特許第5873368号(P5873368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873368
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】無機質焼結体製造用バインダー
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/632 20060101AFI20160216BHJP
   C08F 261/12 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C04B35/00 108
   C08F261/12
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-72394(P2012-72394)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-121906(P2013-121906A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-243878(P2011-243878)
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 康晴
(72)【発明者】
【氏名】三箇山 郁
(72)【発明者】
【氏名】石川 由貴
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−297348(JP,A)
【文献】 特表2005−534778(JP,A)
【文献】 特開平09−031124(JP,A)
【文献】 特開平03−031305(JP,A)
【文献】 特開2002−104878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/632
C08F 261/12
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットとを有するグラフト共重合体を含有する無機質焼結体製造用バインダーであって、
前記ポリビニルブチラールは、重合度が800〜4000、水酸基量が20〜40モル%、ブチラール化度が60〜80モル%、かつ、ブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率が4〜15であり、
前記ポリ(メタ)アクリル酸類を構成する(メタ)アクリル酸類は、メタクリル酸類を90重量%以上含有する
ことを特徴とする無機質焼結体製造用バインダー。
【請求項2】
ポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットとを有するグラフト共重合体は、ポリビニルブチラールからなるユニットを10〜90重量%含有し、ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットを10〜90重量%含有することを特徴とする請求項1記載の無機質焼結体製造用バインダー。
【請求項3】
ポリ(メタ)アクリル酸類を構成する(メタ)アクリル酸類は、メチルメタクリレート又はイソブチルメタクリレートを30重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の無機質焼結体製造用バインダー。
【請求項4】
ポリ(メタ)アクリル酸類を構成する(メタ)アクリル酸類は、分子内にカルボキシル基、水酸基、エポキシ基又はエーテル基を有する(メタ)アクリル酸類を5重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の無機質焼結体製造用バインダー。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の無機質焼結体製造用バインダー、可塑剤、有機溶剤、無機質微粒子、及び、分散剤を含有することを特徴とする無機質焼結体製造用ペースト。
【請求項6】
請求項5記載の無機質焼結体製造用ペーストを用いてなることを特徴とするセラミックグリーンシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして使用した場合に、薄膜でも充分なシート強度を有するセラミックグリーンシートが得られるとともに、焼成時におけるシートの欠陥が無く、熱分解性に優れる無機質焼結体製造用バインダー、並びに、該無機質焼結体製造用バインダーを用いた無機質焼結体製造用ペースト及びセラミックグリーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種無機質焼結体を製造する方法としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ムライト、炭化珪素、窒化珪素、チタン酸バリウム等の無機質粉末に、種々の熱可塑性樹脂や有機化合物等のバインダーを混合してグリーン成形体とし、得られた成形体を焼成することによってバインダーを分解、飛散させながら無機質粉末を焼結させる方法が広く行われている。
【0003】
例えば、セラミック回路基盤、積層セラミックコンデンサ、薄層クロマトグラフィー用分離板等を製造する場合においては、シート状に薄膜成形されたセラミックグリーンシートが用いられる。
セラミックグリーンシートは、セラミック原料粉末とバインダー樹脂、可塑剤、消泡剤、分散剤及び有機溶剤等をボールミル等の混合装置により均一に混合してスラリーを調整し、このスラリーを支持体に塗布した後、溶剤の乾燥除去を行うことによって製造される。
【0004】
特に、積層セラミックコンデンサを製造する場合には、支持体には離型処理を施したPETフィルムが用いられ、セラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等によって塗布した後に支持体であるPETフィルムから剥離し、これを複数枚積層して加熱プレスすることで積層体を作製し、ついで、加熱焼成することによってバインダー樹脂を熱分解して除去することで製造される。
【0005】
このようなセラミックグリーンシートに使用されるバインダーは、焼成時における熱分解性に優れ、かつ、セラミックグリーンシートとした際に充分なシート強度を発現することが求められる。特に、近年、積層セラミックコンデンサは小型化や大容量化が求められ、より薄い電極間距離の積層体を作製するため、上記特性において、より高い性能を有するバインダーが求められている。例えば、特許文献1には、重合度1200〜2400のポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートを作製する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、セラミックグリーンシートの薄膜化が更に進むと、従来のバインダーを用いて成形した場合、充分なシート強度が得られず、剥離時にセラミックグリーンシートが破損する等の問題があった。また、熱分解性に劣るため、バインダーの一部が分解焼失しないで焼結体内に残留炭化物として残存したり、焼結工程で急激に分解飛散することにより成形体にクラックや反りや膨れ等が起こったりする等の問題があり、満足し得るバインダーは得られていない。
【0007】
例えば、ポリビニルブチラール樹脂をバインダーとして用いると、製造されたセラミックグリーンシートを焼成処理した場合の熱分解性に劣り、焼成後に残留カーボンが多いという問題点があった。
一方、アクリル樹脂は熱分解性に優れ、焼成後の残留カーボンは少なくなるが、このアクリル樹脂をバインダーとして製造されたセラミックグリーンシートは強度が弱いという欠点があり、これを改良するため、アクリル樹脂を多量に配合する必要があった。そのために、焼成処理において、得られる脱脂体の急激な体積収縮に伴う割れやクラックが発生し易く、また、焼成にも長時間を要するという問題点があった。
【0008】
これらの問題に対し、焼成時の分解性とシート強度に優れたバインダーとして、例えば、特許文献2には、ポリビニルブチラール樹脂が存在する環境下でアルキル(メタ)アクリレートを重合したグラフト共重合体からなるバインダーが開示されている。また、特許文献3には、ポリビニルブチラール樹脂にビニル基を導入したポリビニルブチラール樹脂を用いて(メタ)アクリル酸エステルをグラフトさせたグラフト共重合体を含むバインダーが開示されている。
しかしながら、これらの文献に記載のバインダーを用いた場合においても、厚さ5μm以下の薄膜のセラミックグリーンシートを作製する場合には、充分なシート強度が得られず、また、焼成時における分解性が不充分となったり、体積収縮に伴う割れやクラックによって無機質焼結体シートに欠陥が発生する等の不具合が発生して、セラミックコンデンサの電気特性が低下したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3193022号公報
【特許文献2】特許第4637985号公報
【特許文献3】特開2004−331413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして使用した場合に、薄膜でも充分なシート強度を有するセラミックグリーンシートが得られるとともに、焼成時におけるシートの欠陥が無く、熱分解性に優れる無機質焼結体製造用バインダー、並びに、該無機質焼結体製造用バインダーを用いた無機質焼結体製造用ペースト及びセラミックグリーンシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットとを有するグラフト共重合体を含有する無機質焼結体製造用バインダーであって、前記ポリビニルブチラールは、重合度が800〜4000、水酸基量が20〜40モル%、ブチラール化度が60〜80モル%、かつ、ブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率が4〜15であり、前記ポリ(メタ)アクリル酸類を構成する(メタ)アクリル酸類は、メタクリル酸類を90重量%以上含有する無機質焼結体製造用バインダーである。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
本発明者らは、特定の構造を有するポリビニルブチラールとポリ(メタ)アクリル酸類とのグラフト共重合体を、無機質焼結体を形成するためのバインダーとして用いた場合に、得られる無機質焼結体のシート強度が充分に高く、焼成時におけるシートの欠陥が無く、かつ、熱分解性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の無機質焼結体製造用バインダーは、ポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットとを有するグラフト共重合体(以下、単にグラフト共重合体ともいう)を含有する。
本発明において、「ポリビニルブチラールからなるユニット」及び「ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニット」とは、グラフト共重合体中に存在している「ポリビニルブチラール」、「ポリ(メタ)アクリル酸類」のことをいう。
また、ポリビニルブチラールからなるユニット及びポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットを有するグラフト共重合体は、主鎖を構成する「ポリビニルブチラールからなるユニット」又は「ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニット」に、該主鎖とは異なる側鎖を構成する「ポリビニルブチラールからなるユニット」又は「ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニット」が結合した分岐状の共重合体のことをいう。
【0014】
上記ポリビニルブチラールからなるユニット及びポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットを有するグラフト共重合体は、グラフト共重合体であることで、セラミックグリーンシート用のバインダーとして使用した場合に、高いシート強度を有するグリーンシートを得ることができ、また、均一な薄膜シートを得ることができる。これは、グラフト共重合体とすることによってバインダー樹脂中に含まれるポリビニルブチラール構造を有する部分とポリ(メタ)アクリル酸類構造を有する部分がマクロ的に相分離せず、均質にバインダー中に存在することができるためである。また、グラフト共重合体であることで、スラリーとした際の粘度上昇が小さいために過剰の有機溶剤を用いることが必要なく、調製作業性が良好であり、且つ、塗工性に優れたセラミックグリーンシート用スラリーが得られるという利点がある。
【0015】
上記ポリビニルブチラールからなるユニット及びポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットを有するグラフト共重合体の構造は、用途に応じて設計される。例えば、ポリビニルブチラールからなるユニットが幹を形成し、ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットが枝を形成する場合、ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットが幹を形成し、ポリビニルブチラールからなるユニットが枝を形成する場合、また、上記の構造を持ったポリマーが混在する場合、さらに、同一ポリマー中に上記の構造を両方とも含む場合等が挙げられる。
【0016】
上記グラフト共重合体の分子量としては特に制限は無いが、数平均分子量(Mn)が10,000〜400,000で、重量平均分子量(Mw)が20,000〜800,000で、これらの比(Mw/Mn)が2.0〜40であることが好ましい。Mn、Mw、Mw/Mnがこのような範囲であると、上記グラフト共重合体をセラミックグリーンシートのバインダーとして使用した際に、シート強度が高くなる。また、スラリー粘度が高くなりすぎず、更に、無機粉末の分散性が良好となるので均一なセラミックグリーンシートを形成することができるため好ましい。
【0017】
上記ポリビニルブチラールからなるユニット(以下、ポリビニルブチラールユニットともいう)の重合度は下限が800、上限が4000である。上記ポリビニルブチラールユニットの重合度が800未満であると、得られるセラミックグリーンシートのシート強度が弱くなることがあり、4000を超えると、スラリーとした際の粘度が高くなって、支持体へ塗布する際に塗布ムラが発生し、均質なセラミックグリーンシートが得られないことがある。
好ましい下限は1000、好ましい上限は3500である。
【0018】
上記ポリビニルブチラールユニットは、ポリビニルブチラールに通常含まれる酢酸ビニル単位と、ビニルアルコール単位と、ビニルブチラール単位とを有する。
【0019】
上記ポリビニルブチラールユニットにおけるビニルアルコール単位の含有量(水酸基量)は下限が20モル%、上限が40モル%である。上記水酸基量が20モル%未満であると、得られるシートの強度が弱くなり、水酸基量が40モル%を超えると、スラリーとした際の粘度が高くなり、支持体へ塗布する際に塗布ムラが発生し、均質なセラミックグリーンシートが得られない。
好ましい下限は25モル%、好ましい上限は35モル%である。
【0020】
上記ポリビニルブチラールユニットにおけるビニルブチラール単位の含有量(ブチラール化度)は下限が60モル%、上限が80モル%である。ビニルブチラール単位が60モル%未満であると、スラリーとした際の粘度が高くなり、支持体へ塗布する際に塗布ムラが発生し、均質なセラミックグリーンシートが得ることができず、ビニルブチラール単位が80モル%を超えると、得られるシートの強度が弱くなる。
好ましい下限は65モル%、好ましい上限は75モル%である。
【0021】
上記ポリビニルブチラールユニットにおける酢酸ビニル単位の含有量(アセチル基量)は特に限定されないが、セラミックグリーンシートの原料として用いる場合のシート強度を考慮すると、30モル%以下であることが好ましい。
【0022】
上記ポリビニルブチラールユニットにおけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率は、下限が4、上限が15である。上記ブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率が4未満であると、ブチラール環構造が不安定となり、焼成時における急速な分解が起こり、体積収縮に伴う割れやクラックによる無機質焼結体シートに欠陥が発生する等して、セラミックコンデンサの電気特性が低下する。15を超えると、ブチラール環構造の安定性が高くなりすぎて、焼成時における分解性が低下し、セラミック中に含まれる残留炭化物が多くなってセラミックコンデンサの電気特性が悪化する。また、該メゾ/ラセモ比率を有する樹脂を得るための製造工程時間が極端に長くなって樹脂を生産する効率が著しく損なわれてしまう。
好ましい下限は5、好ましい上限は13である。
なお、本発明において、「ブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率」とは、ブチラール環の立体構造において、シンジオタクティック構造を有する水酸基から形成されるブチラール環構造(ラセモブチラール環)を有するブチラール基の量に対して、アイソタクティック構造を有する水酸基から形成されるブチラール環構造(メゾブチラール環)を有するブチラール基の量の比率であり、例えば、グラフト共重合体をジメチルスルホシキド等の溶剤に溶解させ、測定温度150℃においてプロトンNMRを測定し、4.5ppm付近に現れるメゾブチラール環構造に由来するピークと、4.2ppm付近に現れるラセモブチラール環構造に由来するピークの積分値を比較することや、カーボンNMRを測定し、100ppm付近に現れるメゾブチラール環構造に由来するピークと、94ppm付近に現れるラセモブチラール環構造に由来するピークの積分値を比較することによって測定することができる。
【0023】
上記ポリビニルブチラールユニットにおけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を上記範囲とするためには、ブチラール化度を適宜調整することが必要であり、ブチラール化度は低すぎても高すぎても良くなく、また、同様に水酸基量も低すぎても高すぎても良くない。適正な範囲のメゾ/ラセモ比率とするためには、ブチラール化度は60〜80モル%とし、水酸基量は20〜40モル%とする。
また、メゾ/ラセモ比率を調整するためには、ブチラール化工程の熟成温度と熟成時間を適宜調整することが有効であり、これらを調整することによって目的のメゾ/ラセモ比率を得ることができる。特に、熟成温度が低く熟成時間が短い場合には、メゾ/ラセモ比率は下限を外れ、熟成温度が高く熟成時間が長い場合には、上限を外れる場合がある。
【0024】
上記グラフト共重合体中に含まれるポリビニルブチラールユニットの含有量は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、上記グラフト共重合体全体に対して、10〜90重量%が好ましい。上記ポリビニルブチラールユニットの含有量が10重量%未満であると、得られるセラミックグリーンシートのシート強度が弱くなるとなることがあり、90重量%を超えると、焼成時における分解性が低下し、セラミック中に含まれる残留炭化物が多くなってセラミックコンデンサの電気特性が悪化することがある。好ましい下限は20重量%、好ましい上限は80重量%、また、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は70重量%である。
【0025】
上記ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニット(以下、ポリ(メタ)アクリル酸類ユニットともいう)は、単量体である(メタ)アクリル酸類を重合することによって得られる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸類」とは、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種をいう。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸類のうち、(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されないが、単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステル、単官能(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル及び単官能(メタ)アクリル酸アリールエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
また、上記(メタ)アクリル酸類はメタクリル酸類を90重量%以上含有し、特に、単官能メタクリル酸エステルを90重量%以上含有することが特に好ましい。このことにより、セラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた場合、焼成時における分解性が高くなり、残留炭化物が少ないバインダーを得ることができる。また、スラリーとした際に適度な粘度とすることができる。
【0027】
上記単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、上記(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称するものであり、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称するものとする。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸エステルのなかでは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
なかでも、焼成時における分解性が特に高く、残留炭化物が非常に少ないバインダーが得られることから、メタクリル酸エステルが好適であり、さらに、メチルメタクリレート又はイソブチルメタクリレートを構成単位として30重量%以上含むことが好ましく、40重量%以上含むことがより好ましく、50重量%以上含むことが更に好ましい。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸類は、分子内にカルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基及びエポキシ基、エーテル基からなる群から選択される少なくとも1つの極性基を有するものを含有してもよい。上記(メタ)アクリル酸類が上記極性基を有するものを含有することで、無機微粒子の分散性に優れるバインダーとすることができる。
具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート等のポリエチレングリコール鎖をエステル側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0030】
なかでも、分子内にカルボキシル基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸類を含有することにより、グラフト共重合体の分子内、及び、分子間相互作用を増大することができる。これにより、得られるグラフト共重合体を含有するバインダーを用いてセラミックグリーンシートを作製した場合、高いシート強度が得られる。
【0031】
また、上記分子内にカルボキシル基、水酸基、エポキシ基又はエーテル基を有する(メタ)アクリル酸類を含有することにより、バインダー内の酸素含有量が高くなり、残炭性に優れるバインダーとすることができる。上記ポリ(メタ)アクリル酸類を構成する(メタ)アクリル酸類は、分子内にカルボキシル基、水酸基、エポキシ基又はエーテル基を有する(メタ)アクリル酸類を5重量%以上含有することが好ましく、10重量%以上含有することがより好ましい。
【0032】
上記グラフト共重合体中に含まれるポリ(メタ)アクリル酸類ユニットの含有量は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、上記グラフト共重合体全体に対して、10〜90重量%が好ましい。上記ポリ(メタ)アクリル酸類ユニットの含有量が10重量%未満であると、焼成時における分解性が低下し、セラミック中に含まれる残留炭化物が多くなってセラミックコンデンサの電気特性が悪化することがあり、90重量%を超えると、得られるセラミックグリーンシートのシート強度が弱くなることがあったり、焼成時における急速な分解が起こり、体積収縮に伴う割れやクラックによる無機質焼結体シートに欠陥が発生したりする等して、セラミックコンデンサの電気特性が悪化することがある。好ましい下限は20重量%、好ましい上限は80重量%、また、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は70重量%である。
【0033】
上記グラフト共重合体中のグラフト率(グラフト共重合体中のポリビニルブチラールからなるユニットに対するポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットの比率)は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、10〜900重量%が好ましい。上記範囲内とすることで、セラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた場合に、焼成時のバインダーの熱分解性と、シート強度とを両立することができる。
なお、本発明において、「グラフト率」とは、グラフト共重合体中のポリビニルブチラールからなるユニットに対するポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットの比率を表し、例えば、以下の方法により評価することができる。得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、キシレンに溶解させ、不溶分と可溶分とに分離し、不溶分をグラフト共重合体とする。得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットの重量を換算し、下記式(1)を用いてグラフト率を求めることができる。
【0034】
【数1】
【0035】
上記グラフト共重合体は、更に、他のモノマーからなるユニットを有していてもよい。
上記グラフト共重合体が上記他のモノマーからなるユニットを有することにより、得られるグラフト共重合体の分子間相互作用が増大し、該グラフト共重合体をバインダーに用いることによって、シート強度が高いセラミックグリーンシートを形成することができる。更に、上記他のモノマーが極性基を有する場合には、該極性基と無機粉末の表面とが水素結合等の相互作用を起こすことにより、得られるスラリーの無機粉末の分散性を向上させ、分散剤を配合しない場合においても均一なセラミックグリーンシートを形成することができる。更に、上記他のモノマーが、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基及びエーテル基からなる群より選択される官能基を有する場合には、バインダー内の酸素含有量が高くなり、熱分解に有効なラジカルが発生することから、バインダーの焼成を助け、残留炭化物が非常に少ないグリーンシートを得ることができる。
【0036】
上記他のモノマーは特に限定されないが、分子内にカルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基及びエポキシ基、エーテル基からなる群から選択される少なくとも1つの極性基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アリルアルコール、ビニルエーテル、アリルアミン等が挙げられる。これらの他のモノマーのなかでも、得られるグラフト共重合体を含有するバインダーを用いてセラミックグリーンシートを作製した場合、より高いシート強度が得られることから、分子内にカルボキシル基を有するモノマー、分子内に水酸基を有するモノマーがより好ましい。
【0037】
上記グラフト共重合体中に含まれる他のモノマーからなるユニットの含有量は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、上記グラフト共重合体全体に対して、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
【0038】
上記グラフト共重合体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸類を含有する混合モノマーを、ポリビニルブチラールが存在する環境下において重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。
上記重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられる。
上記溶液重合に用いる溶媒は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び、これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0039】
上記グラフト共重合体を製造するための具体的な操作方法としては、例えば、溶液重合法としては、温度調整機及び攪拌機付きの重合器に、ポリビニルブチラール樹脂、溶媒を仕込み、加熱しながら攪拌することによってポリビニルブチラールを溶解させた後、そこへ上記(メタ)アクリル酸類を含有するモノマーを添加して、重合器内の空気を窒素に置換してから、さらにラジカル重合開始剤を加えて(メタ)アクリル酸類を重合する方法等が挙げられる。
また、懸濁重合法としては、温度調整機及び攪拌機付きの重合器に、ポリビニルブチラール樹脂、(メタ)アクリル酸類を含有するモノマー、純水、分散剤、ラジカル重合開始剤を仕込み、重合器内の空気を窒素に置換し、モノマーをポリビニルブチラール樹脂中に膨潤させた後に昇温して、(メタ)アクリル酸類を重合する方法等が挙げられる。
更に、塊状重合法としては、温度調整機及び攪拌機付きの重合器に、ポリビニルブチラール樹脂、(メタ)アクリル酸類を含有するモノマーを添加して、加熱しながら攪拌することによってポリビニルブチラールをモノマーに溶解させた後、重合器内の空気を窒素に置換してから、さらにラジカル重合開始剤を加えて(メタ)アクリル酸類を重合する方法等が挙げられる。
【0040】
上記グラフト共重合体を製造する際のポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットのグラフト効率は10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
上記グラフト効率が10%未満であると、セラミックグリーンシートの強度、伸びが低下するため好ましくない。
なお、グラフト効率は以下の方法で評価できる。
得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、キシレンに溶解させ、不溶分と可溶分とに分離し、可溶分を(メタ)アクリル酸類のホモポリマー、不溶分をグラフト共重合体とする。得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットの重量を換算し、下記式(2)を用いてグラフト効率を求めることができる。
【0041】
【数2】
【0042】
上記ラジカル開始剤は特に限定されず、例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシネオデカンネート、t−ブチルパーオキシネオデカンネート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5,−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
これらのラジカル開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の無機質焼結体製造用バインダーに、可塑剤、有機溶剤、無機質微粒子、分散剤等を添加することで、無機質焼結体製造用ペーストが得られる。このような無機質焼結体製造用ペーストもまた本発明の1つである。
上記有機溶剤は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び、これらの混合溶媒等が挙げられる。中でも、アルコールを少量でも用いると、バインダーの粘度が下がり、取扱性に優れるペーストが得られる。
また、80℃以上の沸点を持つ有機溶剤を含有することにより、急激な乾燥が防ぐことができ、得られるグリーンシートの表面を平滑にすることができる。
【0044】
本発明の無機質焼結体製造用バインダーをセラミックグリーンシート成型用のバインダーとして用いることで、セラミックグリーンシートを作製することができる。
上記セラミックグリーンシートを作製する方法としては、特に限定されず、公知の成形方法によって成形される。例えば、本発明の無機質焼結体製造用バインダーに、必要に応じて可塑剤、分散剤、消泡剤等の添加物を配合し、有機溶媒とセラミック粉末と共にボールミル等の混合装置で均一に混合してスラリーを調製し、該スラリーをPETフィルム等の支持体上にドクターブレード法等の公知の方法により湿式塗布し、有機溶剤を乾燥除去する方法が挙げられる。その他に、上記スラリーをスプレードライヤー法等により顆粒状に造粒した後、該顆粒を乾式プレス法により成形する方法等も挙げられる。
【0045】
このように得られたセラミックグリーンシートは、必要に応じて打ち抜き加工等の各種加工が施され、各種セラミック製品の製造に用いられる。例えば、積層セラミックコンデンサを製造する場合には、支持体には離型処理を施したPETフィルムが用いられ、グリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等によって塗布した後に支持体であるPETフィルムから剥離し、これを複数枚積層して加熱プレスすることで積層体を作製し、次いで、過熱焼成することによってバインダー樹脂を熱分解して除去することで製造される。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして使用した場合に、薄膜でも充分なシート強度を有するセラミックグリーンシートが得られるとともに、焼成時におけるシートの欠陥が無く、熱分解性に優れる無機質焼結体製造用バインダー、並びに、該無機質焼結体製造用バインダーを用いた無機質焼結体製造用ペースト及びセラミックグリーンシートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0048】
(実施例1)
(1)グラフト共重合体の調製
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルブチラール(重合度1700、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、メチルメタクリレート25重量部と、酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら75℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ヘキシルパーオキシピバレートを16重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に5時間かけて滴下添加した。その後、さらに75℃にて3時間反応させた。
次いで、反応液を冷却することにより、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、33万であった。グラフト率は61%、グラフト効率は60%であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、8.0であった。
【0049】
(2)セラミックグリーンシートの作製
得られたグラフト共重合体溶液を希釈溶剤(エタノールとトルエンの混合溶剤、エタノールとトルエンの重量比率は1:1)により希釈し、固形分10重量%の溶液とした。次に、本溶液20重量部にセラミック粉末としてチタン酸バリウム粉末(BT−03、平均粒子径0.3μm、堺化学工業社製)20重量部、及び、可塑剤としてジオクチルフタレートを0.4重量部添加し、ボールミルを用いて48時間混練してセラミックグリーンシート用スラリーを得た。
次に、得られたセラミックグリーンシート用スラリーを、コーターを用いて乾燥後の厚みが3μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、常温で1時間風乾した後、熱風乾燥機で80℃で1時間、ついで、120℃で1時間乾燥してセラミックグリーンシートを得た。
【0050】
(実施例2)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、ポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量31.8モル%、アセチル基量1.2モル%)を用い、溶媒の種類を酢酸エチルからエタノールとトルエンの混合溶剤(エタノールとトルエンの重量比率は1:1)に変えたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、22万であった。グラフト率は47%、グラフト効率は45%であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、4.5であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0051】
(実施例3)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、ポリビニルブチラール(重合度1500、ブチラール化度78.0モル%、水酸基量21.0モル%、アセチル基量1.0モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、30万であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、7.0であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0052】
(実施例4)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、ポリビニルブチラール(重合度3500、ブチラール化度60.9モル%、水酸基量29.7モル%、アセチル基量9.4モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、53万であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、5.1であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0053】
(実施例5)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート50重量部及びn−ブチルメタクリレート50重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分50重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、35万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用い、可塑剤としてジブチルフタレートを用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0054】
(実施例6)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、イソブチルメタクリレート10重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分23重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、28万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0055】
(実施例7)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート12.5重量部及び2−エチルヘキシルメタクリレート12.5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、30万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0056】
(実施例8)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート24重量部及びメタクリル酸1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、32万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0057】
(実施例9)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート15重量部及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、24万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0058】
(実施例10)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート15重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8重量部及びグリシジルメタクリレート2重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、22万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0059】
(実施例11)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート23.5重量部、及び、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート1.5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、22万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0060】
(実施例12)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、27万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0061】
(実施例13)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、グリシジルメタクリレート25重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、32万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0062】
(実施例14)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート23重量部及びn−ブチルアクリレート2重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、36万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0063】
(比較例1)
ポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%)50重量部をエタノールとトルエンの混合溶剤(エタノール:トルエン=1:1)に固形分10重量%で溶解したポリビニルブチラール樹脂溶液を作製した。なお、得られたポリビニルブチラールについて、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、15万であった。
また、使用したポリビニルブチラールにおけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、5.0であった。
次いで、実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」において、グラフト共重合体溶液に代えて、得られたポリビニルブチラール樹脂溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、セラミックグリーンシートを得た。
【0064】
(比較例2)
ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量8万)をエタノールとトルエンの混合溶剤(エタノール:トルエン=1:1)に固形分10重量%で溶解したポリメチルメタクリレート溶液を作製した。
次いで、実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」において、グラフト共重合体溶液に代えて、得られたポリメチルメタクリレート溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、セラミックグリーンシートを得た。
【0065】
(比較例3)
ポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%)と、ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量8万)との混合物(重量比で1:1)をエタノールとトルエンの混合溶剤(エタノール:トルエン=1:1)に固形分10重量%で溶解した混合樹脂溶液を作製した。
なお、使用したポリビニルブチラールにおけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、5.0であった。
次いで、実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」において、グラフト共重合体溶液に代えて、得られた混合樹脂溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、セラミックグリーンシートを得た。
【0066】
(比較例4)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、末端にメルカプト基を有するポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度60.2モル%、水酸基量39.0モル%、アセチル基量0.8モル%)25重量部と、メチルメタクリレート100重量部と、酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら75℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのAIBNを16重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に5時間かけて滴下添加した。その後、さらに75℃にて3時間反応させた。
次いで、反応液を冷却することにより、ブロック共重合体を含有する固形分20重量%のブロック共重合体溶液を得た。なお、得られたブロック共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、20万であった。
また、得られたブロック共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、4.1であった。
次いで、得られたブロック共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0067】
(比較例5)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、ポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度60.5モル%、水酸基量38.8モル%、アセチル基量0.7モル%)を用い、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート50重量部及びn−ブチルメタクリレート50重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、24万であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、3.5であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0068】
(比較例6)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、ポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度64.5モル%、水酸基量34.2モル%、アセチル基量1.3モル%)を用い、メチルメタクリレート25重量部に代えて、イソブチルメタクリレート10重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分23重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、19万であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、16であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0069】
(比較例7)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、ポリビニルブチラール(重合度800、ブチラール化度54.0モル%、水酸基量45.0モル%、アセチル基量1.0モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、18万であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、4.5であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0070】
(比較例8)
実施例1の「(1)グラフト共重合体の調製」において、メチルメタクリレート25重量部に代えて、メチルメタクリレート10重量部及びn−エチルアクリレート15重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、グラフト共重合体を含有する固形分30重量%のグラフト共重合体溶液を得た。なお、得られたグラフト共重合体の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、29万であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0071】
(比較例9)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルブチラール(重合度600、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部と、酢酸エチル80重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に2−イソシアナトエチルメタクリレート0.6重量部とトリメチルアミン1重量部を加え、反応容器内を撹拌しながら75℃で10時間反応させた。
次に、この反応液にメチルメタクリレート40重量部を加えた。次いで、重合開始剤としてのAIBN0.5重量部を酢酸エチル16重量部で希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に5時間かけて滴下添加した。その後、さらに75℃にて3時間反応させた。
その後、反応液を冷却することにより、グラフト重合体を有する固形分38重量%のバインダー樹脂溶液を得た。なお、得られたバインダー樹脂の重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、11万であった。グラフト率は156%、グラフト効率は78%であった。
また、得られたグラフト共重合体におけるブチラール環構造のメゾ/ラセモ比率を13C−NMRによって測定したところ、6.5であった。
次いで、得られたグラフト共重合体溶液を用いた以外は実施例1の「(2)セラミックグリーンシートの作製」と同様にして、セラミックグリーンシートを得た。
【0072】
(評価方法)
上記で得られた樹脂溶液、セラミックグリーンシートの性能を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0073】
(ポリビニルブチラールからなるユニットの重量分率、及び、ポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットの重量分率)
得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、キシレンに溶解させ、不溶分と可溶分とに分離し、不溶分をグラフト共重合体とした。
得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリビニルブチラールからなるユニットとポリ(メタ)アクリル酸類からなるユニットの重量を換算し、重量分率を算出した。
【0074】
(熱分解性評価)
得られた樹脂溶液を用いて、厚さが100μmのバインダー樹脂からなるフィルムを作製し、これを600℃まで加熱し、完全に分解するか否かを観察して、以下の基準で熱分解性を評価した。
◎:残さがなく、完全に分解した。
○:残さは殆どなく、概ね完全に分解した。
×:明らかな残さがあった。
【0075】
(強度評価)
得られたセラミックグリーンシートをポリエステルフィルムから剥離し、セラミックグリーンシートの状態を目視にて観察し、以下の基準で強度を評価した。
◎:セラミックグリーンシートに、切れや破れは全く観察されなかった。
○:セラミックグリーンシートのごく一部に、小さな切れが観察された。
×:セラミックグリーンシートがポリエステルフィルムから剥離できない、もしくは、剥離したシートの大部分に切れや破れが観察された。
【0076】
(シート均一性)
得られたセラミックグリーンシートの状態を目視にて観察し、以下の基準でシート均一性を評価した。
◎:セラミックグリーンシートにムラが無く、均一なシートが得られた。
○:セラミックグリーンシートにムラは殆ど無く、概ね均一なシートが得られた。
×:セラミックグリーンシートに明らかなムラがあった。
【0077】
(焼成後の状態)
得られたセラミックグリーンシートを5cm角に切断した後、100枚重ねた。次いで、70℃、圧力10MPa、10分間の熱圧条件で積層したのち、600℃まで加熱した。
得られた積層体について、クラックの有無を確認した。
〇:クラックの発生は確認できなかった。
×:クラックの発生が確認された。
【0078】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして使用した場合に、薄膜でも充分なシート強度を有するセラミックグリーンシートが得られるとともに、焼成時におけるシートの欠陥が無く、熱分解性に優れる無機質焼結体製造用バインダー、並びに、該無機質焼結体製造用バインダーを用いた無機質焼結体製造用ペースト及びセラミックグリーンシートを提供することができる。