【実施例1】
【0012】
以下、本発明を適用したウインドウウォッシャ装置の実施例1について説明する。
実施例1のウインドウウォッシャ装置は、例えば、乗用車等の自動車のフロントウインドウ部に設けられるものである。
図1は、本発明を適用したウインドウウォッシャ装置の実施例1の構成を示す模式図である。
フロントウインドウガラス10は、キャビンの前方側に設けられ、例えば、2次元曲面を有する合わせガラス等によって形成されている。
図1において、右ハンドル車を車外側から見た状態を示しており、左側が運転席側、右側が助手席側である。なお、左ハンドル車の場合には、左右反転した構成とすればよい。
【0013】
フロントウインドウガラス10には、運転席側ワイパ払拭領域11、助手席側ワイパ払拭領域12、運転席側撮像領域13、助手席側撮像領域14が設けられている。
運転席側、助手席側のワイパは、それぞれ収納時における運転席側に回動中心を有するワイパアームと、このワイパアームに取付けられたワイパブレードを有し、各払拭領域は、この回動中心と同心の扇形状となる。
運転席側ワイパ払拭領域11、助手席側ワイパ払拭領域12は、フロントウインドウガラス10の上部における車幅方向中央部においては、重複するように配置されている。
【0014】
運転席側撮像領域13、助手席側撮像領域14は、車室内に配置され、車両前方側の画像を撮像して外界認識を行う外界認識装置における運転席側カメラ、助手席側カメラの画角内に含まれる領域である。
運転席側カメラ、助手席側カメラは、1対のステレオカメラを構成し、外界認識装置は、画像処理によって車両前方の物体を認識するとともに、両者の視差を利用して物体までの距離を算出することができる。
運転席側撮像領域13、助手席側撮像領域14は、フロントウインドウガラス10の上端部近傍における車幅方向の中央部に、車幅方向に離間して配置されている。
【0015】
実施例1のウインドウウォッシャ装置100は、運転席側拡散ノズル110、助手席側拡散ノズル120、ジェットノズル130、及び、ウォッシャタンク、ウォッシャポンプ等を有して構成されている。
ウォッシャタンクは、ウォッシャ液が貯留される容器である。
ウォッシャポンプは、ウォッシャタンク内のウォッシャ液を加圧して吐出し、各ノズルに供給するものである。
【0016】
運転席側拡散ノズル110、助手席側拡散ノズル120は、フロントウインドウガラス10の広範な範囲にわたって、シャワー状にウォッシャ液を噴射するものである。
運転席側拡散ノズル110、助手席側拡散ノズル120は、車両のフロントフード上又はカウルトップ部に、車幅方向に離間して形成されている。
【0017】
上述した運転席側拡散ノズル110、助手席側拡散ノズル120のみにおいては、撮像領域、特に助手席側撮像領域14へのウォッシャ液供給が不十分となる場合がある。
そこで、実施例1においては、以下説明するジェットノズル130を設けている。
ジェットノズル130は、ウォッシャポンプから圧送されるウォッシャ液を、実質的に線状に、助手席側撮像領域14が主噴射領域となるように噴射するものである。
ジェットノズル130の噴射範囲は、運転席側拡散ノズル110、助手席側拡散ノズル120に対して狭小となっている。
ジェットノズル130は、運転席側拡散ノズル110、助手席側拡散ノズル120の間に配置されている。
【0018】
図1に、走行時に車両の外表面に沿って流れる気流の方向を破線矢印で示す。
ジェットノズル130は、助手席側撮像領域14に対して、この気流方向における上流側に配置されている。
また、ジェットノズル130は、車幅方向における位置が、車体の左右中心よりも助手席側であって、助手席側撮像領域14よりも車幅方向内側に配置されている。
【0019】
図2は、車両周辺の気流速度の分布を模式的に示す図である。
図2に示すように、車両の周囲に走行によって発生する気流(走行風)の流速は、部位によって様々であり、例えば、ウインドウウォッシャ装置のノズルが設けられるフード後部やカウルトップ部においては流速が遅いので、ノズルから噴出されたウォッシャ液は強い直進性を示すが、フロントウインドウガラスの上部においては、流速が速くなることによって、ウォッシャ液の水流がフロントウインドウガラスに張り付くような挙動を示し、特に高速時においては、上端部に設けられた撮像領域までウォッシャ液を供給することは困難である。
また、フロントフード上の前後方向中央部においては、流速が極低速まで低下したよどみ状態となっている。
このように、ノズルから撮像領域までのウォッシャ液の飛行経路が、様々な流速の範囲を通過すると、軌道が流速の影響を受けて変化し、ウォッシャ液を良好に撮像領域に当てることができない。
【0020】
そこで、実施例1においては、以下説明するボーテックスジェネレータ140を設けて、ジェットノズル130と助手席側撮像領域14との間の主要部分に、走行時に乱流領域Tを形成している。
ボーテックスジェネレータ140は、
図1に示すように、フロントフードFの前部における車幅方向中央部に設けられ、フロントフードFの表面から突出して形成されている。
【0021】
図3は、ボーテックスジェネレータ140の模式的前面視図である。
ボーテックスジェネレータ140は、フロントフードFから立設された支柱141の上端部から、左右に水平部142を突き出させ、さらにこの水平部142の両端部から、上下方向に突き出した鉛直部143を有するものである。
このような構成によって、ボーテックスジェネレータ140には多数のエッジ部(コーナ部)が形成され、これらの各エッジ部は、渦を生じさせて乱流を発生させる起点として機能する。
なお、ボーテックスジェネレータの形状は、このような形状に限らず、走行風が当たることによって下流側に乱流を形成可能なものであれば、他のいかなる形状であってもよい。
【0022】
図4は、実施例1のウインドウウォッシャ装置における乱流領域Tとウォッシャ液Wの飛行経路を示す模式図である。
図4に示すように、実施例1においては、車両の走行時に走行風がボーテックスジェネレータ140に当たることによって、ボーテックスジェネレータ140の後方側に、車両の外表面に沿って延在する乱流領域Tが形成される。
ジェットノズル130から助手席側撮像領域14に至るウォッシャ液Wの飛行経路は、その主要部分がこの乱流領域Tに含まれるようになっている。
乱流領域T内においては、大気の圧力変化、流速変化が比較的少なく、かつ、流速が比較的低速であることから、ウォッシャ液Wは強い直進性を示し、比較的低いウォッシャポンプ出力であっても、ウォッシャ液を精度よく助手席側撮像領域14に到達させることができ、その周辺部を効果的に洗浄することができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明を適用したウインドウウォッシャ装置の実施例2について説明する。
なお、上述した実施例1と実質的に同様の箇所には、同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図5は、実施例2におけるウインドウウォッシャ装置の構成を示す図である。
実施例2においては、実施例1のボーテックスジェネレータ140に代えて、以下説明する乱流形成開口150を設けている。
【0024】
乱流形成開口150は、フロントフードFに、その下方のエンジンルーム内と連通する矩形の開口を形成し、この開口の内部に突出した突起を形成したものである。
このような乱流形成開口150を形成すると、走行時にフロントグリル等からのラム圧によって比較的高圧となるエンジンルーム内から、フロントフードFの上方側に気流が噴出し、これよりも車両後方側に乱流領域が形成される。
以上説明した実施例2によれば、上述した実施例1による効果と実質的に同様の効果に加えて、車両の外部に突出部を持たないことによって、歩行者保護性能も容易に確保することができる。
【実施例3】
【0025】
次に、本発明を適用したウインドウウォッシャ装置の実施例3について説明する。
図6は、実施例3におけるウインドウウォッシャ装置の構成を示す図である。
実施例3においては、実施例2の乱流形成開口150に代えて、以下説明する乱流形成開口160を設けている。
乱流形成開口160は、車両の前後方向に配列された複数の(例えば5つの)円形開口を備えて構成されている。各開口は、エンジンルーム内と連通し、走行時にエンジンルーム内からフロントフードFの上方へ気流を噴出するようになっている。
以上説明した実施例3においても、上述した実施例1,2による効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0026】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
ウインドウウォッシャ装置を構成する各ノズル類の配置、個数、種類や、乱流形成手段の形状、構成、個数、配置等は、上述した各実施例のものに限らず、適宜変更することができる。
例えば、ボーテックスジェネレータの形状や位置は、実施例1のものに限らず、適宜変更することができる。
また、実施例2、3の乱流形成開口の位置、形状、個数も適宜変更することができる。さらに、乱流形成開口が連通する空間部もエンジンルーム内に限らず、例えばホイルハウス内など、他の空間部であってもよい。
また、各実施例においては、ウォッシャ液の飛行経路の主要部分が乱流領域に含まれる構成としているが、乱流領域は、ウォッシャ液の飛行経路の少なくとも一部が含まれるように形成すれば、一定の効果を得ることは可能である。