特許第5873371号(P5873371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873371
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】車両のサスペンション
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/02 20060101AFI20160216BHJP
   B60G 9/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B60G7/02
   B60G9/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-80794(P2012-80794)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209014(P2013-209014A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森地 和愛
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−278422(JP,A)
【文献】 実開昭62−074011(JP,U)
【文献】 実開昭62−122707(JP,U)
【文献】 特開2004−237754(JP,A)
【文献】 実開昭51−162186(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に取り付けられ、ある第1方向で互いに離れて対面する一対の支持片を有する支持ブラケットと、上記第1方向に直交する第2方向に沿って上記両支持片の間の支持空間に挿入され、上記支持ブラケットにサスペンションアームの一端部を枢支させる枢支部とを備え、この枢支部が、上記第1方向に延びる軸心を有して上記サスペンションアームの一端部に固着される外筒体と、上記第1方向に延びる軸心を有して上記外筒体に挿入され、上記軸心上に設けられる締結具により上記両支持片に挟持されるよう締結される内筒体と、上記外、内筒体の間に介設されてこれら外、内筒体を互いに連結するゴムブッシュとを有した車両のサスペンションにおいて、
上記第2方向に沿う視線で見て、上記内筒体の各端部にそれぞれその軸心を挟む一対の傾斜面を形成し、上記支持空間に上記枢支部を挿入したとき、上記各傾斜面がそれぞれ上記各支持片の互いの対向面に面接触するようにしたことを特徴とする車両のサスペンション。
【請求項2】
上記第2方向に沿って上記枢支部を上記支持空間に挿入するときの挿入方向に向かうに従い、上記内筒体の一端部の傾斜面と他端部の傾斜面とが互いに接近するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両のサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側に取り付けられた支持ブラケットに対しサスペンションアームの一端部が弾性的に枢支されるようにした車両のサスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両のサスペンションには、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両のサスペンションは、車体側に取り付けられ、ある第1方向で互いに離れて対面する一対の支持片を有する支持ブラケットと、上記第1方向に直交する第2方向に沿って上記両支持片の間の支持空間に挿入され、上記支持ブラケットにサスペンションアームの一端部を枢支させる枢支部とを備え、この枢支部が、上記第1方向に延びる軸心を有して上記サスペンションアームの一端部に固着される外筒体と、上記第1方向に延びる軸心を有して上記外筒体に挿入され、上記軸心上に設けられる締結具により上記両支持片に挟持されるよう締結される内筒体と、上記外、内筒体の間に介設されてこれら外、内筒体を互いに連結するゴムブッシュとを有している。
【0003】
そして、上記サスペンションアームと、このサスペンションアームの揺動端部に支持される車輪とにより車体が走行路面上に支持される。車両の走行時に、走行路面に凹凸がある場合には、この走行路面を転動する車輪と共に上記サスペンションアームが上下に揺動を繰り返し、かつ、上記ゴムブッシュが弾性変形を繰り返すことにより、上記走行路面から上記サスペンションを介し車体側に与えられようとする衝撃力が緩和され、もって、車両の良好な操安性や車両への良好な乗り心地が維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−309916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した車両の組立作業において、車体に取り付けられた支持ブラケットに対しその下方から上記サスペンションアームの一端部を枢支させる組付作業をする場合には、従来、一般に、次のようになされる。
【0006】
即ち、まず、上記サスペンションアームの一端部に固着された外筒体を有する枢支部を前記第2方向として上下方向に沿うよう上昇させ、上記支持ブラケットの両支持片の間の支持空間に挿入する。次に、上記枢支部の内筒体の軸心が上記各支持片にそれぞれ形成された上記締結具のボルト挿通孔に合致するよう上記支持空間の所定位置に上記枢支部の内筒体を位置決めする。次に、上記各ボルト挿通孔と内筒体とに上記締結具のボルトを挿通させて上記両支持片に上記内筒体が挟持されるようこの内筒体を上記締結具により締結させる。これにより、上記組付作業が終る。
【0007】
しかしながら、上記したサスペンションアームの一端部と、この一端部に固着される枢支部とは質量が大きいものである。このため、上記サスペンションアームの組付作業において、上記した両支持片の間の支持空間の所定位置に対し上記枢支部の内筒体を正確にかつ迅速に位置決めすることは容易でなく、よって、上記組付作業は煩雑となりがちである。
【0008】
また、上記したように、枢支部の内筒体は上記支持ブラケットの両支持片に挟持されるよう締結される。しかし、車両の走行時の走行路面の凹凸が予想以上に大きい場合など、走行路面から上記サスペンションを介し車体側に与えられる衝撃力が過大である場合には、上記両支持片に対し上記内筒体の軸方向の各端面がその軸心回りに不意に摺動して回転するおそれがあり、この場合には、車両の操安性や乗り心地が阻害されることとなって、好ましくない。
【0009】
更に、前記したサスペンションアームの組付作業が容易にできるようにするため、上記両支持片の間の支持空間の所定位置に対し上記枢支部を容易に位置決めできるようにする位置決め手段を設けることが考えられる。しかし、このような位置決め手段を別途に設けると、このサスペンションの構成が複雑になるおそれがある。
【0010】
また、前記した車両の操安性が阻害されることを防止するため、上記支持ブラケットの両支持片に対し上記枢支部の内筒体の端面がその軸心回りに不意に摺動して回転することを阻止するストッパーを設けることが考えられる。しかし、このようなストッパーを別途に設けると、この場合にも、サスペンションの構成が複雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体に取り付けられた支持ブラケットに対してのサスペンションアームの一端部の組付作業が容易にできるようにし、かつ、車両の走行中に走行路面から車体側に与えられる衝撃力が過大であるとしても、車両の操安性や乗り心地が良好に維持されるようにすることである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、上記した各効果が簡単な構成で安価に達成できるようにすることである。
【0013】
請求項1の発明は、全図に例示するように、車体2側に取り付けられ、ある第1方向Aで互いに離れて対面する一対の支持片12,12を有する支持ブラケット9と、上記第1方向Aに直交する第2方向Bに沿って上記両支持片12,12の間の支持空間14に挿入され、上記支持ブラケット9にサスペンションアーム15の一端部を枢支させる枢支部16とを備え、この枢支部16が、上記第1方向Aに延びる軸心26を有して上記サスペンションアーム15の一端部に固着される外筒体27と、上記第1方向Aに延びる軸心28を有して上記外筒体27に挿入され、上記軸心28上に設けられる締結具29により上記両支持片12,12に挟持されるよう締結される内筒体30と、上記外、内筒体27,30の間に介設されてこれら外、内筒体27,30を互いに連結するゴムブッシュ31とを有した車両のサスペンションにおいて、
上記第2方向Bに沿う視線で見て(図6)、上記内筒体30の各端部にそれぞれその軸心28を挟む一対の傾斜面34,34,35,35を形成し、上記支持空間14に上記枢支部16を挿入したとき、上記各傾斜面34,34,35,35がそれぞれ上記各支持片12,12の互いの対向面12a,12aに面接触するようにしたことを特徴とする車両のサスペンションである。
【0014】
請求項2の発明は、図1〜6,8に例示するように、上記第2方向Bに沿って上記枢支部16を上記支持空間14に挿入するときの挿入方向B(a)に向かうに従い、上記内筒体30の一端部の傾斜面34と他端部の傾斜面35とが互いに接近するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両のサスペンションである。
【0015】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明による効果は、次の如くである。
【0017】
請求項1の発明は、車体側に取り付けられ、ある第1方向で互いに離れて対面する一対の支持片を有する支持ブラケットと、上記第1方向に直交する第2方向に沿って上記両支持片の間の支持空間に挿入され、上記支持ブラケットにサスペンションアームの一端部を枢支させる枢支部とを備え、この枢支部が、上記第1方向に延びる軸心を有して上記サスペンションアームの一端部に固着される外筒体と、上記第1方向に延びる軸心を有して上記外筒体に挿入され、上記軸心上に設けられる締結具により上記両支持片に挟持されるよう締結される内筒体と、上記外、内筒体の間に介設されてこれら外、内筒体を互いに連結するゴムブッシュとを有した車両のサスペンションにおいて、
上記第2方向に沿う視線で見て、上記内筒体の各端部にそれぞれその軸心を挟む一対の傾斜面を形成し、上記支持空間に上記枢支部を挿入したとき、上記各傾斜面がそれぞれ上記各支持片の互いの対向面に面接触するようにしており、次の効果が生じる。
【0018】
即ち、車両の組立作業において、車体に取り付けられた支持ブラケットに対し上記サスペンションアームの一端部を枢支させる組付作業をする場合には、まず、このサスペンションアームの一端部に固着された外筒体を有する枢支部を上記第2方向に沿うよう移動させ、上記支持ブラケットの両支持片の間の支持空間に挿入する。
【0019】
そして、上記支持ブラケットの支持空間への上記枢支部の挿入により、この枢支部が有する上記内筒体の各傾斜面を上記各支持片の互いの対向面に面接触させる。すると、少なくとも上記第1方向と、上記第1方向および第2方向にそれぞれ直交する第3方向とで、上記支持空間の所定位置に上記内筒体を正確にかつ迅速に位置決めできる。よって、その後、上記支持ブラケットの両支持片への上記内筒体の締結が円滑にできることから、その分、上記サスペンションアームの組付作業が容易にできる。
【0020】
また、上記サスペンションアームの組付作業によれば、支持ブラケットの支持空間への枢支部の挿入により、上記内筒体の各傾斜面が上記各支持片の対向面に面接触させられ、この状態で、上記支持ブラケットの両支持片に上記内筒体が挟持されるよう締結される。このため、上記内筒体がその軸心回りに回転しようとすることは、上記した各対向面への上記内筒体の各傾斜面の面接触と、この面接触による接触面積の増加とによって強固に阻止される。よって、車両の走行中に、走行路面からサスペンションを介し車体側に与えられる衝撃力が過大であるとしても、上記内筒体がその軸心回りに不意に回転することは防止され、車両の操安性や乗り心地が良好に維持される。
【0021】
また、上記したサスペンションアームの組付作業の容易化や、良好な操安性の維持という各効果は、上記したように両支持片の間の支持空間に挿入された上記枢支部の内筒体の各傾斜面を上記各支持片の対向面に面接触させたことにより達成されたのであって、枢支部の位置決め手段や内筒体の軸心回りの回転を阻止するストッパーを別途に設けることは不要である。よって、上記各効果は簡単な構成で安価に達成できる。
【0022】
請求項2の発明は、上記第2方向に沿って上記枢支部を上記支持空間に挿入するときの挿入方向に向かうに従い、上記内筒体の一端部の傾斜面と他端部の傾斜面とが互いに接近するようにしている。
【0023】
このため、上記した組付作業により、上記両支持片の間の支持空間に上記枢支部を挿入し、上記内筒体の各傾斜面を上記各支持片の対向面に面接触させれば、上記第1、第3方向に加えて、上記第2方向についても上記支持空間の所定位置に上記内筒体を正確にかつ迅速に位置決めできる。よって、その分、上記サスペンションアームの組付作業が更に容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1を示し、図2の部分拡大詳細図である。
図2】実施例1を示し、サスペンションの斜視図である。
図3】実施例1を示し、サスペンションの側面図である。
図4】実施例1を示し、図3の部分拡大詳細図である。
図5】実施例1を示し、図4のV−V線矢視断面図である。
図6】実施例1を示し、図4で示したものの平面部分断面図である。
図7】実施例2を示し、図1に相当する図である。
図8】実施例3を示し、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の車両のサスペンションに関し、車体に取り付けられた支持ブラケットに対してのサスペンションアームの一端部の組付作業が容易にできるようにし、かつ、車両の走行中に走行路面から車体側に与えられる衝撃力が過大であるとしても、車両の操安性や乗り心地が良好に維持されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0026】
即ち、車両のサスペンションは、車体側に取り付けられ、ある第1方向で互いに離れて対面する一対の支持片を有する支持ブラケットと、上記第1方向に直交する第2方向に沿って上記両支持片の間の支持空間に挿入され、上記支持ブラケットにサスペンションアームの一端部を枢支させる枢支部とを備える。この枢支部は、上記第1方向に延びる軸心を有して上記サスペンションアームの一端部に固着される外筒体と、上記第1方向に延びる軸心を有して上記外筒体に挿入され、上記軸心上に設けられる締結具により上記両支持片に挟持されるよう締結される内筒体と、上記外、内筒体の間に介設されてこれら外、内筒体を互いに連結するゴムブッシュとを有している。
【0027】
上記第2方向に沿う視線で見て、上記内筒体の各端部にそれぞれその軸心を挟む一対の傾斜面が形成される。上記支持空間に上記枢支部を挿入したとき、上記各傾斜面がそれぞれ上記各支持片の互いの対向面に面接触することとされる。
【実施例1】
【0028】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1〜6に従って説明する。
【0029】
図2,3において、図中符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の幅方向をいうものとする。
【0030】
上記車両1は、車体2と、この車体2の後部にリヤサスペンション3により懸架される左右後車輪4とを備え、これらサスペンション3、各車輪4、および不図示の前車輪等によって車体2は走行路面5上に支持される。
【0031】
上記サスペンション3は、上記車体2側に取り付けられる左右一対の板金製支持ブラケット9,9を備えている。これら各支持ブラケット9は、上記車体2側の下面に溶接により固着される基板11と、この基板11の左右各端縁部からそれぞれ一体的に下方に向かって突出し、ある第1方向Aである車両1の幅方向で互いに離れて対面する左右一対の支持片12,12と、これら各支持片12の外面に溶接により固着される座板13とを有している。
【0032】
また、上記サスペンション3は、上記第1方向Aに直交する第2方向Bである上下方向に沿って上記両支持片12,12の間の支持空間14に挿入され、上記支持ブラケット9にサスペンションアーム15の一端部である前端部を枢支させる枢支部16を備えている。上記サスペンションアーム15は左右一対設けられ,これら両サスペンションアーム15,15はトーションビーム19により互いに結合されている。上記各サスペンションアーム15の他端部である後端部には前記車輪4を支持する車軸20が突設されている。車体2側と上記各サスペンションアーム15の後端部とには緩衝器21が架設され、また、車体2側と上記各サスペンションアーム15の長手方向の中途部との間にはコイルばね22が介設されている。
【0033】
図1〜6において、上記枢支部16は、上記第1方向Aに延びる軸心26を有して上記サスペンションアーム15の前端部に溶接により固着される金属製外筒体27と、上記第1方向Aに延びる軸心28を有して上記外筒体27に挿入され、その軸心28上に設けられる締結具29により上記支持ブラケット9の両支持片12,12に挟持されるよう締結される金属製内筒体30と、上記外、内筒体27,30の間に介設されてこれら外、内筒体27,30を互いに弾性的に連結するゴムブッシュ31とを有している。
【0034】
なお、上記両軸心26,28は、上記ゴムブッシュ31の自由状態で同軸上に位置している。また、上記締結具29は、上記軸心26,28上で上記支持片12の各支持片12と各座板13とにそれぞれ形成されるボルト挿通孔29aと、上記内筒体30の軸心28上に位置する上記各ボルト挿通孔29aと上記内筒体30の内孔とに挿通されるボルト29bと、このボルト29bのねじ部に螺合されるナット29cとを有している。上記の場合、各座板13の外面は上記軸心26,28に直交し、互いに平行に延びている。なお、上記ナット29cは上記座板13に溶接により固着されるウェルドナットであってもよい。
【0035】
図1,2,4〜6のうち、特に、上記第2方向Bに沿う視線で見て(図6)、上記内筒体30の一端部にその軸心28を挟む一対の傾斜面34,34が形成され、また、上記内筒体30の他端部にその軸心28を挟む他の一対の傾斜面35,35が形成される。この場合、上記各傾斜面34,35は互いに同じ傾角とさており、これら各傾斜面34,35の形成により、上記内筒体30の各端部は二等辺三角形の頂部形状とされている。
【0036】
図4〜6において、上記支持ブラケット9の支持空間14に上記枢支部16を挿入したとき、上記内筒体30の各端部の各傾斜面34,34,35,35のそれぞれ少なくとも一部分が、上記各支持片12,12の互いの対向面12a,12aのそれぞれ少なくとも一部分に面接触するよう上記各支持片12,12がプレス加工により屈曲形成されている。具体的には、上記各支持片12の各対向面12aには、上記内筒体30の各端部を嵌入させるV字溝が形成されている。
【0037】
また、上記第2方向Bに沿って上記枢支部16を上記支持空間14に挿入するときの挿入方向B(a)に向かうに従い、上記内筒体30の一端部の各傾斜面34と他端部の各傾斜面35とが互いに漸次接近するよう、これら各傾斜面34,35が形成されている。
【0038】
つまり、上記構成によれば、支持ブラケット9の支持空間14に枢支部16を挿入し、この枢支部16の内筒体30の各傾斜面34,35が上記支持ブラケット9の各支持片12の対向面12aに面接触した状態は、上記支持空間14の所定位置に枢支部16が位置した状態とされる。この場合、前記したように支持ブラケット9の各支持片12に形成されたボルト挿通孔29aの軸心上に上記枢支部16の内筒体30の軸心28が位置することとされる。
【0039】
そして、車両1の走行時に、走行路面5に凹凸がある場合には、この走行路面5を転動する車輪4と共に上記サスペンションアーム15が上下に揺動を繰り返し、かつ、上記ゴムブッシュ31が弾性変形を繰り返すことにより、上記走行路面5から上記サスペンション3を介し車体2側に与えられようとする衝撃力が緩和され、もって、良好な操安性が維持されるようになっている。
【0040】
上記構成の車両1の組立作業において、車体2に取り付けられた支持ブラケット9に対しその下方から上記サスペンションアーム15の一端部を枢支させる組付作業をする場合には、まず、このサスペンションアーム15の一端部に固着された外筒体27を有する枢支部16を上記第2方向Bに沿うよう上昇移動させ、上記支持ブラケット9の両支持片12,12の間の支持空間14に挿入する。
【0041】
そして、上記支持ブラケット9の支持空間14への上記枢支部16の挿入により、この枢支部16が有する内筒体30の各端部の各傾斜面34,35を上記各支持片12の互いの対向面12a,12aに面接触させる。すると、少なくとも上記第1方向Aと、上記第1方向Aおよび第2方向Bにそれぞれ直交する第3方向Cとで、上記支持空間14の所定位置に上記内筒体30を正確にかつ迅速に位置決めできる。よって、その後、上記支持ブラケット9の両支持片12,12への上記締結具29による上記内筒体30の締結が円滑にできることから、その分、上記サスペンションアーム15の組付作業が容易にできる。
【0042】
また、上記サスペンションアーム15の組付作業によれば、支持ブラケット9の支持空間14への枢支部16の挿入により、上記内筒体30の各端部の各傾斜面34,35が上記各支持片12の対向面12a,12aに面接触させられ、この状態で上記支持ブラケット9の両支持片12,12に上記内筒体30が挟持されるよう締結される。このため、上記内筒体30がその軸心28回りに回転しようとすることは、上記した各対向面12aへの上記内筒体30の各傾斜面34の面接触と、この面接触による接触面積の増加とによって強固に阻止される。よって、車両1の走行中に、走行路面5からサスペンション3を介し車体2側に与えられる衝撃力が過大であるとしても、上記内筒体30がその軸心28回りに不意に回転することは防止され、車両1の操安性や乗り心地が良好に維持される。
【0043】
また、上記したサスペンションアーム15の組付作業の容易化や、良好な操安性の維持という各効果は、上記したように上記両支持片12,12の間の支持空間14に挿入された上記枢支部16の内筒体30の各傾斜面34,35を上記各支持片12の対向面12a,12aに面接触させたことにより達成されたのであって、枢支部16の位置決め手段や内筒体30の軸心28回りの回転を阻止するストッパーを別途に設けることは不要である。よって、上記各効果は簡単な構成で安価に達成できる。
【0044】
また、前記したように、第2方向Bに沿って上記枢支部16を上記支持空間14に挿入するときの挿入方向B(a)に向かうに従い、上記内筒体30の一端部の傾斜面34と他端部の傾斜面35とが互いに接近するようにしている。
【0045】
このため、上記した組付作業により、上記両支持片12,12の間の支持空間14に上記枢支部16を挿入し、上記内筒体30の各傾斜面34,35を上記各支持片12の対向面12a,12aに面接触させれば、上記第1、第3方向A,Cに加えて、上記第2方向Bについても上記支持空間14の所定位置に上記内筒体30を正確にかつ迅速に位置決めできる。よって、その分、上記サスペンションアーム15の組付作業が更に容易にできる。
【0046】
なお、以上は図示の例によるが、上記サスペンション3はフロントサスペンションであってもよい。また、上記第1〜第3方向A〜Cは、前記したこれらの関係を保った上で、いずれの方向であってもよい。また、上記した各傾斜面34,35の各傾角は互いに相違させてもよい。
【0047】
以下の図7,8は、実施例2,3を示している。これら各実施例は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら各実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0048】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図7に従って説明する。
【0049】
図7において、上記第2方向Bは車両1の前後方向とされている。また、上記内筒体30の軸方向の各端部には、これら各端部の端面の中央部を残すようそれぞれ一対の傾斜面34,34が形成されている。これにより、上記内筒体30の各端部は台形の頂部形状とされている。また、上記支持ブラケット9の各支持片12の対向面12aには、上記内筒体30の各端部を嵌入させて、この内筒体30の各端面と各傾斜面34,34とをそれぞれ面接触させる溝が形成されている。なお、上記各対向面12aに対し上記内筒体30の各端部の端面は面接触させなくてもよい。
【実施例3】
【0050】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例3を添付の図8に従って説明する。
【0051】
この実施例3は、前記実施例2を、より具体的にしたもので、上記支持空間14への上記枢支部16の挿入方向B(a)に向かうに従い、上記内筒体30の各端部の傾斜面34,35が互いに接近するようこれら各傾斜面34,35が形成されている。また、上記支持ブラケット9の各支持片12の対向面12aには、上記実施例2と同様に、上記内筒体30の各端部を嵌入させて、面接触させる溝が形成されている。このため、この溝の上下各内面は上記挿入方向B(a)に向かって漸次接近することとされる。
【0052】
なお、図示しないが、上記内筒体30の軸方向の各端部の端面が上記挿入方向B(a)に向かうに従い互いに接近するよう上記各端面を形成してもよい。また、この場合、上記各支持片12の対向面12aに形成された溝の底面も上記挿入方向B(a)に向かうに従い互いに漸次接近するよう形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 車体
3 サスペンション
4 車輪
5 走行路面
9 支持ブラケット
11 基板
12 支持片
12a 対向面
13 座板
14 支持空間
15 サスペンションアーム
16 枢支部
26 軸心
27 外筒体
28 軸心
29 締結具
30 内筒体
31 ゴムブッシュ
34 傾斜面
35 傾斜面
A 第1方向
B 第2方向
C 第3方向
B(a) 挿入方向B(a)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8