を検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)からなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行い、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列(好ましくは、前記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列)で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の種レベルでの検出を行うのが好ましい。ここで、(f1)の塩基配列は、配列番号10に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列が好ましく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることがさらに好ましく、相同性が97%以上であることが特に好ましい。また、(f2)の塩基配列は、配列番号11に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列が好ましく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることがさらに好ましく、相同性が97%以上であることが特に好ましい。また、(f3)の塩基配列は、配列番号12に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列が好ましく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることがさらに好ましく、相同性が97%以上であることが特に好ましい。ここで、本発明における「モニリエラ・スアヴェオレンス関連種」は、配列番号10〜12のいずれかに記載の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を有するものの他、配列番号10〜12の少なくともいずれかに記載の塩基配列との相同性が80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の塩基配列を28S rDNAのD1/D2領域に含むものも包含する。なお、塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドは、PCRによって前記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸又はその一部を増幅でき、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種を種レベルで迅速かつ正確に検出するための核酸プライマーとして機能し得る。したがって、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をモニリエラ・スアヴェオレンス関連種検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0038】
PCRの条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜65℃(好ましくは59〜62℃)で約5〜60秒、より好ましくは61℃で60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜65℃(好ましくは59〜62℃)で約5〜60秒、より好ましくは61℃で60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜65℃(好ましくは59〜62℃)で約5〜60秒、より好ましくは61℃で60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
【0039】
本発明において、遺伝子断片の確認は通常の方法で行うことができる。例えば増幅産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、増幅産物量を経時的に計測する方法、増幅産物の塩基配列を解読する方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。また、本発明において、増幅産物の検出は通常の方法で行うことができる。例えば増幅反応時に放射性物質などで標識されたヌクレオチドを取り込ませる方法、蛍光物質などで標識されたプライマーを用いる方法、増幅したDNA2本鎖の間にエチジウムブロマイドなどのDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入れ込む方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、増幅したDNA2本鎖の間にDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込ませる方法が好ましい。
検体に検出対象真菌が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCRを行い、得られたPCR産物について電気泳動を行うと、特定のサイズでDNA断片が確認される。具体的には、検体にモニリエラ・アセトアブタンスが含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にモニリエラ・スアヴェオレンスが含まれる場合、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約360bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にモニリエラ・スアヴェオレンス関連種が含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約380bpのサイズでDNA断片が確認される。
このような操作を行うことにより、検体に検出対象真菌が含まれているかを確認することができる。
【0040】
本発明において、モニリエラ属真菌の同定を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いて被検体の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を決定し、該部分塩基配列が前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列に含まれるか否かを確認することで、前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しモニリエラ属真菌を種レベルで検出することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有する28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいて前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しモニリエラ属真菌の種レベルの検出を行うものである。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに/又は前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いてPCRを行い前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸の一部を増幅して増幅産物の有無を確認し、得られる増幅産物の塩基配列と前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列とを比較し、前記(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(c2)、(d2)、(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する。増幅産物の塩基配列が、前記(a1)又は(b1)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をモニリエラ・アセトアブタンスと同定することができ、前記(c1)、(d1)、(c2)及び(d2)のいずれかの塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をモニリエラ・スアヴェオレンスと同定することができ、前記(e1)、(f1)、(e2)、(f2)、(e3)及び(f3)のいずれかの塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をモニリエラ・スアヴェオレンス関連種と同定することができる。このようにして、モニリエラ・アセトアブタンス、モニリエラ・スアヴェオレンス及びモニリエラ・スアヴェオレンス関連種などのモニリエラ属真菌を種レベルで迅速かつ正確に検出することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0041】
本発明において、増幅反応に用いられるプライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入することができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、合成後、吸着カラム、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動法を用いて精製したものを用いることもできる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、通常の方法を使用して合成できる。
【0042】
本発明において使用される検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体等を用いることができる。
検体からゲノムDNAを調製する方法としては、モニリエラ属真菌の検出を行うのに未精製の状態でも十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルムで処理したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0043】
本発明のモニリエラ属真菌検出用キットは、前記本発明のオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド対を核酸プローブ又は核酸プライマーとして含有するものである。本発明のキットは、前記核酸プローブ及び/又は核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対によって検出反応が可能であることを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の方法により増幅される領域を含んだゲノムDNAが挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
(1)分子系統樹の作成、及びモニリエラ属真菌の分類
モニリエラ属真菌の各菌種の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列をDNA data bank of Japan(DDBJ:http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)のARSA検索、及びNL1プライマー(5’-GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG-3’:配列番号13)とNL4プライマー(5’-GGTCCGTGTTTCAAGACGG-3’:配列番号14)(The fungal homorph:Mitotic and plemorphic speciation in fungal systematics.,Wallingford:CAB international参照)を用いたPCR(変性温度95℃1分、アニーリング温度53℃1分、伸長温度72℃1分の35サイクル)で得られたPCR産物の解析により得た。PCR産物は、BigDye terminator Ver.1.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウェア‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
得られた塩基配列をClustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を使用してアライメント解析を行い、ソフトウェアNJPLOTを用いて近隣結合法による解析を行い、分子系統樹を作成した。作成した分子系統樹を
図1に示す。
図1に示すように、供託機関にはモニリエラ・スアヴェオレンスとして登録されている菌株の中でも、IFM60348株、IFM60349株及びIFM60350株は、モニリエラ・スアヴェオレンスIFM60291(CBS126.42)株との間で、28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列の相同性がそれぞれ85.1%、85.1%及び85.3%と総じて低く、かつ分子系統樹では単一の分岐群を形成したため、モニリエラ・スアヴェオレンスとは別種と考えられる。そのため本発明では、これらの3株をモニリエラ・スアヴェオレンス関連種と呼称し、モニリエラ・スアヴェオレンスとは区別して独立した種として扱う。本種もチーズなどからの分離例があり、食品衛生上重要である。
【0046】
(2)モニリエラ属真菌に特異的な28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列の解析
下記の方法により、モニリエラ属真菌各種の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定した。
PDA(ポテトデキストロース寒天)斜面培地にて30℃で2〜5日間暗所培養した菌体から、GenとるくんTM(タカラバイオ社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとしてNL1(5’-GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG-3’:配列番号13)及びNL4(5’-GGTCCGTGTTTCAAGACGG-3’:配列番号14)を使用した。増幅条件は、変性温度95℃、アニーリング温度55℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver.1.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウェア‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したモニリエラ属真菌各種や、各種菌類の公知の28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、モニリエラ・アセトアブタンス、モニリエラ・スアヴェオレンス及びモニリエラ・スアヴェオレンス関連種にそれぞれ特異的な塩基配列を含有する28S rDNAのD1/D2領域中の特定領域の塩基配列(配列番号1〜6)を決定した。
【0047】
(3)プライマーの設計
上記で決定したモニリエラ・アセトアブタンス、モニリエラ・スアヴェオレンス及びモニリエラ・スアヴェオレンス関連種にそれぞれ特異的な塩基配列部位をもとに、配列番号1の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Mac_F1プライマー)、配列番号2の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Mac_R1プライマー)、配列番号3の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Msu_F1プライマー)、配列番号4の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Msu_R1プライマー)、配列番号5の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Msu_sp._1Fプライマー)、及び配列番号6の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Msu_sp._1Rプライマー)を設計し、シグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
前記の各プライマーは、モニリエラ・アセトアブタンス、モニリエラ・スアヴェオレンス及びモニリエラ・スアヴェオレンス関連種の28S rDNAのD1/D2領域の各特定領域の塩基配列に基づき設計したものである。
【0048】
(4)モニリエラ・アセトアブタンスの検出
設計したMac_F1プライマー及びMac_R1プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちモニリエラ・アセトアブタンス、その他のモニリエラ属真菌、及び飲食品製造環境からの検出例の多い真菌等としては、表1〜3に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で2〜5日間暗所培養を行った。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0053】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Mac_F1プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びMac_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、97℃、10分間の処理後、(i)97℃、1分間の熱変性反応、(ii)61℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行い、反応液を72℃で10分間保持した。
【0054】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファー(Nucleic Acid sample loading buffer 5×(BIO RAD社製))0.5μLと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(125V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を
図2〜4に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、
図2は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図3は表2に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図4は表3に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。なお、分子量マーカーとして、EZ Load 100bp molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0055】
その結果、モニリエラ・アセトアブタンスのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、モニリエラ・アセトアブタンス以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、モニリエラ・アセトアブタンスを種レベルで特異的に検出することができる。
【0056】
(5)モニリエラ・スアヴェオレンスの検出
設計したMsu_F1プライマー及びMsu_R1プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちモニリエラ・スアヴェオレンス、その他のモニリエラ属真菌、及び飲食品製造環境からの検出例の多いでの事故事例で報告されている真菌等としては、表4及び5に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で2〜5日間暗所培養を行った。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0060】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Msu_F1プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びMsu_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、97℃、10分間の処理後、(i)97℃、1分間の熱変性反応、(ii)61℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行い、反応液を72℃で10分間保持した。
【0061】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファー(Nucleic Acid sample loading buffer 5×(BIO RAD社製))0.5μLと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(125V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を
図5及び6に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、
図5は表4に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図6は表5に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。なお、分子量マーカーとして、EZ Load 100bp molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0062】
その結果、モニリエラ・スアヴェオレンスのゲノムDNAを含む試料では、約360bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、モニリエラ・スアヴェオレンス以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、モニリエラ・スアヴェオレンスを種レベルで特異的に検出することができる。
【0063】
(6)モニリエラ・スアヴェオレンス関連種の検出
設計したMsu_sp._1Fプライマー及びMsu_sp._1Rプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちモニリエラ・スアヴェオレンス関連種、その他のモニリエラ属真菌、及び飲食品製造環境からの検出例の多い真菌等としては、表6〜8に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で2〜5日間暗所培養を行った。
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0068】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Msu_sp._1Fプライマー(20pmol/μL)0.5μL及びMsu_sp._1Rプライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、97℃、10分間の処理後、(i)97℃、1分間の熱変性反応、(ii)61℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行い、反応液を72℃で10分間保持した。
【0069】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファー(Nucleic Acid sample loading buffer 5×(BIO RAD社製))0.5μLと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(125V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を
図7〜9に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、
図7は表6に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図8は表7に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図9は表8に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。なお、分子量マーカーとして、EZ Load 100bp molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0070】
その結果、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種のゲノムDNAを含む試料では、約380bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、モニリエラ・スアヴェオレンス関連種を種レベルで特異的に検出することができる。
【0071】
上記の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、モニリエラ属真菌の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列の存在を確認することができ、モニリエラ属真菌を種レベルで特異的に検出できることがわかる。したがって、本発明の方法によれば、従来の方法と比較して、種レベルでより迅速かつより正確にモニリエラ属真菌を検出することが可能である。